スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第9回)議事録

1.日時:

平成28年9月23日(金)9時00分~11時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【池尾座長】

定刻になりましたので、ただいまより、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議、第9回会合を開催いたします。

皆様には、ご多忙中のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

本日は、前回から間隔が空いてしまいましたけれども、引き続き、企業と機関投資家の間の建設的な対話についてご議論いただきたいと思っています。本日は、このテーマについて海外機関投資家のご意見等もご紹介する予定になっています。

それから、本日はテレビ電話を通じまして、世界有数の年金基金であるアメリカ・カリフォルニア州の教職員退職年金基金、カルスターズのコーポレートガバナンス部門、ポートフォリオマネジャーのブライアン・ライス様にもご参加いただいております。

それでは、後刻、ライス様からご説明を予定しております。その後、議論にも参加していただく予定になっておりますが、ご都合によって10時ごろまでのご参加になります。

それでは、まず金融庁より説明をお願いします。

【田原企業開示課長】

それでは、お手元の資料1に従いまして、まずご説明をさせていただきます。

資料1でございますけれども、「企業と機関投資家の間の建設的な対話」に関する海外機関投資家の意見の概要ということでございまして、1ページおめくりいただきますと、本資料の性格について、最初の囲みの中に書いてございます。本会議は開かれた議論の場とするということを目的といたしまして、随時、意見の受付を皆様からいただくというたてつけをとっておりますけれども、この企業と機関投資家の間の建設的な対話につきましては、こちらのほうからスチュワードシップ・コードにサインをしていただいている方や、パブリックコメントを今までいただいた海外機関投資家の方々に、この場で議論になっている主なトピックにつきましてご意見を頂戴するということで、前回もご紹介差し上げましたけれども、そういうレターを各機関投資家の方々に送付いたしまして、意見をいただきました。この資料は、その意見の結果を取りまとめたものでございます。これまで議論になってきましたものの中で、大きなトピックでありました4つについてまとめさせていただいておりまして、1つ目が運用機関のガバナンスと利益相反管理。2つ目が議決権行使の結果の開示。3つ目がパッシブ運用におけるエンゲージメントのあり方。4つ目がアセットオーナーの役割ということになってございます。

3ページでございます。1つ目のトピックの運用機関のガバナンス・利益相反管理でございますけれども、ご意見といたしましては、実効的なスチュワードシップ活動のためには、独立した監督などの堅固なガバナンス体制や利益相反管理が重要だという意見を多く頂戴いたしました。また、その際には、明確な議決権行使基準を設定し、議決権行使判断を行う独立委員会を設置すべきという意見があったほかに、運用機関の利益相反管理のために、運用機関に親会社が存在する場合に独立した取締役会を設置している例などが紹介されております。

下の矢羽根をごらんいただきますと、4つ目のイギリスのLegal & Generalのご意見ですとか、5つ目の香港のOasis Managementの意見、それから、7つ目の北米の大手基金の方――こちらは匿名希望ということでございます――のご意見といたしましては、日本の運用機関は大きな金融グループの中にあって、親会社の利益というのは必ずしも運用資産の委託者の方々の利益とは一致していないんじゃないかと。両者の間にあるチャイニーズ・ウォールは脆弱なんじゃないかという日本の運用体制に対しての懸念というものが示されまして、透明性とか独立性を確保するために独立委員会などを設置すべきじゃないかというご意見が寄せられております。

また、3番、6番、8番でございますけれども、オランダ、スウェーデン、英国の事例といたしまして、例えばオランダではどういう事例が利益相反として想定されるかといったことをしっかり開示することが求められているとか、スウェーデンでは銀行傘下にある運用機関は独立した取締役会を有しているとか、イギリスでは、その会社さんの話だと思いますけれども、利益相反の可能性がある場合には議決権行使検証チームを組成して、行使方針に沿っているかどうかの確認をするということをやっているというご紹介がございました。

1ページおめくりいただきまして、議決権行使結果の開示でございます。こちらについてのご意見としては、受託者としての説明責任を果たすという観点から、議決権行使結果の透明性を確保すべきというご意見が寄せられております。議決権行使結果の集計結果のみの開示は、ごらんの2番目の矢羽根ですとか3番目の矢羽根にございますけれども、説明責任や利益相反管理の観点から不十分というご意見を頂戴いたしまして、また、個別企業ベースの開示をする際も、理想としてはそれぞれについて賛否の理由も開示すべきじゃないかというのが、1つ目の、例えばICGN、国際機関投資家団体でございますが、こちらのご意見ですとか、7つ目の北米の大手基金からのご意見として寄せられたところでございます。回答いただいた運用機関におきましても、こういった回答を寄せていただいた機関では個別企業の議決権行使結果について一般に公表している例が多いということでございまして、2つ目、3つ目、6つ目、8つ目の矢羽根のご回答をいただいた運用機関は、実際そういうことをしているということで、その他の運用機関も、顧客には個別にどういう行使をしたかを報告しているということでございました。

1ページおめくりいただきまして、5ページ目でございますが、パッシブ運用におけるエンゲージメントのあり方でございます。こちらにおいては、パッシブ運用においては株式を売却できず、中長期的な企業価値の向上が必要なのでエンゲージメントが重要だという、この場のご議論と同じようなご意見を頂戴しているところでございます。

また、ポートフォリオの中に多くの企業が含まれるパッシブ運用の投資先との対話については、運用機関のリソースに応じて時価総額が大きく問題がある企業と対話するなど、工夫が必要ということでございまして、3つ目、4つ目、5つ目で、イギリスのAberdeen Asset Management、それからスウェーデンの年金基金であるAP4、それから北米の大手基金などから、どういうふうに相手先を選んでいるかなどについてのご回答を頂戴しております。また、1つ目の香港のファンドからは、日本のパッシブファンドは、これまで対話に積極的ではなかったんじゃないかといった指摘を頂戴しているところでございます。

1ページおめくりいただきまして、最後にアセットオーナーの役割ということでございます。アセットオーナーには運用機関の活動をモニターする責任があるということについて一致したご意見を頂戴しておりまして、アセットオーナーは運用機関との委託契約にスチュワードシップ活動に関する規定を設けるべきであるというご指摘、それから、運用機関に対して対話の方針を明確に指示し、定期的に結果をフォローすべきだというご指摘を頂戴したところであります。

また、我が国では、企業年金の方々に、なかなかスチュワードシップにサインアップしていただけないという状況になっておりますけれども、リソースがないということが理由でありますが、そういったことを前提としながらも、運用機関に対してのスチュワードシップ活動の説明を求めて監督を行うなど、可能な範囲で活動すべきじゃないかというご意見を頂戴したところでございます。

スチュワードシップ活動に関する規定を設けるべきというのは、最初のICGN、1つ目の矢羽根でございますが、こちらのほうからご意見を頂戴しております。それから、対話への臨み方とか、モニターすべきということについては、AP4、APG Asset Management、それぞれスウェーデン、オランダの年金基金と投資顧問でございますが、こちらからご意見を頂戴しており、企業年金についてはイギリスのAberdeen Asset Managementからご意見を頂戴しているところでございます。

以上、資料1のご説明でございます。

続きまして、資料2のご説明をさせていただければと存じます。

資料2でございますけれども、表紙にございますように、本年6月に、世界的な機関投資家の団体でありますICGNが、「ICGNグローバル・スチュワードシップ原則」というものを公表いたしました。

1ページおめくりいただきまして、ページ1でございます。この原則でございますけれども、2つ目の丸にございますように、投資家のスチュワードシップ責任、方針、プロセスについての現在のベストプラクティスというものに対する、この団体の見解を明らかにして、さまざまな規制当局ですとか基準設定主体に対して、国際的な経験から発達してきたスチュワードシップの包括的なモデルを提供したいというものでございます。中身自体は、最後の丸のところにございますように、原則本体、7原則から成っております、それから、第2部が各原則に係る解釈指針で、第3部には各市場参加者の役割についての記載があるということでございます。

1ページおめくりいただきまして、ページ2に7原則を掲げております。原則1が、ガバナンスのあり方。ガバナンスというのは、当然、機関投資家の方々のガバナンスということでございます。原則2が、スチュワードシップ方針の策定・実施。原則3が、投資先企業のモニタリング、それから評価のあり方。原則4が、企業との対話と投資家間の協働のあり方。原則5が、議決権行使。原則6が、長期的な価値の促進とESG要素の統合。原則7が、透明性の強化、開示、報告と、こういったそれぞれの原則になってございます。この中から、本日は先ほどの4点についてどういうふうに記載されているかということをご参考としてご紹介させていただきたいと思います。

1ページおめくりいただきまして、3ページでございますけれども、運用機関のガバナンス・利益相反管理に関するICGN原則についての記載でございます。原則1のところに、先ほど申し上げたように内部のガバナンス、実効的なスチュワードシップの基礎ということで規定が置かれておりまして、投資家は、国の要求目標や本原則との整合性を確保するための自身のガバナンス実務や、受益者・顧客のために受託者としての役割を果たすための能力についてのレビューを続けるべきというふうに書いてございまして、例えば、指針の1.2でございますけれども、独立した監督とございまして、投資家は受益者・顧客の利益を促進するように、バイアスなく独立して行動するガバナンス構造によって監督されるべきとあり、これは、投資家自身の商業的圧力からの隔離の必要性を伴う、また、独立したガバナンス構造は、説明責任・実効性への期待に応えることを確保するため、定期的な独立した評価に服するべきというふうになってございます。

それから、例えば指針1.6でございますが、利益相反ということでございまして、投資家は、利益相反の最小化・回避のための強固な方針を持つべきであり、受益者・顧客との間の利益がお互いに異なる場合の問題の取扱い方法についての方針を明らかにすべきとあり、投資家は、実際の、または潜在的な利益相反を特定し、適切に管理するために、投資活動と顧客の利益を厳格にレビューすべき、また、利益相反の例としては、投資家が投資先企業に金融商品やサービスを提供している場合があり、利益相反の軽減策とともに、こうした利益相反は開示されるべきという指針になってございます。

それから4ページ目に、こちらは原則が変わりまして7でございますけれども、透明性の強化、開示、報告の中の指針7.5に説明責任というものがございまして、ここでは、投資家は、受益者・顧客のためのスチュワードシップ義務の履行について実効的に説明責任を果たすため、受益者・顧客に対して、自身の主な内部ガバナンスに関する取決めを開示すべきとなっているところでございます。

1ページおめくりいただきまして、2点目の議決権行使結果の開示に関するICGN原則でございますけれども、原則5で議決権行使というものがございまして、その中の指針5.3に、議決権行使結果という形で記載がございます。投資家は、顧客に対して直接、実際の議決権行使結果を報告するとともに、定期的にウェブサイトにおいて実際の議決権行使結果を公に開示すべきで、議決行使結果は、株主総会議案に対して、賛成、反対、棄権のどれを投じたかがわかる形で示すべきということでございまして、こちらについては、個別の議決結果を開示するということを前提に書かれているということでございます。

それから、6ページ目でございます。各論の3でございますが、パッシブ運用におけるエンゲージメントについての記載でございます。こちらにつきましては、幾つかの原則の指針の中に分かれて書かれておりまして、パッシブでのスチュワードシップ活動について留意する点についての記載という形になってございます。例えば、指針の2.5でございますけれども、スチュワードシップの監督の中でパッシブまたはインデックス連動型の戦略をとるアセットオーナーは、運用機関のスチュワード能力を考慮に入れるべきというようなことが書かれてございます。

それから指針3.2のリスク分析の中では、投資家は、より深度ある分析や対話を行う投資先企業の特定・優先付けのための手法やリスク・ベース・ツールを開発すべきというふうに記載がございまして、特にポートフォリオに含まれる企業数が多いパッシブ運用を行っているアセットオーナーや運用機関にとっては、こうしたことが重要だという記載があるところでございます。

それから、1ページおめくりいただきまして、最後にアセットオーナーの役割に関するICGN原則でございます。原則2のスチュワードシップ方針の策定・実施の中の、まず指針2.3でございますけれども、委任という規定がございますが、ここには、アセットオーナーは自身の受託者責任を委任することはできない、アセットオーナーが直接的に投資先企業にスチュワードシップ活動を行えない場合には、契約やその他の手段を通じて運用機関に、アセットオーナーのためのスチュワードシップ活動を行わせることを確保すべきということが記載されております。

また、運用委託契約、指針2.4におきましては、アセットオーナーは、受託者利益の観点から、適切にその責務を果たすことを確保するため、運用委託契約の締結や運用機関の選定に際して、スチュワードシップ活動に関してみずからが期待することを明確に考慮に入れるべきと記載されております。

また、指針2.5におきましては、スチュワードシップの監督ということでございまして、アセットオーナーは、運用機関のスチュワードシップ活動と、みずからの投資理念・方針との整合性について、実効的な監督を行うべきという記載があるところでございます。

また、3部のスチュワードシップのエコシステムというところにおきましても、アセットオーナーが果たす役割について、この四角の囲みの中でございますが、記載があるということでございます。

以上、この原則につきましては、採択されたばかりということで、今の国際的な考え方を大きく反映しているということと、内容につきましてこの場での議論に非常に関連するということで参考になるかと存じましたので、ご紹介を差し上げたところでございます。

以上でございます。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、本日の議題に関連いたしまして、カルスターズのライス様よりご説明をお願いします。ライス様からは資料3をご提出いただいております。

それから、説明は英語で行われますので、同時通訳がございます。受信機は皆様のお手元に配付されていると思いますが、日本語はチャンネル1となりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、ライス様、お願いいたします。

【ライス様】

ありがとうございます。皆様おはようございます。本日皆様とご一緒できることをうれしく思います。私はカルスターズ、カリフォルニア州教職員退職基金を代表して、ここに参加しています。私はカルスターズがコーポレートガバナンス、特にエンゲージメントと議決権行使にどのようにアプローチしているかの詳細をご説明できればと願っております。

スライド1をご覧ください。まずカルスターズの概要をご説明いたしたいと思います。カリフォルニアの公立学校の教職員の退職年金基金として、私たちには90万人の教職員と年金受給者がおります。1,900億ドルの運用資産を有し、100年以上にわたって教職員の退職年金のニーズに奉仕してきました。

スライド2です。この図はカルスターズの運用資産構成を示しております。我々のポートフォリオのほとんどは上場株式で56%を占めます。固定利付債券が16%、不動産が12%、非上場株式が11%で残りはインフラ投資、イノベーション企業投資と現金です。

次は、スライド3ですけれども、こちらのほうでは、内部運用と外部運用の割合を書いてあります。上場株式以外では、固定利付債券がほとんどで、80%が内部運用です。しかし、非上場株式、それから不動産、そのほかのインフラストラクチャー投資、そういったものは全て外部運用にしております。

スライド4、次はカルスターズの上場株式に対する投資について書いてありますけれども、約1,070億ドルを投資しており、そのうちの64%、680億ドルがアメリカ国内投資、そして36%、約390億ドルがアメリカ国外への投資になります。日本株には80億ドルを投資しています。

パッシブとアクティブの割合ですけれども、60%がパッシブ、40%がアクティブでございます。日本の株式投資に関しますと、48億ドルがパッシブで、32億ドルがアクティブになります。カルスターズでは、全てのパッシブの上場株式投資は内部運用しています。アクティブは全て外部運用になります。

スライド5に移ります。カルスターズがどのように上場株式に対してアプローチをしているかですけれども、7,000以上の会社に投資しています。それぞれポジションは小さく、ほとんどがパッシブオーナーでございますので、会社の一部をインデックスに入っている限りは保有します。つまり、何十年ということになります。私どもカルスターズは、株式市場を保有しているということになりますので、より長期的なアプローチをとる為には株式市場にエンゲージメントをする必要があります。政府当局、取引所、投資家、ファンドマネジャーそして企業とのエンゲージメントを図っております。

アクティブファンドに関しまして、私どもはファンドマネジャーに環境、社会、ガバナンス、または他のESGの観点から会社と対話するように望んでおります。パッシブに関しましては、直接ESGの課題について直接対話するよう望んでいます。

さて、6枚目のスライドをごらんください。私どもがおります部署がカルスターズで対話と議決権行使を担当し、議決権行使を介したエンゲージメントに力を入れております。カルスターズのコーポレートガバナンス部門はひとつの投資分野であります。我々は上場株式投資部門を支援していますが上場株式部門ではありません。これが、年金基金としてはあまりない組織構成です。ほとんど年金基金のコーポレートガバナンス部門は、上場株式投資部門の一部となっております。コーポレートガバナンス部門のスタッフは12人おります。そして、我々は、外部委託した上場株式のポートフォリオについてもガバナンスまたはサステナビリティーの分野で責任を有しています。

さて、7ページをごらんください。ここからはどのようなエンゲージメントを行っているかご紹介います。我々はどの会社にエンゲージメントしていくのか3つのプロセスで選択します。まず、我々はどのような課題に注力すべきかを特定します。この課題というのは、社内スタッフのディスカッションから生まれてくるもの、あるいは、カルスターズの理事会メンバーから、あるいは教職員から提起されるものもあります。一旦どういった課題をとりあげるのかということを決めた上で、どのような事業分野、業界でそのような課題があるかを見きわめます。時には、一つの事業分野、あるいは複数の事業分野がかかわっている場合、特にガバナンスの領域では全ての事業分野がかかわっている場合もあります。そして、企業、事業分野に関し開示された情報を分析していきます。その為、ウェッブサイト、開示情報、調査レポートなどの企業情報を集めてきます。また我々が選定した課題に関心を持たない会社について情報を提供してくれる企業データ提供業者も使います。

8ページをごらんください。こちらは我々が企業を選択してから、どのようにエンゲージメントを実行しているのかをフローチャートで示しています。まず、会社に手紙を出し我々が誰であるのかを名乗り、どういった課題について我々が懸念しているのかを示します。そして、我々は課題について話合う為の電話会議や面談を申し入れます。もし回答をもらうことができれば面談を設定します。回答がなければ、2回目の手紙を送ります。そして、さらに2回目の手紙に回答を受けとることができなかったり、電話会議や面談の結果、会社側から課題に取り組むとの意向が確認されない場合には株主提案を提出することもあります。そして、我々がそれを真剣に考えているということを表明し、会社が課題に取り組むことを求めます。そして、その会社の株主の何%が我々の意見に同意するのかということを精査いたします。

さて、9ページをごらんください。こちらに掲げておりますのは我々カルスターズの力です。まず環境の領域では、企業に対しましてエネルギーの効率性、それからエネルギーの利用について対話をいたします。それから、石油、ガスの資源会社に対しては、ガス漏れや水の利用について会社と話し合います。そして、社会的な課題については会社の取締役や役員の多様性について取り上げます。会社の取締役、役員の多様性が高まることにより、会社の業績が引き上がる可能性が高いということ、また我々は会社が人権の擁護や健康安全に対し留意する事を求めており、人間を害する会社への投資は悪い投資と考えています。

ガバナンスの領域におきましては、特に取締役の選任についてアメリカでプロクシ―・アクセスと呼び過半数決議基準を重視しています。我々は株主が取締役候補者を指名する権利を持つべきと考えており、また、役員の報酬、特に業績に連動していない報酬の方針、慣行を問題視しています。

さて、10ページをごらんください。こちらで、我々が多くの他の投資家や二つの投資家団体とエンゲージメントで協調している取組みを示しております。こういった組織は、アメリカ国内、あるいはグローバルな組織、またガバナンスに注力している団体・組織、環境、社会問題に注力をしている組織があります。

11ページをごらんください。私どもの、アジア及び日本でのエンゲージメントの取組みは、ほとんどアジアのACGA、アジア・コーポレートガバナンス協会を通じての取組みが中心となっています。我々の国とアジアとの距離、言葉の問題により直接のエンゲージメントは難しくなっています。そこで、ACGAを介して、私たちは取締役の独立性、資本の効率性、また、独立した監査制度の課題に取り組んでいます。また、グローバルな投資家の取組みとして、日本の取締役の独立性についてACGA以外にて取り組んでいます。それ以外に我々が重視しているエンゲージメントの課題としては、アジア、特に日本においては株主総会が集中し、招集通知を検討する時間が非常に限られているといった株主総会開催時期の問題でエンゲージメントが難しいと感じております。

さて、12ページですけれども、日本とのエンゲージメントをさらにご紹介していきます。私たちはあらゆるアセットオーナー、特にパッシブのアセットオーナーは、会社とエンゲージメントすべきであり、日本のオーナーもそうすべきであると考えています。パッシブのアセットオーナーは株式を売却できないので、より長期のリスクに晒されています。カルスターズは、全てのアセットオーナーは、投資をしているアセットマネジャーとしっかりと対話をすべきと考えます。我々は運用をするアセットマネジャーが我々の最善の利益の為に権利を行使していることを確認することは、受託者に対する責任と考えています。また、我々はアセットマネジャーが利益相反に適切に対応しているか確認したいと思います。また、アセットマネジャーは会社としっかりと対話をするということにより、投資すべき会社を選別できると考えており、そして、彼らの対話によってよりよい意思決定が行われると考えています。またアセットマネジャーのエンゲージメントは企業がより良く活動できるよう支援することができます。

13ページをごらんください。次に、議決権行使について話します。我々は、全ての議決権行使を、アセットマネジャー経由ではなく、我々自身が実施します。社内運用あるいは外部運用の、パッシブあるいはアクティブの全てのファンドの議決権行使をコーポレートガバナンス部門で実施しています。我々は全ての議決権行使結果をウェブサイトで公開しています。我々は金融市場に透明性を求めており、我々も透明であるべきと考えています。また、我々は受益者に、あるいは教職員にとっての最善の利益の為に議決権行使をする必要があると考えています。そして、議決権行使結果を開示することにより我々がそれを実行しているということを教職員たちは検証することが可能であると考えております。

毎年多くの議決権行使を行っており、2015年、7,900社の株主総会における7万7千の議案に行使しました。カルスターズは、グラス・ルイスの議決権行使プラットフォームを使って行使しています。グラス・ルイスは、我々のガイドラインに基づいて議決権行使を実行します。また、この議決権行使ガイドラインもウェブサイトで公開しています。また、特定の課題について我々自身で議決権行使することもあります。我々は、全ての議決権行使についても確認でき、行使でき、いつでもその判断を変えることもできます。

さて、14ページをごらんください。先ほど申しましたように、我々は自身の議決権行使ガイドラインを設け、ウェブサイトで公開しています。このスライドでは、我々がどのような議案を重要とし、国を超えて議決権行使ガイドラインにどのように反映しているかを示したものです。

取締役選任については利益相反がなく、取締役会への出席が少ないとか、独立性がないという事でなければ通常賛成します。監査人に関しましては、彼らが監査している会社に対してコンサルティングの仕事をしていなければ賛成します。それから役員報酬に関しましては、価値創造との不整合がない限り、基本的には賛成します。

15ページ目になりますけれども、こちらは我々が議決権行使する議案数、および主要な議案にどのように行使したかです。私どもが議決権行使した取締役選任議案の73%は賛成しています。それから、監査役選任議案は全体の12%で賛成行使が反対行使よりはるかに多いです。それから、役員報酬議案は全体の14%を占め、やはり賛成行使のほうが反対行使よりはるかに多いです。

16ページに移ります。議決権行使に関しては利益相反や議決権行使結果開示について多くの議論があります。カルスターズの立場としては、アセットオーナーはやはり議決権をできるだけ行使したほうが良いと思っていますし、受益者の利益の為に行使すべきだと思っております。議決権行使をすることによって、受益者の最善の利益のために行使していることを保証するわけです。

運用を委託されたアセットマネジャーは、顧客の希望に沿い議決権を行使し、その結果を報告しなければなりません。もしオーナーが指示をできない場合にはアセットマネジャーは個別の議決権行使結果を顧客に開示すべきです。我々は、集計結果での開示では必要な透明性が担保されないと思います。集計結果だけですと、異例な行使が隠れてしまうということがありますので。また、個別の会社への議決権行使結果を開示することによって、利益相反を回避することができると思います。

そして、アセットマネジャーは顧客に対して、また我々アセットオーナーは受益者に対して開示する義務があると考えています。

最後に17ページになりますけれども、結論になりますが、カルスターズの投資ポートフォリオにおいて日本は非常に大きく第2番目に大きい上場株式の投資先国です。また、日本に対して80億ドルの投資をしています。私どもは日本のコーポレートガバナンスの変化について非常にうれしく思っています。特にスチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードが取締役会の独立性を向上させ、ROEの改善に寄与しています。 また私どもはこれからも日本の会社と、当局、投資家そして取引所とこれからも協働できることを歓迎し、ベストプラクティスを共有したいと思います。

今日は発表の機会をいただきまして、ありがとうございました。この後の質疑応答を楽しみにしております。

【池尾座長】

ありがとうございます。それでは、ただいまのライス様のご説明も踏まえて、ご議論いただければというふうに思いますが、冒頭でお伝えしましたように、ライス様は10時ごろまでのご参加ということになりますので、ご意見に関するようなことは後半で発言していただくということにして、まずはライス様へのご質問などがあれば、それを優先してご発言いただければというふうに思いますが、いかがでしょうか。

じゃ、どうぞ、佃メンバー。

【佃メンバー】

15ページですが、取締役の選任というのが一番上にありますが、そこの反対票が5,600ある。これは非常に私も印象深いんです。印象に残ったんですけれども、このアゲインストの主な理由ですよね。なぜ、じゃ、アゲイントをしたのかといったときに、理由として多いものというのをぜひ教えていただきたいというのが1つ目の質問です。

それから2つ目の質問は、アゲインストの反対票を投じたときの企業サイドからの典型的な反応というのはどういうもので、それに対してどのような建設的な対話がその後行われたのかというのをご存じの範囲で教えていただければと思います。

以上です。

【ライス様】

お答えいたします。取締役の選任に反対した一番大きな理由は、取締役会の独立性が不足しているということです。パーセンテージのデータをお示しできると思いますが、独立性が不足しているということが一番大きな理由だと思います。時には株主の利益にかなうような役員の報酬制度がないときは、報酬委員の取締役に対して反対票を投じます。そこが2つの大きな理由かと思います。

企業からの反応について、アメリカ的な観点から言うと、非アメリカ企業から私どもの取締役に対する議決権行使についてあまり意見を聞いたことはないのですが、ほとんどの会社が、私どもが反対行使したときになぜ反対したか問われることはありません。もちろん私どもは話すことはやぶさかでないし、そして反対理由を話すことはやぶさかではありません。もちろん彼らと協働することは全く異存ありませんが、ただ、なぜ取締役選任に反対したかということに関して、あまり多くの対話を持ったことはありません。

【佃メンバー】

ありがとうございました。

【池尾座長】

それでは、田中さん。

【田中メンバー】

まず第1に、いただきましたプレゼンテーションの中で、14ページにProxy Voting:Guidelinesとありまして、この一番初めの、ディレクターズのイシューのところの一番最後にlack of board independenceという言葉があります。

実は、この我々のフォローアップ会議においてこれまで、ボードのインディペンデンス、独立性というのは何度も議論したことがあるんですが、東京証券取引所さんの調査によりますと、日本の上場企業のうち市場一部では取締役の数が平均9人で、そのうち社外が2人ということだったと思うんですが、こういう状態の場合にはlack of board independenceというふうにお考えになるのか。それとも、2人社外取締役がおられれば、それでいいというふうに考えるのか、ここはどのようにお考えなのかというのを1つ教えていただきたいというふうに思います。

それからもう1つは、先ほど佃さんの質問もあったんですが、15ページ、これは非常にインプレッシブな数字でございまして、特にElection of Directorsのところなんですが、ForとAgainstが大体2対1、Againstが3分の1以上になっているわけですけれども、例えば、後ほど議論が出てくると思うんですが、日本では生命保険会社、損保、それから銀行、そうしたところから、もしくは信託銀行から取締役が出ていることが結構あるんですけれども、そういう状態というのは、ボードのインディペンデンスの問題、それからコンフリクトの問題、今後の議論の1つのポイントになるかもしれませんが、カルスターズさんはどのように見ておられるのか、先ほどかなりの金額の投資を日本にしておられるというふうに伺いましたので、その辺のアプローチをどのようにされているのかということを聞きたいというふうに思います。

とりあえずこの2つをお願いいたします。

【ライス様】

ご質問ありがとうございます。私どもの立場としまして、取締役というのは3分の2が独立であるべきということを基本にしています。つまり、9人のうち6人が社外、独立ということを考えております。

取締役会の独立性のレベルが高まっていくことはプロセスであって、一夜にして我々が期待するレベルの独立性を期待する事はできない事は理解しております。当然ながら、取締役の独立性によって、利益相反を軽減することができると考えています。また独立取締役が入ることによっていろいろな意見や経験を反映させ多様な考え方、そしてより適切なソリューションをもたらすことに役立つと考えています。よって独立性により利益相反を管理する事は重要な役割ですが、それ以外にも取締役会の独立性についてはもっと多くの意義があると考えています。

【田中メンバー】

続けてよろしいですか。

【池尾座長】

はい。

【田中メンバー】

カルスターズさんのご説明の前に、金融庁さんからの説明がありまして、これはお聞きになっているんでしょうかね。資料1のことなんですけれども、この中で3つ論点が私はあると思っていまして、それについてカルスターズさんはどのようにお考えになっているのかということをお伺いできればと思うんです。

それは、1つは3ページにありますけれども、「実効的なスチュワードシップ活動のため、独立した監督などの堅固なガバナンス体制や利益相反管理が重要」ということで、その次、「議決権行使判断を行う独立委員会を設置すべき」、こういう意見、つまり、運用機関のガバナンス、今度は投資対象ではなく運用機関のガバナンスにおいて、独立した取締役会ということを、独立した委員会ということが1つ提言されているんですが、カルスターズさんの場合はこの点はどのようにされているのか。

それからもう1つは、この場合も同じく、独立という言葉の意味はどのようにしてご理解されているのかということが第1点です。

第2点は、これは次のページにあるんですけれども、議決権行使の結果の透明性というのがあるんですが、先ほどお答えをいただいたのかもしれませんけれども、株主総会における議決権の行使の非常に大きなテーマの1つは取締役の選任なんですが、仮に取締役9人を選任するとした場合に、議決権の行使結果というのは、合計でやるのではなくて、一人一人、Aさん、Bさん、Cさんについて議決権の行使結果を開示するのか、個々の取締役に関する開示を行うのか、それが求められるというふうに考えておられるのか、またその理由、なぜこの人はよくて、この人はだめなのかということを説明するのかという点が2つ目です。

それから最後に、これは5ページですね。5ページのポイントの2つ目に、時価総額が大きく問題がある企業と対話する、こういうふうに書いていまして、もしカルスターズさんがこれと同じようなアプローチをとっておられるとした場合、時価総額が大きいという点は、イメージがわかるんですが、「問題がある」というのは一体どういうことを具体的にお考えなのか。

例えば、PBRが0.4しかないとか、そういうようなこともその中に入ってくるのか。それから、Earnings Per Shareがだんだん下がっているというようなことが入ってくるのか。その「問題がある」という、要するにターゲットとする企業、時価総額以外にどういうふうな企業とエンゲージメントを集中的にやらなきゃいけないというふうに考えておられるのか、その3点をお伺いできればというふうに思います。

【ライス様】

質問を賜りまして、順番に答えたいと思っております。

まず第1に、資料の1、こちらについて我々は独立委員会の設置は確かに重要であるとの考えに賛成です。実際に私どものガイドラインにおきまして取締役会というのは、3分の2以上の取締役が独立であること、そして全ての委員会、我々は報酬委員会、指名委員会、監査委員会を設けており、こういった委員会が全員独立取締役で構成されなければならないということを定めております。よってこういう観点において確かに賛成です。

ご質問の独立性の定義につきましては私どものウェブサイトで公開している定義があります。実際のところ、取締役は会社で働いていない、そして会社とビジネスを行っていない、また家族あるいは親族がこの会社とビジネスをしていないこと、また、今ちょっと正確でないかも知れませんが、以前その会社で仕事をしていた場合、5年ぐらい経過していれば、それは独立とで見なされるというのが我々の独立性の定義でございます。

次の質問といたしまして、時価総額の大きい企業とのエンゲージメントということだと思うのですが、確かに時価総額の大きい企業とのエンゲージメントが多いです。なぜかといいますと、やはり投資額が多いということ、リスクに晒される可能性も大きいということで、自然に多くなります。資料ではESGという項目に分類しております。ガバナンスの分野では、取締役の選任基準が重要です。米国では、多くの投票を得た人が勝つ累積投票基準が伝統的にあり、多くの候補がいれば誰も否認されないことになります。そこで我々は会社が過半数の賛成を得ないと取締役に選任されない過半数投票基準を採用するよう働きかけています。

米国で大きな課題は取締役選任について、株主が取締役候補を指名できる権利を確保することです。また環境や社会に関する問題が企業のリスクとなっており、米国においてはこういった問題をあまり注視していない企業が多いので、問題のある企業と対話しています。

それから、取締役選任の議決権行使ですけれども、我々の開示内容としては、個々の議決権行使結果を開示しております。それがあるべき標準であるというふうに考えているということで、お答えになっているでしょうか。全て網羅できたでしょうか。していなければ、もう一度またお聞きいただければと存じます。

【池尾座長】

それでは、上田さん、お願いします。

【上田メンバー】

ありがとうございます。ライス様ありがとうございました。いただいた資料の8ページに書かれている、エンゲージメントのステップ、段階を踏んでどんどんエスカレーションしていくというものについては、日本のアセットマネジャーにとっても大変参考になるプロセスのご提示だと思います。

これに関連して教えていただきたいことが1つございます。“Send Company Letter”ということで手紙を送っていらっしゃる、投資先企業全てにお送りになっているのか、あるいはセレクションをかけて特定の企業にお送りなさっているのかというところだと思います。その際に、手紙を何通送りました、そのうち幾つ面談になりましたという機関投資家側が形式主義に陥るリスクもあるように懸念しています。実質的な議論の内容ではなくて、何回面談した、何通レター送ったといった形式主義に日本の場合陥る可能性がなきにしもあらずという心配をしております。このような点について、どのような解決策というか、形式的に陥らないようにするために実質を確保するためにどういうお取組みをされているのか、お教えいただければと思います。

これに関連して、例えば、スチュワードシップ活動、あるいはエンゲージメントについて、機関投資家側の活動について、これをどう評価をされていらっしゃるのか。そのパフォーマンスの評価は、投資と違って数字で出ないものなので、ここをどう評価されていらっしゃるのか、その評価の仕方についてもお教えいただければと思います。

【ライス様】

質問ありがとうございます。7ページ目で先程も申し上げましたけれども、3つのステップを取ろうとしております。まず我々のようにたくさん会社を保有している場合、より幅広い問題を取り上げたいと思っています、特定の会社が何をしているかではなくて、まずマーケットのトレンドを捕捉しようとします。

取締役の過半数投票基準についていい例だと思いますが、これを変えようとしています。この過去5年間、取締役の過半数投票基準を入れていない会社を毎年100社選定して、それら全てに対して手紙を出しました。そして過半数投票基準を導入するよう促し、実際に導入したところ、導入しなかったところを見極め、導入しなかったところに対しては、導入するように株主提案を行いました。その後1年かけて、その結果をフォローし、この5年間で350社を超える企業が導入しました。

要するに、エンゲージメントしている対象の会社をずっとフォローすることが大事だと考えています。データベースをつくり、そして誰が対応したかということを記録し、誰が対応しなかったか、返答しなかったかということを記録し、どういった問題に対してどういったポジションをとっているかということをずっとモニターするという努力が必要です。

取締役の選任基準に合意したか、しなかったか、このモニタリングはしやすいですね。一方、環境問題になると、もう少し難しいです。しかし継続して取り組むべき事ですし、徐々にうまくできるようになるものと考えています。問題によって違いますけれども、例えば会社が回答してくれないときがあります。ですから、フォローアップレターを出し、そのときに辛抱強くやらなくてはいけないということと、ずっとやっていることのデータベースをとることが重要です。

【池尾座長】

じゃ、岩間さん。

【岩間メンバー】

いろいろありがとうございます。私はプロキシ・ボーティングの開示について1つ教えていただきたいと思います。カルスターズではガイドラインを設けて、プロキシ・ボーティングの結果についてはカルスターズとして詳細を公表されていると。それと同時に、採用されているマネジャーにも、どういう投票をしたのかということの報告を求めている、こういうことでございます。

私がご質問したいのは、包括的な開示結果の報告、議題ごとのグループ別でまとめて報告するというのが日本においては一般的になっているわけで、これを個別開示したほうがいいんじゃないかという議論が実際に今、進んでいるわけでございますが、カルスターズの場合には、ご自分のウェブサイトには個別開示を全部されておられるという理解でありますが、さらに言うと、個別のマネジャーについても個別開示の結果を報告させる、こういうことになっておると思うんですが、個別の採用しているマネジャーに対して、マネジャー自身がボーティングの結果をパブリックに個別で開示しろということを要求されているかどうか、その点について実態を教えていただければと思います。

【ライス様】

アセットマネジャーは、彼らが顧客の為にどのような議決権行使をしたのかを開示すべきだと思っています。我々は全ての議案について我々自身が議決権行使をします。そして、私がここで働き始めた頃は、米国企業の議決権行使は自分自身で行い、外部のアセットマネジャーは、米国以外の会社の議案の行使を我々のガイドラインに従って行使していました。そして、行使結果の内容を四半期ごとに報告するように求めていました。

ひとつのアセットマネジメント会社にファンドマネジャーが複数いて、同じ会社を保有している場合に、ファンドマネジャーたちは同じ会社の議案に違った行使をするという事に気が付きました。そこで、我々は全ての議決権行使を自分自身で行う体制を構築しました。

よって我々の議決権行使は同じ方針で行使されています。我々は教職員に代わって議決権行使しているわけですから、教職員に対して、そして一般市民に議決権行使結果を公表すべきであると考えています。もしアセットマネジャーがカルスターズのようなファンドのために議決権行使しているならば、少なくともファンドに対してどう議決権行使したかを、詳細に整理して開示すべきであると考えています。

【岩間メンバー】

よくわかりました。それで、追加の質問なのですが、採用しているマネジャーに対して、マネジャー自身のボーティング結果というのを、マネジャーが個別開示しろということまで要求されているかどうかということについてはいかがでございましょう。

【ライス様】

我々の委託しているアセットマネジャーは、もう我々の為に行使していないので、その質問には直接答えられませんけれど、一般的に言って、顧客のためにアセットマネジャーはそうすべきだと私どもは思っています。でも、それは顧客次第だとも思っています。

【岩間メンバー】

どうもありがとうございました。

【池尾座長】

はい、じゃ、どうぞ。

【田中メンバー】

すみません。最後に1つだけ聞かせてください。日本のコーポレートガバナンスについて、海外の投資家の中では、コーポレートガバナンス・コードができたりスチュワードシップ・コードができたりして、非常にモメンタムができて前に進んでいるという時期があったんだけれども、ここに来て、進みぐあいが遅くなっているんじゃないか、そういう意見がかなりあるやに伺います。プレゼンテーションでは17ページになるんですけれども、ライスさんはこういう声をお聞きになるのか。それとも、そういう考え方にくみされるのか。もしくは、もしそうであるとすれば、特にこの17ページの一番下にある「Encourage efforts to continue」と書いていますけれども、具体的にはどういうことが進めば、日本のこのスチュワードシップ・コードもしくはコーポレートガバナンス・コードの理念というものが前に進むと考えておられるのか、それをお伺いできませんでしょうか。

【ライス様】

私の意見ですけれども、進展は遅くなってはいないと思います。前進していると思います。私は、カルスターズにて日本での取組みにもう10年以上かかわっております。スライド17ページ目にも書いたように、非常に前向きな変化がこの1、2年であったと思います。私どもはACGAを通して取組みをしており、住友信託から日本のガバナンスについて定期的にアップデートをもらっていますが、非常に大きな進展が引き続きあるように私は見受けています。ですから進展がおそくなっているとの見解には同意しません。

また、日本でやっていることでアメリカでも一部入れるべきこともあると思っています。ですから、これは非常にいい機会で、お互いにベストプラクティスを共有するいい機会だと思っております。

【池尾座長】

それでは、ライスさんに対する質問はこれぐらいでよろしいでしょうか。

それでは、ここでカルスターズのライス様とのテレビ電話を終了いたしたいと思います。ライス様につきましては、貴重な時間をいただきまして、大変ありがとうございました。(拍手)

それでは、引き続き討議を行いたいと思います。最初の資料1に4つの論点が掲げられていますけれども、それに加えて、運用機関の能力といいますか、そういう問題とかいうことに関して追加的にご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

じゃ、どうぞ。

【江良メンバー】

ありがとうございます。本会合において議論されている行使結果の開示や利益相反に関する議論は投資家の間でも話題になっておりまして、先日、投資家フォーラムにおいて、日系及び外資系の運用機関に所属する運用担当者の方々と個人的にこのテーマについて議論する機会がありましたので、そこで得られた意見も踏まえて発言させていただきます。

まず、前回の会合でコメントがあった点かと思いますが、議決権行使の結果を投資家が企業に対してきちんと伝えていないのではないかという点について、ヒアリングしましたが、実際には、株主総会後に企業から賛否について質問を受けた場合、あるいは反対理由について直接議論したいというリクエストがあった場合は、我々もそうですが、ほとんどの運用機関が応じているという状況でした。

株主総会前に議決権行使判断について質問を受けた場合にどう対応しているかという点については対応にばらつきがありまして、例えば議決権行使基準に沿って明確に賛否を回答している場合もありました。また、株主総会の議案が固まる前であれば、議案自体の差しかえが期待できるため、投資家の議決権行使基準や考え方を極力伝えるという方針としている場合もありました。さらに議案確定後であれば、最終決定ではないということを明確にした上で、賛否についての感触を伝えているという対応もありました。

このような対応における微妙な違いが、投資家がなかなか賛否について答えてくれないという認識につながっているのかもしれませんが、基本的に議決権行使の賛否についてはきちんと投資先企業に伝える、あるいは伝えることを重要視しているということかと思います。

ですが、議決権行使において、利益相反が懸念される状況は確かに存在し、これをどのように解消していくかというのは非常に重要な議論だと思います。ただ、この点は日本の固有の問題でではなく、あらゆる国において何かしらの形で存在します。そのため、本日一部ご紹介もありましたけれども、世界中でこの点についてどのように対処することが望ましいのかを議論しているということかと思います。

その成果の一部が、私からも以前ご紹介させていただきました、独自のガイドラインに基づいた議決権行使の第三者機関への外部委託や、あるいは議決権行使の方針自体を明確にウェブサイトに掲載するなどの活動であると思っております。

この利益相反の解消方法の是非について議論する際に重要なポイント、観点という点から申し上げると、メリット、デメリットを考えることが非常に重要だと思っておりまして、利益相反の懸念の度合いというのは、局面において非常に大きく異なります。そのため、局面に応じて、きめ細かい対応を、各社が真剣に検討するべきである、という意見が前回会合においてもあったかと思いますが、その点については賛同するところが大きいという声が多く存在しました。

また、本日も非常に活発に議論されております、議決権行使結果の個別開示についてですが、利益相反を解消するための方法としての個別開示という観点からも議論しました。

この点については、結論から申し上げると、議決権行使の結果について、投資先企業に直接伝えるということについては問題ないが、幅広く一般に公開するということについては全く別の話であるという意見が多くございました。

具体的には、報道機関などに、賛否結果の一部が切り取られるような形で、全体観を欠いた取り上げられ方をされてしまう懸念があるのではないかということです。すなわち、本来投資家と企業という当事者間の対話だけであった対応関係が、当事者間の信頼関係を超えた別次元の対応にならざるを得ない状況になりますので、信頼関係にも大きくマイナスに影響する可能性があるのではないかということです。

この点は、米国における経験と非常に整合的でございまして、2003年に米国については、投信については議決権行使結果の個別開示を実質求められておりますが、実際に個別開示の結果を参照しているのは、報道機関、アカデミック、あるいは株主総会支援会社の方であると言われております。

さらに、議決権行使の個別開示によって対話が前進するのかという点についても深く議論しました。この点についても、やはり懸念があるという声が多くありました。建設的な対応の基本というのは、特別の事情がない限り、当事者間の対話内容を基本的に第三者に漏らさない、そういった信頼関係に基づいて対話をするということです。

一方で個別開示するということは、極論すると、対話の内容に折り合いがついていないということを、外部に公表するような部分もありますので、対話の基本的な考えとの整合性についてどのように考えたらよいのかという点について懸念を指摘する声がありました。

この点は、とりわけ海外では非常に重要なポイントでして、海外では株主総会議案が確定する前の議論が非常に重要だと考えられています。事前に問題が想定される議案については、総会前の段階で投資家と企業との間で対話がきちんとなされることから、最終的な行使結果については、賛成票が多いという状況にあります。

日本についても、このような方向性が望ましいと考えておりますが、一方で、行使の賛否の結果だけに関心が集中することで、誤解に基づいた形で対決色が強調されるようなことがあると、せっかく盛り上がっている対話の機運をそぎ、また、当事者である企業、運用会社双方にとって、評判という面でのマイナス面はやはり大きいのではないかと思います。

ですので、結論を改めて申し上げると、やはり対話、あるいは企業のガバナンスを前進させるという観点からは、個別開示のデメリットは決して小さくありません。また、利益相反の解消を図るための手段というのは、議決権行使の結果の個別開示以外にもさまざまな方法があることを考えると、現時点において個別開示を行うことについては、むしろ非常にデメリットが大きいのではないかと考えております。

以上です。

【池尾座長】

ありがとうございました。申し忘れましたけれども、本日、冨山メンバーがご欠席なんですが、意見書を提出していただいておりますので、席上配付されていると思います。メンバーの方々には事前に送付済みだということなので、この場での読み上げは省略させていただきますが、必要に応じて、冨山メンバーの意見書の内容も踏まえてご議論いただければと思います。

それでは、小口メンバー、お願いします。

【小口メンバー】

ありがとうございます。先ほど、ブライアン・ライスさんがお話しされたカルスターズの資料13ページに出ている「All CalSTRS proxies voted by staff」ですが、日本ではなかなかなじみがないのかもしれませんけれども、要するに、議決権行使をアセットマネジャーに委託せず、みずから全議決権を行使するということをおっしゃっています。なぜかというと、先ほども説明があったと思うのですけれども、カリフォルニア州の公立学校の先生方に対する責任を負っているのは自分たちなので、自分たちが議決権行使すべきであり、複数のアセットマネジャーに任せて、同じ企業に対して、あるアセットマネジャーは賛成、違うアセットマネジャーは反対となると、アセットオーナーとして責任を果たせないという考え方です。

これは実はグローバルには珍しくなくて、我々のお客様でも同じような発想で、作業はある程度外注するとしても、ポリシーは自分たちで決めて、それに従わせるというアプローチがあります。日本のアセットオーナーは、まだそのレベルにないかもしれませんが、そういったアセットオーナーの考え方を視野に入れた上で、今日のテーマである、利益相反と議決権行使の結果の開示につき申し上げたいと思います。

ですけれども、スチュワードシップ・コードの原則2-1を改めて見てみたところ、利益相反と議決権行使の関係について、「自らが所属する企業グループと顧客・受益者の双方に影響を及ぼす事項について議決権を行使する場合など、利益相反の発生が避けられない場合がある。機関投資家は、こうした利益相反を適切に管理することが重要である」とあります。

先ほど江良さんがおっしゃったように、利益相反の問題は日本だけじゃなくて海外でもあるので、であるがゆえに、利益相反の懸念を払拭する有効な手段として、議決権行使の結果開示というのが広く位置づけられていると、この会議でも言及されています。海外機関投資家の意見に関する今日の事務局資料にもあるとおり、これがグローバルなスタンダードだと思うのですが、もう少しストレートに言ってしまうと、利益相反の懸念がある、あるかどうかは分からないが懸念がある場合に、議決権行使の結果開示というのは反証の物証になる可能性があるということです。逆に言うと、反証の物証がない中で、利益相反はないと言っても、それは本日配布されたICGN原則の5にもあるように、独立した議決権行使が求められる中での説明が成り立たなくなってきているというのが、今日のブライアンさんの説明であり、今日の事務局資料で示された海外機関投資家の認識だと理解しています。

では、どこまで開示したらいいのかということについては、前回のACGAの資料にもありましたけれども、今日の資料でもページ4、事務局資料の4ページの2ですが、結果開示については、集計開示では不十分で個別企業レベルでの開示が必要だということかと思います。これはグローバルな議論に基づいた結果であり、一つのコンセンサスになっています。そうすると、そういうコンセンサスに至った人たちから見たときに、先に申し上げた、スチュワードシップ・コード指針2-1において、利益相反を適切に管理していることにつきグローバルレベルで理解を得ようとすると、個別企業レベルでの議決権行使開示の結果というのは必要条件になっているのではないかなと思っています。

とりわけ、冒頭、田原課長からご説明があったように、日本の運用体制に対する懸念があるわけなので、利益相反に関する懸念がほかの国より高いのであれば、懸念払拭のためにも、個別企業レベルの議決権行使結果の開示の必要性というのは真摯に議論せざるを得ないのではないかなというのが、私の思うところです。

それから、パッシブの運用のエンゲージメントですけれども、パッシブはアクティブといろいろ違うところがありまして、スチュワードシップ・コードの冒頭に、エンゲージメントは、「投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく」と書いてあるわけですが、パッシブはマーケットそのものを買うので、そもそも投資企業に関する深い理解というのは不要なのですね。

さらに序文7に、「スチュワードシップ活動の実施に伴う適切なコストは、投資に必要なコストであるという意識を、機関投資家と顧客・受益者の双方で共有すべきである」とあるのですけれども、パッシブ運用というのは低コストが競争力なので、理解が得られるコスト負担というのは、おのずと厳しい制約があるということです。そういう意味で、アクティブ運用と異なる制約下でパッシブ運用はどうすべきかということを考えなければいけないのですが、私の理解では、それを突き詰めたところが、事務局資料ページ5にあるような、時価総額が大きく問題がある企業との対話ということになってくるのではないかと思います。先ほどブライアンさんもおっしゃっていましたけど、要するに、マテリアリティが高いといいますか、意味があるところに集中するという、自然な流れだと考えていまして、これは前回、ACGAのアレン事務局長とも議論させていただいた内容かと思います。

もう1つ、パッシブについて申し上げたいのですが、結局、パッシブというのは銘柄選定とか売買の自由がないので、ある程度対話をオープンすることが可能ではないかということです。対話をすることによって売るとか買うとかということがないので、そうすると、売れないというメリットを生かして対話の内容をオープンすることで、市場全体への波及効果を狙うことができます。これはアクティブではなかなかとれない手法なので、費用対効果の観点から、パッシブでは対話のオープン化ということも必要ではないかと考えています。

最後に、簡単に申し上げますけれども、アセットオーナーにモニタリング責任があることと、リソース不足にあることは、事務局資料のページ6に書いてあるとおりだと思うのです。そんな中で、先ほど説明のほうは割愛されましたけれども、ICGNのグローバル・スチュワードシップ原則の概要の最後のページを見ますと、耳なれない言葉ですが、第3部「スチュワードシップのエコシステム」というのがありました。これは興味深いなと思って読んでいたのですが、要するに、リソース不足は所与のものとしてアウトソーシングを有効活用するということだと思うのですね。

日本の現状に当てはめてみると、今までも年金基金のリソース不足というのはありまして、それを補ってきたのが年金コンサルタントで、企業年金等に対するアドバイス等のサポートを実施してきたわけです。そう考えますと、今後は、年金コンサルタントや、新しい業態のサービスがあるとすれば、そういう人たちがアセットオーナーのリソース不足を補って、形式ではなく実質的にスチュワードシップ責任を果たせるように貢献していく、年金基金はリソースがないからこそモニタリングに徹していくということがあるのではと考えます。ブライアンさんの説明にあった、グラス・ルイスをカルスターズが使っているというのも、彼らに任せているのではなくて、彼らのプラットフォームを使って自分たちのポリシーで議決権行使させているということで、サービス提供者の活用でリソース不足を補いつつ、アセットオーナーがスチュワード責任を果たすことの一例だと考えました。

以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございます。

じゃ、西山メンバー、お願いします。

【西山メンバー】

私は、議決権行使の結果の開示のところをお話ししたいと思うんですけれども、今の段階ではまだやはり個別の開示というのは少し時期が早いのではないかなと個人的には思っております。むしろ今現在、主要議案ごとの開示というのがなされ、なおかつ、全てそこで足並みがまだそろっていない段階の中で、もう一歩個別企業というところまでいくのは、少しステップとしては早いのではないか。むしろそういった主要議案のベースでの開示というものを、より拡充していくというところのほうが、今の段階では有意義なのではないかなと考えております。

さらに、個別というところまで進んでいったときに、前回もありました利益相反というところと関係していきますと、これは、私の知っているあるマネジャーの方がおっしゃっていたんですけれども、今現在で、例えば利益相反という観点、前回出ていた、例えば企業から証券会社、あるいは金融機関の部分を通じて何らかのプレッシャーがかかっているんではないかというようなことがあったわけでありますが、実際にそういったことがあったりとか、それから、実際にそれによって議決権行使が曲げられているということでは全くないとはいうものの、全くクリアといいますか、フリーな立場で、フリーと言ったら、ちょっと言い方はあれなのかもしれませんけど、全くそういうことを勘案しないで議決権行使ができているのかというと、必ずしもまだそうではない部分があるということをおっしゃっていた方がいらっしゃいました。

ですから、やはり何かそういう議決権行使をして、ある企業に対して反対の意思表示をした場合に、何らかの形で何か回ってくるところがあるのではないかということに対して完全にクリアになっていないところがある中では、個別の開示というところまで進んでいくと、かえってそういうプレッシャーを議決権行使をする方々に与えてしまうリスクがあるのではないかなと。

ですから、本来、ここでは利益相反をよりクリアな形ということで言われているわけでありますが、むしろ逆効果になってしまうリスクもあるのではないかと懸念しております。ですから、こういったところまで進んでいくということなのであれば、企業サイドのほうも、そういった議決権行使というところに対して、例えば証券会社であるとか金融機関の、ほかのルートを通じてプレッシャーをかけること自体が、それ自体がもう問題であるということをかなり強く認識してもらうであるとか、あるいは、やはり金融機関の本体でもそういう運用会社に対して、そういうつもりでなくても、おもんぱかるというお話が前回にもあったかと思いますが、そういったことを全くしないでもいいような形にクリアにしていかないと、なかなかそこの部分での利益相反と個別の開示というところがうまくリンクしないのではないかと懸念しております。

ですので、もう一歩進んでいくのであれば、企業のサイドに対してもそういったことをすること自体が、もうそれ自体が問題であるということであるとか、金融機関のグループ全体としてもそういうことが問題であるということをかなり強く認識してもらうと。そういうところまで進んでいくということを経た上で行っていくことが、より適切なのではないかと考えております。

以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございます。

じゃ、川北先生。

【川北メンバー】

1点は議決権行使、もう1点はパッシブ運用に関してなんです。議決権行使の開示に関しましては、主要な結果を開示することがいいんじゃないのか。もしくは、要約バージョンがいいと思います。全てを開示するということは、前回もたしか申し上げたと思うんですけれども、開示されたとしても、それを分析するのは、限定されている人なので、一般には見る者にとってあまり親切じゃないということと、どのような問題があるのかもわからないです。

とはいえ、もう1つ企業との関係をおっしゃっていたと思うんですけれども、本来的な対話ができているのであれば、その対話の中で、ある程度、議決権行使でバツがつくのかマルがつくのかというのはわかるはずなので、そこはあまり気にする必要性がないと思っています。

これに関連して、何人かの方から聞いたんですけど、議決権行使をする部門と、アナリスト活動をする部門とは違うことがあると。本来はお互いに連携すべきで、アナリスト活動の結果を、少なくとも議決権行使をする部門に伝えていくのが本来の姿だと思います。それなくして本来的な対話はあり得ないし、議決権行使が形式的なものに陥ってしまう。とすると、行使結果を開示すると企業との関係という問題が出てくる、こういうふうに僕自身は理解をしています。

それから、パッシブ運用における対話という、もう1つの点です、本来のパッシブ運用は対話も何もしない、マーケットを信じて、そのままに運用するということだと思います。ということで、対話とパッシブ運用はあまり相性が良くない。つまり対話自身はアクティブな行動だと、そういうふうに理解しているんですが、かといって、パッシブにおける対話を完全に否定するにはどうなのかなと自分の中では思っています。

この観点からしますと、現在、日本のマーケットでは2,000社近い東証第一部上場企業があり、その企業群をTOPIXをベンチマークにしてパッシブ運用するということが、特に年金なんかではよく行われていますが、これはあまり適切でないと思っています。自分自身のアナリスト活動の中で考えても、運用するにはあまり適切じゃない企業が結構あったわけですし、たまたま先日も思い出して確認したら、当時だめな企業は今でもだめだった。そういう例もありますし、ある意味じゃ天に唾するようなものなんですけれども、やはりTOPIXの中に、一部上場企業の中に、ほんとうに運用の対象としていい企業がどれだけあるのかどうか、ここはやっぱり慎重に判断する必要性があると思います。

それと、もう1つはコストとの関係です。対話をするには、やっぱりコストがかかる。そのコストを、最終的にはアセットオーナーが負担しないといけない。そういうことでいきますと、カルスターズのお話にもありましたように、投資対象や対話の相手を絞り込んでいく、そういう行動が重要だと思います。日本の企業で言いますと、僕の感覚では200社程度の、日経225がいいとは言いませんけれども、そのぐらいの規模なのかなと思っています。

それと、もう1点、パッシブにおいて、会社側の提案に関して総会でノーという、つまりバツを投票した場合に、その後どうするのかということも考えておく必要性があると思います。ノーということは、それがまた何年か続くということは、対話の結果も踏まえて投資対象として適切じゃないという、ある意味での意思表示だと思いますので、そうだとすると、インデックスから外してしまうとか、もしくは、先ほど、これは議決権行使の結果の開示にもありましたように、その企業を要約バージョンの中にも入れて開示をするとか、そういうことが必要になってくるんだと思います。

ついでに申し上げますと、もしノーの議決をして、それに関して投資家側が何らかの行動をとらないとすると、結局はオオカミ少年的な扱いになってしまう。これは、僕自身が属していました生保業界が、1980年頃からだったと思うんですけれども、株主に対する利益還元調査ということをずっとやっていて、もっと配当しろと言っていたんですけれども、その一方で株式をあんまり売却しなかった。企業側は配当を増やさなかった。この事実とある意味では同じようなことが起こり得るということですね。ということで、パッシブ運用における議決権行使、これはあり得るとは思いますが、現実にはもう少しその仕組みを考える必要性があるんじゃないのかなと思います。

以上です。

【池尾座長】

ありがとうございました。

じゃ、内田メンバー、お願いします。

【内田メンバー】

ありがとうございます。議決権行使結果の個別開示について産業界でどう受けとめるのか確認するため、数社に意見を聞きました。結論から言いますと、肯定的な意見と否定的な意見の両方がありまして、この場では両意見をご紹介させていただきたいと思います。

まず、肯定的な意見は、コーポレートガバナンス・コードの補充原則の1-1マル1で「取締役会は、会社提案について相当数の反対票が投じられた場合には、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析を行い、株主との対話その他の対応の要否について検討を行うべき」とはっきり書かれており、機関投資家によって議決権行使結果が開示されれば、こうした対話が非常にやりやすくなり、正々堂々と対話するという立場でいく、というものです。

その一方で、機関投資家が、あらかじめ策定して、開示、公表している議決権行使基準に従うと形式的には反対しなければならないけれども、投資先企業と対話をすることによって、実質的な判断に基づいて、これについては賛成しようというケースが、当然あると思います。我々は、そのために対話するわけです。しかし、議決権行使結果の個別開示を広く一般に向けてやると、機関投資家サイドで、基準からいえば反対のはずなのになぜ賛成したのかということを、当事者だけじゃない広い範囲から、いろいろと批判されたり説明を求められたりするリスクが出てくると思います。そうすると、機関投資家によっては、そういう事態を避けるために形式的に議決権行使基準に沿ってやっておこうという方向に流れてしまう可能性があり、それは困るという懸念の意見があります。

いずれにしても、議決権行使については、第7回のフォローアップ会議の資料1で提示されているとおり、議決権行使助言会社も形式的ではなくて実質的な判断を行わなければならないし、機関投資家についても、議決権行使助言会社の助言に形式的に従うのではなく、助言の質などを検証して実質的な判断を行うことが重要です。

したがって、今回、議決権行使結果の個別開示が、いわゆる運用機関の利益相反を回避するための対応策の一つとして捉えられていますが、議決権行使結果の個別開示が、機関投資家や議決権行使助言会社の議決権行使を形式的なものにしてしまうプレッシャーになってしまうことを避けることに、留意して検討する必要があると思います。

以上です。

【池尾座長】

ありがとうございました。

じゃ、キャロンさん。

【キャロンメンバー】

今日の個別開示の議論は、大変参考になりました。私は、個別開示を目指すべきだと思いますが、私が大変尊敬している方々の反対のご意見に納得するところもございます。例えば、開示をすることでかえって騒がれるんじゃないかというような心配は当然よく理解できます。だた、我々が忘れてはいけないのは、何が我が国のためになるのかです。私個人としては、個別開示とそれに伴う議案の賛否を投資家が理由も含めて真摯に企業にお伝えすることは建設的対話の一つでもあると思います。

個別開示によって怒る会社さんは出てくるでしょうし、メディアに何か書かれる可能性も考えられます。それは覚悟しないといけないのですが、最終的に考える必要があるのは受諾者責任なのではないでしょうか。ご自分の資金でしたら、何に投資したのかについて開示する必要はないですが、やはり多くの受益者がいる場合、お客様への説明は受託者としての責任の一つでもあると思います。また、株主はステークホルダーの中で唯一議決権行使の権利を有する存在であるため、機関投資家は議決権行使に関してあらゆるステークホルダーに対し責任を負っていると私は考えています。海外にも開示に関して同様の懸念や抵抗はあります。しかし、グローバル・コンセンサスとしては、個別開示がベスト・プラクティスになっていることも事実です。ですので、日本でもグローバル・ベスト・プラクティスを目指して、成熟した建設的な対話が推進できるのではないかと期待しています。個別議案ごとになぜ賛成で、なぜ反対なのか、機関投資家が受託者責任を果たしつつ会社との建設的な対話に臨むことが重要なのです。企業と株主は立場が違うので時として意見が異なることもあると思います。だからこそ建設的な対話によって、より相互理解を深めることが可能になるのです。そのような成熟した対話が可能になったら、非常に大きな、画期的な前進になると思います。

【池尾座長】

じゃ、佃さん。

【佃メンバー】

議論がほぼ個別開示の話に集中していますが、その前に、本日、事務局から提示していただいている4つの論点のうちの1つ目の運用機関のガバナンスのところで若干コメントさせていただいた上で、個別開示の話をさせていただければと思います。

運用機関のガバナンスについては「独立した監督などの堅固なガバナンス体制や利益相反管理が重要」と書いてありますけれども、もうそのとおりだと思います。インベストメントチェーン全体をきっちりワークさせる上で、やはり運用機関の占める割合というのは非常に大きい。そこに対する期待は非常に大きいと思いますので、そこはきっちりとやっていくことが非常に大事かなと思います。

実際問題、企業経営者の皆さんとお話ししても、運用機関とのディスカッションの中でガバナンスの指摘をいろいろされるんだけれども、じゃ、運用機関はどうなんだみたいな話は引き続きありまして、そういった意味でも、まずもって隗より始めよといったところがすごく大事かなと思います。

次に本日ホットイシューになっている議決権行使の結果の開示については、今まで反対意見が結構あって、キャロンさんは個別開示すべきだという話なんですけれども、私もキャロンさんと同じ意見で、個別開示をすべきだという意見でございます。

配られた冨山メンバーのメモは、当事者ならではの観点を提示してくれていると思います。先ほど、当事者以外の広いところからの批判があるとのご指摘がございました。それは確かに懸念点かもしれませんが、逆に言うと、そういう衆人環視のもとで、まさに冨山メンバーのメモに書かれてあるとおり、「議決権行使の結果が公になることで、正々堂々とかかる議論が行われる機会が生まれる」という話だと思うんですよね。機関投資家が反対票を投じるというのは、これはもう相当議論した上で、相当慎重に判断された上で個別具体的に反対票の意思決定をされているということなので、その結果についてやっぱりオープンにして、そこで正々堂々と、いわゆる否決票を投じられた企業サイドとの会話をしていくのは大事かなと思います。

先ほど江良さんから、個別開示のデメリットは小さくないという話は、そのとおりだと思いますし、メリット、デメリット、両方比較衡量することが大事だと思います。今の時代環境で達成しなきゃいけない目標は何かと考えたときに、じゃ、どちらを優先するのかという話だと思います。それから、西山さんがコメントされていましたけれども、やっぱり機関投資家にあらぬプレッシャーを与えてしまうというのは、これはもう実際に日本の文化の中ではそういう話はあると思うんですね。

一方で、そもそも論を考えると、プレッシャーを受けて意思決定が曲がってしまうこと自体が問題なのであって、そこはやっぱりスチュワードシップ責任をほんとうに果たしていくためには、そのようなプレッシャーに打ち克って、株主のためにきっちりと行動することを今一度再確認しておく必要があるんじゃないかなと思います。

そういうことを踏まえた上で、ではどうしたらいいかということなんですけれども、先ほどのライスさんの資料で言うと、16ページの3つ目のポイントが、やはり本質的なポイントじゃないかなと思います。「Require manager to disclose vote&reason for vote」とあります。その下に「Transparency can help eliminate conflicts」とあります。結局、透明性の話に行き着くんじゃないかと思います。透明性が、conflictsをeliminateできるんだと。すなわち、これは先ほどの事務局の資料で言うと、4つ論点があるうちの2番の議決権行使の結果の個別開示をすることを通じて、1番の後半の部分、利益相反管理のところも推進できると、こういう話だと思いますので、ぜひともこれは推進していくべきじゃないかと考えます。

一方、江良さんのメリット、デメリットの話というのも非常に頭に残っていますので、じゃ、どうしたらいいかという話なんですけれども、スチュワードシップ・コードを次のステップに持っていく、すなわち、改定するということだと思います。コンプライ・オア・エクスプレインの対象として、機関投資家に任せる。その中で、例えばコンプライしないのであれば、その理由、すなわちデメリットが何であるかというのを正々堂々ときっちりと表明していただく方向性がベストではないかなと考えます。

以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございます。

じゃ、上田さん、お願いします。

【上田メンバー】

ありがとうございます。先ほどから個別開示の話が出ておりますが、前提の問題として利益相反があるかと思います。本日、3点ほど、利益相反、インターナル・ガバナンスのところと個別開示と、最後、アセットオーナーの役割を簡単に申し上げたいと思います。

まず、ICGNのグローバル・スチュワードシップ・プリンシプルのご紹介をいただいて、ありがとうございます。と言うのも変なんですが、私、ICGNの株主責任委員会で委員をしておりまして、まさにこれをつくった議論を見ておりましたので、ご紹介いただいて大変光栄です。

この中で、インターナル・ガバナンスの重要性というところが書いてございます。今まさに、今日の議論の根本も、この利益相反の回避はできないので、利益相反に起因する効果や実効性を失わせるかというところかと思います。こういったインターナル・ガバナンスの話というのもグローバルな流れでございまして、決して日本だけのものではないと思っております。

特にICGNの議論でよく出てくる言葉で、「機関投資家内部のガバナンス・ボディー」という話が出てきます。取締役会なのか、あるいは評議会のようなものなのか、理事会のようなものなのかということなんですが、そういったところをいかに実効的にしていくかと、こういう議論を日本でもより具体的にする必要があるのかなと思っています。

これは、運用会社というところだけを見ると、運用会社のみならず、運用会社が属する金融グループ全体で見なければいけない話であって、運用会社に利益相反がないよう対応しろと、独立性を確保しなさいと言っても仕方のないことで、グループ全体で利益相反の効果を回避するような方策を考えることができればいいのかなと思っています。

イギリスのスチュワードシップ・コードが外部との対話に焦点を置いているために、今になって日本で話題になっていますが、これは日本のスチュワードシップ・コードにおいても重要な議論の一つであろうと思っております。そういった前提を置きながら、本日盛り上がっている個別開示についてです。私はどちらかというと、まだ日本では早いのではないのかなと思っています。利益相反がないということの反証としての個別開示の使い方なんてご指摘もありますが、これはそもそも別途考えるべき解決策をそこに押しつけているような気がします。利益相反はなくす議論、なくすというか、実効性を失わせるという議論をしつつ、その結果として個別開示をしても、それに耐えられる環境ができていればいいのではないのかと思います。鶏と卵のようなものかなと思っています。

むしろ今、私が問題視するのは、集計開示すらしていない機関投資家もいることです。こういったところに、日本投資顧問業協会の開示のフォーマット、議案の分類方法というのがすでに一般に認識されているものがありますので、そういったものを日本のデファクトのようなものにして、まずは集計数値から開示をしてもらう。特にアセットオーナーに、というのが第一歩ではないかと思います。

その上で、できるのであれば、集計開示ではなく個別開示も必要なのだということであれば、これは任意でなさりたい機関投資家、あるいは必要性を感じる機関投資家は、積極的になされればよいと思います。アメリカでも、個別開示しているのはミューチュアルファンドだけですよね。イギリスにおいても、やりませんと正々堂々と宣言している、大手のとても信頼のある長期の投資家も存在しています。ですから、これはやるかやらないかではなくて、個別開示をしたい機関投資家にやらせてあげるような環境をつくっていく話なのではないかなと思いました。

最後にですが、こちらの事務局からの資料の最後にも書いてあったかと思いますが、このような議論では、やはりアセットオーナーがすごく大事だと思うんですね。もう少し日本でも、このアセットオーナーがコードにサインしやすくなるような環境整備と言うか、取組みをしていく必要があるのかなと思います。インベストメントチェーン全体を見て、企業年金等のアセットオーナーのリソース不足というところを配慮してあげる必要があるのではないでしょうか。例えばアセットオーナーのなかでも特に、コードにもサインしていないという企業年金等が多い中で、そういった基金たちが参加しやすくなるような全体的な議論も必要なのではないかなと思いました。例えば、投資顧問業協会のフォーマットに基づく報告を運用会社が行えば、アセットオーナーはリソースが少なくても、エクセル1つまとめればいいだけですし、運用会社も各顧客アセットオーナーに対してカスタマイズする手間も省けるのではないでしょうか。

すみません、以上でございます。

【池尾座長】

では、田中メンバー、お願いします。

【田中メンバー】

今日の資料にはないんですけれども、実は私、ここに資産運用等に関するワーキンググループ報告書、6月に出されたのを、この間からゆっくり読ませていただきまして、岩間さん、出ておられましたね。この報告書によりますと、例えば、エデルマン社のトラストバロメーター、信頼度指数によると、「日本における金融サービス業界の信頼度は相対的に低い水準にとどまっており、さらに金融サービス業界の内訳を見ると、投資顧問、資産運用業態は最も低い信頼度という結果になっている」とあります。資産運用会社のフィデューシャルデューティをより徹底するためのポイントとしては、「プロダクト及びパフォーマンスに関する事項と資産運用会社のガバナンス体制と透明性に関する事項(具体的には顧客との間に存在する利益相反的要素の洗い出しと防止策の明示)が挙げられ、この2つが同時並行で動かないとフィデューシャルデューティの徹底は図れない」、と、この報告書はこういうふうに結論を出しておられるんですよね。

このレポートは非常に大事で、よくできたレポートだと思うので、我々はぜひ参考にすべきだと思います。幾つかあったんですけれども、1つは個別開示の話なんですけれども、ずっとお伺いしていまして、江良さんも内田さんもキャロンさんも非常にいいことをおっしゃっていて、私、海外の、アメリカの公開会社の取締役を通算で10年ぐらいやっていましたので、何がされているかと言いますと、結局、今回のカルスターズの11ページの一番下に、「Other issues of concern」というのが書いてあって、「Concentration of AGMs」、これ、要するに、年次総会、株主総会開催日の集中。それから、「Timing of proxy information」、こう書いてあるんですね。つまり、彼らはやっぱりこれを問題にしているということは、個別開示の問題と非常に密接な論点があると思いまして、結局、議論をする時間がないということだと思います。エンゲージメントしなさいと言っても、エンゲージメントする時間が日本の場合は非常に少ないということを言っているのだろうと思います。

私の海外の経験によりますと、やはり事前にさまざまな投資家からいろんなペーパーが来たりレターが来たり、そういうものをこなす時間は結構ありまして、そこにしっかりとした対話、エンゲージメントがあるんですよね。意見が合うこともあれば合わないこともありますけど、大体の場合は、9割以上と言っていいと思うんですけど、ほとんど合意するんですよ。したがって、結果的には、要するに、アゲインストじゃなくてフォアのほうに手を挙げるのがほとんどのケースだったように思います。

実際に、どうしてもアゲインストになるというときには、それは株主総会できちんとその会社の資料が、こういうことだったんだけれども、こういうふうに我々は考えたということを説明しているということがありまして、個別開示をするかどうかというのは、このプロセスでは一番最後のところだけであって、そこだけを取り出して議論をしてもあまり意味がないんじゃなかろうかと思います。個別開示は、キャロンさんがおっしゃるように、僕はすべきだと思っているんですけれども、その前のプロセス、議論のプロセス、エンゲージメントの深さ、そういうものが非常に大事なんじゃないかと思います。

したがいまして、今回、カルスターズさんもこういうふうにおっしゃっているわけですから、ここのエンゲージメントの時間軸というものをしっかりとっていくことを、一つ重要なポイントにすべきではないかと考えます。この問題に関しては、会社法等も少しいじる必要があるかもしれませんけれども、そういう論点だろうと私は思っております。

それから、2つ目は利益相反の問題なんですが、これは上田さんがおっしゃっていた金融グループの問題、私もかつて属しておりましたので、大変よくわかるんですけれども、これはもう立場を外れましたので独立して話をしますが、正直申し上げて、日本はやっぱり非常に特殊なんです。保険会社、信託銀行、こういうところでは貸し出しをし、一方で投資をする。日本の貸し出し業務というのは欧米と違いまして、レンダー・ライアビリティーというものの対象にならない。つまり、インサイダーとしての貸し出し業者という側面があります。もし同じようなことをアメリカでやった場合は、レンダー・ライアビリティーを問われるというぐらいのこと、例えば、会社がおかしくなったら人を派遣したりするわけですね。そこに日米の貸し出し業務の性格の違いがそもそもあります。

信託銀行の例をとりますと、そういう特殊な貸し出し業務をやり、年金の運用業務をやり、不動産の仲介をやり、こういうことが1つの会社の中でやられておりまして、ある不動産会社に対してお金を貸し、不動産販売の仲介業務をやり、そして年金をいただきますということになります。「私たちはコンフリクト・オブ・インタレンスはありません」と言われて、この部屋にいる何人の方が信頼されるかという、こういう課題が正直言って、あります。これを、しかも信託バンキングモデルというビジネスモデルとしてずっと日本ではやってきたわけで、そこに一つのテーマがあるということは、これは間違いないことだろうと思います。

これは、ある意味では制度論として片づけなきゃいけない部分かもしれません。これは生命保険会社も全く同じ問題があります。しかも、生命保険会社の場合、まだ相互会社でガバナンスそのものが非常に進んでないという部分もありますから、そうしたところをきちんと、あまり躊躇しないで、しっかり対応しなきゃいけないんだろうと私は思っています。

それから、先ほど、川北先生からパッシブの話が出たんですが、これも随分いろいろ聞いてみたり話をしてみたりしたんですけど、今日、たまたまカルスターズの12ページを見ますと、この一番上に、「Role of Japanese owners」と書いていまして、「Asset owners with passive strategies should engage with portfolio companies to be better」と書いていまして、「Long term nature of passive ownership」ということは「more risk exposure」であると彼らは認識しているわけです。これは全くそのとおりだと思うんですね。パッシブと言いながら、実際には企業側もロングタームインベスターを求めている。一方で投資家側としても、ロングタームインベストメントをするということは、やっぱりそこには、期間が長いということですからリスクは当然高いわけで、これに対する、ただ単にマーケットにおける数字だけ見て投資をするという世界ではやっぱりないわけですね。じゃ、そこのコスト負担をどうするのかという問題は当然あると思いますが、やはりパッシブだからエンゲージメントその他はあまりやらないというのは、こういう観点からすると、おかしな話ではないかという気がします。

最後に、おそらくこうした議論の最も大事なポイントというのは、これもまた今日、カルスターズからもいろいろ言われたと思うんですが、もしくは、別のところから言いますと、事務局からいただきましたICGNのプリンシプル、英語版で原本をいただいているんですけれども、カルスターズの16ページに書いていることがものすごく大事だなと思います。それは、一番上から2つ目の線のところ、「Your responsibility to beneficiaries to vote in their best interests」と書いているんですね。beneficiariesのbest interestsを常に考えて判断しなさいと。

次も、「Manager votes based on client wishes」と書いているんですね。つまり、これはインベストメントチェーンの中で一番最後にいる人たち、その方々はどう考えるかと、その人たちのベストインタレストのために我々は議論しているのか、判断しているのかということを常に考えましょうということがここに提言されているんだと私は思います。

ですから、この議論を進めるに当たって、一体どっちの方向を向いて議論しているんだという点は、やはり常に我々みずからにも問いかけなければいけないと思いますし、議論している方々にも問わなきゃいけないんだろうと思いました。

以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。

ちょっと時間が迫ってきていますので。はい。

【高山メンバー】

個別開示に関してですが、私は個別開示に賛成です。メリット、デメリット共にありますけど、企業と投資家の関係を考えると、メリットがデメリットを凌駕すると思います。ただし、日本でそれを実施する時期については、現状ではその環境が整ってないように思います。これは運用機関のガバナンスの話につながってくるところです。運用機関のインターナル・ガバナンスは、先ほど上田委員がおっしゃったように、グローバルでも大きなテーマになっていて、非常に重要なポイントだというコンセンサスがあります。日本の運用機関において、しっかりしたガバナンスが確立される、そういう状況ができた後に、個別開示に行くべきではないかと思っています。

運用機関のガバナンスについては、事務局の資料の3ページに書かれてありますけれども、単に議決権行使基準を設定したり、そのための独立委員会を設置するということでは足りません。運用機関の一番上にあるボード、取締役会が十分に独立性を持つということが重要になってきます。そのような取締役会があって初めて利益相反の問題も解決することができますし、いろんなステークホルダーがいる中で、受益者のためにベストな決定ができるという体制ができると思います。このような体制を確立して、次に個別開示に行くということになればいいのかなと思います。

委員がおっしゃられた日本特有の状況ですけれども、確かにそれは数字の上でも非常に大きく重要なところであると思います。日本の企業の株主構成の中で、年金の運用部分が占める割合は大体50兆円ぐらいです。それは誰が運用しているかというと、多くは主要な信託銀行が運用しています。ほかにも投資顧問会社の運用分はありますが、上位3行の信託銀行の日本株の運用資産額というのは大体25兆円ぐらいです。それらのほとんどが年金資金の運用の部分です。これだけ大きな部分が信託銀行によって運用されている状況の中で、田中委員がおっしゃった日本独特の状況を考えると、ここのところをどうするのか、どう考えていくのかは、これから大きなイシューになるだろうと思います。

以上です。

【池尾座長】

どうもありがとうございました。

それでは、例によって最後に岩間さんにご発言いただきたいと思いますが、ほとんど時間がありませんので、よろしくお願いします。

【岩間メンバー】

機会をいただきまして、ありがとうございます。さっき、田中さんがおっしゃいましたけれども、カルスターズの16ページの「Manager votes based on client wishes」というのは我々の立場でございます。要するに、クライアントがどうするのかということで、その動きというのは基本的には個別開示を求める方向に来ていると思いますね、世界的な流れとしては。それを我々がどう受けとめるのかという話なんですが、日本では、さっき上田さんからご紹介がありましたように、投資顧問協会は昔から、議決権行使の結果をどういう形でまとめるかということをやってきておりまして、さらに言えば、会員各社にガイドラインをちゃんとつくれと。それをちゃんとディスクローズしてパブリックにしろということもやっていまして、その結果やってきているんですね。それはそれなりに効果があって来ていると思うんですが、それがさらに先に個別開示に行くかどうかについては、私は実は個別開示については、これは時代の流れであって、いずれそうなるんじゃないかと個人的には思っているんですけれども、先ほどからご指摘のあった、いろいろな問題を考えて進めていくということなんだろうと思います。

ただし、流れとしては、日本でもGPIFもいろいろ考えておられるようですし、動きはいろいろ出てくると思いますし、今後、我々自体が国際化していく中でしっかりやれるためにはどうしたらいいかということを検討する上での一つの大きな課題になってくるんじゃないかと思っております。

もう一つの点はパッシブでございますけど、これも大きなパッシブファンドを動かしているところは財政的な余裕もあるということで、やはり全体を上げていくためにパッシブもエンゲージメントをちゃんとやらなきゃいけないということが流れになってきて、そういうことが最近、非常に顕著になってきていると思います。それをどういうぐあいにやるかというのは、それぞれのオーナーがどういうぐあいに考えるかということに任せるべきであって、どうでなければいけないということでは必ずしもないと思っております。

最後に、我々、アセットマネジャーの、言ってみれば、ガバナンスがどうであるか、あるいは、信頼性を高めるためにどうしなきゃいけないかということですが、これは先ほどからご指摘のあるように、利益相反をどういうぐあいにマネージしていくか、解消していくかということが、どこまではっきりと外部に向けて説明できるかということだと思います。これは、会社の仕組みがどうだとか、そういうことにかかわらず、どのアセットマネジャーにおいても、そういうことを頭に置いて、それにのっとって動いていくと。それで改善を示していくことが非常に大事だということで、そういう観点で我々としては今後、動いていきたいと思っておる次第です。

もうちょっと申し上げたいことはございますが、時間でございますので、これで。

【池尾座長】

議論は尽きないようですけれども、予定しておりました終了時間は既に超過しておりますので、本日の議論はこれで終わらせていただきたいと思いますが、議論自体はこれからも続けていくということで、これまでの議論につきまして事務局において整理をお願いしたいと思います。

それから、最後に事務局から連絡等をお願いします。

【田原企業開示課長】

次回日程につきましても、皆様のご予定を調整させていただいて、後日ご連絡させていただきます。よろしくお願いします。

【池尾座長】

それでは、どうもありがとうございました。

以上をもちまして、本日の会議は終了とさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課

(内線3836、3671)

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