3.市場仲介者(証券会社、資産運用業者)=(高い付加価値を持った多様な資産運用サービス 等の提供) 21世紀の証券市場は、資産運用がなされる場という性格により重点が置かれるととも に、企業の資金調達においても、企業が最適な財務構成を構築していくためのサービスの 充実が要請されている。こうした証券市場においては、市場仲介者の役割も、質的に変化 していく。証券会社にあっては、ブローカレッジ業務中心から脱却し、資産運用サービス を中心に、高付加価値を生む、もしくは顧客のニーズにきめ細かく的確に対応することが 要請されよう。こうしたニーズに応えるため、証券会社が業務の多角化・差別化を進めて いくことが可能となるような枠組みを整備する必要がある。また、投資信託業務、投資顧 問業務等の強化を図りうるようにする必要もあろう。 なお、仲介者はそれ自身が市場の重要な参加者であることは勿論であるが、同時に、 個人の市場へのアクセスの担い手等の公共的な役割を担っていることに留意が必要である。 行政としても、こうした仲介者の公共的性格の確保に努めていく必要がある。今後の行政 は、個々の仲介者や取引の安全性を追求するのではなく、明確なルールの厳正かつ機動的 な運用により、市場機能が適正に発揮されることに主眼をおくべきであろう。 [具体的検討項目] ○ 手数料自由化 証券会社経営の多様化・差別化及び市場の効率化・機能向上を通じて、市場の活性 化を図っていくためには売買委託手数料を始めとする諸手数料の自由化を行っていく べきではないか。 なお、特に委託手数料の自由化については投資家のアクセス、証券会社の経営、証 券市場の構造、ひいては我が国経済社会に大きな影響を与え得るものであることから、 証券市場の改革の全体の枠組みの中で検討・実施されるべきではないか。 ○ 業務の多角化 証券会社等の市場仲介者について、その機能を十分に発揮していくため、不正・利 益相反等の排除に留意しつつ、創意工夫の発揮の下で、ラップ・アカウント業務を始 めとした高い付加価値を持つ魅力ある多様な商品・サービスの提供を可能とする方向 で検討を進めるべきではないか。この中で、マーケット・メイク機能の充実等の市場 の要請に照らしても、ディーリング業務はブローカレッジ業務の補完との考え方も見 直すべきではないか。 ○ 持株会社の活用 我が国において持株会社が認められることとなった際には、利益相反等により顧客 等の利益が損なわれる可能性を排除しつつ、多様な業務展開と経営の効率化により高 い付加価値の創造がなされることが可能となるような持株会社の活用の枠組みを提供 する方向で検討を進めるべきではないか。 ○ 資産運用業(投資顧問、投資信託)の強化 資産運用業(投資信託、投資顧問)については、グローバル化が進展する中で、効 率的・個性的な運用が求められている。こうした観点から、競争力のある資産運用業 の確立に向けて、その運用方法の多様化等について検討していくべきではないか。 ○ アナリスト、評価機関、ファイナンシャル・プラナーの役割 リスクとリターンを個人を含めた投資家にとって分かりやすいものとし、公正な市 場価格の形成を図る観点から、アナリスト、パフォーマンス評価機関及びファイナン シャル・プラナーが果たすべき役割をどう考えるか。 ○ 証券会社の健全性チェックの充実 今後、仲介業者の業務の対象や取扱い商品等を多様化していくこと等を通じて競争 を高めていく前提として、証券会社の健全性チェックを充実していく必要があるので はないか。その場合の方策はルールに基づいた明確かつ透明なものである必要がある のではないか。 ○ 仲介業者の参入・退出のあり方 適正な競争原理の発揮のため、いわゆる「相互参入」にとどまらず適格な者の参入 と個々の経営判断に基づく退出が円滑に行われるための方策について検討すべきでは ないか。 ○ 破綻処理制度等 自己責任原則を一層徹底させた上で、仲介業者の競争を高めていくとすれば、仲介 業者が破綻した場合に顧客に不測の損害が及ばないよう、顧客資産の分別管理の徹底 や寄託証券補償基金の拡充等を検討する必要があるのではないか。