金融審議会 第一部会 |
平成11年7月6日 金融審議会第一部会 |
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金融審議会第一部会中間整理(第一次)にあたって |
金融・経済の国際化の進展や金融・情報通信技術の発展は、金融サービスを地理的・物理的な制約から解放し、これまでの金融サービス業の枠を越えた、多様で魅力的な商品・サービスの提供を可能としている。また、伝統的な間接金融中心から市場を通じた資産運用・資金調達へと、市場の役割も増大していくと見込まれている。こうした背景の下、金融の役割も、かつての資金融通の領域にとどまらず、国民の資産の効率的な形成、新たな成長力を持つ企業・産業の創出、企業のガバナンスなど多岐にわたって重要性を増してきている。金融のあり方は、これまでにも増して一国経済のあり方に影響を及ぼすようになってきている。
世界の金融を巡る環境がこのように変化している中で、わが国では、バブルの発生と崩壊を経験し、金融は諸外国から大きく遅れをとってしまった。こうしたことを背景に、フリー、フェア、グローバルの3つの原則の下、2001年までに東京市場をニューヨーク、ロンドン並みの国際的な市場とすべく、金融システム改革が進められている。金融システム改革では、証券会社の専業義務の撤廃、金融持株会社制度の導入、証券投資信託制度の改革、SPC(特定目的会社)法の施行を始めとする広範な改革が既に実施に移されている。また、本年10月には、株式売買委託手数料の完全自由化、銀行系証券子会社の業務範囲制限の撤廃等が行われる予定である。こうした抜本的な規制緩和とともに、ディスクロージャーの充実や公正取引ルールの拡充等の改革も併せて進められている。
このように、我が国の金融システムも大きく変貌している。しかし、諸外国における金融変革の急速な進展を踏まえれば、わが国においても、金融システムの安定・再生に万全を期しつつ、金融システム改革の動きを一層推し進めていくことが求められる。バブル時の貸付けにみられたような問題の反省に立ち、また、貸し渋りをはじめとする問題を解決し金融の機能と効率性を一層高めるために、新しい金融の確立に向けて精力的に取り組んでいかなければならない。利用者が、魅力的かつ多様な取引を安心して行い得る、効率的かつ公正で、信頼される透明な市場を構築するための不断の努力が必要である。
金融審議会では、1998年8月に、「21世紀を見据え、安心で活力ある金融システムの構築に向けて、金融制度及び証券取引制度の改善に関する事項について、審議を求める」という大蔵大臣の諮問を受け、審議を開始した。
金融審議会に設けられた2つの部会のうち、第一部会は、21世紀の金融の将来像とそれを支えるルールの枠組み等について検討を進めてきた。具体的には、1998年6月に取りまとめられた、金融を巡る諸問題に関係する13省庁等の共同勉強会である「新しい金融の流れに関する懇談会」の「論点整理」を手がかりとして、いわゆる金融サービス法の検討も視野に入れた議論を行ってきた。
これに対し、第二部会では、不良債権処理と金融システムの再生・安定を図りつつ、どのように21世紀の金融システムにつなげていくか、という問題や金融システム改革で残された問題を中心に審議が行われている。
いわゆる金融サービス法については、金融サービス法を21世紀の金融を支える制度的な基本インフラと位置づけ、高い理想を掲げていきたい。その場合、最終的な法制度の姿は、金融取引全般を広く、包括的かつ横断的にカバーするものとなろう。こうした横断的な法制度の下では、既存の金融関係の業法も、一覧性のある横断的なものとなっていく。銀行についても、決済サービス提供者等の面と併せ、預金者から預かった資金を運用するという資産運用業者の側面も重視され、適切な運用を行うという責務を預金者に対しても負うべきことが一層明確になってくる。また、市場においては、横断性の高いルールの下、業者の創意工夫の発揮によりさまざまな魅力ある商品が提供され、利用者は十分な情報を前提に、自己責任原則の下で主体的に自己のニーズに合った商品を自由に選択していく。さらに、ルール違反は行政等により機敏に摘発され、厳罰に処されるなど、市場の信頼と公正性の確保に万全が期されることとなる。
新しいルールの枠組みは、単に業法が横断化するのみならず、このように民事法制や刑法、自主規制団体ルールや契約当事者の取り決め等、さまざまなレベルのルールが融合したものとなる。こうしたルールの体系を構築することにより、市場参加者の意識、行動も変化していく。その結果、取引慣行やその他の金融の制度的インフラも影響を受け、変化していくという、新しい金融への大きな流れを生み出していくこととなろう。
もっとも、こうした包括的かつ横断的なルールの枠組みについては、金融システム改革の進展状況も踏まえつつ、具体的な検討を行っていくことが求められる。こうしたことから、第一部会では、
(1)今後予想される多様な金融商品の登場等に備える横断的な販売・勧誘についてのルールの検討等、及び(2)国民に多様なリターンとリスクを組み合わせた商品を提供する集団投資スキームについてのルールの検討について、それぞれワーキング・グループを設け、精力的に検討を行ってきた。今回の中間整理(第一次)は、こうしたこれまでの第一部会の審議における論点を中間的に整理をし、部会の下に設けられたワーキング・グループのレポートと合わせ公表し、広く意見を募ることとしたものである。
幅広くご意見が寄せられることを期待している。
金融審議会第一部会 部会長
蝋山 昌一
金融審議会第一部会「中間整理(第一次)」の構成 |
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