著しく不適当な引受価額での引受け エイチ・エス証券株式会社(以下「当社」という。)の公開引受部長(当時)は、株式会社A(以下「本件上場申請会社」という。)の新規上場の際の株式公募及び当社による当該株式の主幹事会社としての引受けに関して、本件上場申請会社との交渉を取り仕切っていたところ(当該引受けに関しては、本件上場申請会社代表取締役社長の意向を受けて、従前関与していた当社引受審査部の社員は引受審査手続から外されており、実質的には、同人が単独で引受審査を行うとともに、本件上場申請会社との間での公募価格・引受価額等に関する交渉を取り仕切っていたことが認められるところ)、同人は、本件上場申請会社代表取締役社長が「公募価格は、時価総額100億円となる価格が妥当と考えている」、「当社からは、公募価格としてより高い金額を従前から提示されてきており、価格引下げには応じられない」、あるいは、「公募価格は、最低でも、本件上場申請会社が従前発行していたストックオプションの行使価額を上回らなければならない」旨主張してくる中で、上場公募時の有価証券届出書に記載される想定公募価格(発行価格)を設定する際に、「引受実績を作るという観点からしても、この段階で主幹事からおりるべきではない」と考え、本件上場申請会社の上場公募における主幹事会社たる地位を維持するべく、当該想定公募価格(発行価格)を、当社算定の本件上場申請会社株式の理論価格(当該理論価格は、算定の際に用いられた1株当たりの予想純利益(予想EPS)が、当社がその引受審査において十分に策定根拠の妥当性について検証していない利益計画に基づき算出されたものであることからして、少なくとも不当に低いものではないものと評価される。)を著しく上回る金額(当該金額は本件上場申請会社が従前発行していたストックオプションの行使価額を若干上回る金額となっている。)とすることに同意した。 その後、当社は、本件上場申請会社とともに、機関投資家に対してプレヒアリングを行い、その際、機関投資家は「望ましいと思われる公募価格」を提示してきているところ、当該価格は、上記の想定公募価格に沿う形でより高い価格に誘導され、かつ、これにより、当該プレヒアリングの結果を踏まえて設定されたブックビルディングの仮条件もより高い価格帯に設定されたものと認められる状況において、当社は、その取締役会において上記理論価格を著しく上回る価額で当該公募株式の引受けを行うことを決議し、その後、当該引受価額で当該公募株式の引受けを行った。 当社及び当社の使用人であった者が行った上記行為は、証券取引法第43条第2号に基づく証券会社の行為規制等に関する内閣府令第10条第3号に規定する「引受けに関する自己の取引上の地位を維持し又は有利ならしめるため、著しく不適当と認められる価格により、有価証券の引受けを行っている状況」に該当する業務を営むことに該当するものと認められる。 |