平成28年1月29日

証券取引等監視委員会

アーツ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会がアーツ証券株式会社(東京都中央区、法人番号3010001084162、代表取締役 川崎 正(かわさき まさし)、資本金5億円、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • (1)株式会社オプティファクターに関連する債券について

      株式会社オプティファクター(以下「オプティ社」という。)は、債券発行を目的とするとして、平成16年3月にオプティ・メディックス・リミテッド(以下「OPM社」という。)を英領ヴァージン諸島に、同17年7月に株式会社メディカル・リレーションズ・リミテッド(以下「MRL社」という。)を東京に、同22年12月にメディカル・トレンド・リミテッド(以下「MTL社」といい、この3社を「発行会社3社」という。)を英領ヴァージン諸島に、それぞれ設立し、発行会社3社の運営を行っている。

      発行会社3社は、診療報酬債権等を買い取り、それを「裏付資産」とするとして、OPM社においては平成16年6月から「OPTI-MEDEX Note」との、MRL社においては同19年11月から「メディカル・リレーションズ発行私募社債」との、MTL社においては同23年2月から「Medical Trend Note」との各名称の社債(以下、発行会社3社が発行する社債をそれぞれ「OPM債」、「MRL債」及び「MTL債」といい、これらを総称して「本件3社債」という。)を発行し、資金を調達している。

      本件3社債の発行残高は、平成27年10月末現在、合計で約227億円(投資者数は約2470者)となっている。

      アーツ証券株式会社(以下「当社」という。)は、平成16年6月からOPM債、同23年2月からMTL債の販売を一般投資家等の顧客に対して行うとともに、発行会社3社からの委託により、竹松証券株式会社、田原証券株式会社及び六和証券株式会社に対し、OPM債及びMTL債の販売について、上光証券株式会社、共和証券株式会社及びおきなわ証券株式会社に対し、MRL債の販売について、それぞれ紹介・助言・支援等を行っている(以下、当社が上記支援等を行っている上記6社を「関連販売証券会社」という。)。

      これにより、当社は、発行会社3社から、当社による販売額に応じた販売手数料等を受領するとともに、関連販売証券会社による販売額に応じ、上記支援等に係る業務委託手数料を受領している。

      当社による販売残高は、平成27年10月末現在、OPM債が約38億円、MTL債が約29億円、合計で約67億円(投資者数は約490者)となっている。

      こうした中、オプティ社及び発行会社3社は、平成25年3月以降、その財務状況を確認したところ、「決算書に実態が不明又は実在性の確認できない資産や売上が多額に計上」され、「実在性のあることが確認できた資産の合計額」は「債券の発行残高に比べて明らかに僅少であることが判明」した等として、同27年11月6日、東京地方裁判所に破産手続開始の申立てを行い、MRL社については同日、オプティ社、OPM社及びMTL社については同月13日に、破産手続開始決定を受けた。

      証券取引等監視委員会において、本件3社債の実態を検証したところ、(a)発行会社3社のいずれにおいても、社債発行の初期より、買い取った診療報酬債権等の残高は社債発行残高に比して著しく僅少であったこと、(b)OPM社については平成17年12月期から、MRL社については同23年4月期から、MTL社については同24年3月期から、社債発行によって調達した資金が、診療報酬債権等の買取り以外に、オプティ社及びその関連会社(以下「関連会社」という。)の資金等に流用され(オプティ社及び関連会社を経由したものも含め、発行会社3社間の資金の移動も行われた。)、毀損されていったこと、(c)その結果、本件3社債の新規発行を行わなければ、既発行の本件3社債の償還及び利払いを継続的に行うことが困難な状況に至ったことが認められた。

      当社の川崎正代表取締役(以下「川崎社長」という。)は、遅くとも平成25年10月頃までに、オプティ社の児泉一代表取締役(以下「児泉社長」という。)から発行会社3社の財務状況に関する相談を受けるなどし、発行会社3社のいずれにおいても、買い取った診療報酬債権等の残高は社債発行残高に比して著しく僅少であること、社債発行によって調達した資金が、診療報酬債権等の買取り以外に、オプティ社及び関連会社の資金等に流用され、毀損されていること、「決算書に実態が不明又は実在性の確認できない資産」が「多額に計上」され、「実在性のあることが確認できた資産の合計額」は「債券の発行残高に比べて明らかに僅少」となっていること等を認識した。

      • 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対して虚偽のことを告げる行為

        川崎社長は、その業務に関し、児泉社長とともに、上記のように発行会社3社の財務状況の実態を認識したにもかかわらず、これを意図的に秘匿・隠蔽したまま、当社営業員及び金融商品仲介業者をして、顧客に対し、OPM債及びMTL債の販売を継続した。

        また、当社は、OPM債及びMTL債について、事実に反し、「本債券発行を目的として設立された特別目的会社(SPC)」が「診療報酬債権等を取得し、それらを裏付資産として発行される債券」であり、「安全性の高い商品」であると記載した勧誘資料及び契約締結前交付書面の作成・使用を継続することとし、当社営業員及び金融商品仲介業者をして、顧客に対し、当該勧誘資料等を使用し、事実に反し、診療報酬債権等が「裏付資産」であり、「安全性の高い商品」である旨を説明し、OPM債及びMTL債の販売を継続した。

        当社の上記の行為は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第38条第1号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」に該当するものと認められる。

      • 関連販売証券会社に虚偽の決算報告書等を送付する行為

        川崎社長は、その業務に関し、児泉社長とともに、関連販売証券会社に対しても、上記アと同様、発行会社3社の財務状況の実態を意図的に秘匿・隠蔽したまま、当社又はオプティ社において、関連販売証券会社に対し、虚偽の診療報酬債権等の残高等を記載した決算報告書及び運用実績報告書を送付し続けるとともに、上記アと同様の当社作成の勧誘資料等のひな型を送付し、これに基づき、本件3社債の販売を継続させた。

        当社の上記の行為は、金商法第52条第1項第9号に規定する「金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき」に該当するものと認められる。

    • (2)その他の債券について

      • 「中小企業資金繰支援債券」について

        当社は、ワダツミ株式会社と提携し(役員派遣を含む。)、平成25年2月、WADATSUMI BENEFIT LIMITED(以下「WBL社」という。)をケイマン諸島に設立した。

        WBL社は、中小企業の売掛債権を買い取り、それを「裏付資産」とするとして、「中小企業資金繰支援債券」との名称の社債(以下「WBL債」という。)を発行し、資金を調達している。WBL債の発行残高は、平成27年11月末現在、合計で約5.7億円となっている(投資者数は約120者)。

        当社は、WBL社に対し、債券発行額・時期や売掛債権の買取り等について助言等を行うとともに、平成25年7月から、当社営業員及び金融商品仲介業者をして、WBL債の販売を一般投資家等の顧客に対して行い、また、WBL社からの委託により、竹松証券株式会社、田原証券株式会社及び大熊本証券株式会社に対し、WBL債の販売について、紹介・助言・支援等を行っている。

        当社によるWBL債の販売残高は、平成27年11月末現在、約2.2億円(投資者数は約10者)となっている。

        WBL社は、WBL債の発行当初より、買い取った売掛債権の残高が社債発行残高に比して僅少な状態が継続するとともに、平成26年9月以降、買い取った売掛債権について回収遅延が発生するようになった。その結果、同27年11月末現在、売掛債権買取残高は約2.4億円にすぎず、そのうち約1.2億円を直ちに回収することが困難になっている。

        川崎社長は、WBL債の発行当初から上記のWBL社の財務状況の実態を認識していた。しかしながら、当社は、WBL債の販売のために作成・使用した勧誘資料等において、「裏付資産」については「本債券発行により調達した資金を基に売掛債権の取得を行います」などと記載する一方、「発行体の信用リスク」については抽象的な記載しかせずに、顧客に対し、WBL債の販売を行った。

        当該勧誘資料等は、WBL社において、売掛債権の買取り又はその回収可能性等に現に問題が生じているにもかかわらず、顧客に対し、当該問題が生じていないとの誤解を与える表示をしたものである。

      • 「ASAP ALPHA NOTE」について

        ASAP ALPHA(以下「ASAP社」という。)は、平成25年3月にケイマン諸島に設立され、米国に所在する不動産を「収益の根源」とするとして、「ASAP ALPHA NOTE」との名称の社債(以下「ASAP債」という。)を発行し、資金を調達している。

        そして、ASAP社は、同社子会社の発行する社債Aを取得し、同子会社は、米国に所在する不動産を取得し、賃料収入を得るとする会社(米国LLC)の発行する社債Bを取得している。

        ASAP債の発行残高は、平成27年11月末現在、合計で約49億円となっている(投資者数は約560者)。

        当社は、平成25年6月から、ASAP社の管理・運営を行っている米国会社からの委託により、山形證券株式会社、竹松証券株式会社、田原証券株式会社、大熊本証券株式会社及びおきなわ証券株式会社に対し、ASAP債の販売について、紹介・助言・支援等を行うとともに、同26年5月から、当社営業員及び金融商品仲介業者をして、ASAP債の販売を一般投資家等の顧客に対して行っている。

        当社によるASAP債の販売残高は、平成27年11月末現在、約12億円(投資者数は約90者)となっている。

        しかしながら、上記LLCについては、決算書類が作成されておらず、財務状況等の実態が不明である。当社も、証券取引等監視委員会の検査に対し、上記LLCの実態を的確に説明できない。

        当社は、上記LLCの実態を的確に把握していないにもかかわらず、ASAP債について、「収益の根源は本スキームを通じて保有される米国不動産に関連付けられたもの」と記載した勧誘資料等を作成・使用することにより、販売証券会社である当社が上記LLCの実態を的確に把握しているかのような誤解を与える表示をし、顧客に対し、その販売を行った。

      当社の上記ア及びイの行為は、それぞれ、金商法第38条第8号(平成26年5月30日法律第44号による改正前は同条第7号。)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して(略)重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められる。

参考資料(PDF:317KB)


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(禁止行為)

第三十八条金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。

金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為

二〜七(略)

前各号に掲げるもののほか、投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)

第五十二条内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

一〜八(略)

金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき。

(以下、略)

金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)

(禁止行為)

第百十七条法第三十八条第八号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。

(略)

金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為

(以下、略)