II.改革の目標と手順                                                                

                                                                                        

      1.改革の目標                                                                    

                                                                                        

          以上の認識に立てば、我が国証券市場が目指すべき改革の方向は自ずと明らかになる。  

        改革は我が国市場をより魅力あるものとすることを基本に、次の五つの目標を掲げるべき

        ではないか。                                                                    

                                                                                        

        1)  証券市場を資金仲介の主役に                                                  

                                                                                        

            成熟化社会における国民金融資産の形成と適切な資金配分のニーズに応える、金融仲

          介において中核となる魅力と厚みのある市場とする。魅力と価値ある多様な商品が投資

          家の資産運用ニーズを満たし、活発なリスク・テイクが円滑な資金調達を促すなど、証

          券市場に求められている積極的な役割・機能が十分に発揮されることにより、国民経済

          の持続的活力の保持に貢献しうる市場となろう。                                  

                                                                                        

        2)  「東京市場」の復権を                                                        

                                                                                        

            ニューヨーク、ロンドンと並ぶ三大センターとしてこれらの市場と遜色のない競争力

          を持つ、国際的な市場とする。国際的水準の制度的基盤整備を進め、また、取引コスト

          の低減を図るとともに、我が国市場が国際的なルールや慣行に合致したものとすること

          等を通して、空洞化を防止するのみならず、グローバルな資金の効率的配分に資する、

          世界に貢献する市場となろう。                                                  

                                                                                        

        3)  21世紀にも通用する枠組みを                                                

                                                                                        

            21世紀を展望し、基幹産業の一つとして世界をリードしうる市場仲介者が活躍する

          市場とする。世界的に競争力の高い、効率的かつ革新性と企業家精神を有する市場仲介

          者の活躍を通じ我が国金融・投資サービスが再生し、廉価で質の高いサービスが提供さ

          れれば、21世紀において証券業を中核として金融・投資サービス業での雇用が確保さ

          れるばかりか、このサービスを利用する我が国の他の産業の競争力の維持・促進にも資

          することとなろう。                                                            

                                                                                        

        4)  すべての人に開かれた市場を                                                  

                                                                                        

            様々な人々・企業が、自由に参加でき、便益を享受することができる、利用者本位か

          つ国民に身近な、開かれた市場とする。このような多数の多様な市場参加者が、積極的

          に、それぞれのニーズに応じ市場を利用し、市場を変えていくことにより、活力のあふ

          れる市場となろう。                                                              

                                                                                        

                                                                                        

                                                                                        

        5)  公正・透明な、信頼感ある市場に                                              

                                                                                        

            立場・背景・能力を問わず利用者が進んで参加できるような、信頼される市場とする。

          このためには、自己責任原則が市場参加者に対し求められることを前提とした上で、自ら

          の責任の及ばない原因により不当な不利益を受けることがなく、また、このことが担保

          されていることが誰の目にも明らかな、明確なルールに基づく、透明で、信頼される公

          正な市場でなければならない。また、こうした観点からは、個人投資家の市場へのアク

          セスを担保するという市場仲介者の公共的な性格も十分に確保された市場とする必要が

          あろう。                                                                      

                                                                                        

                                                                                        

      2.改革の手順                                                                    

                                                                                        

        (1) こうした市場を目指すに当たっての改革は、市場のあり方を基本的に変えていくもの

          であり、市場各般にわたる総合的なパッケージとして実行されなければ改革は成功しな

          い。市場規制や制度的基盤の枠組みを改革しつつ、市場に関係する者それぞれが、先に

          述べた現在の市場の問題点に照らし、それぞれの立場で一つ一つ直面する問題について

          取り組みつつ、自らが成し得ることについて、積極的に変革を進めていくべきである。  

                                                                                        

        (2) また、改革を要する具体的項目は相互に関連し、総合的な改革が要請されていること

          から、できるだけ時期を含めた改革の手順を明示することが改革を成功させるために必

          要である。さらに、一旦空洞化が進展してしまえばこれを元に戻すのは至難であるから、

          改革は早急に行う必要がある。こうした改革の緊要性に鑑みれば、市場の安定性等に留

          意しつつも、21世紀初頭には、概ね全ての改革を完了することを目標とすべきである。

                                                                                        

        (3) なお、目指すべき市場の姿に向けて改革を行っていくに当たっては、金融機関の不良

          債権処理を始めとするバブル崩壊後に残された当面の金融・資本市場の諸問題への取り

          組みを同時に進めていくことが不可欠であることは言うまでもない。

 


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