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会計監査の在り方に関する懇談会(第3回)議事要旨

1.日時:

平成28年1月27日(水)15時00分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

3.議題:

今後の会計監査の在り方について

4.議事内容:

議論の要旨は以下のとおり。

  • 監査法人の機関設計については、パートナーシップ制のもとで強い法的制約が課されていない中、各監査法人において工夫をこらしているところであるが、そのことが外部から見た分かりづらさをもたらしている。監査法人のガバナンス・コード(以下「コード」という)を導入することにより、共通の物差しによる監査法人の比較が可能となり、透明性の向上による監査法人のマネジメントの強化や切磋琢磨につながるのではないか。

    このため、上場会社の監査を一定数以上行う一定規模の監査法人については、実施している監査業務が多く、利害関係者が多いことも踏まえ、コードを義務付け、日本公認会計士協会(以下「協会」という)の品質管理レビューによってその実効性の確保とガバナンス向上につなげるべきと考える。それ以外の監査法人については、個々の監査業務を直接チェックすることによって監査の信頼性を確保すべき。

  • コードの導入に賛成。監査法人がその責任を社会に対して宣誓することになるため、透明性の向上につながるとともに、監査法人にとっても自己規律として機能するのではないか。

    ただし、具体的な品質管理の推進に当たっては、各法人が品質管理基準に沿って必要な体制を整備し、その運用状況について、企業の内部統制報告制度と同様、自らチェックするシステムを構築することが必要。多くの監査法人が何らかの形でそういったことをやっていると思うが、運用状況をテストするといったところまではやっていないと思われる。業界全体としてそういった取組みを行うことを打ち出して、ある程度標準化した形で進めていくことが、実際の品質管理に役立つのではないかと考えている。

    協会による品質管理レビューや、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という)による検査においては、まずはそうした監査法人の内部統制やその運用状況をチェックの対象とすべき。

  • コードについて、協会で取り組むという姿勢は大変良いと思うが、協会の自主規制の中でこれだけ大きな会計不正事案の発生を防げなかったこともまた考えなければならない。従来のやり方の延長線ではマーケットの信頼を得るのが難しいのはもちろん、監査の品質が実質的によくなるという担保も得られないのではないか。

    現在は有事と認識しているが、有事の際は、従来のやり方で良かったのかということを徹底的に考えなければいけないし、色々な人からの意見を聞くことも必要。これに鑑みれば、コードについては、市場の信頼を取り戻す観点から、監督官庁である金融庁がリーダーシップをとって、幅広い外部の眼を入れて策定することが必要ではないか。

    コードの適用によって、対象となる監査法人のガバナンスのレベルを一般企業と比しても遜色ないレベルにまで引き上げることが重要であり、その実施状況が外から分かりやすい形とすることが必要。

  • マネジメントやガバナンスの議論の中核に内部統制の議論があると考えているが、内部統制の一番重要な要素はトップの意向、つまり統制環境である。企業であれ、監査法人であれ、組織体の責任ある立場の人が、本来負っている役割を明確に自覚し、それを有効かつ効率的に推進していくために必要な一連の仕組み、プロセス、手続、これを内部統制と言っているのである。一般事業会社で起きている不正の多くは、まずはそこにメスを入れないとならないのではないか。

    もう1つの視点は、何か問題が起こったときに、情報が適時適切に上がってきて、然るべき是正策や対応策が講じられるような、風通しのいい組織環境であるのかどうか。最近の事案を見ても、監査法人の中で、各人が共通認識・同じ価値観をもって対応するということができていないのではないか。そこにメスを入れなければならないことを考えると、コードをある程度一律的な形で導入すべきことは否定できないと思う。

    ただ、資本市場の健全性を担保するという観点から見た場合、上場会社・公開会社の信頼性を担保することが重要であることから、大手監査法人・準大手監査法人という区別ではなく、公開会社の監査を担っている監査法人について、一定レベル以上の規制が必要になってくるということではないかと思う。

    日本は監査法人の数が非常に多い。例えば、将来的に監査法人のローテーション等を検討する時期がきたときに、健全な競争関係の中でお互いに質を高めることができるような環境を整えるためには、ある程度の数の質の高い監査法人が揃っていなければならない。ただし、国際的に活動する公開会社の監査を行う場合、監査法人においても国際的な対応が可能でなければならず、国際的な監査事務所のネットワークと何らかのパイプが求められてくるであろうと考えると、そのような監査法人が20も30も存在するということはまずない。この意味で、中規模の監査法人の数が増えても意味はない。

    このような、国際的に活動する公開会社の監査を行うような監査法人については、国際的に見て遜色のない規制を働かせることが必要ではないかと思う。他方、それ以外の監査法人については、アメリカでは米国公認会計士協会(AICPA)が品質管理を担っているように、協会の自主規制の中で大半を担うということはあるのかなと考えている。このような棲み分けについて、審査会と協会との役割分担の話とも絡めて考えていく必要があるのではないか。

  • 資本市場の情報の信頼性確保のため、上場企業には一律の監査品質が必要。現在は、まず協会の品質管理レビューがあり、これは改善していかなければならないが、この品質管理レビューを審査会検査で補完する仕組みとなっている。そして上場会社の監査を実施する監査事務所については、協会の上場会社監査事務所登録制度のもと、一定の品質を確保している。 そこからどうやって品質管理を向上させるかを考えたときに、多くの企業の監査を行っている監査法人については、その監査業務の全てをチェックできるわけではないので、コードによって監査法人のガバナンスをしっかりさせることが必要ということではないか。他方、例えば1社しか上場会社の監査をしていない監査事務所については、監査業務について直接チェックするという形になるのではないか。

  • 監査法人のマネジメント、あるいはコードの問題について、品質管理との関係が大事であることは否定しないが、単にそれだけの問題ではないのではないか。監査法人という組織体は元々パートナーシップから始まっており、構成メンバーが士業のみであることもあって、時として一体感がなくなることがあるなど、ある意味マネジメントしにくい特殊な組織なのではないか。

    他方、実際の組織体をみると、公認会計士で数千人、パートナーだけでも数百人といった規模の監査法人があり、単なるパートナーシップではマネージできない組織体にまで膨れ上がっているという現実があるにもかかわらず、必ずしもマネジメント経験の豊富な人物がマネージしているわけではないということもあるのではないか。

    確かに、上場企業を監査する全ての監査法人には一定の品質管理が必要で、そのため必要な組織体としての原則があると思うが、組織体として機能していくことは、大きな組織になればなるほど、より必要になってくるし、その必要性と現実とのギャップは、規模の大きい監査法人ほど大きくなっているのではないか。

    今の公認会計士法が、監査法人に関してパートナーシップの延長のような規定しか設けていないということも根底にあるとは思うが、大手・準大手はやはり他の監査法人とは異なっており、単に品質管理だけでなく、組織体を機能させるためには何が必要かという視点も追加されるべきなのではないか。

    また、誰がコードの策定を担うべきかという点について、今の状況を考えると、公認会計士だけで議論するのは建設的とは思えない。例えば企業等の大組織のマネジメント経験がある方の意見なども吸収しつつ、より幅広い観点で策定すべきではないか。

  • 監査業務自体の品質を高めようとする品質管理の話と、監査法人を大きく企業体として捉えてガバナンスを確立する話とを区別して考えるということではないか。

  • コードを作ることについては、意味があるという考えならば進めればいいのではないか。ただ、監査法人のマネジメントの強化という大きな目的を掲げて、いざコードを作るとなると、イギリスもオランダもそうだが、非常に総花的で焦点がぼけてしまうということがある。

    今、資本市場が直面している会計監査の最大の課題は恐らく3つあって、第1は監査業務の品質を適切に確保し、監査法人としてそれをチェックしていくということ。第2は、そのチェックの中で何らかの問題が見つかった場合、メンバーの一部もしくは全部を入れ替えるといった人事管理上の意思決定を法人として適切に行うということ。第3は、それらの情報をできる限り被監査会社の株主に伝えて、彼らが当該監査法人と契約を継続するかどうかを判断できるようにするということ。この3つに焦点を絞っていくことが一番求められているのではないか。

    従って、監査法人のマネジメント強化を掲げてコードを作るのは結構だが、目標をもう少し実務的なレベルにまで下ろして、その目標に合わせてコードを作っていくという姿勢が必要だろうと感じている。

    ただ、コードを作ることで監査の品質が急によくなるという話だと、これまで何をしてきたのかということにもなりかねない。むしろ、第2・第3の論点、つまり、必要な場合に担当者をどうするかとか、被監査会社の株主に対してどのように情報を与えて彼らの監査人選任の判断に寄与していくかというところに光を当てながら、コードを考えていくという姿勢が必要だろう。

  • コードを作って監査法人のガバナンスを利かせていくという方向性はよいが、その実効性をどう上げていくかということが重要。問題のあった監査法人の業務改善計画を当局がモニタリングしていく中で、これを1つのモデルケースとして、コードと照らし合わせてこのように実効性上げていくということをマーケットに示すことができれば、コードの具体的なイメージが伝わっていくのではないか。

  • 私は監査法人の人に冗談で、他の監査法人のレベルをチェックするビジネスを始めたらどうかと言うことがある。前回ご指摘のあったAQIという監査の品質を測定する指標、これは一種の格付けのようなものだが、それが難しいのであれば、一種のビジネスとして監査のレベルをチェックして、被監査会社の株主に伝えるようなやり方も考えられないことはないなと漠然と思っている。

  • 今おっしゃった監査の評価専門会社のようなものは、協会の品質管理レビュー等がある意味でそういった役割を担っており、レビューの結果は、会社の監査役等に伝えられる仕組みとなっている。コーポレートガバナンス・コードでは、監査役等は外部会計監査人の評価を実施しなければならないとなっているところ、そうした判断の材料となる情報を提供していく仕組みが必要ではないか。

    審査会の検査結果は、各監査法人が審査会の承認を得て、担当会社等に説明するために開示している。一方、米国公開会社会計監査委員会(以下「PCAOB」という)では、検査の結果について、内容を限定して公表しており、参考になるのではないか。

  • PCAOBでは、個別の監査のレビューを実施した場合にはそのコメントを公表する一方、監査法人の品質管理に関するコメントは直ぐには公表せず、一定期間のうちに改善がなされなければ公表する方法を取っているものと理解している。そうしたやり方も参考にしつつ、日本においても検査結果の公表について検討していく必要があるのではないか。

    監査報告書の透明化について、現在の監査報告書には、財務諸表の適正性や監査の方法以上の情報が含まれていない。株主等が必要とする情報として、1つの例を挙げるとすれば、監査人として適正意見は出しているが、どこに重要なリスクがあり、それに対してどのように納得したかの情報ではないか。ただし、そういった情報を監査報告書に盛り込むことを制度化するには、更なる検討が必要。

    監査人と監査役会等とのコミュニケーションは充実してきていると思うが、監査のリスクはどこにあるか、どう評価するかについて、監査役等と監査人がそれぞれの見方をぶつけ合って議論することが重要であり、例えば両者が揃って取締役会に説明する機会を設けることも考えられるのではないか。

    また、監査終了時には、監査人から監査役会等に報告するケースが多いものと考えられるが、監査の結果に加え、監査の過程で気付いた重要事項や、内部統制の状況、用いられている会計方針の妥当性等について、監査人から取締役会に直接報告することも意味があるのではないか。特に社外取締役はそうした情報を必要としているのではないか。

    監査人と取締役会の接触を増やしていく先に、監査報告書の透明化・長文化といった議論があるのではないか。

  • 現行の有価証券報告書の情報は、普通の一般投資家から見て、あまりにもボリュームがあって、難しく、煩瑣であると感じており、この上更に情報を増やすという流れについては賛成しかねる。ただ、世界の潮流として会計監査に関する株主等への情報提供の充実が問われるのは、会計業務の内容もそうだが、特に監査は専門性が高く、守秘義務ともあいまってその内容が殆どブラックボックスになっており、表に出てくるのは1・2枚程度の監査報告書であり、それに対して高額の報酬が支払われているということが、株主を中心とした投資家からは納得しがたいものがあるということではないか。

    監査報告書の透明化・長文化についても、あまり賛同するものではない。不特定多数の投資家向けに財務諸表を保証する監査の場合は、短文式、つまり適正か否かで十分であり、それに対して全幅の信頼をもって投資行動をしてもらえればよい。ただ、アナリスト、機関投資家や格付機関等、更に専門的な市場関係者には知らしめるべき情報もあるだろうと思うが。

    今回の事案に即して、企業不正に対してどういった抑止力が求められるのかと言えば、日本の法制度の中では監査役が会計監査人の監査の方法と結論についての相当性を判断している以上、監査役が機能しなければ、特に粉飾と呼ばれるような経営者が絡んだ不正はなくなることは絶対にない。

    ここ約10年間のアメリカのデータを見ると、不正はたくさんあるが、粉飾の過半はCEOかCFO、つまりトップが必ず絡んでいる。そこにメスを入れないと駄目で、会計監査人の作業に対して監査役がどのようなコミットメントをするか、あるいは会計監査人とどのように協働していくかの制度対応をするべき。

    情報提供という点では、審査会検査や協会による品質管理レビューの結果は、必ず監査役に報告され、全社的に共有されているので、そのレベルで十分なのではないのか。

  • 企業側に様々な場面で透明性や説明責任が求められるようになっているのは、一般投資家がそうした情報を求め、活用したいという流れがあるのだろうし、そうした流れは広がっていくのではないか。監査で留意した事項等に係る情報についても、一般投資家の中にも適切に利用できる方はいるのだろうと思う。監査がブラックボックスになっているという指摘もある中、どのような監査が行われたのかの情報は、特に機関投資家にとって相当有意義な情報であると考えられる。監査法人が説明責任を果たして、利害関係者が情報を活用できるようにする必要があり、そうした観点から、監査報告書の長文化について検討すべきではないか。

    監査人の交代やその理由に係る情報も株主にとって重要。監査人が交代した場合、企業はその理由・経緯について、監査人の意見も含めて開示を行うこととなっているが、その内容が定型化・形骸化している。殆どが任期満了に伴う交代とされており、監査人からも意見が出されていない。この部分について実効性を向上させるための制度的な手当がなされれば、かなり効果が期待できるのではないか。

  • 会計の世界でも会計方針の変更があった場合、変更理由を注記するが、当初、複数認められている処理の中でなぜその処理を選んだのかの開示はなされない。これは情報としては十分ではないと思っている。監査についても、監査人の選定理由の開示を積極的に主張するわけではないが、監査人の交代時に理由の開示が行われるのであれば、選定時にもその理由の開示が行われなければ、整合性が取れないのではないか。

    大手の監査法人が契約を継続しない場合、表向きの理由は任期満了であっても、実はリスクが高い、コストが合わない等の理由があり、そうした監査の契約を中小監査法人等が請け負っているようなケースがある。上述のとおり、監査人の選定理由の開示を積極的に主張するわけではないが、そのようなケースを念頭に置いた場合、監査人の交代の理由の開示が求められるのであれば、選任の理由の開示もないと不十分なのではないか。

  • 株主への情報提供の充実については、その情報を株主が求めているかという観点とともに、問題があったときに誰が歯止めをかけるのかという観点があるのではないか。すなわち、問題があれば本来は監査役等が対応すべきで、それは適切に機能しているという意見もあったが、最近の事案をみると、結果的に機能しなかった。そういった場合、株主が歯止めにならないと他に歯止めになる存在がいないし、監査法人を変えるという議論が起きているのも、最後は企業が株主の目を気にしているからという面も大きい。こうしたことを踏まえれば、株主が情報を必要としているかどうかとは別に、最後に歯止めをかける存在として株主に期待を置くかどうかという政策論の議論があるのではないか。

    また、監査人の交代時の開示は、企業側が監査法人の意見を含めて開示する制度となっている。過去には、必要があれば協会がタイムリーディスクロジャーのような制度を作って、監査法人が自ら意見を述べるような開示手段を設けてはどうかとの議論もあったと思うが、そういった可能性はあるのか。

  • 現在、企業の適時開示の中で監査人の意見を開示する仕組みとなっているのは、守秘義務の解除の問題があるため。この問題を何らかの形でクリアできるのであれば、協会や取引所等を活用した情報開示も十分に考えられるのではないか。

  • 有価証券報告書の開示内容としてどういったものがよいかというと、大きく2つあると考えている。1つはなぜその監査人を選んだのかということ、もう1つはその監査人と企業、特に監査役等との活動の様子である。

    1点目の監査人の選任理由について、企業に対して、監査法人のマネジメント、経営スタイル、教育等をどのように評価して選んだのか、自分たちが必要とする監査とはこういうもので、それに基づいて監査法人のどの部分を評価して選定したのか等、踏み込んだ開示を求めるべきではないか。そのレベルまで到達すればかなりの波及効果があり、監査法人のガバナンス・コードに係る議論や、コーポレートガバナンス・コードにおける監査役等の役割等とも相まって、この開示の意味が出てくるのではないかと思う。

    2点目の監査人・企業の活動の様子に関して、海外の動きも踏まえて監査報告書の長文化を導入するのであれば、マーケットは歓迎するものと思う。

    また、審査会の検査結果について、被監査会社の監査役等への開示が可能との話があったが、審査会検査の対象となる被監査会社の数はそれほど多くないので、審査会の検査について知らない企業も相当数あると思う。となると、PCAOBのやり方も参考にしつつ、企業の監査役等に対して監査法人の情報が行き届く仕組みを考える必要があるのではないか。企業による開示や、審査会によるモニタリングレポートの作成・公表といった取組みが一体として繋がらないと、実効的な取組みとならない。

  • 確かに審査会検査についての理解が企業に浸透しているとは言えず、モニタリングレポートの作成・公表といった工夫は必要ではないか。

  • 監査業務に関する株主への情報提供を充実させるということの趣旨は、制度上画一的にローテーションを強制する前に、まず株主が十分な情報をもって監査人を選ぶ仕組みを整えるという、制度の建付けに根ざしている。従って、十分な情報を与えられた株主が判断して、結果的に悪い監査人を選んだとすれば、それは株主も相応の責任を負わざるを得ないということだろう。

    また、監査人の選任の理由を開示させろということだが、多くの会社は、監査人が特に素晴らしい仕事をしてくれるから選ぶというよりも、品質が悪くないといった消極的な理由で判断するのではないか。例えば大きな監査法人であれば監査業務について同じ程度の品質が確保されているというお話だったが、それなら頼むほうもそう考えて頼むのだろう。それ以上何か特別な理由はあまりないのではないかと思われ、監査人の選任理由を開示しろと言われても困るのではないかと心配になる。

  • 公認会計士資格取得のプロセスや内容を見ても、不正を見抜く、あるいは防止、抑止するというトレーニングや、不正に関する試験問題なども殆どない。不正事案がなくならない現状を踏まえると、不正を見抜く力をつけるためのトレーニングや知見が必要ではないか。

    アメリカでは、相次ぐ不正を踏まえて1980年代に「不正な財務報告全米委員会」が設置され、不正を防止するための49項目の施策が講じられた。また、その翌年には民間の組織として公認不正検査士協会が設立された。公認不正検査士という資格は日本でも取得でき、公認会計士や内部監査人、弁護士が取得している例が結構あると聞いているが、ヒアリングの方法、質問の作り方、犯罪心理学など、興味深い内容が多い。そのような不正に対応する能力を向上させるプログラムを実務補習やその後のCPE研修で義務化するくらいの取組みが必要ではないか。その際、様々な技術革新が起きるので、5年や7年ごとなど、定期的な講習の受講を義務化するなどの施策も必要ではないか。

    もう1つは感度を磨くということ。同じ現象を見ても、何も疑問を感じない人もいれば、疑念を抱いてもそれ以上深堀りしないという人も結構いる。このためには、監査人が不正や粉飾を見抜けなかった過去の事案を整理して、監査人全員が共有して失敗から学ぶ環境を整えるしかないのかなと思う。加えて、監査法人の中で、マネジメントの一環として、不正に対しては絶対容赦しないという強い意識を植えつけるということが重要ではないか。

  • 監査法人による組織的監査に当たっては、監査チームを適切に編成し、品質管理を厳格に行うことが重要。品質管理においては、指揮命令系統や職務分担を明確にするとともに、監査チーム内でのコミュニケーションを図ることが必要であり、その中で現場でのオン・ザ・ジョブ・トレーニングを通じて不正に対する感度が養われていくものと思う。

    また、そういった現場での指導監督や品質管理は監査調書に基づいて行われることを考えれば、監査チーム内のコミュニケーションとともに、監査調書の重要性を徹底する必要。

  • 監査の感度やリスクに対する感覚を育てるには様々な方法があるとは思うが、やはり一番重要なのは上司のレビューを受け、その上の上司に更にレビューを受けていくというプロセスである。自分のやるべきことを完遂しなければプロフェッショナルとして認めてもらえないという環境が非常に大事。最近はそうしたレビューの厳しさが少し緩んでいるのかなという感じを受けている。

    また、特に不正事例の研修を改めて充実させなければならないと思う。個人的には、過去の事例を体系化していくとそんなに多くのパターンにはならないのではないかと考えており、例えばそうしたパターンについて学ぶ研修を協会で必修にする等、具体的な手当てを早急にとる必要があるのではないかと考えている。

    加えて、チームで監査をする以上、チームとしての力量・専門性が大事になってくると思う。被監査会社の業務、事業をよく知るという意味からは、その産業に詳しい人がチームに必ず入っていることが必要。また、ITや税務といった分野の専門家がチームに入るなど、チームとしての力量を適切に備えた形で監査に臨むということが必要不可欠。

  • 協会では多くの調査事例の蓄積があるところ、不正事例研修については、受講を必須にするかも含めて検討し、一層充実しなければならない。

    また、しっかりとした査閲を行うためには、監査時間・期間の確保が必要であり、精神論ではできない。例えば現行、決算短信、会社法、金融商品取引法の3つの開示制度がある中、決算短信は速報値としての位置付けであり、その後、監査を経た確定値が出て、その確定値を用いて株主が株主総会で議決権を行使する、これが通常の流れであり、グローバルスタンダードにも沿ったものであろうと思う。

    ところが日本の場合、決算短信を出す前に会社法の監査報告書が出ているケースが全体の4割もある。また、決算日から監査報告書提出日までの平均期間が、日本では42.5日であるのに対し、米国は57.8日となっている。監査報酬についても、協会の調査によれば、日本が平均6,100万円、米国は平均2億2,400万円となっている。こうしたところを是正していかなければ、会計士個人やチームの力量を公正に発揮させ、実効性ある監査を行うことは難しい。

  • 懐疑心の議論をするときは個々の担当者の懐疑心という理解が一般的だが、組織的な懐疑心が重要であるとの指摘が学会等においても出てきているので、こうした組織的懐疑心という考え方については是非強調していただきたい。

  • ローテーション制度については、その実態を知ることが重要であり、調査の実施に賛成。監査報酬について、日米でこのような違いがなぜ生じるのかということについても、どこかで調査をしていただきたい。

    また、審査会の検査と協会の品質管理レビューとの適切な役割分担について検討をすべき。現状はどうしても重複感があるので、品質管理レビューを補完するのが審査会であるという建付けも含め、品質管理レビューによって求めるゴールと審査会検査のゴールの関係について、抜本的な検討を行うべきではないか。

    監査法人に対する監督の枠組みについても是非検証をお願いしたい。現状、監査法人に対する処分として業務改善命令があるが、業務改善命令を出しても、監査法人が解散してしまえばそれが宙に浮いてしまうという状況になっている。そうした問題も含め、政策の建付けについて、これを機会に検討するのもよいのではないか。

    協会の機能強化についても是非取り組んでいただきたいと思うが、それに関連して、協会において監査手法や技術の開発に取り組んではどうか。監査の手法・技術は各監査法人のノウハウであり、各監査法人間の競争があるので、協会が開発するのには向かないという議論もあるが、監査において各監査法人共通に必要となる部分については、業界の底上げという観点から、協会が積極的に関与して開発のリーダーシップを取ることも考えられるのではないか。各監査法人はその共通部分の先で競争すれば良いのではないか。

  • 監査法人と企業との関係についていうと、長年の関係の中で、このような監査をすればいいといったような馴れ合いが形成され、それが監査を担当する会計士に浸透していたということが問題なのではないか。会計士の能力を高めること等も大事だが、監査法人のトップの考え方、哲学というものが一番大事。監査を受ける企業のトップにも問題があるので、監査法人のガバナンス・コードとコーポレートガバナンス・コードに、監査を受ける側・する側がどのような立場で臨むべきかということをしっかり書くことが大事なのではないか。

  • 品質管理のための枠組みや、監査に対する監督の枠組みを見直すのであれば、資本市場全体の信頼性確保のためにどういった仕組みが必要かという視点に立ち、様々な関係者の意見を聞きながら検討することが必要である。

    監査におけるITの活用については、協会においても取組みを行っているところであるが、国際的な整合性確保のため、国際的な意見交換をしながら進めていく必要があるものと考えている。

  • 協会の品質管理レビューと審査会検査、それぞれの比較優位がどこにあるかといえば、審査会検査については、法律の権限を背景としている点や、組織の風土や監査チームの組織といった組織の観点から検査を行う点に比較優位があるのではないか。そういったことを踏まえ、全体としてのリソースをうまく使う視点が必要ではないか。

  • 監査人の選定理由について、企業は何も書くことができないのではないかという指摘があったが、それはそのとおりだと思う。これまで企業が監査人を選定する際、大手だから安心といった程度の理由しかなく、監査法人の経営の中身まで興味を持たなかったことが様々な問題に繋がった面もある。今後は企業側においても、監査法人の経営のやり方、哲学等にもう少し注意を払って、自身の経営に活かしていくべきである。

  • 監査基準については、平成14年の抜本的な改訂において、職業的懐疑心や不正への対応といったキーワードが初めて入り、そこから品質管理基準や不正リスク対応基準につながっていったという経緯がある。今後の対応についても、そうした経緯を踏まえながら検討していく必要があるものと思う。

  • 監査人の選任理由の開示について、積極的に支持するわけではないが、交代の理由について開示するのであれば、整合性のために選任理由も開示すべきではないか。株主からしても、監査人の選解任に責任を負う以上、正しい情報開示があって然るべきであろうと思う。

    企業は監査人の選任理由を示すことができないという意見があるが、例えばグローバル企業の場合には海外の会計事務所との関係を有する監査法人がよいとか、金融に特化している監査法人がよい等の理由があるのであって、監査人の選任理由を示すことができないということはないのではないかと思う。

(以上)

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