平成25年10月3日

証券取引等監視委員会

アブラハム・プライベートバンク株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会及び関東財務局長がアブラハム・プライベートバンク株式会社(東京都港区、代表取締役社長 岡 壮一郎(たかおか そういちろう)、資本金3百万円、役職員40名、投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    アブラハム・プライベートバンク株式会社(以下「当社」という。)は、投資助言・代理業の登録を受けている金融商品取引業者である。当社は、当社と投資顧問契約を締結している顧客に対する投資助言として、当該顧客の投資意向等を踏まえて、中立・客観的な立場から、外国投資法人が発行する外国投資証券及び外国で発行される集団投資スキーム持分(以下、これらを総称して「海外ファンド」という。)に係る個別の商品内容の説明を行うとともに、海外ファンドの取得を希望する顧客に対して、取得申込書の送付などの取得申込手続のサポートを行っていると主張している。

    また、当社は、雑誌、テレビ、電車の車内及びインターネット等において自社広告を展開することにより、近時、急速に顧客数を増加させている。

    当社の業務の実態及び広告の適切性を検証したところ、以下のとおり、法令違反の事実が認められた。

    • (1)無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況

      当社は、以下のとおり、遅くとも平成22年8月から同25年5月末までの間、海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行い、少なくとも、2,792顧客が海外ファンドを2,892件取得している状況が認められた。

      具体的には、当社は、当社と投資顧問契約を締結している顧客に対し、当社が顧客に取得を勧める個別の海外ファンドの資料を提示した上で、その商品内容、コスト、メリット、リスク等の説明及び取得申込書の送付を行うことにより、取得契約を成立させている。

      他方、顧客による海外ファンドの取得に関しては、その大部分について、当社の取締役が自ら株主となって国外に設立したSagacious Trend International Co.,Ltd.(以下「STI」という。)が、海外ファンドの発行者、又は海外ファンドの発行者から委託を受けている運用会社との間の委託契約に基づき、当社顧客による海外ファンドの購入額に応じた報酬を受領しているとともに、STIが報酬を受領する都度、当社の100%親会社であるアブラハム・グループ・ホールディングス株式会社(以下「AGH」という。)において、当該報酬と同額の債権がSTIに対して計上されている。

      当社は、AGHと役員及び事務所を同じくし、当社社員は全てAGHからの出向者であるとともに、AGHへ管理業務全般を業務委託している。STIについても、当社の取締役が自ら株主として設立した法人であるとともに、当社及びAGHが業務上の意思決定を行い、契約書におけるSTIの住所及び電話番号が当社と同一であること等から、3社は当社の業務に関し実質的に一体であると認められる。

      よって、3社は、実質的に一体となって、海外ファンドの商品内容の説明・取得申込手続のサポートを顧客に行うことにより、海外ファンドの取得契約を成立させ、顧客の海外ファンドの購入額に応じた報酬を受領しており、このような行為は、発行者のために募集又は私募を取り扱う行為と認められる。

      したがって、当社の行為は、金融商品取引法第28条第1項に規定する第一種金融商品取引業又は同条第2項に規定する第二種金融商品取引業(同法第2条第8項第9号に掲げる「有価証券の募集又は私募の取扱い」を業として行うこと)に該当するものであり、当社が同法第31条第4項に基づく変更登録を受けることなく第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業を行うことは、同法第29条に違反するものと認められる。

    • (2)著しく事実に相違する表示又は著しく人を誤認させるような表示のある広告をする行為

      当社は、上述のとおり、様々な媒体を通じて広告を実施しているところ、これらの広告について以下のような問題のある表示が認められた。

      • 当社は、雑誌記事広告において、当社の提供する助言サービスである「いつかはゆかし」並びに国内証券会社及び国内投信会社が販売する積立商品の合計6商品を「国内外の主要積立商品比較(過去5年間の年平均利回り)」との表題の下、グラフにより比較し、6商品の中で「いつかはゆかし」が15.34%と、最も高い平均利回りを上げていると記載している。

        しかしながら、過去5年間の年平均利回りとして15.34%というパフォーマンスを上げていた投資商品は、当社顧客が投資対象を選択するに当たり選択肢となり得る投資商品の一つではあるものの、当社は、当該投資商品の取得を顧客に助言したことはなく、顧客が当社の助言を受けて当該投資商品を取得した事実もない。

      • 当社は、自社ウェブサイトにおいて、「類似の資産運用サービスと比較した場合、アブラハム・プライベートバンク株式会社の手数料は、業界最安値でございます。」と記載し、併せて、当社の調査に基づき作成した比較資料をその根拠として掲載している。

        しかしながら、当社は、他社のサービスとの手数料比較に際して、当社の助言手数料を下回るサービスが存在することを認識しながら、あえて当該サービスを比較対象に含めず、それ以外の事業者との間でのみ手数料を比較している。

      • 当社は、自社ウェブサイトにおいて、「金融機関や運用会社から販売手数料等はもらっていません。」と記載している。

        しかしながら、当社及びAGHは、上記(1)のとおり、STIを通じる等して、特定の海外ファンドの発行者又は運用会社から、当社顧客による海外ファンドの購入額に応じた報酬を受領している。

        当社が行った上記ア、イ及びウの行為は、広告等において、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をする行為であり、金融商品取引法第37条第2項に違反するものと認められる。

    • (3)顧客の利益に追加するため財産上の利益を提供する行為

      当社は、平成23年3月、投資顧問契約を締結した顧客から、過去実績から想定された投資実績に遠く及ばない等の理由で、当社が請求した助言報酬の免除等の依頼を受けた。

      これを受け、当社は、当該顧客に対し、平成21年10月から同23年9月までの2年分に相当する助言報酬計9,397,882円を全額免除した。

      当社が行った上記の行為は、金融商品取引法第41条の2第5号に掲げる「その助言を受けた取引により生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客に対し、財産上の利益を提供すること」に該当し、同条に違反するものと認められる。

PDF参考資料(PDF:164KB)


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(定義)

第二条この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう

一〜十 (略)

十一 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資証券若しくは投資法人債券又は外国投資証券

十二〜二十一 (略)

2〜7 (略)

8 この法律において「金融商品取引業」とは、次に掲げる行為(その内容等を勘案し、投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるもの及び銀行、優先出資法第二条第一項に規定する協同組織金融機関(以下「協同組織金融機関」という。)その他政令で定める金融機関が行う第十二号、第十四号、第十五号又は第二十八条第八項各号に掲げるものを除く。)のいずれかを業として行うことをいう

一〜八 (略)

九 有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い

(以下、略)

第二十八条 この章において「第一種金融商品取引業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう

一 有価証券(第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利を除く。)についての同条第八項第一号から第三号まで、第五号、第八号又は第九号に掲げる行為

二〜五 (略)

2 この章において「第二種金融商品取引業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう

一 (略)

二 第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利についての同条第八項第一号から第三号まで、第五号、第八号又は第九号に掲げる行為

三〜四 (略)

(以下、略)

(登録)

第二十九条金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない

(広告等の規制)

第三十七条  (略)

金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業に関して広告その他これに類似するものとして内閣府令で定める行為をするときは、金融商品取引行為を行うことによる利益の見込みその他内閣府令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない

(禁止行為)

第四十一条の二金融商品取引業者等は、その行う投資助言業務に関して、次に掲げる行為をしてはならない

一〜四 (略)

五 その助言を受けた取引により生じた顧客の損失の全部又は一部を補てんし、又はその助言を受けた取引により生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させること(事故による損失の全部又は一部を補てんする場合を除く。)。

六 (略)