金融審議会「第一部会」第17回会合議事録
日時:平成11年11月24日(水)10時02分〜12時03分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室
○蝋山部会長 時間もやや過ぎましたので、ただいまより第17回の金融審議会「第一部会」を始めさせていただきます。
ちょっとお天気のせいでしょうか、委員の方々の出足が鈍いようですけれども、時間が限られておりますので始めさせていただきたく思います。
本日は、議事次第を御覧になるとお分かりのように、一番中心の議題は「裁判外紛争処理制度のあり方等について」という問題ですけれども、そのほかにまだ二つあります。一つはEDINETの問題、もう一つは、今お願いしておりますホールセール・リーテイルに関するワーキンググループの検討状況の御報告をお願いするということであります。たくさん議題がありますので、よろしくその点をお考えの上、議事進行を含めて御協力をお願いいたします。
今日は、中心議題の裁判外紛争処理制度について、日頃、消費者による金融商品に関する苦情・相談に数多く接しておられます消費生活センターの相談員の方をお招きしておりますので、議事に先立ちまして御紹介申し上げたく思います。
東京都足立区消費生活センターの大内美喜子消費生活相談員であられます。どうぞよろしくお願いいたします。
○大内消費生活相談員 どうぞよろしくお願いいたします。
○蝋山部会長 事務局は、では口頭で申し上げます。
事務局の異動で、今回から大森市場課調整室長が参加されることになりましたが、今日は御出席になっていないようであります。
それでは初めに、有価証券報告書等のディスクロージャー制度の電子化、いわゆるEDINETの問題について討議を行いたく思います。事務局から大藤参事官、御説明をお願いいたします。
○大藤参事官 市場課で開示担当の参事官をいたしております大藤でございます。
それでは、お手元の資料17−1に基づきまして、ディスクロージャー制度の電子化についての検討状況等につきまして報告させていただきます。
まず、1ページの1.のところに「意義」というところがございますけれども、EDINETの背景・意義について御説明させていただきます。
金融システム改革が実施されつつある中で、公正で透明性のある市場の整備の一環といたしまして、会計ディスクロージャー制度の整備を進めてきたところでございますが、証券市場の効率化・活性化及び市場メカニズムの一層の発揮を図るためには、企業が開示する情報の充実を図ることはもちろんでございますが、投資家等の企業情報への容易かつ迅速なアクセスを可能とすることが必要となるというふうに考えております。
このような観点から、現在、紙媒体で行われております有価証券報告書等のいわゆる開示書類の提出・受理・審査及び縦覧といった一連のディスクロージャー制度の電子化について検討を進めてきたところでございます。
これまでの検討の経緯につきまして敷衍させていただきますと、有価証券報告書等の開示書類の電子化につきましては、既に平成9年6月13日、証券取引審議会の報告書におきまして触れられているところでございます。
資料の3ページをお開きいただきたいと思います。3ページの上段でございますけれども、この中で、ディスクロージャーの電子化、インターネットによる情報の提供などを実施すべきであり、早期実現に向けて対応を進めるべきである旨、提言されているところでございます。
これと相前後いたしまして、当時の証券局企業財務課長の勉強会といたしまして、平成9年4月に電子開示研究会を立ち上げたところでございます。金融審議会の第二部会の委員でございます江頭教授に座長をお願いしているところでございます。そこでは、投資家でありますとかアナリスト、情報ベンダー、企業あるいは証券取引所、証券業協会等々の方をメンバーとさせていただいているところでございます。そこで鋭意検討を行っていただきまして、平成9年7月に「電子開示システムのあり方について」という報告書を取りまとめていただいたところでございます。その中で、新しい電子開示システムというものを「EDINET」と呼ぼうということになっております。「Electronic
Disclosure of Investors' NETwork」
ということで、EDINETという呼称をつけていただいております。
その後、本取りまとめを基に、EDINETの実現に向けて制度面、技術面で研究会と連携を取らせていただいた上で検討を行ってきたところでございますが、本年10月に当研究会において一定の方向性が打ち出されたところから、今日、当部会で検討状況についての報告を行わせていただいているところでございます。
なお、今週の22日に第二部会がございましたが、第二部会においても報告させていただいているところでございます。
なお、EDINETにつきましては、各方面から早期実現に向けて要請をいただいているところでございます。資料の3ページを御覧いただきますと、まず、「規制緩和推進3か年計画」という本年3月30日の閣議決定でございますが、ここで具体化に向けた検討を行い、平成11年度に結論を得る旨、言及されているところでございます。また、今回の「経済新生対策」におきましても、平成10年度からの導入を目指す旨、言及されているところでございます。
なお、アメリカにおきましては、エドガーシステムというものが1984年から段階的に開発・導入されておりまして、1996年5月以降、すべての内国会社に対して電子媒体での開示書類の提出が義務付けられているところでございます。
引き続きまして、新しいシステムの概要につきまして御説明申し上げます。2ページにポンチ絵を付けておりますので、これを御覧いただきながら御説明を聞いていただきたいと思っております。
まず、対象範囲でございますけれども、EDINETにおきましては、現在、紙媒体で行われております有価証券報告書等の開示書類の提出・受理・審査及び縦覧といった一連のディスクロージャー制度をインターネット等を活用して電子的に行っていくものでございます。
それから、開示書類の電子媒体による提出についてでございますが、これは、資料の2ページのポンチ絵でいきますと、有価証券報告書等提出会社から真ん中の箱に向かっているところでございます。有価証券報告書等の開示書類につきましては、電子的に作成していただきまして、オンライン、いわゆるインターネットによる提出を原則義務化させていただきたいというふうに考えております。但し、電子化への円滑な移行のため、紙媒体による提出も認める一定の経過期間を設けるとともに、段階的に対象書類を拡大していきたいというふうに考えているところでございます。具体的には、継続開示書類と言われておりまして、いわゆる開示書類の中心部分をなしております有価証券報告書、臨時報告書、半期報告書のグループから適用をしていきたいというふうに考えております。
なお、義務化する範囲につきましては、例えば個人も提出者となり得る大量保有報告書等についていかに扱うか等々につきまして、さらに検討させていただきたいというふうに考えております。その他、災害等のためEDINETを提出できないといったような場合には、紙媒体等で提出していただくということになろうかと考えております。EDINETの導入によりまして、提出会社は書類の作成・提出に係る事務負担、経費負担が軽減されるものというふうに考えております。
次に、真ん中の箱の受理・審査業務に係る部分でございます。現在、大蔵省財務局におきまして、提出された書類につきまして受理・審査を行っておるところでございますが、これにつきましても当然、電子化された開示情報で行っていくことになろうかと思っております。これにより受理・審査業務の効率化が図られるとともに、開示書類のデータベースを分析加工いたしまして、例えば特定の勘定科目の異常値を発見するといったようなことも考えられるわけでございまして、審査事務の高度化にも資するものと考えております。
なお、真ん中の箱に「大蔵省・財務局」と書いてございますけれども、金融庁の設置に伴いまして、有価証券報告書等の審査も含めます証券取引法の所管が金融庁の方に移りますので、EDINETが実施されるときには、金融庁財務局でここの部分を担当するということになるわけでございます。
次に、右の部分でございます。情報の提供の部分でございます。ここにつきましては、当局の閲覧室にまずモニター画面を設置いたしまして、当局に提出された開示情報を投資家の方々に提供するということになります。ここが現在紙媒体で行われております、いわゆる法律に基づきます公衆縦覧に当たる部分でございます。従来は、その公衆縦覧の部分だけだったわけでございますが、加えまして、EDINET導入後は、開示情報はインターネットを通じて広く提供されていくことになるわけでございます。これによりまして、投資家等の企業情報への迅速かつ容易なアクセスが可能となりまして、証券市場の活性化、効率化、ひいては市場メカニズムの一層の発揮に資するものと考えているところでございます。
なお、現在、開示書類の公衆縦覧というのは財務局の閲覧室、証券取引所、証券業協会及び提出企業におきまして、書類を備えて行われておるところでございますけれども、電子化された後におきます公衆縦覧の法律的な位置付け等々につきましては、さらに検討していきたいというふうに考えております。
適用時期でございますが、先程申しましたように、段階的に書式を拡大していくということを申し上げたところでございますけれども、EDINETにつきましては、次期通常国会におきまして、現在紙媒体を前提とした規定になっております証券取引法におきまして、電子化を採用するに当たりまして必要な法改正を行いまして、通常国会にお諮りしたいというふうに考えております。通常国会で御審議いただきまして、お認めいただきますと、1年程度の周知期間を経まして、平成13年3月期決算に係る有価証券報告書等から導入していきたいというふうに考えているところでございます。
なお、これに関連いたしまして、現在有価証券の募集等に際しまして、証券会社等は発行体の事業内容等の情報を投資家に提供するため目論見書というものを交付しているわけでございますけれども、これにつきましても、投資家保護の観点から問題のないように一定の条件の下で認めていく方向で検討いたしまして、証券取引法について併せて改正を行いたいというふうに考えているところでございます。
私からの説明は以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ただいまの説明に関しまして、何か御質問ございますか。御意見も頂戴したいと思いますが。
どうぞ、上柳さん。
○上柳委員 大変便利になるということで、ありがたいというふうに思うんですけれども、二つ質問というか懸念がありまして、一つは、これは電子情報提供全般に係わることで、今回の法律改正で入れる必要はないのかも分かりませんけれども、特に最後の利用者が見るときに、本当に金融庁なりあるいは財務局の情報なのかどうかというところの認証というのか、作成の真正の確保というのか、そこが工夫が必要なところだろうと思うんです。もちろん紙の媒体でも偽造したりできるわけですけれども、電子情報になると余計にやりやすいというか、少し知恵の働く人だと、いわゆるなりすましができる可能性があるので、そのところを特に証券取引法の中にでも措置をとられるのか、対応をとられるのかどうかということ。
それから、もう一つは、目論見書交付の問題で、これはすごくざっくばらんに言えば、今までよりも簡便に交付できることになって、利用者がその目論見書に触れる機会が広がると思いますので、私は全体的には賛成なんですが、とは言っても、交付したかどうか、あるいは、「ここにはないけれどもお客さんのところのコンピュータですぐ見られるんだから見ておいてくださいよ」というような言い方になっちゃう危険性を感じていまして、これも、それこそ会議録全般の問題で、今回の改正で考える範囲ではないのかも分かりませんが、何か考えておられるのか。その2点をお伺いしたいと思います。
○蝋山部会長 よろしくお願いします。
○大藤参事官 まず第1点につきましては、セキュリティーでありますとかそういうことにつきましては、私どもとしても重要な要素だろうというふうに考えておりまして、まさに具体的な検討を進めているところでございますが、例えば有価証券報告書等提出会社からこちらに提出していただく際に、登録していただいた上で暗証番号等を活用するなど、現在の技術等々でできる範囲で万全を期していきたいというふうに考えております。
それから、目論見書に関する部分でございますが、これにつきましても、投資家保護の観点から問題がないように、一定の条件の下ということを考えておりまして、例えば投資家からこういう条件で紙媒体によらないということを了解を得たということを何らかの形で記録することができるようにとか、そこら辺につきましては、一定の条件の下、投資家保護の観点から問題がないように検討していきたいというふうに考えております。
○上柳委員 もちろん前者の方は、提出の方は、割と数が多いにしても限定されているのであれだと思いますけれども、最後の発信といいますか、利用者の利用の方ですね。ここのところはいろいろ技術的に多分工夫されるんだと思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
○蝋山部会長 ほかに御質問、御意見ございませんか。
どうぞ、柳川さん。
○柳川委員 私も、こういうふうなシステムになって便利になることは大変ありがたいことだと思っております。
一つ御質問させていただきたいんですけれども、データベースの保存方法なんですけれども、これは最終的に磁気ベースで全部保存されていくお考えなのか、それとも紙ベースでも保存を考えていらっしゃるのかということをお伺いしたいと思っていまして、磁気ベースも保存方法によるんですけれども、場合によりますとハードディスクなんかに入れておきますと、なくなってしまう可能性がありますので、紙の方がそういう意味では保存がきくのかなという気もしますが、磁気ベースの保存の仕方にもよるんだと思いますが、その辺のお考えをお聞かせください。
○大藤参事官 基本的には磁気ベースで考えておりまして、例えばバックアップをいろいろな形で取るなどという形で考えております。補完的な意味で紙も行うかどうかというところあたりは、また今後の検討だと思っておりますが、基本的には磁気ベースでの保管を考えております。
○蝋山部会長 ほかにございませんでしょうか。
基本的には、EDINETの導入ということはマーケットにとっても改善の方向……。
どうぞ、関さん。
○関オブザーバー 今、上柳委員が指摘された二つのポイントというのは、私も非常に重要だと思うんです。特に第2点につきましては、投資勧誘ルールという議論を今しておりますので、最終的に投資勧誘のときに、電子化という新しい技術をどういうふうに適用していくかということの明確なルールというのは、ぜひはっきりさせておいていただきたいというふうに思います。そこのところは、今、上柳さんが指摘された顧客の方の立場もありますけれども、投資勧誘をしていく業者の立場ということもありますので、その辺はぜひ明確にさせていただきたいと思います。
○蝋山部会長 基本的にまだ問題はあるかもしれませんけれども、大きな流れとしては、このシステム導入ということは結構なことだというふうに考えられますので、ぜひ精力的に、13年度からの実施が可能になるような万全の準備をお願いしたいというふうに思います。
それでは、次の議題に入らせていただきます。
裁判外紛争処理制度のあり方についての審議でありますが、初めに、ディスカッションを始める前に、原委員から、消費者の視点に立った裁判外紛争処理制度のあり方について御報告をいただき、御提案をいただきたく思います。その上で引き続いて、大内相談員より、わざわざお越しいただき大変ありがたいわけでありますけれども、実際の金融関係の消費者からの苦情・相談というのはどんなものかということについてのお話を頂戴したいというふうに思います。合計30分程度を用意しておりますので、よろしくお願いいたします。
では、原さん、どうぞ。
○原委員 宿題として出されたのがちょうど1カ月前で、実は私どもの会の35周年というのが明日やる予定で、記念のシンポジウムとか懇親会とかを企画して大変忙しい時期だったものですから、既存のものを活用して、今の時点で考えられるということでまとめてまいりました。今日は、私としては提案という形でお願いをして、皆様からの御意見をお聞きして、再度、消費者からのきちんとしたこういう形ということを提示したいというふうに思っております。
資料としては、私のメモ的なレジュメ、第一部会17−2というものと、それから17−3ということで、これは関連の参考資料、それから説明のためということで、机上の配付の資料ということでもう1冊付けさせていただいております。これらも適宜使いながら20分程度で説明をしてまいりたいというふうに思います。
最初に、金融審議会の第一部会で裁判外の紛争処理ということについては、中間整理の段階でも取りまとめられておりまして、これはホールセール・リーテイルのワーキング、今年前半の議論のところで、上柳先生が多分まとめられた箇所になるのではないかと思いますけれども、一応そこでの取りまとめというのを、17−3の資料1のところに付けさせていただいておりますが、この中の1ページの中段のあたりで、裁判外の紛争処理制度の必要性が書かれていて、「中立性と公正性の確保」という言葉ですね。それから、もう一つ「本WGで」というところの段落で、「統一的・包括的な紛争処理制度」という、この二つが私としては大きな論点ではないかなというふうに思っておりまして、あと細かく、こういうことはどう考えていきますかというのは、私の後半のお話ともダブりますので省略をいたしますけれども、ここで一応そういったシステムが必要であろうということの指摘は中間整理でも出されております。私としては、さらにつけ加えて、早急に具体化をしていただきたいということを、この中間整理の上に付け加えさせていただきたいと思います。
それから、その次に、それでは裁判外の紛争処理制度というふうに一括して言葉を使っておりますけれども、これがどういうものかということなんですが、これについては、その次の資料2ということで、これは経済企画庁が消費者契約法の議論を足掛け5年やっておりますけれども、その中の一環として、昨年ですけれども、「消費者取引をめぐる紛争解決に係わる緊急調査」というのをやっておりまして、これ自体はまた1冊の報告書になっているんですが、その中から抜き書きでこれ1枚だけを付けさせていただきました。そうしますと、消費者側から見るとどういう紛争解決の場面があるかということがよく分かるかなと思って付けたんです。
まず、〔1〕では相対交渉ですね。これはごく一般的にやられております。
それから、〔2〕のところで裁判外の紛争処理ということで、○が二つ付けてありまして、あっせん・相談、調停というものと仲裁、これは裁定型ですけれども、この二つに分かれると。あっせん・相談、調停のところがまた分かれておりまして、行政機関によるものと、それから民間機関によるものというふうに、それから弁護士・弁護士会による法律相談というのが行われておりますけれども、そういったものが含まれる。もう一方が仲裁ということで、最近注目を浴びておりますシステムですけれども、仲裁という裁判外の紛争処理があるということです。
〔3〕は裁判上、それから〔4〕は行政機関による規制と、こういったもので私どもの消費者紛争というのは解決の道筋があるということをここで見ておいていただきたいんです。
特に〔2〕の裁判外の紛争処理というものについては、積極的にこれから広がっていくということが見込まれています。特にアメリカで顕著で、アメリカは訴訟社会というふうに言われていますけれども、余りにもあそこは訴訟という手段に訴えることが多いということで、それのバイパスというとおかしいですけれども、また別ルートでの解決ということで非常に需要があるということで、アメリカでかなり浸透している。
日本は、日本の裁判というのは時間がかかる、手間がかかるというようなところで、消費者としても今すごく使いやすいという状況ではないので、司法改革は一方にありますけれども、第三者が入る解決であれば、こういったあっせんですとか仲裁という形を望むという意見も強くありますので、日本の土壌の中でもこの形態は増えていくのではないかなというふうに思います。
ただ、課題としては、だんだん訴訟の方が先細りになるのでは三権分立の意味もありませんので、訴訟との役割分担ですとか、それからADR(裁判外紛争処理制度)のレベルがばらばらといったような問題が出てきておりまして、これは全体的な課題ということで、今日、特には説明はいたしませんけれども、席上配付資料の参考添付ということで、日本弁護士連合会が「自由と正義」の今年の4月号に3人の方がいろいろな御意見を書いていらっしゃいますので、それはまた後で御覧になっていただきたいというふうに思います。
その次に、それでは具体的に〔2〕に係わる消費者と裁判外紛争処理制度というもので、消費者に身近なものをそこに時系列的に六つ並べておきました。これはそれぞれ全部資料を付けておきましたので、これも後で御覧になってというふうになりますけれども、二つぐらい説明をさせていただきたいのが、最初の行政機関における消費者被害救済委員会というものの存在をちょっと押さえておいていただきたいと思いまして、席上配付資料の資料1、東京都消費生活条例から抜粋をいたしまして、そこにずっと関連資料を付けているんですが、4ページを御覧になっていただきたいと思います。これは東京都の消費生活条例に基づいて設けられている委員会です。実際にここでやられていることというのは、消費生活センターなどに上がった苦情とか相談のなかなか解決がつかないもの、それを知事に上げて、知事が付託をする形で。というのは、その人個人の紛争解決というよりは、ココ山岡みたいなこともありますけれども、ある程度公的に事案として取り上げた方がいいというふうに思われるようなものを救済委員会の方に付託をして、あっせん部会、調停部会、訴訟援助部会ということでおやりになっていらっしゃいます。もう20年ぐらい歴史がありまして、私はこのあっせん部会のメンバーです。
実際にどれだけのことをやってきたのかということが、5ページに事業実績を付けております。17件これまで取り上げておりまして、ここであっせん成立のようなものは、訴訟援助ということも含んでおりますので、訴訟援助も5件これまでやっております。
私としては、後段の話になりますけれども、行政機関のこういったシステムと民間型のADRとの共存というのを考えておりますので、一つこれを説明の資料として付けさせていただきました。
それから、製造物責任法に絡んでのPLセンターですとか、弁護士会による仲裁センターは御存知だと思いますので省かせていただいて、その次の4番目の・の住宅紛争処理支援センターと指定住宅紛争処理機関というのが、今年の6月からスタートしております。これは、第一部会17−3の方の資料3ということで4ページを見ていただきたいと思います。
私としては、金融サービス法と並行した形で裁判外紛争処理制度ができることを期待しておりますので、そういう意味では住宅関連の、次の5ページというところをあけていただきたいんですけれども、これは−−すごく資料が多くて申し訳ありませんが、住宅の品質確保の促進等に関する法律というのが今年の6月に公布されております。それと併せてこういった住宅紛争処理検討協議会というのが設置をされまして、その中に、技術的な検討課題もあるんですが、もう一方の柱として、住宅紛争処理支援センターと指定住宅紛争処理機関というものが動くということになりました。それは、その後ずっと資料を付けていますので見ていただきたいんですが、9ページのところを見ていただきたいんですが、仕組みとしてはこういう形になっておりまして、住宅紛争処理支援センターというのが運営費用を集めるということで、そして指定住宅紛争処理機関、これは全国50機関ぐらいを考えているんですが、そこに助成金を出す形で紛争処理をやっていこうということです。
ただ、問題は、指定住宅の評価をした住宅に限るという、だから全部の住宅ではないので、ちょっとそういった限界はありますけれども、法律と同時に施行したという点では参考になるかと思いまして付けさせていただきました。
それから、その次の全国銀行協会と弁護士会仲裁センターは、皆さん関係者ばかりですので、資料としてはお付けいたしましたけれども説明は省かせていただきます。
それから、イギリスのオンブズマンの制度も9月3日の資料として付いておりますので、今回も付けさせていただきましたけれども、紹介は省かせていただきます。
いよいよ本題のところで4番のところからなんですが、ここを重点として話さなければいけないんですが、まず、今度は資料なしで、私のメモ書き的な17−2だけに基づいてお話をさせていただきます。金融商品に係る裁判外紛争処理制度ですが、私としては、消費者行政でやられる形と民間型のADRの共存を考えています。というのは、民間型がどういう形でできるかは分かりませんけれども、抜け落ちてしまうものを網羅するという意味。それから、個人の解決ということではなくて、公としての解決を望みたいものもありますので、これは共存をしていただきたい。
それから、民間型のADRはできるだけ統一・横断的にですね。これについては、今は保険・証券・信託・銀行というふうに分かれていますが、これらもすべて統一をしたぐらいのレベルで考えていただきたいと思います。
それから、中立性、公正性については、いろんな形での確保ということを考えていただきたいということです。
ただ具体的に、本当は?の第2ステップとして目指すべき方向でお話をしたいのですが、一足飛びにそこまで行くというのはとても難しいかというふうに思いまして、第1ステップとしての既存のものの見直しと、それから、第2ステップとしての目指すべき方向というふうに分けてお話をさせていただきます。
いろいろ9月3日に各業界からお話はお聞きしたんですが、いずれも余りうまく機能していないというのが私の印象です。なぜそういうことになっているのかということなんですが、まず、苦情・相談というものを把握をしていらっしゃらない。そういう体制がないということが一番大きな問題です。全国各地で受付を可能にする。それから、消費生活センターに上がったデータをまた寄せていただく。それからもう一つ、これは大内さんの方からもお話しになると思いますけれども、もちろん銀行のよろず相談所とかいろいろあるんですけれども、相談員の人が関係の業界の人ではだめなんですよね。やっぱり消費者でないと、というか消費者の相談の専門家でないと、「えっ、こんなことも消費者は知らないの」ということで切られるケースが非常に多いということで、相談は、ここは外部の消費者相談の専門家に入ってもらう。よろず相談所も1年ぐらい前から、たしか外部を入れていらっしゃると思うんですが、それが大前提であろうと思います。
それと、調整とか仲裁機能ということですが、証券はまだ中に入れていらっしゃいますけれども、信頼性とか透明性のことを考えると、銀行協会がおやりになったように外部に出されることの方が賢明であろうと思います。
それから仲裁などに上げるかどうかということは消費者の希望を優先し、決定に当たっては相談員の意見を配慮するという。これは説明を省きましたけれども、PLセンターなんかで裁定に上げてほしいとこちらの消費者の方が思っていても、上がってこないんです。すそ切りみたいなことを業界から出てきていらっしゃる相談員がやっていらっしゃるものですから、どうしても消費者が本当に一体裁定に上げるということを希望していたのか、していないのかも分からないままで切られているということが多いですので、これは相談員の意見を配慮すると。
それから、仲裁などの入り口に入るのに事業者側の合意を必要としないという要件にしていただきたい。これは弁護士会、一番最初にスタートしたのは二弁ですけれども、仲裁センターがスタートしたときからずっと私は報告会に参加をしてお話を聞いているんですが、やはり両当事者の合意で入り口に入るのが原則なので、事業者がやっぱり入るということに合意をしないですね。で、どうしても案件が伸びないと。住宅関係も、今度は新しいシステムがスタートしますが、もう一つ過去からあるシステムがあるんですが、これも両当事者の合意なものですから、中に入らないということが原因です。
それから次に、事業者側に情報提供義務を課していただきたい。私どもは、簡易にこういったシステムが利用できるということで、簡易・迅速ということでこの入り口に入りますけれども、証明責任のところがちょっとよく分からないままなんです。持っているものは全部持っていきますけれども、事業者側は記録保持義務ということで、記録保持したものを全部出すということを義務としてやっていただきたい。住宅紛争処理支援センターで住宅関係が今度スタートしますが、これは情報提供義務を課した形でスタートしております。
それと、銀行協会は、マスダさんに来ていただいて私も説明を受けたんですが、後で考えたのが全体のチェック機能です。イギリスのオンブズマンなんかは、オンブズマンというシステムがありますけれども、ではそこにオンブズマンとしてだれが適当であるかとか、どういう案件の処理をしているのかということを、評議委員会というのがあって、事業者4、消費者4、それから学識経験者4だったと思いますけれども、その構成で全体の機能のチェックをしていらっしゃいます。やはりそういうチェック機能がちょっとまだ欠けているのではないかなというふうに思いまして、これをやっていただきたい。
それから、そこで出てきた結果ですけれども、この結果を、消費者側は拘束せず事業者側だけの拘束とするか、それとも両方とも拘束をしないという形で裁判へ行ける道を残すのかというところなんですが、これは私としても、何がいいというところまではちょっと決めかねておりまして、ここの議論は全体のところでもあるんですけれども、私としては、イギリスのオンブズマンのように消費者は自由、だけれども事業者は拘束をしてほしいというふうに思うんです。ところが入り口のところを、事業者は有無を言わせずこの入り口に入りなさいというふうにして、その結果も有無を言わせず負いなさいとなると、何か非常に事業者に厳しいかなというような感じもして、事業者に有無を言わせず入ってもらうんだったら、両方とも結果拘束をしないという形もあるかなとは思うんですが、そうすると、ミニ裁判みたいなことで余り意味がないというような感じもしておりまして、ちょっとここは判断が迷っております。
それからもう一つ、銀行協会の仲裁と弁護士会の仲裁のところで気になったのが、申し立てたときの調査ですね。これは立証負担とも関係するんですけど、一体どこが負うことになるのかなということ。どこがそういう作業をやってくださるのかなということが不鮮明で、このあたりもちょっと明確にしていただきたいというふうに思います。
それから、あと5分ぐらいで話しますが、最終的に目指すべき方向ですが、私としては統一・横断的で外部に出したシステム。前段階として、苦情・相談体制の充実、全国どこからでもアクセス可能。それから、相対主義というのを前置なさると思いますけれども、これもイギリスのオンブズマンを見ていると、オンブズマンのところに来る前に、実際に事業者とトラブルの交渉をして、それがこういった状態になったら持ってきなさいというふうな形になっていますけれども、これは今の日本でやると、きっとぐちゃぐちゃな感じになっちゃうので、大内さんからも話していただけるかと思うんですが、あくまでも相対主義前置だとしても、この苦情処理センターに入れて、そこが間に立って相対主義、事業者との交渉をするということをやっていただきたいと思います。
それから、ADRについてですが、これはあっせん・仲裁など複層システムにする。消費者の希望優先、振り分けは相談員も含めて検討。仲裁は弁護士一人体制にするのか、それとも合議ですね。合議というのは、イギリスのオンブズマンはとにかく弁護士的な人たちの3人ですけれども、日本の形で言えば事業者、弁護士、消費者でいいかと思うんですが、そういった合議制にするかというところの選択制があってもいいのかなと思います。
それから、こういったところで非常に難しいのは、専門性の付与ですね。これはどうしても中立性と相反するようなところなんですが、信頼性のためには欠かせなくて、これは仲裁センター(二弁)が助言人規定というのを持っておりまして、こういったものが参考になるのではないかと思います。それから、証明責任をどうするかということの議論も詰めておいていただきたい。結果拘束は先程話しました。
それから、結果の公表なんですが、これが、仲裁センターを信託協会もやられるようですけれども、弁護士会との仲裁を選ばれるというのは、仲裁でやれば、結果は裁判と同じような効力を発揮をして、その上に秘密保持ができるからということが理由のようなんですけれども、私としては、結果は公表していただきたい。ただ、もちろんプライバシーには配慮した形でやっていただきたいと思います。
ここでの費用は、全銀協がおやりになっていらっしゃる「和解で支払われた場合のみ弁護士費用折半」で妥当ではないかと思います。
それから、全体的なADRの運営とそのコスト負担についてなんですが、仲裁費用は上記のとおりでいいと思うんですが、相談、調査、運営費とかを考えると、これは本当は相当な予算になるというふうに思っておりまして、それをどういうふうにやっていくのかということの議論がまだ余りされていないように思います。全銀協さんは1件2.5万円ぐらいでやれるのではないか。外に出した方がコスト的にも割安ということなんですが、今年度の後半で
300万の予算を組まれているんですが、本当はとてもそんなものでは済まないというふうに思っておりますので、ここのところをどうするのかということです。
それから、全体的な運営に第三者を交えたチェック機能を設ける。
残されている課題なんですが、横断的にというふうに申し上げましたけれども、これがどこまで可能か。それからコストの予測なんですが、これは住宅関係のところは資料にお付けしましたけれども、かなり細かいコスト予測をしていらっしゃいまして、それはなぜ可能かというと、住宅費ってそれほどむやみに増えはしないですよね。だから量的な把握ができるということからコスト予測がある程度可能なんですけれども、金融商品の場合は、どういう形でのコスト予測ができるのかな。だからそれをどこで賄っていくのかという意味でも、ここはかなり大きな論点ではないかと思います。
それと、もう一つは、イギリスのオンブズマンの制度を見ていらして、お話もしていらっしゃった方のお話を聞きますと、この運営を担う事務局スタッフというものが物すごくしっかりしているわけですね。この人たちの人件費部分もありますけれども、仲裁人みたいなのはどこからか持ってこられるということなんですけれども、事務局スタッフの育成ということが残っていると思います。
あとは金融監督庁との連携ですとか、消費者団体の訴権の検討ということも補足させていただきました。
私としては、国民、関係機関などからの意見を求め、法律的な位置付けをしてスタートをしていただきたいというふうに考えております。
ちょっと20分の話が30分になりまして恐縮ですけれども、またお話をいただきたいと思います。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
いろいろ御質問等も後で頂戴して、その際にもまた御意見を頂戴したいというふうに思います。
続きまして、大内さん、実態についてよろしくお願いします。
○大内消費生活相談員 私は、週4日、足立区の消費者センターで、非常勤職員として消費生活相談業務に携わっております。また一方で、社団法人全国消費生活相談員協会の会員です。平成4年、5年に、協会では「銀行等消費者トラブル110番」というのを、消費者月間に全国6支部ということで実施させていただきました。そのときの私、関東のまとめ役、責任者をしておりました。
そこで、今日、消費生活相談の現場から実態、利用者たちがどういう形でのトラブル、それについての対応はどうされているかということをお聞きいただけるということで、貴重な時間をいただけるということをとても感謝しております。時間も限られておりますので、今日、私の役割は、原さんの方で御説明になっていらっしゃいました紛争処理制度のための、例えば行政の部分の窓口の部分、それから民間型と共存するときの入り口の部分ですね。本当に先端で私たちは日々相談を受けている。そこで感じている部分を、結論から申し上げますと、かなり金融機関の方たちとか関係の省庁の方たちとの知識差、情報差、感覚の差というものを感じております。皆さんが感じているよりも、一般の利用者・消費者というのは、とても私の立場で言うのは残念なんですが、まだまだ自立した消費者とか、自己判断できて契約書面を理解するような形には育っていないのが現状です。できるだけ努力はしているつもりではいるんですが、まだまだ日本型の消費者。つまり、任せておいて説明のままに契約してしまう消費者像というのがありますので、今日は具体的に、変額保険などという大きい問題もありましたけれども、それは社会問題にもなっていますので、私はそういうことではなくて、具体的に、もっともっと小さい、こういうものが皆さんの御不満として、苦情として相談として上がっているというような事例をお話しさせていただきたいと思います。
その前に、私どもの協会の方で、8月20日に理事長名で、国民生活センターの膨大な、これは御承知かと思いますが、パイオネット、全国の消費者センターからの相談は全部ここにインプットされているんですが、その相談から具体的な事例を含めて意見書というのを出させてあります。そこにも事例が29ほど入っているんですが、これについては重複しないように今回避けまして、具体的に私が処理あっせんした事案に絞って話させていただきます。
その中で、今年受けた相談なんですけれども、こんな相談がございました。小さい企業を営んでいる自営の奥様、60代の方からの相談で、夫が亡くなった。相続の問題があって銀行の方、いつも来ている方に来ていただいて御相談した。その中で一番気になっているのは、夫名義で借りている住宅ローン。これに関して、通帳がすべて凍結されてしまうので何らかの手続が必要なんじゃないかということで、もう毎週、本当に週に一、二度来ていらっしゃる外務員さんなので、信頼申し上げて御相談申し上げた。「大丈夫ですよ。これはそのまま、相続が終わってからでいいですよ」と言われた。3カ月間、再々心配して息子とともに言ったけれども、処理は終わってからでいいということで半信半疑で待っていた。3カ月後に、この事業を含めてすべての相続を息子さんがなさいました。そのあと、ここの銀行の通帳から、3カ月分の延滞料を含めて住宅ローンの引き落としがされました。
この方が来ておっしゃるには、これだけの信頼関係を築いてきた私どもに対して、この結果に、支店長さんと行員さんが飛んできておわびをしてくれた。タオルを持ってきて、「本当に申し訳なかった。これは自分たちのミスです」とお認めになったんだそうです。ところが、そこで終わりだとおっしゃる。金額的には
1,000円余りの、延滞の料金に対する金利で、全体の住宅ローンに対する金利ではございませんから、金額は微々たるものなんですよ。この消費者の苦情は、とても辛い、夫を亡くした時期。息子がこれから相続して事業がやれるかどうかの時期に、頼りになるはずだった金融機関が、ただ、後で失敗だったとおわびで済むのだろうかということだったんです。
この件に関しては、私の方で銀行の方にあっせんいたしました。銀行の本店の方に顧客相談室がございまして、これが大きく機能した案件です。支店サイドではこの苦情について理解してもらえませんでした。ところが本店の方で、やはり自分たちのミスで被った被害に関しては補てんしなくてはいけないのじゃないかということで対応されましたが、相談員の間では画期的なことという印象でした。銀行はただおわびをして丁寧に「ごめんなさい」ということでいつも終わっている機関というイメージがございます。
ちなみにここの奥様がもっと怒っていたのはなぜかといいますと、この住宅ローンが、全くこの銀行の同一系列の住宅ローンなので、
1,000円ちょっとのものをそんなことするわけではないんですが、共謀してやったのではないかと、そんなふうに本気で思っている。それが消費者像なんですね。
それとは逆に、融資の関連で対応できなかった案件なんですけれども、喫茶店を経営している50代の奥様、御主人様は会社員。そこに顧客として喫茶店をせっせと利用している保険の外務員の方から頼まれた。8年前でしたから、ここの喫茶店はまだまだ隆盛でお金の余裕もあった。そこで頼まれたのは、ゴルフの会員権を全額融資を受けてぜひ買ってくれないかということでした。これは銀行員さんがおっしゃった。この御夫婦は全くゴルフをやらないので、再三にわたって断った。土下座もしそうなくらい頭を下げて、その行員さんは、その喫茶店で再三デートもしていたんだそうですが、結婚したい。自分の業績を上げたい。だから頼むから損はしないんだから会員権を買ってくれと。これはいずれ利殖にもなるからということで、全額
1,000万円近い額の融資を受けてゴルフ会員権を購入。8年間一度も利用はしていない。
そこへ去年、突然ゴルフ場の方から、経営が破綻して、申し訳ないけれども、これについては御自身だけの利用に限るような経営状況になったという文書が来た。ここからが問題なんですけれども、この方は支店のところにすっ飛んで行った。ところが8年の間に、仲良くつきあっていた方たちが全部いらっしゃらない。ここの喫茶店も不況で、非常に資金繰りが苦しいという状況の中で、行ったらば、そんな話は聞いたことがない。ゴルフ会員権に関してはうちの問題ではない。そして、そのときに対応した行員はもう分からない。どこへ行っているか分かるけれども知らせることはできない。これは業務外のことであると言って門前払いされたと。
私、これを2時間ぐらいお話きいていたんですが、ただただ泣き崩れるんです。そして、8年間ですが支払いしてきて、これは10年の契約で、残りは2年ということで、支店サイドに御連絡を取ったら飛んできてくださいました。この対応は本当にうれしかったです。銀行110番のときにいろんな思いを私はしましたが、この間、銀行関連の方たちの御努力というのはすごいなと、このときには思いました。よくよく話を聞いてくださいました。支店サイドでは、本人の希望は、どう考えたって元本は減額は無理であろうと。契約書面も取り交わしているし、いろんなことがあると。だけれども、これから払うべき2年間の金利については何らかの優遇制度を受けてもいいのじゃないか。というのは、借り入れたときに8.6%の金利で8年間お払いになっているんです。銀行はそれだけ御商売なさっているわけですよね。これからの2年間を、金利が下がってきたということで、たしかそのときは、7.6%の金利。いろいろいろいろ妥協していって、当事者はできるだけ低い金利に、せめてお気持ちを、悪いと思ったら銀行の気持ちを示してくださいということで、私が話している中で、支店サイドはこういう販売をやったことを行政に対してお認めになりました。そして、優遇制度をしたいとおっしゃった。
ところが急転直下、どんでん返しで、一切あっせんには応じられないということで終わりになりました。なぜかということは、こういう販売を8年前から五、六年前までにかなりの量の契約をこの銀行が取っていたというのが理由です。なぜならば、この1件を対応したらば、ほかへ普及して、これは成り立たないからだめだというようなことで、私どもは弁護士さんとは違いましてあっせんです。この方に弁護士相談も紹介もいたしました。でもこの方は小さい事業をやっていまして資金繰りが苦しいですから、その金融機関に融資の申請を出していたんです。そこで、彼女は非常にさっばりした気持ちで「ありがとうございました」と私にむかっておっしゃったんです。それで、「このままでよいです。」とおっしゃるのです。なぜならば、こんなふうに全部、「あなたはばかだよ」とか「そんなの当たり前じゃないか」という説明をしないで、消費者センターの相談員が自分と一緒になって、同じ立場でこの半年間、一生懸命話を聞いてくれた。そこが私はうれしかったし、ちゃんと考えて契約しなきゃいけなかったという自分のミスにも気づいたということでした。これは何もできないままに終わった案件です。
いろいろな事案をたくさんお話ししたくて持ってまいりましたが、もう話し出すと長くなりまして、時間の制限もありますので、これ以上、例えば保険に関して、証券に対してというのも持ってきたんですが、簡単に述べさせていただきます。
一番私どもからすると、手前みそですが、平成四、五年の110番からよろず相談所とも連携を取りながら、非常によい形で改善−−改善と言ったら失礼なんでしょうか。金融機関の中ではいち早くシステムができている銀行の相談が今のような状態です。証券の部分では、業界1位、2位と言われる会社への苦情で、まだ、つい最近ですが、無断売買の相談を受けています。私どもであっせんさせていただいて、それをお認めになった。行政が入ると、ほかの業界であれば、できるだけ迅速にお金を処理していくという約束ができるのに、再三行政に対しても引き延ばしをされまして、私は信じていたんですが、処理がされないままに1カ月、日々過ぎていったという事案でした。なぜかというと、その証券会社のファイナンシャル・プランナーがその月末に定年退職するために、身分を保障したかったという本音が出てきた。そして証券業界には、先ほど申し上げたような顧客相談窓口としての独立したものはありません。
それから、保険の相談なんですが、ここは全く逆で、私どもから見ると銀行業界よりも先に独立した顧客相談窓口のとても優秀なものが、大手の保険会社さん、殊に生命保険会社さんにはあります。そして、かなり消費者に対する苦情に対する対応を迅速にというシステムができていましたが、いろいろな状況があるんだと思います。一相談員としては分からないんですが、残念ながら、近頃そこが銀行とは逆に、非常に後退状況になっております。
保険の相談で一番私がショッキングだったのは、去年受けた相談で、30代のサラリーマンが、よくよく最近でも行われている会社に来ている外務員との関係なんですが、そこで自分は保険に入った。ところが知らない間に保険の契約がなされていて、引き落としがあった。そこで苦情を言ったら、「ごめんなさい。自分の部下の新人のノルマが達成できないから名前を借りたの。解約してお金を返すから」と、一回はそれでそのまま見過ごした。ところが半年後に、それが相談のときなんですが、3件立て続けに自分の知らない引き落としがあった。そこでクレームを言ったらば、再三保険の会社の方では引き延ばしされた。それは営業サイドの一連のトップとの話し合いをしてもだめだった。これは警察に行ったらいいか、消費者センターの方がいいかということでいらして、保険会社と話し合いを持ちまして、それも全面的にお認めになりました。自分の部下の新人の外務員が印鑑を偽造しまして3件の契約をした。そこで、これは全部代金も返しまして原状回復というのでしょうか、もとの状況には戻しました。
そこで申し上げたいのは、私どもはあっせんですから、その中でその外務員さん、印鑑偽造までしている、法律違反までしている方の処遇について再三お話し合いをしたんですが、これは企業の内部に対する行政の越権行為だということで、非常に実績を上げている外務員さんに関してはおとがめなしというような状況で、お約束されたのは、相談員業務をやっていらっしゃる役職者から、自分は本音で言えばおかしいと思っています。変えていかなきゃいけないと思っていますと。でも今の現状ではでき得ないので、これを基本にして、中で一生懸命言ってみますというようなお話がありました。
これは各業界について、私どもの相談業務から見て一番嫌なような事案を申し上げましたが、もうちょっとお時間をいただいて、ここで行政の相談員がこういうことを申し上げて終わりにしてしまうと、もう消費者センターとの連携なんてとんでもないと、かなり過激な告発ばかりしていると思われてしまうととても私も困るので、逆の部分で御説明させていただきたいと思います。
相談員が入って、逆に業界の方たちから、事業者から喜ばれている例が多々あります。それは、嫌な言葉ですが「クレーマー」と称するような方たちがいることは事実ですね。金融機関にもクレーマーと言えるのか、高齢者のぼけと言えるのか、違いというか、そういう相談も入ってきます。消費者センターが入ることで、第三者機関ということで消費者が納得するんです。業界とか、それから金融機関で言っていて、さんざんもう10年もトラブルにしていた案件が、銀行110番で、それはあなたの思い違いでしょうと言ったところで、ああそうだったのかと取り下げた事案もあります。
最近でやったのでは、高齢者のおばあちゃまが 6,000万、商売をやめて現金を持っていた。このうちの
5,000万を貯金したんだと。ところが銀行の定期預金は 3,000万しかない。これは
2,000万を外務員が着服したんだという相談がありました。この行員さんがとてもかわいそうだったのは、高額の預金をする方なので、いつもそのおばあちゃんのところに行くときは2人で行っていたんだそうですが、その日に限って1人で行っていたところで、現金をもらっていないという立証のしようがないわけです。とても困ってしまった相談だったんですが、おばあちゃまの話をよく聞くと、2回にわたって
1,000ずつ郵便貯金をおろした 2,000万を銀行に預けたということが分かりまして、銀行サイドから郵政省の方に出してくれと言ったんですが、情報を出してもらえなかった。ところが消費者センターでお話し合いをしまして、相談者が郵便局へ行きまして、自分の定期預金の動きをもらってきてもらって、全く
2,000万はなかったんですね。もう2年前にほかの方に使ってしまった。最後までなかなか理解はしませんでしたが、消費者センターの相談員が何回にもわたってこの説明をしたということで御理解いただいた。ここの銀行の支店には非常に感謝されました。
それから、今大きい問題になっております、これはもう名前を挙げてもいいんだと思いますが、日産生命が青葉生命に変わるとき、それから東邦生命の事案のとき。これは消費者は新聞発表であっても、当事者として送られてくる資料でも理解されない方がほとんどなんです。自分がどういうところでどういうことになっていくのか分からない。そういう相談がたくさん入っています。最近では私、今、東邦生命の相談を17件プールしております。というのは、「業務停止」という言葉がまず分からなくて相談が入ってくる。それから、業務の停止の中でも保険金が支払われたり、それから失効されるとかいう状況が理解されないので、これは丁寧に説明した上で、発表があったときにどうするかは御一緒に私が翻訳して説明するお約束をしています。消費者センターではそういう形で。
というのは、業界の生保協会とかそういうところでも丁寧に御説明しているのは私どもも分かっているんですが、トラブルになったときの消費者の心理というのが、なかなか通常とは考えられない行動とか心理状態に置かれます。パニック状態になったり、心身症になったりすると。そうすると、それに近い生命保険協会の説明をきいても、もう頭から疑った先入観とか固定観念があるので、行政の相談窓口の相談員ということで、翻訳して、低レベルの、知識も余りないのですが、相談をあちこちで聞きながらやることで、信頼関係を通じて相談としてでき得ていることもつけ加えさせていただきたいと思います。
かなりお時間をオーバーしてしまったんですが、ありがとうございました。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
大変、実態というのは、あるいは現場で仕事をされている方の御意見というのは、傾聴すべき御意見がたくさんあったというふうに思います。
それでもいろいろ御質問なり、あるいはさらに詳しくお尋ねしたいという方もおられるでしょうし、また、別な観点からの反論のようなものもあり得ると思いますが、できるだけ前向きに議論を進めていきたいというふうに思います。
まず、原さんの御提案に関して、御意見なり御質問なりを頂戴しましょうか。いかがでございましょうか。
井上さん、どうぞ。
○井上委員 最初に、原委員に、これだけ膨大な資料を読み込んでバランスした展開いただいたことを感謝申し上げたいと思います。基本的な現状、それから解決の手法、それから現在どうしても難しい、迷わざるを得ないことを割にそのまま出していただいたように受け止めました。
そこで、一つこれは基本的な方向性、考え方を強く支持するという前提に立って御質問申し上げたいのですが、この第1ステップと第2ステップの関係。現状、これ実際は一本で、第2ステップを基本に本来はイギリスのオンブズマン等の考え方、これを基本にするような形で進まざるを得ない。本来はそういうものだろうと思うのですが、しかし第1ステップ、現状の日本の民間レベルのADRのいろいろなさまざまなものも、結構よく機能している面もあると思うんです。この第1ステップと第2ステップの例えば時間的な、どれくらいの時間をおいてとか、あるいはこれを法制度的に第1ステップと第2ステップをどのように処理するか。それについて少し御質問をさせていただきたいと思います。
○原委員 私が大臣であればいいなあと思うんですが、私が希望してどうなるかちょっと分からないんですけれども、とりあえず私は最初、第2ステップのところだけを書こうと思っていたんです。ただ、いろいろとほかの方ともお話をして、それでも一足飛びに第2ステップには行かないから、今既存のものの手直しというものを前の段階において、それからどうであろうかと、それはすごく現実的なお話ですので、そういう形で提案をいたしました。私としては、やはり金融サービス法の施行と併せてこの第2ステップがスタートしてほしいということが第一の希望です。
ただ、ここで私が書いていることは、今、既存のものがやっているものとは随分違う、大がかりな話なんです。苦情・相談自体からシステムを外に出して、それでやろうというふうなことを考えておりますので、今、銀行協会とか信託さんが弁護士会と組んで仲裁をちょっと設けてみましたというようなレベルとちょっと違うので、これが例えば半年後とかというのはやっぱり難しい。2年とかそれぐらいのことは必要ではないかと。
もう一つが、できるだけ統一・横断的にというのを掲げて、保険・証券・銀行ぐらいの壁は外してというふうに思っておりますので、そこの話し合いというのもどうなるのか。それから、横断的とコストの話ですね。それから事務局スタッフの話で、やっぱり2年とか、3年は待ちたくないんですけど、それぐらいはかかるかなというふうに思っております。
第1段階のところは、これはやろうと思えばそれぞれの業界団体ですぐに、今もお話にありましたけれども、保険はそれぞれ各企業の中に相談部門なんかを持っていらっしゃいますから、それから生保協会などもありますから、やろうと思えば次のステップにすぐに踏み出せそうですよね。それから、銀行さんはやっていらっしゃって、私としては第三者的なチェック体制をかけられればいいかなというふうに思いますし、信託さんもおやりになっていらっしゃるので、ここに掲げられていることは、それぞれ数カ月か半年ぐらいの結論でスタートはできるのではないかなと、第1段階はそう思っております。
以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ほかに、宮部さん、あるいは石戸谷さん、何か御関連のことで御意見ございませんでしょうか。
○石戸谷オブザーバー では、2点ほど感想ですけれども、一つは、消費者のトラブルの分野は非常に広範囲にあるわけですけれども、裁判実務を担当している者の大ざっぱな印象からしますと、金融の分野というのは非常に解決しづらい分野なんです。まずもって、ほかの分野ですと、例えば裁判をやっていて、裁判官がある程度心証をとって和解を勧告すれば和解で解決するといったようなことは普通に行われているんですけれども、金融の分野については、なかなか和解勧告しても和解そのものに応じないと。調停に付すと言っても調停に応じないと。判決が出れば、ある社などは敗訴判決が出れば必ず控訴すると。高裁でも和解に応じないと。高裁で幾ら幾ら払えというふうな判決が確定しても払わないと。しようがないから強制執行するわけですが、その段階になってようやく払ってくれると、こういうふうな現状にあるわけでして、ちょっと金融の関係というのは、裁判自体がそういうふうに非常に解決に難航しているのであって、それと全く別に話し合いで解決しましょうみたいなシステムを作って果たしてうまくいくのかというのが、実態から考えると一つあります。
もう一つは、裁判外紛争処理制度を考えるときに、やはり自主規制機関との関係というのをよく考える必要があるのじゃないかなと思うんです。一つには、自主規制機関という監督機関という担保があるので、先程のような場合に、申し立てられたらば紛争解決のテーブルにのる・のらないというものの義務付けであるとか、あるいは勧告が出たときにそれに従う・従わないというものの義務付けであるとかといったようなものが、そのテーブルが設定しやすいという面が一つあるのと、もう一つは、もちろん紛争処理制度ですから、紛争の解決というのが第一義的に目指すものだとは思うんですけれども、それだけではないと思うんです。紛争というものの中で、何かふぐあいなところというのが分かる端緒になるわけでして、それがたまたまその社と利用者側の言ってみれば偶発的・個別的な問題であったのか、あるいはその社全体の営業活動の問題であったのか、あるいはもうちょっと構造的にその業界の問題であったのか、ルールのふぐあいがそもそもあってそういう紛争が発生しているのかというものがいろいろありまして、それを非常に早く探知して、検討して、改善するというふうなもので大きな役割を果たすことができると思うんです。
イギリスのオンブズマンで思いましたのは、イギリスでビッグバンと同時に年金改革もやったものですから、かなり大きな改革で、個人年金事件という非常に大きな金融トラブルが起こりまして、現在
200件ぐらいの被害が出ているわけですけれども、あれも当初は保険オンブズマンの方にぱらぱらと出てきて、それが個別的な問題であるのか、もうちょっと大きな問題であるのかというのが当初の頃は分からなかったようなんですけれども、どうもこれはやってみると、個別・偶発的なものがたまたま重なっているというものではないと。もうちょっと構造的なものだというのがだんだん分かってきて、それと同時に、オンブズマン体制ももうちょっと何とかせないかんみたいなことがあって、PIAオンブズマンというのを別途立ち上げたり、あるいは個人年金事件の全体解決のスキームというのを生保業界で立ち上げて、現在FSAでもそれをバックアップして、ホームページなんかを見ると、「ここに届けなさい」みたいなことが書いてあるわけですけれども、そういうふうな形で非常に前向きな制度の見直し等の役割を大きく果たすことができるので、単に紛争の解決だけを念頭に置いた第三者紛争処理機関というのはどうなのかなというふうに思っております。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
宮部さん、何か一言ございませんか。
○宮部オブザーバー そんなにはないんですけれども、感想めいたことで。
いろいろお聞きしていて、非常に重要だなと思うのは、やっぱり外部に出すということと、もう一つは、プライバシー保護との関係はありますけれども、結果内容ですね。どういうようなことが実際にそこで行われていてということが外部から見て分かるようになっているということは、非常に重要かなというふうに思います。PLセンターとかで、実際に業界毎とかでいろいろ設けられていたりするらしいんですけれども、そのことについては、余り外部から見てどういうようなことがされているかよく分からないということが結構実情としてあるようですので、余りそういうことになると結局、石戸谷先生がおっしゃったような、その結果を役立てていくということにもなかなかつながりにくいという面があるでしょうから、その2点は非常に重要かなというふうに思いました。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
京藤さん、どうぞ。
○京藤委員 非常にお二方のお話を感銘深く伺ったのですが、制度的にはそんな方向かなと思ったんですが、私がこういう民間型のADRの問題とかそういう問題を考えるときに、こういう分野で一番問題というのは、こういう制度を設けて、商品がいろいろ多様化して高度化すると、紛争というのかトラブルが増えるだろうと。そういった場合に、量的に今の制度の手直しで本当にカバーし切れるのかと。例えば行政機関にしても、国や自治体は余りお金がかかっているので消費生活関係の窓口の方をどうも縮小する方向にあると、そういうことが言われている中で、いろいろ制度があっても、人的に非常に限られたスタッフ、あるいは多少人員を増やしたというだけで本当に問題が解決し切れるような予測が立つのだろうか。
そんな点で、特に原委員には、今の陣容というんですか、制度で予算が全然増やせないという中で、紛争の解決。いろいろな制度設計については専門家がやればある程度できることはあると思うんですけれども、まず、どういうものが問題になっているのか。誤解を解くとか、そういうところで起こるトラブルというのは一体どういう形で処理し切れるのかというのは、私は前々から疑問に思っておりまして、そんな点について、特に量的な観点でどういうふうにお考えなのかということを前々からお聞きしたくて、あとは予算とです。
○蝋山部会長 恐らく京藤さんの御質問は、問題点として十分御認識になっている、コストをだれがどういうふうに負担するのか。それからまた、いろいろな形で、先程の経企庁の緊急調査の類型の中にも、括弧書きその他でいろんな組織の名前がたくさんありますね。何が何だか僕にはよく分からない。どれがどうなのか。大内さんの属されているのは、消費者センターというのはこの中に名前が入っていないですね。
○大内消費生活相談員 入っています。
○蝋山部会長 えっ、消費生活センターが一つなんですか。
○大内消費生活相談員 そうです、そうです。
○蝋山部会長 その辺の関係もよく分からないところがたくさんあるんですが、ともかくいろいろなものがたくさんある中で、どういうふうにその一部分を吸収して−−提案としてですよ。どこのところをどういうふうに代替させるか、どこをどうカバーするのか、新たな部分はどうなのか。そのようなことももうちょっと考えておかないと、費用の面で億10億を重ねるということになる可能性もないわけではないというふうに思います。
どうぞ。いろいろ言いましたが。
○原委員 皆様からの御意見、御感想ありがとうございました。
それで、自分が書いておいて自分で少し質問めいたことをするようなので、ちょっとおかしい感じはするんですけれども、私としても、コストの予測をするときにどれだけの金融商品のトラブル、紛争が上がってくるのかというのは、ちょっと予測しがたいところがあります。これは私、でも余りたくさんだと、本当に社会的コストとしてよくないですよね。だから本当は紛争はそんなには起こらないようにしてほしい。そのための金融サービス法だというふうに思っておりますので、膨大なことが起こるのはやっぱり問題。
そこから二つなんですけれども、一つは、ちょっと時間がなくてはしょりましたけれども、石戸谷先生がおっしゃったように、これは一つ一つの個人の案件の解決ではなくて、やっぱり全体の解決に結び付けていくような、金融監督庁の話をちょっとはしょりましたけれども、少し行政とか業界団体とかですぐに改善命令が出せるような仕組みもセットする必要があるのではないかと。
それから、もう1点なんですけれども、大内さんの話を聞いていて本当にそうだと思ったんですが、業界といろいろな企業とお話をしていると、やっぱりその1件だけで解決をしたいということがあるんですね。それを大きく広げたくはないと。これが仲裁センターが好まれる理由かなと思うんですが、そこでの案件が一応秘密保持で外へ出ない。同じような金融商品、同じ金融商品はいっぱいあるわけですから、その案件がこう解決されたと分かると、どっと殺到する可能性はありますよね。だからその辺は、業界としてはまたどうお考えになるのか。
私はPLセンターに一つ係わっているんですが、そこの裁定委員なんですけれども、もちろん裁定はやっているんですけれども、すごく全業種共通の構造的な問題というのがあって、それは上げられなかったんです。結局上げると、ほとんど全部の商品の問題点となるからで、それは火事だったんですけれども、結局は業界団体に働きかけて警告のビラを商品毎に入れるということにはなったんですが、そういうことですので、一つの案件が全部に波及すると、やっぱり金融商品はまたすごいのだろうというふうに思って、それは仲裁センターが好まれる理由と、そのあたりのことについて業界はどうお考えかというのが、逆にお聞きしたいと思います。
○蝋山部会長 ありがとう考えました。
それでは、どうぞ、野田さん。
○野田オブザーバー 私ども全国銀行協会では、先程原さんの御説明にございましたように、仲裁センターへのあっせんというものをスタートさせました。それとともに、苦情の段階でも従来の実務的にやってきたことを整理いたしまして、きちっとした規則化をいたしまして、銀行界全体として整合性のある苦情処理あるいは紛争処理解決に向けて新しい一歩を踏み出したという段階にあるわけでございます。
幾つか原委員から御指摘がございましたけれども、最後のプライバシーの問題でございます。確かに御指摘のように、案件が個別にディスクローズされるということは、案件の性格によりますけれども、その後の事故防止の抑止につながるというのは確かにそのとおりでございます。ただ、さはさりながら、こういったあっせん・仲裁ということの性格は、すなわち裁判とは違って、ある種簡便というものも優先させたいというようなことから、その場合にはやはりプライバシーを保護するという立場に私どもとしてはどうしても立たざるを得ないと考えておる次第です。
ただ、それでは個別案件がそこでそのまま埋もれてしまってもいいのかということについては、やはりそうであってはならないということでございまして、私ども協会といたしましても、当該案件が苦情の段階にしろ、あっせん・仲裁の段階にしろ、最小限の情報というものは入手いたしまして、それを毎月情報を整理いたしまして、各会員銀行に還元しているということもございますし、金融監督当局にも御報告いたしております。
また、私どもとしては、いわゆる営業推進上、あるいはマーケッティング上、CS活動というのをやっておりまして、これの言ってみれば種といたしましても重要でございますので、先程のプライバシーに関する部分は伏せまして、できるだけ具体例というようなことで情報を還元しております。
また、個別行で申し上げましても、それとほぼ相似形の形で各営業店の現場に、そういった苦情案件というものが日常の営業に可能な限り生かされるような工夫・努力は日々行っているつもりでございます。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
信託協会では、松島さん、制度の資料を配付されていると思いますので、今議論になっているような点をどんなふうに踏まえておられるかというようなところを中心に、簡単にお話しいただけますか。
○松島オブザーバー 信託協会の松島でございます。
9月に制度のスキームについては御説明済みなんですけれども、予定どおりといいますか、東京銀行協会におくれること1月半、11月11日に弁護士会の仲裁センターを利用する形で、信託相談所の苦情紛争処理体制の強化を図っております。内容についてはそのとおりなんですが、今議論の件でございますけれども、もちろん仲裁センターですから、事例の公表ということについては、もちろんそのとおりなんですが、業界内では従来からもそうなんですが、苦情相談事例について、もちろんプライバシーとか個別名は削除するんですが、相談事例の詳細については業界内にいろんな形でフィードバックするというような形で、先程のお話じゃないんですが、前向きな活用にも生かしております。
私どもの苦情紛争処理体制というのは、まだスタートしたばかりで実際の事例はないのでございますけれども、今後大事なこととしましては、やはり周知・徹底・PRというふうに考えております。現時点でも信託協会のホームページ等にも載せておりますけれども、各社ともその辺を努力して、お客様との苦情紛争処理の早期の迅速化を図っていきたい。また、それとともに、引き続き体制の整備というのに注力していきたいというふうに考えております。
直接お答えになりませんけれども、以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
まだほかにもいろいろあろうかと思いますが、高橋さん、どうしてもありますか。どうぞ。
○高橋委員 大内さんの御報告を伺っていて思ったのですけれども、やはり金融機関の現状というのは、苦情に対する初期対応に非常に問題があるということと、やはり消費者と事業者の間に非常に情報の非対象性があったり利害関係があるので、公正中立な第三者の相談対応から始まることが必要であるということを強く感じました。それをもってしても、やはり裁判外紛争処理制度というのは自主規制機関との関係で詰めていく必要があるのではないかと思います。
今までというのは、行政規制を事業者の自主規制団体が補完していたように感じます。行政指導がバックにあってそうやってきたという面が非常に強かったと思うんですけれども、今後21世紀の金融システムを考える場合には、そういう我々一般消費者から見てなかなかわかりにくい行政指導ではなくて、やはり法的根拠のある自主規制団体というのが−−それを自主規制機関と呼ぶのかもしれませんけれども、それが必要になってくるというふうに思います。
業界の団体では会員に強制力がありませんけれども、法的根拠を持たせることで強制力を持たせたり、公正中立であることを一般の利用者にきちんと説明できたり、また、そういう団体に加盟しているということで、消費者・利用者が安心して金融機関の取引をできる、そういう仕組みを作っていくことが必要だと思うんです。
ですから、原さんもおっしゃっていました、金サ法と一緒にということなんですが、金サ法できちんと裁判外紛争処理のことは規定していくということが、今一番大事なんじゃないかと思います。
それから、コストの問題なんですけれども、基本的には紛争が起きた金融機関がその数に応じて負担する仕組みというのがよいのではないかと思います。ただ、基本的なスタッフの経費等というのは、これは必要なわけなのですけれども、利用者の立場からすれば、預金とか保険とか証券とか、そういう取引をする際にいろんな手数料を払っているわけなので、その手数料の中できちんと消費者負担という形で明示していただきたい。消費者がADRの費用も負担しているんですよという考え方が実は大事で、その考え方の下に苦情処理の状況も開示し、公表していくということが、予防措置としても非常にいい形で金融機関の自主規制に寄与していくのではないかと思います。
以上でございます。
○蝋山部会長 大変重要な、いい御提案を頂戴したというふうに思います。
非常にプライバシーのことで大内さんに伺いたいんですが、外部の専門家として、大内さんはこのお仕事で飯を食えますか。やっぱり外部の専門家というのは、原さんも大変強調されているわけですね。外部に出す。公正中立という場合、一つは学者が使われる。一例ですよ。しかし学者は大体どこかで飯を食っているわけで、いわばボランティア的なことで、経済計算では仕事をしていないと思うんです。それはそれでいいと思うんですけれども、やはりこういう外部の専門家という方にきちんとお願いするとすれば、やはりそれなりの給料を払い、処遇をしなければいいサービスは得られないと思うんですね。ボランティアに期待するのはその上の話だろうというふうに思うんです。そういう点でいかがなものなんでしょうか。そういう意味でのプライバシーについて、大内さんのプライバシーについてなんですが。なかなかそういう人はいないというのが現状だと思いますが。
○大内消費生活相談員 大変鋭い指摘で、私たちの相談員の業界というのは、皆どちらかというとパートナーに食べさせてもらって成り立っている。私の身分というのは、これでも一応足立区の非常勤ですから、ある程度のものをいただいていて保障も付いています。ところが、報酬というのは本当に新人の大学卒の金額程度のものしかいただいていないわけです。ただ、そこで、今の日本の現状というのがありまして、相談員、残念ながら性差別をしているわけではないんですが、協会には男性も入っていますが、行政についている相談員は全部女性なんですね。専門職と言って、私たちは消費生活専門相談員という公的資格を持っているんですが、ただ、今の日本の中で、非常に女性の、ここではちょっと論外のお話ではあるんですが、知識があって、原さんなんかもそうだと思いますが、私自身も、何か仕事をしたいというときに、子育てをし、それから生活をしながらというときには、非常にこの仕事が合っているんですね、どちらかというと。それで後輩に、つい先週の土曜日いろいろな話を、どうやっていくかの話のときに、やはりこれからの時代の中での生きがいであるとか、日本も大きく経済重視から変わっていく中では、私たちみたいな、世の中に向けて自分がどんなに努力して、勉強して−−お金ではなく仕事をする人間もいていいんではないかと思います。経済的なことをパートナーが頑張っている。パートナーがいない人はほとんどやめていっております、残念ながら。離婚した相談員は、普通の業界に入っていっております。
本音でお話ししているんですが、ただ、現実としてそういうものがこれから変えていけるんじゃないかと。楽天的な部分で言えば、男性社会で、経済重視で走ってきた日本が、立ち止まって、どこに視点を合わせるかというときには、私たちが同じように経済重視ではなくてもいいのではないかというふうにも考えております。お答えになりますでしょうか。
○蝋山部会長 いえ、大変模範答案だと思います。
井上さん、どうぞ。
○井上委員 私自身は、裁判外紛争処理制度というのは非常に重要だと思うのは、ほとんどこの金融審議会、今回持ってきた良心の根幹に係わることだと思います。つまり我々は、フリーでフェアな新しい社会秩序を金融に関して作ろうと、そのシンボルがこれだと思うんです。ぜひ重視していただきたい。
なお、あっせん・調停・仲裁というのは労働裁判の方から来ているんですが、確かに日本は、戦後最初に労働紛争がたくさん起こりました。しかしそこで何千件、何万件あったのが今では少なくなった。これはみんなで議論をして、共通の合意を労使間で作ったためなんです。そういう意味で、私は短期にコストがかかってもやるべきことだと思います。すみません。
○蝋山部会長 いえ、ありがとうございました。
吉野さん。
○吉野委員 時間がないのに恐縮なんですが、やはりこれは一つの製品のクオリティといいますか、アフターケアがいかにできるかということ自身も、その商品に加わっている質じゃないかと思うんですけれども、そういう意味では、秘密保持だけですべてそこが隠されるのではなくて、ここの会社が売っている商品というのは、やっぱりその質もいいんだという、そういうところでも競争できるような体制というのは必要だと思うんです。
それから、コストの問題ですが、先程蝋山先生がおっしゃっていましたように、いいスタッフを育成するには、大内さん、原さんのように、幾ら安くてもいいという人ばかりじゃないわけでして、やっぱり欧米の考え方。ビッグバンのあれでは、ファンドマネージャーもリターンが多ければ一生懸命やりますし、そこでやっぱりクオリティの差が出るような何か制度というのも必要ではないかと思うんです。ボランティア精神でもちろんいい方もおられると思いますけれども、そこでも競争ができて、いいスタッフの方はいい報酬が得られて、いいサービスができるということが必要じゃないかと思います。
それから、コストの予測、これは多分、先程おっしゃっていましたように不可能だと思います。構造変化のときには、どんなデータもありませんので、ある程度しばらくこういう新しい商品が出始めますと、どれくらい出てくるかということが分かりますから、そうすればコストの予測もできると思うんですが。
最後は、コストの負担なんですけれども、すべて例えば業界が負担するというふうに一時的にはおっしゃいますが、これは経済学の言葉で言えば、供給曲線が上にシフトすることになりまして、結局は需要曲線と供給曲線の傾きによりまして、最終的には事業者と消費者が負担することになることだと思いますので、一時的に事業者が負担しているように見えるかもしれませんけれども、最終的にはマーケットが決めると。
以上です。
○蝋山部会長 はい、まだ岩原さんも言いたいらしいです。どうぞ。
○岩原委員 すみません、1点だけ。
さっきのお話を聞いていて、保険の無断契約の件で、何で監督官庁がちゃんと処分しなかったのかという感じを持ちまして、やはり監督官庁との連携をきちんとやっていただきたいという点だけ言いたいと思います。アメリカですと、SECなんかがアミカスキューリやその他の形で訴訟にみずから入っていって被害者を助けるといったことをやっておりますので、行政庁がどこまでやるべきかというのは大きい問題ですけれども、一つその視点も見ていただきたいと思います。
○蝋山部会長 そうですね。SECのホームページを見ると、トップでコンシューマーズの方へ入るようにホームページは書かれていますし、そういう点も新しい金融庁に大いに期待したい。そういう組織もできるそうですから。
それでは、それぞれ時間を制限して申し訳ありませんが。
○石橋オブザーバー 今の岩原先生の御質問の関係なんですが、金融監督庁、大変厳しゅうございます。きちっと処分をしております。そこをちょっと誤解のないように。我々経営の方の姿勢としても、今のようなケースは懲戒解職、そういった大変厳しい処分をしておりますので、それだけちょっと申し上げたいというふうに思います。
それから銀行さん、信託さんが弁護士会の仲裁センターとの動きを大変活発にやっておられますし、それは消費者の立場からすれば評価されることだと思いますが、取り残されるのが私ども生保業界だけじゃないかというふうに御認識をされてはいけないと思いまして、ちょっと一言だけ申し上げたいと思いますが、私ども、御存知のとおり協会の中に裁定委員会というのを持っておりまして、そのメンバー自身が中立メンバーで、先生方に、あるいは弁護士の先生にお願いをしているという状況でございます。ただ、9月3日に皆様からの御指摘もありましたとおり、過去十数年で数件しか上がっていないということについては、業界としても反省すべきところがあって、裁定委員会に上がって、そしてそこで処理をできるように裁定委員の皆さんに御判断いただく努力、そして裁定委員会があるということのPRの努力は、業界としてやらなければいけないというふうに思います。
ただ、繰り返しになりますが、箱を作ってということでおしまいというのが日本のいろいろないままでの反省点だというふうに思いますので、横断的な組織で機能しないかというよりも、今ある組織をまずきちっとして使っていくということが業界に与えられた使命だというふうに私どもは考えております。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
関さん。
○関オブザーバー 今日は、大内さんのお話を聞いていろいろ感ずるところがあったわけですけれども、つまり非常にお話の中にありましたように、エモーショナルな要素も入ってくるというふうな感じもいたします。何よりも非常にはっきりおっしゃられたわけですけれども、なかなか我々の議論しております自己責任を問える消費者像にはなっていないというのが現実だと、こういうお話もあったわけです。
ただ、金融サービス法との絡みで紛争処理制度の議論をするときに、そういうエモーショナルな部分までここで原さんが提案されているような裁判外紛争処理制度の中に盛り込もうというのは、私は無理ではないかと思うんです。そういったところは、やはりいろいろな消費者団体とか地方行政のいろいろなサービスとか、そういう分野で担当する分野でありまして、金融サービス法というような問題との関連で議論するときには、どういう消費者を相手にするかというのは、説明義務の関係でも議論になっておりますけれども、そこで予想しているようなものとの紛争処理という前提で組み立てるということが必要なのではないかと思います。
それから、これは事実関係でありますけれども、大内さんのお話の中に、証券は銀行のよろず相談所みたいなものはないようなお話をおっしゃっておられましたけれども、これは前に御報告しましたように、私どもは紛争処理制度の組織を持っておりまして、これは相談の部分も含めて、エモーショナルな部分の解決についても相当な役割を果たしているのではないか思っております。
それから一、二、御議論がありましたところでありますけれども、証券会社が顧客との間で紛争が起きたときにどうなっているかといいますと、証券会社の方にミスがあったというのは、その段階で会社との間で処理がされるというのがまず第一であります。それが会社の方が調べてみたけれども問題がなかったということになりますと、そこからが実は問題になるわけであります。証券会社は、逆に言いますといろんな行為規制がかかっているわけです。つまり無断売買だというと、無断売買自体が処分の対象になるということになりますから、会社によりますと、自分の方にミスがないと思ったら、これは徹底的に争うんだ、裁判までやって解決するんだと、こういう姿勢になるということもある程度は理解できるわけであります。その狭間の中でこういう紛争処理制度の機関がどういう役割を果たすかという、こういう問題になるだろうと思います。
それから、今日御提案の中で、どういう制度を作りましても、私どもの経験からですが、それを運営するスタッフの質的な充実というのは、これは大変な問題だと思います。それだけ申し上げておきます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
大内さん。
○大内消費生活相談員 訂正だけさせていただけますか。
○蝋山部会長 はい。
○大内消費生活相談員 どうも誤解されているようなので、業界での苦情処理機関ではなくて、各会社における独立した顧客の苦情処理、そういう窓口ができ上がっていない。ちょっと違っていたかと思いますので、よろしくどうぞ。
○蝋山部会長 まだまだこの問題については議論はあろうかと思います。我々としても、裁判外紛争処理制度については次回も引き続き検討する予定ですし、また、部会全体としても相当に議論を積み重ねた上で、井上さんの御指摘もありましたけれども、非常に重要だと考えておりますので、何らかの形で最終答申には盛り込みたいと、こういうふうに考えております。最終答申ですよ。12月の第2次中間報告ではありません。そう考えておりますので、議論は今後も続けていきたいと考えております。
大内さん、どうもありがとうございました。
本日最後の議題、あと12分しかありませんけれども、ワーキンググループの検討経過について、玉川さんから、大分たくさんノートができているようだけれども、はしょってお願いします。
○玉川調査室長 10月26日の御指示をいただいたのを踏まえまして、特に説明義務の問題と、また不適切な勧誘の問題につきまして、ホールセール・リーテイル・ワーキンググループにおきましては、11月1日、8日、15日、19日と、現在4回にわたり、かなりタイトなスケジュールで会合を開き、議論を重ねております。初めの3回におきましては、法制化に向けたかなり詳しい論点リストを作りまして、その論点リストに向けての議論を行っていただきまして、毎回3時間以上の議論が重ねられております。前回19日から取りまとめに向けた議論というものに入っておりまして、特に前回は、説明義務の構成や損害賠償責任の問題等について議論が行われてきました。
あと、会合は26日、今週の金曜日に1回を残すだけになっておりまして、説明義務についての残された論点及び全体の取りまとめを行っていただくことを目指しております。26日の議論は、この部会からもたくさんの方が御参加いただいておりますが、かなり長い時間になることも予想されているところでございます。
そういうことで、お手元には、今現在「ホールセール・リーテイルWGにおける主要検討課題」という紙を用意させていただきました。これはいわば現在ワーキンググループでより詳細に議論が行われている事項の中項目といったものを並べさせていただいたものでございます。事務局といたしましては、これがどのような結論になるかということを今の段階で申し上げるような立場にはございませんが、多少何点かだけ、簡単なイメージをざっくりと提供させていただきたいと思います。
まず一つは、説明義務。この問題は非常に議論されてきたように重要な問題であり、基本的には販売業者側の方が顧客の契約の締結に際してはちゃんと説明を行っていかなきゃいけないということは、これは判例とかでも審理不足の問題として出ているわけですけど、やはりこれは明文で、よりきちっとしたことを制度度化をすることは望ましいだろう。特に今後金融商品がこのようにたくさん出てくるということと、金融商品自体がキャッシュフローとかリスクを内容とする非常に抽象的な商品であり、情報が非常に重要なこと、また、情報格差のように、やはり業者からの情報に依存し、また業者間との信頼という点でも、説明義務を明確に、明示的にとらえ、またそれを違反したときにはダイレクトに、もちろん因果関係は必要だと思いますが、損害賠償という効果に結び付けていくアプローチは、これは取るべきではないかということになっております。
その中で、どういう形の基本的構成をとるべきかということについては、なかなか法律的にも難しい問題がたくさんあると思いますが、金融商品などにつきましては、中間整理ではキャッシュフローとかリスクの移転をメルクマールにした広い範囲が望ましいということですが、同時に具体的に総合的に判断しなくちゃいけないと。法律になった場合には、なかなかそれは個別に詰めていかなくちゃいけない問題もあるのではないかということでは、その理念を現在、説明義務の関係で対応させる金融商品をどう絞り込むかというところにあっては非常に難しい問題があると思われます。
大きく一番議論されてきましたのは、やはり説明の内容は何かということが一番根幹になると思いますが、基本的には、リスク判断にとって重要な情報であり、それは商品の中に内在するリスクとかそういうものがある場合に、どういう要因で、今後どのような不利益な事態が生じ得るかということを明確に簡単に分かりやすく説明するということが、基本的には説明義務の内容ではないかというふうに言われております。
それから、プロの議論など、ホールセールでやってきた議論は、やはりプロについては説明が要らないということで整理され、また、顧客が「私は要らない」と言った場合には説明が不要になると。そういう意味での説明不要のケースなどが考えられております。説明義務違反の効果としましては、損害賠償に結び付けることが妥当であるということで、方針がほぼ議論が出ていると思います。
不適切な勧誘につきましては、まだ実際の作業の取りまとめは明後日でございますが、やはり直ちに禁止とか、そういうことについては少し意見が分かれていると思いますが、やはり業者側が自主的に取り組む問題としてのコンプライアンスの問題は、この第一部会での基本テーマとも係わる重要な問題ではないかということで、その中からどういう結論が出るかということでまとめていっていただきたいと思っております。
以上でございます。
○蝋山部会長 議論が分かれて、とんざして前へ進まないというような状況ではないわけですね。
○玉川調査室長 そこは何とかいい結論を出そうとして、皆さんが大変熱心にやっていただいていると思います。
○蝋山部会長 ありがとうございます。大変この場におられるホールセール・リーテイル・ワーキンググループのメンバーの方々にも感謝申し上げたい。あと1回だそうですが、よろしく御報告を頂戴したいというふうに思います。
ただいま玉川室長から非常にはしょった形で、私がお願いしたんですが、経過報告を頂戴しましたが、この件について何か御意見ございませんでしょうか。
私が心配しているのは、先程ちょっと不規則的に発言した、議論が分かれてしまって、一方ががんと、他方もがんとしてということで、すくんじゃって前へ進まないというのが一番危惧しているんですけれども、しかし、ともかく妥協すればいいということを主張しているわけではありませんよ。そこが難しいところですが。
いかがでしょうか、何か。
原さん、どうぞ。
○原委員 私、10月からワーキンググループに入れていただいて、本当にすごい精力的な議論をしんどいですけれどもやっております。別にとんざするような意見は私も述べておりませんで、方向性としては、やっぱりやっていこうという感じなので、同じ流れにあるかと思います。
ちょっと1点なんですけれども、説明義務が中心になるということ、それは私どももそうなんですけれども、やはり不適切な勧誘、不当勧誘の部分ですね。これを何とか入れたい。だから重要事項の説明義務だけではなくて、いろいろな勧誘のところを消費者契約法に預けるだけではなくて、何かいい譲歩がないかなということを苦慮しているというか、入れたいと私は思っておりまして、そこはもう一頑張り事務方にお願いしたいというふうに思っております。
○蝋山部会長 ほかにございませんでしょうか。ちょっと急ぎ過ぎて4分時間が余っちゃった。
どうですか、宮部さん、石戸谷さん、こういう機会ですから、ホールセール・リーテイル、いわば金融商品の販売・勧誘についての御注文なり何なりございましたら、ここで。
○石戸谷オブザーバー 部会長が御心配になっているような状況ではございませんで、私の方としては、もう目いっぱい歩み寄れるところまでは歩み寄った案を出しているんですけれども、残念ながらやり過ごされているんじゃないかという感じがしているんですが、別にそれだからといって、まとめるのがあれだとか、そういうふうなことにはなっておりません。
○蝋山部会長 宮部さん、何かありますか。
○宮部オブザーバー すみません、私は前回の19日にちょっと体調を崩しまして休ませていただいたものですから、議論の状況を余りよく把握していないのですが、基本的に私の方で考えていることは、既存の、今まで民法とかによって実現されてきた解決レベルというのが一定存在するわけですので、それが後退するということは少なくともないようにするべきだろうというふうに思っていまして、最低はそこからということで、あと、原委員の方もおっしゃっていましたが、不当勧誘の部分は、消費者契約法の方では効果が取消しということですので、それに見合ってかなり要件が厳しいということが予想される部分があるのです。そういうことがありますので、金融サービス法の部分では、必ずしも取消しということで、救済の方法としては、結局は金銭的なもので基本的に解決がつく問題になるだろうと思いますので、その辺も勘案して、別途にやっぱりルールがあるといいかなというふうには考えております。
○蝋山部会長 高橋さん、どうぞ。
○高橋委員 私は最初からずっと参加しているのですけれども、最近の議論は、非常に一部法制化できるものを取り上げるということと、できないものでも検討していかなければいけないものはきちんと書きましょうと、その2本柱で進んでいるんですけれども、法制化ということを急いでいる中で、議論の大きな対立ではないんですが、私が気になっているのは、やはり説明内容等は商品毎に違ったりするので、もろもろ各企業のコンプライアンスがしっかりすればそこは解決するんじゃないですかというような、コンプライアンスの問題に大分シフトしているんですけれども、ではコンプライアンスがその内容を開示するかどうかとか、その辺は金融機関としてはやりたくないとか、いろいろ意見が分かれておりまして、中立委員の方からは、コンプライアンスに関して例えば自主規制機関が標準的なモデルのようなものを作って、各社がそれ以上に努力したら更にいいんじゃないかとか、そういう意見が出ているんですけれども、それとも重ね合わせても、今日のADRと、それと自主規制というのは物すごく密接な関係を持っていますので、多分これから御報告があるんだと思うんですが、今後の第一部会の進め方に関して、自主規制と裁判外紛争処理とどういうつながりになって、最後の報告に行くのかということの御説明をいただきたいと思います。
以上です。
○蝋山部会長 今日、今の高橋さんの問題提起に関して、すぐに部会長として発言をするということはなかなか難しい点もあるわけですけれども、私個人としては、おっしゃるとおりだというふうに思います。自主規制機関の問題というのは裁判外紛争処理制度の問題と非常に密接に結び付いている。その点のところを断ち切った形である種の制度設計をするということは、私は好ましくないと個人的には思っています。
ただ、なかなか自主規制機関という存在に関する法的な問題、あるいは将来、仮にそれが法的な問題がクリアされたとしても、運営の問題というのは、今の原さんの御報告の中にもあるようなことで大変容易ではないというふうに思います。但し、ある種の理念というものは少なくとも最終の答申の中にはきちんと盛り込まなければいけないというふうに思いますが。
もう少しそれ以前の具体的な問題で、自主規制機関絡みの問題というのはいろいろ出てくるわけでして、ここで言ってもいいのかな。もう新聞報道等では御承知かと思いますが、東京証券取引所が株式会社化したいと、こういう要望を出しているわけですね。ちょうど生命保険相互会社が株式会社化する。そういうようなことと、やや時間的にはずれがありますが、しかしその問題は、ああそうですかという形で生命保険会社のような、法的にどういうふうにクリアするかということに集中して議論すればそれで済むということではなくて、今の自主規制絡みの問題とも結び付いてくる。ただ、一方ではグローバルな取引所間の競争という状況を考えてみると、東京証券取引所の考え方も分からぬわけではない。そういうアージェントな問題も出てきておりますので、簡単ではないということだけを申し上げます。
しかし、いずれにせよ、ある種の理念というものは最終答申の中にはきちんと出していく。それの個別的なものの先取りとして裁判外紛争処理制度の問題もあるでしょうし、それから、そのほか説明義務の問題、不当勧誘の問題等々、ワーキンググループで御議論している問題とも密接に関係しているというふうに思います。
まだまだ御意見はたくさんあろうかと思いますが、今日のところは以上で終わりにしたく思います。
次回の日程を。
○玉川調査室長 次回の日程は、10月30日(火曜日)の午前10時からとなっております。
議事といたしましては、集団投資スキーム法制に関する御審議、及び本日に引き続いて、裁判外紛争処理等のあり方について御議論いただくことを予定しております。
○蝋山部会長 今日の議論の続きは、まだ引き続いてしますのでよろしくお願いします。
それでは、本日の会議はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
(以 上)