有価証券関連の店頭デリバティブ取引について


平成9年5月13日

証券取引審議会デリバティブ特別部会


はじめに


                                                                  

      デリバティブ取引は、金融・証券取引の自由化、金融技術の発達を

    背景に、新たなヘッジ・資産運用ニーズ等に応える取引として、取引

    規模が世界的に拡大の一途をたどっている。                      

      我が国のデリバティブ市場を見ると、取引規模は拡大しているもの

    の、諸外国に比べて、特に有価証券関連のデリバティブ取引の種類が

    限られており、この面での改善の余地は大きいと考えられる。デリバ

    ティブ取引のメリットが、より少ないコストでキャッシュフローとリ

    スクを自由に組み合わせて再配分する取引であることにかんがみると、

    デリバティブ取引の多様化を図ることは大いに意義のあることである。  

      また、現在、金融・証券取引のグローバル化が急速に進展し、資金

    が利便性の高い市場を求めて流れて行く傾向がますます強まっており、

    こうした環境変化の中で、我が国市場の国際的競争力を確保して行く

    ことが喫緊の課題となっている。デリバティブ取引の多くは、原資産

    の移転を伴わない取引であることから、取引の流出の可能性が大きく、

    かかる観点からも、我が国におけるデリバティブ取引の多様化を図る

    必要性は大きい。                                              

      当審議会では、こうした問題意識の下、有価証券関連のデリバティ

    ブ取引の多様化について審議を行ってきたところである。証券取引所

    におけるデリバティブ取引の多様化については、先般、証券取引所に

    おける個別株式オプション取引の導入についてデリバティブ特別部会

    の共通認識を公表しており、当審議会においては、引き続いて、店頭

    における有価証券関連のデリバティブ取引に焦点を当てて検討を行い、

    以下のとおり報告書を取りまとめた。                            

1.店頭デリバティブ取引の意義


                                                                  

      取引所でのデリバティブ取引が言わば規格化された取引であるのに

    対して、店頭では、個々の取引当事者のニーズに即応したデリバティ

    ブ取引が行われる。金融・証券取引が高度化する中で、ヘッジや資産

    運用収益の向上等に対する投資家のニーズはますます多様化している

    が、店頭デリバティブ取引は正にこうしたニーズの多様化に応える取

    引として急速に発展してきている。また、この取引は、金融・証券業

    者が創意工夫を発揮して、最新の金融技術を駆使する取引であるとと

    もに、業者の競争力が試される取引でもある。                    

      店頭デリバティブ取引にはこうした自由度がある反面、取引所取引

    に比べ信用リスクが大きいことや、必ずしも流動性が伴わないといっ

    た点もある。したがって、取引所でのデリバティブ取引と店頭デリバ

    ティブ取引は、両者が相補う関係にあると言える。                

      現在、世界的に金融・証券取引が急速に新たな展開を繰り広げてい

    るが、デリバティブ取引は正にその原動力の中心であり、その発展は

    将来の金融・証券取引の姿を左右する大きな鍵となっている。      

      こうした中で、我が国においては、有価証券を原資産とする店頭デ

    リバティブ取引について法的制約があることから、諸外国に比べて店

    頭デリバティブ取引の多様性に欠けるという問題が生じている。今後

    の金融・証券取引における店頭デリバティブ取引の重要性にかんがみ

    れば、その健全な発展のために、早急に所要の法的整備を行い、我が

    国市場の国際的競争力の確保に努めていく必要がある。            

                                                                  



2.現在における法的制約と必要な法令整備


                                                                  

      有価証券を原資産とする店頭デリバティブ取引のうち差金により決

    済する取引については、証券取引所の相場を使った差金授受を証券取

    引所の外で行うことを禁止する証券取引法第201条の構成要件に該

    当するのではないかとの疑義があり、また、有価証券の価格は確実に

    予見し得るものではないことから、刑法上の賭博罪の構成要件にも該

    当するのではないかとの疑義があるとされており、これらが、我が国

    において、有価証券を原資産とする店頭デリバティブ取引を行う場合

    の法的制約となっている。                                      

                                                                  

      デリバティブ取引の発展のためには、法的関係を明確にして、こう

    したいわゆるリーガルリスクをなくすよう、有価証券を原資産とする

    店頭デリバティブ取引を定義付けるとともに、これらを証券会社等の

    業務(証券取引法第2条第8項各号に列挙されている証券取引行為)

    として証券取引法等に規定する等の法令整備を行うことが必要である。  

                                                                  

      また、その際には、以下に述べるとおり、デリバティブ取引の健全

    な発展を確保するため、公正な取引のためのルール、リスク管理、デ

    ィスクロージャー等について併せて法令整備を行っていく必要がある。  

                                                                  

      なお、オプションを表示した証券であるカバードワラントについて

    は、その証券の性質から考えて、これを証券取引法上の有価証券とす

    べきである。                                                  

                                                                  

3.現物取引及び証券取引所でのデリバティブ取引との関係


                                                                  

      先に述べた通り、取引所でのデリバティブ取引と店頭デリバティブ

    取引は相補う関係にある。また、店頭デリバティブ取引と、現物有価

    証券取引、証券取引所でのデリバティブ取引は、ヘッジ、裁定取引等

    を通じて相互に連関し合っている。さらに、店頭デリバティブ取引は

    新たな投資手段を提供するものであることを考えると、有価証券関連

    の店頭デリバティブ取引の発展は、現物有価証券取引や証券取引所で

    のデリバティブ取引の増加にもつながると見込まれる。            

                                                                  

4.リスク管理体制の充実


                                                                  

   (1)  デリバティブ取引は、リスクが複雑に絡み合っている面もあるこ

      とから、リスクに対する理解や管理方法が不十分な場合には不測の

      損失を招来する可能性があり、国内外でも大きな損失事例が現実に

      発生している。特に、店頭デリバティブ取引は、先にも述べたとお

      り、取引所でのデリバティブ取引に比べて、信用リスクや流動性リ

      スクなど、直面するリスクが大きいことから、取引当事者には、リ

      スク管理体制の充実が一層求められる。                        

                                                                  

   (2)  しかしながら、リスク管理は、本来は、証券会社等の内部体制の

      問題であり、また、店頭デリバティブ取引の特長はその自由度にあ

      ることから、各証券会社等の経営戦略の違いが取引内容の違いに反

      映され、その結果、求められるリスク管理の在り方にも、自ずから

      違いが生まれてくるものである。例えば、証券会社等の中にも、グ

      ローバルプレーヤーとして積極的に店頭デリバティブ取引を行う者

      から、エンドユーザー的立場に終始する者まであり、こうした点か

      らも、求められるリスク管理の内容には相当の開きがある。      

                                                                  

   (3)  したがって、すべての証券会社等が遵守すべきリスク管理の具体

      的内容を一律に規定することは適当でないが、店頭デリバティブ取

      引を営業として行う証券会社等に最低限求められるリスク管理の指

      針については、世界の監督当局の間で共通認識が出来上がってきて

      いる。                                                      

                                                                  

        IOSCO等で示されているリスク管理の指針は、おおむね以下

      のとおりに要約できる。                                      

      ○  取締役会又は同等の組織は、店頭デリバティブ取引業務のため

        のリスク管理の方針及び手続を定め、周知すべきである。      

      ○  社内で独立した市場リスク管理を行うべきである。具体的には、

        そこで、イ.合理的なリスク限度枠の設定及びその適用状況の管

        理、ロ.社内で用いる市場リスク算定方式の点検、ハ.重大な価

        格変動等の影響のシミュレーション等を行う。                

      ○  社内で独立した信用リスク管理を行うべきである。具体的には、

        そこで、イ.合理的な与信限度枠の設定及びその適用状況の管理、

        ロ.社内で用いる信用リスク算定方式の点検等を行う。        

      ○  リスク管理に十分な経営資源を振り向けるとともに、社内の専

        門知識を十分に確保するようあらゆる努力を払うべきである。  

      ○  基本契約書、ネッティング契約、担保徴求等のリスク削減技術

        を適当な場合には利用すべきである。                        

      ○  自社及びグループの時価評価に基づくリスクを日々算定すべき

        である。                                                  

      ○  会社のリスク管理、経理及び情報のシステムは、正確かつ適時

        な情報がいつでも得られるものとすべきである。              

      ○  リスク管理を実施するに当たり、収入や資金手当てが十分とな

        るよう、財務状況を継続的にモニターすべきである。          

                                                                  

   (4)  店頭デリバティブ取引を行う者は、こうした指針を勘案し、自ら

      の経営戦略に応じた適切なリスク管理体制を構築しなければならな

      い。                                                        

                                                                  

5.自己資本規制及び報告体制


                                                                  

   (1)自己資本規制                                                

                                                                  

        店頭デリバティブ取引の発展に応じて、証券会社の自己資本規制

      も、デリバティブ取引の実態に即応した内容のものとなるよう整備

      する必要がある。                                            

        具体的には、                                              

        ○  現行の自己資本規制においては、金利スワップ、FRA等の

          店頭デリバティブ取引については、市場リスクがリスク額に算

          入されていないが、有価証券関連の店頭デリバティブ取引を含

          むすべての店頭デリバティブ取引について、市場リスクを適切

          に算入する方式に改める                                  

        ○  ヘッジ取引の実態を適切に反映させるよう、ポジション間の

          リスク量のネッティングについて所要の措置を講じる        

      等の改正措置を講じることが必要である。                      

                                                                  

        なお、統計的手法によるリスク計量方法であるバリュー・アット

      ・リスク等の考え方による内部モデルの採用については、IOSC

      O等での議論や国際的動向等を注視しつつ、更に検討していくこと

      が適切である。                                              

                                                                  

   (2)監督当局への報告体制の整備                                  

                                                                  

        店頭デリバティブ取引は、リスク管理の失敗等により不測の損失

      事故を招来する可能性を内包している。また、その取引は国境をも

      またいで広範に行われているので、ある取引当事者の破綻の影響が

      他の取引当事者に直ぐさま伝搬する危険性(いわゆるシステミック

      リスク)を持つことから、監督当局は、常に、取引実態、営業主体

      のリスク管理体制・リスク量等の把握に努める必要がある。      

                                                                  

        監督当局においては、自己資本規制の整備と併せて、こうした報

      告徴求体制の整備を進めていくことが必要である。なお、当然のこ

      とながら、その整備においては、報告者の事務負担や国際的動向等

      に配意した、効率的な報告体制となるように努めるべきである。  

                                                                  



6.公正な取引のためのルール


                                                                  

      有価証券関連の店頭デリバティブ取引が健全に発展するためには、

    公正な取引のためのルールを整備することがその前提となる。      

                                                                  

   (1)対顧客営業関係                                              

                                                                  

        店頭デリバティブ取引は、相対取引で行われること及びリスクが

      複雑な商品も多いことにかんがみ、証券会社等の対顧客営業におけ

      るルールの整備が不可欠である。                              

        具体的には、特に以下の点を中心にルールを整備すべきである。

      ○適合性原則の確保                                          

          証券会社等は、顧客が、当該店頭デリバティブ取引を行うこと

        に適合的か否かを、顧客の能力、経験及び財産の状況により判断

        しなければならず、顧客に不適合な取引の勧誘を行ってはならな

        い。                                                      

      ○説明義務                                                  

          証券会社等は、顧客に対して、当該店頭デリバティブ取引の内

        容(指数等の算定方法、権利行使の条件等)、内在するリスク等

        につき、顧客の能力、経験に応じた説明を行わなければならない。  

      ○タイムリーな情報提供                                      

          証券会社等は、取引が成立した後において、顧客の損益状況等

        に関する情報を、適切なタイミングで、当該顧客に提供しなけれ

        ばならない。                                              

                                                                  

        対顧客営業に関するルールの整備に当たっては、店頭デリバティ

      ブ取引を営業として行う証券会社等の中にも経営戦略の違いからそ

      の取組姿勢にかなりの幅があることや店頭デリバティブ取引の発展

      の速さから考えて、法令や証券業協会の規則等の自主ルールにおい

      て必要な基本的ルールを定め、その枠の中で、各証券会社等が各々

      の経営方針に基づき社内規定等を作成する等の自主的な対応を行い、

      その中から共通のルール的なものが醸成されてくればこれを法令等

      のより上位の法規範に取り入れていく、というアプローチを基本と

      すべきである。                                              

                                                                  

   (2)不公正取引規制                                              

                                                                  

        その他の公正な取引のためのルールについては、店頭デリバティ

      ブ取引についても、その特質に応じつつ、原則として少なくとも現

      行証券取引法に定められた規制と同様の規制が課されるよう所要の

      整備を図る必要があるが、その中で、特に以下の点については留意

      を要する。                                                  

                                                                  

      ○インサイダー取引規制                                      

          現行証券取引法においては、インサイダー取引規制の対象は、

        株式等に係る現物有価証券取引及び証券取引所でのデリバティブ

        取引等となっているが、脱法的行為を防ぎ、証券取引に対する信

        頼を確保する観点から、店頭デリバティブ取引もインサイダー規

        制の対象に含める必要がある。                              

                                                                  

      ○相場操縦規制                                              

          現物有価証券の価格、証券取引所でのデリバティブ取引の価値、

        店頭デリバティブ取引の価値は、相互に密接に関連することから、

        例えば、店頭オプション取引の一方の取引当事者が、当該オプシ

        ョン取引の決済を自己に有利にするために原資産である有価証券

        の相場を操縦する、といったように、異なる市場をまたがる相場

        操縦的行為が行われる可能性がある。                        

          こうした行為は、現行証券取引法において禁止されている相場

        操縦行為と同様に、公正な価格形成を阻害するものであることか

        ら、正当な取引を抑制することとならないように充分に留意しつ

        つ、かかる行為を禁止対象とするルールを整備する必要がある。  

                                                                  



7.ディスクロージャー


                                                                  

   (1)  店頭デリバティブ取引は、国際的に見て、その取引規模が全体と

      して取引所でのデリバティブ取引を上回っているにもかかわらず、

      通例、相対取引で行われることから、取引の状況が外部からは見え

      にくい。また、リスクが複雑に絡み合っている取引もあること、シ

      ステミックリスクを顕在化させる可能性も内包していること、原資

      産取引と相互に密接な連関性を有すること等からも、その取引実態

      や企業等の利用状況の透明性を高める必要がある。              

                                                                  

        こうした観点から、平成8年7月に、以下の点を中心として財務

      諸表等規則等を改正することにより、デリバティブ取引に関する取

      引当事者の情報開示の充実を図ったところであり、有価証券関連の

      店頭デリバティブ取引も、当然にこうした開示の対象となる。    

      ○  開示対象を、先物取引、上場オプション取引、為替予約だけで

        なく、デリバティブ取引全般に拡大する。                    

      ○  投資家への分かりやすい判断材料の提供及び開示企業における

        内部統制機能の発揮という観点から、デリバティブ取引について、

        取引の内容、取組方針、リスク管理体制等の定性的情報の記述を

        導入する。                                                

      ○  契約額・想定元本の開示を充実させるとともに、すべての取引

        について時価及び評価損益の開示を求める。                  

                                                                  

        なお、デリバティブ取引の営業主体である証券会社等においては、

      リスク管理体制やリスク量等に関して、より積極的な自主開示が進

      められているところである。                                  

                                                                  

   (2)  有価証券関連の店頭デリバティブ取引により、償還額等が株価に

      連動する社債やカバードワラント等の発行が可能となるが、これら

      の発行開示においては、その性質から、償還額等の計算方法や権利

      行使価格等の証券情報、当該証券の発行企業体の信用力のみならず、

      原資産となる株式等に係る情報も投資家に開示される必要がある。  

                                                                  

        また、多数の者を相手に行う有価証券関連の店頭デリバティブ取

      引で、その取引が有価証券の募集や売出しに相当すると考えられる

      もの等についても、ディスクロージャーについて所要の整備が必要

      である。                                                    

8.営業主体の適格性とその範囲について


                                                                  

   (1)  店頭デリバティブ取引については、以上に述べたとおり、リスク

      管理と公正な取引ルールの遵守が肝要であることから、これを営業

      として行う者には、取引にふさわしい高度なリスク管理を遂行でき

      る能力とともに顧客に対して適正な営業を行うことが求められる。  

                                                                  

   (2)  他方、店頭デリバティブ取引は、急速に発展する金融・証券取引

      の最前線に位置する取引であることから、その発展のためには、よ

      り多くの営業主体が様々な取引を提供し、各々の金融・証券技術を

      競い合うという枠組みが必要である。                          

        また、店頭デリバティブ取引の多くは、金利、為替、有価証券等

      の原資産の価格変動によるキャッシュフローを取引当事者のニーズ

      に合わせて自由に組み換えて行う取引であることから、これを営業

      として行う者は、必ずしも原資産の区分と同じである必要はないと

      考えられる。                                                

        さらに、取引所でのデリバティブ取引と異なる店頭デリバティブ

      取引の特質として、相対取引であること及び利用者は証券会社、金

      融機関、機関投資家、事業法人等の大口投資家に事実上限定される

      ことが挙げられる。                                          

                                                                  

   (3)  こうした店頭デリバティブ取引の特質にかんがみれば、有価証券

      を原資産とする店頭デリバティブ取引については、十分なリスク管

      理能力と適正な営業遂行能力があると認められる限りは、証券会社

      に加え、金利、為替を原資産とする店頭デリバティブ取引を活発に

      行っている金融機関も、原資産の受渡しを伴わない範囲であれば、

      営業主体になることを認めることが適当である(なお、認可を受け

      た金融機関がその原資産を営業として取り扱うことができる有価証

      券関連の店頭デリバティブ取引については、原資産の受渡しを伴う

      取引まで認める。)                                          

        この場合には、有価証券関連の店頭デリバティブ取引を営業とし

      て行う金融機関は、当然のこととして、証券会社と同じ公正な取引

      のためのルールに服さなければならないので、これを担保するため

      にも、証券業務としての認可を受けて営業を行うとすることが適当

      である。                                                    

                                                                  

   (4)  しかしながら、有価証券関連の店頭デリバティブ取引のうち株式

      関連の取引(株式を原資産とする取引のみならず、例えば、転換社

      債を原資産とする取引等、当該デリバティブ取引の価値が株価に一

      定程度依存する取引を含む。)については、我が国の金融機関が大

      量の株式を保有している現状を勘案し、証券市場の健全性を確保す

      る観点から、投資家としての立場と営業主体としての立場の間での

      利益相反が惹起する弊害を防止するため、                      

      ○  特定取引勘定(いわゆるトレーディング勘定)における株式関

        連の店頭デリバティブ取引については、直ちに、特定取引勘定に

        おいて、株価リスクを有効にヘッジするための取引を行うこと  

      ○  金融機関が営業として行う株式関連の店頭デリバティブ取引は、

        特定取引勘定においてのみ行うこととし、特定取引勘定以外で行

        う株式関連の店頭デリバティブ取引は、証券会社又は有価証券関

        連の店頭デリバティブ取引につき認可を受けた他の金融機関の特

        定取引勘定を相手としてのみ行うこと                        

      を認可の基本的条件とすることが適当である。                  

        また、特定取引勘定において行う株式関連の店頭デリバティブ取

      引と特定取引勘定以外において行う現物株式取引、株式関連デリバ

      ティブ取引等の間には、人、情報等に関する遮断措置を設けること

      が必要である。                                              

        金融機関の経営の健全性の確保と投資家・預金者の保護の観点か

      らも、十分なリスク管理能力と適正な営業遂行能力に加え、こうし

      た認可の基本的条件や遮断措置を設けることは重要である。      

                                                                  

   (5)  なお、金融機関の証券子会社が店頭デリバティブ取引を営業とし

      て行う場合には、親子間の弊害防止措置についても留意すべきであ

      る。                                                        

                                                                  



結 語


                                                                  

      有価証券関連の店頭デリバティブ取引について、当審議会の検討結

    果は以上のとおりである。                                      

      今後、本報告を踏まえ、証券取引法の改正等の制度整備が早急に図

    られることが重要である。また、デリバティブ取引は急速な発展段階

    にあることから、行政当局においては、取引の実態や国際的状況を絶

    えず注視し、デリバティブ取引の健全な発展のための環境整備に不断

    に取り組んでいかなければならない。                            

      こうした措置が講じられることにより、我が国のデリバティブ市場

    が国際的にみても遜色のないものとなり、もって、我が国における金

    融・証券取引の発展が一層促進されることを期待するものである。