○友永参考人
 それでは、3ページに戻っていただきまして、(2)の「企業存続能力情報の提供」ということについて、私の方からお話しさせていただきます。
 まず、冒頭に奥山副会長の方からもありましたように企業の継続能力に関して、重大な不確実性が存在するということが最近現実のものとなりまして、上場企業の経営破綻、特に我々の監査の立場から申し上げますと、適正意見表明後数カ月で倒産するという事例が多々出てきております。継続企業に係わる開示がなかったということ、それから、公認会計士の監査報告書に警報情報が示されていなかったと、この2点について強い不信の念が表明されているわけです。諸外国からも、日本のディスクロージャー制度は国際基準から乖離したものである。極めて特殊なものではないかということ。それで、海外向けの日本の監査報告書においては、日本基準というのは特殊なものだということを書けというような議論まで現在出てきております。
 日本のディスクロージャー制度が乖離しているという点で認めざるを得ない一番大きな問題は、この企業継続能力に関する開示の問題であると思っております。企業継続能力は、取得原価主義に基づく財務諸表作成の前提となっておりまして、これはもう当然のことだということで、我々はディスクロージャー上問題にしてこなかったわけですけれども、それが不確実だと、不確実性を持っているということについては、これは企業会計の根幹に係わる事項だということで、企業の社会的責任の面から、監査に対する信頼性の確保という観点から、これを開示する制度を設けていただきたいということでございます。
 審査会の平成9年の提言においても、「発行体の存続に重要な影響を与える事象について、国際的に標準的な枠組みによる投資家への情報提供を進めること」という御提言をいただいております。
 また、公認会計士協会では、国際会計基準及び主要諸国の会計基準、監査基準における企業継続能力の取扱いについて研究し、監査委員会研究資料というものを公表しております。
 監査基準は、国際会計基準とともにIOSCOにより一括承認されるということが予定されておりますけれども、IAPC(国際監査基準委員会)において現在審議中で、多分この6月に確定すると思われます改正案では、「会計基準の枠組みの有無にかかわらず、監査人は企業継続能力に関する監査を実施し、開示が適切であるか否かについての意見を表明すべきだ」ということになっております。これについては、ボーダーレスファイナンスといいますか、そういうファイナンスをする会社については、IASとともにISAが適用されるという事態になったとき、その日本の監査基準に継続企業能力に関する枠組みがないということであると、これは大変な混乱を来すのではないかということでございます。
 我が国の現在の実務においても、個々の監査人の判断で特記事項の対象としてこれを取扱い、利害関係者に警報情報を提供しようという試みが一部でなされております。
 ただし、現行の特記事項に関する規定は、企業継続能力についての事項は含むものではないという解釈が一般的になされております。経営者は、企業継続能力に関する開示を行うことに極めて消極的でございますし、監査人が特記事項として取り扱うことについては、企業の倒産を誘発するということで大変な強い抵抗を受けるということがございます。
 また、監査人の方としても、実施すべき監査手続ですとか、監査意見に適切に反映させる報告の基準を持たないということで、必要性を認めながらも、企業継続能力に関して利害関係者の開示要求に適切に対応できないという状況がございます。現行の会計基準、監査基準だけでは対応できないということで、新たな基準設定について御提言いただきたいということでございます。
 規定すべき事項といたしましては、財務諸表作成上の取扱いとして、開示すべき内容、対象期間。レジュメの方で、もう一つ「非継続企業に関する会計基準」というのが記載してございます。これはまたちょっと情報提供の機能とは異なりますので削除していただきます。
 それから、監査上の取扱いとしては、監査意見の述べ方、経営者の改善計画についての評価方法といったことをここに取り上げております。
 やはりここでは二重責任の原則を明確にして、会計基準において経営者が財務諸表作成上開示すべき事項を指定していただき、我々監査人は、それを監査して意見を述べるという、そういった関係で、両者の連携の下に十分な情報を提供するという機能を果たしていくべきだと思います。
 開示すべき内容については、企業の継続能力に対して存在する重要な不確実性の内容、それから、不確実性の存在にもかかわらず継続企業を前提とした財務諸表を作成し得ると経営者が判断した基礎となった経営計画等の開示が含まれるべきであろうと思います。
 対象期間というのは、経営者が、経営計画と経営者の判断が合理的であるか否かの評価を行った期間ということで、例えば財務諸表の決算日から1年といったような内容になろうかと思います。
 それから、監査意見の述べ方といたしましては、監査報告書における記載内容、監査意見の内容ということになるわけですけれども、監査人の監査意見は、企業の継続能力について保証を与えるもの、あるいは倒産を予告する、そういったものではございませんで、そういったものではないということについて利害関係者の理解を十分に得る必要があることから、監査報告書の内容として、その二重責任の原則であるとか、監査責任の範囲についての明確化というものを、より説明的な文言で付け加えて必要があると、そういうふうに考えておりますので、前回もこの点については御提言いただいているんですが、再度御提言いただきたいと思っております。
 監査人の実施すべき監査手続としては、通常実施すべき監査手続の対象として入ってくる部分と、それから、不確実性が存在する場合に実施すべき追加的な手続といったものと、経営者の改善計画についての評価ということになろうかと思いますけれども、この評価という評価方法が非常に重要な問題点となってくると思いますので、その点についても十分論議を尽くしていただきたいということでございます。
 監査人としては、やはり明確な枠組みの下で自己の果たすべき責務を真摯に受け止めまして、ディスクロージャー制度に対する信頼性確保のために努力していきたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。

○三原座長 どうもありがとうございました。
 参考人として御出席を賜りました方々には、大変御多忙中のところ貴重な御意見をいただきまして誠にありがとうございました。
 それでは、折角の機会でございますので、ただいまの御意見、御説明に関しまして、御質問等ありましたら伺ってまいりたいと思います。大体3時半ぐらいを予定しております。
 どうぞ、林委員。

○林委員 ソニーの石川さんに3点伺います。1点は、イロハなんですけれども、御社はどこの監査法人に会計監査を依頼されているのかということです。
 2点目は、石川さんの資料で、会計監査に望むものというものがありましたけれども、要するに一言で言えば、今すぐ期待される監査法人ということではないかと思います。前回の参考人の意見の中にも、単なる計数的な監査だけでなく、M&Aとかそういったものに係わるアドバイザリー機能を持った監査までしてもらわないと、本当の意味の監査はできないんだという意見もございました。
 石川さんの2枚目に、自覚症状のない状態でいっているのではないか。つまり「井の中の蛙パターン」と「置き去りパターン」と。やや心配のし過ぎかもしれませんけれども、どうやら日本の監査法人の多くは、この二つのパターンを併せ持って今まで来たのではないかというふうに思っております。従って、石川さんがおっしゃいました広範な経験の裏付けによる評価、時には先見性を含んだ対応。いわばアドバイザリー機能を発揮してほしいとおっしゃっていますが、どうも現状から考えますと、ない物ねだりではないかなというふうに思っております。ですから、具体的にもうちょっと踏み込んだ御提案を聞かせていただきたい。これが2点目でございます。
 それから、3点目は、ちょっと性格は変わるんですけれども、会計システムについては相当なシステム投資をされてきたと思います。それはどれぐらいされてきて、現在のシステムはどういうシステムなのか。つまりオープン系なのか、あるいは汎用系なのか、その辺をちょっとお知らせいただいたらというふうに思っています。よろしくお願いします。

○石川参考人 第1点ですけれども、監査法人は、青山監査法人です。プライスウォーターハウスクーパーズのグループで、米国会計基準を前提に理解をしている会計監査の方々が介入してやっていただいているという状況です。
 それで、では、この方々は連結だけを見ているかといいますと、実は単独も見ておられまして、単独のチームと連結のチームというのは共通メンバーが6割から7割、それから、残りの3割がそれぞれ個々の方の単独の個別メンバー、もしくは連結のためのスタッフメンバーということで、コアの人たちは共通して見ておられます。ですから、ソニー当社の内容をよくそのチームで理解していただいているという状況でございます。
 それから、ない物ねだりではないかという御指摘ですけれども、確かにまさしく今の日本の会計士監査の中で、こういうものがありますかという話なんですが、実はこれは当社に許された特殊な環境なんですが、米国会計基準というパイプがありまして、当社の会計のレベルというのはアメリカにつながっております。アメリカが営々とやってきました連結会計のバックグラウンドが、プライスウォーターハウスクーパーズという組織を通じまして当社にも及んでおります。従いまして、非常に特殊な環境の下に監査が行われているということをまず申し上げておきます。
 ただ、なぜこれをここで言ったかと申し上げますと、やはり日本の国際性というのは、先ほどからお話に出ておりますように問われておりますし、ないからといって、では許されるかといいますと、そういう状況でもない。そうなりますと、やはりノリッジバンクというものを何か築き上げる、もしくはノリッジバンクがアメリカにあるなら、それを使ってしまう。日本特有のものは日本特有のもので、軒を借りながらきちんとした日本のものを、今からゼロから作れというのは非常に国際性の中でむだな動きだと思いますし、国際的に確立したノリッジバンクをできるだけ有効に活用して、その軒先で日本の必要なものを補足していくという姿勢がまずないと、なかなか一朝一夕でできるようなものではないと思います。
 我々は、監査の内容は、実はアメリカのナショナルオフィスというのがプライスウォーターハウスクーパーズにありまして、そこで指摘が戻ってきます。アメリカから戻ってきます。従いまして、アメリカはなぜそんなことを真剣に考えるかといいますと、米国で当社が上場しております。従って、当社の事故は、アメリカの投資家が事故に遭うというでSECは大変関心を持っておりまして、その社会的な責任の下にそういう体制の中に入っているということで、お答えになっているかどうか分かりませんけれども、当社の状況はそういうことです。
 それから、システムの話ですけれども、システムは共通システムで、これは一般に市販されております会計システムをこの三、四年前から導入しております。その前までは当社独自のシステムで構築しておりまして、当社なりに自信を持って使っておったわけなんですが、ただ、会計の仕組みを全世界に統一的に導入するということになりますと、どうしても膨大なシステムの構築と指導と同期性、それからバージョンアップに対応するもの、それから末端でのノウハウの維持というのは、これは大変なものです。
 従いまして、ついに5年ぐらい前から、もうそれは使えないということを自覚しまして、米国で実績のある会計ソフトそのものを入れまして、それをコアに全世界展開しました。そのものはウィンドウズ95を前提に動いております。ですからマイクロソフトの前提。それから、それを会計のために合わせて使ってきたという過去の米国での成功例を前提に選択しまして、英語バージョンで全世界に導入しております。ですから、国内の関係会社も英語画面に入力しています。ですから、エクセルがバージョンアップされれば同時にそれがバージョンアップされるという、世代交代にも耐えられる。それから、ボーダーレスの問題もそこで解決できているという仕組みを入れまして、パソコンで動くシステムです。
 では、セキュリティの問題はといいますと、イントラネットに全て入れております。ですから、ファイアー・ウォールは一応情報に関してはかかっております。
 以上です。

○林委員 2番目の件ですけれども、今、日本の企業で、おたくと同じようにグローバル展開されているところは約500社ぐらいあろうかと思うんですね。そういたしますと、望ましくてすぐあるべき監査をしていただくには、おっしゃるように海外の非常に信用力があって、なおかつ有用性の高い監査法人とタイアップして、実効性のある監査をしてもらう方向が最も有効であろうと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。

○石川参考人 やはり投資家が被るリスクというものが最大の関心事です。従いまして、企業が自分の製品保証、製品のクォリティをお客様の問題がないように最大限努力するという意味では、もしその企業が全世界で資本調達をしているなら、当然のことながらその会社に対する投資に関する責任は、会社自身がそのコストを判断して、それなりの質のものを提供しなきゃいけないというふうに考えますので、従いまして、最大の努力等を尽くすということが必要ではないかというふうに考えております。

○林委員 あと1点、現在の会計システムについては、総額で大体どれぐらいハード・ソフトの金額がかかりましたか。

○石川参考人 まず、前に申し上げた社内の過去の仕組みがございました。このやり方というのは、勘定科目を統一しておりまして、各国に既にその科目値、それから、会計処理の方法が浸透しておりましたので、変えた部分は、データのとり方、それから、それを動かす機械、仕組みだけの部分で、考え方はそのまま会計ですので継続性でトランスファーしただけです。ですから、その部分だけを取り上げて申し上げますと、ホームページで今全部イントラネットでとっていますけれども、情報収集の部分から含めて、全世界で7億円ぐらいです。

○三原座長 では、ほかに。
 岸田委員。

○岸田委員 石川さんにもう一度お伺いしたいんですが、先ほどの藤田さんのレジュメに関して、そちらにちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほどのお話はほとんど監査法人の話だったろうと思うんですが、ソニーももちろん監査役とか、それから、社外取締役という方がいらっしゃると思うんですけれども、そういう監査の問題、それから、その監査についての最近の経営判断については、やはり監査役とか社外監査役、社外取締役のところがタッチしておられるのでしょうか。それとも、それは米国基準でほとんど全て全面的に、事実上はその監査法人にお任せになっていらっしゃるんでしょうか。ちょっとお伺いしたいと思います。

○石川参考人 監査役の規定で決められております部分は当然やっておりますけれども、当社の監査役は、やはり連結に対しても社内的に責任を持っておりまして、それで基本的に、外部監査人から報告を受けております。これは先ほどの藤田さんの御説明の順番は確か最後の最後で、あの順番で会計監査人から報告を受けるんですから、その前の段階でも頻繁に四半期毎の連結発表がございますと、外部監査人の方が当社の監査役に説明をして見ているという形で、具体的に報告を受けているという形です。監査役は、そのほかに会計以外の内部統制も含めましてやっておりますので、ウェイトでいきますと、内部の監査役は4対6ぐらい。4が会計、6が業務監査のウェイトではないかと思います。

○三原座長 ほかにいかがですか。
 関委員、どうぞ。

○関委員 今日、3人の参考人の方、それから奥山委員から、それぞれのお立場の御説明があったわけですが、最初の2人の事業の方の参考人の方から、それぞれ監査人に対する期待という面から、特に外国との比較においてお話がありまして、それで、単純に会計上の数字をチェックするというようなことではなくて、企業全体に、それから、先ほどのドイツのWirtscaftsprueferですか、そういうようなものとして期待していきますというお話があったわけでありますが、公認会計士という専門職にある方が、オーディットだけでなくて、いろいろなコンサルタントといったような領域の方の仕事にも関心を持って、また、それにふさわしい能力を持つべきだということについては、そういう努力がいろいろかかるんだと思うんです。
 それはそれとして、私はいいことだと思うんですが、制度論というようなもので議論するときに、証取法とか、あるいは公認会計士法とかで公認会計士の職務の責任ということを議論するときに、たまたま何か当該監査の対象になった企業に問題が発生したときに、それが監査を十分やったかどうかということを事後的に評価しなきゃならないということになるんだと思うんですね。その事後的に評価するときに、要するにWirtscaftspruefer的な能力があれば、それはチェックできたはずだというところをどの程度加味して評価していくかというところが、私は制度的に難しい問題じゃないかなという気がするんです。
 それで、その面でいくと、今度は公認会計士の方の奥山さんや参考人の方がおっしゃった企業存続能力でございますか、こういった問題との絡みが多分出てくるんじゃないかと私は伺って思ったんですが、将来のいろいろな予測とか、そういった問題についてこれから監査をしていただくということ。それから、先ほどの御説明の中にちょっとありましたけれども、国際的な監査基準というのができて、その監査基準の中には多分将来の企業存続能力についての監査の原則というようなものも入ってくるんだと思うんですが、そこは、まさに先ほどノリッジバンクというお話もありましたけれども、既にそういう将来の企業の存続とか、あるいはさらに発展とか、成長とか、そういったものについての専門的な知識を使ってやるんだという要素は、そして、それをやっていなければ公認会計士としても十分な責任を果たしたことにならないんだと、この部分は一体どういうふうにそういった中に盛り込まれているのかなというのが私はちょっと知りたいところなんであります。
 また、多分同じことだと思うんですが、私はこの前、別の会計の専門家のお話を聞くときに、アメリカのこういった監査の方は、これからの重点は先行きの予測とか、それから、経営のまさに存続能力とか、そういった問題がどうなるかという方をむしろ重視していくという方にだんだん移行しているんだというお話も聞いたんですけれども、そういったところは大体どういうふうになっているんだろうか。そのあたり、別に参考人の方だけでなくてもよろしいんですが、ぜひ今後の議論を進めるに当たって大事なことではないかと思うんです。

○三原座長 とりあえず参考人の方で、今の御意見に対して何かございますか。

○石川参考人 当社は、実は去年、SECから指摘を受けまして、リスクの開示がなかったとの指摘です。まさしくおっしゃっていることなんですけれども、リスクの開示がなかったということは、どういうことかといいますと、当社の映画ビジネスの中で、業績の先行きが余り芳しくないと社内的に思っていた節がありまして、それがはっきり会社のMD&Aの中で表明されていなかったということです。従って、当社が営業権の大幅な償却を1994年に行ったわけなんですけれども、その前までに投資家はそのことに関して知らされることがなかったということで、意図的とまでは言われませんでしたけれども、投資家に対する情報の提供の欠落があった、過失があったということで、一応そういうことがありました。今回もフュチャー・リスクに関しては書くようにというふうな指摘を受けております。
 先ほどのゴーイング・コンサーンの話ですけれども、ゴーイング・コンサーンになってしまいますと、ゴーイング・コンサーンを書こうか書くのをやめようかと会計士さんと話している頃には、もう既にかなり危ない状態で、死亡診断書をもらったときには――死亡診断書までは言いませんけれども、重傷の診断書をもらった頃には、投資家の皆さんはびっくりというぐらいの話なので、その前段階が当然あってしかるべきではないかと思います。
 多分、証券アナリストの方が会社のレーティングをかけるときに、アナリストの方のレーティングのノウハウは詳しく知りませんけれども、将来性、チャンスのほかに、リスクファクターをかなり検討されてレーティングというものを付けられていると思うんですね。あのノウハウと監査のノウハウが、ゴーイング・コンサーンのノウハウは分かりませんけれども、どこか共通性があって、ゴーイング・コンサーンの判断をされる前に、リスク判断で、今アナリストが必死に、投資家という目に見えるカスタマーがアナリストの方々はいらっしゃるわけですけれども、その方々が使っているテクニックを監査の中でも何か共有化して、そういう領域に関してはこういう危ない形が出ていますよということは、我々はしょっちゅうアナリストに一々お金を払って逆に指示を受けるのも変ですし、どちらかというと会計監査の方が会社の中を全て御存知ですので、アナリストに逆に渡してしまいますと、今度株価のも変なコメントになってしまいますので、もっと信頼のできる監査の方々とそういう話が適切なノウハウを前提に話せれば、これはひいては投資家保護にもなりますし、そういうびっくりするというようなことも起こらないで済むのではないかというふうに個人的に考えております。

○藤田参考人 監査役の監査でも、違法性監査と妥当性監査と言われますけれども、やはり会計士の監査に関しても、違法性か妥当性かというのは、言葉だけは分かりますけれども、実態は、根っこは非常につながったところがございますね。やはり合理性を欠いた取引をやっている、営業をやっていると、どうしてもまずい現象が出てきて、それを隠したがる、それで次は違法性になる。合理性あるいは妥当性から違法性というのは、そんなに截然と分かれるものではなくて、根っこは同じところがある。その程度の問題というところがございますので、そういう意味でWirtscaftsprueferといってもそんなに難しい話ではなくて、明らかに合理性を欠いているところはやはりきちっと指摘すべき。これが監査基準から見て違法ではないとか、マニュアルに書いてないからでは済まない。
 特に一つ挙げますと売上計上のところですね。日本は売上の計上をどうやっているかというのは全然開示しなくていいということで、会計士の方も監査上そんなに問題にしないところがございます。これは日本だけではなくて、アメリカでも、私もドイツへ行く前、1985年だったんですが、シカゴで企業が倒産しそうになって、なぜおかしいのかというのを調べに2カ月ばかり出張したことがございますけれども、アメリカの会計士も非常にノー天気なところがございまして、それでいいんだと。要するに何が問題かというと、フロアプランというやり方で、トラクターだったんですが、それをセールスマンを使って、そのセールスマンに、ディストリビューターに売らせる。そのときに、軒先に置かせてもらって売上を計上する。そこで一定期日経過すると、そこから利息計算まで始めると、こういうようなシステムで始まっていたものですから、在庫から売掛金から非常に大混乱を起こしたというような、そんな一種の事件がございまして、立て直しに大変なエネルギーがかかったんですけれども、そのときでもアメリカの会計士も、このフロアプランで売上の計上は問題ないんだと言うんですね。ところが、いろいろ調べてみると、アメリカのセールスマンは、自分の歩合給を増やすために無理矢理、相手が買う意思もないのに置かせてもらっていたというようなばかげたことをやっていまして、そのあたりは、どうして会計士はもうちょっと取引の合理性まで踏み込まないんだろうと思ったことがございます。
 特にアメリカは、最近は売上の計上基準もディスクローズしないといけないように聞いているんですが、日本はまだまだそのあたりは関心が薄いんじゃないかなと。そういうまずい取引を重ねていますと、今度はもうキャッシュ・フローにも必ず出てきますし、それを隠さんがためのいろんな工作が始まると大変だなと。
 だから、私はWirtscaftsprueferというところは非常に意義があって、やっぱり根っこから絶つ、原因のところから絶つと。現象面だけで突いたのではだめですよというところをぜひ会計士の方にもお願いしたい。そんなに難しい話じゃないと思いますよ。これは本当に心の持ち方といいますか、これをもって倫理というのか、品質管理というのか分かりませんけれども、一言で言えば経済合理性も、あるいは取引の合理性、あるいは業務改善についても一言言っていただきたいなというのがございます。 以上です。

○友永参考人 よろしいですか。

○三原座長 今の問題ですか。

○友永参考人 はい、今の問題です。

○三原座長 そうですか。はい。

○友永参考人 今お話に出ていたように、継続企業の監査はどういう形でやるかということになりますと、今にも死にそうになったところでやるわけではございませんで、絶えず企業の存続リスクというものの兆候があるかどうかということを視野に入れた監査を実施していこうということでございまして、まさに先生方おっしゃっていらしたように今までとは違った視点、いろいろな将来計画ですとか、我々監査人が今まで見ていなかったような物の合理性ですとか、そこら辺についても見ていかなくてはいけない監査だというふうに思っております。やはりそういった意味で、今回もしこういった監査制度を取り入れていただくとすれば、監査の質という面でもかなり違ってくるということが言えるかと思います。
 おっしゃるように会計士が出てきている財務数値だけを追いかけているという状態から、より全般的に企業の現在ある状況というものをもっと広く深くつかまえなければ監査できないという状況になっているのではないかというふうに思っております。

○三原座長 この問題は大変大きな問題で、議論すると切りがないといいますか、ほかのところでいろいろ質疑する時間がなくなると思いますので、いずれまたこういう問題提起があったと。つまり監査人の監査というのは、経営の在り方についてどこまで監査する責任があるかという問題ですね。それはまた議論する機会があると思いますので、折角の機会なので、一応問題提起というところで止めておいていただいて、また改めて議論したいと思うのでございますけど、よろしゅうございましょうか。

〔「はい」と呼ぶ者あり〕

○三原座長 それでは、ほかの問題で、もしあれば。
 中島委員、どうぞ。

○中島委員 奥山さんにお聞きしたいんですけれども、先ほどの御説明の中で、「3.今後の課題」というところで、社会での認識の確立というのが非常に重要だということで、財務諸表の作成の前提の理解というんですか、財務諸表の作成というのは第一次的な責任は企業にあるんだということを理解してもらうというお話をされまして、私もまさにそのとおりだと思いますし、そういう点での理解を深めていくということは大事だと思いますけれども、にもかかわらず、やはりその適正性を担保するために監査というものがあるわけですから、それだけで果たしてそういう意味での社会的な理解が得られるのかなと。
 その点で、奥山さんは非常に難しいという感じでお話しになられたんですが、その次のページで、「問題会社における問題の内容及びそれに対する監査人の対応等具体的状況を公表する方法があるのか。」という点で、私はやはりこれは非常に重要な問題じゃないかという気がするんですね。やっぱり問題になったときに、いろいろ守秘義務とか難しい問題はあると思うんですけれども、それに対するどういう監査が行われたのかというようなことについてのある程度の対外的な説明とか、そういうものが監査法人とか何かでやられるといいますか、そういう監査法人の態勢というものを考えていかないと、なかなか第一次的に責任が企業にあるというだけでは理解が得られないのじゃないかという気がいたします。
 それから、もう一つお尋ねしたかったのは、前回の10項目の提言の中で、私はこれはかなり重要な部分だと思ったんですが、監査法人における関与社員の交替制というのがございましたね。これについては、今日いただいた資料を見てみますと、特にその対応とか何かについて書かれていないんですけれども、何かこれまでにやられたことがあるのか。ほかの点について見ますと、この提言の内容というのは相当進展している、そういう意味での協会の努力が窺われるんですけれども、その点について、あるいは将来的にこういうことを考えておられるとかいうようなことがありましたら、お聞かせいただければと思います。

○三原座長 中島委員の質問にお答えになる前に、私からもちょっと補足的に今の問題ですが、私も中島委員と全く同じ意見を持っておりまして、公認会計士の監査に対する批判を実に的確に受け止めておられるとは思うんですが、それに対する対策としましては、非常に精神論的な面が多くて、ちょっと隔靴掻痒の感があるんですが、一番的確にそれに対応できるのは、今、中島委員が言われたように、具体的な問題があったときに監査はどうであったかと。それに対して良かったのか悪かったのかということを発表するのが、一番みんなの納得を得られることじゃないか。
 それと、もう一つ付け加えたいのは、要するに職業専門家としての相当の注意を払うべきだというふうに抽象的にありますけれども、それに対して、どこまで具体的に払ったならば責任を果たしたことになるのかという点について、今のような問題を詰めていきますと、結局ケース・スタディの積み重ねになりまして、非常に基準としては明確になると、こういう利点もあろうかと思うので、前から私はそういう趣旨のことを申し上げてきたのでございますが、問題点があるということはよく分かっておりますが、そこで足踏みしておられるのか、あるいは少しでも前進するために何かいろいろ模索しておられるのか。その辺も含めてお答えいただきたいと思います。

○奥山委員 それでは、2点に絞って申し上げたいと思いますが、まず、問題会社の状況について公表することについてですけれども、これはまさしくおっしゃるように、一方ではぜひこれは公表したい。また、私どもも外から見たら聞きたいというところはあります。これについて方法がいろいろあると思うんですけれども、これは実はアメリカでも訴訟を大分受けまして、いろいろなケース・スタディがあって、それに対してどう対応したかということについての過去の事例があるんですけれども、これは実は大議論がなされているんですね。
 それで、最終的にはやはり会計士協会という立場では訴訟――向こうの訴訟というのは半端じゃない金額ですから、何百億という単位の訴訟なものですから、そういう影響を与えるようなことについて具体的に対応すべきじゃないということで、個々の問題のことについて触れることは協会としてはどうもやめたようなんですね。
 では、そのほかにどういう方法があるのかという場合に、SECの方からそういう結果について公表する方法はどうか。あるいは今ちょっと出ました当該監査法人から公表する方法はどうかとか、こういうふうな研究の余地はあろうかと思いますし、日本でもそれに該当する研究の方法はあるかと思います。
 では、協会は何もしないのかということですが、実は先ほど申し上げましたように、例えばゼネコン問題につきましては特別調査会を設置して、ゼネコンのA社が倒れたからA社の問題ということではなくて、ゼネコンに含まれている共通の問題があるということを明確に出して、これについては意見といいますか、その見方を協会として述べてみたいと、こんな試行錯誤を始めております。ただ、ぜひこれについて、私も実は前向きに考えたい方なんですけれども、いろいろな影響を考えて、一番良い方法があるかというのがあれば、ぜひこのワーキンググループで御検討いただければありがたいと思っております。
 それから、関与社員の交替については、実はこれは品質管理レビュー制度の中で既に取り込んでありまして、その品質管理の中に、品質管理にちゃんと基づいているかどうかという元の中に関与社員の交替というのは明確に入っておりますので、これはむしろ実現、実施のチェックに入っていると、こういうふうにお考えいただければいいと思います。

○三原座長 今の問題も、いずれまた、これのまとめのときに大いに議論していただくということにしたいと思います。
 それでは、ほかの問題で。
 安藤委員、どうぞ。

○安藤委員 前回欠席いたしましたが、今日もちょっと遅れて来て、お話を聞いたのが藤田参考人の話と、それから奥山委員、友永参考人のお話をお聞きしまして、ここで感じたことを言いますと、ここの場所では、証取法会計監査だけに限定しないで、商法会計監査とセットで考える必要があるんじゃないかなという感じを強く持ちました。
 具体的例で申しますと、資料2の藤田参考人の2ページの特に2のところですね。会計監査人監査と監査役監査の関係。これはまさに監査役監査というのは、これは証取法監査にないわけですから、当然その辺を視野に入れていると思いますが、ここで当然商法監査との関係が出てくると思います。それで、私は商法特例法16条には問題があるということを前から思っているんですが、例えばそういうことですね。あそこでは御存知のように、会計監査で会計監査人がオーケーを出して監査役がオーケーを出せば、株主総会は報告でいいとなってしまっているんです。例えばあれで、業務監査で問題があれば計算書類は全部PLもBSも総会にかけろというドイツ式のやり方だってあり得ると思うんです。それが一つ。
 それから、同じレベルで言いますと、資料3の3ページの企業存続能力情報です。これは非常に今重要な問題だと私も思いまして、最近の会計の雑誌に債務超過の判定問題というので書きましたけど、まさにその問題がかかってくると思うんですね。
 そして、ここで友永参考人は抹消されましたけれども、「非継続企業に関する会計基準」、これは実は大事な問題なんですね。例えばこれは商法を待たなきゃならないと思いますが、その一つの方法として、これはちょっと暴論かもしれませんが、例えば財産目録を復活して、財産目録は全面時価でやると。そして貸借対照表は場合によって取得原価を固定資産について入れるというようなやり方。フランスはそうだというふうに聞いていますが、例えばそういう思い切ったやり方をする。
 それから、もう一つ、昭和13年の商法改正で削除されてしまったんですけれども、百何十何条かにあったと思いますが、債務超過になったら株式会社の取締役は破産を申し立てる義務がある。それがあるだけでも非常に緊張感が走るんですね。商法が、そういう危ない会社あるいは破産した会社の取締役に対して何の責任も負わせてないというところが、今回の特に日債銀とか長銀問題を大きくしたのではないかというように私は思っております。
 御参考までに。

○三原座長 幅広く監査の在り方を討議するということですから、特に範囲は限定はないというふうに御理解いただきたいと思います。
 分かりました。
 ほかにいかがでしょうか。
 岸田委員、どうぞ。

○岸田委員 今のゴーイング・コンサーンの問題でございますけれども、私も同じようなことを、ちょっと別の観点でございますけれども、先ほどおっしゃらなかったんですが、一つは法律の問題で、どういうことかと申しますと、明確に基準を作りまして、そしてリスク情報一般そうだろうと思うんですけれども、これは将来のことですからよく分からない。間違った判断をすることはあり得ますので、セーフハーバーといいますか、何かこういう場合は責任免除されるんだというようなことを法律できちっと定めれば、会計士の方もちゃんと意見を出せるのではないかというふうに思います。
 というのは、前回お配りいただいた資料にございますけれども、会計士制度50年間で、私はこれを聞いただけで、間違いかもしれませんが、少なくとも上場会社については「不適正」という意見は出たことがないと。もしそうであるとすれば、何のためのそういう制度があるかということで、やはりそれは会計士さんが「不適正」という意見を出して、その結果、上場廃止になって倒産をしたら責任があるからだろうというふうに思いますので、会計士さんの責任をこういう場合は免除するんだというような法律上の基準、あるいは省令上の基準を作るというのが私はよろしいんじゃないかと思うんですが、会計士協会としてそういうような御要望というのはございませんでしょうか。

○奥山委員 実は、その法律の問題まで行くかどうか分かりませんけれども、取引所で上場廃止基準の中に、「不適正」「意見差控」の問題があるんです。当然精いっぱい監査をして、ある程度詰めていると思いますけれども、ぎりぎりの段階。つまり一番難しいのは、グレーゾーンのときに意見をどう反映するかということが過去にあったんだろうと思います。それが仮に上場廃止につながったとしても、それは会計士の責任でないと。あるいは債務超過になるような不適正意見を出したとしても、それがすぐ上場廃止につながらないというふうな制度的な保証、担保があれば、また少しは違う面もあるのかなと思いますが、ただ、それは会計士の立場から言うと、しかし、それは命をかけてもやるべきだという意見もないわけではないので、これは一概にまだ協会として決まったという意見としては、ないと言った方が正確だろうと思います。

○三原座長 大分時間が窮屈になりましたが、あとお一方ぐらい、どなたか。

○若杉企業会計審会長 よろしいですか。

○三原座長 では、どうぞ。

○若杉企業会計審会長 参考人の方々から御意見を伺いまして、いろいろ勉強になりました。中には、例えば会社事業全般についての理解をして、それから会計監査に入るべきだというような御要望がありましたけど、我々講義で監査論を教えるときには、監査をする前に会社の状況はよくいろんな角度から広く調べろよと、そういうことを教えますし、それから、今改正される前の監査基準でもそれを言っているわけですよね。ですから、それは会計士試験にも当然範囲の中に入っていることで、会計士の試験を受ける人はよく勉強しているはずなんですけれども、実践ではそれが実行されてないのが非常に残念に思いました。
 それから、いろいろまだ問題がありますけれども、時間の許す範囲内で一つのポイントを申し上げますと、会社が非常に経営上問題が起こっていて、ゴーイング・コンサーンという観点から見ると非常に危険な状況にあるときに、監査人が監査の立場から、例えばこういう点に問題がある、これは不適正な処理だということを述べるのは、これは当然のことなんですけれども、この会社はもう先がないよとか、そういうようなことまで監査人が言うことなのかどうかという点、先ほど来問題になっておりますけど。
 なぜかといいますと、もし大きな会社が倒産しますと大勢の人が路頭に迷うとか、あるいは債権者が債権回収できなくなるとか、いろいろ問題が起こります。そうすると、会計の面だけでの筋を通して、その面からだけ筋を通せば倒産してもやむを得ないんだという見方をとるのか。それとも、一つのそういう大きな問題というのは、いろんな角度から見て、そして全体的に総合的な判断をして決定を下すべきなのか。それは大きな問題だと思うんですね。ですから、投資者保護という観点一本から言って、この会社はもうだめな会社なんだというふうに言い切っちゃうような形というものがいいのかどうかという点は、大いにみんなで議論すべき問題だと思うんですね。
 とかく我々、私だって投資者のための会計ということから、不適正な決算をやっていれば、当然それを指摘すべきだと思いますけれども、会社が倒産するという問題に係わらせて考えると、いろんな角度から判断する問題であって、それはみんなで議論すべき問題じゃないかというふうに考えますけれども、これからこの会を進めていく場合の一つの問題の見方だと思います。
 以上です。

○三原座長 どうもありがとうございました。
 予定の時刻が参りましたので、本日の会合はこの辺で終了させていただきたいと思います。
 次回も引き続き、各界の実務者の方々、3名の方に参考人として御出席をいただく予定でありまして、その御意見を伺った上で意見交換を行いたいと考えております。
 なお、次回の会合は、5月28日(金曜日)午後2時から、当第三特別会議室において開催させていただきたいと思いますので、御出席いただくようよろしくお願いいたします。
 それから、皆様の机の上に第1回会合の議事録、未定稿ですが、これをお配りさせていただいております。御覧いただきまして、お気付きの点がございましたら、お手数ですが、5月21日の金曜日までに事務局の方へお知らせくださるようにお願いしたいと思います。
 それでは、以上をもちまして、本日のワーキンググループを終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。

午後3時34分閉会