金融審議会「第二部会」第6回会合議事録

 日時:平成11年6月16日(水)10時00分〜11時58分
 場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室

○倉澤部会長 定刻になりましたので、ただいまから、金融審議会「第二部会」の第6回会合を開催させていただきます。
 本日は、御多用のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 お手元の議事次第に従いまして、本日の議事を進行させていただきたいと思います。本日は、当第二部会に設置されておりますワーキンググループのうち、「保険相互会社の株式会社化」と「預金保険制度」の二つのワーキンググループについて、検討状況の御紹介をいただき、審議を進めることを予定しております。
 なお、それに先立ちまして、東邦生命の業務停止につきまして、金融監督庁保険監督課の樋口課長より御説明があります。
 樋口課長、よろしくお願いいたします。
○樋口金融監督庁保険監督課長 金融監督庁の樋口でございます。失礼して座ります。
 お手元にお配りしております第二部会6−1という資料がございます。金融監督庁の資料でございます。こちらに従いまして、ごく簡単に東邦生命について御紹介したいと思います。お手元の資料4ページに「東邦生命保険相互会社の概要」というのがございます。
 東邦生命は、長い歴史を持つ会社でございます。御存知のようにGEキャピタルとの間で、昨年の2月に業務提携を行っている。
 概況、そこにございますように、保有契約高が22兆円ぐらい、いわゆる中堅生保でございます。
そこで、資料の1ページに、去る6月4日に業務停止命令を下しましたときの金融再生委員長談話、それから、2ページ、3ページに金融監督庁長官談話がございますが、時間の都合もありますので、1ページの再生委員長談話を用いながら業務停止の経緯について御紹介したいと思います。
 1.にございますように、6月4日の午後でございましたけれども、東邦生命保険が臨時取締役会を開きまして、事業の継続を断念する決議を行うとともに、私どもに対しまして、保険業法の規定による業務停止命令の発動の要請がございました。この事業継続断念の背景としましては、10年度決算の作成過程におきまして、監査法人から適法意見が得られなかったということが背景にあるということでございます。
 そこで、2.でございますが、私どもとしましては、その報告を受けまして直ちに業務の一部停止命令を講じますとともに、実は翌6月5日でございますけれども、保険管理人の選任というのを行いました。お手元資料の5ページに付いてございますけれども、保険管理人としましては、会計の専門家として公認会計士の方、それから、法律の御専門ということで弁護士の方、それから、保険実務に詳しいということで生命保険協会、この3者を保険管理人として選任をいたしてございます。その保険管理人によりまして、まさに保険契約の移転計画の作成に向けた作業が始まっている状況ということでございます。
 そこで、1ページの3.でございますけれども、生保会社が破綻した場合のセーフティネットとしましては、昨年の金融システム改革法によりまして、生命保険契約者保護機構というのが12月に立ち上がっております。その機構によります援助、保険契約の引受けを通じて保険契約者の保護が図られることになっております。
 その骨格は、2ページの監督庁長官談話の一番下の6.にございます。詳細は省略いたしますけれども、責任準備金の90%までを補償するということが基本でございますが、2001年3月末までの特例期間中に支払事由の生じた死亡保険金等については、その全額が支払われる仕組みとなっているということでございます。
 1ページの再生委員長談話の一番最後でございますけれども、6月4日の時点におきまして、私どもとして、保険契約者の方に対して、いたずらに風評に惑わされることなく冷静な行動をとられることを強く希望する、こういうメッセージを発したところでございます。
 週が開けまして、状況をずっと見てきておりますけれども、東邦生命、それから、GEエジソン生命におきまして、本件についての問い合わせというのは数多く寄せられているということでございますけれども、特段の混乱もなく、平静に推移して今日に至っているということでございます。
 以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 ただいまの御説明に関連して、何か御質問、御意見等がございましたら、自由にお出しいただきたいと思います。
 よろしゅうございましょうか。
 樋口課長、どうもありがとうございました。
 それでは、議題に移りたいと思います。
 初めに、前回御議論いただきました「保険相互会社の株式会社化」について、本日はワーキンググループからのレポートが第二部会の審議の素材、いわばたたき台として用意されております。まず、事務局の方からこのレポートの性格等について御説明をお願いいたします。
○津曲調査室長 事務局より、この「レポート」の性格などについて御説明申し上げます。お手元には「保険相互会社の株式会社化に関する作業部会検討の概要」ということで、資料番号としまして、第二部会6−2という資料と、それから、「作業部会レポート」及びこれにつきます「資料」というのがお手元にあると思いますが、この「レポート」はワーキンググループとしての考え方をとりまとめたものでありまして、最終的には本部会での御指摘も踏まえて、後日、部会の名前において公表されるものということでございますので、本日は、部会終了後回収させていただきたいと思っております。この「レポート」と資料番号のない「資料」でございます。
 また、このような事情でございますので、傍聴席におられる皆様にお配りしてございませんが、この点御了承をお願いいたしたいと思います。
 また、お手元にお配りしてございます資料番号の6−2でございますが、これはいわばレポートの概要に相当するものでありまして、こちらは部会終了後、公表させていただくことを考えております。
 以上でございます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
 それでは、内容の御説明の方をお願いいたします。まず、事務局からレポートの概略について御説明をいただき、引き続きワーキンググループの座長をお引き受けいただいている山下委員にレポートをまとめるに当たっての審議の状況、その考え方等について御説明をお願いしたいと思います。
 それでは、まず、菅野保険企画室長からお願いいたします。
○菅野保険企画室長 菅野でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の資料、「保険相互会社の株式会社化に関する作業部会レポート」これにつきまして御説明を申し上げます。
 このほかに、資料といたしまして別冊になっているもの、それから、「第二部会6−2」という番号が付いております概要、この資料も適宜使って御説明をさせていただきたいと思います。
 それでは、まず、「保険相互会社の株式会社化に関する作業部会レポート」1枚めくっていただきまして、「株式会社化WG名簿」でございます。こちらは山下委員に座長をお引き受けいただきました。
 次のページを御覧いただきたいと思います。こちらが審議状況でございます。本年1月29日に第1回会合を開催いたしまして以来、今月1日の第9回まで会合を重ねております。各回で検討されました主なテーマは、表に記されているとおりでございます。
 次のページでございます。本レポートの目的がございます。全体の構成を御覧いただきたいというふうに思っております。
 1.検討の背景がございます。
 2.保険会社形態の現状。
 3.諸外国における株式会社化の制度と事例。
 4.現行の株式会社への組織変更制度の概要と問題点。
 5.現行制度の見直しの具体的方向性。
 6.その他の課題。
 こういった構成となっております。
 また、別途、先ほど申し上げました「資料」を取り備えているところでございます。
 それでは、時間の関係もございますので、ポイントを御紹介しながら全体を御覧いただきたいと存じます。
 1.検討の背景でございます。
 「我が国の保険事業を取り巻く環境は、金融システム改革の進展により大規模かつ急激に変化している。とりわけ競争力強化に向けて金融機関の自己資本強化の動きや業態・国境を越えた資本提携・再編の動きが日々加速している。」と、こういった認識をまず記されてございます。
 第2段落でございますが、途中省略いたしますけれども、保険会社に関しましても平成8年の生損保間の子会社形態による相互参入の開始、こういったことをはじめといたしまして、最後の行でございますけれども、多様な事業展開を可能とする様々な制度改革が相次いでいることを指摘してございます。
 第3段落では、金融システム改革によりまして早期是正措置制度が導入されたこと。さらに、保険契約者保護機構が創設されたこと、これに触れてございます。
 この次の段落でございますけれども、このような状況を背景に、保険相互会社においては、資本調達能力の強化、自己資本の充実、事業展開の自由度の向上等の課題に相互会社形態よりも柔軟に対応できる株式会社への転換が重要な経営の選択肢の一つとして認識されてきていることを記してございます。
 次に、諸外国におきまして、90年代に入り、デミューチュアライゼーション、株式会社化の動きが活発化していることが指摘されてございます。
 2.保険会社形態の現在でございます。
 ?株式会社と相互会社の比較でございますけれども、これにつきましては御説明を省略させていただきまして、次の?保険会社形態の現状について御説明を申し上げます。
 我が国には、平成11年3月末現在で、生命保険会社は46社あるが、このうち15社が相互会社形態であること。
それから、第2段落でございますけれども、生命保険事業における相互会社のウェイトを見ると、大手社の全てが相互会社形態であることから、新契約高(個人保険)では約8割、保有契約高(個人保険)、保険料収入、総資産ではそれぞれ9割前後を占めるなど、相当大きなものとなっているということが記されてございます。
 次に、損害保険会社でございますけれども、損害保険会社は65社あるが、戦後、組織変更あるいは発足した2社だけが相互会社形態となっているということでございます。
生命保険・損害保険それぞれの相互会社の社員数を見ると、平成11年3月末現在で、生命保険相互会社では、中堅規模の会社でも 100万人から 300万人、大手社の中には1,000 万人を超える社員数となっている会社もある。損害保険相互会社では、期間が1年で保険料が比較的小さな契約が数としては多いということもあり、やはり 1,000万人程度の社員数となっているということでございます。
最後の段落を御覧いただきたいのですが、保険相互会社におけるこのような巨大な数の社員の存在は、株式会社化に伴う社員への補償のあり方、株式会社化後のガバナンスに係る問題をはじめとして制度及び実務を検討する上で、大きな要素となるものであるということでございます。
 3.でございます。諸外国における株式会社化の制度の事例でございます。
 ?諸外国における会社形態。幾つかの国について紹介をさせていただきます。
 第2段落でございますけれども、諸外国では90年代以降、相互会社の株式会社化が活発化しているということについて述べられております。
?諸外国における株式会社化の制度と事例でございます。
 これにつきましては、先般、中間的な報告をさせていただいた際にも御紹介をさせていただいたもの、これをさらに整理したものとなっております。御説明は省略させていただきまして、4ページの中段にございます?諸外国における株式会社化の総括について御覧をいただきたいと思います。
以上を概観すると、諸外国の株式会社化については、次のような一般的なイメージを描くことが可能である。
基本的に組織変更により行われているが、一部の国においては包括移転方式がとられている。
社員権の補償は株式の交付によることが原則であり、現金交付は例外又は代替手段である。
寄与分等に応じた変動部分に加えて一律補償を行うことが広く行われている。
組織変更と同時に川上持株会社を設立し、その川上持株会社の株式を交付している例がある。
株式は公開・非公開いずれもあるが、組織変更と同時に初回公募が行われることが多い。この場合、発行価額は公開前に決定しているということでございます。
諸外国の事例につきまして、資料集の中で事例を詳細に比較したものが載ってございます。
4.現行の株式会社への組織変更制度の概要と問題点でございます。
?制度制定の経緯、これにつきましては省略させていただきます。
?現行制度の概要でございます。
 社員の寄与分に応じた株式の割当て。
 相互会社から株式会社への組織変更により、相互会社の社員であった保険契約者は、その社員としての地位のうち保険関係の部分に基づいては組織変更後の株式会社の保険契約者となり、保険関係を除く社員関係の部分に基づいては当該株式会社の株主となる。このため、組織変更計画書の記載に従い社員に対して株式の割当てがなされるということでございます。
株式の割当ては、各社員の寄与分に応じてなされる。寄与分とはということで、ここは法律に記されております寄与分の考え方を記させていただいております。
次の段落、こういった制度の下で株式会社化をするとどういうことになるのかということについて記してございます。
 相互会社の社員は、その保険契約の期間や保険種類に応じて、相互会社の純資産形成に貢献した度合いも異なることから、寄与分は社員の支払った保険料額に単純に比例するわけではなく、また、契約当初にコストがかかることや、いわゆる逆ざやにより寄与分計算がマイナスとなる。いわゆる寄与分のない社員も生ずることとなると指摘されてございます。
社員に対する株式の割当ては、寄与分に応じてなされますが、3行ほど飛ばさせていただきます、寄与分が少額の社員に対しては、端数の割当てしかなされないことになる。このため、社員に対しては、一株の 100分の1の整数倍分については端株が割り当てられ、100分の1未満については商法 217条1項・2項が準用され一括売却した代金が交付されることになる。
なお、社員への補償を、株式の割当てに代えて寄与分に応じた額の現金を交付する方式で行うことは、原則として認められていないということでございます。
ロの組織変更剰余金額(エンティティー・キャピタル)の設定について申し上げます。
 まず、最初の行でございますけれども、一般に相互会社の純資産の中には、組織変更時の社員の寄与分の合計額を超える財産が存在するということでございます。これがいわゆる退社員の寄与分ということになるわけでございますけれども、これも3行ほど飛ばさせていただきまして、相互会社のこのような実態からすると、エンティティー・キャピタルが全て組織変更後の株式会社の株主に対する利益配当に使用されることは、株主に不相当な利益を与えるという意味で適当でない。
 そこで、組織変更を行う相互会社は、定款で組織変更剰余金額を定めることができるものとされるということでございます。
 これもまた3行ほど飛ばさせていただきまして、組織変更剰余金額を定めた場合には、純資産額から資本の額及び組織変更剰余金額の合計額を控除した残額を超えて利益配当を行うことができない。この配当規制は、商法上の配当規制と併存し、保険業法独自の配当規制として、組織変更時に組織変更剰余金額を設定した保険株式会社にのみ適用されることとなるということでございます。
 次の段落が、貸借対照表上の扱いでございますけれども、注記事項として位置づけられていることが書いてございます。
 さらに、次の段落につきましては、こういった制度、清算ですとか、株式会社による吸収合併、組織変更、こういったことに共通して採用されている枠組みということが指摘されてございます。
 現行制度の問題点でございますけれども、このような現行制度について、円滑な株式会社化を実現する観点から、実務面を中心に以下のような問題点が指摘されているということでございます。
 まず、株式の割当てに伴う問題。
 寄与分のない社員の発生の問題がございます。先ほど申し上げたように寄与分のない社員というものが存在することになりますけれども、そのような社員について補償なしで割り切ることが適切かと、こういった問題があるということでございます。
 2番目の補償方法の多様化の問題でございます。
 諸外国の事例を見ますと、株式の交付以外に、現金の交付、保険金の増額、新株引受権の付与等多様な補償方法があるということでございます。また、いわゆる川上持株会社を設立して、その株式を社員に交付する方法も行われております。我が国の現行制度では、社員への補償が原則として組織変更後の株式会社の株式の割当てに限定されているという問題がございます。
 3番目が端株の大量発生の問題でございます。
 3行目を御覧いただきますと、寄与分が少額の極めて多数の社員に対して一株に満たない端数が割り当てられることになる。また、一株以上を割り当てられる社員であっても、併せて一株に満たない端数が割り当てられる事態が生じる。一株に満たない端数のうち、一株の 100分の1の単位に満たない部分、端株未満については、一括売却した代金が交付されることになるが、それ以外の部分、いわゆる端株、これについては、原則として端株原簿に登録され、大量の端株として管理しなければならないという問題が生ずるということでございます。
株主分散の問題でございます。
一株以上の割当てを受ける社員について見ても、ほとんどの社員は一人当たり持株数は、一株ないし数株程度と見込まれるため、組織変更後の株式会社は、他に例を見ないような、大株主の存在しない小口分散所有の会社となり、株式会社化後の株主総会の運営をどのように行うかという問題があるということでございます。
ロの寄与分等の計算に係る問題でございまして、ちょっとはしょって申し上げますと、実務上の計算方法の詳細が明確でないという問題。さらに、最後の2行でございますけれども、計算のベースが時価であるか簿価であるか、相互の関係はどうかといった点が必ずしも明確でないという問題があるわけでございます。
ハで、組織変更剰余金額の問題。
現行制度では、組織変更剰余金額の設定が義務的か任意的か明らかでない。一度設定すると会社に損失が生じた場合等にこれを削減できるかどうか明らかでない等の問題があるということでございます。
組織変更に際して行う資本増強に係る問題。
組織変更により相互会社の純資産が株式会社の資本に引き継がれるが、事業の成果の多くを社員に還元するという相互会社の運営等を反映し、組織変更後の資本は必ずしも十分でないものとなることが予想されるということでございます。
ホのところでございますけれども、組織変更後の有配当契約者の保護の問題でございます。
組織変更により株式会社となると、保険事業から生ずる贈与を有配当契約者と株主との間でどのように分配するかという問題が生ずるということでございまして、諸外国の例を紹介してございます。
ヘ.その他のところでございます。
諸外国では、株式会社化の方法として、組織変更による方法のほかに、子会社を設立してこれに保険契約を包括移転する方法と持株相互会社という新しい会社形態を導入し、これを利用する方法が行われているが、その当否についても検討する必要がある。
また、株式会社化に関連して、株式公開に係る問題や保険会社に係る時価評価の問題等があるということでございます。
5.現行制度の見直しの具体的方向性でございます。これにつきましては、少々長いこと、それから、現行制度の再度の御紹介、あるいは問題意識、諸外国事例等々についてございますので、いわばその結論部分だけを抜き出したということで、先ほどの別の資料を御覧いただきたいというふうに思います。
「保険相互会社の株式会社化に関する作業部会検討の概要」「現行制度の見直しの具体的方向性についてのポイント」というペーパーでございます。
まず、社員への補償でございますけれども、基本的な考え方につきましては、寄与分基準による補償。この中で一律補償については、その根拠が明確でないなどという問題があるということでございます。
次に、ネット・アセット・シェア方式による寄与分計算において将来の期待収益の要素、こういったものを加味することなどは考えられるということでございます。
2番目、補償の方法についてでございます。もともとのレポートの方では9ページ、補償の方法のところでございます。
財産的「持分」に対する補償の性格から株式の交付と現金の交付の併用はできない。また、財源のない現金補償は会社資金の流出等の問題があるということでございます。
一方、株式を割り当てた上でこれを一括売却して現金を交付するなどは可能と考えるということでございます。
川上持株会社の株式の割当ても考えられる。この場合、組織変更手続において株式移転に係る法整備を活用した川上持株会社の設立を可能とすることが考えられるということでございます。
?端株の大量発生への対応でございます。
巨大な数の社員を擁する我が国保険相互会社が組織変更に当たって寄与分基準による割当てを行う場合、極めて多数の社員に対して一株に満たない端株が割り当てられる。この結果、大量の端株が発生、多額の管理コストが必要となり、円滑な株式会社化実施に困難が生ずるという問題があるということが指摘されております。
これに対する対応といたしまして、商法の端株制度の特例として、端株の一括売却の仕組みを導入する。
端株相当分を全て端株原簿に記載して端株とした上で、この端株部分に対応する株式についても、端株未満の一括売却と同様の方法によって売却することができる制度とすることが考えられる。
売却方法・売却価格等の公正さを担保するための手続を用意することが前提となる。
社員権の早期補償と上場の準備の期間の調和を図る意味で、端株券不発行を定款に定めた場合の端株買取請求権を一定期間に限り制限するということでございます。
別冊の資料の4枚目に、制度見直し後の株式会社化の全体スキーム、横長の表でございますけれども、御用意させていただいております。これで全体スキームを御覧いただければと思います。
左側、社員に対する寄与分に応じた株式の割当てがございます。このうち、端株相当部分と端株未満相当部分、これを一括売却をする。端株について一定期間買取請求権を制限するということで、この売却代金をさらに交付する。これによって社員権の補償を行う。こういった考え方でございます。
それでは、文章の資料の方へ戻らせていただきまして、2.寄与分等の計算方法の明確化でございます。レポートでは11ページということになります。
ネット・アセット・シェア方式による寄与分の計算でありますけれども、寄与分計算の実務的手法については、今後、ガイドライン・実務基準において具体化、明確化を図ることを検討するということでございます。
 組織変更剰余金額は、組織変更時の会計上の純資産(簿価又は時価)に、総寄与分(時価的な純資産)に対する退社員寄与分の比率を掛けたものとして整理をすると、こういった考え方をとっております。
 3.組織変更剰余金額について。組織変更剰余金額の考え方を再整理いたしております。
 上で申し上げました2.?の考え方により算出された金額の全額を定款に記載するということでございます。
 商法上の配当規制、資本と法定準備金の合計でございますけれども、これと重畳的にこの組織変更剰余金額の考え方を適用するということでございます。
 さらに、一定の要件を満たす場合には定款変更手続により減額できることとすると、こういった再整理の考え方でございます。
 4.組織変更後の資本増強でございます。
 組織変更と同時の株式発行・直後の新株発行による資本増強を可能とする。
 組織変更と同時の株式の発行につきまして、発行価額など一定の事項を組織変更計画書に記載する。
 基本的に株式会社の設立と同様の規制を及ぼす。こういった考え方になります。
 ( ii )の組織変更直後の新株発行でございます。
 最低発行価額など一定の事項を組織変更計画書に記載する。この記載に基づいて新株発行を行うことができる期間は組織変更後6カ月間とすることが考えられるということでございます。
 5.組織変更後の有配当契約者の保護でございます。
 基本的な考え方といたしまして、単一の方法を強制するのではなく、契約内容、資産状況に応じて、真に契約者保護を図り得る合理的な方法を選択することが望ましい。こういったことでございます。
 組織変更の際に、有配当契約に係る方針を定款で定め、組織変更決議で決定、事後の変更については認可に係らしめる。こういったことが考えられるわけでございます。
 6.その他でございます。
 組織変更以外の方法による実質的な株式会社化の方法の検討でございます。
 包括移転方式。先ほども申し述べましたが、子株式会社を設立し、これに保険契約を包括移転した後、親相互会社は解散等をするというものでございますが、社員への補償等の点で慎重な検討が必要であるということでございます。
 持株相互会社方式。子株式会社を設立し、これに事業を全部移転した後、相互会社自身は「持株相互会社」という新しい会社形態となる。こういったものでございます。
 大株主である持株相互会社の社員とそれ以外の株主との間で明らかな利益相反が生じるため、問題が多い。こういった結論でございます。
 次に、損害保険相互会社特有の問題でございます。
 保険料が比較的小さな契約が多く、保険期間が1年の契約が多いが、基本的に今回の組織変更制度の見直しの中で対応可能ではないかと考えられるほか、新規業務を行う子保険株式会社を設立し、将来相互会社を吸収合併させる方法による対応も考えられるとしております。
「次に、ディスクロージャーの充実でありますけれども、組織変更に係るディスクロージャーの充実、これについてはそれを図っていく必要があるということを指摘してございます。
 本資料の16ページでございますけれども、6.その他の課題についても若干御説明いたします。
その他の課題といたしまして、株式公開に係る問題がございます。
株式会社化と併せて株式の公開を予定している会社については、証券取引法の開示規制、証券取引所の上場審査基準等の要件を満たす必要がある。早期の公開を実現する観点からは、公開等の諸手続についても早い段階から実務的な準備を進めていく必要がある。こういったこと。
時価会計の問題といたしましては、平成12年4月1日以降開始する事業年度から公開会社については金融資産の時価評価が求められることになる。保険会社に対する時価会計の適用の問題についても、今後、国際的な基準の検討状況を注視しつつ検討する必要がある。
?連結ベースでの監督上の諸問題。
保険相互会社の株式会社化が可能となることにより、持株会社の活用等による保険会社を含む金融機関の資本提携・再編の動きが一層加速することが予測される。このような状況を踏まえれば、今後、保険会社を含む金融グループについての連結ベースでの規制や監督上の諸問題についても検討する必要がある。
?税制上の取扱いの問題。
保険相互会社の株式会社化に関して、税制上の手当てが必要かどうかについて検討する必要がある。
作業部会のレポートについて概略を御説明させていただきました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、山下委員、お願いいたします。
○山下委員 山下でございます。
今、事務局の方より御説明していただきましたとおり、レポートの原案をとりまとめさせていただきましたけれども、とりまとめの過程で、どういう考え方をとっているのかということについてを若干させていただきたいと思います。
株式会社化したいという会社が現れた場合に、これを実現するということを一応考えていった場合に、まず、どういう実務的なやり方で実現していくかと、そのあたりがまだ実例がないものですから、よくわかってない部分というのがある。それを基本的な考え方を明らかにしていこうということと、これは法律の規定に基づいて組織変更が行われていくわけでございますので、現行の法律を適用すると何か障害となるものがないかどうか、そういう面からも検討いたしまして、今回のこのレポートでは、両面の検討の結果、特にやはり法律の面で、少なくともこういう改正はしておかないと、なかなか株式会社化を円滑に実施していくことは難しいだろうという点は結論をかなり明らかにしておりますが、例えば寄与分計算の方法の話のように、これは法律レベルの話というよりは、実務的にこれをどういうふうな形で計算する方法を決めていくのかという問題もあるわけで、そちらの方の問題につきましては、なお今後とも実務的なガイドライン等を詰めていくというふうなことでございまして、必ずしも全て結論が出ているというわけではございません。
それで、法律の面からの結論部分について、特に以前中間報告をさせていただきましたときに御質問が出た2点は御関心がおありかと思いますので、ごく簡単に御説明しておきますと、この6−2の概要の方で申しますと、社員への補償に当たって一律補償というものを認めるかどうかという点の御質問が以前ございましたけれども、結論としては、現在の寄与分基準による補償というものを制度としては引き続き維持するということでございまして、寄与分にかかわらず、全ての社員に一律の基準で補償を与えるというようなことは認めないということでございます。
ただ、この2番目の・にございますように、ネット・アセット・シェア方式という、これも多様な計算方式が実は実務上あり得るわけでございまして、そうすると、例えば加入した早々の契約なんていうのは、これはネット・アセット・シェアはマイナスになるわけですが、こういう契約が引き続いていくということになれば、当然その過程でネット・アセット・シェアというものがプラスに転じていくわけで、こういうことを考えれば、組織変更の時点のネット・アセット・シェアというものだけを基準に全てを割り切るというのが適当かどうかという疑問はあるので、そこで、将来の期待収益の要素を加味するというふうなことが可能なのではないかということで、こういう方式はアメリカの組織変更などでも用いられている考え方だというふうに伺っております。
それから、レポートの方の、この点について本体の8ページの一番下のパラグラフにより詳しく書いてあるわけでございますが、「このように、」以下のパラグラフで申し上げているのも、ネット・アセット・シェア方式によるという考え方は維持するけれども、下の3行で、現行法の下で相互会社において社員配当というものが行われているわけですけれども、こういう配当の中で、衡平・公正の基準に従って行われなくてはならないというルールがあるわけですが、その中で何か自主的な配当の方式というのを考えることが可能かどうかと、そういうあたりは実務的に検討していただいて、それまでも全て排除するというわけではないということで、若干わかりにくい文章かと思いますけど、そういう趣旨でございます。
それから、もう一点、端株の大量発生への対応の点について、やはり以前御質問がございまして、これは一株の100分の1以上の単位があると、一応商法上は端株主として取り扱われるますが、こういう部分について商法の考え方と違いまして、強制的に一括売却をするということを認めるというのがこのレポートの結論でございますけれども、これについては、どうしても端株主として自分はいたいんだという希望を持っている人々のものまで強制一括売却をするというのは、少しやり過ぎではないだろうかという意見、これはワーキンググループの中でも相当ございまして、かなり激しい議論をいたしましたのですが、やはり相互会社という会社の性格上、相当多数の端株主が現れるということで、これを商法の端株のルールの下で維持するというのは、会社にとっても相当負担であると。そういうことが、大局的に見て、やはり相互会社の組織変更というのを実現する支障となるというのはいかがであろうかということで、あえて強制一括売却という方法をとらせていただくことにいたしました。
ただし、この点について一番問題になりますのは、そういう場合に売却価格をどうするかということでございまして、これは何か適当な理論価格を算出してそれで売却をすることになりますが、これはやはり売却価格の決定というものが公正であることが、何よりも重要であろうということで、これはレポート本体の10ページのあたりに出ておることでございますが、上の( i )、( ii )、( iii )のあたりは強制一括売却をすることを認めることが必要だろうという理由でございますが、その次のマル2の具体的な内容のあたりで、( i )の2番目のパラグラフの最後のあたりを見ていただきますと、売却価格の算定方法について、市場の評価が反映されるような方法で売却価格を決めていったらとしております。
 ワーキングでの議論の過程でも、上場というところまでこぎつけて、相場がつきまして、それで一括売却するということであれば、強制一括売却でもそれほど問題はないであろう。これに対して、上場して相場がつかない前に強制一括売却というのはなかなか難しい面がある。そこらあたりをやや、妥協的と言えば妥協的ではございますが、こういう実際上市場の評価を反映するような手続をとっていただきまして、売却価格を決めていただくというものです。
この一括売却につきましては、11ページの上の方にございますように、相場がまだない場合には、裁判所の許可というものも必要でございますので、その両面から公正さを維持するということで、何とか強制一括売却が認められるだろうという結論に至ったわけでございます。
その他いろいろ細かい点がございますが、もし御質問があればお答えさせていただきます。
 以上とさせていただきます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、今御報告のありました「保険相互会社の株式会社化に関するレポート」について、御意見、御質問等がございましたら、御自由に御討議いただければと思います。
 池尾委員、どうぞ。
○池尾委員 今、山下先生から最初に御説明がありました一律補償に関連して意見といいますか、質問を含めて述べさせていただきたいんですが、その前に、ちょっと本論には全然関係ありませんが、単に感想ですが、一言余計なことを申し上げたいと思います。
 それは、このレポートの一番最初の出発の文章が、「検討の背景」という文章ですが、保険事業を取り巻く環境は、金融システム改革の進展によって変化しているというのは、時々こういう言い方はよくあるんですね。金融自由化のせいで競争が激化したとか、でも、それはちょっとやはりおかしいと思いますね。
 この場合でも、保険事業を取り巻く環境が変化したのは、日本経済の発展段階が変わったとか、技術的な条件が変わったとか、そういうファンダメンタルな環境変化に対応する必要があるから金融システム改革をやっているので、これだと金融システム改革をやめれば環境が変わらないというふうな、ちょっとこれも余計ですが、時々そういうふうな表現を雑誌等とかで見たりするんですが、こういうレポートにそういう表現はしていただきたくないという趣旨で、感想です。
 それで、本論に関わる意見ですが、最近のコーポレート・ファイナンスに関する標準的な考え方だと思うんですけれども、それだと、企業証券というのは、当該の企業が生み出すキャッシュフローに対する請求権ということと、やはりもう一つ当該企業の経営に関わる権利といいますか、コントロールライトというものの二つのディメンジョンから企業証券というのは特徴付けられるということだと理解しているんですが 、そうしますと、ここでの議論というのは、キャッシュフローに対する請求権というところから、相互会社から株式会社に切り替える際にどうすればいいかということは、極めて丹念に検討されていただいていると思うんですが、もう一つのコントロールライトの配分という点に関して変わるわけですね。
 それで、レポートでも2ページの真ん中、3.に移る最初のところに、「株式会社化後のガバナンスに係る問題」というふうな表現が一つだけ出てくるわけですが、ところが、その後には、今説明していただいた限りにおいては、ガバナンスに係る問題ということについては、ここで2ページの真ん中で書かれている以上、そういう問題が存在することを認識されているんだと思いますが、それに対する検討というのは特にないような気がいたすんですけれども。
 それで、一律補償について根拠がないということで、前に江頭先生が、強いて考えるならばという感じでおっしゃったと思うんですけれども、要するに現行であれば、社員1人1票ということなわけですね。それに対して株式会社になれば、当然ボーティングライトは株式数に比例してという形になるわけです。仮にここで御主張されているような方向性で、端株に関しても買い取って現金で補償するということであれば、その社員は相互会社の場合にはワンボート持っていたのが、そのボーティングライト、失うわけですね。それに対するコンペンセートというのは、やはり考えるべきではないか。そういうところから、江頭先生は、私の誤解かもしれませんが、余り根拠のない考え方だという趣旨でおっしゃいましたが、私は十分に根拠のある考え方ではないか。
 だから、今の相互会社の下における1人1票なんて、実は全然価値がないんだと。それで、コーポレート・ガバナンスなんて事実上存在しないんだからという理解なら、それはそうで、補償の対象にはならないという話になるかもしれませんが、ちょっと長くなりました。
 要するにガバナンスの問題というのがやはりあって、企業証券のあり方を考える際には、キャッシュフローに対する請求権という側面とは別に、コントロールライトというディメンジョンがあるはずで、そこについてやはり多少は検討するということが、こういうケースにおいても必要ではないでしょうかというのが質問であります。
○倉澤部会長 今の点について山下さん。
○山下委員 その一律補償の点については、諸外国ではこれを行っているところが多いわけでございまして、これはレポートでも少し書いておりますが、説明としては共益権というか、議決権を失うことに対する補償というふうな説明がされているわけですけれども、諸外国では、相互会社の社員は非常にたくさんいて、この議決権というものも価値は経済的に評価すれば非常に低いだろうと思われるのに、かなりの評価を与えて一律補償をしているわけでございまして、そういう方式を我が国でもそのまま持ち込めるかというあたりになると、これはなかなか難しい面があるのではないかということでございまして、しかも、議決権ないし共益権に対する補償が必要かどうかというのは、そもそもこういうものについて、ファイナンスの理論では一定の評価が与えられるのかもしれませんが、法制度の面でまだこれを評価をしているというようなことは余りないように思いまして、この株式会社化の制度を考える時点で、何か一定の結論を出すのは極めて難しいということと、それから、やはり議決権というのは確かにあるわけですけれども、これが目に見えて、社員にとっても、いただくとありがたいというふうな持分に変わり得るものかと考えると、そこはまだ難しいのではないかということで、結局、またこの一律補償部分を意味のあるものにするということは、経済的に寄与分があった人々の補償が今度逆に削られていくと、そういうことが公正かという問題も出てまいりまして、ここはあえて割り切ったということです。
 あと、ガバナンスの面は確かに余り触れてないんですが、問題のところでは、極めて株式所有の分散が進んだ会社になるので、商法の一般的な規制を適用すると、いろいろ難しい面がガバナンスの面で生ずるというようなことの指摘なんですが、では、何か手を打つのかと、その点については結論部分で余り言っておりません。これは今の商法の一般原則を変えてくれということはなかなか実現可能性がないのではないかということによるものでございます。
○倉澤部会長 どうぞ。
○池尾委員 私は、必ずしも一律補償しろとか、そういう話を申し上げているつもりはありませんで、誤解ないと思いますが、コントロールライトの配分という論点は、やはり論点として一応取り上げられた方がいいのではないかという趣旨であります。
○倉澤部会長 それから、ちょっと私、この第二部会として、ワーキンググループにお願いをするときに、一つは、もう既に、半世紀ぶりの改正のときに、相互会社から株式会社への組織変更制度というのを初めて認めたときに、寄与分による補償という制度が入っていて、しかしながら、現実にそれではもう事実上行えないというときに、その可能性ということをこのワーキンググループにお願いしたということがございまして、今のお話の相互会社の社員の共益権というのは株主の共益権と同じような価値なのかどうなのかといったような議論は、恐らく江頭委員は御承知かもしれませんが、半世紀ぶりの大改正のときに、寄与分による補償に基づく相互会社の株式会社への変更制度というものを取り入れたときの議論だったなという感じもしないでもないんですが……。
 どうも失礼いたしました。
 どうぞ、江頭委員。
○江頭委員 今、池尾委員が言われた点について、非常に時間を決めて議論したかと言われますと、余り自信がないんですが、私も正直言って、現在の相互会社の共益権的なものに経済的価値があると思いませんし、将来も株式に期待していますので、大体共益権に価値が出てくるというのは、買収とか何とかのときだと思いますけど、保険会社の規模もいろいろあるのかもしれませんけれども、どうなのかなという、果たして価値があるのかなという気はしております。
 別の点でよろしいでしょうか。
○倉澤部会長 はい、どうぞ。
○江頭委員 今回の新しく出てきた点では、ネット・アセット・シェア方式による寄与分計算において将来の期待収益を加味するということで、寄与分マイナスと一見見えるものについても、寄与分プラスにできるのではないかという考え方が示されておりまして、これは根拠はもちろんあると思うんですけれども、そうなりますと、これは資産の方も膨らませないといけないわけですね。将来収益を見込んで。
そうなりますと、作業部会レポートの11ページの?マル1で、「会社の純資産額の計算」といところで、簿価ベースか評価換えかということが出ていますけど、こんなものでは話はなくなってくる可能性もあるんじゃないか。極端に言えば、5万円の株式が上場してみたら20万円になるんだというんなら、その15万円の差額は資産の部に載せて、それが将来収益なんだと、こういう話になってくるのかなと、そういうことですかということをちょっとお伺いしたい。
○山下委員 それは、そういうことではなくて、今ある資産は、今ある状態でしかないわけですから、この寄与分計算というのは、それを現在いる社員にどういうふうに持分として割り振るか。それから、組織変更剰余金の既退社員のものとして割り振るかということでありますから、絶対額を膨らますために資産の面が必然的に膨れてくるとか、そういうものではないと理解しています。
アクチュアリー的な話は私も正確な話かどうか、完全に自信がありませんが、責任準備金は今オンバランスで一定の基準に積立てているわけですが、これを恐らくアセット・シェアの計算上は実態に合ったものに縮めて、その浮いた部分をアセット・シェアとか、社員のアセット・シェアの方へ充てていくと、基本的にはそんな考え方のように伺っています。とにかく、絶対額で何か増やすとか、そういう話ではない。総体的な比率をどう決めていくかという話だと思います。
○江頭委員 もちろん組織変更後の貸借対照表上の資産の方が増えているということじゃなくて、これを計算する上では、とにかく今言ったような株価を加味するのかなと思ったので、ちょっと伺ったんです。
○倉澤部会長 堀内委員、どうぞ。
○堀内委員 一つは、全然わからないので質問なんですけれども、組織変更以外の方法による実質的な株式会社化の方法というのの中に、持株相互会社方式について、やや否定的なコメントがありまして、大株主である持株相互会社の社員と、それから、それ以外の株主の間の明らかな利益相反というのはどういうことなのか、ちょっと説明いただきたい。よくわかってないものですから。それはトリビアの問題。
それから、もう一つは、今の話でもなんですが、これも経済学の方から言うと、企業の価値について言うと、既存の貸借対照表のアセットの側の価値を棚卸し的に評価して、その価値を評価するという方法は経済学では余りとらないんですね。
もちろんそういう方法と、さらにそれに加えて、チャーターバリューというのですか、ゴーイング・コンサーンとしてその企業が今後どういう価値を生み出すかについての人々の評価が株価に反映される。恐らく江頭さんがおっしゃったのは、そういうもので評価した場合、既存の企業の価値というのはどうなるのかということを考えなきゃいけないという話で、技術的には非常に難しい問題ですけれども、それは先ほどのコントロールライトの場合もそうですし、かなり慎重に検討する必要はあるんじゃないかと思いました。これは感想です。
○倉澤部会長 山下さん、お願いいたします。
○山下委員 最初の方の持株相互会社のところでございますが、持株相互会社というのを作るのは、今、相互会社がございまして、その保険関係部分を子会社の方へ包括移転いたします。ただし、今いる相互会社の社員の保険関係以外の部分は相互会社に残ります。相互会社は、保険事業は全部子会社へ移転していますので、単なる持株会社事業になるということです。
ところが、相互持株会社というもの自体は株式を発行することはできませんので、資本調達しようとすれば、包括移転をした子保険株式会社の方で資本調達をいたしまして、そこで株式をどんどん発行していいかというと、そちらの方で持株会社の所有比率はもともと 100%で出発するわけですけれども、これはどんどん小さくなっていくと、全体として、持株会社と子株式会社を合わせて相互主義を維持するという説明なんですが、この原則が崩れてくるのではないか。だから、アメリカでも、ヨーロッパの一部の国でも、子会社で株式を発行していいけれども、それは発行済株式総数の50%未満とか、25%未満というような制限を必ず法定しているんですね。
これは要するに、親会社たる持株相互会社と子保険株式会社一体と見て、これまで相互主義を維持しているというふうな説明でありまして、そうでないと、子会社が外部資本が非常に比率が大きくなりますと、これは保険株式会社一般の問題ですけれども、契約者と株主との間に利益相反というものが発生し得るということで、やはり株式の外部に対する発行を制限することになりまして、今ある実際の法制のどれでも外部株主は少数株主になるわけですね。そうすると、そういう少数株主から見れば、自分たちは少数株主であり続けるということで、多数株主である持株会社との間で一種の利益相反が起きるという話でございまして、親会社の方としては、相互持株会社は、契約者が社員になっているわけで、当然の子会社の利益の分配については、契約者配当が多くなるようにガバナンスをしていくであろう。
逆に、今度、親会社が多数株主で支配権を持つわけですけれども、契約者よりも外部株主の方が重要だと思って、そちらの方の利益を考えて、ガバナンスをしていくということになる。いずれを重視するか、なかなか構造上決めがたい点があるというふうなことがアメリカでもこのシステムの問題点だと。要するに外部株主を重視するか、契約者兼親会社の社員である保険加入者を保護するか。どうとってもバランスをとるのが難しいというか、そういうことがあって、今の日本の商法の研究者から見ると、これは構造上問題があるというのと、やはり親会社と子会社が一体となって相互主義を維持していると、これもなかなか難しい理論的な説明が要るということで、こういう方式を実際に作るとなると、法制的にも非常に難しい問題があるということで、今回は見送りというふうになったわけでございます。
 それから、特にニューヨーク州でこの方式を広げるかどうかという議論があったんですけれども、やはりこの方式は、結局、社員に対して株式が発行されないんですね。相互持株会社の社員権という評価できないものしか残りませんから、株式を発行しないで補償が具体的にない。経済が好調なときは株をもらいたいというのがありまして、それがすぐ使えないと、このシステムはやはりいろいろ批判がある。そんなことです。
○倉澤部会長 あともう一つ議題が残っておりますので……。
では、会長だけちょっと。
○貝塚会長 私、ワーキンググループに1回だけ出ていまして、そのときに私申し上げた意見は、要するに現在の保険加入者は、ほとんど保険を契約する目的で入っていて、たくさんの人がいるんですが、その人たちが保険会社の株を保有するということにインセンティブが、所有権として保有することにインセンティブがほとんどないんじゃないか。だから、特殊な随分違った点は、池尾委員がおっしゃっている点は、理論的にはそうなんですが、実質的には総代会の機能というのは、よくわからないところがあって、実態はそういうことでというのが重要じゃないかというふうに申し上げて、池尾委員の非常に現実的な話と私は全く逆の方向から発言した記憶がある。ちょっと申し上げておきます。
○倉澤部会長 大変恐縮ですが、タイムキーパーとしては次のテーマに進みたいんですが、御了解いただけますでしょうか。特にもう一言だけ言っておきたいという方がおられましたら、短いんでしたらいいんですが、森本委員、ごく一言だけお願いいたします。
○森本委員 来週欠席いたします。そのこともあって、一言だけ発言させていただきます。
 端株をどう処理するかというのが一つのワードで、これは割り切りの問題だと思うんですね。ただ、割り切りの問題としても、十分に納得できる理由がきちっと説明される必要があるということで、その意味で一つ質問なんですが、レポートの10ページに、一番上の( i )に、端株管理コストの削減は保険契約者のためにも有益だと言われていますけれども、端株については議決権もない。恐らく利益配当請求権も否定される御趣旨だと思う。無内容なものですから、この管理コストの削減というのは端株をゼロにするという意味では、端株原簿は要らないという意味で削減になることはわかるんですが、事務管理コストとしてはほとんど無視できるんじゃないかな。むしろその他の諸々の管理コストのことを考えてないのか、その辺ちょっと整理していただくと、池尾委員のガバナンスとの関連も少しは出てくるのかなということ。
 マル2の( i )の最後で、総代会の決議を経た上、異議申立手続を経るとあります。この総代会の決議を経た後、異議申立手続を経るというのは、どんな手続を考えられているのか、異議申立をした人は端株原簿に載せてもらえるという趣旨なのか。例えば10%以下だったらほっておくという従来の異議申立なのか。そこら辺が、総代会+異議申立だと後者の方だと思うんですが、そういう制度があるなという程度のことなのかどうなのかをお聞きしたい。
 最後に、次のページのマル3の前に、市場価格がない場合ですけれども、「裁判所の許可を得た方法で(価格を含む。)」とあるけれども、この価格を裁判所はどうやって実質的な判断するとお考えなのか。全然信用できんじゃないかという感じがするんですが、やはり方法だけなのかなと思って、この3点あたりをベースに、ぜひ私は端株原簿に載せてほしいという人を一切排除する必要があるかどうか。とりわけ、上場することを考えてない会社は、こんな端株もらってもしようがないですから、普通の経済的、合理的には、売却してお金をもらった方がいいので、この制度はその意味で、むしろプラスになると思うんです。
 例えば半年か1年後に上場したときに1桁違う、上場後に端株の買取請求なり何なりという形で処理すると、1桁違う金がもらえたぞというときにいろんなトラブルが起こるので、やはり決定的に価格を公正にするということだと思いますので、私も価格が公正である限り、こういう制度もいいのかなと思いますけれども、何か少数株主ばかりで、要するにガバナンスというのか、経営者にとってうっとうしいという立場が前面に出るような制度だといかがなという感じがしますので、あくまでも契約者のためと言われる意味をもう少し丁寧に説明していただいたらありがたいなということで、お答えを期待するんじゃなくて、最後のときにまたお考えいただいたら、そういう御趣旨でおまとめになっているというふうに善解しておりますので。
○倉澤部会長 御意見として伺うということでよろしゅうございますか。
○森本委員 はい。
○倉澤部会長 大変恐縮ですが、議事を進めさせていただきます。
 山下委員、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、「預金保険制度」に関する議論の方に移らせていただきます。
 この項目につきましては、前回の会合では触れることができませんでしたので、今日は、事務局の方から、預金保険制度の御説明をいただき、ワーキンググループにおける議論の状況を紹介していただいた上で、委員の先生方に自由な御討議をしていただくことにいたします。
 それでは、木下信用機構室長、よろしくお願いいたします。
○木下信用機構室長 お手元の資料「第二部会6−3」、それから「6−4」、この二つに基づいて簡単に御説明をいたします。
 ワーキンググループの方では、9回議論をしていただきまして、現在お手元にお配りした6−4の「検討のポイント」というのに沿って、これをさらにブレークダウンした論点の洗い出しですとか、御意見というものを言っていただいていて、これを中間的な整理という形で集約をして、できる限り早く第二部会の場でも御紹介をして、第二部会としても付け加えるべき意見、あるいは論点等についてあるかどうか御議論をいただきたいと、こういうふうに考えております。ただ、そういうことで、前回またいろいろ御意見が出たものですから、今それ自体は直しているところでございますので、できる限り早くそれをお示しすることにしたいと思いますが、今日はその準備段階といたしまして、この「検討のポイント」に沿って、6−3の資料、現行制度の資料、あるいは外国の制度等を御紹介しながら、どういうポイントになっているかということを御紹介したいと思います。
 それで、まず6−4の「検討のポイント」というところでございますが、1.預金保険制度のあり方に関する基本的考え方、その中で、目的、役割、機能ということについて、まず御議論いただいております。
 資料の1ページでございますけれども、6−3の1でございます。預金保険法第一条に「目的」というのがございまして、ここに書いてございますように、預金保険制度の目的というのは、明らかに「信用秩序の維持」というところにあるわけですけれども、今御議論いただいているのは、その機能としては、預金者の保護ということはもちろんあるんですが、そのほか決済機能の保護というものも含むと考えるべきなのか、あるいは借り手保護というものが必要だとしても、預金保険制度の中でこれをどこまで考慮すべきかというような点について、今その御議論をいただいているわけでございます。
 もちろんワーキングの中ではできる限り、それを限定的に考えるべきではないかという御意見もございますし、あるいは、いわゆる預金保険制度と銀行監督政策というものを、それは密接に関係しているんだから、銀行監督政策と併せて考えないと意味がないのではないかというような意見もございます。
 それから、?が破綻処理のあり方、方式の選択ということでございます。資料の2ページ目を見ていただきますと、これは前にも簡単に御説明をしたことがあるんですけれども、いわゆる預金保険法の改正を中心としたこれまでの流れを見ておりますと、随分いろんな改正がつぎはぎになっているのは事実でございます。2ページにございますように、46年に制度創設いたしましたときは、100万円までの保険金支払しかございませんでしたが、61年改正で、保険金自体について限度を 1,000万円に上げ、そして、このときにいわゆる資金援助というものが、保険金支払に代わる−−代わりというか、補うものとして入ったわけでございます。
それから、一つ飛ばしまして、平成8年改正、これも非常に重要な改正でございまして、このときに2000年度までの時限措置ということで、預金全額保護のために、要するに受け皿金融機関に対してペイオフコストを超える資金援助を可能とする措置をとった。そのときに、財源として、3月に御議論いただきました特別保険料を徴収するという制度を5年間の時限措置として入れたわけでございます。
それから、平成9年の改正では、?の時限措置、経営が悪化した金融機関同士の新設合併というのがありますが、いわゆる特定合併制度というものを導入いたしましたわけでございますが、これは昨年の金融再生国会で議論がありまして、今年の3月31日に?の部分は既に廃止をされておるわけでございます。
それから、10年改正で、金融安定化2法による措置と書いてございますが、これも2000年度までの時限措置ということで、一つは、いわゆる受け皿がなかなか出てこないということを踏まえて、整理回収銀行、現在、整理回収機構になっておりますけれども、これを一般金融機関の受け皿になれるようにするとともに、いわゆる10兆円の交付国債のうち7兆円を金銭贈与のためのロス補てんに充てるために措置し、かつ10兆円の政府保証というものを予算で措置していただいた。
それから、2番目に、いわゆる佐々波委員会で資本注入をした、その資本注入のための法律というものを作ったわけですが、これも皆さん御承知のとおり、昨年10月23日をもって後段の・のところは廃止をされたという状況でございます。
それから、金融再生関連法。ここでは、ここにありますように金融整理管財人、ブリッジバンク、特別公的管理、それから金融機能の早期健全化法というものが、これら二つとも時限措置ということで導入をされているわけでございます。
したがいまして、結局時限措置というものを取り除きますと、いわば2001年4月以降では、後で御説明しますように、大別して保険金支払方式と資金援助方式の二つだけが、このままでいくと残るわけでございます。
したがって、そういう中で方式の選択とか破綻処理のあり方を議論しているわけでございますけれども、出ている御意見としましては、まず、その議論の議論の前提としては、ペイオフの言葉遣いについていろいろ意見がございました。ペイオフというのは、本来、預金保険法上の 1,000万円までの保険金支払というものを意味するわけでございますけれども、そのほかにも、現在の預金の全額保護という特例が終了して、1,000 万円を超える部分は一部カットされることもあり得るという意味で使われることも多いんだけれども、それが混同して使われているんじゃないか。したがって、そこの言葉をきちんと使い分けるべきではないかというような議論が前提としてあります。
それから、当然破綻処理方式の選択に当たっては、コストという座標軸、それからアカウンタビリティという座標軸、その二つが重要だという御意見などが出ておるところでございます。
次に、2.保険金支払方式でございます。
 現行制度は皆さん十分御承知かと思いますけれども、念のため、4ページに書いてございます。保険金支払方式につきましては、5ページの方がわかりやすいので5ページをお願いいたします。
 保険金支払方式というのは、まず1.と書いてございますように、保険事故が発生した金融機関の各預金者について、ここが重要なんですが、1口座ではなくて、1預金者当たり元本 1,000万円までの額を預金保険機構が保険金として支払うというものでございます。それで、世の中には、それでもう終わりという誤解が若干あるわけですが、もちろんそうではございませんで、5ページの一番上にございますように、いわば元本 1,000万円の部分までは、どれだけ金融機関の資産が傷んでいても預金保険機構が基金で補填することによって本当に保護するわけですが、 1,000万円を超える部分の元本及び利息については返ってこないというわけではなくて、金融機関の資産の傷み具合に応じて概算払い率というものを乗じたものが概算払いという形で支払われるという制度がございます。これが2.預金等債権の買取りというものになっております。
 それで、その概算払い率というのはどうやって決まるのかといいますと、5ページの2.の(注1)注1にございますように、「概算払い率とは、破綻金融機関について破産手続きが行われたならば、その手続きにより弁済が見込まれる額(清算見込み額)を考慮して算出される比率」でございますので、これはもちろん金融機関の痛み具合によって様々であるというわけでございます。
 (注2)にありますように、「なお、後日、預金保険機構の回収した額が、回収等に要した必要を差し引いても、この概算払い額を上回る場合には、当該金額を預金者に追加的に支払うこととなる」と、この清算払いの制度が設けられているわけでございます。
 それで、この保険金支払方式のところの議論で、まず、検討のポイン」の?は「保険金支払の迅速化」ということでございます。
 今御説明いたしましたように、保険金支払というのは1口座当たりではなくて、1預金者当たりということでございますので、どうしても名寄せというのが必要になるわけでございます。どうしても、そういう意味で名寄せを正確にやればやるほど、破綻後支払いまでにある程度の時間を要することになる。そうすると、預金者の利便を考えると、できるだけこれを早く支払うにはどのようなことが考えられるのかというのが一つの検討のポイントになっておるわけでございます。
 それから、?番目が仮払金でございます。
 仮払金につきましては7ページを見ていただきますと、実は仮払金という制度は、ここにございますように、金融機関に保険事故が発生したときに、預金者等の口座の名寄せなど保険金支払のための作業を終えるまでの間に、預金者の当座の生活資金に充てるための金銭を迅速に支払うという趣旨で導入されたものでございます。したがって、ここに書いてございますように、仮払金の支払いを行うためには、預金保険機構の運営委員会が1週間以内に支払うかどうかを決定しなければいかぬという法律の仕組みになっております。
 したがって、名寄せをいたしませんので、対象は非常に限定されておりまして、対象預金は普通預金の元本だけ。それから、限度額は1預金者について20万円。原則名寄せはしない。そして、後で保険金支払が例えば行われたときには、既に支払った仮払金の部分は控除する。そういう仕組みになっているわけでございます。したがって、この仮払金について20万円をどうするかというのが一つの検討のポイントでございます。
ただ、これは今名寄せをしませんので、端的に言えばこれを 1,000万円にするということはできないわけでございまして、自ずと限度がある。そういう制度でございます。それが?番目の論点。
それから、?番目が、預金等債権の買取りでございます。
 これは今御説明しましたが、結局、預金等債権の買取りについても、できる限り早く買取りができるのが好ましいわけでして、そのためにどのようなことが考えられるかというのが一つのポイントですし、それから、預金等債権の買取りの対象というのが、現在、付保預金に限定されておりますけれども、それ以外に拡大をすると、さらに預金者にとっては利便が増すわけですけれども、そういうことを考えることが適当であるのかどうかというような議論でございます。
 それから、3番目が一般資金援助方式でございます。
 資料の4ページにお戻りいただきたいと思います。この図では、この4ページでは、要するに預金保険法を、今、本則の中に保険金支払方式と一般資金援助方式というのが入っておりまして、先ほど御説明した、平成8年改正で5年間の時限措置として全額保護のための措置がとられている、その部分を※印のところで表記をしてございます。したがいまして、2.の一般資金援助方式というのは本則でございますので、恒久措置として既に入ってございます。これは御承知のように、破綻金融機関が破綻した場合に受け皿に営業譲渡等を行いまして、そしてそのロスを、ペイオフコスト内を限度として資金援助をして、営業譲渡を助けて、金融機能をできる限り維持していくと、こういう仕組みでございます。
 この※の「特別資金援助」というところでございますが、破綻金融機関と合併等を行う金融機関が預金を引継ぐ場合、預金保険機構はこの金融機関に対して資金援助をすることができるが、その援助額は、今申し上げましたように、原則保険金支払に要すると見込まれる費用(ペイオフコスト)以内の金額とされております。特別資金援助は、ペイオフコスト内での資金援助のみでは、合併等の際に破綻処理費用が不足する懸念があるため、ペイオフコスト以上の資金援助を可能にしたものである。特別資金援助が行われる場合には預金全額が保護されると、こういうことになるわけでございます。
 これは何を意味しているかといいますと、この一般資金援助方式においては、いわば2001年3月までの特例が切れると、ペイオフコストまでの金銭贈与しかできないと、こういうことでございます。したがいまして、破綻した金融機関にペイオフコストを上回る損失がある場合、これまでのところは、そういう場合が多いわけでございますが、その救済金融機関の受け皿がその損失を受けてくれるという、負担しない限り、預金の一部をカットしないと資産と負債というものがバランスしませんので、営業譲渡が成り立たないということになります。この場合、現在のように任意の手続で、預金ですとか一般債権のカットが合意される可能性というものはほとんどありませんので、最終的には司法手続、いわゆる会社更生手続とか、破産手続とか、そういうものによらざるを得ないというふうに想定されるわけでございます。
資金援助方式の下では、一つの課題としては、預金が受け皿に引き継がれる。つまり受け皿が出てくることが前提になっているわけですが、受け皿に引き継がれることによって保護されますので、預金者の不安定な状況をできる限り早く解消して、また、借り手の利便も考えれば、できる限り早く迅速に受け皿に営業譲渡する必要があるんだという点についてはワーキングでも共通の認識になっているわけですが、そのために現行制度を改善する余地がない、どこを改善すればいいのかというのが検討課題の一つでございます。
一つは、当然のことながら、司法手続ということでございますので、その司法手続の中の諸手続を、例えば少し簡素化するとか、そういう御意見もございます。
それから、もう一つは、結局時間がかかるというのは、今申し上げましたように預金とか一般債権の一部をカットするところに時間がかかるものですから、例えばアメリカのように付保預金の部分だけであれば、預金保険機構から資金援助が出ますので、したがって、その付保預金の部分というのは、そういう意味ではカットされることはありませんから、その部分だけ切り離して、例えば司法手続の中ではありますけれども、更生計画外であるとか、あるいは、そもそも司法手続に入る前に、司法手続の外で、そういういわば付保預金だけの、例えば営業譲渡を行うことができないのかと言うような御意見もございます。そんな論点でございます。
それから、?番目が流動性の問題ということでございます。
流動性の問題と申しますのは、今御説明しましたように、現在の預金保険法本則、これは恒久措置ですが、一般資金援助方式の下では、今申し上げましたように預金や一般債権の一部が司法手続でカットされることがあるわけでございます。そうしますと、司法手続が開始されますと、裁判所としては、債権者間の平等を期するために、保全処分等により営業譲渡までの間は、預金の払い戻しを停止するということが想定されるわけでございます。したがいまして、預金者にとってもそれはかなり困ることでございますし、それから、例えば手形で決済を行っております、当座預金を持っております企業等についても、かなり影響があり得るのではないか。この場合、何らかの対応をとる必要があるのかどうか、預金保険制度の中でやる必要があるのかどうか、あるいはあるとすれば、どういう方策が考えられるのかというのが検討課題になっております。
それから、ポイントの4番目は、破綻金融機関の承継先が見つからない場合やシステミックリスクが予想される場合の話でございます。
先ほど御説明しましたように、現在、ブリッジバンク制度、あるいは特別公的管理制度というものがあるわけですが、これが時限措置となっております。それから、アメリカではシステミックリスク・エクセプションという考え方がとられておりまして、こういうものを勘案しながら、今後どうするのかという問題でございます。
 例えばアメリカでございますと、簡単に御説明いたしますと、17ページを御覧いただきますと、アメリカのシステミックリスク例外規定というのがございます。アメリカは91年に連邦預金保険公社改革法、いわゆるFDICIAというもので最小処理コスト原則というのを定めております。「FDICは、選択可能なあらゆる破綻処理方法の中で、コスト負担が最小の方法を選択しなければならない。」
 それから、?として、ただ、システミックリスクによる例外を認めております。これは「FDIC及びFRBによる提案に基づき、財務長官が、大統領と協議のうえ、「コスト基準を遵守した処理方法を選択すれば経済情勢や金融システムの安定性に深刻な悪影響を及ぼし、他の方法を用いればこれを回避ないし緩和できる」と判断した場合に限り、例外的な処理を行うことが可能とされた。」いわば手続を非常に厳格にしている。そういうものでございます。
 ただ、我々の知る限り、今までのところ、これを発動したという例はないと理解をしております。こういう制度になっているわけでございます。
 それから、5番目が付保対象でございます。資料の9ページを見ていただけると、現在の付保対象を、左側に付保対象、右側が非対象ということで整理をしております。
 この中で、例えば今議論しておりますのは、金融債について対象とすべきなのかどうかというような議論。あるいは、この非対象の冒頭に掲げております、例えば外貨預金でございますが、これまではもともとリスクの高い商品であるというようなことから、少額貯蓄、保護を目的とする預金保険の対象とすべきではないという考え方で、対象となっていなかったけれども、貯蓄や決済の手段としての利用が拡大している現状を踏まえて、新たに対象とすべきか、あるいは保険料負担の増加を考えれば従来どおりの扱いでよいのかどうかといったような議論。
 それから、(注)のところにありますように、現在、預金保険制度の対象となる金融機関については、日本国内に本店のある金融機関に限られておりまして、いわゆる外銀支店というものが対象から外れております。こういうものをどうすべきかというような議論があるわけでございます。
 それから、6番目に保険金支払限度額でございます。
 保険金支払限度につきましては、現在 1,000万円でございますけれども、後でちょっと諸外国の話はいたしますけれども、諸外国の水準、負担の問題などを考慮して、その 1,000万円についてどのように考えるかということでございます。
それから、7番目、預金保険料でございますが、10ページにこれまでの推移を書いてございますけれども、今後の預金保険料の水準をどのように考えるかという議論。
それから、市場規律の強化を図るために、可変保険料率を導入すべきではないかという議論もございまして、それをどう考えるか。
これもアメリカの制度をちょっと御説明しておきますと、16ページでございます。米国可変保険料率と書いておりますが、これはそもそも可変保険料率とは言えないというような御議論もございますが、ちょっと便宜、こういう表記にさせていただいています。
 アメリカにおいては91年にこれを導入しておりまして、下に書いておりますように、自己資本の充実度に応じて3段階、縦軸です。それから、FDICも検査当局でございますので、その検査結果に基づく健全性ということで3段階で、九つのマトリックスを作って、左上にいけばいくほど、一番左上はゼロ、一番重いところで0.27%の保険料率になっているわけでございます。
 ところが、ここにございますように、97年末現在では全 9,432行のうち95.2%が一番左の上のカテゴリーでございまして保険料はゼロとなっております。そういう制度がアメリカではあるということでございます。
それから、8番目が、預金者に自己責任を問い得るための環境整備として、今後さらにどのような環境整備に努めていくべきかという論点でございます。
ちなみに、資料の11ページでございますが、平成7年12月の金融制度調査会では、その点はこう整理しております。
 11ページのマル2の2行目からですが、「現時点においては、ア)ディスクロージャーが充実の過程にあり、預金者に自己責任を問いうる環境が十分に整備されていない、イ)金融機関が不良債権を抱えており、信用不安を醸成しやすい金融環境にある、ことから、未だペイオフを行うための条件が整っていないと考えられる。
 ア)、イ)の環境整備は今後5年以内のできるだけ早期に完了する必要があり、その後においては、信用秩序に与える影響等を十分に考慮する必要はあるが、ペイオフも選択肢の一つとなる。」こういう考え方を当時まとめているわけでございます。
それから、最後に12ページ以下、海外の制度について簡単に御説明をいたします。
 海外については米英独仏と調べました。全て預金保険制度はございます。それから、12ページの一番下の対象預金のところを見ていただきますと、これは様々でございまして、例えば外貨預金については、アメリカとドイツは対象になっている。それから、イギリス、フランスは非対象というふうになっております。それから、日本では例えば対象になっていない譲渡性預金や金融機関の預金といったプロ預金が、アメリカでは例えば対象になっているけれども、英仏独は非対象になっているというように、これは極めて様々でございます。
それから、13ページを見ていただきますと、付保限度。日本は 1,000万でございますが、ここにございますように、今の為替レートでございますと、アメリカが日本に比べてやや高く、英独仏が日本に比べて低いと、そんな状況でございます。
それから、保険金支払方式以外が充実しているというのはアメリカでございまして、それは14ページにまとめてございます。
簡単に日本との差を申しますと、ペイオフ、保険金支払と付与預金移転制度というものは日本でも既に入っているわけでございます。
 それから、P&Aにつきましては、アメリカの場合には、付保預金だけを営業譲渡するというようなことが行われている。いわゆる付保P&A、そこが日本と違います。
 それから、ブリッジバンク制度が、アメリカの場合には恒久制度としてあること。それから、アメリカの場合にはオープンバンク・アシスタントといって、破綻金融機関を受け皿なしにそのまま蘇生させる手段があることなどが主な違いでございます。
 それから、15ページ、類型別に見た破綻件数の推移を見ていただくとわかりますように、オープンバンク・アシスタントというのはいろいろ批判もございまして、93年以降は実施された例はないということが、ここでわかります。
 それから、最近では、見ていただくとわかるように、最近ではというのは、一番下に92年以降の類型ということで書いてございますけれども、保険金支払であるところのペイオフとか、保険金支払の変形である付保預金移転というものは最近では数が少なく、いわゆるP&Aが主流だというのがここで見てとれます。付保預金P&Aが47%、全預金P&Aが36%。ただし、この左の三つ、すなわちペイオフ、保険金支払、付保預金移転、付保預金P&Aというのが預金者にも負担を求める処理方式でございまして、92年以降でこの三つだけで63%に達しているということも、この表から見てとれるだろうと思います。
以上、簡単でございますが、御説明をいたしました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
ただいま御説明のありました「預金保険制度」及び「検討のポイント」につきまして、御質問、御意見等がございましたら、御自由に御討議いただきたいと思います。
 堀内委員、どうぞ。
○堀内委員 幾つか重要なポイントが載っているように思いまして、全体として検討の方向は非常に適切だと思うんですが、言うまでもないんですが、預金保険制度がどのように金融システムの中で位置づけられるかというのは、当然ほかの制度、例えば早期是正措置に係る法律とかその他の法律、それから、金融機関の破綻に関する現行の法制度に関しての問題点とか、そういうものと関連してくるんじゃないかと思うんですね。それがやはりやや長期的に見ると、例えば2001年以降を考えた場合には、かなり重要なポイントになるんですが、そういう点はここでは、もちろん預金保険制度だけの問題じゃないということもあるかもしれませんが、触れているのかもしれませんが、今説明になってはいなかったんです。それで、預金保険制度をうまく機能させるためには、やはりそういう問題があるということもどこかに触れておかないと具合が悪いんじゃないかという気がしました。あるいは触れているのかもしれませんので、それはひょっとしたら私の誤解かもしれません。
 それから、それとの関係で、私の意見としては、やはり長期的に見た場合には、なかなか預金保険制度で、あるいは幅広いセーフティネットで金融システムを安定化させるということは、かなり社会的な費用が高いということがこの間、日本だけじゃなくて、多くの国で経験されたことで、そうなりますと、その点について何か手を打たなくてはいけない。
 それで、保険の対象、あるいはセーフティネットの対象になる預金や金融商品の範囲を余り広げるべきではないんじゃないかというのが学者のかなり強い意見ではないかと思うんです。
 特に、これは現在のBIS、あるいはバーゼルコードに関する学者側の批判と関連しているわけですが、もっとよりプロの専門の投資家たちが、広い意味での銀行の劣後する債券を保有している彼らが、非常に厳しい目で銀行の行動を監視するというインセンティブを与える、あるいはそういうメカニズムを利用するということが必要ではないか。
 御承知のように現在のバーゼルコードの場合には、自己資本の中にもちろんそういう劣後債券なる部分が入っているわけですが、それはかなり限定的に位置づけられているわけですね。それは学者の方から見ると、かなり批判的であって、といいますのは、劣後する債券を持っている投資家ほど、銀行の経営に対してセンシティブであるはずであって、そういうものをたくさん発行している銀行ほど、ある意味では預金保険機構や預金者の側から見ると、マーケットリスクにさらされているはずであるということですから、そういう劣後債がもっと本格的な、いわゆる自己資本に勘定されてしかるべきであるというような考え方があるわけですね。これはもちろん、そういう劣後債がマーケットできちんと評価されるということが前提になるわけで、そのためには、現在の日本の制度ではだめだろうと思います。
 つまりそれは、劣後債に係るマーケットがきちんとできていない、あるいは法的にかなり不透明な部分がある。そういう点は先ほど冒頭に申しましたようなことの関係で、預金保険制度の中でセーフティネットをできるだけ社会的に安いコストで維持していくためには必要な周辺の重要な部分じゃないかと思うので、ぜひそういう点について御検討いただきたい。入れておいていただきたいという気がします。本格的な答えをそこで求めるというのは難しいのですが、そういう問題点があるんだということをはっきりお書きいただいた方がいいのではないかと思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
 これは御意見として伺っておけばいいですか。
○堀内委員 私の意見です。
○窪野参事官 ワーキングの中でも御指摘のような御意見が、まさに預保だけ取り上げて議論するのではなくて、先ほど室長もちょっと冒頭に御紹介しましたが、早期是正あるいは破綻処理を含んだ銀行監督政策全体の中で位置づけを考えないと、これだけ取り出してというのは適当でないという御意見は繰り返し述べられていると思います。
○倉澤部会長 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。
○稲葉日本銀行企画室参事 先ほどの木下課長の御説明にちょっと御参考になる部分かと思いまして、日銀の方から論点について二つほど申し上げたいと思いますが、具体的には資料の6−4で言えば、3.の?にわたるところでございます。
 今までペイオフを行わないという下でこういった資金援助方式とその他の方式をやってきた中で、破綻金融機関を言ってみれば生かしながら、業務を続けながら処理方策を考えると、こういうふうにやってきたわけです。その際には、預金取扱いとかそういうのを認めながらやってきたわけですが、そうすると、そのときにファイナンスとしてどうするかということで、日銀の特融が最初に出てくるということでやってきたわけです。これは現在は、処理方式が固まりますと預保がその全債務を支払うという形で日銀の特融も返済されると、こういう形で完結していたわけですが、2001年4月以降は、必ずしもそういうことではないとすると、日銀の特融はこういう形で使うとすると、今度このお金は、日銀も債権者の1人ということになりまして、戻ってこない部分があるというふうになるわけです。論理的にはそうなる。
 したがって、今後、2001年4月以降の仕組みを、ペイオフによらない方法等をいろいろ考えるにあたって、その間のファイナンスをどうするか。前提としては、日銀としては、みすみすロスが出るような資金は、特融であってもやっぱり出せないということの論理がありますので、そういう特融に頼らないようなスキーム、考え方なりの検討が必要ではないかというふうに思います。第1点です。
 第2点は、このペーパーで言うと7番目、預金保険料の問題ですが、可変料率を導入するかどうかという問題のほかに、そもそも2001年4月以降の預金保険料率をどうしたらいいかという問題があるわけで、その際、私は、検討の前提として、2001年3月までの例えば特例勘定分とか、再生勘定分で発生したロスをどう処理するかということをある程度決めておかないと、先行きの保険料率あるいは保険料率のあり方がいわば宙に浮いたような問題になってしまうと思います。
 個人的に申し上げれば、この2001年3月の段階で、そのロスはきちんと言ってみれば公的に処理した上で、先々のあり方として預金保険料率をどうしたらいいか。考え方としては、そのロスを一般勘定に引き継ぐということもあり得るわけですが、そうなると料率がすごく高くなってしまう。
 こういうやり方は、大蔵省としてはなかなか辛いんだろうと思うんですけれども、預金保険はどういうコストがかかるのかというのを世間に理解してもらうために重要なことではないかというふうに思います。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 どうぞ、ほかに御意見、御質問等ございましたら。
 森崎オブザーバー、どうぞ。
○森崎オブザーバー 一つこの機会に伺いたいんですけれども、付保対象が日本国内に本店のある金融機関に限るということになっておりまして、私ども保険の場合は、かつて任意の保護基金、それから、現在の強制基金があったんですが、そのときに、この問題と照らし合わせまして、私どもの場合には支店の会社が多いんですけれども、なぜ強制なのかという議論をしたんですけれども、余り確たる説明がなかったんですね。
 それで、銀行協会の当時の論議の議事録なんかも調べてみたんですけれども、さしたる議論がなくて、こうなっているんですが、何かその背景とかその辺の議論がありましたら、ちょっと御紹介いただきたいと思います。
○木下信用機構室長 何で日本国内に本社があるものに限っているかということでございますが、これは平成7年の金融制度調査会のときにも若干議論があったところでありまして、当時の記録を見てみますと、仮に外国に本社がある金融機関が破綻をして、預金保険機構が保険金支払をした場合に、預金保険機構がその求償権を取得するわけですけれども、それをどのように本社の財産にかかっていけばいいのか、そこら辺の問題に非常に難しい問題があるので、したがって、そういう観点から、主として国内に本店のある金融機関に限っているんだというような議論が行われております。
 したがって、今後どうするかということを考えるときにも、当然そこをどうするか考えなければいけないんだろうと思いまして、この資料にも出ておりましたが、アメリカの場合には、例えば国内に一定限度の資産保有を義務づけるとか、そういう制度を併せとられているようでございます。
○倉澤部会長 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、どうぞ、ほかの方。
 預金保険の被保険者であるオブザーバーの方に何か御意見ございますか。
 特にございませんでしょうか。
 貝塚会長、どうぞ。
○貝塚会長 個人的な意見ですが、時間が余っているので。
 先ほど日本銀行の稲葉さんから御発言あったんですが、要するに預金保険制度と中央銀行のレンダー・オブ・ラストリゾートの関係は、これは日本銀行さんどういう見解をお持ちか、私は必ずしも明らかじゃないんですが、そこはやっぱりある程度はっきりさせた方が、多分中央銀行のディシプリンにとってもプラスじゃないかと思いますので、今、簡単に言えば、それほどそこのところがすごいことになっているというのが私の印象です。
 したがって、やっぱり新しい制度ですから、そこは原則的には、と私はそういうふうに思いますが、全体の中できちっとそこのところは銀行監督の問題、全て周辺領域の話の中にも当然関係してきて、隠れた重要な部分であって、そこのところは、ある程度きちっとやる必要がある。これが一つ。
 それから、もう一つは、先ほどの御発言ですが、元来ジュリスディクションというのが、金融機関の銀行行政は誰が責任を持つかというところ。普通は本店があるところの、イギリスでもレバノンでも、どこでもいいですが、そういうところが一応責任を持って、そこの金融機関が破綻するとかそういう話になったときに、支店をどうするかというところが、実を言うと外国の側にとったら非常に厄介な話なんですが、しかし、責任は本店の所在地の金融監督当局が負う。多分そういう問題が基本的にあって、もともと権限がそれぞれ分かれているんじゃないかと思いますので、その辺のところをというのが私の個人的な印象です。ですから、中東に本店のある銀行が日本に支店があって、多少つぶれたことがあるんですが、そういうふうなときの処理というのは、ある意味で非常に厄介なんですね。ですから、ジュリスディクション、確かイギリスのケースも多分そうなのかな。いろいろ問題が発生したことは事実ですが、シンガポールの持ち逃げした話は、最後はBOEの監督が大問題になったんですが、とにかくそういう話じゃないか。個人的な印象です。
○倉澤部会長 どうぞ、池尾委員、お願いいたします。
○池尾委員 私は預金保険制度に関する検討のワーキングのメンバーでもあるんですけれども、先ほど堀内先生がおっしゃったような点について非常に大切だと思っておりまして、ワーキングでも発言させていただいてはいるんですが、やはり預金保険制度を一部として含む全体としての規制の枠組みといいますか、規制システムのあり方に関するグランドデザインの検討ということがどこかで行われていないと、ピースミールに一つ一つの制度を検討しても、全体としてなかなか社会的に望ましいものになるという保証が得られないわけですね。
 そうしたときに、規制システムあるいは規制の枠組み全体のグランドデザインをどこで検討するかということになりますと、やはり現在の政治的枠組みで言うと、金融審議会ではないかと思いますので、ぜひその点について検討の必要があるのではないかという要望を貝塚会長に申し上げておきたいと思います。
○倉澤部会長 どうぞ。
○木下金融監督庁企画課長 木下ですが、監督庁で銀行の監督政策ということでいろんな御意見がありまして、御参考までに2点だけ申し上げたいと思います。
 早期是正あるいは自己資本比率規制につきましては、バーゼル委員会で議論がなされておりまして、先般、自主協議のためのペーパーが発表されたのは御案内のとおりたと思います。その中で、確かに信用リスクに対して非常に感応的な制度ではないですねと、どう直していきますかということで標準的アプローチ、あるいは内部格付のアプローチ、それから、内部モデルによるアプローチと、こういう議論がなされているところでございます。そういうふうに銀行監督政策自体が国際的に今流動的な状況にある。これが1点でございます。
 そのときに、今度は私ども銀行の実務家の方とも議論をさせていただいているんですが、やはり信用リスクというのは非常にはかるのが難しい。将来の不確実な事象であって、かつ、マーケットリスクのようなものと比べると、パブティスティングというような技術的な処理をするのが非常に難しいところがあるということでありまして、結局は、どういうふうにそれをモニターし、整理をしていくかということではないだろうかと、こういうような議論になっております。
 その意味で全体の角度、例えば堀内先生の御指摘もそれに入るだろうと思うんですけれども、社会的なモニタリングコストを誰がどのように分けていくか。監督当局もありますし、日本銀行の考査もあると思います。それから、CPAもあると思いますけれども、それと預金保険制度との関係というようなことであろうと思いまして、この辺はワーキングでも池尾先生からの御指摘があって、問題意識としては提起されているというようなことであろうと存じます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
 皆様の御協力で、最後のところは予定どおりの時間におさまりました。
 本日の議事はこれで終了させていただくことにいたしまして、最後に、次回の日程等につきまして、事務局より御連絡をお願いいたします。
○津曲調査室長 次回の会合につきましては、6月22日(火曜日)の午後2時から第四特別会議室において開催させていただきます。
 テーマといたしましては、本日御審議をいただけませんでしたもう一つのワーキンググループのテーマであります「個人信用情報保護と利用のあり方」について、及び本日の続きになりますが、「預金保険制度」について御審議いただくことを予定いたしております。
 なお、冒頭申し上げましたが、「保険相互会社の株式会社化ワーキンググループ」からの説明に使われましたレポート、番号の付いてないレポート、それから資料でございますが、本部会終了後、回収させていただきます。恐れ入りますが、その場に残したままにてお願いいたしたいと思います。
○倉澤部会長 ただいまの次回の審議の進め方は、それでよろしゅうございましょうか。
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。
                                (以 上)