平成9年4月24日                                                               


会計士監査の充実に向けての10の具体的施策の提言



                                                                        


        証券市場の活性化を図るためには、ディスクロージャーの適正性の確      


      保による市場機能の有効な発揮が不可欠であり、これは、会計基準、監      


      査実務等ディスクロージャーの全体を通じた総合的対応により達成され      


      る。                                                                


        審査会の提言する10の具体的施策は、企業会計審議会における透明      


      性ある企業会計制度の整備と一体として、ディスクロージャーの適正性  


      の確保・投資家を重視した企業経営(コーポレートガバナンス)の推進  


      により、我が国企業の魅力の向上に貢献する。                        


                                                                        


                                                                        


    (投資家と発行体を正しく結ぶ会計士監査)                          


                                                                        


    (1)  監査の難度に対応した監査手法の高度化                          


        企業活動が複雑化する中で、内部管理体制に問題がある場合には、不正


      支出に対する内部チェックが働かない可能性がある。                  


        このため、会計士は、企業の内部管理体制を審査し、審査結果に対応し


      監査手法を選択する(人員を増加させたり悉皆的な取引のチェックを行う


      等)。更に一歩進めて、事前の調査の結果、企業側に意図的な粉飾の危険


      性が感じられる場合等に対し、特捜チームなどを組織する。            


                                                                      


    (2)  監査役監査・内部監査との相互補完                              


        企業の業務内容や組織体制等は、監査役や企業の内部審査部門がその適


      正さを監査している。                                              


        企業のコーポレートガバナンスの維持向上を進めるためには、企業の経


      理と業務の両面からのチェックが有効であり、財務諸表を監査する会計士


      と監査役等が相互に情報交換を進め、互いに補い合う必要がある。      


        このため、会計士と監査役等の連携ガイドラインの整備や協議機関の設


      置などを検討する。                                              


                                                                        


    (3)  ベンチャー企業の資金調達への貢献                              


          財務諸表等の会計士監査が証券取引法上義務づけられていないベン  


      チャー企業等の株式について、証券会社の勧誘を行い発行・流通の場を提


      供することが証券取引審議会において検討されている。                


        会計士は、市場での資金調達を行うベンチャー企業等の会計処理・ディ


      スクロージャーの整備のため、任意監査やコンサルタント業務により積極


      的に対応する。                                                    


                                                                        


                                                                        


  (会計士監査のグローバリゼーション)                                


                                                                        


    (4)  監査のクオリティコントロール                                      


        企業の業務分野は様々であり、多角化・国際化も進んでいることから、


      各々の企業に最もふさわしい知識・経験を有する会計士のチームにより、


      緊張感ある監査が行われる必要がある。このため、ローテーションを含め


      た人員配置・体制・審査・昇進を具体的に規律する「品質管理基準」を作


      成し、これに基づく監査の品質管理(クオリティコントロール)を行う。


                                                                      


    (5)  監査実務指針の体系的整備                                      


        会計士協会の監査実務指針は、これまでに11本整備されているが、更に


      諸外国と遜色ない体系的な整備を進める。                              


        ことに銀行等の不良債権の監査について、会計士協会の銀行等監査特別


      委員会は、資産査定基準等を作成しており、これに基づき監査実務・体制


      を整備する。                                                    


                                                                        


    (6)  外部の専門家の活用                                            


        企業のコンピューター経理処理を監査するには、コンピューターエンジ


      ニアが作成するチェックプログラムを使用する必要がある。            


        このように会計士のみでは検証しがたい専門領域の監査に関し、コン  


      ピューターエンジニア、年金数理人、税務専門家等を活用する。      


                                                                        


    (7)  監査報告書の情報提供の拡充                                    


        監査報告書において、投資家の投資判断に際し実質的に有用な情報が記


      載されるよう、                                                    


      i)発行体の存続に重要な影響を与える事象について情報提供を進める  


      ii)実施した監査の手続を一層詳しく記載することなどを検討する。    


                                                                        


                                                                        


  (会計士協会の指導監督機能)                                              


                                                                      


    (8)  監査の事後的審査                                              


        会計士の監査内容や監査体制を事後的に審査し、問題点を是正すること


      により、監査が質的に向上する。                                    


        このため、米国会計士協会は、他の会計士が監査の事後的審査を行う  


      「ピアレビュー」を実施しており、我が国においても、会計士協会により、


      事後的審査制度の具体化を進める。                                


                                                                      


    (9)  継続的専門教育の実施                                        


        会計士協会は、最新の幅広い実務知識(金融商品、債権評価、コン    


      ピューター監査技法等)や事例研究などを内容とする単位制の会計士専門


      教育を早急に実施する。                                          


                                                                      


    (10)  会計士界の活動のオープンな議論                              


        会計士監査は、専門性が高く、顧客との守秘義務もあるため、会計士か


      らの一方的な制度等の説明では、監査の意義や機能について、投資家等の


      十分な理解を得ることは難しい面がある。                            


        このため、一方的な説明ではなく、双方向的なオープンな議論が必要で


      あり、投資家等の疑問に応えるホームページの設置や、監査実務指針を作


      成する過程の議事録の公表などを行う。                              



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