1.日時 :平成8年10月25日(金) 15時00分〜17時00分 2.場所 :合同庁舎四号館 第二特別会議室 3.議題 :将来の市場のビジョン(一般討議) 4.議事内容 今回の会合のテーマは、「将来の市場のビジョン」であり、まず植田委員(東京大学 教授)より基調報告が行なわれた。具体的には、以下のような点について報告がなされ た。 ・総体として、自由化の方向に向かうことは賛成できるが、幾つかの留意点がある。 ・公的規制の根拠として、(1)小口投資家の保護、(2)システミックリスクの回避、(3) 市場メカニズムが有効に働くためのインフラの整備(情報の非対称性の緩和、会計制 度、ディスクロージャー制度、決済システム、不公正取引の防止・処罰、取引を歪 めない税制等)がある。 ・ルールは万能ではなく、全てを事前に予見できないので、裁量的規制は必要である。 しかし、裁量は合理的な基準で策定され、市場参加者に明確に伝わる必要がある。 その後、コメンテーターからの発言、及び一般討議が行なわれた。 <主な意見> ○日本の資本市場を考えたとき、「自由のこなし方」に問題がある。海外からは、日本市 場は株価形成が歪められており、信用できないとの指摘がある。大正デモクラシーのこ ろまでは日本人も自由をこなす力量があった。それが崩れて7〜80年になる。現在 民間企業の胆力が試されている。 ○発行者の地位が仲介業者との関係で強く、無理を押しつけているという印象を受ける ○「証券市場は国民共有の重要な財産、公共財である」という認識を政府は全国民に明ら かにすべき。 ○「国際的整合性のある、自己責任原則が貫かれた、市場原理に基づく効率的な資金調達 と資産運用が行われる市場」でなければならない。その基本は公正な価格形成と豊富な 流動性である。 ○証券市場だけを問題とするのではなく、「金融資本市場」という大きな視点で考えるべ き。 ○我が国特有の市場環境を、新たな市場構築の際にいかに同調させるかがポイント。 ○東京市場がいかにN.Y市場に追いつくか等の視点だけでなく、東京市場がN.Y市場 に打ち勝つ武器は何かという視点もある。武器とは、(1)1200兆円という豊かな金融資産、 (2)成長著しいアジアとの結びつき、である。 ○中小企業対策は根本から見直すべき。規模が小さいからといって優遇すべきではない。 ○地方の非会員の中小証券会社が退出すると、地方の個人の積極的投資家が市場から離れ ていくのではないかという懸念がある。 ○証券市場に厚みを持たせるために個人投資家を参加させるという観点ではなく、個人に 市場参加の自由があるという観点から、個人にとって使いやすい市場のスキームを考え るべき。ディスクロージャーの徹底、公正取引ルールの明確化とルール違反に対する厳 罰が必要。 ○我が国証券市場が世界市場として活況を有するための条件は、内外の投資家にとってど れだけ魅力ある市場であるか、につきる。広く投資家を集めるべく、投資対象そのもの の魅力、公正な価格形成の確保が本質的に求められる。 ○「自分を守れる人」と「保護を必要とする人」の市場の法律問題は分ける必要がある。 機関投資家の問題については法は謙虚であるべき。一方、個人投資家については、特に 高齢化社会における弱者が安心できるスキームを考える必要。効率性の追求は健全性と 安定性をベースにすべき。 ○金融市場ではプロとアマの区別は難しく、また現在進んでいる規制緩和等を考えるとア マにも厳しい自己責任原則を求めないと現況は変わらないと思う。 ○我が国マーケットをニューヨーク並の効率的市場へ条件整備するため、企業のパーフェ クト・ディスクロージャー、時価会計と連結決算、アナリスト制度の確立、投資家のポ ートフォリオ戦略の確立、及び投資家の自己責任原則の確立が必要。 ○株式持合いは価格形成の歪みと流動性の不足の問題に鑑み、長期的計画に基づき解消を 図り、個人・年金・投信等純投資を目的とする保有者に移行することが重要。 ○米国では、銀行による金融支配、マーケット支配を排除すべく、銀行による事業会社の 株式所有を禁止している。日本でも、銀行による株式所有のあり方を検討すべき。 ○資金調達手段の多様化により、銀行が企業支配することはあり得ない。 ○銀行の固有業務である決済及び信用業務について銀行が独占を保つことは業務の公平性 を欠くと思う。このような銀行固有の業務への証券業の参入はそもそもあまり議論され ていない。 ○担い手規制としての免許制は、信用性の維持、行政コストの面からも維持すべき。ただ し免許制の範囲内での最大限の業務の自由化、参入・退出の自由は認めるべき。 ○現行のまま手数料のみ自由化しても、我が国証券市場の米英並の活性化という目的が達 っせられるかは疑わしい。まずアメリカなみのインフラ整備、効率的市場の条件整備が 必要。 ○日本はインフラコストが高く、手数料の議論をするにあたっては、この事も念頭に置く 必要がある。 ○市場集中原則が機関投資家に投げかける問題として、マーケット・インパクトがある。 大口取引を行なうために多くの時間とコストをかけている。インスティネットのような 匿名性、マーケット・インパクトが少ない市場の存在が必要。 ○ストック・オプションの導入が必要。経営者、社員の総株主化を図るべき。 ○ストック・オプションを本当に導入できる会社が何社あるかという視点も必要。 ○日本の制度の歪みが一部の人にビジネスチャンスを与えているという面があるが、公正 の観点からも歪んだ制度の是正が必要。 ○貸株市場の整備は、バランスのとれた株価形成に資するものであり、アメリカのように 機関投資家中心の貸株市場を設けるべき。 +−−−−−−−−問い合わせ先−−−−−−−−−−−+ |大蔵省証券局総務課調査室 森田、小桐間 | |TEL 3581-4111 (内線 5434) | |本議事要旨は暫定版であるため今後修正がありえます。| +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+