スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第4回)議事録

1.日時:

平成27年12月22日(火)9時30分~11時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【池尾座長】

それでは、定刻まであと一、二分あるかと思いますが、ご出席予定の方は全員もうおそろいになりましたので、ただいまよりスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議第4回会合を開催いたしたいと思います。皆様には、ご多忙中のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

なお、事務局のほうでいろいろ試行錯誤していただいていて、議論を活性化するために、これまでとちょっと違う雰囲気の座席配置になっておりますが、もし不都合があるようでしたら、後でまた言っていただければと思います。

それでは、本日は議事次第にもありますとおり、取締役会等をめぐる論点(2)として、攻めのガバナンスを議題としていただきたいと思いますが、前回も申しましたが、取締役会のあり方をめぐっては、一度二度ぐらい議論して尽きるという話ではないので、数回にわたって議論する必要があると思います。それで、最初の1回目に議論していただいたときにご提起いただいた論点を整理した上で、それを踏まえて本日は、攻めのガバナンスの側面を議題とするということで、特に取締役会の独立した客観的な立場の確保に向けた対応という論点と、CEOの選解任のあり方を中心にご議論いただければというふうに考えております。

本日の議題に関連いたしまして、花王株式会社取締役会議長、門永宗之助様と、同社執行役員、杉山忠昭様をゲストとしてお招きいたしております。後ほどお話を伺いたいと思います。

それでは、まず金融庁より、本日の論点について説明をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

おはようございます。それでは、お手元の資料に従いまして、本日の論点についてご説明をさせていただきたいと思います。資料1、取締役会等をめぐる論点(2)をごらんいただければと思います。資料2、同じタイトルで恐縮ですが、取締役会等をめぐる論点とございますが、こちらはこれまでにいただいたご意見をそのまま書いたものということで、コンセンサスということではございません。これを適宜ご参照いただければと思いますが、こちらのほうは事前にご説明をしておりますので、資料2についてのご説明は割愛をさせていただきます。

それでは、資料1についてご説明をさせていただきます。ただいま座長からもお話がありましたように、本日、取締役会の「独立した客観的な立場」の確保に向けた対応と、CEOの選解任のあり方につきましてご議論をいただきたいと思いますが、まず最初の取締役会の「独立した客観的な立場」、原則でいいますと4-3に関連しますが、こちらについて論点のご説明を申し上げます。

こちらのほうで大きく6つほど、今までいただいたご意見を論点として掲げさせていただいております。まず1点目が、取締役会が戦略的な方向付けなどについての議論を充実させまして、「独立した客観的な立場」から監督を行うという上で、独立社外取締役の実質的な機能の発揮というものが重要だというようなご意見を頂戴いたしました。独立社外取締役につきましては、その次の情報提供の仕方なども議論になりますけれども、そういう中において、独立社外取締役が発揮すべき実質的な機能というのはどういうものか、どうあるべきか。それから、資質についてどう考えるか。それから、人選、選任手続につきましてどのように考えるかということにつきまして、ご議論をいただければというふうに考えております。

また、2点目といたしまして、独立社外取締役の方への情報提供に工夫が必要だというご意見を頂戴いたしました。例えば、エグゼクティブセッションや筆頭独立社外取締役の一層の活用というのはコードでも触れられておりますけれども、これについてのご意見を頂戴できればということでございます。

それから、3点目でございますけれども、ご意見の中に、経営戦略などを議論すべき取締役会に日常的な業務決定が持ち込まれていて、議論の充実に向けた工夫が必要なのではないかということで、例えば議案数の絞り込みですとか、「審議事項」を導入するといったことをやられている会社様があるというご紹介がございました。こういった点についてどのように考えるか、また議案の絞り込みを図る際にどのような点に留意をすべきかという点につきまして、ご議論いただければと考えております。

4点目でございますけれども、監査役会・監査等委員会設置会社を中心といたしまして、指名や報酬など任意の諮問委員会等の活用や、委員長の人選、委員会の構成等の工夫が重要であるというご意見も頂戴いたしました。こういった任意の諮問委員会がどのような役割を果たし得るのか。また、こうした委員会の委員長の人選ですとか、委員会の構成等についてどのような工夫が考えられるかということにつきましてもご議論を頂戴できればというふうに思っております。

5点目でございますけれども、ガバナンスの向上に向けた会社の取組みについて株主の理解を得る上で、取締役会の実効性評価は重要だというご意見を頂戴いたしました。その具体的な方法ですとか評価結果に係る開示についてもご議論を頂戴できればと考えております。こちらの論点の最後ですけれども、取締役会の「独立した客観的な立場」を確保する上で、監督と執行の分離が重要、あるいは、CEOと取締役会議長の分離を図るべきだというご意見も頂戴いたしました。こういった監督と執行の分離、CEOと取締役会議長の分離はどのような場合に望ましいと考えられるのか。また、その際どのように分離を行うべきか、どういう方法が考えられるかということにつきましてもご意見を頂戴できればと考えております。

それから、今日の大きな2点目の論点でございますけれども、CEOの選解任のあり方につきましても議論を頂戴いたしました。攻めのガバナンスという観点から、CEOの選び方が重要であるということは言をまたないところでございますけれども、業績が出ないようなときについては解任できることも重要だというご意見も頂戴いたしました。その際、客観性・適時性・透明性等を担保するような手続が重要というようなご意見でございました。CEOの選解任につきまして、客観性・適時性・透明性を確保する上で、後継者計画の策定も含めまして、どういった方法や工夫が考えられるかということにつきましてもご意見を頂戴できれば幸いということでございます。

また、本日の議論の論点に関しまして、外部の方々からの意見募集を従前からさせていただいているところですけれども、5団体ほどから意見を頂戴しておりますので、口頭で恐縮でございますけれども、ご紹介をさせていただければと考えております。

まず1つ目のご意見は、コーポレートガバナンスに関係する国際的な団体から頂戴したものでございますけれども、こちらのご意見、大きく5つのご意見を頂戴しております。こちらの団体からいただいたご意見としましては、やはり取締役会は、業務執行の役割というよりは戦略的な役割を果たすべきというようなご意見でございます。その際、独立社外取締役の価値発揮のためには、少なくとも3名、かつ取締役会の3分の1の人数が要るのではないかというご意見でございます。また、独立社外取締役の方につきましては、人数だけでなく質が問われるようになってきているということで、適切なビジネス経験を持ち、戦略の議論に貢献できるような者が重要である。また、多様性の観点から、性別に配慮するだけでなく、グローバルな人材を登用すべきだというご意見でございます。また、独立社外取締役の更なる機能強化のためには、筆頭独立社外取締役の選任が重要ではないかというご意見でございます。

それから、取締役会評価につきましては、評価の手続、及び「自己評価か外部評価か」ということを開示すると同時に、各取締役の資質や専門性というものが、会社の戦略上・事業運営上のニーズに適合しているかを検討すべきであるということでございます。最後に、指名・監査等につきましては独立性を備えた委員会を設置することが重要というご意見でございます。

それから、2つ目のご意見、これもやはりコーポレートガバナンスに関係する国際的な団体から頂戴したご意見でございまして、こちらは大きく3つほど、本日の論点に関してご意見を頂戴しております。こちらの団体からいただいたご意見では、独立社外取締役の方が国際水準の資質を備えるように追加的な基準を設けるべきじゃないかということでございます。また、先ほどのご意見とも重なりますが、人数につきましては、独立社外取締役は最低でも3名とすべき。また、少なくとも3分の1は独立社外取締役とすべきというご意見でございます。また、独立社外取締役の方の機能発揮のために、会社が適切にサポートを行うべきというご意見を頂戴しております。

3つ目の意見でございますけれども、こちらは日本の経営者の方々からなる団体でございますけれども、総論としていただいたご意見は、「攻めのガバナンス」を実現するために、監督と執行の分離を一層進めるべきというご意見でございます。その中で具体的な行動におきましては、取締役会の構成、取締役の選任方針の開示というものを求めておりますけれども、議長ですとか各委員会の委員長の選任方法というものにつきましても、積極的に開示すべきということでございます。また、選任に関しましては、指名諮問委員会を活用すべきということでございます。この会議へのご意見と運営についてのご意見といたしましては、今後、取締役候補の指名の際に、取締役会が考慮すべき資質の内容や、手続の具体的なあり方ですとか、CEOの選解任におきまして、取締役会ですとか諮問委員会が考慮すべき要素や、透明性のある選任プロセスに必要な事項、あるいは非業務執行取締役を取締役会議長に選任する取組みが広がるための環境整備、こういったことについて議論・検証すべきであるというご意見を頂戴いたしております。

4つ目の意見でございますけれども、こちらは金融専門家からなる団体ということでございますけれども、こちらからいただきました議論といたしましては、ご意見は2点ございまして、1つ目は、本会議におきまして、取締役会の独立性の定義というものを検討すべきというご意見でございます。2つ目でございますけれども、やはりコード等におきまして、CEOが不正などによって企業の株主価値を損なった場合に、取締役会がCEOを解任する権限を有することを強調すべきだというようなご意見を頂戴しております。

最後の方からのご意見になりますけれども、こちらの機関投資家の方からなります団体の代表の方から頂戴しておりますけれども、こちらの方からは1点、取締役会評価に関しまして、外部機関を利用した場合には、利益相反関係、外部機関と企業さんとの利益相反関係の有無を開示すべきであるという意見でございました。

以上、駆け足で恐縮でございますけれども、本日の論点のご説明と、広くパブリックコメントでいただいているご意見の中から5団体の方々のご意見を関連してご紹介させていただきました。説明は以上でございます。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、本日の議題に関連いたしまして、取締役会による経営陣に対する委任の範囲及び取締役会評価に関する、現在までのコーポレートガバナンス報告書における開示状況につきまして、東京証券取引所からご紹介をいただきます。

【渡邉東京証券取引所上場部課長】

それでは、お手元の資料3を使って説明させていただきます。

最初は、経営陣に対する委任の範囲でございます。こちらの原則は、これまでのところ、ほとんどの会社がコンプライして、委任の範囲を開示いただいています。監査役会設置会社では、法令、定款で取締役会の決議を必要とされる事項に加えて、経営上の重要事項を取締役会に付議しているという例が典型例となっております。また、A社はそれに加えて、金額基準を設けているという開示をしております。

B社は、指名委員会等設置会社ですが、こちらでは法令上、取締役会による専決事項とされているものだけを付議をして、それ以外は執行役に委任していますという開示をしているケースでございます。指名委員会等設置会社では、こういったケースが典型例となっております。

自社における取締役会の役割・位置付けを開示で明らかにしているものもございます。例えば、C社では、取締役会は客観的かつ長期的な展望で、重要な経営方針や・戦略の策定、業務遂行の監督を行うと位置付け、取締役会で目標達成のプロセスをマネジメントするという開示をしています。

D社では、業務執行の意思決定は大幅に執行役に委任して、取締役会は経営の監督機能に専念するという開示をしております。

以上が、経営陣に対する委任の範囲の関係でございまして、次の4ページからが取締役会評価に関連するものでございます。

こちらの原則は、以前ご紹介した際も、エクスプレインする会社が最も多い原則ということでご紹介させていただきましたが、現状では、エクスプレインする会社はさらに多くなっており、8月末時点から30ポイントほど増加して、全体の54%の会社がエクスプレインをしている状況になっています。エクスプレインの中身を見ますと、今後実施予定と説明している会社が過半を占めている状況にございますけれども、実施するかどうか検討中と説明している会社も4割超いる状況となっております。

次のページから、コンプライしている会社による開示の状況をご紹介させていただきます。まず、分析・評価をどのような方法で行っているのかという観点では、E社はフルコースという感じですが、まず全取締役に対してアンケートをして、加えて一部の取締役に対してインタビューで自己評価を集め、その上で議長を中心に外部専門家を交えて分析を行って、その分析結果を踏まえて取締役会で審議をするというプロセスで評価をしておられます。会社によっては、インタビューは行わず、アンケート結果だけを踏まえて取締役会で評価するという会社もございますし、逆にアンケートは行わないで、インタビューだけで取締役会評価をするという会社もございます。また、外部専門家を使ったり使わなかったりというような形で、いろいろなバリエーションがある状況になっております。

次は、分析・評価を誰がやっているかという観点でございます。ほとんどの会社は、F社のように、取締役会が主体となって分析・評価を行っております。中にはG社のように、取締役会での評価の前に、代表取締役の方などが各取締役のパフォーマンスのようなものを評価しているといったような例も見られております。

H社のように、取締役会ではなくて指名委員会が各取締役や取締役会全体の実効性評価を行っているというような例も出ております。また、I社のように、各取締役の自己評価をベースにしてということでありますけれども、社外取締役のみが出席する社外取締役会議で評価をしているというような事例も見られております。

なお、H社では指名委員会で評価をしているということですが、指名委員会は5名のうち4名が独立社外取締役で構成をされており、指名委員会の委員長は、独立社外取締役の方が務められております。そういった指名委員会で評価をされているということでございます。

また、外部専門家を活用している会社では、J社のように、取締役等に対するアンケートの回答先を外部の法律事務所として取りまとめや分析を委託している例や、K社のように、取締役会全体の評価などについて、第三者機関に委託をしているというケースが見られております。

続きまして、分析・評価の観点ですが、一番多いのは、L社のような、取締役会の構成、運営状況。例えば審議時間や開催頻度、議案、出席率といったものですけれども、そういったものですとか、その他、取締役の方に提供している資料、情報の必要十分性とか、あるいは社外取締役の方に事前説明をされているかとか、そういったものを観点として挙げている事例が多く見られております。

一方、一部の会社では、例えばM社のように、自社のガバナンスガイドラインで、取締役会や議長、取締役会、各委員会の役割・責務などについて、あるべき姿を規定して、その上で取締役会評価では、そのガイドラインに沿った運用がされているかという観点で評価をしているという例も出てきております。

次が、分析・評価結果の概要ですが、評価結果につきましては、全社が取締役会の実効性が確保されているという評価をしておられます。中にはO社のように、それに加えて昨年から改善をしているという、進捗状況を開示している会社もございます。

また、評価結果を踏まえて、今後の課題について言及する会社もございます。例えばP社のように、社外取締役の増員を課題として認識されているという会社ですとか、あるいはQ社や、R社のように、中長期的な経営課題や経営戦略、あるいはそれに伴うリスクなどの重要な案件の議論にもっと時間を割くことを課題と認識している会社もある状況でございます。

また、S社のように、本質的な議論を活性化すべく、取締役会の議案を絞っていく必要性を認識している会社もございます。

私からの説明は以上でございます。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、ゲストにお迎えしています、花王株式会社の門永様、杉山様よりご説明をお願いしたいと思います。資料4を提出していただいておりますので、その資料に沿ってご説明がいただけるかと思います。それでは、早速ですがよろしくお願いいたします。

【門永様】

おはようございます。花王株式会社独立社外取締役の門永宗之助と申します。どうぞよろしくお願いします。

【杉山様】

花王のほうで、取締役会の事務局を担当しております、執行役員の杉山と申します。今日はよろしくお願いいたします。

【門永様】

それでは、花王の取組みについてご紹介します。資料の4をごらんください。

1ページ目の幾つかの項目ですが、これは「取締役会の独立した客観的な立場の確保」に向けた花王の取組みを、今日の論点に沿ってできるだけわかりやすいように並べましたので、この順番でご紹介をしたいと思います。私は社外取締役ですので、社外の目で花王の取組みの紹介ができるのではないかと思います。本題に入る前に、花王とはどの様な会社かということを簡単にご説明します。

2ページ目を見ていただきます。設立してから75年、創業してから130年近く経つ老舗の会社です。売り上げは1兆4,000億、これはグローバルの連結です。従業員は、そこに書いてある六千何百名というのは単体で、連結対象会社を、ほとんど100%子会社ですが、含めますとグローバルで3万2,000人の従業員がいます。

3ページ目ですが、左側が事業の内訳です。8割が消費者向けの商品を製造・販売しておりまして、この辺は皆さんになじみの多いところだと思います。化粧品、ヘアケア、スキンケア、それからおむつ、生理用品、洗剤など、家庭用の製品の製造・販売をしています。これが8割強です。左上のケミカル事業は、あまりなじみがないかもしれませんが、これは花王の家庭用製品の主原料である高級アルコールの誘導体をベースとした、また、それから派生的に展開したケミカル製品のBtoBのビジネスです。これが20%弱を占めており、6割以上が海外での活動になっています。この様に大きく2つの柱がございます。右側を見ていただきますと、地域別では日本が3分の2、それから残りをアジア、アメリカ、ヨーロッパ。これは輸出ではなくて、現地で製造・販売をしております。この様な事業構成になっております。

4ページ目を飛ばして、5ページ目に花王のガバナンス体制の全体像があります。見ていただきたいのは、1つは監査役会設置型の会社であるということ。それから、真ん中の取締役会というところを見ていただきますと、現在社内と社外同数の取締役、3人と3人で構成されていまして、議長は独立社外取締役、私が務めております。そして、2つの委員会があって、取締役選任審査委員会と取締役執行役員報酬諮問委員会です。全て社外の取締役、それから社外の監査役がメンバーになっており、議長も社外で、これは両方とも私が務めております。この様な形で現在運営をしておりますが、歴史を振り返ります。前のページに戻っていただいて4ページ目です。

過去15年ぐらいをここに示してあります。注目していただきたいのは、社外取締役の数のところです。2002年に社外取締役が初めて導入されまして、社内11、社外2。大体この様な形で10年ほどきまして、次に大きく変化が起こったのは、2011年から2012年にかけてのところです。社外取締役を1人増員して、社内を大幅に削減し、7人と3人の体制になりました。そして2年後にさらに改革を進めて、社内を減らして3対3の同数にすると同時に、議長は独立社外取締役になりました。ちなみに私は、2011年から12年にかけて、社外取締役1名増員というところで社外取締役として加わりました。それから、監査役も社外監査役を1名増員したのが2013年で、ここで社内が2、社外が3、この様な体制になりました。これがこれまでの流れですが、ここ数年で大きく進化させたというのが、花王の特徴だと思います。

最後のほうに、メンバーの写真が載っておりますが、6ページ目は取締役で、左側が社内で右側が社外です。3対3です。

それから、次のページは監査役で、左側が社内で右側が社外の方です。この様なガバナンス体制を組んでおります。

そこで早速ですが、先ほどの1ページに戻り、今日の論点に沿って、花王の取組みについてご説明をします。頭出し程度になると思いますが、後でいろいろ質問をしていただければよいかと。まず最初の独立社外取締役の実質的な機能という項目です。これを発揮させるための選定基準についてはどう考えているかということについて申し上げますと、まず花王では、バックグラウンド、経験分野が異なる人材を社外取締役として選んでいます。先ほど写真を見ていただきましたが、メーカーでの経営の経験の長い方、それから金融での経験の長い方、それから3番目は、幅広い分野を俯瞰するという意味で、元経営コンサルタント。これは私ですが、この3人が社外取締役になっています。それぞれバックグラウンドは異なりますが、共通点は3人ともグローバルの経験があるというところです。

求められる素養ですが、社内取締役は、異なる視点を持てるか、客観的な視点を持てるか、それをきちんと議論として進めていけるかどうか。そこが大事な点だと考えています。実は3人の社外取締役のうち、独立社外取締役が2名で、独立でない人が1人なのですが、全部独立でそろえるべきかということに関しては、先ほど申し上げたような素養を持っているかどうかということを重視していまして、多様性も独立性と同様に大事だと思っています。したがって、独立性と多様性のバランスを考えながら、人選を進めてきていると思います。

それから、次の項目の取締役会での議論の充実について。そのためにどの様な工夫をしているかということですが、まず最初に情報提供です。取締役会の前に当然事前説明がございますが、それ以外に、事業所に視察に出かけたり、それから、例えば花王の顧客向けのイベント、流通の顧客の集まりであるとか、その様なところの視察を通じて、経営状況、それから市場の状況の理解にも努めています。それから、議長は、特に社外だということもありまして、さらに情報が必要だという観点から、海外の事業所も訪問しています。これは私が行っているのですが、既に7カ国を訪問して、現地のマネジメントとのディスカッションを通じて、現地の理解にも努めています。議長は経営会議も陪席をしています。それによって、取締役会に上がってくる案件の背景がよく理解できる。そこは実際に陪席しての実感です。

取締役会での議論の仕方ですが、アジェンダが大きく3つに分かれます。1つは決議事項です。次に、毎月の執行状況の報告、これが毎月社長からの報告と、トピックに応じて担当役員からの報告がある。3つ目は、重要テーマに関して議論をする時間を必ず設けています。これはM&Aの話であったり、会社全体の戦略の話であったり、組織の話であったり、R&D、サプライチェーンの戦略の話とか、これらをテーマにしてプレゼンテーションしてもらった後に議論する。この様な時間をとっていますので、必然的に取締役会は時間がかかります。大体朝9時から始めて3時くらいまでかかる、このぐらいの時間を使っております。実感として、議論は十分できていると思います。

重要テーマの議論ということを先ほど申し上げましたが、何を議論するかというのは、社長から提案されますが、社外取締役、社外監査役のほうから、ここのところを次回しっかり議論したいので、テーマに上げてくれというリクエストもあり、それも組み入れられております。

社外監査役のこの様な議論への参加も非常に活発です。決議事項の場合に、差し戻しになったりとか、また私が議長をしていまして、提案に少し違和感があるので、監査役に整理し直してもらって、その場で提案の内容を修正してまた決議するというようなこともございました。それから、決議事項、報告事項についてたくさん質問が出ますが、その場で答えられないものに関しては、必ず次の会にフォローの説明をしてもらうようにしています。

それぞれの決議事項にしろ、報告事項にしろ、その中での時間配分がなかなか難しくて、最初は全部プレゼンテーションで終わっていたのですが、質問の時間、議論の時間が必要だということで、今日では、大分慣れてきて、説明は半分以下、残りの時間を質疑と、それから議論にあてられるようになってきています。

それから、社外取締役だけ自発的に集まって、これは定期的ではないのですが、議論することがございます。どこか別の場所に申し合わせて集まるということもありますし、取締役会の休憩の時間とか終わった後に、「ちょっとさっきのテーマで皆さん集まってください、どう思いますか」という様な議論をすることがございます。これは議長が呼びかけるという形で行っています。これが取締役会の進め方についての花王のやり方です。

3番目の指名委員会、報酬委員会、この機能ですが、この立て付けと役割についてご紹介します。先ほど申し上げましたように、両方の委員会とも社外の取締役、監査役が全員メンバーです。議長は取締役会の議長がしています。それぞれ年に3回ずつ行い、指名委員会では、取締役の候補者については社長が提案をして、それについて議論をします。事前に候補者と社外の役員が接する機会を設けることによって、書類上だけで議論するということがないような配慮がなされています。この委員会は取締役の候補者について議論する委員会ですが、執行役員の候補についても説明を受けています。といいますのも、この取締役候補、この体制で全体がうまく回っていくのかということを見るためには、執行体制のほうも見ておかなければいけないので、そういう意味で執行役員の候補についても説明を受けています。

報酬諮問委員会ですが、今年は準備議論を含め3回開催し、最終的に大きな報酬制度の変更を実施しました。1回目が、現状の仕組みに関して、社外のメンバーからいろいろとコメント、アドバイスを出してもらい、次にそれを受けて社内で提案をつくって、それを委員会で議論。3回目に微調整して、これでいいのではないかと。この様な3ステップで今年は大きな改革を行いました。

それから、次の取締役会の実効性の評価について。先ほど詳細な分析結果も聞かせていただきましたが、花王では、過去においても、コーポレートガバナンス・コードの話がある前からですが、1年に1回、社外の取締役、社外の監査役から幅広く所感を述べてもらっておりました。それは取締役会の実効性だけではなく、全社としてどうか、取締役会はどうか、それから自分はどうかなど、反省も踏まえて所感を述べてもらうのです。それは後でまとめて執行委員会などでもシェアされていたと思います。今年から、コーポレートガバナンス・コードに沿った評価軸を示し、その軸に沿ったコメントも所感の中で述べてもらいましたので、それをまとめて公表をしております。今年もそうでしたが、社外のメンバーからの評価が中心で、社内の取締役からはあまりコメントが出ませんでした。次回からは社内の取締役、社内の監査役の人にもしっかりと評価についての意見を述べてもらおうと考えています。

次の執行と監督の分離についてですが、これはご案内のように、社長と議長は分離しています。さらに議長は社外ということで、監査役会設置型の会社の中では数が少ないのではないかと思います。

執行については、取締役会で報告をしてもらっていますが、一部始終報告するというのは不可能ですので、大事なポイントとその背景について、社外の人にもわかるように説明をしてもらっています。最初はわかりにくかったのですが、繰り返しどこがわからないのか指摘することによって、今ではかなりわかりやすくなってきていると思います。その後議論をしまして、詳細については執行に任せるけれども、やはり気になったことについては、こことここは押さえてください、もしくは次回までにちゃんとまとめてご回答くださいという形で指摘をしております。

監督の部分ですが、今の花王を見ますと、内部統制体制がかなりしっかりしています。さらにそこに監査役が目を光らせていますので、取締役会での議論は、戦略的な側面が中心になっています。これはおそらく企業が置かれたフェーズフェーズによって力点の置き方が違ってくると思います。花王でも、内部統制について取締役会で相当指摘を受け、改善してきたという過去がございまして、今のフェーズを捉えますと、戦略的な側面に力点が置かれております。おそらくどういうフェーズに置かれているかということで社外取締役の選任の基準も少し変わってくるものと思います。

最後ですが、社長の選任、解任の話も今日のテーマと伺っています。取締役選任審査委員会では、サクセッションプランについては、社内の候補が中心ですけれども、議論をしております。それから、その候補に上がってきた人と、社外の人との接点ができるような工夫もして、これまた書類だけで議論をするということのないようにしています。それから、社外取締役だけで集まって、インフォーマルなミーティングをするということを先ほど申し上げましたが、ここで今の執行体制、社長も含めてどうなのかという評価の議論はしております。

他と比べることは難しいので、花王の取組みがどうなのかというのは、相対的には申し上げられないのですが、絶対的には、かなりうまくいっているのではないかという感覚を持っています。ただ、それは今の花王が置かれた状況にフィットした体制と運営がなされているということであって、ほかの会社にこのモデルを持っていってうまくいくかというと、必ずしもそうではないだろうと。やはり会社の置かれたフェーズ、仕組み、人選でもって、それぞれ企業が最適にしていくべきなのではないかと思います。いわゆる「ひな型の罠」にはまらないように注意しなければいけないと考えます。私からは以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。門永様、杉山様におかれましては、この後の議論にもご参加をお願いいたしております。ということで、ご質問等はこれからの議論の中で、適宜行っていただくということにさせていただきたいと思います。

それから、本日ご欠席の冨山メンバーより意見書のご提出がございましたので、席上配付させていただいております。メンバーの方々には事前に送付させていただきましたので、この場での読み上げは省略させていただきますということですが、事前にといっても、昨日の深夜に届いたんじゃないかと思います。ですが、読み上げは省略させていただきますが、必要に応じて意見書の内容も踏まえてご議論いただければ幸いに存じます。

それでは、本日の資料1を改めて見ていただきまして、ご自由にご議論いただきたいんですが、ちょっと論点が多岐にわたりますので、相互に関連はするかと思いますが、ちょっと3つぐらいに分けて順番に議論していただければと思います。まずは、最初の取締役会の独立した客観的立場の確保に向けた対応の項目の前半と後半にそれぞれを分けて、できれば議論していただきたいということで、前半の最初の3つのポチですね。経営戦略等を議論する取締役会、日常的な業務決定云々のところぐらいまでをまず議論していただいて、次に後半のまた3つのポチの議論をしていただいて、その後、CEOの選解任のあり方について議論していただくというふうに、相互に関連すると思うんですけれども、できればちょっと論点を絞ってご意見をいただければというふうに思います。

それでは、そういうことで、取締役会の独立した客観的立場の確保に向けた対応の前半部分の論点に関しまして、ご意見がございましたらお願いしたいと思います。それでは、高山メンバー。

【高山メンバー】

まず、この資料1に書かれているような取締役会等をめぐる論点についてこの会議で議論することは、大変結構なことだと思います。理由は2つです。1つ目は、ここに書かれている内容というのは、ガバナンス、取締役会の実効性に関する重要なポイントであるからです。これらについて議論する意義は大きいと思います。前回、取締役会をめぐる論点を議論したときには、どちらかというと機関設計のところに話が振れているような気がいたしました。機関設計の話は重要ですけれども、まずはこのような取締役会の実効性に関する重要なポイントを議論して、そのような十分な議論の結果、それぞれの企業がどういう機関設計を選択するかを考えていく、というのが、本来のあり方ではないかと思います。

それから、2つ目の理由は、グローバルな観点から見て、このような議論は理解を得やすいからです。今申し上げました機関設計の話というのは、各国固有の話も多く、グローバルな投資家からは理解しづらいというところがあります。一方で、この資料1に書かれているこのような論点の多くは、グローバルな投資家や企業の間でも共有されているガバナンスに関する重要事項です。本会議でこのような重要なポイントについていろいろ議論したということを世界に情報発信するほうが、より日本のガバナンス、日本企業に対する関心や共感を得られるのではないかと思います。

先ほどご紹介にありました、投資家からのレターも、機関設計の話というよりは、このようなポイントを中心に書いてあると思います。ちなみにこれらの投資家の団体の中で、既にそれぞれのホームページでレターを公表している団体の名前を、ここでご紹介します。1つはICGN、それからもう1つはACGAです。それぞれグローバルな機関投資家から構成される団体です。それぞれのホームページをごらんになれば、具体的な見解がわかると思います。

それから次に申し上げたいのは、これらの取締役会に関するさまざまなポイントを議論する上でベースとなる取締役会の役割、取締役会の監督機能について、各企業が十分に議論することが重要である、ということです。それをベースにして初めて、取締役会の議論はどのようなものであるべきか、社外取締役の役割は何か、というような話ができるのではないかと思います。実際に私がかかわった多くの企業では、まずそこのところを議論し、取締役会で基本的な考え方を共有した上で、それぞれのポイントについて議論されていました。花王さんのケースとも若干重なるかもしれませんが、それらの企業の議論の例を、ご参考までにここで紹介させていただきます。

まず、取締役会の監督機能についてですが、冨山メンバーの意見書にもありますように、わりと最近までは、日本の取締役会というのはマネジメント型であったというケースが多かったと思います。しかし、ガバナンス・コードでは、取締役会においてはその監督機能を重視するということを明確に示されています。ガバナンス・コードに基づいて多くの企業が、監督機能を重視する取締役会――表現が適切かどうかわかりませんけれども、モニタリングボードへの移行を進めているのが現状だと思います。ただ、監督機能といいましても、基本的なところは全ての企業で同じですが、一方で、企業の事業の現状とか、あるいは経営のステージによって、その力点というのが異なってくるというところもあると思います。ですので、各企業において、自社における取締役会の監督機能というのはどういうものであるかという議論が、ガバナンスの議論、取締役会の議論のスタートポイントになると思います。

以下、ご参考までに、私が取締役会評価を支援した企業の中から、監督機能に関する議論、あとそれから派生して、これらの資料1に書かれているポイントに関する議論を幾つかご紹介させていただきたいと思います。

ある企業においては、社外取締役会の割合も高く、主要な委員会もあり、外形的には優れたガバナンスの体制を整えておりました。ただ、取締役会においては、そもそも取締役がどうあるべきか、監督機能がどうあるべきかという本質的な議論をする機会が、今までありませんでした。というのも、取締役会というのは、限られた時間の中で多くの意思決定を行わなければならない会議体であるからです。確かに本質的な議論は重要であるけれども、それに割く時間がなかなかないという状況でした。しかし、幸いガバナンス・コードができましたので、コードの趣旨、精神に照らして、議長及び社外取締役、社外監査役で、合宿のような感じで1日十分時間をとり、取締役会の在り方・あるべき構成等について十分に議論したというケースがございます。

それから、次の企業の例です。こちらも外形的なガバナンスの基準は既に満たしている企業ですが、ガバナンス・コードを参照しながら、取締役会の監督機能というのは何か、監督機能をどう定義すべきかという点について、CEO、筆頭社外取締役、事務局が中心になって議論しました。そして、それをベースに取締役会全体で議論しました。その際に、取締役会の監督機能の上で重要なポイントが2つあげられました。1つは、企業の中長期的・持続的な成長をベースにして考えるべきだということです。もう1つは、企業を取り巻く環境変化が非常に激しいので、そのような変化も同時に意識をしなければいけない、という点です。

それから、次の企業の例をご紹介します。そちらの企業の場合は、取締役会の役割、機能に関して、取締役会全体で意見を共有した上で、その観点から見て、社外取締役の役割、資質、構成について、議論しました。社外取締役は、1、2人であれば構成の話はあまり出てこないと思うのですが、花王さんのように3人以上の社外取締役がいる場合は、全体の構成が非常に重要になってきます。自社の現状の事業、経営ステージから見て、どういう社外取締役の構成がベストなのか、ベストミックスは何かという議論をされました。それに加えて、社外取締役の監督機能を高めるという観点では、社内取締役の役割を明確にすることも必要となりますし、社内取締役の構成というのも重要なポイントになります。そのため、社内取締役の役割・機能・構成についても、十分にディスカッションされたということです。

それから、最後の例ですが、こちらは取締役会における議論の中身を、監督機能という観点から検証した企業です。この企業だけではなく他の企業にも言えることですが、取締役会での議題を考えるときに、2つのポイントがあると思います。1つは、中長期的な観点、持続的成長やリスクという観点で、重要なものに注力する、取捨選択してフォーカスするという観点です。それから一方で、重要なものを落とさないという観点があります。ある社外取締役のコメントですけれども、いかに取締役会以外の場で情報提供を受けても、社外取締役というのは、基本的には取締役会の議論で出てきたもの以外については、よく見えない、わからない、という限界がある。そういう中で、社外取締役は意思決定をしなければいけない。そういう意味で、議題の内容とその設定のプロセスが重要になるので、それがどうあるべきかについて議論を始めたという企業もありました。そして、議題の設定のプロセスの過程で、社外取締役の方がどのように関与するかというところについても、議論をされました。

あと、取締役会の議論を検討する上で、その前の経営会議における議論というのも重要なポイントとして上がってきます。取締役会での議論と経営会議での議論において、どのような質的な違いを持たせるかということについていろいろ議論されている企業もいらっしゃいます。

以上、皆様のこれからのディスカッションのご参考までにご紹介させていただきました。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。

それでは、川村メンバー、お願いいたします。

【川村メンバー】

監督と執行の分離に関して、花王さんにご質問したいと思うんですけれども。今の取締役会は、6ページの資料によれば、現役の社内の方が3名、それから社外の方が3名という形だと思います。これがほんとうの意味での執行と監督の分離になり得るかというところは、3対3の票が同一権限なのか、あるいは議長が少し余計に持っていて、議長裁定があるかというようなことで決まってくるケースもあると思います。そこを1つご質問したいのと、あともう1つ、ほんとうは次の最後の議題かもしれないんですが、社長の選任、解任というときに、こういう3対3のときに、決定ができるのかどうか。非常に重たい、一番大事なイシューですけれども、そのときにこういう形で最終的な決定ができるか。社内論理の跋扈というようなことが防げるのかどうなのかというようなことに関してはどうでしょうかというのが質問です。

【池尾座長】

では、お願いできますか。

【門永様】

仕組みとして、今、川村メンバーがおっしゃった懸念を払拭するというのは難しいと思うのですが、実際に今、花王でこういう形でやっていて感じますのは、オープンに議論するというカルチャーがそもそも社内にあるということです。意見が社内の3、社外の3で割れるということにはならないのではないかという感覚を持っています。1人でも反対をした場合には、もう1回議論をするというカルチャーというか習慣があって、3対3になったらどうしようという、そういう感覚は私は持ってないです。1人が拒否権を持っているというわけではないのですが、どうして反対なのかという議論もできています。まだ非常に重大な意思決定の場面でそういうことが起こったことはないのですが、それは乗り越えられるのではないかと思います。

したがって、たまたま花王はそうなのですけれども、企業によっては、仕組みで押さえておかなきゃいけないのか、それともやはり仕組みではなくて、そういうカルチャーとか人材でもってそれを乗り越えていくのか、そのチョイスなのではないかと思います。

【池尾座長】

どうぞ。

【川村メンバー】

今のご説明でわかりましたんですけれども、我々もそういう大きな意思決定の場面にあったことはないんですけれども、万々が一、例えば社長の業績が長い間非常によくきたときに、社長がその椅子に安住して少し堕落するとか、腐敗するとか、あり得ると思うんですね。そういうときでも選任、解任がきちっと取締役会でできるようにする必要があるんじゃないかというのが、実は我々のほうの考えでして、形としてもそれができるようにつくっていこうと。将来いろいろ人間が変わっていったり、状況が変わっていったり、今のように和気あいあいといろいろな結論が出せる状況がいつまでも続くとは限らない、あるいは、先輩の中で悪いのがずっとはびこるということがあるかもしれません。そういうときでも仕組みとして対応できるようにしようというのが、我々のほうの会社の考えです。これはちょっと考え過ぎかもしれませんけれども、ご参考までにちょっと申し上げます。

【門永様】

ありがとうございます。1つご質問にお答えしてなかったのですが、議長が票数をたくさん持っているということはございません。同じ1票ずつです。ただし、社長の解選任に関しては、選任審査委員会は全員が社外の人間がメンバーで、議長は私です。したがって、そこは今6人でやっております。そこは仕組み上の歯どめになっているかなとは思います。

【川村メンバー】

そうすると、委員会が持つのは参考意見の上程ではなくて、ほんとうの指名権そのものですか。

【杉山様】

仕組みの話なので、私が申し上げます。諮問委員会という形なので、あくまでも取締役会に意見を具申するという構成にしております。先ほど門永が6名と説明しましたが、社外取締役3名、社外監査役3名で6名です。プラス社長の澤田が、当然提案を出すこととなりますので、出席します。最終的には会社法の定めで取締役会での候補者選任、さらに株主総会で選任ということになります。あくまでも意見具申の諮問委員会として。ただ取締役会で3対3の票に、その諮問委員会の意見が非常に見えない1票という仕組みをつくって、当然取締役会が諮問と違う判断をした場合には、諮問委員会にもう1回その理由を説明し、戻さなきゃいけない、そういう立て付けにしております。

【門永様】

追加です。少し私の表現がまずくて、誤解を招いたかもしれませんが、決して和気あいあいではなくて、非常に厳しいと思います。私も自分で言っていて厳しいなと思いながら、指摘をしたりアドバイスをしております。そういう雰囲気でやっております。

【池尾座長】

それでは、小口メンバー。

【小口メンバー】

ありがとうございます。私どもは企業様との対話というのを生業にしていますので、自分の実体験から思うところを3点ほどお話しさせていただきます。まず取締役会の構成ですけれども、我々が企業様とお話するときに、私たちなりに企業の分析をした上で、中長期的な企業戦略を確認させていただいた後に、その戦略と今の取締役会がマッチしているのかどうなのか、ミスマッチが発生していないかといったところからいろいろご議論させていただいています。

これは花王様に対する質問というわけではないので、一般的な話として聞いていただきたいのですけれども、例えばお客さんの多くが女性であった場合とか、あるいは海外、これから力を入れますよといったときに、じゃあそのマーケット対応のノウハウをどうするのかみたいな話を今のボード構成の中でできるのか、多分花王様も何度もそういう議論を投資家とされていると思いますが、そういった話をさせていただきます。

そのときによく私どもがお聞きするのは、執行役員レベルでかなり多様化が進んでいて、女性も増えているし、外人もいます、ですからもう少し待ってほしいというお話です。そのご説明を聞いていていつも思うのですが、日本の中で執行と監督の分離、後半の議題に入ってしまうかもしれないんですけれども、そういう議論がされていますが、一般的には執行と監督の分離というのは、本音の部分でまだクリアになっていないのかなという部分があります。やはり取締役は、執行者が昇格してなるという意識があって、それが1つ取締役改革の障害になっているのではないかなと思っています。

それで私ども投資家の立場から、独立取締役がなぜ要るかというと、1つは絶対社内に存在しないファクターであって、それは独立ということです。門永議長もそうですが、これは社内の中ではあり得ないので、それがあることによって、今日議題に出ている指名とか報酬、監査において、必要不可欠な客観的な立場というのを確保できる。これはとても大きい要素だと思います。それから、これはまさに門永議長がそうだと思うのですけれども、社内からはなかなか得難い知識とか経験を、社外から迅速に持ち込んでくるということがあって、会議メンバーの会社さんでもいろいろやられているところだと思います。

独立性については今日お配りいただいた参考資料の中で独立性基準というのが出ていますので、これが議論の中心になると思いますが、新しい知識とか経験を持ち込むという部分については、企業ごとに明らかに違うと思うんですね。戦略も違うし、ボードの構成も違うので、その戦略実現のために何が欠けていて、何をしなきゃいけないかという見きわめがなければ、どういった独立取締役がどのぐらい要るのかという議論にならないので、そういうふうに考えると、やはり取締役会評価があって、そこで取締役会の構成とか必要人材の毎年のチェックがあって、それで取締役会の次のステップにつながってくると思います。

これはある指名委員会等設置会社の社外取締役議長がおっしゃっていて、議案の区分けというところにつながると思うのですけれども、PDCAというレベルで取締役会の役割はPとC、PlanとCheckで、DoとActionは執行がやるということです。そういう整理がされているかどうかわかりませんけれども、今日のお話を聞いていると、花王様の取締役会の機能と執行の機能はそういう視点で分けられていて、それでその中で議案もおのずと整理されてきているのかなというふうに感じました。

それから、2点目は独立社外取締役の役割ですが、私どもが企業様と話をさせていただくとき、なかなか内部者だと難しい議論というのがあります。例えばですけれども、買収防衛策を入れている場合の廃止の問題とか、あるいは企業不祥事があったときにどう信頼回復していくのかといった話は、当事者でもある社内の方との対話も難しくて、そうすると、我々としては独立社外取締役との対話の道を探るわけです。例えば、イギリスのコーポレートガバナンス・コードでは、株主が、取締役会議長とか最高経営責任者、業務執行取締役という通常の接触経路では懸念を解決できなかった場合や、そうした接触が適当でないという懸念を抱いている場合には、当該株主は筆頭独立取締役に接触できるべきであるという、A-4-1という規定がありまして、それを私どもでは意識はしているのですが、現実問題として、日本企業では独立社外の取締役の方と直接会うという慣習はあまりありません。例えば花王様の場合でも門永様に会うたびにどうしたらいいのか、そういうルートはあるのかもしれませんが、普通の会社ではないんですよね。そうするとどうしているかというと、自分でルートを探してきてアプローチするということをやっているわけです。

独立取締役の役割の中に、原則4-7の(iv)に書いてあるのですけれども、経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適正に反映させることというのがあるので、そういうアンテナを張るという意味もありますし、今申し上げたような問題を解決するという意味で、筆頭独立取締役がいらっしゃった場合は、株主との接触役を務めて、それで取締役会にフィードバックいただくような役割を持っていただくと大変ありがたいなと思っています。そうすると独立取締役というのは、1つは絶対社内では得られない独立というものと、それから、社内ではなかなか得られにくい新たな知識と経験という部分と、さらに株主と取締役会の橋渡しということで一石三鳥の期待ができるので、そういった意味で投資家にとっては、独立取締役というのは大変重要な役割だと思っています。

最後に1点、監査役と監査委員会の話です。企業と対話していて、監査にはやはり業務に精通した社内者が必要というお話しが多いんですね。一方、海外の投資家は、監査委員会こそ、ほぼ全員独立者であるべきで、独立取締役が長を務めるべきだという意見が多くて、どうしてもこの辺が、日本にいる人間からすると、ずっと議論がかみ合わない部分なんです。

なぜ彼らがそこまで独立者がいいというのかいろいろ聞いていると、たまたま企業不祥事の話をしていたときに、日本では不祥事が起こった後に、独立者だけで構成される第三者委員会というのが設定されて、そこでいろいろ原因の究明とかいろいろなことをするんだという話をしたところ、それを常駐的に社内に置いてほしいんだということを言われたことがあったのです。

確かに社内の人間がいたほうが、いろいろ情報連携というのはあると思うのですけれども、仮に第三者委員会ができた後に、第三者委員会で独立者が任意調査をするわけで、それでも調査が可能ということが今までわかっているわけなので、そうすると監査委員会が独立社外だけでも、内部監査部門との連携さえできれば、むしろ会社法上の権限がある分、より強固な監査ができるんじゃないかなと最近思っています。企業不祥事の問題があって、再発防止という場合に、監査役会とか監査委員会のあり方というのを、そういった視点で考えるというのも1つあるのかなと思っているところです。

あわせて監査等委員会という新しい制度はなかなか外人からは理解されなくて難しいんですけれども、海外機関投資家から信頼を得るためにも、独立者のみで構成するということも、1つ検討に値するんじゃないかなと思っています。済みません、長々と。以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。申しわけありませんが、いろいろな方から発言の希望が出ておりますので、できるだけ簡潔にご意見をお願いします。

それでは、内田メンバー、お願いします。

【内田メンバー】

どうもありがとうございます。過去3回、どうしても都合がつかなくて欠席せざるを得ず、お詫び申し上げます。座長が本日の議論の論点を前半と後半に分けられたのですが、まず全体について私の意見を申し上げたいのですが……。

【池尾座長】

もういいですよ、結構です。

【内田メンバー】

この会議の進め方についてですが、整理された論点や今日冒頭で紹介のあった意見を伺うと、昨年の「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」で議論され、さまざまな意見が出て、結局1つに収斂しなかった問題が随分含まれています。この会議でもう一度それを議論するのは確かに意味のあることではありますが、やはりこの会議で重要なのは、各企業がコードに一生懸命対応し自律的な取組みをしてきたことを踏まえ、その動向を押さえて、今後それによって発現するであろう効果を見定めることであり、これがこの会議の本来の目的だと思います。

実際、企業としては73項目ある原則に具体的に対応してきたわけですが、やはりかなり時間がかかったというのが実感です。原則によっては、社外取締役と議論しないと決められないものもあって、そうしたものを短時間で詰めることはできないので、時間がかかってしまったということがあります。去年12月にコードの原案が公表されて、各社は1月頃から対応に着手したと思いますが、それでもギリギリのこの11月、12月ぐらいになってやっと一斉にコーポレートガバナンス報告書を提出している状況だと思います。そういうことで、1年ぐらいかけてやってきた企業の取組みの全体像が、やっとこれからつかめる状態になってきたということです。

このコーポレートガバナンス・コードは、ご承知のように、「稼ぐ力」を向上させる、即ち「攻めのガバナンス」強化ということで、昨年の成長戦略で取り上げられ、策定されたわけです。したがって、本会議のテーマというのは、コーポレートガバナンス・コードの適用によって、企業の稼ぐ力が本当に向上したかどうかを検証することだと思います。

一方、OECDや欧米におけるコーポレートガバナンスのルールというのは、今少し議論があったような経営者の暴走とか、過度のリスクテイクの抑制とか、不正防止といった、いわゆる守りが主眼にあると思います。

今年の春にイギリスのスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの作成母体であるFRC、Financial reporting CouncilのCEOが経団連に意見交換に来られました。イギリスは皆さんご存じの通り、1992年にコーポレートガバナンス・コードのもとになる原則の策定が始まり、それから二十数年運用してきています。その間定期的に改訂を行っておりますが、コーポレートガバナンスと企業の収益性、収益力との関連性は実証されていないと、FRCのCEOは、はっきりおっしゃっていました。そういう意味からすると、日本のコーポレートガバナンス・コードは、稼ぐ力の向上という観点で議論して作ったものであり、ある意味で進んでいるということになりますが、逆にいろいろな面で試行錯誤が必要で難しい面もいっぱいあるということだと思います。従って、本コードによって稼ぐ力が向上したかどうか、という検証は非常に難しいかもしれませんが、やはりそれをきっちりやり、もし収益力が上がっていないのであれば、ガバナンスの面でどういう問題があるのかをフォローアップして、それを改善に結びつけていく、こういうPDCAを回すことが、この会議の本来の趣旨だと思います。

従って、コーポレートガバナンス・コード適用後の企業の収益性、ROAといったものについて、1つはマクロ的にきっちり分析する必要があると思います。ただし、これはデータが大量に必要で、外部要因も入り混じるので、5年ぐらい経ってからでないと明確な効果は測定出来ないかもしれません。それから、もう1つはミクロ的に、今日の花王さんのような事例の紹介、すなわち、個別企業の成功例や失敗例を見ていくことが必要です。ただ、花王さんもおっしゃったように、個々の企業の事例は全ての企業に当てはまるというわけではありません。n数が少ないわけですから、あくまで参考例だと思います。こうした個々の企業の事例を参考に、自分の会社に向いている点を取り入れる、そういう形の参考として、ミクロ的な事例分析をやっていくことが重要だと思います。いずれにしても、コーポレートガバナンス・コードの導入によって、企業経営や経済社会がどう変わっていったかを、まずはきっちり見定めていくことをやらなければならないと思います。

本日のテーマである、原則4-3に関して独立社外取締役が発揮すべき機能についてですが、この原則4-3というのは、どちらかというとOECD、欧米型の守りを主眼に置いた、モニタリングモデルを意識した原則のように読み取れると思います。この観点で必要な資質と言えば、まずはその会社の経営理念をしっかり共有し、独立した立場で高い倫理観と見識に基づいて、CEOに率直に意見を言えることだと思います。一方、本日の議題は、攻めのガバナンスということをうたっているわけで、その観点からいくと、むしろ原則4-7の(1)が重要だと思います。ここに記載されている通り、独立社外取締役に期待される役割・責務としては、「経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと」と書いてある部分が、攻めのガバナンス上は重要だと思います。

独立社外取締役の知識、経験、能力を生かして、内部の業務執行役員が気付かない点、知見が足りない点を、外部の知見で補って、優れた経営戦略構築に結び付けることが、企業の稼ぐ力を高める上で非常に重要であり、企業が真剣に取組むべきことだと思います。例えば、成長戦略に関して言えば、グローバル戦略、オープンイノベーションのためのオープン戦略、研究開発戦略、知財戦略などについて、的確な助言・意見具申できる独立社外取締役を選任することが、攻めのガバナンスでは非常に重要と思います。

ここで1つ、門永さんに質問ですが、花王さんは監査役設置会社ですから、取締役会で業務執行の意思決定を行う必要があると思います。門永さんご自身は海外にも行かれるなどかなり現場を回っておられるので、ある程度事業の本質を見極めた上で、ご判断ができると思いますが、なかなか社外取締役でそこまでできる方は少ないような気がします。ついては、今、花王さんの社外取締役として実際にどれぐらい時間を使っておられるかということを質問したいと思います。また社外取締役が事業の現場を十分に知らずに業務執行の意思決定に参加する場合、その決定に関して責任がかかってくることに対して、どういう負担感があるか、その辺についてご質問させていただければと思います。

【門永様】

ご質問ありがとうございます。最後のご質問についてお答えしますと、経営会議が、実は花王の場合はほぼ毎週ございます。かなり時間もかけていまして、それに陪席をしていますので、それと取締役会と諸々の委員会を入れると、月に5回ぐらいは行っております。プラス事業所視察ですので、全体の私の時間を100とすると、25%。視察が多いと30%ぐらいの時間は使っています。それを活かして、その議論であるとか決議のときに、ほかの2人の社外取締役に対して、私が補足の説明をする場面は多いです。それはこういう背景で、こういうプライオリティで、全体の中ではこうなっていますという解説をして、意思決定を助けるというやり方をしています。

【内田メンバー】

わかりました。どうもありがとうございました。

【池尾座長】

何度もご発言いただく機会は、ちょっと今日は取れないと思いますので、論点を分けてというのはもう忘れていただいて、今日の論点全般にかかわる形で結構ですので、お願いします。それでは、上田メンバー。

【上田メンバー】

ありがとうございます。では、全体にわたって、ただし、簡潔に話させていただくよう努めます。まず、本日の資料1の論点を見ての印象です。去年までは、例えば独立社外取締役は必要なのか、どういう構成がいいのかという形式論が中心だったと思いますが、1年たったいまでは、これをどう活用するか、どういう資質が求められるかという実質的な議論になっていて、相当議論が進んだなと率直な実感として持っております。おそらく日本の会社も、今まで悩んでいたのではないでしょうか。そこにコードができて、いざどうするかというタイミングに入ったのかなというふうに思っております。

ただ、本日の議論の全てに共通なものとして、従来の執行型の取締役会、これが日本の実務の文化であったかと思うんですが、それに監督機能をどう組み込んでいくか、監督機能を明確化するのか、監督機能に特化するのか、あるいはどうバランスをとるのかといったところについては、各社によって取組みは違うのだろうと思います。本日の花王様からは戦略というお話をいただきましたが、そういった各社の状況に合った形で、取締役会をどう考えていくのかという段階になったのかなと思っています。

したがって、まずは取締役会というのは何をする組織なのか、ここを考えることが必要で、全て本日の議論というのは、そこがスタート地点になっているのかなと思います。それを考えないと何が起こるかというと、例えば社外取締役として、客観的に見て独立性に疑義がある人を連れてきて、いや独立性はあります、2名採用しましたと会社が主張する。コードのとおりやっていますが何か問題ありますか、というようなことになってしまうのではないかと危惧しています。

あるいは、資質の問題。本来は独立性という形式的なものよりも、資質のほうが大事なのです。その会社の取締役会のあり方に見合った資質が求められます。先ほどの花王様のお話は、すごくわかりやすかったのですが、今は金融とメーカーと、そして経営全般見られるという構成の社外取締役が望ましいとのこと。さらに社外と社内が3対3と、こういうやり方が最適であろうというお話でした。取締役会のあり方というのは、このように、ここに至るまでのストーリーとして答えが出てくるものだと考えます。そうせずに、とりあえずコードが社外取締役を2名置けといっているから2名置こうと、こういった話になっているのではないでしょうか。あるいは、独立性が必要ならば、有名な人、例えばタレントさんを連れてきたらよいのではないかと。通常そういう方は、あまり会社と密接に利害関係があるということはありませんので、メーンバンクでもありません、取引先でもありません、独立の方ですと会社は主張することができましょう。専門性はそのタレントさんの分野ではあるでしょう。ただ、経営にどれぐらいの付加価値を与えてくれるのですかという、これは具体的に投資家が疑問を持つようなケースすら実際に存在しています。ここまでのストーリーを考えると、全てベースは取締役会の役割は何なのかと。資質を考える上でも、そこがまず原点なのかなと思います。

エグゼクティブセッションについて。先ほど花王様のお話でも、会議の合間、あるいは別途場所を設けたと伺いましたが、これはまさにエグゼクティブセッションを自発的になさっておられる形だと思います。英国でも日本と同じで、取締役会の中に業務執行と非業務執行が混在しています。そうなると、当たり前なのですが、業務執行の人たちのほうが権力もあり、経営全般をよく知っているわけです。という中で、非業務執行の役割をより強化しようとすると何が出てくるか。社内の人がいる前では、なかなか本音で話しづらいといったところから、エグゼクティブセッションという別途組織をつくってあげることで、社外の人たちが自由に、要は社内の目を気にせずに発言できる場を設けてあげたということです。

今後、おそらく社外取締役を複数入れて、最低2名ということで活用していくと、自発的に社外取締役同士でちょっと話しませんかという動きが出てくるのかなと推測いたします。これはインフォーマルなものかもしれませんが、こういうことをやってもよいのですよ、よいベストプラクティスなのですよということを、コードで裏打ちしてあげるというのは社外取締役の方にとってもすごくやりやすいのかなと思います。したがって、このエグゼクティブセッションというのは、設置しなさいとか、設置しなければならないという性質のものではなく、環境整備の一環として、こういう取組みはお勧めですよというような性質のものかなと思います。

また、座長の全般的にコメントしてよろしいというお言葉に甘えて、資質のところでもう1つ申し上げます。形式に陥ってしまう1つの事例として、女性取締役の採用があります。私は女性ですので、あえて発言いたします。多様性の一例として、女性取締役の採用がよく言われています。おかげさまで私は、この会議でもマイノリティの女性なのですが。では、社外取締役になり得るだけの資質のある女性がどれぐらいいるかというと、残念ながら過去の日本のキャリア構成の中では、そういう経験や資質のある方はそれほどにはいないわけです。ですので、女性を置けば形式的に資質が整うというのは、先ほど申し上げた形式論の話でございます。そういう意味で、花王様は女性が主要な顧客層だと思うのですが、実際に我が家も子供が小さいときにはおむつなどをたくさん使わせていただきましたが、それでも女性の取締役ではなく男性の取締役を採用されておられる。最初は正直不思議な気持ちもしたのですが、先ほどの戦略で考えたというお話を伺うと、経営の戦略という面から現在の取締役会構成だと納得したわけです。そのため、形式論での資質として女性を採用するとか、そういったことはちょっと置いて、まず実質的なところでの資質の検討について強調したいと思います。

次に、取締役会評価についても少し述べさせてください。取締役会評価は、先ほど東証様からは、54%エクスプレイン、残りがコンプライというようなご報告でしたが、そんなにほんとうに高いのでしょうかというのが私の本音でございます。取締役会評価を実施した会社として、東証様資料の5ページ目のG社が、すごく強烈に残っています。G社は、代表取締役、経理担当取締役及び人事総務担当取締役が各取締役を評価するというふうに、書いてございます。これ、人事評価の延長線上じゃないかというふうに思うわけです。取締役会評価というのは、そもそもは取締役会の実効性を評価することが大きな精神というか、趣旨、目的としてあるべきなのです。その取締役会全体の実効性を評価する中で、各取締役はどう貢献したかという評価になるのです。

そこの点についてしっかりと共通の理解をしておかないと、何回出席しました、出席してとりあえず発言していますので、取締役会評価は高いという結果になりました、ということになってしまいます。そうではなくて、そもそも先ほどの最初の話に戻るのですが、取締役会を何のためにやっているか。当会社の取締役会の役割は何なのか。ここに立って実効性を評価するべきなのです。そうなれば、おのずと取締役会について、どういう構成が適切で、どういう議論をすべきが、何を目的とするべきかが見えてくるはずです。取締役会評価というのは、このような議論を踏まえたうえで行われるべきだというのが本筋だと思っています。したがって、54%がエクスプレイン、残りはコンプライしているというのは、おそらくコードに書かれた文章を表面的になぞって、取締役会評価を実施しています、出席率をチェックしていますということではないかという思いになるのです。そのため、取締役会評価の本質は捉えているのかなというのが正直な疑問としてあります。実際、英国の例を見ていても、最初はあまり真面目にはやってなかったのですね。それを最初、自己評価をしなさいとなった。自己評価をすると、大変内容が甘いということで、外部評価、第三者機関による評価を入れなさいと強化された。そうすると、第三者機関というのがコンサル会社とか監査法人とか独立性がないところを使って、品質面でどうも信用性が薄い。そのため、第三者機関の利益相反がないことを明示できるよう、第三者機関の名前も公表しなさいと、このようなステップを追って、現在の英国の制度があるのです。それにもかかわらず、日本では50%近い会社が既に取締役会評価を実施している、本当でしょうかというのが正直な私の感想でございます。

ここは大変重要な議論で、取締役会評価は、取締役会に関わるあらゆる問題、CEOの選解任、あるいは指名、報酬全てについて、取締役会評価がベースになっています。そのため、しっかり取締役会評価の実務というのがどうなっているのか、実質の確保ができているのかというところを議論し、継続的にウォッチしていく必要があるのではないかなと思います。ありがとうございました。

【池尾座長】

岩間メンバー、お願いします。

【岩間メンバー】

門永さんのプレゼンテーション、非常に印象深いお話をありがとうございました。4ページを拝見しておりまして、まさにヒストリーがずっと出ておるということだと思いますが、門永さんが就任されたのは2012年だということでご説明がございましたが、そうしますと、今の代表執行役、取締役社長の選任に、実際に関与されたということでございますね。そのときの……。

【門永様】

同時期でした。

【岩間メンバー】

同時期ですか、失礼しました。それで、そういう意味でいいますと、これを見てまいりますと、会長・社長選任審査委員会というのが一番上にあって、下のほうに報酬諮問委員会がございますね。5ページのポンチ絵で見ますと、取締役会の横に取締役選任審査委員会というのがございますが、これは会長・社長選任審査委員会と実質的に同じと理解していいのかというのが1つ。

それから、まさに先ほど川村メンバーのほうからご指摘がございましたけれども、平時、うまくいっているときはいいんですけれども、非常なクライシスに直面したとき、あるいはCEOが非常に自信満々になってというようなケースで、果たして今のような状況でいいのかという話は、私も感じるところがあるんですけれども。先ほどのご説明で、もう1点、いわゆる取締役会で議論されておられる事項というのは、決議事項と執行報告と重要テーマと、この3つのジャンルに分かれると。決議事項といいますのは、監査役会設置会社でありますと、取締役会で決めなきゃいけないことが決まっておりますね。経営会議は毎週1回開催されると。経営会議にはずっと出ていらっしゃるので、取締役会議長は執行の状況もよくおわかりになっていると、こういうことですけれども、取締役会で議論するということの絞り込みといいますか、そういうことについて、やはり今の構成でいきますと、かなり制約があるんじゃないかということがある。実際に制約とお感じになることがおありになるかということが1点。

それからもう1つは、株主名簿を拝見しますと、やはり海外の機関投資家が非常に多いと。3割以上の外人保有比率になっておると。それから、日本の株主も、機関投資家がかなりおられると私は思うんですが、そういう機関投資家との対話において、今の花王の体制というのについて、ポジティブ、あるいはネガティブでどういうご指摘があるかということが2点目です。

それから、これ、変遷を見てみますと、非常に先取り先取りして、着実に改革をされているという印象を受けるんですが、先ほど申し上げたようなことでいいますと、限りなく指名委員会等設置会社に近づいているというような印象も受けるんですが、今後の取締役会に残された課題といいますか、そういうものを今どういう具合にお考えなのか、この3点をちょっとお伺いしたいと思います。

【門永様】

ありがとうございます。最初の選任審査委員会の立て付けについてですけれども、これは、杉山さんのほうからご説明いただけますか。

【杉山様】

4ページの一番表の上の、実は2003年のときに、やはり役員選任のキーは会長、社長だろうということで、当時の幹部が、会長、社長をターゲットとした選任審査委員会を設置、それで10年やってきました。2014年のところから、取締役・執行役員選任審査委員会ということで、当時、ちょうど経験したのが、社長の交代のときに、当然社長というのは若手の社長にかわるということで、やっぱりその周りを補佐する、内閣キャビネットも見たいという審査委員会のメンバーの意見があって、審査対象を広げました。総勢30名ぐらい。私のような執行役員の候補者というのは部長ですから、社外の方は顔も知らないというのがよくありますよね。で、今度揺り戻しがありまして、やっぱり顔も知らないところまでの選任審査は責任を持てないという社外からのご意見で、現状は、取締役だけの選任審査。1つの委員会が審査対象を変えてきたということで、最初が会長、社長のみ。広げて執行役員まで。現在は、取締役の候補者、社長も含めての審査委員会になったという立て付けの歴史がございます。

【門永様】

ありがとうございます。何点かあったと思いますけれども、まず取締役会に上げる議題の種類は、ルールで決まっています。そこのめり張りのつけ方ですけれども、ルールで決まっていますので、全部上げます。ただ、それぞれの議題の中で、どういう点を取締役会で説明をして議論するかというところでめり張りをつけています。実際、ほかの社外取締役の方から、取締役会でこんなところまでやるのかとか、説明を聞かせるためにやっているのかとか、そもそも取締役会って何のためにやるんだという厳しいご指摘があって、その議論を踏まえた結果、何を取締役会で議論するかというのが絞り込まれてきました。私も経営会議に陪席していますので、これは取締役会に上げるという話については、こういうポイントで、こういう形で上げてほしいということを、そこで私からリクエストしています。

2点目の、株主との対話ですが、先ほど小口メンバーからもご質問ありましたが、独立取締役が株主と直接対話するということはしておりません。ただ、毎月の社長からの執行報告の中で、IRの際に、株主ごとにどういうコメントをもらったかというのは報告があります。それに対して社外の取締役から、こんなことは聞かれなかったのか、あんなことは聞かれなかったのか、という様な感じで質疑があり、その結果株主がどう見ているのかというのは、そこである程度は把握をしています。

それから、今後の課題ですが、現在は3対3でやっておりますが、もう少し社内が多くてもいいのではないか、という議論をしています。先ほどの川村メンバーからご質問のあった視点からではありません。といいますのも、今、社内の取締役の方が3人、社長が研究開発出身ですが現場を離れて3年余り、それからもう1人が事業とマーケティング担当、それからもう1人が販売担当です。もう少し社内の各所のことについて、その場で議論できるほうがいいのではないかということで、現在検討中です。その結果、同数ということが変わってくるかもしれませんが、同数にすること自体が目的ではなくて、実効性を高めるということが大事ですので、必ずしも同数にはこだわっていないという理解です。

【杉山様】

1点だけ補足させていただきます。岩間メンバーからのご質問の中に、どんどん委員会等設置会社のほうに近づいて、究極にいっていますよねというご指摘があったので、その点について補足させていただきますと、私ども花王の取締役会を論ずるときには、取締役6名プラス監査役5名の11名が構成メンバーだとお考えいただきたいと思います。よく海外の投資家からは、決議権を持っていない監査役って何の役に立つんだと言われますけれども、先ほどの独立性の議論もありますが、私見ですが、どちらかというと、社外取締役の皆さんは、戦略的に社内の執行の一生懸命背中を押してくださっているようなステージにあると思っています。逆にいうと、社外3名を含めた5名の監査役は、それを補完する意味で内部統制、監査と監督がちょっとコンタミしているかもしれませんけれども、非常にそういう構成でバランスをとって、取締役会を運営している。この資料1にも、取締役会等をめぐる論点とありまして、私どもは、こういう議論をするときに、取締役と監査役というものが一緒になって、どういう役割で取締役会をやっていくんだという議論をいつも進めております。以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。残り20分ほどの時間で、あと6名の方が発言を求められています。それで、今日で議論を全部終わらせるというつもりは全くございませんので、積み残しになる分はまたやるということで、いつまでも延々とやるというわけにはいきませんが、今日で閉じるということは全くありませんので、積み残しになった場合はご容赦いただきたいということでお願いします。

それでは、川北先生、お願いします。

【川北メンバー】

時間がないので、私の経験から少し申し上げたいと思います。取締役、特に独立社外取締役の役割というのは、ブレーキとナビゲーターかなということで、取締役会に出席している。ナビゲーターという意味では、中長期的な目標が会社にあって、それを目指したプロセスがきちんといっているのかどうか、それをチェックすることだろうというふうに思います。そういう意味では、執行は当然社内の人に任せることになります。ただし、執行状況については、これは花王さんの説明にもあったように、やはり毎月毎月報告を受けて、きちんとした方向性を持った運営がされているのかどうか。これはチェックしないといけないというふうに思っています。

それとあと、独立性に関しましては、これは資質の問題もあるのでしょうけれども、やはりあったほうがいい。独立性がないと、どうしてもナビゲーションをやる上で、ゆがんだ意思決定や判断がなされるおそれが潜在的にはあると思います。それと情報に関しましては、資料にあるエグゼクティブセッション以外に、監査役との議論がありえます。彼らにも特に常勤の人がおられるわけで、彼らが監査をしている。そういう人たちと、独立社外取締役が議論をする。それによって情報を補っていく。そういうことも重要じゃないのかなと思います。以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。では、江良メンバー、お願いします。

【江良メンバー】

ありがとうございます。基本的にガバナンスの体制であったり、経営のあり方は多様性に富んでいるということが非常に重要なんじゃないかと思いまして、花王様のお話なんかもお伺いしていて、攻めと守りのバランスであったり、執行と監督のバランスだったり、経営の局面によって取締役会の役割や、ガバナンスの果たすべき役割は変わる。それにあわせて仕組みも変わるというのは、全くそのとおりだろうと思った次第です。

お話を伺っていて、さらにすばらしいなと思ったのは、花王様は過去15年ぐらい積み重ねた歴史を経て、今の体制を徐々に積み上げてこられたということです。先ほど仕組みと文化というか、風土みたいなお話があったと思います。おそらく仕組み自体はその都度変わられていると思うのですけれども、軸となるような、こういったことが非常に大事だという文化。御社はEVAとかも非常に早かったと思いますが、そういった文化が根付いているということが、やっぱりガバナンスの実効性を担保するに当たって非常に重要な点なんじゃないかなと思いました。そして、その文化をより多くの会社さんに共有いただくためには何が重要か、簡単につくれるものなのかという議論もあるのかもしれないのですけれども、そのあたりについてちょっとお考えをぜひお伺いできたらというのが1つです。

あともう1点が、社外取締役、社外役員全般の役割ということなのですけれども、1つ経営を守る、執行を守るという役割も非常に重要なポイントかなと思っております。特に攻めのガバナンスということを語る場合、リスクテイクを促す、リスクテイクするということは、世の中、将来を見通すことが難しい中、容易ではありません。事業環境の変動も非常に激しいですし、このような状況においては、おそらく経営判断の失敗というのもあると思います。そのため、失敗をなるべく最小限に食い止めるための施策の存在、あるいは事前に相当の議論を尽くした上での経営判断であったという点を社外の方がきちんと証明する。そのように経営の健全性、透明性などを担保するという役割は、今後さらに重要になっていくのではないかなと思っております。

これはまさに、アメリカで顕著だと思うところがございまして、ご存じのとおりアクティビストファンド等が昨今、資金額も大きくなって、非常に規模の大きい企業に対しても提案をする状況です。そういったときに、我々も含めて機関投資家が、アクティビストが提案している提案と、経営側の提案、すなわち推し進める経営戦略どちらがいいのかという判断をする際に、社外役員の方々が客観的な立場から、現在の経営はきちんとやっているという評価があると、我々としても現行経営陣を支持しやすくなる。そういった機能というのも、日本でも今後重要になってくる可能性があるのではないかなと思います。今日は、社外の方が議長としてやられていて、かつ説明をされました。こういった活動がより多くの会社さんでも進んでいくとすごく良いことなのではないかなと思う次第です。

【門永様】

文化についてのご質問ですが、いろいろな切り口があります。一番大事なことを一言で言いますと、こういう文化でやりましょうと会社で決めたら、まずトップが見本を示すということがないと、絶対に新しい文化は根付かないということです。社内で文化の変革委員会をつくるとか、コンサルタントを雇うとか、いろいろされているところはありますけれども、社長自ら手本を示す、見本を示すということが非常に大事です。花王も、花王ウェイという行動規範があります。取締役会で何回かそういう場面があったのですが、非常に難しい意思決定をしなきゃいけないときに、花王ウェイに照らすとどうなのか、というところまで議論を昇華させますと、社内も社外もなく、やはりこれだよねというところに話が収束していくということがありました。それは非常に重要なことだと思います。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。では、田中メンバー、お願いします。

【田中メンバー】

先ほど内田メンバーのほうから、コーポレートガバナンスと収益性の関係について、欧米の、アメリカでしたかね、団体から直接の関係があまり認められないというお話があったということでしたが、この話は、私も聞いたことがあります。ただ一方で、欧米では、もう一歩踏み込んで、じゃあ何が原因なのかという、そういう議論もかなりありまして、そこでやっぱり一番出てきているのは、独立取締役の資質であるということが非常に焦点になっているというふうに私は思っています。そこで今日のテーマの中に、独立社外取締役の資質の内容についてどう考えるかという論点が提示されていますが、その点はおそらくこの場で議論する非常に重要な論点ではなかろうかと思います。

このときに、ちょっと議論の整理のためになんですが、独立社外取締役という言い方は、おそらく日本でしか言わないんだろうと思うんですけれども、「社外」取締役というのは、これは会社法上の概念で、基本的には雇用関係に着目していると理解しています。一方、「独立」取締役というのは、経営陣とその取締役との利害関係というものに着目しているということで、観点が違いますよね。東証の独立役員セミナー等で何回か、たしか神田先生もご説明されていると思うんですけれども、最終的には上場制度整備懇談会でもって、東証さんのほうで、「独立役員に期待される役割」という文書が発表されております。この文書では、「独立役員には、上場会社の取締役会などにおける業務執行に係る決定の局面等において、一般株主の利益への配慮がなされるよう必要な意見を述べるなど、一般株主の利益保護を踏まえた行動をとることが期待されている」とされており、やはり一般株主というものを意識した、そうした行動が独立役員に求められるということがこれまでの議論の中で整理されてきているというふうに思います。この視点がよく欠落しがちで、経営陣が、自分たちの視点からだけの利益保護ということを考えがちなので、その点を是正するという役割が、そこには一般株主の利益保護の視点が非常に求められているということが、これまでの議論で整理されていると思います。

次に、筆頭独立社外取締役の機能というものと、それから、CEOと取締役会議長の分離というのはこの中に2つ書いているんですが、実はこれは金融界では非常に大きなテーマとして欧米で議論されていまして、おそらく筆頭取締役、リードディレクターの制度というのはアメリカ型だと思います。それから、CEOと取締役会議長の分離というのは欧州型、特にイギリスがそうじゃないかと思います。例えば、イギリスの金融機関ですと、CEOと取締役会の議長の分離って当然のことと考えられておりまして、取締役会の議長というのは、取締役会のリーダーだということで、取締役会の独立性とか機能の発揮に大きな責任を有して、CEOはいわば取締役会に採用された「経営という専門職の使用人」というぐらいの位置付けだろうと思います。

それから、米国でも同様の制度を入れようとしたことがあるんですが、CEOと取締役会議長の分離を実施した第1号がエンロンという会社だったんですね。そこでこの考え方がこけまして、最近ではCEOと、それから取締役会議長を兼務する場合が多いんですが、ご承知のようにアメリカの場合は取締役会構成において、スーパーマジョリティが独立取締役であることが一般的です。例えば、15人いれば、そのうちの13、4人が独立取締役ということです。これが前提になっていますので、取締役会とは別に、独立社外取締役のみの集まりというのが形成されて、そしてそのヘッドとしてリードディレクターという制度ができたということです。そして、その人たちのみが集まる会合のことを、エグゼクティブセッションと呼ぶようになったというのが、おそらく歴史的には、少なくとも金融界では事実だろうというふうに思います。

したがいまして、いずれの場合も、結局取締役会を実質的に独立したものとして構成するという点では同じです。その権限においても、意思決定においても取締役会を経営から独立した組織として動かすということがここでは明確になされております。日本の場合、この前市場一部の例をいただきましたけれども、取締役会9名で、2名が社外取締役というのが平均的だったと思うんですが、そのうち、2人のうち1人を筆頭独立社外取締役と呼んでもあまり意味がないだろうと思います。単なる形式論ですよね。それより、取締役会構成とかリーダーシップの点で取締役会が独立性を確保しているかという点のほうが本質論ではなかろうかという気がいたします。

こういうことを考えますと、花王さんの例で、取締役会議長とCEOが分離されているというのは、おそらくこうした歴史的な事実からしても非常に意味のあることだろうと思います。あとは実質的に独立性というものが確保されていくのかというのは、これからご議論されるのだと思います。ちなみに私、10年ぐらい前に花王さんの担当の部長をしておりまして、そのころのことを思い出しますと随分進歩をされているので、この変革をされているというのが非常にすばらしくて、やはり日本の産業界のいろいろな方々も、こうやって1つずつ考えながら進歩をしていくと、進めていくということがものすごく大事なのではないかというふうに思います。以上でございます。

【池尾座長】

ありがとうございました。それでは、武井メンバー、お願いします。

【武井メンバー】

今日の花王さんのお話は大変参考になる点が多かったと思います。特に自社の持続的な成長のために真っ直ぐガバナンスを生かそうという取組みがまさに伝わるお話でした。老舗で百何十年もある会社さんが、常に新しい経営課題にどうすべきかを真摯に取組んでいらっしゃる例として、ぜひ今回の議事録とかを通じて読んでいただくことで、多くの日本企業さんにも参考になる点が多かったように思います。

またまさに攻めというか、将来に確信をもっていろいろな設備投資であったり人的投資を行うといった、今のマクロ経済レベルでの政策課題にも良い影響があるお話だと思います。

あと、今日の資料で提示されている論点との関係でも示唆に富む点が多かったと思います。たとえば、多様性についても、どういう人材が必要なのかという観点から独立社外取締役のことが語られている点とか、あと経営戦略・経営計画につながる攻めのガバナンスがガバナンス報告書にも書いている点とか、エグゼクティブセッションも自発的に集まってやっていらっしゃる点とか、社外取締役の実効性評価においてもその取締役会に参加している各取締役のかたが自らが何をすべきなのかというところまで評価している点とか。誰かが第三者的な視点で評価するというより、取締役等の会社役員自らが何を貢献していくべきなのかということも考えていらっしゃる点ですね。あと一番大きいのは、社外者がいる会議体である取締役会において、きちんと説明することによって適正なリスクテイクがマネジされているという点とか。ほんとうに参考になる点が多かったので、来年以降も各企業さんがガバナンス・コードに対応していかれるわけですけれども、ガバナンス・コードの対応のありかたについて改めて再認識できる良いお話だったと思います。

花王さんに1点だけご質問がございます。今回このガバナンス・コードという施策ができて、御社から見て一番変わった点なり良かった点は何だったのかです。これまで御社は資本コストを考えた取組みを進めていらっしゃったり、サスティナビリティとか、グローバルとか、いろいろな成長戦略を実施されてきており、また将来思考の経営も進められているのだと思いますが、今回のガバナンス・コードに対応することで一番よかった点は何だったか。自社でガバナンスに関する議論を行う中で、論点がより明確になったとか、よりこういうふうに将来頑張ろうと思われたとか、そういった点をぜひご紹介いただければと思います。

【杉山様】

ありがとうございます。自分は担当者としてやってきて、どうしても会社法上、ガバナンスのあり方と、会社の成長というものが1つになかなか頭の中でまとまらなかった。武井メンバーにもいろいろご指導いただいたんですけれども、やっぱり何のためにガバナンスがあるんだと。ガバナンスって目的じゃないですよね、道具ですよね、我々企業が成長していくための。それがようやっとこの報告書等々の議論で、我々が改革した中で、腑に落ちたなと。やっぱりいいインフラがあって、設備があって、そういう道具を上手に使うことによって、成長につながるんだという。それが1つにまとまって、多分私だけじゃなく、私の会社の社長はじめ幹部が、そういうところが腑に落ちたんじゃないかな。それで今後、それでいけるんじゃないかなというところが、ちょっと概念論ですけれども、一番いい点だったと思っております。

【池尾座長】

ありがとうございます。では、神作先生。

【神作メンバー】

ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。第一点は、取締役会が監督機能を強めていくことによってガバナンスを向上させるためには、取締役会の決議事項を絞っていくことが望ましいと思われます。それによって取締役会自身はだんだん身軽になって、監督機能のほうに重点を移していくことになるからです。したがって、伝統的な監査役会設置会社から典型的なモニタリング・モデルに移行するためにはこのようなプロセスが重要だと思いますけれども、他方、岩間メンバーからもご質問がございましたように、監査役会設置会社の場合は、会社法上、重要な事項は委任できないという制約があるわけでございまして、それだからこそ指名委員会等設置会社ですとか、監査等委員会設置会社という類型ができて、アウトソースをより容易に認める新たな機関設計が認められてきたと思います。

そのような中で本日のお話は、監査役会設置会社という機関設計をとりながらも、実質的には取締役会の監督機能を重視した運営をされているという点で大変興味深く伺いました。先ほどの岩間メンバーのご質問と重複する部分もありますが、やや細かな具体的なことをお尋ねしたいと思います。本日の資料4ページの年表で、おそらく次第に取締役会の上程事項について絞っていくという見直しがなされたのではないかと推察するのですけれども、この年表のどの段階で、あるいは漸進的になされているのかもしれませんけれども、もし取締役会の付議事項についての見直しはしょっちゅうなされているということでしたら、それも含めて、どのような段階で取締役会の上程事項についてどのように絞り込みをしていかれたのか。そして、そのときどのようなコンセプトに基づいて、この時点ではここまで絞ろうというようなご判断をされたのか。やや技術的な細かな話で恐縮ですけれども、それについて教えていただければというのが第一点でございます。

それから第二点は、これはガバナンス・コードの原則4-7にかかわることですけれども、独立社外取締役の役割・責務として、特に以下の役割・責務が重要ですよということで(1)から(4)まで4項目挙げられております。先ほど内田メンバーから、特にモニタリングモデルにまだ到達していない会社、すなわちマネジメントボード型ですとか、あるいはハイブリッド型の取締役会を有する会社においては、特に(1)の助言機能が重要ではないかというご指摘がなされたものと理解しておりますけれども、原則4-7を率然と読みますと、1から4は並列的に書かれているように思われます。この1から4というのは、社外取締役である以上は、全てこういった役割・責務を持っているというようにガバナンス・コードは書いてあるという理解でよろしいのでしょうか。他方、取締役会のあり方について各社できちんと議論をして、独立取締役にはこのような役割を主として期待する-例えば、4-7のうちの(1)を主として期待するという考え方は、現在のコードの考え方に合っているのでしょうか。4つの役割の中で強弱を付けることは、原則4-7をコンプライしていると理解していいのかどうか。この2点についてお伺いいたします。

【杉山様】

まず当社においては、取締役会及び経営会議の付議基準というものを十数年来定めて、それにのっとって運営していると。やっぱり基本的には会社法等々の法律の定めの変わった改正期に大きく見直して、どちらかというとやはり権限移譲で、定量的な金額基準なんかはどんどんどんどん大きくなってきたという歴史があります。基準の中には、法律で決められているもの、定款等で決められているもの、それ以外に定性的な会社の中で重要な規則であるとか、人事、組織であるとかこういうもの、そういう章立てでなっておりますけれども、大体会社法の改正とか、大きな役員、経営陣の組織の変更とかに合わせて、その後半年なり1年なりで見直しているという歴史がこの十数年あって、ポイントはありますけれども、随時という感じだと思います。

もう1点のところが難しい問題で。頭の中を整理しますので、もう1回質問をお願いします。

【神作メンバー】

法的なお話になってしまうかもしれませんけれども。2番目のご質問は、これはどなたに教えていただいてもよろしいのですけれども、原則4-7の、独立社外取締役の役割・責務の4つ掲げられていることが、全て満たされているべきであるというように卒然と読むと読めるのですけれども、例えば先ほど内田メンバーから、あるいは上田メンバーからもご発言があったと思いますけれども、当該会社においては、独立社外取締役に、例えば1から4のうちの特に1を期待するといったグラデーションをつけたといいますか、そのような役割・責務の決め方というのは、原則4-7をコンプライしたことになるのか、なっていないのか、そのあたりはどのように解釈されているのでしょうかというご質問でございます。

【杉山様】

ありがとうございます。やはり全てにコンプライだと思うんですけれども、ただ、現実的に支配株主等の利益相反、当社の場合ですと、そういうものが該当しない部分があります。少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること、先ほど門永議長も申しましたように、取締役会における社長のIRミーティングの報告において、ミーティングの中で頂戴したいろいろな投資家からのご意見を報告、議論しています。それをどう聞くのかということで、グラデーションとおっしゃいましたけれども、そのとおりで、かなり軽重に差はありますけれども、目配せとしては全体をやっぱりやっていかなきゃいけない。でも、現実に今、うちに置かれた立場とすれば、当然(1)とかそういうところが日々の中では出ているんじゃないかなというところで、答えになっているでしょうか。

【神作メンバー】

ありがとうございます。

【池尾座長】

既に予定の時間がきてしまったんですが、もう数分だけちょっとお許しいただいて、どうしても都合のある方は帰っていただくということで。では最後、佃メンバーから。

【佃メンバー】

済みません、もう帰り支度を始めてたんですけれども。特に社長の選解任のところで若干準備してきたコメントはあるんですが、時間の関係でそれは次回、もし引き続きということであればそちらのほうに回させていただいて、1点、2点だけ、せっかく花王様のすばらしいお話がございましたので、ご質問させて頂きます。

まずは指名委員会ですが、年間にどれぐらい時間をかけておられるんでしょうかというのが最初の質問です。これはなぜそういう質問をしたかというと、我々が企業の実態調査をしたときに、いわゆる指名委員会がある会社は、年間4.4回開催し、1回当たりの開催時間が0.8時間でした。すなわち、年間延べ3.5時間しか、一丁目一番地の一番重要である社長の後継計画であるとか、経営陣の選解任の議論を指名委員会でやっていないという結果が出て、我々もちょっと驚きました。ぜひとも花王さんで実態がどうなっているのかというのをお伺いしたいというのが1点目です。

それから2点目に、いわゆる指名委員会の変遷の話が先ほどございました。執行役員候補に関しては、基本的には現在は報告のみとの話で、審議の対象じゃないということなんですが、これは補充原則4-3マル1、重要な経営陣幹部の選解任に関しても、取締役会は適切に実行すべきだという補充原則との関係で、今後どのような形で指名委員会の関与なりを考えておられるか、今後の方針をお伺いできればと思いました。以上2点でございます。

【門永様】

1点目について私からはお答えします。花王は、年3回開催です。1回大体2時間ぐらいです。2時間以上のミーティングというのはあまり生産性が高くないと思っていまして、2時間です。実はそれ以外に、この人は候補者なので、この場面で見てほしいというリクエストがあります。それは例えば、社外の取締役の候補であるとすると、社内で役員を集めた講演会にお呼びして、そこで接するということもあります。社内の場合は取締役会に呼んで、そこで議論に加わってもらうということもあります。その時間を含めると、その倍ぐらいにはなっているのではないかと思います。

【杉山様】

私のほうから、選任手続について。まず選任審査委員会の対象は、先ほど申しましたように、現時点では社長を含む取締役ということでやっております。これを全社外取締役、全社外監査役の委員でご議論いただいて、取締役会のほうに提案いただいております。ただ、取締役会のほうでの選任対象は、それも含めて執行役員自身は、取締役会での選任対象ですので、取締役会できちんと議論している。取締役会の構成メンバーが、先ほどかなり選任審査委員会とオーバーラップしますので、多分議長なんかは両方出られていると、同じことを二度議論しなきゃいけないというところがあると思いますけれども、そういう形で取締役会がきちんと関与していると私は思っています。

【佃メンバー】

ありがとうございました。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。本日は、まことに熱心にご議論をいただきましたが、多くの論点を持ち越してしまったという結果になり、なおかつ10分ほど超過してしまいましてまことに申しわけありませんでした。本日の議論を含めて、事務局でまた論点を整理していただいて、積み残し分についてはまた機会を設けて引き続き議論させていただきたいと思います。

それでは、事務局から連絡等ございましたらお願いしたいと思います。

【田原企業開示課長】

毎度で恐縮でございますけれども、次回日程につきましては、また改めてご連絡をさせていただきます。本日は、どうもありがとうございました。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。散会とさせていただきます。

―― 了 ――

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課

(内線3836、3671)

サイトマップ

ページの先頭に戻る