有識者コラム

(注)本コラムは有識者本人の個人的見解に基づいて書かれたものであり、当庁の見解、意見等を示すものではありません。

スマート資産形成スタイルの話

  • 平成28年5月30日
  • 千葉商科大学人間社会学部 教授
  • CFPR 認定者
    伊藤宏一

第1回 ライフプランと投資の意義

1.ライフプランから投資にアプローチする

みなさん、こんにちは。これから何回かに分けて投資のお話をしたいと思います。「投資」というと何を思い浮かべるでしょうか?

「毎日株価が大きく動くので、リスクが高くて怖そう!」
「投資の前にまず貯蓄しないと」
「まとまったお金がないとできない」
「どんな株式を選んだらいいかわからない」
「時間とヒマがないとできない」…

でも他方では、

「普通預金金利は今や0.001%、とても預金だけでは増やしていけない!」
「公的年金だけではなく、自分でも老後のお金を作っていかないと!」
「政府の進めている緩やかなインフレの下でもお金の価値が目減りしないようにしないと。」

と言った声も聞きます。
さて、こうした問いに答えるためにどうしたらいいでしょうか。そのスタートは、お金や投資そのもののことではなくて、実はみなさんのライフプラン、そう、将来の生活設計のことなのです。

2.これからのライフプラン−3つのハードル・6つの資金計画−

みなさんは将来のライフプランを考えたことがありますか。就職、結婚、出産、子育て、住宅取得、子供の進学、そして親の介護や自分の老後など、中長期の生活のプランニングをしてみましょう。

私は、今のライフプランには「3つのハードル・6つの資金計画」があると考えています。まずは、人生の入口に立ちはだかる就職・結婚・出産という3つのハードルがあります。前回の東京オリンピックの頃、つまり1960年代には、これらは比較的楽でした。経済の高度成長の時代、人手不足なので正社員での就職は楽でしたし、結婚も20代前半にできて、子育ても今より問題が少なかったのです。でも今は、まず正社員で就職することが大変ですし、結婚も晩婚化や非婚化といった傾向があり、また共働きが一般的になる中で、出産・子育ても大きなハードルになっています。

また将来のライフプランのための資金計画も、従来のように「住宅資金・教育資金・老後資金」だけでなく、「緊急時資金・結婚資金・親の介護資金」をあわせた6つの資金を考えて準備していくことが必要になっています。

生活設計の新たな課題−3つのハードル・6つの資金計画−

さて、これらのハードルを乗り越えるためには、一定の貯蓄が必要ですが、実際には20歳代単身で貯蓄ゼロ世帯は47.4%(2014)から62.6%(2015)へと急速に増えています。すべての年代の平均で47.6%(2015)、つまり2人に1人は貯蓄がない状態なのです。まずはお金を貯められる家計の体質を作る必要があります。

3.お金が貯まる法則

ずっと前から私がお話ししているのが、「お金が貯まる法則」です。《収入−支出=貯蓄》という式があります。これは、お金が入ってきたら、まず使って、残りが貯まる、ということを意味しています。しかし実際は、支出を先行すると、ほとんどお金は残らないのが現実です。財布に大きなお金を入れておくと、ついつい使いたくなり、くずして使ってしまうのが多いと思います。これに対して、《収入−貯蓄=支出》、つまりお金が入ってきたら、まず一定割合を貯蓄に回して、残りで支出のやりくりをする、という考え方を習慣にすると、お金は必ず溜まっていきます。これが「お金が貯まる法則」です。

その際、第一に、貯蓄には、収入の最低1割、できれば2割を回してください。例えば20万円の収入なら2万円から4万円になります。

それから第二に、なるべくお金を借りないことです。特に利息の高い消費者金融からは借りないようにしましょう。

第三に、支出の予算管理をしてください。食費、交通費、通信費などの大きな費目別に分けて、前言の実際の金額を調べ、そこから貯蓄を引いて支出に当てられる金額を費目別に割り振ります。

第四に、買い物をするときに、本当に必要な物(Needs)と単に欲しくなっただけの物(Wants)を区別して、できるだけ「Needs」だけを買うようにしましょう。インターネットの買い物サイトで買い物をすると、「これがあなたへのおすすめです。」とか「これを一定期間に買うとポイントが倍になります。」というメールが来て、なるべく買わせようとさせるのですが、こうした「オススメ」は、ほぼ「Wants」だと思ってください。

4.ライフプランの実現と資産形成のための貯蓄

さて、それでは貯蓄って何でしょうか。皆さんの将来には、お金が必要なことがたくさんあります。学生であれば就活のために数十万のお金が必要です。結婚したい人は結婚資金が必要です。つまり最初にお話しした生活設計上の様々な資金計画が将来に待っているのです。ですから貯蓄をすることは、皆さんの未来に必要な資金の請求書に支払っていることを意味します。つまり貯蓄をすると未来が明るくなる、ということなのです。

貯蓄の目安として、大学生は卒業までに50万円、20代の人は30歳までに300万円、30代の人は40歳までに1,000万円を目標にしてください。

5.ライフプラン実現のための投資を

そんなことを言っても結構大きな金額じゃないか、と思うでしょう。最近はいわゆるマイナス金利で、普通預金金利は一般に0.001%程度。とても増えそうもありません。どうしたらいいでしょうか。貯蓄とは英語だと「Saving」になります。このSaveしたお金を預貯金にしておくのか、あるいは一定部分を投資するのか、そこが肝心なところです。毎月2万円貯蓄できるのであれば、1万円は預貯金、1万円は投資という方法があります。

毎月コツコツと長期で行う投資はお金を育てて大きくしてくれます。これはまとまったお金を短期売買して大儲けしようという「投機」とは全く違った、生活設計と資産形成のための「投資」なのです。

この点については次回にお話ししたいと思います。お楽しみに。

有識者プロフィール

伊藤 宏一

CFPR認定者。NPO法人日本FP協会専務理事。千葉商科大学人間社会学部教授。
「金融経済教育推進会議」(金融庁・文部科学省・消費者庁などで構成)委員。