平成24年3月9日

証券取引等監視委員会

株式会社総和地所に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    関東財務局長が株式会社総和地所(東京都新宿区、資本金9億1,000万円、役職員4名、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    業務の運営の状況に関し、公益又は投資者保護上重大な問題が認められる状況

    (1)株式会社総和地所が、同社事務室において行われていた極めて不適切な行為に関与している状況

    株式会社総和地所(以下「当社」という。)は、当社元代表取締役(以下「元社長」という。)の知人から紹介された者(以下「A氏」という。)の依頼により、平成23年2月1日以降、A氏が連れてきた複数の者(以下「販売グループ」という。)に対し、当社事務室及び事務備品の使用を許諾し、販売グループが行っていた当社株式の売付けに係る代金として当社株式を購入した個人投資家(以下「顧客」という。)より振り込まれる現金の入金確認業務等を行っていた。

    なお、当社がA氏及び販売グループのために行っていた業務の具体的内容は、次のとおりである。

    • 入金確認業務

      当社元従業員ら(以下「元従業員ら」という。)は、販売グループによる当社株式の売付けに係る代金の振込先とされている当社名義の銀行口座(以下「当社口座」という。)について、顧客から入金された現金の確認のために預金通帳への記帳を行い、販売グループへ入金額、顧客名の報告を行っていた。

    • 株主名簿書換え業務

      元従業員らは、入金確認済みの顧客に交付する株主名簿記載事項証明書を作成し、元社長が記名押印を行った上、これを販売グループへ渡し、併せて、自社で保管作成していた株主名簿の書換えを行っていた。

    • 出金受渡し業務

      元従業員らは、顧客より当社口座に入金された現金を即日のうちに全額引き出し、当社において封筒の束で保管した上、週に1回程度の頻度でA氏に渡していた。

    • 電話応対業務、苦情対応業務及び返金処理業務等

      元従業員らは、顧客より販売グループ宛に掛かってくる電話を、販売グループの担当者へ内線電話により取り次いでいた。

      また、元従業員らは、顧客より当社株式の購入金額の返金要請があった場合には、販売グループないし元社長からの指示に従って、和解契約書や合意書又は元社長を買主とする売買契約書の作成及びこれに基づく返金処理事務等も行っていた。なお、顧客からの返金要請分については、A氏より資金提供を受け返金していた。

    当社においては、遅くとも、当社を名宛人とする顧客からの内容証明通知書や訴状等が多数寄せられるようになった平成23年4月以降について苦情内容を確認し、また、A氏からの資金提供により苦情顧客への返金処理事務を行うなど、A氏及び販売グループによって何らかの極めて不適切な行為が行われていることを十分認識しながら、その後も、同24年1月18日(以下「検査基準日」という。)現在まで、A氏らの依頼に基づき、入金確認業務等を行い、当社事務室及び事務備品を販売グループに対して使用させたものであり、当社事務室において行われていた極めて不適切な行為に関与していた当社の業務の運営状況は、著しく不適当と認められる。

    当社における上記の状況は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第51条に規定する、業務の運営状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる場合の要件となる「業務の運営の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。

    (2)第二種金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成が確保されていない状況

    • 常勤役員が不在の状況

      当社においては、平成23年8月に元社長が辞任した以降、代表取締役を含む全ての役員が出社しておらず、当社の業務運営に一切関与していない状況にあった。

    • 使用人が1名であること

      検査基準日現在における当社使用人は1名のみであり、同人は、不動産仲介業に専従する社員にすぎないことが認められた。

    以上のとおり、当社においては、検査基準日現在、金商法等の関連諸規則について知識及び経験を有する役員及び使用人は確保されておらず、金融商品取引業を営む会社としての業務執行体制は構築されていない状況と認められる。

    当社は、金商法第29条の4第1項第1号ニに定める「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者」に該当するものと認められ、金融商品取引業者に対して監督上の処分を命ずることができる場合の要件となる金商法第52条第1項第1号に該当するものと認められる。

    (3)登録事項等の変更届出未済

    当社については、下記のとおり、平成22年5月以降の法定の届出を関東財務局長に一切行っておらず、監督当局における実態把握を困難ならしめており、登録業者として極めて不適切な状況にある。

    • 資本金の額の変更について

      当社は、平成22年7月9日から同23年2月16日にかけて、資本金の額を多数回にわたり変更しているにもかかわらず、金商法第31条第1項に定める届出をいずれも行っていない。

    • 役員の変更について

      当社は、平成22年5月28日から同23年9月15日にかけて、役員につき延べ10名が入れ替わっており、このうち、当社代表取締役についても二度の交替が行われたにもかかわらず、金商法第31条第1項に定める届出をいずれも行っていない。

    • 定款変更について

      当社は、平成23年2月15日付にて、発行可能株式総数にかかる定款の変更を行っているにもかかわらず、金商法第50条第1項に定める届出を行っていない。

    当社における上記行為は、金商法第31条第1項及び同法第50条第1項に違反するものと認められる。


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(登録の申請)

第二十九条の二 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。この場合において、第一種金融商品取引業を行おうとする外国法人は、国内における代表者(当該外国法人が第一種金融商品取引業を行うため国内に設けるすべての営業所又は事務所の業務を担当するものに限る。)を定めて当該登録申請書を提出しなければならない。

一 (略)

二 法人であるときは、資本金の額又は出資の総額(第一種金融商品取引業を行おうとする外国法人にあつては、資本金の額又は出資の総額及び持込資本金(資本金に対応する資産のうち国内に持ち込むものをいう。以下同じ。)の額)

三 法人であるときは、役員(外国法人にあつては、国内における代表者を含む。以下この章(第二十九条の四第一項第五号ホ(3)及び第五節を除く。)から第三章の三までにおいて同じ。)の氏名又は名称

四~八 (略)

2~4 (略)

(登録の拒否)

第二十九条の四 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはこれに添付すべき書類若しくは電磁的記録のうちに虚偽の記載若しくは記録があり、若しくは重要な事実の記載若しくは記録が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。

一 次のいずれかに該当する者

イ~ハ (略)

ニ 金融商品取引業(投資助言・代理業を除く。)を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者

二~六 (略)

2~5 (略)

(変更登録等)

第三十一条 金融商品取引業者は、第二十九条の二第一項各号(第五号を除く。)に掲げる事項について変更があつたときは、その日から二週間以内に、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。

2~6 (略)

(休止等の届出)

第五十条 金融商品取引業者等は、次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。

一~七 (略)

八 その他内閣府令で定める場合に該当するとき。

2 (略)

(金融商品取引業者に対する業務改善命令)

第五十一条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)

第五十二条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

一 第二十九条の四第一項第一号、第二号又は第三号に該当することとなつたとき。

二~十一 (略)

2~5 (略)

金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)

(金融商品取引業者が休止等の届出を行う場合)

第百九十九条 金融商品取引業者にあっては、法第五十条第一項第八号に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。

一~五 (略)

六 定款を変更した場合

七~十三 (略)

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