証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第93号)

平成29年4月10日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm


<目次>
1) 市場へのメッセージ
 1.最近の取引調査に基づく勧告について
 2.INコンサルティング株式会社に対する検査結果及び勧告について
2) コラム
 「社債券の私募等の取扱い等に関する規則」の制定及び同規則の考え方の作成について[日本証券業協会からの寄稿]
 


1)  市場へのメッセージ
  1. 最近の取引調査に基づく勧告について
  2. INコンサルティング株式会社に対する検査結果及び勧告について


1.最近の取引調査に基づく勧告について

 証券取引等監視委員会(以下、「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

平成29年3月17日

Caspian Trading Ltd.(旧Celera Global Ltd.)による江崎グリコ株式会社株式外3銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令勧告について

(公表文)http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170317-1.htm
 

【事案の概要】
 本件は、英国領ヴァージン諸島トルトラに登記事務所を置き、自己資金により株式売買等を行って収益を得ることを業とする法人が、日本の取引所に上場されている4銘柄の株式について、海外から注文を発注することにより相場操縦を行っていたクロスボーダー事案です。

【取引の流れ】
 事前に買い仕込みを行い、買いポジションを保有した状態で、次のようなプロセスで取引を行っていました。

  1.  直前約定値の上値に売り注文の発注(売抜け準備)
  2.  買い見せ玉発注及び買い上がり(繰り返し)
  3.  追加の買い見せ玉発注(買い板占有率(8本値)が概ね70%以上に上昇)
  4.  他の投資者による買い注文が誘引されて、1.の売り注文が約定(利益確定)
  5.  売り仕込み注文の発注
  6.  他の投資者による買い注文が誘引されて、5.の売り注文が約定(売りポジションの保有)
  7.  買い見せ玉の順次取消し(買い見せ玉の約定回避)
  8.  売り見せ玉を用いた一連の操縦行為(逆方向)の開始


【事案の特徴】

  • 買い見せ玉と売り見せ玉を併用したクロスボーダー取引です。
  • 株価を一方向に大きく変動させることなく、複数の銘柄において、買い見せ玉による値上がりで売り抜けるとともに売り仕込みを行い、買い見せ玉を取り消しつつ売り見せ玉による値下がりで買い戻すとともに買い仕込みを行うといった一連の行為を、数時間に渡り反復継続させることにより、収益を得ていました。
  • 日本取引所自主規制法人より提供された情報も参考として、実態解明を行いました。


 証券監視委では、海外から発注される海外籍法人のトレーダーによる不公正な疑いのある取引についても、積極的に調査を行うこととしており、問題が認められた場合には、海外当局とも緊密に連携しながら厳正に対処してまいります。


2.INコンサルティング株式会社に対する検査結果及び勧告について
 
 証券監視委は、平成29年3月22日、INコンサルティング株式会社(以下「当社」といいます。)に対して、金融庁に行政処分を行うよう勧告いたしました(詳細は下記リンク参照)。
 
INコンサルティング株式会社に対する検査結果及び勧告について
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170322-2.htm

【事案の概要等】
 当社は、適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」といいます。)として、未公開株式を投資対象とするファンドを運営し、投資家から約29億円の出資金を集めていました。
 
 上記公表文に記載のとおり、当社は、法令に基づく出資金の分別管理を怠った上、ファンド資金の一部を従業員の給与等に流用していました。
 平成28年3月1日に施行された改正金融商品取引法により、特例業務届出者に対しても、分別管理義務や忠実義務等の金融商品取引業者と同等の行為規制が課されることになり、上記のようなファンド運営者として当然に遵守すべきルールに違反した業者に対しては、行政処分の勧告を行うこともできるようになりました。
 本件についても、分別管理義務違反に加えて、ファンド資金の流用が忠実義務違反に当たるものとして、行政処分の勧告を行っています。今後も、改正法により導入された権限を十分に活用し、悪質な届出業者について積極的に行政処分の勧告を行っていく予定です。

 また、当社は、ファンドの運用財産である未公開株式を取得する際、価格の算定根拠を何ら確認・検討することなく、相手方が提示した価格をそのまま譲渡価格として受け入れており、結果として、取得価格の約2~3倍の価格で未公開株式を取得していました。
 上記の点は、改正法施行前の行為であることから、行政処分の勧告の対象とはしていませんが、上記の業務運営は顧客の利益保護という観点からは大きな問題があるため、検査結果の公表を行っています。
 今後も、改正法の趣旨を踏まえ、ファンド運営等を行う特例業務届出者に対して監視の目を強めるとともに、顧客の利益に反する業務運営については厳正に対処していくこととします。

 
2) コラム 
 日本証券業協会からの寄稿
 
◆「社債券の私募等の取扱い等に関する規則」の制定及び同規則の考え方の作成について◆
 
○ 本協会では、協会員が顧客に対し、社債券を私募等の取扱い等により販売する場合における、その社債券の発行者等の審査及びモニタリング並びに顧客への情報提供等に関する必要な事項を定めた「社債券の私募等の取扱い等に関する規則」を制定いたしました。(平成29年4月1日施行)
 なお、上記規則の制定にあたり、先般、パブリックコメントの募集を行い、その結果いただいたコメント及びそれに対する本協会の考え方を取りまとめております。
 
○ また、上記規則の施行に伴い、規定趣旨の明確化を図るため、「『社債券の私募等の取扱い等に関する規則』の考え方について」も作成しております。
 
○ 上記規則等については、日本証券業協会のウェブサイトをご覧ください。
  「社債券の私募等の取扱い等に関する規則」
   http://www.jsda.or.jp/katsudou/public/kekka/20170214130511.html
  「社債券の私募等の取扱い等に関する規則」の考え方について
   http://www.jsda.or.jp/shiryo/web-handbook/106_saiken/files/shibosaikisoku_QA.pdf
 
○本件に関するお問い合わせ先
:日本証券業協会 自主規制企画部(TEL 03-3667-8470)
 公社債・金融商品部(公社債担当)(TEL 03-3667-8456)


*******************
<発 行>
証券取引等監視委員会 事務局総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
             中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)
*******************


サイトマップ

ページの先頭に戻る