第2回 開示制度ワーキング・グループ 議事録

1.日時:

平成22年12月8日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館12階 金融庁共用第二特別会議室

○黒沼座長

それでは、ただいまから開示制度ワーキング・グループの第2回の会合を開催いたします。

皆様、本日はご多用のところご参集頂きましてありがとうございます。

なお、本日の当ワーキング・グループでの議事は、前回と同様、公開とさせて頂きたいと存じます。また、会議での配付資料及び会議の議事録につきましても、原則公開とさせて頂きたいと存じます。

それでは、早速議事に入らせて頂きます。今回は、前回ご議論頂きました英文開示の範囲拡大につきまして、事務局が委員の皆様のご意見を整理し、英文開示の範囲拡大についての基本認識と検討に当たっての論点を整理いたしましたので、この論点につきましてご議論頂きたいと存じます。

まず、基本認識と検討に当たっての論点につきまして、事務局からご説明いたします。

○古澤企業開示課長

おはようございます。よろしくお願いいたします。

お手元の資料の2-1から2-3までが英文開示の関係の資料でございます。前回頂いたご議論の整理ということで、まず2-3のほうから簡単にご紹介させて頂きたいと思います。

総論からまいりますと、2-3の資料の1ページ目でございますけれども、1つ目の丸で、英文開示は、市場における利便性を向上させるため平成17年に導入されたものの、その利用は極めて限定的。英文開示の範囲拡大については、海外企業に投資したい投資者及び海外企業の利便性を重視した改正をどのように、また、どこまで行うかが論点。

それから、2つ目の丸でございますけれども、海外企業と日本企業とのバランスというところにご指摘を頂いたところ。

それから、3つ目でございますけれども、今回は思い切った改正でなければ意味がないのではないかというご指摘も頂いてございます。

それから、4つ目が1つポイントかと存じますが、継続開示書類の英文開示が普及していない理由の一つとして、既に実務上の作業手順が確立していると。それを見直すメリットが小さい。継続開示と発行開示とを一体的に見るような必要があるんじゃないかというご指摘を頂いたところでございます。

それから、その次でございますが、利便性の向上と投資者保護のバランスといったご指摘を頂いてございます。

各論に入らせて頂きますが、2ページ目でございます。発行開示書類を英文開示の対象とするという論点でございますが、論点としては、発行開示書類を英文開示の対象とすることについてどう考えるかとございまして、継続開示書類の英文開示が普及していない理由ということで、3つございます。1つが、継続開示書類のみ英文開示を行うメリットがないんじゃないかということと、それから、継続開示書類について英文開示を行っても組込方式の届出書に組み込むことができないので、また、参照方式の有価証券届出書、発行登録書において参照することができないという実務上の問題点。それから、既に実務上の作業手順が確立しているというご指摘も頂いたところでございます。

それから、前回、補足書類についてのご議論も相当程度頂いております。3ページでございますが、補足書類につきまして日本語による要約、内容、量についての具体的なガイダンスがないと。要約の十分性についての問題を指摘されるリスクがあるといった点。それから、2つ目の丸でございますが、重要事項の日本語訳を求めない、または最小限とするという必要があるんじゃないかという点。それから、下から2番目でございますが、販売の現場というご指摘も頂いてございます。販売の現場を考えると何らかの日本語の資料が必要だが、それを証券会社が対応することは不可能だと。取引所のほうで基本的な情報をホームページで掲載するなど、何か対応はできないかというご指摘も頂きました。最後の丸ですが、日本語の要約部分を見直すことが必要とございました。

それから、4ページ目ですが、4の開示書類の様式につきましては、日本の開示様式に基づく英文開示を認めることが考えられるのではないかとのご指摘。

それから、5番目の目論見書の取扱いでございますが、2つ目の丸、目論見書のような直接開示書類については重要な部分については日本語で説明というご指摘も頂きました。

それから、6つ目でございますが、臨時報告書もご議論頂きました。2つ目の丸でございますが、適時開示については、日本語に訳してから開示させるとすればタイムラグが生じてしまう。この点については、英文で先に提出させてから、後で和訳を提出させるという形はどうかというご指摘も頂いたところでございます。ここにつきましては、両論あったと認識してございます。

それから、プライマリー、外国で上場していない企業が日本で初めて上場するという意味のプライマリーでございますが、ここにつきましては、5ページ目にございます。5ページ目の1つ目の丸で、取引所が認める場合には、本国ではいまだ開示されていない開示書類を我が国において初めて開示する際の英文開示を認めるというのがいいのではないかというご指摘を頂いた一方で、3つ目の丸でございますけれども、一定程度の評価及び投資者保護が図られている企業の開示書類に限って、我が国においても、重複上場という形で英文開示を認めてもいいのではないかというご議論。それから、4つ目の丸でございますけれども、英文開示の範囲は重複上場、セカンダリーを中心に考えるべきであり、単独上場、プライマリーまで英文開示の範囲を拡大させるのは尚早といったご意見も頂いたところでございます。同じ論点で6ページ目の最初の丸でございますが、母国において多くの投資家の目にさらされるというところがご議論頂いた点の一つかと思います。さらされ、市場等による監視を受けていることが前提になるべきだといったご意見も頂いたところでございます。

以上、その他商品性に応じた対応、行為規制の対応がございましたが、この点については省略をさせて頂ければと思います。

ここでご議論頂いた点を踏まえまして、開示制度のWG2-1の資料で、前回の議論を事務局なりに整理して方向性を整理したものを準備いたしました。

2-1の資料、基本認識と論点とございます。

まず、基本認識の1つ目の丸でございますが、我が国証券市場における上場外国会社数は減少を続けていることから、我が国証券市場に上場しやすい環境を整備し、外国会社の上場を促すことにより、我が国投資者の投資機会の拡大が求められている。それから、2つ目の丸で、英文開示制度を創設したものの、ほとんど利用されていない。理由としては、1つ目の黒ポツの3行目でございますけれども、発行開示書類・継続開示書類を一体として対象としなければ英文開示による利便性は向上しないとの点。それから、2つ目の点でございますが、外国会社にとって補足書類の作成が負担となっていると。また、実例を見ても補足書類の有用性に疑問があるとの指摘があるといった点がございます。

以上の基本認識を踏まえまして、具体的な検討に当たっての論点ということかと存じます。具体的な開示書類は、証券情報と発行者情報と分かれますが、発行開示書類と継続開示書類を一体として考えるといった場合には、やはり発行者情報というものの一体性が1つポイントと整理しております。

この点を中心に整理したのが以降の論点でございます。発行開示書類を英文開示の対象とするが、発行者に関する情報が外国の市場においてさらされている場合とそれ以外の場合を区分し、後者の場合を英文開示の対象とはしないということでどうだろうというのが、前回の議論を受けた整理の1点目でございます。

この上で、派生論点というのが出てまいります。その発行者に関する情報が外国の市場においてさらされていることをどう整理するかですが、次のページの( i )でございます。まず、英文による発行者情報が外国の市場においてさらされているケースが整理の基本かなということでございます。

( ii )と関連いたしますが、当該外国の母国語(英文以外)の発行者に関する情報が外国の市場においてさらされていると、当該発行者に関する情報が英文に翻訳されるケースは対象としないということでどうかと整理してございます。

細かい点で恐縮でございますが、さらされていることの趣旨は開示の正確性を担保することにあると整理し、その場合、英文を直接介して投資家にさらされているということを重く見るということで、( ii )では、外国の市場において、その英文の情報を直接介して投資家にさらされているわけではないというところを区別してはどうだろうというのが、今回の( i )と( ii )の整理でございます。

前回、東証のほうからもプレゼンテーションを頂きました重複上場という意味では、( i )を対象とすることである程度対応できるかなというのが、今回の背景の一つでございます。

それから、派生論点の2ですが、整備された市場、法令などに基づく適正な開示制度を有さない外国の市場において英文による開示を行っている外国会社等は、英文開示の対象としないという整理をしたいということでございます。

現在、外国証券情報につきまして、告示で取引所を指定する制度がございますので、それに類する制度で対応するということかと考えております。

その上で、次の丸でございますが、発行開示書類のうち発行者情報については、有価証券報告書に係る英文開示と同様、英文と日本語の要約を求めると。それから、次の丸でございますが、証券情報につきましては、金融商品の販売に当たって金融商品取引業者の説明責任がございますので、こういう点を踏まえ、日本語による作成でどうかという案でございます。

それから、もう1つ、前回ご議論頂きました補足書類の点でございます。

補足書類については2つ丸がございます。1つ目が、外国会社報告書の補足書類として引き続き日本の様式による開示書類に記載すべき事項であって、外国会社報告書に記載のない部分については補足情報の作成を求める。これについては、英文のみによる作成を可能とすることでどうかという案でございます。

それから、2つ目の丸が前回にも相当ご議論頂いた点でございますが、日本語による要約については、これは引き続き求めると。ただし、これにつきましては、取引所のほうで例えばガイドラインをつくられて、そのガイドラインに沿ったものが出てくる場合についての取扱いについては、こういう場でさらに検討していって、その場合の、ここにございます日本語の要約の取扱いというのはまた考えたいと事務的には考えてございます。

それから、最後3ページ目でございます。臨時報告書につきましては、英文開示用の様式というのを新設して提出を義務づけると。ご案内のとおり、臨時報告書の提出につきましては、開示府令のほうで1号から19号まで提出理由が並んでおります。この臨時報告書の提出につきましては、日本の法令に基づく提出理由に基づいて提出をして頂くと。その場合、ここにございますように、提出理由のところについては日本語による記載を求め、その中身については英文という案でございます。

それから、最後でございますが、日本の様式に従って英文により作成したものについても外国会社報告書として認めることでどうかと。その場合には、日本語の様式に従ってございますので、対照表の作成は不要という整理にしてはどうかという案でございます。

最後、開示制度ワーキングの2-2につきましては、谷口調整官のほうからご説明申し上げます。

○谷口企業開示調整官

それでは、2-2は横紙1枚でございますけれども、見方についてご説明させて頂きたいと思います。この紙は、今ご説明申し上げました論点を踏まえまして、一定の英文開示の方向性というものを示させて頂いております。

見方でございますけれども、まず、横軸、横の項目でございますが、左側に募集等の区分、いわゆる新発の有価証券についての発行開示について。右側が売出し等の区分ということで、既発、既に発行された有価証券の売付け勧誘について区分してございます。

縦軸の見方でございますけれども、左側の項目でございます。一番左が対象有価証券でございまして、この募集売出しの対象とする有価証券について、外国で開示をされているかいないのか、それから、発行者に関する情報につきましては、その発行者の情報が外国で開示されているのかいないのかというふうに区分をしてございます。

さらに、その募集等の区分の中で大きく2つに分けてございまして、左が特定投資家向け取得勧誘、これは既に特定投資家向けの制度がございまして、いわゆる特定投資家私募に当たるところでございます。ここにつきましては、特定証券情報、開示書類ではございませんが、届出書と同様の情報を投資家に直接提供する、あるいは公表するという制度でございます。こちらのほうは、現在は東京AIMの上場規則によって、日本語か英語で記載をしてくださいということになっております。この部分については、既に英文開示というものの制度は整備をされているということでございます。

ここで、ご議論頂くのはその右側の有価証券の募集というところでございます。売出しにつきましても、一番左側が特定投資家向け売付け勧誘等、いわゆる特定投資家私売出しにつきましては、同様に東京AIMのほうで英語か日本語ということになっております。

その真ん中、先ほどちょっと説明させて頂きました外国証券売出しにつきましても、これは開示書類ではございませんが、外国証券情報というものを投資家に提供、あるいは公表するということになっています。こちらも英語、海外での情報をそのまま参照するということが可能でございますので、英語での提供というのが可能だということでございます。

ここでご議論頂く一番右が有価証券の売出しということでございます。したがいまして、この募集売出しの一番右側の欄についてご議論頂くということでございまして、基本的には、発行者情報が外国において開示をされている場合について英文開示を認めてはどうかということでございます。

上と真ん中の違いでございますけれども、これは対象有価証券について外国で開示されているかいないかということでございますので、例えば海外で上場されている会社が日本で社債を発行する場合、この社債については開示をされておりませんので真ん中の中段ということになりますが、この場合でも、発行者情報が開示をされているということになりますので、英文開示を認めてはどうかということでございます。

見方としては以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございました。

それでは、論点につきまして委員の皆様方からご自由にご発言をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いします。

では、大崎委員。

○大崎委員

ありがとうございます。まず、前回、欠席してしまいましたことをおわび申し上げます。野村総合研究所の大崎でございます。

今の論点について少し意見を申し述べたいと思うんですけれども、前回さぼっちゃった関係で、もしかすると、もう前回、十分議論されたことにも言及するかもしれませんがご容赦ください。

まず、基本的な認識なんですけれども、私、東証の上場外国会社数が減った理由を、英文開示制度がなかったこと、あるいはそれが不備であったことに求めるということについては、非常に大きな疑問を持っております。少なくとも百二十数社の外国会社が日本語の開示制度のもとで上場したのは事実なわけでありまして、その後、上場をやめた理由というのは、開示制度だけによるものでは絶対にあり得ないということは、まず出発点として押さえておく必要があると思います。これはもう既に議論されたことだと思いますが。

また、いわゆる上場を伴わない公募、POWLとか、あるいは今年は公募円建て外債が非常に増えているというような話もありまして、日本の有価証券届出書の提出を義務づけられても、日本で資金調達をしようというニーズは厳然としてあるわけですね。ですから、これ上場が減っているとしたら、ちょっと松崎さんには失礼かもしれませんが、取引所の問題のほうがもしかすると開示制度の問題より大きいかもしれないという気が、私はしております。

実は、私、前回平成17年の制度改正が議論された際にも、そういった基本認識に基づいて、また日本語が公用語であるという現実を踏まえ、果たして英語の開示を認めるということがそもそも原理的にいいのかということについては、かなり消極的な意見を申し上げた次第です。しかし、もう現実に英語でも投資家保護にもとることはないんだという結論が出ている以上、私はそれを改めて全部禁止して日本語に戻せというようなことを言うつもりはございません。また、原則的に考えても、開示書類というのは別に投資家が仔細に読まなければ投資家保護にならないというものではなくて、例えば専門家がそれを読んで分析をするとか、それが市場価格に反映されるというような形で間接的に投資家保護に資するわけでもあるので、英語であったら投資家保護にならない、日本語ならいいんだという議論もそれは極端だろうと。そこは理解しているつもりでございます。

そういった前提に立ちますと、今まで継続開示はいいけれども発行開示はだめとしてきたこと、英文で行うことですね。これは私はちょっと疑問があると思っておりまして、英語は絶対だめだというのであれば両方認めるべきじゃないんでしょうけれども、英語も可ということになったときに発行開示だけだめというのは、私はあまり筋が通らないと思っておりまして、今回の議論の方向は基本的に妥当だろうと思っております。

ただ、例の東京AIMを初めとする特定投資家向けの市場が認められているという中で、いわば英語で発行開示何でもありというふうに踏み込んじゃっていいのかというのは大きな疑問がございまして、これは特定投資家向け市場の制度において、投資家の属性によって区別するという考えが出ているんですから、やはり何らかの歯止めをかける必要があると思っております。その意味では、事務局の言っておられる、外国において発行者情報が既に開示されているものというものに限定するという考え方、これは私は妥当だというふうに思っております。

この点で、ちょっと幾つか申し上げたいんですが、すみません、長くなって。1点は、認められる外国の市場の範囲ですね。これ告示で対応される云々という説明がございまして、それは技術的にはそれでいいと思うんですが、その際に、直感的にここはいいだろうというのは、多分ここに座っている人の多くに何となくというのはあると思うんですが、それに甘んじず、ぜひ各国の制度を詳細に調査し、日本と同等の投資家保護が行われているかどうかということについての同等性評価を徹底的にやって頂きたいと。先方の当局に対して情報提供を求めることも含めてやって頂きたいと思います。これは既にアメリカとかEUが日本に対して時々言ってきていることですけれども、ちょっと私誤解しているかもしれませんが、日本からそういうことを求めたというのはあまり聞かないので、ぜひ求めた上できちっと、感覚的にアメリカはいいだろうとかじゃなく、やって頂きたいというふうに思います。

それから、私、最初に申し述べたような問題意識を持っているものですから、今回制度を変えたら、例えば東証の外国会社上場がものすごく増えるだろうとかいうふうにはあまり楽観しておりません。また、重複上場が中心になってしまいやすい方向での制度改正ですから、そうすると、かつて上場会社数がどんどん減った1つの理由は、重複上場中心だったので、母国市場での取引が多くなってしまって、日本で上場している意味がなくなったというふうに言っている人もいるわけですね。それが正しいとすれば、今度も同じようなことになるわけで、東証さんにはぜひ、重複上場で日本に上場することのメリットを発行者が感じられるような何らかの手当てというものについて、知恵を絞って頂きたいなというふうに思います。

最後に、1点質問なんですが、制度改正の対象として、どうも外国の会社の、特に株式とか社債ということが意識されているように思うんですけれども、外国投資信託の扱いはこの制度のもとでどうなるのかと。現実に持ち込みが行われているという意味では、外国投資信託というのは結構量的に多いんじゃないかというふうに思うんですが、この点についてちょっと教えて頂ければと思います。

以上、長くなりましたが。

○黒沼座長

ありがとうございました。

最後の点について、もし事務局のほうからあれば。

○谷口企業開示調整官

一応、英文開示の対象はすべての外国証券ということになっておりますので、投資信託についても例外ではないということですが、発行者に関する情報ということになりますと、投信に置きかえれば、例えば信託財産の状況が中心になってこようかと思います。そういったものが、全く同じものが開示されていて、それが日本に持ち込まれるのであれば、それは対象になるかもしれませんけれども、そうでなければ対象にならないということになると思います。

○大崎委員

ということは、外国投資信託を考えると、対象有価証券に関する情報は開示されているんだけれども、発行者情報が開示されていないというような整理になってしまうということですか。でも、そうだとすると、かなり実質と違うというか、現実と違うような気がして、私の感覚では、外国投資信託はむしろ、上場という手続はとられていないにせよ、対象有価証券そのものに関する情報が十分開示されているので、いわば一番認めてもいい対象なんじゃないかなと思ったんですが。

○古澤企業開示課長

外国投資信託についても、その制度に即して投資家保護のために何がさらされていることが必要かがポイントと思いますのでこの場は引き取らせて頂いて、引き続き検討させて頂きたいと思います。

○黒沼座長

恐らく発行者に関する情報が全く外国でさらされていないということにはならない。その点を少し検討して対応するということですね。わかりました。

阿部さん、いかがですが。

○阿部委員

考え方は違うのですけれども、結論は大崎さんとあまり変わらないのではないかと思っています。もともとこの議論は、日本から外国企業がどんどん証券市場から出ていくこと、あるいは日本企業であっても、最初の上場は日本以外の市場で果たそうとする企業が増えていることを問題視し、証券市場の競争力をこれ以上劣化をさせないために何ができるかということにかかわると思っております。

そういう意味で、これができればという必ず良くなるという手立てはないかもしれないけれども、少なくとも政府が対応できることは何でもやるべきであり、その議論の一環かと思っております。

そういう意味で、当然ながら今回の案に沿って早く進めていきたいわけであります。問題なのは、派生論点の2の外国市場の見極めだと思われます。ここは、最後は政府、金融庁が責任を持って頂くのか、あるいは取引所がそれぞれお考えになるのかわかりませんけれども、ここがはっきりできれば、後の話はどんどん前向きに進めていければと思っています。

正直、この国がだめであの国はいいというような振り分けは難しいとは思うんですけれども、ここは具体的、実態的な調査を踏まえた上で決めて頂ければいいと思います。

この案でまず早急に対応することが大事かと思うのですが、その次のステップとして、特に特定投資家向けについて言えば、外国市場の見極めができれば、その母国語であれば、英語でなくとも、何語でもいいのではないでしょうか。何が適切な指標かはこれからの議論かと思うのですが、英語だけに限る必要はないと思います。

○黒沼座長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。では、石原さん。

○石原委員

私は1つだけ強くお願いしたいと思います。派生論点の2に関してですが、海外のマーケットを評価し、それによって日本市場への上場を容認していく範囲を決めていくということになろうかと思います。ついては、その際には、金融市場においても、やはり先ほどの同等性評価のようなプロセスを踏まえた上で、外国企業の英文開示を日本のマーケットで認めるのであれば、その相手国のマーケットにおいても日本企業が英文開示で重複上場ができる、そういう相互承認のようなことを前提にして頂きたい。一方的に受け入れるばかりではなくて、日本企業も海外市場に出ていける、そういう互恵的なマーケットをきちんと整備して頂きたいということであります。何か一方的に海外にお願いして日本に上場してもらうというスタンスではなく、自らの市場としての魅力を高め、国を開き、きちんと海外とも同等な関係を取り結ぶことで、日本の金融市場が、今後、国内の成長が非常に厳しいと思われる中で、世界の成長をバネに再び活力を取り戻す、そういう方向性が大切ではないのかなと思います。

そのほかの論点については、できるだけ早く進めることが大事だろうと思います。市場も企業も同じと思いますが、レピュテーションというのは制度で決まるものではなくて、その後の持続的な運用がきちんとなされること、これによって初めて本当の意味での信頼が得られるはずですので、そういった意味で、あまり制度の細かいところまで議論に時間をかけるというより、まずやってみて、それがきちんと運用されていけば、海外の企業からも信頼を得られるということだろうと思いますので、よろしくお願いします。

以上です。

○黒沼座長

小島さん、お願いします。

○小島委員

私も前回欠席しましたので、今日の示されております基本認識と論点に沿って少し意見を述べたいと思います。

まず、基本認識のところですが、これは先ほど大崎委員が指摘されたように、必ずしもこの英文開示だけが外国の日本国内での上場会社が減っている原因ということではないと私も認識しております。しかし、要因の1つであるとは思いますので、今回議論されているような観点での英文開示の範囲を広げていくということについては、基本的には賛成したいと思います。

その際、ターゲットをどういう投資家向けにするかというところが1つポイントになると思います。プロ向けであればそんなに範囲を限定しなくても良いと思います。しかし、基本認識にも書いてありますように投資機会の拡大を図るということで、一般投資家のすそ野を広げることも念頭に置いてということであれば、投資家保護と英文情報開示との範囲、そこのバランスをどう図るかということが必要になってくると思います。一般投資家向けも視野に入れるということであれば、一定の日本語での要約、そういったこともとりあえずはつけるというような形から広げていく必要があると思います。

具体的な論点、派生論点のところで指摘されているところで言えば、2ページにありますように、1つ目の( i )、そこからまずはスタートするということで、この( ii )については、( i )でとりあえず外国の市場にさらされているケース、情報が開示されている外国の市場というところからスタートして、そういう状況を踏まえて、さらに次のステージという形で( ii )については今後検討したらどうかと思います。

あと、派生論点2のところでの範囲について、これも先ほど阿部委員が指摘されたように、まさに外国の市場の範囲をどういう基準で担保するかということが今後の課題かと思います。そこについても、ここに指摘されているような一定の整備された市場というようなことがまず前提だろうと思っておりますので、そういう視点からこの問題については整理をすべきと思います。

以上です。

○黒沼座長

ありがとうございました。

それでは、平田さん、お願います。

○平田委員

総論に関しましては、ほとんど皆さんと同じなので、少しちょっと各論の部分になりますが、発行開示書類について発行者情報の部分に関しては英文プラス日本語要約ということで、有価証券報告書と同様な扱いが必要だというご指摘でございます。ここにおける日本語の要約の部分に関しましては、有価証券報告書であろうと発行開示であろうと、基本的には同じふうに考えていく必要があるんだと思うんですけれども、ただ、今現在いわゆる利用されています日本語の要約に関して、このままでいいのかという議論はしておく必要があるのではないかと思います。もう少し細かく、何が必要で何が不要なのかという整理はして、できる限りの簡素化という形で考えていく必要はあるのかなというふうに思っています。

それからもう1つ、発行者情報ではないいわゆる証券情報に関しては、やはりここは日本語による作成というのはぜひともお願いをしたいというふうに考えるところでございまして、やはり販売局面、特にプライマリーにおける販売局面においては、相当やはり投資家にとって重要な情報であるというふうに認識をしておりますし、そこの部分がないということになりますといろいろ問題が出てくるというふうに考えておりますので、ぜひともここの部分に関しては作成を求めるという方向でご議論頂ければというふうに思っております。

以上です。

○黒沼座長

小川さん、お願いします。

○小川委員

前回、ご指摘させて頂きましたが、やはり市場の活性化を進めながら投資者保護を図っていくと。その両立をしていくためにどういうふうに工夫していくかということがポイントだという趣旨のことを申し上げましたんですが、今日、拝見させて頂きまして、そのどちらも両立を目指したような案という方向になっているんじゃないかと思います。我々実務のサイドから見た場合に、最低限、投資者保護の観点で必要とされる日本語の部分というのはこれぐらい必要だろうというふうに思っております。それが過度になり過ぎると、それはそれで発行者側の負担になりますので、依然として英文開示、市場の活性化が進まないということになるのかなという観点で見た場合には、おおむねそういった方向で整理されているのではないのかなというふうには思っております。

その中で、ポイントとなる点、2点ほどお話ししたいんですが、1点は今、平田委員からもお話がございましたように、日本語の要約ということに関しまして、なかなか現状、英文開示が進んでいない理由の一つに、現状のガイドラインがあります。このガイドラインをどういうふうな形で、よりわかりやすい、一歩進めた要約をしていくのにつなげていくのか、その点の指摘は前回にもあったわけなんですけれども、この要約のガイドラインのつくり方、この点についてもう一段工夫していって頂く必要があるのではないかなというふうに思っております点が1点です。

もう1点、上場ということを考えますとよく整理されておる内容ですが、実際、日本の市場でよく募集されておりますもので、サムライ債、外国企業が発行します円建ての債券というものがございますけれども、これにおいて、実は外国企業自体が開示されていないケース、と申しますのは、海外の企業の中の金融子会社等がやはり発行するようなケース等を含めて使われているケースが多いかと思うんですけれども、この点についての取扱いはどういうふうな形でお考えになっているか、この点は質問でございますけれども、お願いできればと思います。

○古澤企業開示課長

今のご指摘は、発行者をグループとしてとらえ、例えば金融子会社がさらされている場合も含められるかという論点かと思います。これも、非常に深い論点でございまして、正直申し上げて、この場ではすぐに結論を出せない大きな課題と考えてございます。

この波及としては、例えば日本法人の子会社が例えばケイマンなりにあって、そのケイマン子会社が日本で例えば債券を発行する場合の取扱いがあります。グループでとらえるときの議論の広がりはこの問題に限らず非常に大きいなというのが我々の感じでございまして、大きなご指摘を頂きましたが、正直申し上げて、ここの場でこの問題について回答、結論を出すのは難しいというのが今の状況でございます。

○黒沼座長

大崎委員。

○大崎委員

今の点に関連してなんですが、これは確認なんですけれども、外国で発行者に関する情報が開示されているというのは、発行者の国籍を問題にするのではなく、発行者に関する情報が開示されている国、市場を、あるいはその国で適用されている法を問題にするという理解でよろしいんですか。例えば、すごく変な例かもしれませんけれども、日本の会社がニューヨーク証券取引所に単独上場して、日本で英文開示を行って、東証に上場するというのは問題ないという理解になるのでしょうか。

○古澤企業開示課長

難しい点についてのご指摘ですが、例えばアジアのある国であって、それがニューヨークと日本に同時上場するという場合は当然想定されているということだと思うんです。

ご指摘は、純粋な日本企業が日本で全く上場せずにニューヨークと東京に上場する場合はどうかというご質問で、そこはこの制度は基本的には想定していませんと申し上げざるを得ないと考えております。

1回目に石原委員からご議論があった、日本企業の取扱いとのイコールフッティングはどうするんだという論点にも結びついてしまいますし、さらには小川委員のご指摘の点にもつながってくるということかと思います。

○黒沼座長

石黒委員。

○石黒委員

日本の資本市場を活性化するということで、大きくとらえますと2つ要因があるのかなというふうに思っております。1つは、日本自体の全体の活力、プレスティージといいますか、やっぱり80年代後半から90年代、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われたときは、世界中がこぞって日本の地位というものに対して非常に高いものとして見てくれたということで、120社までの外国部の上場があったということが1つ大きいと思います。

これについては、このワーキング・グループでどうにもしようがないというか守備範囲外のことでございますが、ただ、別途、債券に関しては、今、新成長戦略の中でもアジアの債券市場をつくっていって、日本がその中心になっていこうというような政策も提言されているところであります。そういう大きなところで日本を中心としたものをつくっていく活力を出していくこと、それから、非西洋社会の中でいち早く先進国入りした日本の100年以上の歴史とかノウハウとか経験というものをアジアで活かしていくということは非常に重要なところかなと思っております。

もう1つは、コストの問題かと思います。やはりどのマーケットを選ぶかというときに、コストがどのくらいかかるのかということが発行体の側から見れば当然大きな問題になるわけでありまして、特に、デットの場合には割とコストが直接結びついてくるのかなという感じがいたしております。そして、デットでといいますとやはりサムライ債ということになるんですけれども、サムライ債についてどの程度のデューデリジェンスが適切なレベルであるかということについて、かなり私の個人的な感覚では、株式、エクイティに対してのデューデリジェンスと、デットに対する、サムライ債に対するデューデリジェンスのレベルは相当差があるんじゃないかというふうに思っております。これは単純にいいか悪いかということではないんですけれども、しかしそれで市場にとってよいのか。当然デューデリジェンスに手間をかけなければコストは安くなりますから、そういう意味で、サムライ債が日本語の開示であっても、全体コストが安ければそこは発行体から見ると一般にプラスが大きいということで、相当程度のサムライ債が出ているという感じがしております。非常に感覚的なオブザベーションで申しわけないんですが、そういう感覚を持っております。

エクイティ、株式については、やはりコストの部分と、それからその後の上場メリット。これについては、大崎委員からご指摘がありましたように、東証さんをはじめとする取引所は、日本の取引所に上場したときにどういうメリットがあるのかというところをアピールできるような実態をつくって頂くということが非常に重要だと思いますが、その際、重複上場だけじゃなくて、せっかく数年前には中国の企業が東証で単独上場するというようなことをやりまして、私どももお手伝いしたんですけれども、当時の中国と日本の関係というのは今と非常に違ってその当時はまだ日本のほうが非常にプレスティージが高くて、東証の一部に上場するということについて非常に大きなメリットを感じていたというのは1つの要因だと思うんですね。

そういうところで、今回の制度改革は重複上場中心ということですけれども、単独上場はなしというようなことに今回の改正がつながる、そういうインプリケーションはないはずでございますので、ぜひそちらのほうも進めて頂きたいというふうに思っております。

各論について申し上げますと、コストという点で言いますと、この資料の2-1の2ページ目の一番下のところに、日本語による要約というのは引き続き求めるということになりまして、これについては、前回も私のほうでご意見を申し上げたところですけれども、投資者保護として要約が引き続き必要であるというご判断を前提といたしまして、どの程度の要約が意味のある要約として必要なのかというところ。それから、どの部分が要約として必要な箇所なのか。この辺の整理をまずして頂きたいなというのが1点でございます。

それから、その上で、先ほども出ておりますけれども、何らかのガイダンスが欲しいということなんですけれども、それが方法論としてガイドラインなのかどうなのか、なかなかガイドラインに落としにくいと思うんですね。実際に自分でガイドラインをどういうのが書けるだろうかというふうに想像してみると、非常に抽象的になってしまいまして、必要十分にして正確なものを書け、ぐらいではガイドラインになりませんので、そういう意味では、むしろ例えば例示みたいな形で、つまり相場感ができれば実務としては動くわけですね。このぐらいが必要なんだなと、このくらいでいいんだな、というものがある程度できてくるといいわけです。先例が積み重なってくればいいわけですが、今、先例がないところで鶏と卵ですから、サンプル事例で示してあげるというのも1つの工夫かなというふうに思っております。

それから、もう1つ各論としましては、この2ページの一番上のほうの( ii )のところで、「さらされている」というところでございます。英文以外は今回は広げないというお話でありますが、さらされている時点の問題なんですが、例えばグローバル・オファリングで日本語及び英語を母国語とする以外の国の発行体が、その母国語、フランス語ならフランス語というふうにいたしましょうか、今はフランス語でしか上場していない、さらされておりませんと。ただ、今回英文を母国語とする市場、たとえば英米で募集をやって、同時に日本でも募集・上場をしたいというときには、厳密には既にさらされているということにはならないと思いますが、同時に英文で開示がなされる市場の、この市場はしっかりとした市場という前提でございますが、その市場の規律に入っていくということになったとすれば、過去既にさらされているということではなくて、同時にさらされるという場合まで認めてもいいんじゃないかなというふうに思っております。

それから、最後3ページの一番最後にお書き頂いているところですが、これは実務上は、前回も私のほうでご意見申し上げたところですけれども、非常に利便性が高いし有意義だと思いますので、ぜひこの点については今回導入して頂ければというふうに希望いたします。

以上です。

○黒沼座長

ありがとうございました。

このグローバル・オファリングの点は、ここに注がついていないということは、今、この案では同時には入っていないですか。

○古澤企業開示課長

同時上場する場合は含まれております。

○黒沼座長

そうですか。ここも入っているということですか。

今、事務局のほうで用意している案でも、グローバル・オファリングの場合に、その過程で発行者に関する情報も同時に外国において開示されている場合には、有価証券に関する情報も発行者に関する情報も同時に外国において開示されていると、そういう扱いになることを考えております。

○石黒委員

了解いたしました。それはそのようにして頂ければと思います。

○黒沼座長

加藤委員。

○加藤委員

前回は欠席してしまい、申しわけございませんでした。

既にいろいろな先生方からご意見が出されておりますので、私から3つほど、私の感想めいた意見を出させて頂きます。

まず最初に、今回の英文開示を発行開示のいわば本則のほうで認めるということですので、特定投資家向け取得勧誘の現行法とはすみ分けというものが非常に重要になるというのが1つでございます。

この点と考えまして、恐らく本則のほうでの英文開示を認めることになるということを考えますと、当然、恐らく勧誘相手の投資家を限定しないという方向性で行くとしますと、かなり外国市場の範囲というところの論点が非常に重要な意味になってくると思います。

そこで、外国市場の範囲ということを考えるに当たって、現行法でこの英文開示制度と何が一番近いかということを考えると、実は、有価証券届出書の組込方式ですとか参照方式ですとか発行登録方式のようなものと実は近いのではないかと。すなわち、あちらの制度も有価証券届出書の簡素化なんですけれども、その簡素化の理由というものは、既に市場のその価格というものが存在しているということなんだと思います。つまり、投資家が投資判断をする際に、信頼できる価格というものを入手しやすいということが1つ大きいのかなと。

今回の外国の英文開示を認める際に市場にさらされているということの意味は何かと申し上げますと、やはり信頼できる価格というものが既に別に存在するのであって、そういう、いわば比較対象のものが存在すれば当然詐欺的な行為というものを防ぎやすい、詐欺的な行為ってそもそも起こりにくいということも言えると思うんですね。そうすると、例えば仮に有価証券の本則の英文開示の場合に、勧誘の相手方の属性というものを考えない場合には、やはり信頼できる価格というものが既に存在しているのかどうか。そういうようなことが1つのポイントになるのかなという気がしております。

あと、既に大崎委員からご意見がありましたとおり、実際に投資家保護にとって重要なのは、法定開示も重要なんですけれども、やはりむしろ実際に勧誘に当たる証券会社がどのような対応をするかでありまして、それについては、やはり英文開示、特に英文開示に対してなじみのない投資家に対して勧誘する際には、それなりの対応というものがなされることが望ましいと私は考えております。

以上です。

○黒沼座長

ありがとうございます。

それでは、吉井委員。

○吉井委員

今回の事務局が示されたペーパーに対して、基本的には賛同いたします。発行者に関する情報が外国の市場においてさらされているケースというのは、開示の内容が適切であるということとともに、英訳がこなれているということも担保されるということかと思いますので、これでいいのではないかと思います。

ただ、日本でファイナンスをやる企業というのを考えた場合ですけれども、日本の投資家からしてみれば、別に日本でファイナンスしてくれなくても現地で上場していれば投資できるわけですので、どちらかというと、発行者側が日本で事業を行うため日本でファイナンスをしたいというケースか、あるいは母国のマーケットがないので日本でファイナンスをしたいという、どちらかのケースが中心ではないかと思います。

後者のケースにつきましては、やはり日本で資金調達する以上は日本のルールに従って日本語で開示をしてもらうというのは基本であろうと思います。ただ、そういった母国で整備された市場のない企業が、先ほどお話のありましたグローバル・オファリングというか、ほかの適切な市場と同時にわが国でも上場するというケースにつきましては、開示内容は日本のルールに従ってもらうとしても、例えば英文による開示を認めるということは1つ検討してもいいのかなと思います。

次に、補足書類につきましては日本語による要約をどのようにするかという点がコアでございます。こちらについては何かガイドラインをつくられて対応されるということのようですけれども、そのガイドラインをつくられるときには、ぜひとも作成の過程において利用者、即ち投資者、あるいは証券会社といったところの意見を十分に汲み取って検討して頂きたいと思います。

それから、3ページ目の臨時報告書でございますけれども、こちらは確かに適時性ということを考えた場合、翻訳している時間がもったいないので、まずは英文で開示するということでいいと思いますが、その後の日本語による開示を不要とすることについては多少検討の余地があるのかなと思います。臨時報告書の開示内容には、ファイナンスの情報とかM&Aとか、あるいは親会社の異動とか利用者が再三確認するようなものもございますので、そういったものについては、一旦英文で開示した後、多少タイムラグがあっても日本語訳も出してもらったほうがいいのではないかと考えます。

最後に、開示書類の様式の取扱いについてですが、こちらについては、対照表の作成は不要ということでいいと思いますが、例えば開示する項目のタイトルだけ日本語で書くとなどの対応を考えてもいいのかなと思います。

多少細かい点も含めましたが、私のほうからは以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございます。

松崎委員。

○松崎委員

ありがとうございます。前回、私どもの意見というのは述べさせて頂いておりますので、重ねて今日申し上げることはいたしませんけれども、かなり私どもの希望を汲んで頂きまして、このような方向で考えて頂いていることに関しては大変感謝をいたしております。特に、一番最初の基本認識のところには大分そのようなところを反映して頂いているのかなというふうに思っておりまして、ぜひこういう方向性で考えて頂ければなというふうに思っております。

それから、今日のご議論の中で、特に大崎委員から、あるいは石原委員からのご意見、取引所としてもしっかり努力せえというようなことについては十分認識しているつもりでございますし、また、取引所だけでできることも限られている部分もございますけれども、ぜひその部分については当局にもバックアップをお願いしたいと思っておりますし、また、証券会社の各社の方々とも一緒に上場の案件、それから法律事務所、会計事務所、日本の関係者と一緒にやらせて頂かないとなかなか難しいところがあると思いますので、ぜひご協力をお願いしたいと思っております。

それで、内容に関して、全体的にはこういう方向でというふうに理解をしておりますけれども、細かい点を幾つかあえて申し上げますと、補足書類のところですね。基本認識にもありますように、負担感というのがやはりあるように思えますので、ここをもう少しどういうふうにできるかというところについては検討を頂きたいというふうに思います。特に、やはり利用されないと意味がないと思いますので、そのときに発行体側から見たときにどうかというところなんですけれども、やはり補足書類については、先ほど石黒先生からございましたように、実際のコストの問題ですね。そこをどういうふうに低減が図れるかという点と、もう1つは、やはり納得度の問題があるような感じがいたします。

その補足情報に関してというところなんですけれども、派生論点の2にある範囲をどうするかということも、ここはかかわってくるところだと思うんですが、発行体がしかるべき市場に上場していて、そこでの監督を受けているもので範囲が決まっていると。それ以外に何をなぜ出さなくてはいけないのかというのは、納得度がどれぐらいあるのかというところもあるかと思いますので、この補足書類、要約の部分も含めてなんですが、全般的にどういう範囲というところと、ちょっと我々もまだ勉強不足なので、実際どこがどういう差があるのかというのもちょっと調査ができていないので、何とも言えないところもあるんですが、そこと比較しながら、補足書類についてはできるだけなくす、あるいは簡素なものにして頂ける、あるいは実務的に負担がないような工夫というのを検討して頂ければと思いますし、私どももできるだけいろいろ勉強したいというふうに思っております。

それからあと、何人かの委員の方からございましたように、今回こういう形でということではございますけれども、やっぱりどんどん状況というのは変わってくるかと思いますので、また今後の状況次第によっては継続検討して頂くというところもあろうかと思いますので、その点もぜひお願いしたいと思います。

それから、最後に1点だけ、細かい点でございますけれども、さっき投資信託の話とかも出ていたと思いますけれども、その対象範囲に関しても、投資信託の中でも上場しているETFとかという、外国物のETFなんていうのもありますので、そういったところもぜひ範囲に入れて頂きたいというふうに思っておりますので、あえて申し添えさせて頂きたいと思います。

以上です。

○黒沼座長

ありがとうございました。

では上柳委員、それから玉木さん。

○上柳委員

ありがとうございます。英文で発行者に関する情報が外国の市場にある、あるいはそこでの、加藤先生のお話でいくと価格があるというものについて、一定の規制緩和をしようということであれば、少なくとも投資者保護あるいは日本語を母国語とする者で構成されている日本市場できちんとした価格形成がされるためには、やはりいわゆる投資者に対して勧誘あるいは販売をするときの適合性の原則の遵守というのがキーになると思います。ですので、こういう制度改正をするということであれば、ぜひ監督上、あるいは検査においても適合性原則の遵守というところを再度きちんと整備しなければいけないというふうに思います。

そういう点から言いますと、例えば日本語による補足書類であるとか、あるいは日本語による要約をどの程度書くかというのは、実務の方は大変悩まれると思うんですけれども、乱暴に言えば、やはり最終的な取得者といいますか、投資者がどうその情報を理解しているのかというところですので、ある意味では、そこに労力をかけるというよりも、エンドユーザーのところをきちんと見る、あるいはエンドユーザーのところにきちんと情報が届くように、その間の日本語による要約そのほかも整備されるということではないかと思います。

私の認識では、機関投資家の方であるとか、あるいはアナリストの方、あるいは証券業者の方々はもうかなり英語を読まれると思いますので、英語で直接情報をとられて、それで投資者に適合するものを提供されるということになるべきだろうというふうに思っています。

特に、今回、外国において開示されている情報として求めるものを発行者情報に限定し、対象有価証券自体は外国において不開示でもよいとするというところで、私は心配しております。発行者は立派であっても、その当該有価証券なり、これは債券も含みますね、が怪しいものというのは、投資者保護の歴史で言うとEBであるとか、あるいは最近の仕組債であるとか、投資信託はちょっと逆の形になるかもわかりませんが、そういうこともありますので、特に適合性原則の遵守が強調されるべきだろうというふうに思います。

以上が投資者保護の立場からの発言ですが、さらにちょっと個人的な思いを申しますと、阿部さんがおっしゃったことですけれども、何も英文開示に限る必要はなくて、やはりそのほかの言語で開示されているものについても、一定の信頼すべき価格が外国にあるものについては、これから導入されるべき、あるいは外国だけでなくて、外国と日本の市場で両方共同してそういうものが世の中に出ていくようにという工夫は、日本の金融業界のためだけではなくて、日本がグローバル化するということの観点からも重要だというふうに思っていまして、そのときには、私が前回申し上げました不招請勧誘の禁止と組み合わせにして、日本の市場に一定のそういうものがあると。ただし、それを販売圧力をかけて投資者に勧誘なり販売はしないということですみ分けを図っていくということは、いい工夫ではないかというふうに思っています。もちろん、特定投資家のみに勧誘するというやり方もあるのかもわかりませんけれども、不招請勧誘の禁止というのは今までちょっと、特に証券業者さんの金融商品取引業者さんから見れば違和感のある制度だったのかもわかりませんけれども、あまり嫌がらずに、それとの組み合わせを真剣に考えていくべき時期が近々来るんじゃないかと思います。

長くなりました。

○黒沼座長

ありがとうございます。

では、玉木さん、お願いします。

○玉木委員

比較的、規模の大きな機関投資家の視点から一言、感想だけ申し上げます。

私どものような機関投資家といたしましては、市場におきます投資対象が豊かになること、これはもちろん歓迎すべきことでございます。他方、市場のインテグリティーが増進されねばならないといったことも言うまでもございませんし、また、私どもとしましては、価格形成が円滑になること、これは非常に重要なことではないかというふうに思ってございます。

したがいまして、今日もいろんな方からさまざまなご議論が出てございますけれども、実務に根差した検討が、どんどん変化していく環境に適合しながら、そういった検討、議論が積み重ねられていくことが必要ではないかというふうに思う次第でございます。

以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございます。

では、吉井さん、一言お願いします。

○吉井委員

英語以外ということであれば、例えば中国語での開示をわが国で認めるかどうかとか、そういったところが現実の問題としてあると思いますが、そういった言語による開示につきましては、まず、先にプロ向けマーケットで導入した上で、問題がなければ広げていくという手順がいいのではないかと思います。

今、不招請勧誘の禁止の対象にするという話がありましたが、私は不招請勧誘の禁止は実質的な販売規制だと思っておりますので、このような規制を濫用するというか、何か問題があればこれを使うというやり方はあまり望ましくないのではないかと考えます。不招請勧誘禁止の対象は極力拡張していかないというような方向で考えたほうがいいのではないかと思っております。

以上でございます。

○黒沼座長

ここで議論を深めてもいいんですけれども、もう1つ議論しなければならないこともありますので、あと二、三人ご意見を伺って次のところに進みたいと思います。

三浦さん、お願いします。

○三浦委員

手短に。まず、対象有価証券ということについてなんですけれども、外国の上場REITについては引き合いが強いというふうに思いますので、ぜひお考え頂ければというふうに思っております。

これの関係で言うと、投信法の発行者の、今、届出ですかね、登録ですかね、のほうも制度も合わせて見て頂くということが必要なんじゃないかなというふうに思っております。

2点目、適合性の原則、まさに投資家保護の観点からすごく重要なことだというふうに思うんですけれども、やはりその適合性原則をどういうふうに運用していくのかといったところの基準があいまいになると、証券会社の対応は非常に難しくなりますので、そこのところもぜひ詳細を共有させて頂ければというふうに思っております。

以上です。

○黒沼座長

ありがとうございます。

永沢さん、ではお願いします。

○永沢委員

先ほど不招請勧誘の話も出ましたので、一般投資家の立場からお話をさせて頂きたいと思います。

実は、前回、私も不招請勧誘の禁止について発言をさせて頂いたんですが、問題意識としては、英文開示になりますと英語の読めない人に必要な情報が届かないという問題点があって、その点から前回、不招請勧誘の禁止ということで対処することが必要なのではないかということを申し上げたんですが、ちょっと偏執するようで恐縮なんですが、自分でいろいろ投資をすることを考えたときに、セカンダリーのマーケットでの売買で頂く情報なんかを考えますと、入り口だけで絞るのはおかしいのではないかなとちょっと思ったりしておりまして、自分でうまく説明できないんですけれども、即座に不招請勧誘の禁止と言ってしまうのはちょっと行き過ぎだったかなというふうに修正する必要があるかなと思っておりました。

ただ、一方で、先ほど上柳先生が言われたような中国株のようなことがあると、ああそうなのかなとも一瞬また発言を迷ってはおるんですけれども、ただ、やはり即座に不招請勧誘の禁止というのはちょっとやはり行き過ぎであるかなとは思っております。

ただ、根底の問題意識としては、やはり日本のマーケットの場合、募集時に大変力が入るという状況がございますので、問題として、やはり英文が読めない人に販売されて、臨時に非常に投資判断において重要な情報が海外で出されたときに、英語が読めないばかりにその情報をとれなかったというふうなことを言う投資家がいないとも限らないわけです。そうなると、そういうことが起きたときに、私が申し上げたいのは、そういう紛争が起きたら、その紛争を今度はまた防ぐためにどんどんやはりまた規制がかかっていくということになりますと、今回この市場を育てようということで、今コストがかさばらないようにする、コストが上がらないようにするための仕組みを考えているのに、結局、逆に行ってしまうということが起こりかねませんので、やはりこの市場を育てたいと事業者の皆様が思われるのであるならば、やはりこの市場には事業者も発行者もフェアルールを守って頂かなくてはいけませんけれども、投資家のほうもちゃんとやはり、私は読めなかったからというふうなことを言うような人は入ってはいけないと。読んで、ちゃんと買った投資家とのバランスを考えたときに、やはりフェアルールを守れる投資家をちゃんと入れるようにして頂きたいというふうに思っておりまして、そのための対応としては、即座に不招請勧誘の禁止とまで行かなくても、何らかの適合性の原則を守れるような対応をまず皆様に考えて頂きたいなと思っておりますが、根底にはそういう問題意識がございます。

それから、前回やはりちょっと行き過ぎた発言をいたしまして、単独上場は禁止すべきだみたいな発言をしたんですが、やはり日本で上場の機会をということもあると思いますので、禁止とまでは行かないまでも、ただ、やはり投資家側からすると何らかの質的な担保を証券取引所なり発行にかかわるところに担保して頂きたいなと思っております。

それから、最後もう1点なんですけれども、日本語による情報提供というところがございましたが、やはり、この証券の発行に関することだけではなくて、全体として比較可能性が必要になりますので、そういった部分を考えた上で、全体としてガイドラインを見直されるときにもお願いしたいと思っておりますことと、それから、英語で出ていくときに英語は読めるといっても、一体何の情報かということは非常に重要ですので、この情報がどういう情報なのかという、その情報の重要性を日本語で知らせるということは必要なのではないかと思いました。

最後の点をもう一遍ちょっとまとめますと、やはり日本語で情報開示する意味では、先ほどの投資家保護の観点から、これは英文でしか情報が提供されないんだということが徹底して知らされることと、それから、これだけのマーケットではなくて日本のほかの証券との比較可能性を持たせて頂きたいことと、それから、情報の重要性がきちっとわかるようにアラームが出るような形にしてほしいという。アラームといいますか、この情報は何の情報であるということが端的にわかるような記載を工夫して頂きたいという。

以上でございます。ちょっと長くなりましたが、失礼いたしました。

○黒沼座長

ありがとうございます。

では、川本さん、川村さんの順にお願いします。

○川本委員

マーケットを運営しております立場から一言だけ意見を述べさせて頂きたいと存じます。

英文による有価証券届出書の開示制度が容認されることとなりますと、当然、海外の取引所との重複上場、あるいは海外の取引所に上場していない単独上場の会社数も増加することが想定されているわけでございます。

有価証券届出書による開示は、その効力の発生までに一定の期間という経過が認められますが、適時開示の部分につきましては、いわば迅速性が生命線でございまして、そのような時間的な猶予がほとんどございません。重要な会社情報を上場会社が決定したような場合、例えば民事再生を決定した場合、あるいは重大な会社情報が発生した場合、取引所といたしましては、上場会社に対し正確かつタイムリーに、しかも、平等に当該会社情報を開示して頂くということを要請しております。また、新聞等で上場会社の合併に関するニュースがリークされるような場合につきましても、その真偽についてしかるべき開示を行うよう要請しておるところでございます。

このように、上場会社が重大な会社情報に関し適時開示を行った場合、あるいは不確実な情報が流布しているような場合で、その内容が投資判断に極めて重大な影響を与えると認められるときは、取引所は売買の停止を図りまして、当該会社情報の周知、あるいは不確実情報の確認周知を図っておるところでございます。

投資家が重要な適時開示情報に関しまして、その内容をタイムリーに理解し、適切な投資判断を行っていく点につきまして、投資家の間、英語がわかる方、あるいは英語が理解できない方の間で差が極端に出てまいりますと、ある意味、平等性において損なわれているというおそれがございます。したがいまして、取引所といたしましては、必要な範囲内で上場会社さんに対しても、日本語による会社情報の適時開示の体制の整備というのが当然求められてくるのではないかと認識しております。

私からは以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございました。

川村先生、お願いします。

○川村委員

1点だけでございますけれども、日本語による要約のところで、これはどういう趣旨で行うのかということがガイドラインをつくるときに重要になってくるんじゃないかなと思うわけで、例えば発行体情報といいますと、大きく分けると固有名詞の情報となるところが結構あって、ここは英語のものを日本語に翻訳にしても全然意味がなくて、一方で、意味があるというのは、非常に記述的なナレーティブなリスク関係の情報とかそういうところになってくるんだと思うんですが、ここは今度はニュアンスまで含めて正確に翻訳してもらわないと、ほとんどまた意味がないというようなところだと思うんですね。

だから、要約を出すときに、結局は英文まで読まないとだめだというスタンスで行くのか、それとも、日本語の要約を読めば事足りるというレベルのものを要求するのかによって、大分中身が違ってくるかなというところがあるので、その辺のフレームワークといいますか、基本的な要約に対する考え方のようなものをどこかでまとめられるのがいいんじゃないかなというのが意見であります。

○黒沼座長

今の点について、要約を日本語で求めることの趣旨、目的として我々がどう考えているかということを一言言ってもらえますか。

○古澤企業開示課長

資料の2ページ目の一番下にございますのが漠としているところで、そこにありますように、公益または投資者保護のために必要かつ適切なものということと、あと、前回の議論からございましたように、最終的に、販売情報との関係で必要な情報がきちんと発行体から責任を持って出されるところがポイントと考えてございます。

その意味では、ある程度日本語で事足りるというところをどこまで目指すかということだと思うんですが、1つ参考にしたいと思ってございますのがEUの例がで、例えばイギリスの会社がフランスで上場している場合に、一番最初のプロスペクタスのサマリーの部分が現地語で出されるというプラクティスがございますので、そういうサマリーの目線も参考にしながら相談いたしたいと考えてございます。

○黒沼座長

いろいろと本日はご意見を頂きましてありがとうございました。皆様から頂きましたご意見等につきましては事務局のほうで整理させて頂いた上で、次回、これまでの議論を踏まえて本ワーキング・グループとしての報告の取りまとめに向けたご議論を頂きたいと考えております。

今日は、細かい論点についてきちんと議論するほどの時間はなかったんですけれども、さらに整理されたご意見がある場合には、事務局のほうに早めにお寄せ頂ければ、報告書の原案を作成する段階で考えたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、議事次第に従いまして、開示制度をめぐるその他の論点といたしまして、ライツ・オファリングに係る制度整備及び発行登録制度の整備についての審議に入らせて頂きます。

まず、それぞれの概要、論点等につきまして事務局よりご説明いたします。

○古澤企業開示課長

時間が押してしまって申しわけございません。

お手元の資料の2-4、2-5、それから2-6ということで、ライツ・オファリング、それから、発行登録における追補目論見書の関係の資料を準備させて頂いてございます。5分ほどお時間を頂いて、駆け足で恐縮ですが、ご説明させて頂きたいと存じます。

まず、2-4でございます。ご案内のとおり、ライツ・オファリングとは、株主全員に新株予約権を無償で割当てるという増資手法で、従来広く使われております公募増資と、それから第三者割当増資と比較して、権利の希釈化を嫌う株主が新株予約権の行使により希釈化を回避できる、また、追加出資を嫌う株主は新株予約権を売却することができるという柔軟性があるというものでございます。昨日出した金融庁のアクションプランの中でもライツ・オファリングの制度整備も掲げております。

2ページ目ですが、公募増資や既存株主の持ち分比率の低下を伴う第三者割当増資が投資者保護の観点から問題となっている中で、選択肢の一つとして、既存株主により配慮した増資手法としてのライツ・オファリングの積極的活用を求める声がございます。

法制上は、現在でも可能ですが、利用実績がほとんどないというのが今までの状況です。

3ページ目は、一番最初の新株予約権を行使するまでの状況ですが、発行会社が新株予約権の株主無償割当てを実施するという、まず1の段階がございまして、株主は新株予約権を行使して金銭を払い込んで株式を取得するという丸2もあれば、追加出資を嫌う株主につきましては、丸2´にございますように、上場市場で売却する道も開かれているというのが、ライツ・オファリングの特色でございます。

さらに、次の論点に関係するのが、4ページ、後でコミットメント型のライツが議論になってまいります。3ページ目にさらに4ページ目がつくというイメージです。丸3ですが、新株予約権自体に取得条項がついているという前提で、発行会社は株主が行使しなかった新株予約権を取得し、丸4ですが、発行会社は取得した新株予約権を証券会社に売却し、丸5で、証券会社の段階で新株予約権が行使され、それで、株式を証券会社が取得する。証券会社は丸6で取得した株式を市場等へ売却すると。これが、ライツ・オファリングの中の証券会社によるコミットメントがついているという場合のイメージです。

5ページですが、金融庁といたしましても、今までも制度改正をしております。金融庁、東証、それからほふりとそれぞれございます。新株予約権の処分可能性を担保するという面での取り組み、それからライツ・オファリングに関する期間を短縮するという面での取り組みなどそのページにあるとおりでございます。

具体的な論点に入ってまいりますが、9ページ。先ほどのコミットメント型ライツ・オファリングですが、これについては引受けとの類似性があるのではないかという点でございます。コミットメント型ライツ・オファリングについて、証券会社の行為に着目すると、株式の引受けを行うことと、行為態様、リスク負担の面で類似性があるのではないかということでございます。

米印のところが現行の条文で、有価証券の引受けは有価証券の募集等に際して、「当該」有価証券を取得させることを目的として当該有価証券の全部または一部を取得することという要件と、それから、2つ目にございますが、当該有価証券の全部または一部につき、他にこれを取得する者がない場合にその残部を取得する。これを有価証券の引受けということで、金商法の第2条第6項で規定しております。この1つ目の黒ポツとの関係では、当該有価証券を取得しているわけではなくて、この場合には、新株予約権を取得して、それで株式を売却するという形でございますので、この1つ目には該当しないのではないかという議論がございます。それから、2つ目の黒ポツとの関係では、コミットメント型ライツの場合、発行会社が一回取得してございますので、他にこれを取得する者がない場合にその残部を取得するというふうに言えるのかという問題もございまして、仮に引受けと位置づける場合には法律改正が必要という論点があろうかと存じます。

それから、10ページ目は技術的な点でございますので省略させて頂きますが、株式募集の引受けとコミットメント型のライツの場合の開示規制、業規制の対応を比較したものでございます。

それから、6ページ目、今回、論点大きなもの2つございますが、その2つ目でございます。有価証券の募集に際して有価証券を取得される場合に、あらかじめ、または同時に目論見書を交付することが必要と。ライツ・オファリングについては、株主全員に対して目論見書の交付ということで、下の丸にございますようなガイドラインを出しております。

それから、7ページで、有価証券届出書の効力の発生の後、新株予約権の行使がなされるまでの間で、あらかじめ例えば四半期報告が出ることがわかっている場合がありますが、こういう場合も訂正届出書及び訂正目論見書の交付が必要という制度になってございますが、こういう場合について簡易な取扱いができないかという点が、もう1つのご相談、論点かと存じます。

9ページのほうで、先ほど申し上げました金融証券取引法の2条6項、論点が逆に出てまいりましたので説明がさかさまになってまいりましたが、「目論見書」についての論点があり、それから「引受け」についての論点でございます。先ほどの繰り返しでございますので、簡単にさせて頂きますが、9ページの米印のところにございますように、現行の金商法でございますと、有価証券の引受けの定義がその2つに書いてございます。1つ目のポツでございますと、当該有価証券を取得しているというふうに今回のコミットメント型のライツが当たるかどうかという点について疑問があり、2つ目のポツについては、他にこれを取得する者がない場合とございますが、これに該当するのかという論点があり、両方ともそういう意味では現行の有価証券の引受けに当たらないのではないかという話があるものでございますから、この類似性にかんがみると、今回法改正をして引受けと位置づける必要があるかどうかというところが論点かと存じます。

では、最後に論点の整理ということで資料2-7、開示制度をめぐるその他の論点ということでございます。1つ目が、ライツ・オファリングにおける株主に対する目論見書の交付義務をどう考えるかという点でございます。書面による目論見書を交付することにかえて、有価証券届出書の提出、それからEDINETの掲載ページのアドレス等の公告または通知で足りるということでいかがだろうというご提案でございます。

それから2つ目が、コミットメント型ライツ・オファリングにおける証券会社等の新株予約権、株式の取得を引受け行為ととらえて、開示規制、業規制の適用とすることについてどう考えるかという点でございます。

それから、細かい点ですが、有価証券届出書の効力発生後、新株予約権の行使期間満了までに四半期報告などの継続開示書類が出る場合、この場合の訂正届出書、訂正目論見書の取扱いをどうするのかというのが3点目でございます。

それから、ライツとは別の論点でございますが、発行登録の場合につきまして、一定の条件を満たす場合には発行登録追補目論見書の交付を不要とするという制度改正をご提案させて頂きたいというものでございます。この点につきまして、もしご質問などあれば改めて制度のご説明をさせて頂ければと思います。

はしょって恐縮でございますが、以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございました。

それでは、これらの論点につきまして、技術的なものと、それから政策的なもの、あるいは理論的に非常に難しいものが含まれておりますけれども、委員の皆様方からご自由にご発言をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いします。

では、大崎さん。

○大崎委員

基本的に、今ご提案頂いた内容についてはあまり違和感はないんですが、1つぜひ、これから注意して頂きたいというのはちょっと変な言い方ですけれども、留意して頂ければと思いますのが、まず、コミットメント型ライツ・オファリングにおける証券会社の行為を引受けととらえる。それは非常にもっともなことだと思うんですが、2条6項の文言自体を改正するということだとしますと、こういう非常に基本的な定義規定をいじるときに、あまりに複雑で読みにくい意味不明な条文にならないように、ぜひ何か工夫をして頂きたい。私、何かちょっと法体系として無理がある考えかもしれませんけれども、できればこういう定義規定をいじらずに、何か別の補足的なものでそこへ読み込むんだというような手当てができないかなと思ったりするんですが、例えば当該有価証券、または云々かんぬんとかいうような形になると、これはそもそもの条文の意味が全くわからなくなっちゃうということを非常に懸念しております。

それからもう1点ですが、別紙ということでライツ・オファリングについてという紙を配布して頂いておりますよね。これ、ちょっとどなたがおつくりになったのかわからないんですが、これに出ていた大量保有報告書及びTOB規制との関係の論点ですね。これ非常に細かいことのようにも思われるかも知れませんが、現状、ライツ・オファリングが行われるときに非常に不思議な内容の大量保有報告書を提出しなければいけない結果になってしまっているというのは、投資家保護とか市場の機能という観点から重大な問題だと思いますので、この2-7の紙にはないんですけれども、これぜひ一緒に改正をして頂かないと、逆にここがなおざりになって実務が進んじゃうと、変な報告書がいっぱい出てくるとか、わけのわからないことでTOBをかけなきゃいけなくなるとかいう、非常に困ったことになるので、そこはぜひ同時にやって頂きたいなと思います。

○古澤企業開示課長

今、大崎先生から指摘がございました追加の資料は、前回に引き続いて石黒先生から実務的な論点をまとめて頂いたものでございます。

ご指摘のありましたTOBと大量保有報告における取扱いは、実務を回していく上で非常に大きな論点だと我々も考えてございます。ここの場で法律改正について考え方を整理して頂いた上で、TOBと大量保有報告につきましても、法律の審議の状況などと並行しながら、石黒先生から頂いたこのメモも踏まえつつ検討したいと思っております。

○黒沼座長

それでは、石黒委員。

○石黒委員

まず、その出所不明のペーパーの犯人は私でございます。

引受けについてのTOB、大量保有の問題は実務上重要であって、今、既にご議論頂いたところですけれども、引受けということになりますと、もう1つ、審査の問題ということも証券会社には発生してくるのかなというふうに思いまして、コミットメントを実態から言うと、引受けとほぼ同様だというところから、引受けというふうに性格、性質決定をするというご議論ですので、多分、審査手続も似たような形で各社されるような話になるのかなと思いますが、その辺は証券会社の方のご意見も聞く必要があるのかなというふうに思っております。

それから、目論見書に関する論点でございますが、これはライツ・オファリングに必ずしも限らない課題で、目論見書の交付方法についてどういうふうに考えるかということだと思いますけれども、今回は少なくともライツについては、書面による目論見書の交付に代えて電子的な方法を導入したらどうかということでございまして、これについては私としては賛成いたします。

請求があったときの交付についてどうするかという論点があるかと思います。この電子的なものだけで終わらせるかどうかという論点でございますが、これはやはり請求があった場合については、紙での交付ということをやはり考えるべきではあろうと思いまして、ただ、そのタイミングにきちっと目配りをしないと、せっかく本則では電子的でよろしいといっても、請求があった場合に備えて一部でもそれを予め用意しておかなきゃいけないということになりますと、タイミング上、結局タイムラインが合ってこないということになりますので、その部分は後ろのほうに、例えば行使期間の末日までに渡せばいいとかという形での対応をお考え頂ければというふうに思っております。

それから、引受けについては先ほど申し上げましたので、その他の論点のところでございますが、割当日から行使期間の満了まで、いろいろな各関係者のご努力で前よりは短縮化されておりますが、引き続きまだ長期間かかりますので、こういった事態が起きるということで、実務上の問題点について光を当てて頂いたというふうに思っております。

それで、特に割当日以降は上場されて転々流通いたしますので、目論見書を渡せと言っても渡しようがないという物理的な問題もございますので、割当日以後の訂正は不要とすべきだと思います。第1点で電子的な方法を導入して頂ければ、その問題は第3点のその他の論点のところでも交付の問題は基本的になくなってくるかと思いますけれども、この考え方を明確にすることは適切であろうというふうに思っております。

そもそもガイドラインのA-15-6で、割当通知を受領した日に新株予約権の取得が行われるという整理をして頂いておりますが、会社法上は割当日に新株予約権を取得しているので、そこでもう既に投資が行われているということであれば、このような訂正が必要でないという取扱いはむしろ論理的に一貫性があるのかなというふうに思っておりますので、この点についても賛同いたしたいと思います。

以上です。

○黒沼座長

先ほど石原委員が挙手されていたと思うんですけれども、よろしいですか。

○石原委員

一言だけなのですが、企業の立場からすれば、ライツ・オファリングが現実的な資金調達の選択肢たり得ないということは非常に問題だと思っています。実務上の問題には必ずしも十分ついていけていないところもあるのですけれども、例えば私どもで言えば個人株主は40万人ぐらいおりますけれども、もちろん個人株主の保護ということは当然重要である一方で、現実的な選択肢として成り立つようぜひ早く検討を進めて頂きたいということだけ申し上げたかった次第です。

○黒沼座長

ありがとうございました。

それでは、阿部委員。

○阿部委員

ただの質問です。4ページのスキーム図で、コミットメント型のライツ・オファリングで、証券会社以外が行う可能性はあり得るのでしょうか。論点の2-7では証券会社等とありますけれども、証券会社でなければ市場で売れないのではないでしょうか。

○古澤企業開示課長

ご指摘は、4ページの丸6は実際には証券会社に限られるということかと思いますが、これは議論してまいりますと、例えばファンドが大口の株式の売買をするなど、丸6の可能性がないかと言われると、可能性は否定できないとの議論がございまして、そういう面からもはっきりさせてほしいという議論があったと承知しております。

○阿部委員

そういう理屈はわかるんですけれども、現実に証券会社しかやらないと想定されていることについて、新たな開示規制、業規制を考える必要があるのでしょうか。

○黒沼座長

ご意見としてそれについての反論とかもあろうかと思いますので、自由にご意見をお願いしたいんですが。

大崎委員。

○大崎委員

今の阿部さんの点じゃなくて、さっき石黒先生がおっしゃったことで気になったものですから、確認したいんですが、ライツ・オファリングの場合に目論見書交付義務についてどう考えるかと書いて、交付することにかえてとなっているのは、これは交付義務が免除されるという理解ではないのでしょうか。というのは、先ほど石黒先生がおっしゃっていたニュアンスだと、目論見書の交付義務は残っているんだけれども、その交付の方法がいわゆる株主への通知等であるというように聞こえたんですが、そうすると、例えば証券会社が投資家に声をかける行為は目論見書を使用した勧誘に該当するのかどうか。そうすると、証券会社に目論見書使用者責任が生ずるのかどうかというのがちょっと不思議な感じがするんですね。つまり、いわば使っていないものについて責任が出てくるというのも非常に妙な感じがするんですが、そこはどうお考えなのか教えて頂ければと思うんです。

○石黒委員

そこは制度設計上非常に重要な問題だと思いまして、先ほど引受審査がどうなるのかというふうに申し上げたところと密接にかかわってくるところだと思うんですね。そこについては、先ほど申し上げたことですが、証券会社のお考えもぜひお聞きして制度設計していくべきだと思うんですが、ただ、コミットをしてやって、そもそも引受けとほとんど実態が似ているんだという出発点からいくとすれば、そうなのかなという推測のもとに先ほど発言を申し上げたというところであります。

○黒沼座長

今の点、事務局としてお考えが何かあれば。

○古澤企業開示課長

論点の2-7の1つ目の目論見書の交付義務のところだと思います。まず1つは、目論見書を交付することにかえて、丸1有価証券届出書の提出及びEDINETの掲載ページのアドレス等の情報の公告または株主への通知で足りるとしております。

基本的には、目論見書の作成義務は残り、その上で通知する。それで株主からの請求があれば出すというところがまず基本で、ここはまず第一段階ということだと思うんですが、問題は、仮に丸2のところで情報の公告だけでかえた場合に、そもそも目論見書を作成しなければいけないのかどうかについてもう一段階議論があると考えております。

第1ステップのところは、目論見書の作成義務は残し、株主からの通知だけをしておいて、それで請求があれば出すというたてつけにした上、さらにその上にもう一歩進んで、その場合には目論見書をそもそも作成しなくていいと考えるかが、制度設計の1つのポイントと考えております。

○黒沼座長

では、大崎委員。

○大崎委員

そうだとすると、目論見書の請求があった場合の交付義務というのはだれが負うのかというのが気になるんですが、これは証券会社が引受けをしていれば証券会社が負うと考えておられるのか、発行者が仮に請求に応じて交付する義務を負うんだとすると、今度は証券会社が使用責任だけを負うというのも非常に変な話だなというふうに思うんですが。早い話が、目論見書に虚偽記載が仮にあった場合ですよね。何というか、交付されていない目論見書に虚偽記載があったことがそもそも問題になるというのも何か非常に不思議な感じが。

○黒沼座長

交付義務を残さない限りは目論見書の使用責任というのは生じないですよね。交付義務を残して証券会社から交付するというやり方をとった場合には、それは残る可能性がありますよね。それは、実は引受けをやっているかどうかとは関係なくて、引受証券会社以外のものも使用責任が規定上ありますので、そこはいろいろと細かい点ですけれども、考えていかなければならない点だと感じています。

石黒委員。

○石黒委員

今の点は、実務から言いますと、通常の引受けと違って、株主は主に口座管理会社に行くと思うんですね。口座管理会社は引受審査もしていなければコミットもしていないところでありまして、そこでどうなっているんだという説明を求められ、あるいは目論見書をよこせというような請求があったときに、それで渡したらば使用者責任が出るというのは、これはやっぱりつじつまが合わないと思うんですね。ですから、その辺の実務の流れの中でどこをどうするのかというのは非常に重要なところだと思いますので、どこかで突っかかっちゃうと全体が使えなくなりますので、そこは非常に重要なポイントだというふうに思っております。

○黒沼座長

小川委員。

○小川委員

今ほど議論になっております点は、実務の観点から申しました場合に、前々から我々も議論してきた部分です。

そもそも、いわゆる引受審査等が行われない状況の中で、こういったコミットメントの形式のライツ・オファリングは行われていいのかというような問題意識もございましたし、あるいはそういったものが十分に反映された目論見書ができたとしても、まさに今議論にありますように、交付義務をだれが負っているのか、その使用者責任というものをどういうふうに考えるのかという点につきまして、しっかりと議論した上での整理が必要と思われる部分かと思っております。

それ以外のライツ・オファリング全般につきましてお話をさせて頂きますと、既存の株主に配慮した方式でもありまして、欧州で一般的に行われている方式でございます。それが、日本では制度上できるものの、やはり幾つかの問題点として使い勝手が悪いという部分がございます。大きく金商法関係のところで使い勝手が悪い部分と、会社法関係で使い勝手の悪い部分があり、複合的な要因の中で使われてきていない背景があるわけですが、金商法関係で我々もいろいろとご指摘させて頂いておりました点につきましては、かなり網羅されているのではないかなというふうに思っております。特にこの目論見書の交付の考え方の部分でございますとか、それから、引受けという形で整理することによっていろいろなその他の論点、TOB規制等の論点がございますけれども、そういったものも比較的整理しやすくなるということでございます。

その他の論点として、有価証券届出書の効力発生後の訂正届出書の扱い等の点もございますけれども、おおむね現状の問題点として挙がっている部分についてはかなり対応頂けているという内容になっているのではないかなというふうに思っております。

○黒沼座長

平田委員。

○平田委員

今回のコミットメントスキームを含んだライツ・オファリングのスキームに関してさまざまな対応をして頂けるということに関しましては、ここ数十年来、さまざまな発行企業が行ってきた不適切な第三者割当を払拭するという意味でも非常に重要な論点だというふうに考えております。

その意味で、今回コミットメントの部分に関して引受け業務という形で整理して頂くということは、我々としても非常に歓迎すべきことでありまして、まさに証券界としてどういう形で、それを引受審査とか、そういう論点で適正なものをつくり上げていくのかというのは、今後、十分な議論をしていきたいと思います。特に引受審査だけではなくて、いわゆる条件決定の部分も含めて、第三者割当でいろいろ問題になってきたところをどうやって払拭していくのか、このライツ・オファリングを適正に行うのかというところについても重要な論点だと思いますので、議論をさせて頂きたいと思います。

それから、先ほどの目論見書の部分に関しましては、通常の公募増資であれば引受けをし、投資家に対して勧誘をし、その目論見書を使用するという流れの中で、当然ながら交付を使用するのは証券会社ということがわかるわけでありますが、ライツ・オファリングに関しましては、基本的に既存の株主に対して証券会社が勧誘行為というものは行わないということになりますので、そこで本当に使用者責任というものが発生するのかどうかという点については、私、個人的には非常に疑義があるということで、それを引受けの議論でというのがちょっと本当になじむのかどうなのかというところについては、少し議論が必要なのかなというふうに思っております。

それから、ほかの論点では、目論見書の部分に関しましてはやはり相当株主が多い発行会社さんが行う場合においては、このような簡素化というのは必ず必要なことでありますので、ここでおまとめ頂いているような方向で議論が進んでいくことに関しては大変歓迎をしたいというふうに思っております。

また、実務的にはさまざまな、さらにいろいろな議論がありまして、当然ながら先ほどたしか石黒先生がおっしゃっていたとおり、結果として投資家、株主から請求があったものをだれが事務的に取り扱うかというと、全く引受けも何もしていない口座を持っている証券会社であるということがありまして、この辺、実務をどうやって回していくのかとか、結構細かい論点がたくさんあるのかなというふうに思っておりますので、法律議論はこちらのほうでして頂くにしろ、いずれにしろ引受審査をどうするのか、適切な価格をどうやって決めていくのか、あるいは実務をどうやって回していくのかというのは、その辺は私どものほうでも引き取らせて頂いて、議論のほうをしていきたいというふうに考えております。

○黒沼座長

吉井委員。

○吉井委員

開示制度をめぐるその他の論点で挙げられていた方向性に基本的には賛同いたしますが、目論見書に関して少し申し上げたいことございます。そもそもライツ・オファリングというのは既存株主に対して割当てるということですから、割当の対象者は、そもそも証券情報についてある程度知っているということではないかと思います。

会社法上も割当通知というのが別途ございますので、目論見書の必要性はそれほど高くないのではないかと思われます。したがいまして、過度に使用者責任を負わせるというのはあまり適切ではないのかなと考えます。

新株予約権の割当ては募集に該当するということですが、そもそも行使を進める行為というのは募集に該当するのか、現行制度上は募集に該当しないのではないかと思われますので、そのような点も含めて考える必要があると思います。

業者サイドから言えば、コミットメントを契約している証券会社は引受手数料のような手数料が新しい制度の下ではとれるのでしょうが、それ以外の証券会社の場合は、行使に伴う事務手数料はその業者が負担しておりますので、そもそも顧客に権利行使をすすめるインセンティブは働きません。さらに目論見書の使用者責任を負わされるということであれば、この制度自体があまり使われなくなってしまう可能性があるのかなという感じがいたします。

また石黒先生からいろいろ詳細な論点を挙げていただいておりますが、我々のグループ会社に多少ヒアリングしたところでは、例えばプレヒアリングが大株主に対してできないということが問題点として挙げられております。大株主の行使状況というのはライツ・オファリングの成否を決める上で非常に重要ですので、インサイダー取引規制の問題は別としまして、開示制度上このようなプレヒアリングが許容されないかといった問題はあるかと思います。

それから、大量保有報告書につきまして、コミットメントを締結する証券会社の取扱いは別として、割当先の既存株主でも場合によっては計算上の保有割合が5%を超えてしまうというケースもあるようでございます。ライツ・オファリングは、基本的には既存株主に持株割合に応じて新株予約権を割当てるわけですから、そもそも開示の必要性は高いと思われないのですが、計算上、形式的に5%を超えるので、大量保有報告書を提出しないといけなくなるケースがあるようですので、このような点も実務上1つ制約になるのかなという感じがいたします。

細かい点はまた後ほどといたしまして、以上、いくつか意見を述べさせて頂きました。

○黒沼座長

ありがとうございました。

ちょっと私から一言よろしいですかね。

先ほど阿部委員から出された問題提起について、ちょっと私なりにお答えしておきますと、このコミットメント型のライツ・オファリングというのは、経済実質的には株式募集についての残額引受けをしている。売れ残りリスクを負担するという行為を行っているのではないかと。そういう点に着目して引受けという行為と整理をすると。そうすると、有価証券届出書の虚偽記載について、元引受金融商品取引業者等として民事責任を負うことになるので、引受審査をしなければならなくなると。引受審査をさせて、適正なライツ・オファリングをさせるのがよいのではないかという発想から出ています。

ただし、技術的に非常に細かい難しい問題がありまして、先ほど委員の皆様からご指摘があったように、新株予約権の無償割当ての段階では実はあまり募集という声がないのではないかと。しかし、整理としては、新株予約権の募集として有価証券届出書が出されて、その目論見書が出されることになっているので、その目論見書の交付についてどう考えたらいいかというような論点があるわけですね。その段階ではあまりかかわっていない証券会社が責任を負うのはどうかという議論がなされているんですね。

しかし他方で、見方を変えると、現在の解釈では、株式の募集はこの場合には行われていないので、株式の募集についての有価証券届出書は提出されないという整理になっているんですね。しかし、経済実質的には予約権の行使が何らかの形で勧誘がされていて、それを行使して一般の株主が株式を取得すると。証券会社としても売れ残りがたくさん出たらそれをコミットメントしているわけですから、そのリスクを負担しなければならないので、その点についての何らかの勧誘行為があるのかもしれないと。

その点を考えると、やはり何らかの引受審査も必要だし、一定の証券会社には勧誘についての責任というのが生じてくるのではないかという整理もできると思うんですね。

そのあたりを勘案して制度設計をしていかなければならない問題だろうというふうに、個人的に思っております。

先に石黒委員から。

○石黒委員

何度も発言させて頂きまして恐縮ですけれども、勧誘というのは本当に金融証券取引法上のキーワードの非常に重要な一つなんですが、これが何なのかというのは大問題で、話し始めると多分まとまらないということだと思うんですが、その中で、例えば先ほどプレヒアリングについてのご指摘がございましたが、これができないことになっているという整理なのかどうなのか。実際に非常に近似した問題として、第三者割当増資について届出書にその割当先を書きなさいという慣行ないし指導があって、割当先を書く以上は届出書提出前に必ず接触があったわけでございますが、この点については、勧誘に当たらないとの整理がガイドライン等で既になされています。やはり勧誘ということを一般向けの募集、売出し的なものと、それから第三者割当とか、あるいはこのコミットメント型ライツイシューの場合には、概念の相対性ということで違えて考えていくふうにしないと、どうしても無理が出てくるということなのかなと思います。

第三者割当については、ガイドライン等でお手当てをして頂いているわけでありますけれども、またプレヒアリングは別の、昨今話題になっている公募前の株価下落の問題とか、非常にまた大きな問題があって、なかなか手がつけにくい話ではあるんですが、全体を一遍にというよりは部分的に、このコミットメント型のライツ・オファリングが実務的にある程度の合理的な安心感を持って実行できるような形での整理というのは何らかの形でして頂くというふうにお願いしたいというふうに思っております。口座管理会社の勧誘のことについては、先ほどの私どものペーパーの11ページの下から12ページの頭に書いてございまして、やはり使用者責任というのは、積極的に勧誘をしたときにだけついてくる話であって、口座管理会社が株を預かっている投資家から目論見書をくれと言われたときに、うちはそれはだめですと断るとすると、非常に投資家からすると利便性が悪いので、目論見書を渡した途端に使用者責任が出てくるという話じゃなくて、積極的勧誘をしつつ渡したときだけに使用者責任が出てくるというような整理が1つあり得るんじゃないかなというふうに思っております。

○黒沼座長

ありがとうございました。

加藤委員。

○加藤委員

ライツ・オファリングにつきましては、目論見書というものが新株予約権無償割当ての段階で交付されているんですけれども、実は重要なのはやはりその後の段階であるというのが恐らく黒沼先生のご意見でありまして、私もそれには全面的に賛成であります。

それで、恐らく今までのご意見で、新株予約権の無償割当ての段階で何らかの使用者の責任を負わせるとかということは、まさにそれはちょっと筋違いなことだと思っております。

あと、実際に行使をさせるかどうかという勧誘、ここの勧誘というのは金商法上の勧誘という意味ではなくて、何か行使をしてくださいという働きかけなどを証券会社が全くしていないかというと、しなくてライツ・オファリングが成功するのかというのは、ちょっと私、実務に疎いものでわかりません。

実際に証券をやはり、確かにほかの通常の募集とは違うというのはまさに、それは非常に私もわかるんですけれども、やはり新株予約権の無償割当てを受けて行使して株式を新たに追加投資をするのか、そのまま現金をもらうのかという判断に迫られている投資家に対して証券会社が勧誘、括弧書きの勧誘をしてくるわけですね。そういった場合、全く、例えば民事責任の規定などがなくていいのかというのは、ほかの通常の募集との兼ね合いでかなり違和感があるんですね。例えば17条の責任というのは決して目論見書の使用者の責任というよりは、あるいは目論見書以外の証券の販売の過程で使われるすべての虚偽記載の責任ですので、せめてそれぐらいは適用対象にしても特に弊害はないのではないかなと私は考えております。

○黒沼座長

ありがとうございます。

大崎委員。

○大崎委員

今の加藤先生のお話も理屈としてはわかるんですが、私さっきから平田さんもおっしゃって石黒先生もおっしゃったことでちょっと気になりますのが、引受証券会社以外の証券会社から積極的に声をかけた場合には、やっぱり何らかの責任が生ずるであろうというのは、理屈としてはわからなくもないんですが、これをあまり突き詰めますと、結局、証券会社としてはできるだけ知らん顔をしようという強いインセンティブが働きますよね。ということは、何が起きるかというと、気がつかないで新株予約権を行使しない、あるいは売却もしないという人が増えるということを惹起するわけですね。そこにつけ込むとどういうことができるかというと、特定の第三者に東証が禁じているような第三者割当をライツ・オファリングの形をとりながらこっそりとやるという人たちにつけ込む隙を大いに与えるだけなんじゃないかと思うんですね。このようなこともちょっと考えて、本当に目論見書の交付義務というのが大前提としてあるのか、あるべきなのかというようなところを考えて頂かないと、何か投資者を保護するんだといって全然逆の結果に陥るおそれがあるんじゃないかなと思いました。

○黒沼座長

阿部委員、お願いします。

○阿部委員

別に論点の中身に反対というわけではないのですが、なぜ、ライツ・オファリングについてこれだけ期待が高まっているかというと、恐らく会社法改正が進みますと第三者割当増資が非常に使いにくくなる可能性があり、場合によっては、事実上できなくなるおそれもあるので、資金調達、増資の方法としてこちらに注目が集まっているということかと思います。現実のニーズがあるということであれば、今、現行制度下でも使えると思ってはいます。それを使いやすくするための制度整備はわかるのですけれが、もしかしたら、万が一、と不正が生じた場合の話をして、規制をかけていきますと、こちらも使いにくくなってしまいます。非常にその辺は懸念しておりますので、ぜひとも実際に使えるものにするということを前提にご議論願いたいと思います。

○黒沼座長

ありがとうございます。

あまり時間がないんですけれども。上柳委員、お願いします。

○上柳委員

すみません、同じようなことかもわかりませんけれども、こういう制度改正なり、あるいは規制緩和が必要だということを私も思いまして、それで実質的に目論見書交付にかえて公告あるいは通知という手段があり得るというのも理解しているつもりです。

ただ、やっぱり濫用例ばかりあまり考えてもしようがないのかもわかりませんけれども、濫用例だけではなくて、金融証券取引法の建前というか大きな枠組みのところ、つまり、目論見書交付義務があるということ、それから、いわゆるコミットメントをされる方には引受け責任があるというところはあまりいじらないほうがいいんじゃないかというふうに思っています。当初のペーパーを交付するというところは簡略化されても、それを目論見書に書くべきような事項を会社、発行者が、あるいは引受人が考慮されるということは重要ですし、そこに何らかの虚偽なりあるいは問題点があれば、もちろん口座管理機関だけで責任を負えとは私も思いませんし、そこは石黒先生の意見に賛成ですけれども、とはいっても、金商法の体系自体は崩さないほうがいいと思います。

○黒沼座長

ありがとうございます。

松崎さん。

○松崎委員

個別の論点のお話について大分議論が尽くされているんじゃないかと思いますので、基本的な方向性については賛同いたします。

ライツ・オファリングに関しましては、私どもでも去年、その前ぐらいからやはり選択肢の一つとして企業に使いやすくして頂く、そういう制度だとかというのが必要だということで、いろんなことをやらせて頂いておりますし、ご紹介頂きましたように、その一部として私どもの制度も既に去年の段階で改正をしているところでございます。

それで、こういったことをやっている中で感じておりますのでは、これぐらい会社法、金商法、それから私どもの規則、あるいは協会さんの規則もあるかもしれませんし、そういうばらけているものと、それから、レベルが法律マターのもの、あるいはもう少し自主規制ルールのもの、もっと言うと実務慣行みたいなものとか、こういう部分とかにかかわっている課題というのは本当になくて、結構進めるのが難しいなというか、なかなか進まないなという感じを、正直しております。

そういう意味では、大きく課題は2つあって、1つはとにかく日程を短縮する。可能な。あまりにも、やはり今、日程が長過ぎるのでというお話があります。ですから、この部分で、会社法のところもぜひ何とかしていきたいと思いますし、私たちのほうもそういう発言をしてきております。

それから、もう1つは、やはり本格的に利用されるということになればコミットメント型、ノンコミットメントのものは1つ事例がございますけれども、やはり本格的に普及するということになればコミットメント型が待たれるところということですので、その辺についてのルール整備なり実務慣行の確立というところが必要だということかと思います。ここはもうご承知のところかと思うんですが。

それから、さらに実務慣行の部分も、かなり日程の部分にしても、先ほどから出ています証券会社の引受けをやる、あるいはコミットメントしない証券会社の扱いとか、かなりそういう部分もありまして、そうしますと、関係者が非常に多いというところでございますので、申し上げたいことは、このアクションプランの中にも盛り込んでもらったことは大変すごくいいことだと思っておりまして、その辺の全体的な部分についての金融庁さんなり当局のイニシアチブといいますか、それを大変期待をしておりますので、その点だけちょっと申し上げたいと思います。

○黒沼座長

ほかにいかがでしょうか。

三浦さん。

○三浦委員

2点だけです。事前勧誘に関連して、既存の株主の方の行使という面も、大株主の方が行使して頂けるのかという確認はもちろん大事なんですけれども、最終的には行使されなかった部分について証券会社は販売をいたしますので、そのときに大口で買って頂ける方がいらっしゃるのかといったところの確認については、通常の引受け以上に当初からコミットをいたしますので、証券会社としては市場の需要の状況を知るというインセンティブが強く働きますので、ここのところについてはぜひご検討頂ければというふうに思っております。

もう1点は、これは金商法の関係ではないほかの論点についても石黒先生のほうのメモに入っているんですけれども、株主全員に割当てたときに、割当てた株式を新株予約権を取得して頂く、もしくは新株予約権の行使によって株式を取得した際に、その国の登録や届出、もしくは継続開示をしなければいけないというような要請が働く場合に、株主割当の範囲の中で、そういった地域にいらっしゃる株主への割当てを避けられるのかといったところが非常に大きなポイントとしてなっていまして、特に、委員の皆様はよくご存じなんですけれども、アメリカだと10%以上の株主がいるときだと、アメリカでの継続開示だとか登録が必要になってしまうというところが非常に大きな論点になっていますので、ここのところは他省との議論も必要な部分になるんじゃないかなというふうに思っております。

以上です。

○黒沼座長

ありがとうございました。

今の問題って金商法で解決できるんですか。

○古澤企業開示課長

F4のファイリングの話だと思いますが、この点につきましては、金融庁から、6月だったと思いますが、会社法の改正の議論の中で提起させて頂いて、法律のレベルで解決するのか、それとも別の解決方法があるのか、諸外国はどうしているのかといった点について議論が進められるものと考えてございます。

○黒沼座長

いろいろとご意見を頂きまして、改めてこの問題が非常に難しいということがわかりました。

皆様から頂きましたご意見等につきましては、事務局のほうで整理をさせて頂いた上で、次回、これまでのご議論を踏まえ、本ワーキング・グループとしての報告の取りまとめに向けた議論をさらに頂きたいと存じます。

予定の時刻を超過しましたので、本日の審議はこれで終了させて頂きたいと思います。

次回の日程につきまして、事務局からご連絡をお願いします。

○古澤企業開示課長

次の日程ですが、既にご連絡したとおり、12月17日、来週金曜日の10時から12時まで予定してございます。今日ご議論頂いたことを整理した上で、基本的な方向性と、それから実務を動かしていく上での論点とを切り分けながら先の進め方をご相談させて頂くことになると考えております。引き続きよろしくお願いいたします。

○黒沼座長

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させて頂きます。

どうもありがとうございました。

(以上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3665、3669)

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