平成28年3月15日

証券取引等監視委員会

ファーストメイク・リミテッド株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    関東財務局長がファーストメイク・リミテッド株式会社(東京都千代田区、法人番号1010001090303、資本金1000万円、常勤役職員4名、投資助言・代理業、金融商品仲介業、適格機関投資家等特例業務)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者等に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • (1) 法人関係情報を利用した勧誘行為及び法人関係情報の管理不備

      • ア 金融商品仲介業において、他の業務で取得した法人関係情報を利用した勧誘行為

        ファーストメイク・リミテッド株式会社(以下「当社」という。)は、上記1.記載の業務の他に、上場会社の資金調達に関する相談に応じ、資金調達方法として増資の引受先を紹介するなどの業務(以下「アドバイザリー業務」という。)を行っている。

        当社のA代表取締役(以下「A代表」という。)は、平成25年4月、アドバイザリー業務において、上場会社であるα社に対し、当社組成のファンド(以下「本件ファンド」という。)を割当先とする新株式及び新株予約権の発行を行うことを提案し、同年9月、α社社長の内諾として、α社が増資を行う予定である旨の法人関係情報を取得した。

        その後、A代表は、適格機関投資家等特例業務として、本件ファンドの出資持分の取得勧誘を開始したが、その過程で本件ファンドへの出資に関心を示さなかった顧客に対しては、金融商品仲介業務として、α社の既発行株式の買付けを勧誘することとした。

        そして、A代表は、本件増資が公表される前に、2名の顧客に対して、アドバイザリー業務によって取得した当該法人関係情報を利用して、α社の既発行株式の買付けを勧誘した。

        上記アの当社が金融商品仲介業として行ったα社の既発行株式に係る勧誘行為は、金融商品仲介業以外の業務で取得した法人関係情報(有価証券の発行者に関する情報)を利用して行ったものであり、金融商品取引法(平成26年法律第44号による改正前のもの。)第66条の14第1号ニに該当するものと認められる。

      • イ 法人関係情報の管理の不備

        A代表は、アドバイザリー業務の担当であり、法人関係情報を取得する立場にあるところ、当社では、法人関係情報について、その管理に関する社内規程がなく、取扱いがA代表の判断に委ねられている状況で、法人関係情報を管理するためのチェック機能やけん制機能が全く働いていないなど、アドバイザリー業務を通じて取得された法人関係情報がいつでも顧客に提供可能な状態に置かれている。

        上記イの当社における法人関係情報の管理の状況は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められ、(a) 金融商品取引業者としては、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められ、(b) 金融商品仲介業者としては、同法第66条の15において準用する同法第40条第2号に基づく同府令第281条第3号に該当するものと認められる。

    • (2) 上場会社による有価証券届出書の虚偽記載への加担等

      A代表は、平成25年12月に、株式会社オプトロム(同27年10月名古屋証券取引所セントレックス上場廃止。以下「オプトロム社」という。)による第4回新株予約権の発行(以下「本件増資」という。)に関し、旧知の仲であったオプトロム社のB役員(当時。以下同じ。)から、本件増資の引受先を紹介した者として当社の名義を貸して欲しい旨の要請を受けた。

      当該要請は、具体的には、

      (a) オプトロム社が、当社に対し、本件増資に伴う新規資金調達額の5.5%相当額を手数料として一旦交付する

      (b) このうち5.0%相当額は、当社がオプトロム社の指定する者に支払う

      (c) 残った0.5%相当額は、当社が名義を貸してくれたことへの報酬とする

      との内容であった。

      A代表は、当該要請を承諾し、その後、オプトロム社のB役員より上記5.0%相当額の支払先が株式会社ヴォロンテ(以下「ヴォロンテ社」という。)であると知らされた。

      そして、A代表は、オプトロム社のB役員より、平成26年1月21日及び同年2月7日、本件増資に係る有価証券届出書の案を示され、その内容の確認を求められた。同代表は、当該届出書案において、「本新株予約権の行使に比例し、割当予定先の当該行使額の5.5%が株式会社ファーストメイク(略)に対するアドバイザリー費用となっております」など事実と異なる記載があることを確認したにもかかわらず、オプトロム社が名古屋証券取引所から本件増資の承認を得られやすい表現であればよいとの考えから、オプトロム社に訂正を求めず、これを容認した。

      この結果、平成26年2月27日、オプトロム社から、上記虚偽の内容が記載された有価証券届出書が当局に提出された。

      その後、A代表は、オプトロム社のC役員(当時)の指示に従い、平成27年4月までの間、複数回にわたり、オプトロム社から本件増資に係るアドバイザリー費用の名目で受領した金銭2822万円のうち2389万円を、ヴォロンテ社に振込み又は現金で支払っており、当社に対するアドバイザリー費用となっているとする当該有価証券届出書の記載に反する行為を継続した。

      当社は、上記アドバイザリー業務に関し、名義貸しを行い、有価証券届出書の虚偽記載を容認した上、当該届出書に記載された内容に反する行為を継続した。当社の当該行為は、オプトロム社が行った有価証券届出書の虚偽記載に加担したものと認められる。

      さらに、当社は、ヴォロンテ社に対する上記支払いに際し、ヴォロンテ社及びその代表者等の本人確認や反社会的勢力との関連性等の確認を行っていない状況が認められた。

      このような当社の業務運営の状況は、金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。


(参考条文)

○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(適合性の原則等)

第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。

一 (略)

二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。

(金融商品取引業者に対する業務改善命令)

第五十一条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(禁止行為)

第六十六条の十四 金融商品仲介業者又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。

一 金融商品仲介業に関連し、次に掲げるいずれかの行為を行うこと。

イ~ハ (略)

ニ 金融商品仲介業以外の業務を行う場合には当該業務により知り得た有価証券の発行者に関する情報(有価証券の発行者の運営、業務又は財産に関する公表されていない情報であつて金融商品仲介業に係る顧客の投資判断に影響を及ぼすものに限る。)を利用して勧誘する行為

(以下、略)

(注)当該条文は、平成27年5月29日に施行された平成26年法律第44号による改正前のものである(改正後は第六十六条の十四第一号ホとなる)。

(損失補てん等の禁止等に関する金融商品取引業者等に係る規定の準用)

第六十六条の十五 第三十八条の二、第三十九条第一項、第三項及び第五項並びに第四十条の規定は金融商品仲介業者について、第三十九条第二項及び第四項の規定は金融商品仲介業者の顧客について、それぞれ準用する。この場合において、同条第三項中「当該金融商品取引業者等が」とあるのは、「当該金融商品仲介業者の所属金融商品取引業者等が」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

○ 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)

(定義)

第一条 (略)

4 この府令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一~十三 (略)

十四 法人関係情報 法第百六十三条第一項に規定する上場会社等の運営、業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるもの並びに法第二十七条の二第一項に規定する公開買付け(同項本文の規定の適用を受ける場合に限る。)、これに準ずる株券等(同項に規定する株券等をいう。)の買集め及び法第二十七条の二十二の二第一項に規定する公開買付け(同項本文の規定の適用を受ける場合に限る。)の実施又は中止の決定(法第百六十七条第二項ただし書に規定する基準に該当するものを除く。)に係る公表されていない情報をいう。

(以下、略)

(業務の運営の状況が公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの)

第百二十三条 法第四十条第二号に規定する内閣府令で定める状況は、次に掲げる状況とする。

一~四 (略)

五 その取り扱う法人関係情報に関する管理又は顧客の有価証券の売買その他の取引等に関する管理について法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況

(以下、略)

(業務の運営の状況が公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの)

第二百八十一条 法第六十六条の十五において準用する法第四十条第二号に規定する内閣府令で定める状況は、次に掲げる状況とする。

一・二 (略)

三 その取り扱う法人関係情報に関する管理又は顧客の有価証券の売買その他の取引、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引に関する管理について法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況

(以下、略)

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