「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」第五回事務局会議の概要

日時   平成21年12月14日(月)17時00分~18時00分
場所   金融庁 13階共用第一特別会議室
出席者   田村内閣府大臣政務官(金融担当)、泉内閣府大臣政務官(消費者担当)、中村法務大臣政務官、警察庁生活安全局 立崎生活経済対策管理官付理事官、経済産業省商務情報政策局 坂口取引信用課長、日本銀行企画局吉岡審議役
議題   ヒアリング
・石川 和男氏   (東京財団上席研究員)
・藤井 良広氏   (上智大学大学院地球環境学研究科)
・大畑 章氏   (東京都産業労働局金融部貸金業対策課長)

【田村政務官】

  • 第1回から前回までは、与党議員とマスコミに対してオープンにしてきたところだが、一般の方の要望が非常に強かったため、今回から一般の方にも傍聴して頂くこととなった。

【石川和男氏の説明】

  • 今回の会議の議題は、「貸金業制度に関するPT」となっているが、必ずしも貸金業に限った視点からではなく、金融の利用者の目線から分析を行っている。資金繰り状況は非常に悪化しており、その改善のためにリテール金融市場の健全化のための方策を検証している。

  • 「借りられない苦しみ」の話が出ると必ず、公的金融の話が出てくるが、昨今の財政状況等を踏まえると税金を使った公的金融に頼りすぎるのも如何なものか。民間で出来ることはやはり民間でやるべきものと考える。

  • グレーゾーン金利帯を巡る過去の経緯に対する政治と行政の責任を強く再認識し、検討する必要がある。

  • 総量規制である1/3をそのまま適用した場合、きちんと返済が出来る利用者であっても資金繰りがアウトとなる者が出てくるのではないか。返済がきちんと出来る人には、少額融資や短期融資などの本当に緊急の資金繰りについては、別のルールを設けて良いのではないか。また、現在、想定されている個人事業主の例外貸付けにおいては、個人事業主に対して事業計画や資金計画などを作成させることは困難ではないかという実体感からすると運用を見直して良いのではないか。

  • 前回(18年度)の上限金利の改正の際にも色々と議論されたが、最近の経済状況等も踏まえ、もう一度冷静になって上限金利について検討してみては如何か。上限金利の規制を受けるのは、貸金業者だけではなく、もっと大きなプレーヤーである銀行も含まれるので、民間資金をより供給できるような仕組みを検討してみては如何か。

  • 過払い金は一義的には債務者に100%返還されるべきものと考える。しかし、そこではビジネス行為が行われて高額な手数料が取られており、社会問題化し始めている。これに対して何らかのルール付けが必要となっている。過去のグレーゾーン金利にかかる行政責任を自ら取っていくという姿勢を示すためにも、まずは政府・行政が窓口となって対応していくことが必要。ただし、どうしても債務者自ら請求できないという場合には、法律の専門家に代行してもらっても構わないと思うが、その際の手数料額や手数料率の上限を規制する必要があるのではないか。

  • 上記において、総量規制や上限金利規制の特例措置を申し上げたが、ただ単に認めて良いものではなく、貸金業マーケットは前回の法律改正あるいは、それ以前から壊滅的に信頼性が墜ちている。一度墜ちたものを元に戻すことは非常に大変なことであるが、その信頼の回復のために過剰与信及び取立行為の問題について適切な対応が出来る貸金業者に対して金融庁が認定していくというようなスキームもあるのではないか。

  • 多重債務者などの過剰貸付先となると判断し融資を実行しなかった者を公的制度への誘導及び弁護士会や司法書士会への誘導が必要であり、貸金業界に対応してもらうことも考えられるのではないか。

  • 零細企業・個人事業主等に係る資金繰りの状況など実体の分かる公式統計等がないのが現状であり、零細企業等の状況が把握できていないのが実態である。こういった者に対してもヒアリングや統計の対象として、行政当局で集計して頂きたい。

【藤井良広氏の説明】

  • 米国で、先月行われたSMALL BUSINESS FINANCING FORUMにおいて、「地域活性のためにCDFIを最大限に活用」「中小企業の再生にはCDFIとの連携が欠かせない。」旨の発言がなされている。CDFI(Community Development Financial Institutions)として、日本のNPOバンクのようなものも景気対策の1つに上げられる。サブプライム問題以降、アメリカの経済はサブプライムローンで住宅を手に入れた人たちが、お金を払えず、住宅を売り払うこととなって地域コミュニティが虫食い状態となり、コミュニティ自体が悪化し問題となっているが、そこをどう回復するかということが課題となっている。

  • 経済社会を形成する主体として、通常のお金を稼ぐ企業は「For Profit」、目的は収益のためではなく社会のためのものは「Not-for Profit」、そしてNGOなどの「Non Profit」の3主体があり、必ずしも「For Profit」だけではない。だけれども我が国の仕組みは大半が「For Profit」のみをターゲットとしており、貸金業法においてもそうではないかと思われる。一方、米国では1933年の証券法に非営利金融を想定した規定が設けられて以来、Not-for Profitを政策に取り込むかことが焦点となってきた。

  • Non-Profit Finance政策について立案をすることこそが、金融政策を担っている者の知恵の出しどころである。米国では、財務省にCDFIファンドがあり、年間5000万ドルほどの資金を非営利の企業に補助金として無償で政策的に提供している。また、その他に非営利の活動を支援する投資家に対して税額控除するNMTC(新規市場減税制度)、健全性の尺度とは別に地域への貢献度をみて既存金融機関の資金を地域へ誘導するCRA(地域再投資法)などがある。

  • 米国のCDFIは、市場にある個人のお金を営利活動に回すだけではなく、非営利の分野に供給したり、あるいは多重債務者を救済したりすることに使われる。大銀行が地域のお金を吸収し、マーケットに持っていくばかりではなく、地域内でお金を循環させるためにCDFIが利用されている。

  • 米国のCDFIには色々なタイプがあり、銀行も対象となりうる。銀行や貸金業者が営利の金融業をやりながら、財務省から認定を受ければファンドをもらうことが出来る。CDFIとは一種の機能であり、市場においてお金が回らないところに如何に誘導していくかである。今回の金融危機を受けてCMF(低所得者向け住宅供給特化のファンド主体)がファンドの1つとして加えられている。

  • わが国ではNPOバンクは、2005年の金融商品取引法において無配当化することで例外扱いとなったが、貸金業法では例外扱いとはならなかった。NPOバンクは貸金業法の登録を受けて事業を行っているが、元々、Not-for Profitの活動であるのに、財産的要件や指定信用情報機関への加入・利用義務が貸金業者と一律に課されることは信じられない。地域の活性化と貸金業対策はオーバーラップする話なので、NPOバンクを例外にするかどうかというだけの議論ではなく、地域をどうするのか、地域の中小零細企業、多重債務者などをどうしていくのかという視点から新たな法律の枠組みを検討して頂きたい。

  • 厚生労働省の枠組みの中で、グリーンコープなどの生協系の多重債務者向け貸付けが実施されている。ただ、こちらも県域内に限られたり、年収制限が適用されたりと制度自体が活動の阻害要因になっている。

  • 新しい金融の枠組みづくりとして、先進国において非営利の分野がますます大きくなってきている。For Profit とNon-Profitの境を、例外規定で処理するのではなく、もっと広い視野に立って、営利の金融の健全性を保ちながら、非営利の金融にも資金が回るような政策を策定して頂きたい。

【大畑章氏の説明】

  • 東京都の登録業者は、ここ数年、毎年減少し、減少率が加速している。21年11月末現在で1,164業者、ちなみにピーク時の平成14年度は6,983業者であった。1,164業者の内訳では、法人業者が約9割、個人業者が約1割。登録業者の特徴としては、兼業の業者が多く、兼業の中身は不動産業や金融商品取引業などである。貸付先としては、グループ企業向けやグループ会社の従業員向けの業者が多い。

  • 登録業者数の減少の要因としては、役員等の業務経験の義務づけなど参入規制の強化などが挙げられる。以前までは、登録不更新での廃業が多かったが、最近は登録期間中に自主的に廃業を提出してくる業者が増えている。また、新規登録申請に対する書類審査、現地調査及び詳細なヒアリングの実施による不正登録の排除を徹底したことも減少要因の1つ。なお、個人の新規登録の減少が顕著となっている。

  • 平成21年度の行政処分の内訳は、法人21件、個人54件。登録回数別で見ると、都(1)の業者に対して60件の処分を行っている。改正貸金業法の新設条項である「6ヶ月以内の貸金業の不開始等」での登録の取消しは、20年度6件、21年度5件に行っている。

    不法行為に至った経緯を聞き取りしたところ、高金利の場合、「賃貸料や従業員の給料を支払うために、違法と分かっていてもやらざるを得なかった。」「借りたまま返済しない客が増加しており、そのためには回収可能な客から高金利で回収するしかなかった。」「他店では借り入れが出来ない者に貸しているのだから、多重債務者を救済しているようなものだ。」などが挙げられた。また、反省の弁の中で「高金利違反は認めるが、返済日や返済額については、客の都合に合わせていたのに、苦情が入るとは思わなかった。」とあり、このようなケースはなかなか苦情に至りにくいのではないか。

  • 上記のような点を総括的に見てみると、実体から見た悪質業者像としては、「貸金業に関する十分な知識と経営力を備えておらず、安易に貸金業者として開業した結果、経営に行き詰まり、あるいは、当初から不正の意図を持って登録し、開業後の時期を置かずに違法行為に走る。」ような者であるが、これは従前から変わっていないが、今後、貸金業務取扱主任者の配置が義務付けられるため、改善されていくのではないか。

  • 苦情・相談件数については、20年度は特定貸金業グループの取立行為に対する債務者等からの苦情・相談で増加したが、21年度は19年度並の件数で推移している(21年11月現在、5,397件)。苦情・相談の主な内訳は、登録照会に関するもの3,429件(うち、登録がないもの2,583件)、詐欺的行為に関するもの187件、高金利に関するもの181件である。また、苦情の特徴としては、東京都に登録されていても、事業そのものは全国に展開できるため、都外の方からの相談が多い。

  • 多重債務者対策として、平成19年8月に「東京都多重債務問題対策協議会」を設置し、多重債務相談の問題対応マニュアルの作成、配布や多重債務110番などを実施しているところである。

【質疑応答】

  • ○ グラミン銀行とNPOバンクとの違いはどういった点にあるか。

  • (答:石川氏)NPOバンクは大変すばらしい取り組みで、今後ますます広めていくべきものと考える。資金の量からすると持続可能性、非常に大きな資金需要を賄っているということを踏まえると、そこについては民間の資金で対応することが望ましいと考える。別添資料では、公庫に郵貯銀行が貸してそこから数%の利益をえることを提案している。ここでも金利設定等の条件設定は、信用リスクを審査した上で、それなりの高い水準であることが必要であり、そうでなければ豊富な資金量をニーズのあるところに流せないと言うことである。

    一方、NPOバンクは、もっと崇高なものであって自治体との協力であったり、ボランティアであったりして、非常に政策的な意義高いものに対するお金の供給ということからすると、一般的な資金繰りとは異なるものと考えている。

  • ○ 上限金利規制の見直しの中で、少額融資又は短期融資に限って、上限金利を段階的に年25~40%程度にまで引き上げるよう「上限金利特例法」を制定するとあるが、利息制限法との関係は如何か。

  • (答:石川氏)立法の仕方次第だと思うが、利息制限法の特例法を設けることなどが考えられる。ただし、適用を受けるのは貸金業に限る必要はなく、銀行も含めた金融機関も適用すべきものと考える。

  • ○ ヤミ金が増えていると言う人もいれば、減っているという人もいるが、個人的な感想は如何か。

  • (答:大畑氏)正直に申し上げて実体は分からない。我々の登録業者で取り消した業者は、個人業者が多いのだが、連絡先が分からなくなることがほとんど。苦情の中で登録に係る照会は増えているけれども、都の登録業者は通算で3万業者を超えているのに、現在の登録業者は1,100業者なので、過去の登録業者の問い合わせによるものである。

  • ○ ここ数年のヤミ金の警察の取り締まりというのは、強化されていると感じるか。

  • (答:大畑氏)強化されているものと考える。東京都では、警視庁から派遣職員を受け入れ、ヤミ金業者ではないが、登録を取り消した業者に関する情報の共有など連携が図られている。

  • ○ NPOバンクのようなものを日本の金融機関が行おうとすると、自己資本規制等に抵触するなど色々な制約が考えられるが、米国では法律などで減税制度があったり、社会的に認知されているからクリアできているということなのか。また、特定のNPOが別のNPOに資金を寄付できないこととなっているが、NPOバンクが他のNPOを支援し続けることができるよう、今のNPO法を改正する必要性についてはどのようにお考えか。

  • (答:藤井氏)米国では営利業者と非営利業者に対する規制の政策は別建てである。融資を行い焦げ付くことは自己資本を毀損することとなり健全性からいうと望ましくない。一方、CRA法では地域に貢献し、資金を供給することが求められている。矛盾した政策的要請を両立させることが銀行経営であると考える。なお、米国ではNPOバンクへの資金を供給する際は、個人がお金を貸すことがほとんど。

    我が国には、3万8千のNPOがいるが、十分に活動をしているところは非常に限られ、きちんとした財務諸表を作成できているのは、100を切るのではないか。お金を回していく仕組みを作らないとNPOは継続できない。中小企業対策、NPO対策、貸金業対策それぞれで別々の対応を行うのではなく、目的は地域にお金を回し、企業も個人も再生することと共通するものであるので、そういう仕組みを作っていって頂きたい。

  • ○ 資料3ページ目の「(参考)中小・零細企業の資金繰りの現状」で、中小・零細企業の方からヒアリングを行っているが、どのようにして探してきたのか。

  • (答:石川氏)今年の春くらいから調査を開始したが、業者を捜すのに非常に苦労した。是非とも行政当局において、このような中小・零細企業に対するヒアリングを実施して頂ければと思う。

  • ○ 石川氏の資料P1に「個人の緊急一時的な資金繰り」とあるが、企業であれば想定しやすいが、個人の場合はどのような場合が想定されるのか。

    また、大畑氏の資料P5の「3.苦情・相談の状況」において、「登録照会に関するもの」とあるが、これはどういったものか。

  • ○ NPOの話と貸金業の話は区別して考えるべき問題ではないか。

  • (答:石川氏)最初にお金を借りる時は難しいが、継続的に借り入れと返済を行ってくると債務者を信用しろということになってくる。これを上手く信用情報に取り込むことが出来れば、ある程度信用することが出来るのではないか。これまでの返済の状況を定量化出来れば良いのではないか。

  • (答:大畑氏)「登録照会に関するもの」とは、一番簡単なものとしては、「登録されているか。」である。その他に、登録がある業者については、「借りても大丈夫な業者なのか。」というものであり、苦情というより問い合わせといったものである。

  • (答:藤井氏)貸金業の問題とNPOの問題は別の問題とは考えていない。非営利や零細な業者などの必要なところにお金が届かず、従って高金利の業者から借りてしまう、入り口の問題がある。非営利や零細なところにもお金を回す仕組みを地域に作る必要がある。さらに多重債務者がいる現状において、彼らをどうやって救済するのかという仕組みも、現在のところできていない。米国などでも地域に根ざした日々の活動を通して個人の再生を図ろうとしている。そういう意味で、NPOバンクを支援する問題と、営利のところに流れざるを得ず破綻してしまった人たちをどうやって救済するのかという問題は、密接に繋がっていることを認識して頂きたい。

(以 上)

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室
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