「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」第十三回事務局会議の概要

日時   平成22年2月18日(木)10時00分~11時20分
場所   金融庁 13階共用第一特別会議室
出席者   田村内閣府大臣政務官(金融担当)、泉内閣府大臣政務官(消費者担当)、中村法務大臣政務官、警察庁生活安全局 立崎生活経済対策管理官付理事官、経済産業省商務情報政策局 坂口取引信用課長、日本銀行企画局 吉岡審議役
議題   ヒアリング
・三浦 秀之氏   (造園業)
・山崎 忠幸氏   (ITサービス)
・釋尾 政江氏   (飲食業)

【田村政務官より開催の挨拶】

  • 本日は、貸金業の利用経験がある中小企業経営者の方にお越しをいただき、利用者の声をお話しいただくこととしている。プレゼンターを簡単に紹介させていただきたい。

  • 一人目として、造園業を営む三浦秀之氏にお越しいただいている。造園業は、個人顧客が多く、業務を営む中で、短期のつなぎ資金が必要となる場面が多い。テレビ番組や雑誌記事でもインタビュー受けており、今回ヒアリングにお越しいただいた。

  • 二人目として、ITサービス業を営む山崎忠幸氏にお越しいただいている。取引先の入金遅れがきっかけで、資金繰りが悪化し、ヤミ金と接触した経験をお持ちとのことである。テレビ番組でもインタビューを受けており、今回ヒアリングにお越しいただいた。

  • 三人目として、レストランを経営する釋尾政江氏にお越しいただいている。釋尾氏は、銀行からの融資を急に断られ、消費者金融からお金を借り入れた経験をお持ちであり、中小企業経営者という視点よりも、消費者の立場としてお越しいただいた。政府の規制改革会議・生活基盤タスクフォースにて、貸金業の利用経験についてプレゼンテーションをされた経験もお持ちである。

【三浦秀之氏の説明】

  • 当社は、10年以上前より造園業を始め、ガーデニング関連の仕事を営んでいる。主に個人顧客を相手として、数百万円程度の仕事を受注している。こうしたガーデニング関連の仕事の場合、顧客から要望を聞いて図面を設計するため、顧客との間で図面のやり取りが何度か発生する。作業自体は1カ月程度で完了するが、顧客の都合や要望で、作業途中でも設計変更が発生することもある。造園業では、原材料は、現金での仕入れが慣習となっており、また、実際に作業を行う職人も「日雇い」として仕事を依頼するため、作業日毎に人件費を支払うこととなる。そして、作業後に最終的な費用を計上し、顧客に代金を請求するという流れとなっている。通常、作業終了後1~2カ月後に代金が入金されるが、顧客によっては、例えば支払いをボーナスの時期まで4~5カ月間待たされることもある。このように、造園業では、仕事の案件毎に出金と入金のタイミングがまちまちであり、資金計画を立てにくいという特徴がある。このような業種であるため、短期の資金需要を満たすために、貸金業者を利用するようになった。

  • 事業規模の拡大とともに、1998年頃から、大手の事業者金融を2社利用するようになり、平均して300万円程度の資金を2~3カ月の期間で借りていた。利息は年利20%を超えていたが、短期のつなぎ資金のため、金利負担を感じることはなかった。

  • 2006年に法律が改正される頃、融資を受けていた中小貸金業者の社長から、「金利が下がったため、もう仕事を続けられない」との話を聞いた。結局、その貸金業者は2007年に廃業してしまった。同じように従業員30~40人規模の中堅貸金業者も、2008年に従業員を3~4人にリストラした上で、回収だけを行っていた。こ貸金業者の社長は「自分の会社が無くなると、困る人が一杯いる」と言っていたが、2008年の秋頃になると、結局廃業してしまった。

  • 会社の資金繰りが苦しくなる中、会社にFAXやダイレクトメールを送ってくる貸金業者や、ネット検索で該当する貸金業者は、契約書は法定利息で貸した形にして、実際には高い金利を要求するヤミ金融ばかりだった。また、法定金利で融資を行う不動産担保融資の貸金業者をネットで見つけたが、返済期間3年以上が前提で、短期のつなぎ資金には応じられないと断られた。

  • 公的な資金に頼ろうと、近所の商工会に相談したが、審査のための書類を沢山要求され、入金には1~2カ月かかると言われて諦めた。過去、何度か政府系金融機関に借入れを申し込んだが、多くの書類を揃えたにもかかわらず、2期連続赤字だったことを理由に借入れは出来なかった。つなぎ資金への迅速な融資に、公的な金融機関は対応してくれない。

  • 中小零細企業の経営者にとって、ノンバンクは必要不可欠な存在であり、ノンバンクが利用できなくなった今、改めて、銀行とは異なるノンバンクの必要性を実感している。

【山崎忠幸氏の説明】

  • 当社は、1990年に設立されたソフト開発の会社である。ソフト業界では、人材への投資を積極的に行わなければならないため、人件費は資金繰りで最も頭を悩ます要因となっている。資金繰りを考える上で、賃金の支払いと、顧客からの入金とのタイムラグが大きな課題である。特に、パッケージソフトは高い収益が見込めるが、完成まである程度の期間が必要なため、当面の人件費がかさみ、会社の資金繰りを圧迫する。

  • 会社が急成長を始めたころから、金融機関からの借入れも増え、ピーク時は3億円に達していた。ところが、2007年の春頃から、主取引先の倒産により資金繰りがうまくいかなくなり、銀行への返済も延滞するようになった。そこで、消費者金融会社1社、カード会社5社から、カードの融資限度額一杯まで借入れを行った。

  • その後も、資金繰りは悪化を続け、最終的には、従業員の給料のための資金を借りるために、会社宛にFAXを送ってきていた貸金業者に連絡した。FAXの営業広告には「年利16%」と記載されていたが、「信用力が低いので、15日間で金利16%」と言われ、詐欺だと思ったものの短期の資金がどうしても必要だったので、借入れてしまった。これをきっかけとして、複数のヤミ金から「借りては返す」を繰り返し、気づいたときには、合計12のヤミ金から総額300万円を借入れていた。

  • ヤミ金が貸す金額は20~30万円程度であり、金利は2週間から1カ月で20%程度である。店舗を有するヤミ金以外は、貸出と回収の際、会社まで組織の人間が来た。このような店舗のないヤミ金は、ほとんど銀行口座を利用しない。また、借入れの際には様々な書類を作成し、判を押させられたが、書類の中身は見ていない。

  • 取引を行ったヤミ金は、1社を除いては全てソフトヤミ金で、回収は怖くなかった。回収するために会社にまで来たものの、返済できない事情を説明すると引き返して行くところが大半であった。「最近は貸した金を鼻から返す気がないサギ師のような顧客が増えて来た」と嘆くヤミ金もいた。

  • 他方、あるヤミ金からは、返済できない際、喫茶店で3~4時間も詰め寄られ、大声を出されるなど、強硬な回収を受けたこともある。

  • このヤミ金の取立てについて、東京都の貸金業対策課へ行き相談したところ、東京都の無料相談窓口に来ていた弁護士から債務整理を勧められ、弁護士を通じて債務整理を行った。

  • 弁護士が介入したことで、元金を回収済みのヤミ金とはすぐ和解し、元金を支払っていないヤミ金とも、1~2万円で和解した。しかし、白紙委任状を渡していた4つのヤミ金は和解に応じず、裁判での決着となった。結果として総額300万円の売掛金の回収に3カ月を要することとなり、その中から弁護士にも160万円の手数料を払うこととなり、高すぎるのではないかと思った。

  • ヤミ金には幾つかのグループが存在すると思われ、私のヤミ金からの借入れに関する情報がヤミ金の組織間で回っていたと考えられる。今でもヤミ金から営業のチラシや電話がくるが無視している。最近のヤミ金からのDMやFAXを見ると、単純な「お金を貸す」ヤミ金よりも、「カードのショッピング枠を現金化します」というヤミ金が増えきたように感じる。

  • もし資金繰りが一時的に悪化した局面で、まとまった資金を迅速に借入れることが出来たら、過去の経験から、会社の経営は安定を取り戻したと思う。

【釋尾政江氏の説明】

  • 息子が医大へ進学する際、必要となる入学金や学費については、マンションを担保に銀行からの借入れで用意する段取りとなっていた。ところが、合格発表の10日ほど前になり、過去に固定資産税の滞納が1件あり、既に支払い済みにもかかわらず、それを理由としてお金を貸すことはできないと銀行から急に言われ、冷淡な対応をされた。

  • 何とか資金を準備しようと色々と悩んだ挙句、消費者金融を利用することを思い立った。消費者金融に相談に行き、これまでの経緯を全て話したところ、4日間で、医大入学に必要となる費用を借り入れることができた。金利は18%程度だったと記憶しているが、その時は金利よりも資金を用意することが重要だった。

  • その後、色々と銀行を回り、別の銀行から、8%の金利で借入れが出来たため、結果的には消費者金融から借入期間は3か月ほどであった。このような「つなぎ資金」の借入れ先として、消費者金融には意義があると感じている。

  • 消費者金融には、「利用者がどういう目的でお金を借りに来たのか」という点をよく知った上で、貸付けを行っていただきたい。銀行が融資することが出来ない人達に対して、銀行とは別の価値判断で貸付けを行う姿勢を、消費者金融を始めとするノンバンクには持ってもらいたいと思う。

  • 消費者金融のような機能が無くなると、いわゆる格差問題が一層、顕著になるのではないかと懸念する。

  • 突発的にお金が必要になることは、計画的な人生を歩んでいても起り得る話で、その時、金利は高いかもしれないが、ノンバンクは保険のように機能する存在であると考える。

【質疑応答】

  • ○ 事業を継続していくうえで、支払い可能な金利はどの程度であると考えるか。

  • (答:三浦氏)十数年前から大手の事業者向けノンバンクを利用しており、借入れのほとんどは短期資金である。当時、金利は40%程度であり、例えば、100万円借りた場合、1ヶ月程度で返していたので、返済額は手数料込みで103万円程度だった。短期の借入れで金利40%程度では負担には感じなかった。むしろ、緊急的に資金が必要な時、借入れできたことが有り難かった。

  • (答:山崎氏)ITサービス業の場合、粗利が30%程度であり、短期の借入れであれば、そのうちの10%程度を金利の支払いに当てることは仕方がないと考えている。

  • ○ 利益率が高い企業の場合、最初は事業者向け消費者金融から融資を受けていたとしても、段階的に銀行等の金融機関から融資を受けることはできないのか。銀行等の金融機関側の問題があるのかもしれないが、銀行等から融資を受けられない理由を教えていただきたい。

  • (答:三浦氏)個人顧客を対象に事業を行っているため、受注すると2週間以内には工事に取りかかることとなり、原材料や、既存の庭を解体する際の産業廃棄物の処分費用等に現金が必要となる。そのため、銀行等で融資可否の返事を待っているのでは間に合わない。このため、短期の資金繰りとして貸金業者を利用することとなる。

  • (答:山崎氏)零細企業では、銀行等の金融機関から短期資金の融資を受けることは難しい。例えば、個人事業者は、定期積金等の取引実績が長期間ない限り、短期資金の融資を受けることは難しい。また、近年では変わってきているのかもしれないが、不動産担保の提供又は保証人を立てないと融資を受けることが難しいということもある。

  • ○ 繰り返しになって申し訳ないが、利益率が高いのであれば、低金利で長期的な借入れが可能と考えられる。しかし、それができない背景として銀行等に融資する姿勢がなかったとお考えか。

  • (答:三浦氏)利益が出ていれば内部留保に回せると考えられるが、実際は利益が出ていても内部留保まで回せる額は僅かである。金額の大きな仕事を受ければ、そのための運転資金が必要となり、借入れが必要となる。

  • (答:山崎氏)零細企業であれば、内部留保がない企業がほとんどである。突発的に資金が必要となった時、銀行に相談しても担保の提供等をしなければ、短期の融資を受けることは難しい。

  • ○ 山崎氏は、ヤミ金から借りた経験をお持ちだということであるが、ヤミ金について何かご意見はあるか。

  • (答:山崎氏)ヤミ金は、一度利用すると、他のヤミ金業者からも連絡がくるようになった。ヤミ金業者同士で繋がっているのではないか。

  • (答:三浦氏)私も同じ経験がある。ヤミ金業者に聞いた話によると、一度ヤミ金を利用すると、名簿に登録され、その名簿が売買されていく、ということであった。

  • ○ 東京都の貸金対策課に相談した際、そのヤミ金業者について、東京都に具体的に伝えたのか。

  • (答:山崎氏)東京都からは、ヤミ金業者へ直接電話連絡をしてもらった。一方で、弁護士から、最近、警察はヤミ金の取締りを熱心に行っているため、連絡するよう助言を受け、警察には自分で連絡した。しかし、証拠となるものが何もなかったため、恐喝等の事件にならないと対応は難しいということだった。

  • (答:警察庁)現在は、ヤミ金対応マニュアルを作成し、現場の警察官には、相談に来た方に対し、「借りた金は返すように」といった指導をしないよう徹底している。

  • ○ 釋尾氏のケースは、大学で教育ローンや奨学金制度があれば、このような問題にならなかったと思うが、大学には入学金の都合がつかないケース等の相談窓口はあったのか。

  • (答:釋尾氏)そのような相談窓口はなかった。入学してからの奨学金制度はあった。

  • ○ 先ほどの話に関連して、他の消費者金融会社から勧誘等の連絡は来たか。

  • (答:釋尾氏)毎日のように他の消費者金融から勧誘があった。

  • ○ ある資料の中では、会社の資金繰りをノンバンクに頼っているという中小企業は、1.5%ということであった。本日、説明していただいた3名のケースは、特殊なケースと考えてよいのか。ご意見を伺いたい。

  • ○ 多くの貸金業者が廃業することにより、ヤミ金業者からの借入れが増加すると考えられるが、貸金業者が廃業した原因及び時期について、ご意見を伺いたい。

  • (答:三浦氏)1.5%というのは、どう考えてもおかしい。同業の仲間との話では、「銀行や政府系金融機関は貸してくれない」とよく聞くが、その逆というのは聞いたことがない。感覚であるが、50%はノンバンクを利用しているのではないか。二つ目の質問については、知り合いの貸金業者から3年くらい前から金利を下げており、経営が成り立たないという話を聞いたことがある。

  • (答:山崎氏)1.5%というのは、会社の規模にもよるが、違和感がある。廃業の原因としては信用情報センターへの情報登録により、融資先が絞られていることが考えられる。

  • (答:釋尾氏)表面化しにくい数字であるが、1.5%という数字には、違和感を覚える。

(以 上)

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室
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