ベルテ株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
-
1.勧告の内容
東海財務局長がベルテ株式会社(愛知県名古屋市、法人番号2180001072457、資本金555万円、常勤役職員1名、投資助言・代理業、適格機関投資家等特例業務)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
-
2.事実関係
-
(1)不適切な適格機関投資家等特例業務の運営状況
ベルテ株式会社(以下「当社」という。)は、適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」という。)として、株式等を投資対象とするビーアールエヌ1号投資事業有限責任組合(当社が無限責任組合員。以下「BRN LPS」という。)を組成し、複数の特例業務の届出者(以下「届出業者」という。)が運用する匿名組合等(以下「ファンド」という。)に適格機関投資家として出資(以下「適格機関投資家出資」という。)を行っているとしている。
当社の業務運営を検証したところ、以下の問題が認められた。
ア適格機関投資家出資の外観の仮装
当社の代表取締役であるA(以下「A代表」という。)は、株式会社オリエント・パートナーズ(愛知県名古屋市、代表取締役 B。以下、それぞれ、「オリエント社」、「B氏」という。)と共同して、適格機関投資家出資を必要とする届出業者に対して、BRN LPSの名義を利用して、BRN LPSから適格機関投資家出資が行われたかのように外観を装うことを考えた。そして、当社は、希望した届出業者から、(ア)BRN LPSの名義の使用に係る対価(当社及びオリエント社の報酬分)に、(イ)出資相当額を加えた金銭を受領し、このうち、(イ)の出資相当額分をBRN LPSからの出資と称して届出業者16者が組成した17本のファンドに出資していた。
このように、当該17本のファンドに対するBRN LPSからの出資は、実際には、BRN LPSが負担することなく、当該届出業者の負担により行っていたものであり、BRN LPSからの適格機関投資家出資がなされているかのような外観を仮装したものに過ぎない。したがって、当該出資については、適格機関投資家出資とは到底評価し得ないものである。
上記の当社の行為は、特例業務について適格機関投資家出資を要件とする金融商品取引法(以下「金商法」という。)の趣旨をないがしろにするものであり、届出業者に特例業務の要件を充足しないまま違法にファンドの出資持分の取得勧誘や出資金の運用を行わせることとなり得るものと認められる。
このような当社の適格機関投資家出資に係る状況は、金商法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
イ無登録で投資運用業を行っている状況
当社のA代表は、平成26年3月、BRN LPSにおいて、同年4月以降、適格機関投資家出資がなくなることから、BRN LPS が出資しているSola1号投資事業組合の運営者である株式会社Sola(愛知県名古屋市、届出業者。以下「Sola社」という。)の代表取締役でもあるB氏に新たな出資者となる適格機関投資家について相談を行った。
そして、当社は、B氏が知人から借りた甲投資事業有限責任組合(以下「甲 LPS」という。)の名義を利用し、実際には、BRN LPSが出資相当額を負担する旨のB氏の提案を受け、平成26年4月、甲 LPS による出資と称してBRN LPSの組合財産から出資相当額を負担した。
このように、BRN LPS に対する甲 LPSからの出資は、実際には、甲 LPSが負担することなく、 BRN LPSの組合財産の負担により行っていたものであり、甲 LPSからの適格機関投資家出資がなされているかのような外観を仮装したものに過ぎない。
したがって、当該出資については、適格機関投資家出資とは到底評価し得ないものである。
このように、当該出資は、適格機関投資家出資とは認められないものであるから、当社が行った平成26年4月以降のBRN LPSの出資金の運用は、特例業務の要件を充足せず、金商法第28条第4項に規定する「投資運用業」に該当し、当社が同法第31条第4項に基づく変更登録を受けることなく、当該業務を行うことは、同法第29条に違反するものと認められる。
-
(2)無登録で第二種金融商品取引業を行っている状況
当社は、平成23年6月から同25年5月にかけて、B氏の依頼を受け、Sola社が運営するSola1号投資事業組合の出資持分の取得勧誘を行い、少なくとも10名に対し約1900万円の出資持分を取得させた。
当社が業として行った(2)の行為は、金商法第28条第2項に規定する「第二種金融商品取引業」に該当し、当社が同法第31条第4項に基づく変更登録を受けることなく、上記行為を行うことは、同法第29条に違反するものと認められる。
-
(3)投資助言・代理業を適確に遂行するに足りる人的構成が確保されていない状況
当社は、当社の唯一の常勤役職員である代表取締役が金商法の理解を欠き、かつ投資者保護等の意識が欠如していることから、(1)及び(2)の問題を生じていることに加え、投資助言・代理業において、契約締結前交付書面等の不保存等、多くの法令違反が認められた。
当社の(3)の状況は、金商法第29条の4第1項第1号ホに規定する「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者」に該当するものと認められ、このような当社の状況は、金商法第52条第1項第1号に該当するものと認められる。
-
(参考条文)
○金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)
第二十八条(略)
2この章において「第二種金融商品取引業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう。
一(略)
二第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利についての同条第八項第一号から第三号まで、第五号、第八号又は第九号に掲げる行為
三・四(略)
3(略)
4この章において「投資運用業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関が、当該行為のいずれかを業として行うことを含むものとする。
一・二(略)
三第二条第八項第十五号に掲げる行為
(以下、略)
(登録)
第二十九条金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。
(登録の拒否)
第二十九条の四内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはこれに添付すべき書類若しくは電磁的記録のうちに虚偽の記載若しくは記録があり、若しくは重要な事実の記載若しくは記録が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一次のいずれかに該当する者
イ~ニ(略)
ホ金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者
(以下、略)
(変更登録等)
第三十一条(略)
2・3(略)
4金融商品取引業者は、第二十九条の二第一項第五号又は第六号に掲げる事項について変更をしようとするときは、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の行う変更登録を受けなければならない。
(以下、略)
(金融商品取引業者に対する業務改善命令)
第五十一条内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(金融商品取引業者に対する監督上の処分)
第五十二条内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一第二十九条の四第一項第一号、第二号又は第三号に該当することとなつたとき。
(以下、略)