平成28年2月19日

証券取引等監視委員会

竹松証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    北陸財務局長が竹松証券株式会社(石川県金沢市、法人番号4220001004081、代表取締役 竹松 俊一(たけまつ しゅんいち)、資本金1億円、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • (1)株式会社オプティファクターに関連する債券について

      株式会社オプティファクター(以下「オプティ社」という。)は、債券発行を目的とするとして、平成16年3月にオプティ・メディックス・リミテッド(以下「OPM社」という。)を英領ヴァージン諸島に、同17年7月に株式会社メディカル・リレーションズ・リミテッド(以下「MRL社」という。)を東京に、同22年12月にメディカル・トレンド・リミテッド(以下「MTL社」といい、この3社を「発行会社3社」という。)を英領ヴァージン諸島に、それぞれ設立し、発行会社3社の運営を行っている。

      発行会社3社は、診療報酬債権等を買い取り、それを「裏付資産」とするとして、OPM社においては平成16年6月から「OPTI-MEDEX Note」との、MRL社においては同19年11月から「メディカル・リレーションズ発行私募社債」との、MTL社においては同23年2月から「Medical Trend Note」との各名称の社債(以下、発行会社3社が発行する社債をそれぞれ「OPM債」、「MRL債」及び「MTL債」といい、これらを総称して「本件3社債」という。)を発行し、資金を調達している。

      本件3社債の発行残高は、平成27年10月末現在、合計で約227億円(投資者数は約2470者)となっている。

      竹松証券株式会社(以下「当社」という。)は、アーツ証券株式会社(東京都中央区、代表取締役 川崎正、平成28年1月29日登録取消し。以下「アーツ証券」という。)から紹介・助言・支援等を受け、本件3社債のうち、平成22年2月からOPM債、同23年3月からMTL債の販売を一般投資家等の顧客に対して行っている。

      当社によるOPM債及びMTL債の販売残高は、平成27年10月末現在、OPM債が約20億円、MTL債が約9億円、合計で約30億円(投資者数は約280者)となっている。

      こうした中、オプティ社及び発行会社3社は、平成25年3月以降、その財務状況を確認したところ、「決算書に実態が不明又は実在性の確認できない資産や売上が多額に計上」され、「実在性のあることが確認できた資産の合計額」は「債券の発行残高に比べて明らかに僅少であることが判明」した等として、同27年11月6日、東京地方裁判所に破産手続開始の申立てを行い、MRL社については同日、オプティ社、OPM社及びMTL社については同月13日に、破産手続開始決定を受けた。

      証券取引等監視委員会において、本件3社債の実態を検証したところ、(a) 発行会社3社のいずれにおいても、社債発行の初期より、買い取った診療報酬債権等の残高は社債発行残高に比して著しく僅少であったこと、(b) OPM社については平成17年12月期から、MRL社については同23年4月期から、MTL社については同24年3月期から、社債発行によって調達した資金が、診療報酬債権等の買取り以外に、オプティ社及びその関連会社の資金等に流用され(オプティ社及び関連会社を経由したものも含め、発行会社3社間の資金の移動も行われた。)、毀損されていったこと、(c) その結果、本件3社債の新規発行を行わなければ、既発行の本件3社債の償還及び利払いを継続的に行うことが困難な状況に至ったことが認められた。

      当社は、平成21年5月にアーツ証券からOPM債の販売について提案を受け、アーツ証券及びオプティ社からの商品説明等を踏まえ、同年11月に販売することを決定したとしている。

      しかしながら、当社は、その決定に当たって、発行会社の財務に関する書類を全く入手せず、商品内容や発行会社等の審査を実質的にはほとんど行っていないなど、アーツ証券及びオプティ社を信頼できるとの竹松俊一代表取締役の判断の下、アーツ証券及びオプティ社をただ信頼して、販売を決定したものである。

      こうした状況は、平成23年3月にMTL債の販売を決定する際も同様であった。

      また、当社は、上記のとおり、商品内容等の審査をほとんど行わないまま、OPM債及びMTL債の販売を開始した後も、アーツ証券等からの報告等をただ信頼するだけで、ブログ等で積極的に紹介する一方、アーツ証券等による説明どおりの商品内容となっているか、発行会社が適切に運営されているかといった事後的なモニタリングはほとんど行っていなかった。

      このように、当社は、OPM債及びMTL債の販売において、アーツ証券等をただ信頼し、販売証券会社として自ら適切に商品内容等の審査及びモニタリングを行うことを怠り、発行会社の運営状況等の実態を把握することができなかった。

      こうしたことから、当社は、OPM債及びMTL債について、顧客に対し、事実に反し、「本債券発行を目的として設立された特別目的会社(SPC)」が「診療報酬債権等を取得し、それらを裏付資産として発行される債券」であり、「安全性の高い商品」であると記載した勧誘資料及び契約締結前交付書面を使用して、事実に反し、診療報酬債権等が「裏付資産」であり、「安全性の高い商品」である旨を説明し、販売を行った。

      当社の上記の行為は、金融商品取引法第38条第8号(平成26年5月30日法律第44号による改正前は同条第7号。)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示(略)をする行為」に該当するものと認められる。

    • (2)その他の債券について

      • 「中小企業資金繰支援債券」について

        WADATSUMI BENEFIT LIMITED(以下「WBL社」という。)は、平成25年2月にケイマン諸島に設立され、中小企業の売掛債権を買い取り、それを「裏付資産」とするとして、「中小企業資金繰支援債券」との名称の社債(以下「WBL債」という。)を発行し、資金を調達している。WBL債の発行残高は、平成27年11月末現在、合計で約5.7億円(投資者数は約120者)となっている。

        当社は、アーツ証券から紹介・助言・支援等を受け、平成25年8月から、WBL債の販売を一般投資家等の顧客に対して行っている。

        当社によるWBL債の販売残高は、平成27年11月末現在、合計で約0.8億円(投資者数は約20者)となっている。

        WBL社は、WBL債の発行当初より、買い取った売掛債権の残高が社債発行残高に比して僅少な状態が継続するとともに、平成26年9月以降、買い取った売掛債権について回収遅延が発生するようになった。その結果、同27年11月末現在、売掛債権買取残高は約2.4億円にすぎず、そのうち約1.2億円を直ちに回収することが困難になっている。

        当社は、WBL債の発行当初から上記のWBL社の財務状況の実態を認識していた。しかしながら、当社は、WBL債の販売のために作成・使用した勧誘資料等において、「裏付資産」については「本債券発行により調達した資金を基に売掛債権の取得を行います」などと記載する一方、「発行会社の信用リスク」については抽象的な記載しかせずに、顧客に対し、WBL債の販売を行った。

        当該勧誘資料等は、WBL社において、売掛債権の買取り又はその回収可能性等に現に問題が生じているにもかかわらず、顧客に対し、当該問題が生じていないとの誤解を与える表示をしたものである。

      • 「ASAP ALPHA NOTE」について

        ASAP ALPHA(以下「ASAP社」という。)は、平成25年3月にケイマン諸島に設立され、米国に所在する不動産を「収益の根源」とするとして、「ASAP ALPHA NOTE」との名称の社債(以下「ASAP債」という。)を発行し、資金を調達している。

        そして、ASAP社は、同社子会社の発行する社債Aを取得し、同子会社は、米国に所在する不動産を取得し、賃料収入を得るとする会社(米国LLC)の発行する社債Bを取得している。

        ASAP債の発行残高は、平成27年11月末現在、合計で約49億円(投資者数は約560者)となっている。

        当社は、アーツ証券から紹介・助言・支援等を受け、平成26年4月から、ASAP債の販売を一般投資家等の顧客に対して行っている。

        当社によるASAP債の販売残高は、平成27年11月末現在、合計で約13億円(投資者数は約150者)となっている。

        しかしながら、上記LLCについては、決算書類が作成されておらず、財務状況等の実態が不明である。当社も、北陸財務局の検査に対し、上記LLCの実態を的確に説明できない。

        当社は、上記LLCの実態を的確に把握していないにもかかわらず、ASAP債について、「収益の根源は本スキームを通じて保有される米国不動産に関連付けられたもの」と記載した勧誘資料等を作成・使用することにより、販売証券会社である当社が上記LLCの実態を的確に把握しているかのような誤解を与える表示をし、顧客に対し、その販売を行った。

        当社の上記ア及びイの行為は、それぞれ、金融商品取引法第38条第8号(平成26年5月30日法律第44号による改正前は同条第7号。)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、(略)重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められる。


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(禁止行為)

第三十八条金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。

一〜七(略)

前各号に掲げるもののほか、投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為

金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)

(禁止行為)

第百十七条法第三十八条第八号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。

(略)

金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為

(以下、略)