家計の安定的な資産形成に関する有識者会議(第1回)議事録

1.日時:

平成29年2月3日(金)10時00分~11時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

 

【武田政策監理官】
 おはようございます。本日事務局を務めさせていただきます金融庁政策監理官の武田と申します。よろしくお願いいたします。
 
 本日は冒頭、カメラ撮影が行われます。今回の有識者会議につきましては、座長は神田先生にお願いをしております。それでは、神田座長、よろしくお願いいたします。
 
【神田座長】
 それでは、ただいまから「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」の第1回目の会合を開催させていただきます。
 
 皆様方には、大変お忙しいところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 
 このたびこの会議の座長を務めることになりました学習院大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。
 
 本日は越智副大臣にお越しいただいておりますので、最初にご挨拶をいただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【越智内閣府副大臣】
 皆様、おはようございます。金融担当の副大臣をさせていただいております越智でございます。皆様、本日はお忙しい中、こうしてお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」の第1回会合に当たりまして一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
 
 我が国の家計金融資産、1,700兆円の52%、900兆円は未だに現預金として保有され、そこから得られるリターンは低い状況にあります。高齢化が進む中で、老後の資金をいかに確保するか、また、勤労層の資産形成をいかに行っていくかは、我が国の重要な課題であります。
 
 このため、家計の金融資産をバランスのとれたポートフォリオに移行させていくことによって、家計の安定的な資産形成を促していくことが必要だと考えております。この観点から、金融庁としては、足元、様々な取り組みを進めております。
 
 まず、家計の安定的な資産形成を図るためには、金融機関が顧客本位の業務運営を行うことが重要であります。今後、先般公表しました「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」を確定するとともに、この原則を踏まえた金融機関の対応が形式的なものにとどまらないよう、顧客本位の観点に立った競争を行う環境づくりに向けて総合的な取り組みを進めていく必要があると考えております。
 
 また、こうした取り組みに加えまして、少額からの長期・積立・分散投資を通じた資産形成を広く普及させるための仕組みとして、平成29年度の税制改正大綱におきまして「積立NISA」の創設が盛り込まれたところでございます。今後、関連する税制関連法案が成立した場合には、対象となる商品の具体的な枠組みを決定することが必要でございます。
 
 更にあわせて、家計の金融・投資リテラシーの向上に向けて、投資初心者をはじめとする家計向けの実践的な投資教育などに取り組むこととしております。その際には、世代等の家計の属性に応じた効果的なアプローチなどについても検討を進めていくことが必要だと考えているところでございます。
 
 こうした取り組みなどを進めていくに当たりまして、長期・積立・分散投資の促進や実践的な投資教育・情報提供などについて皆様の御意見をお伺いしたいと考えまして、今般、「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」を設置させていただいた次第でございます。是非ご議論いただきたいと考えているところでございます。
 
 有識者皆様の是非とも活発なご議論をいただきたいと心からお願い申し上げまして、第1回目の冒頭でのご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、カメラの撮影の方々は、恐縮ですけれども、ご退室をお願いいたします。
 
(カメラ退室)
 
【神田座長】
 それでは、続きまして、事務局のほうからメンバーの皆様方のご紹介と運営要領(案)のご紹介をお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 有識者会議のメンバーの皆様をご紹介させていただきます。お手元に資料1、メンバー名簿をお配りしておりますが、まず委員の皆様をご紹介申し上げます。植田和男様です。
 
【植田委員】
 よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 神戸孝様です。
 
【神戸委員】
 よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 北澤千秋様です。
 
【北澤委員】
 よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 斉藤惇様です。
 
【斉藤委員】
 よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 永沢裕美子様です。
 
【永沢委員】
 よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 次に、オブザーバーをご紹介申し上げます。日本銀行の前川情報サービス局参事役です。
 
【前川オブザーバー】
 よろしくお願いします。
 
【武田政策監理官】
 厚生労働省年金局企業年金・個人年金課の青山課長です。
 
【青山オブザーバー】
 青山です。よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 消費者庁消費者教育・地方協力課の金子課長です。
 
【金子オブザーバー】
 金子でございます。よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 日本取引所グループの田端執行役です。
 
【田端オブザーバー】
 田端でございます。よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 日本証券業協会政策本部の石黒共同本部長です。
 
【石黒オブザーバー】
 石黒でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 投資信託協会の竹腰事務局次長です。
 
【竹腰オブザーバー】
 竹腰でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 日本投資顧問業協会より、三井住友アセットマネジメントの上山執行役員です。
 
【上山オブザーバー】
 上山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 全国銀行協会の岩本理事です。
 
【岩本オブザーバー】
 岩本でございます。どうぞよろしくお願いします。
 
【武田政策監理官】
 生命保険協会より、明治安田生命の荒谷常務執行役です。
 
【荒谷オブザーバー】
 荒谷でございます。よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 なお、事務局である金融庁の参加者につきましては、時間の都合もあり、お手元の配席図をもって紹介にかえさせていただきます。
 
 同様に、有識者会議の運営要領(案)についても、お手元の資料2をもってご説明にかえさせていただきます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。お手元の資料2の運営要領の案ですけれども、ちょっと見ていただいて、特に問題はないように思いますけれども、資料2のとおり、運営要領とさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。
 
 (「異議なし」の声あり)
 
【神田座長】
 ありがとうございます。
 
 それでは、続きまして、事務局からの説明に移らせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 本日の資料についてご説明いたします。お手元の資料の3をご覧ください。まず1ページ目をおめくりいただきまして、左下のグラフでございますけれども、我が国の家計金融資産約1,700兆の約52%、約900兆円が現預金であり、アメリカやイギリスに比べまして、株式・投信等の割合が低くなっております。こうした家計金融資産の構成の違いが一因となって、真ん中のグラフになりますが、1995年から過去20年間の家計金融資産の伸びを見ますと、アメリカは3.11倍、イギリスは2.27倍、これに対しまして日本は1.47倍と、我が国の家計金融資産の伸びが米英と比べて緩やかなものにとどまっているものと考えられます。
 
 1ページおめくりいただきまして2ページ目、例えば、左下のグラフになりますが、かつてはアメリカの家計におきましても、現在の日本と同程度の株式・投信等の保有比率にとどまっていたところでございますけれども、IRAや401Kプランといった税制優遇等家計の資産形成を支援する様々な政策対応を通じて、株式・投信等の比率が上昇し、家計金融資産も増加しております。
 
 右側の図になりますが、その結果、例えばアメリカと日本を比べてみますと、勤労所得と財産所得の比は、アメリカは概ね3対1に対しまして、日本は8対1程度となってございまして、アメリカは財産所得が家計所得に貢献する姿が実現しているところでございます。
 
 これらのことを踏まえまして、家計における資産形成を促すためには、政策的な後押しが必要と考えられ、金融庁といたしましては、積立NISA、実践的な投資教育、金融機関の顧客本位の業務運営の確立・定着等を総合的に推進しているところでございます。
 
 おめくりいただきまして3ページ目でございます。家計の安定的な資産形成に向けた取組みとして、まず、金融機関の顧客本位の業務運営の確立・定着につきましては、昨年、金融審議会市場ワーキング・グループの報告書におきまして、当局において、「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定し、金融事業者による受け入れを呼びかけることが適当とされたことを踏まえまして、本年1月19日にパブリックコメントを開始しているところでございます。
 
 金融事業者におきまして、ベスト・プラクティスを目指した主体的な創意工夫が行われ、形式でなく実質において顧客本位の業務運営が実現されるための環境整備が必要と考えられるところでございます。
 
 次に積立NISAにつきましては、昨年12月の政府・与党税制改正大綱におきまして、積立NISAの創設が決定されたところでございます。年間投資上限額40万円、非課税保有期間20年、投資可能期間20年、非課税総額800万円の非課税措置が決定されてございます。
 
 なお、対象商品につきましては、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に絞り込むこととなってございます。
 
 次に実践的な投資教育でございます。家計の投資に関する知識・投資リテラシーが深まるよう、実践的な投資教育を進めることが重要と考えられます。このため、投資初心者をはじめとする家計向けの実践的な投資教材を作成し、活用を促進することや、投資信託について、投資家の皆様が個々の商品を比較・検討し、良質な商品を選択することが容易となるよう、商品比較情報等をわかりやすく提供する方法等を検討していきたいと考えているところでございます。
 
 おめくりいただきまして4ページ目、こちらが現在パブリックコメント中の「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」の概要でございます。詳細な内容の説明につきましては、時間の都合もあり、省略させていただきます。
 
 もう1ページおめくりいただきまして、5ページ目でございます。こちらは、日米の投資信託を比較したものでございます。日本とアメリカの純資産額上位5銘柄を比較したところ、日本はアメリカと比べて純資産の平均が約1.1兆円と低くなっているほか、販売手数料の平均、信託報酬の平均、いずれもアメリカと比べて高い。一方で、収益率の平均はアメリカより低くなっております。
 
 左下でございますが、日米の投資信託を比較した場合に、日本はファンドの総数は増えてきてございますが、1本当たりのファンドの規模につきましては、アメリカと比べて違いが生じているところでございます。
 
 また、右側をご覧になっていただきますと、純資産額上位10銘柄を比較したものでございますが、アメリカはロングセラーの商品が多いことが見てとれると思います。
 
 1ページさらにおめくりいただきまして、次に積立NISAでございます。まず上の図になりますが、現行のNISAは着実に普及しており、平成28年9月末時点で、約1,049万口座、約8.9兆円の買付額がございます。ただ、緑の部分でございますけれども、積立によるものにつきましては約117万口座と、全体の1割程度にとどまってございますし、また、左下の円のグラフをご覧になっていただきますと、約1,000万口座のうち半数以上は非稼働口座、すなわち口座を開いたものの買付けが行われていない口座となっているところでございます。
 
 右になりますが、アンケートをとりますと、投資は資産形成に必要だと思うが投資を行わない理由として、まとまった資金がないとか、さらには、どのように有価証券を購入したら良いのか分からない、取引を行う時間的なゆとりがないといった回答が多くなっております。こうした点を踏まえますと、少額から投資できることや、積立投資の手法で投資できること等が家計の間に浸透していないことが課題となっていると考えられます。
 
 1ページおめくりいただきまして、投資の初心者を中心に少額からの長期・積立・分散投資による家計の安定的な資産形成を促進するべく、積立NISAを創設したいと考えているところでございます。例えば、左側の下のグラフをご覧になっていただきますと、これは1995年から20年間、仮に定期預金で運用していた場合を想定したのが緑の線でございます。定期預金だけで運用していたとすれば年平均0.1%のリターンにとどまっていたことになりますが、青と赤とでお示しをしておりますとおり、仮に国内の株・債券に半分ずつ投資していれば、年平均1.9%、国内・先進国・新興国の株・債券に6分の1ずつ投資していたならば、年平均4%のリターンが得られたという試算となってございます。
 
 また右側のグラフでございますけれども、これは保有期間を現行のNISAと同様の5年間にした場合と積立NISAの20年間にした場合のリターンを比べたものでございます。20年間という長期の保有期間をとることによりまして、投資の収益率が年率で2%から8%に収斂していくという試算が出てございます。
 
 なお、積立NISAは、政府・与党税制改正大綱におきまして、平成30年1月からの導入が決定されたところでございます。
 
 1枚おめくりいただきまして、積立NISAの概要でございます。非課税投資枠につきましては、年間投資上限額40万円、非課税保有期間20年、投資可能期間20年間とされているところでございます。
 
 投資対象商品につきましては、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託として、税制改正大綱には、信託期間が無期限または20年以上であること、毎月分配型でないことなどの要件が記載されているところでございます。
 
 投資方法につきましては、契約に基づく定期かつ継続的な方法による買付けに限定し、現行NISAとの関係は、選択制となっているところでございます。
 
 おめくりいただきまして、駆け足で恐縮でございますが、金融経済教育についてご説明いたします。平成24年11月、金融庁に金融経済教育研究会が設置され、その報告書を踏まえ 、平成25年6月、金融広報中央委員会の中に金融経済教育推進会議が設置されております。平成26年6月には、最低限身につけるべき金融リテラシーの内容を年齢層別に具体化・体系化した「金融リテラシー・マップ」が策定されまして、このマップを踏まえ、教材の提供、講師派遣、セミナー、イベント、コンクール、人材確保といった様々な取り組みが進められてきているところでございます。
 
 おめくりいただきまして、10ページ目、家計の金融・投資リテラシーの現状でございます。左側、アンケートによりますと、投資未経験者のうち、資産形成のための有価証券投資は必要ないと考えられている方が約8割いらっしゃいます。その理由としては、投資に関心がない、投資への不安・先入観がある、といった回答が多くなっております。
 
 また、右側、別のアンケートによるものですが、金融や投資に関する教育を受けた機会の有無につきまして、約7割の方が投資教育を受けた経験がないと回答され、そのうち約3分の2の方は、今後金融や投資に関する知識を身につけたいと思わない、とも回答されています。
 
 次に、11ページですが、こちらに、本日ご議論いただきたい論点をまとめさせていただきました。大きく分けて3つでございます。
 
 1点目、バランスのとれたポートフォリオの実現につきまして、我が国の家計金融資産の約52%が現預金であり、近年の状況を見ても現預金優位の状況が大きく変わっていない、米英に比べて株式・投信等の割合が低く、家計金融資産の伸びが低いほか、財産所得が家計に貢献できていない要因についてどう考えるか。
 
 2点目、長期・積立・分散投資の促進につきまして、投資初心者を中心として長期・積立・分散投資を促進するに当たり、平成29年度税制改正大綱に盛り込まれた積立NISAの位置づけをどう考えるか。
 
 3点目、実践的な投資教育・情報提供につきまして、家計の安定的な資産形成を促進するため、投資教育・情報提供の観点から、どのような取り組みが効果的か。特に投資に関心がない層や、平日に金融機関を訪れる時間的余裕が限られる資産形成層に対して、どのようなアプローチが効果的か。どのような主体による投資教育・情報提供が効果的か。
 
 こういった点についてご議論いただければと思います。なお、2点目、3点目の論点に関しまして、長期・積立・分散投資に資する投資信託の商品性について、また投資家が個々の投資信託を容易に比較・検討できるような商品比較情報等の提供のあり方等について、それぞれ、本有識者会議とは別に実務者等によるワーキング・グループを順次立ち上げまして、ご検討等いただきたいと考えているところでございます。
 
 以上で私の説明を終わります。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、今日は初回ということでもございますけれども、今事務局からご説明いただいた資料の最後のページ、11ページにあります3つの本日の論点というものについて、順番にご意見をいただければと思います。
 
 それで、最初は1です。バランスのとれたポートフォリオの実現ということで、長年言われていることではあるのですけれども、なぜ日本の金融資産は預金偏重になっているのかと。その要因は何かということでございます。資料についてのご質問でももちろん結構ですけれども、ご意見をいただければと思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。
 
 植田委員、お願いします。
 
【植田委員】
 それでは、最初でございますので、ちょっと広めになってしまうかもしれませんが、1番目のテーマについて思うところですが、まず、日本の個人のリスク資産への投資の割合が低いこと。これですけれども、特に過去20年、25年くらいをとると、ある意味では合理的な意思決定の結果そうなっているのではないかという面が強いように思います。事務局の作成していただいた7ページの資料では、20年持っていれば、リスク資産、かなりのリターンに回るという結果が一応出ているわけですが、これはまた別の分解をして、例えば日本株だけを20年持っていたらどうかという計算をしてみれば容易にお分かりになりますように、ほぼリターンは、過去20年で、昨日ちょっと見てみたんですが、配当の再投資を入れたとしましても、TOPIXで1.6%、再投資をしないとすれば0%台のリターン。したがって、預金の利回りとほとんど同じで、リスクプレミアムはとれていないわけです。もちろんこの間、アメリカの株を買ったり、エマージング諸国の株・債券を買っていれば、事務局の資料のようなリターンを、日本株と混ぜても上げることができたということでして、日本株はあまり買わなかったというのは個人の判断として合理的だと思いますし、逆に、外国株・債券に目がいかなかったという点は何か問題があるということだと思います。
 
 そこに関して考えてみますと、1つは、やはり情報の非対称性。日本以外の国の経済の状況について、個人の立場から情報を集めることがそう容易ではない。ここには後で出てきます教育の余地があるようにも思いますし、あるいは、むしろそういうことをプロとしてやっていらっしゃる業界の方々が、商品、例えば投資信託、こういうところの様々な問題についてもう少し突っ込んで考える必要があるように思います。
 
 さらに申し上げれば、日本の国内のリターンが非常に低いということの基本的な理由は、経済が20年間停滞していたということにあるわけでして、株も上がらないし、金利もその中で非常に低い。したがって、資産所得の所得に占める割合も低いということでしかあり得ないということだと思います。
 
 もちろんそういう中で、個人がもうちょっとリスクをとっていれば、経済の状況もひょっとしたら少しは良くて、リスク資産のリターンも良かったということはあるかもしれませんが、そちらのほうがリターンが低かったということの主因では無いように思います。
 
 アメリカも、ちょっと脱線になりますが、80年代後半から個人の株式所有比率等、上がっていったというデータがありましたが、これもひょっとしたら、60年代半ば以降、ずっとアメリカの株式市場は停滞を20年近く続けていまして、それが80年代に入って、レーガン政権のもとでさまざまな経済活性化策がとられた結果、株が上昇して、それもあって株式保有比率が上がったということもかなり影響したように思います。
 
 最後に、日本の家計はリスクをとっていないという姿に見られるわけですが、私の考えでは実はそうではありませんで、日本の家計は資産運用としてものすごく大きなリスクをとっている。それは何かといえば、住宅と土地を持っているということであります。これの総資産に占める割合は、ほかの海外、例えばアメリカと比べてもかなり高い。手元にあるデータで見てみますと、家計の債務の可処分所得に対する比率は、過去2、30年、大体アメリカを上回っています。ただし、例外がリーマンショックの前後でございます。
 
 ということで、非常に高いし、実物資産を持っていて、借り入れも起こしてそれを買っているということですから、リスクは非常に高いものをとっている。それもあって金融資産のほうではもう一つリスクをとれないという面も、ちょっとこの会議の話からはずれてしまうと思いますが、あるように思いました。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。斉藤委員、お願いします。
 
【斉藤委員】
 基本的には今の植田委員のお話と同じだと思うんですけれども、問いが何故みんなこういう金融資産を増やさなかったかとういことであれば、お答えは明確でありまして、金融資産に移したら利益が出なかったと。それがあまりにも厳然たる事実として見えるので、そこへ行かないということだと思いますね。
 
 だから、こういうアキュム型の企画をなさったということは大変素晴らしいことだと思うんですけれども、以前、小泉内閣のときに貯蓄から投資へという大テーマが打ち出されて、我々も少しアジテーションをやったわけですけれども、先日小泉さんに会って、あのテーマとおりにやった人は、やらなかった人に比べて大損したと。要するに、やらなかった人は賢かったと。こういう結果が続くと、当然金融資産は動かさない。じゃあ、何でそういう成績が出なかったかということを少し分析しなきゃいけないと。
 
 もちろんベースには投資資産の問題があると思います。先生が仰ったとおり、日本株はインデックスで見ても全然上がっていないわけでありますので、そこを改善する意味で、金融庁が中心になってコーポレートガバナンス等々をお入れになったと思いますし、これはこれでだんだんワークしてくると思いますけれども、ただ、そうは言っても、投資資産は何も日本株と誰も限っていなかったわけでありまして、成長したいろんな株。例えばアメリカでも、必ずしもグロースだけではありませんけれども、相当いいリターンを年金でも出している。ご案内のとおり、平均8%から7%。ノルウェーあたりでも8%を切るようだと責任者が首を切られるというような状況をやっているわけでありまして、要するに、ベースになる資産はグローバルに投資すればいいんですから、要は、そこをつないだツール、投資信託。つまり、投資信託の運用成績が悪かったということだと思うんです。特にそれを長期に保有したらリターンが出ます。この20年のアキュムレーションというのは私は知りませんけれども、ただ、バイ・アンド・ホールドで長期に持った一般的投資信託の成績はそれほど良くない。リスクをとっているわりには良くない。
 
 したがって、1つのここでテーマは、運用体制の透明化・強化というのが必要だと思うんですね。これは前から金融庁さんを中心に繰り返していらっしゃいますけれども、言葉で言えばフィデューシャリー・デューティーとか。
 
 アメリカでも、1970年ごろ、年金はがたがた、投資信託もがたがたでした。ニフティ・フィフティの後の投信というのは、元本割れ続出で、年金ももう駄目だと言われて、フォード大統領とカーター大統領のところで、フィデューシャリー・デューティー、運用責任というものが刑罰をつけて出されたと。これは非常に厳しい。当時、私、たまたま米国にいましたけれども、非常に厳しいルールで、しかもXデーをもって完全にぶち切るということをやりまして。例えば、モルガン・スタンレーの中でかつては運用もやっていたし、インベストメントバンキング、あるいはブローキングもやっていたんですけれども、完全に物理的に切らせたんですね。ダウンタウンにあった運用をミッドタウンに移しましたし、人事交流を禁ずる。インサイダー的情報の流れを完全に切って、違反した者に対しては罰則がものすごく厳しかったんです。
 
 そういうことをやって、運用の中立性というのを樹立したと。資本関係が同じであっても、少なくとも人材の交流とか、情報、そういうものの交流を厳罰でもって管理したと。運用側に私も外交していましたけれども、はっきり言うと、ものすごく怯えていましたよね。そのくらい厳しくアメリカは行ったんですね。そうやって年金を何としてでも立て直さないと、当時のアメリカはもう年金は払えないというところまでいっていて、そこからコーポレートガバナンスというのが生まれてきたんですけれども。
 
 そういう意味でいくと、日本の運用会社の完全独立性というものを作るということが1つあるんじゃないかと思いますし、テーマには既になっているのであれですけれども、販売会社が宣伝するというようなことではなくて、販売会社はベストパフォームのプロダクトを売ればいいのであって、自分の系列の商品をテレビに載せてやるのではなくて、完全に中立的なパフォーマンスを比較する組織というものを作って、それが情報を公表していく。そういうようなことが必要ではないかと思います。
 
 最後に一言だけ。1,700兆円のうち1,000兆円以上を60歳以上、65歳以上が持っているので、20年、今から積み立てるというのを考えますと、私、今、20年積み立てろと言われても、ちょっと躊躇するわけです。
 
 したがって、やっぱり対象が、実は500兆ぐらいの保有者の方が対象だということをよく考えていかないと、1,700兆のシフトというテーマだけでいくと、構造がちょっと違うんじゃないかというところはちょっと注意しなきゃいけない。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、永沢委員、北澤委員の順で、永沢委員、どうぞ。
 
【永沢委員】
 ありがとうございます。私は有識者と言うには、ちょっと自分としてそういう立場ではないと思っておりますので、本日、この宿題の論点をいただきましたあとに、周囲の方々にヒアリングをしてまいりました。集めました声を本日はまずご紹介させていただきたいと思っております。
 
 まず、なぜ52%、5割を超えて現預金にとどまっているのかというところなんですけれども、貯蓄から投資というメッセージが、2005年ごろから言われるようになり、マスコミを中心に広く行き渡り、金融業界でも大変この言葉をよく口にするようになったと思います。
 
 しかし、このメッセージがもしかしたら正しく伝わっていなかったのではないか、誤解を生んでしまっているのではないかという指摘がまず多く聞かれました。やはりお金がないと投資はできないのよねと思わせてしまうようなところが、この言葉の中にはある。そういう思い込みも与えたし、行動しない言い訳を与えてしまったというご意見が聞かれました。
 
 なお、この「貯蓄から投資へ」という言葉は、考え直す必要があるということでしょうか、金融庁のほうでは、最近、「貯蓄から資産形成へ」というふうに言いかえをされていますが、そうした動きは評価するというという意見がありました。
 
 それから、2点目ですけれども、植田委員からもご指摘がありましたけれども、金融教育の教材などを見ておりますと、資産形成の柱としてマイホームの取得というのがすぐに出てきます。何か資産形成するときにはマイホームを持つということが最大のゴールになっているような展開になっているものをよく見かけます。日本人の中では資産イコールマイホームという、そのような思い込みみたいなものが、(投資に向かわせない要因となっており、そうした教材のあり方が)今、この時代、正しいのかどうかというところも問い直す必要かあるのではないかというご指摘もありました。
 
 関連して、また実際、販売の現場で資産運用のお伺い(プロファイリング)ということをしているわけですけれども、選択肢の中に、(目的として)住宅取得のための資金か、教育のための資金作り、それとも退職に備えるのですかというふうに聞かれることが一般的ですが、退職後に備えるというような項目は、最後のほうに出てくるんですね。このような聞き方も、(退職後に備えた資産形成よりも)住宅資金や教育(のための資金作り)というところをリードするような営業を金融界全体としてやってしまっているのではないかというご指摘もありました。
 
 それから、先ほどの斉藤委員のご意見は、まさに私の持論も同じでございまして、おっしゃるとおりだと思っているんですが、販売金融機関にお世話にならないで商品を買うということは難しい現状の中で、セールスの方に依存せざるを得ないわけですけれども、セールスの方自身も成功体験がない方が結構いらっしゃるんですね。2005年ごろから貯蓄から投資へといわれるようになり、投資信託を中心として資産形成を考えようということでやってきたわけですけれども、そこで勧めた商品が(お客様に損をさせてしまって)成功体験を経験できなかったということもありまして、セールスの方も、10%も値上がりしたら、お客様にもういいでしょうと言って売らせてしまう。手数料稼ぎという意味だけではなくて、お客様だけでなくセールスも、成功体験がないものですから、失敗する前にやめてしまおうというところが傾向として強かった。その結果、長期で積み上げていくというところに繋がらなかったのではないかというご指摘もありました。
 
 それから、最後になりますけれども、これは私が最近経験して感じていることでございます。先ほど金融庁の資料でご説明がありました金融経済教育研究会には、私も神戸委員と一緒に最初から参加させていただいておりまして、この研究会に関わらせていただいたこともありまして、有志で「おとなの金融力ドリル」という自習用教材を作りました。研究会で提言された国民が身につけるべき4分野15項目に基づいた教材でして、このドリルを使って学習会をやっているのですが、そうした学習会をやっていて気づいたのは、(研究会で4分野15項目を決めた時に、委員として国民には)これぐらいは最低身につけておいて欲しいと思って決めたわけですが、そのレベルには実は達していないということに気づきました。投資以前に銀行預金についても、もしかしたら十分にご理解いただいていない。自分は理解できていないと分かっているけれども、それが分からないということを人に言えない。分からないことはやらないということが、1つ行動を起こさない理由になっているのではないかと思っております。
 
 金融に関する消費者教育に私自身携わっておりまして、金融トラブルに合わないためには、分からないものはやらないようにしましょうといつも言ってきておるのですが、しかし、実際にこんなに全く分かっていなくて、分からないからやらないということであるならば、果たしてそれでいいのか、合理的な経済活動ができるのであろうかというように感じることもありまして、私も(分からなくても、まずは少しやってみることも必要かもとお伝えすべきかしらと思案し)宗旨替えをしつつある状況でございます。携帯なり、自動車なり、そういったものというのは全部分かってから使っているわけではなくて、少しずつ使ってみて、理解して、自分の暮らしの中に良いものを取り入れていくということを、一般にしているわけです。そういった道具を使いこなしていくということが大事なわけで、金融商品というのもやはりそういうものであって、分かるまでは買わないのではなくて、少しずつちょっとやってみて、失敗しない方法というのを教わって少しずつでやってみることが必要なのではないでしょうか。そして、大事なのは、周りの人に色々尋ねられる環境、分からないことを分からないと平気で言えるような環境というのが必要なのではないかなとここのところ感じておりまして、後で金融教育のあり方みたいなことについても議論が及ぶと思いますが、そういった環境整備も、もしかしたら足りていなかったのではないかと思っております。
 
 要約しますと、政府からのメッセージの出し方、大変僣越ではございますが、少し国民に届いていなかったのではないかというところと、それから、国民の金融リテラシーは、金融機関や金融業界の方々、それから行政の方々が思っているレベルよりは、ずっと低いかもしれない。低いから悪いわけではなくて、国民が金融商品をうまく使いこなせる技術を身につけるというところもう少しエネルギーを費やしていく必要があるのではないかと感じているということを申し上げたかった次第です。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】
 ありがとうございました。それでは、北澤委員、神戸委員の順で、北澤委員、お願いします。
 
【北澤委員】
 この論点のバランスのとれたポートフォリオの実現というのを私流に解釈すれば、もっと資産運用しましょうというお話ですけれども、では、何で資産運用が家計にとって大事かという、そういう問題意識を広く共有するところからスタートをしなければいけないと思います。
 
 預貯金中心の1,700兆円の個人金融資産をリバランスするというのは、運用リターン高めようという話です。ざっくりな話ですが、リバランスで金融資産のリターンが1%向上すれば17兆円の国富が生まれます。その恩恵は、家計にとっては老後の安心とか生活の安定というものに繋がると思いますし、企業は消費の拡大を期待でき、国は税収の増というのも期待できるかもしれない。
 
 投資や資産運用というのは金持ちがするものだというのは誤解で、金融資産のリターンを向上するということは、家計を含めて国全体にとって、誰にとってもマイナスではない、プラスのことだと思います。これから高齢化社会がさらに進んで、金融資産がどんどん取り崩されていくその前に、早くポートフォリオをリバランスしてリターンを高めていく必要があると思います。こういう認識がもっと広く国全体に行き渡れば、資産形成の促進とか普及というのは大きな流れになっていくのではないのかなと期待しております。
 
 それから、資料にありましたように、各国とも制度の後押しがあって資産運用がその国に定着していったというのは、そのとおりであります。アメリカだけではなくて、カナダとか、オーストラリアとか、イギリスとか、各国そうだと思います。
 
 それはそのとおりで、それはどんどん進めていただきたいと思うんですけれども、こういう議論をするときに、往々にして、供給者の論理というか、上から目線になりかねない。政策の後押しがあるから金融商品を買ってそれでリターンが出なければ、個人が報われないというだけではなくて、資産形成の定着がますます遠のいていくということだと思います。
 
 これまで貯蓄から投資という政策が、1990年代、金融ビッグバンのあたりから声高に言われまして、それがなかなか上手くいかなかったというのは、実はこれ、片方の投資をしましょうというところしか言ってこなくて、国全体で、投資をしてもらった上で、ではリターンの方はどのようにを高めていくかという努力が足りなかったからだと思います。今、金融庁がスチュワードシップ・コードやガバナンス・コード、それから良質な金融商品を提供しましょうというフィデューシャリー・デューティーもそうだと思うんですけれども、日本市場の投資家リターンを高めていくという、そういう施策が打たれていると思います。
 
 資産形成の普及と市場リターン向上の努力を促していくというのは、これはコインの表裏だと思います。これまで片方だけを言ってきて、片方の努力が足りなかったということも、これまで貯蓄から投資というものがなかなか定着しなかった1つの理由かなと。民間の企業とか金融機関はもっと投資家のリターンを高めていく努力をすべきであるというのは、これは斉藤委員の仰るとおりだと思いますし、今やっていらっしゃる施策も継続して続けていくということも非常に大事なのかなと、個人的にはそう考えております。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。神戸委員、お願いします。
 
【神戸委員】
 ありがとうございます。まず最初に金融資産の構成比率の英米との違いという点なんですが、おそらく一番大きな理由は、英米と比べると日本のほうが格差が小さいということになると思います。一般的に富裕層になればなるほど保有金融資産に占める有価証券の比率は高まっていきます。アメリカの場合、今回ご説明いただいた資料で、一般の生活者は401k以外に有価証券をそれほど持っていたわけではありませんでした。401kが始まって、そちらのほうが順調に値上がりした結果、比率が上がっていったという側面はありますが、もともと個人金融資産の大半を富裕層が保有していたわけです。日本の場合は、英米と比べれば格差があまり大きくない中、中流層が基本的に預金中心に利用してきたという歴史があります。ドイツやフランスも英米と比べれば格差が小さい国ということになると思いますが、預貯金の比率は大体4割程度です。日本の50%強というのはさすがに高過ぎるとは思いますけれども、英米並みではなく、独仏並みの比率が目ざすべき一つの目安になるのではないかと思います。
 
 日本が特にドイツやフランスと比べてもさらに比率が高い背景には、間接金融が中心で、預貯金を増やそうという努力をかつて国が行ったということがあると思います。今日も出席されておられる金融広報中央委員会さんは、ご存じの通り、スタート時は貯蓄増強中央委員会というお名前で、こちらが中核となってマル優制度も活用しながら貯蓄を増やしてきたという歴史があり、それが大変上手くいった結果、預貯金を中心に個人金融資産が積み上がっていったということで、ドイツやフランスよりも更に高い比率になっているのではないかと考えられます。
 
 預貯金で運用されてきた方々は、かつてはそこそこの利率の収益を得られましたので、その成功体験というのがありますが、皆様方が仰るように、株式ということになるとあまりいい記憶が無いという日本人が多いのではないかと思います。
 
 私も、永沢委員と同じように、有識者というのには自分はあまり当てはまらないと感じているのですが、ファイナンシャルプランナーとして実務をやっておりますので、生活者の方々の考え方とか行動についての実務者という立場でお話しさせていただくと、一般的には投資という言葉を聞いた場合、多くの方々は日本株を想起されるんですね。日本株を想起したときに、バブル崩壊の後遺症もあり、あまり良い記憶がないということと、今後人口が大きく減っていく可能性が高い日本の国自体の成長性というのをあまり肯定的にとらえにくい、本当に日本株は有望なのかと考える状況の中で、資金のシフトが起こらなかったということもあると思います。
 
 貯蓄から投資へというスローガンの投資を今回、資産形成ということばに変えられたのはよかったと思うのですが、他の委員会でもお話しさせていただいたことがありますが、スローガンとしては「国内から海外へ」という方が伝わりやすかったかなと思っております。投資の本質というのは成長と分散にあると考えられ、成長についても、分散についても、おそらく日本人にとっては海外の部分が重要になるというのは、多くの方が納得しやすいと思うんですね。納得感があれば定着していったのではないかと考えられますが、その納得感が感じられなかったというところも影響しているような気がいたします。
 
 あと、教育の部分としては、逆説的に聞こえてしまうかもしれませんが、日本人の金融リテラシーは決してそれほど低くはないと私は思っています。例えばバブルのころ、非常に金利が高い時期に、ワイドへの預けつけ騒ぎとか、あるいは定額貯金で郵便局に行列ができたということがありました。そこまで頑張って預貯金を活用しようとする国民のリテラシーが低いはずはないと思います。あるいは、先ほど植田先生からもありましたが、貯蓄から投資へという言葉に従って株を買わなかったのも結果から見れば正しかったのではないかということを考えても、金融全般に関するリテラシーは低くはないのではないかと思うわけです。
 
 ただ、確かに、金融リテラシーの中でも投資に関してだけは、投機的な行為を投資だと思っている方が大変多いと感じます。投機的な行為というのは、タイミングと相場観こそが最も重要といった考え方で、当てもの的なイメージにもつながるわけですが、そういうものはあまりよろしくないという感覚を日本人は持っているのではないかと思います。一方で、家庭でも学校でも会社でも、額に汗して働くことが美しい、不労所得いかがなものかと教わり続けてきたわけです。投資・運用というのは、ある意味不労所得の分野に入りますので、あまり良いイメージがない、なかったということです。それに加えて先ほどお話しした通り、投機的な行為が投資だと思っている方が多いので、自分も投資しよう、あるいは金融資産をシフトしていこうという気持ちになりにくかったのではないかと考えております。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次の論点についてもご意見いただきたいと思いますので、資料の2番目の論点は、長期・積立・分散投資の促進ということです。とりわけ今回の税制改正大綱に盛り込まれました積立NISAというものの今後の生かし方というのでしょうか、位置づけ等についてご意見があれば是非お願いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ、北澤委員。
 
【北澤委員】
 長期の資産形成を促進する仕組みとしては、個人型DC、これは今回ほぼ誰でも入れるようになりましたし、あとは来年から積立NISAが始まるということで、これを2本柱として位置付けてよいと私は考えております。どちらも積立投資の制度で、投資の初心者にとってかなりハードルが高いのは、いつ投資したらいいのかというタイミングを考えることですけれども、積立投資はタイミングを考えないで投資を続けられるということで、2つとも柱にして良い制度だなと思っております。
 
 複数の仕組みがあると、どっちを選べばいいのかという問題はあると思うんですけれども、個人にとって資産形成の目的とか時間軸というのは様々ですから、税優遇を受けられる資産形成の道具立てというのも複数の選択肢があってよいと思います。
 
 個人型DCは税の優遇の厚い制度ですけれども、60歳まで解約できないということで、20歳代の若い人たちにとってはなかなか使いづらい仕組みであります。それと、これは政策の整合性とれていないのではないかと思うんですけれども、今多くの人が年金の受給年齢の65歳まで働かなければいけないときに積立が60歳で終わってしまうというのは、高齢者の方にとってもなかなか使いづらい。
 
 一方、積立NISAは、運用期間は20年確保されていますし、DCに比べて販売会社の窓口が分かりやすくてアクセスしやすい制度だということもあります。ライフイベントとか個人の事情でどうしてもお金が必要だったときには換金もできるということで、これは若い人たちに非常に入りやすい、ハードルの低い仕組みになるのかなという気がしております。
 
 ただ、資産形成の初心者層が想定利用者ということなので、どういう商品をこの制度で使ってもらうかについては慎重に検討していく必要があるのだろうなと思います。本来ならば、多様な商品があって、その中からニーズに合ったものを選んでもらうというのがベストだと思うんですけれども、投資経験のない人とか商品知識の乏しい人に使ってもらえるということを考えると、ある程度は絞り込んでいかざるを得ないのかなと、そういう感じがしております。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 ありがとうございました。それでは、斉藤委員、どうぞ。
 
【斉藤委員】
 まずこの概念そのものは何の問題もないと思ってございますが、ここに3つ書いてあって、長期で積立で分散投資だということでございまして、それぞれについて少し検討が必要なんだろうなと思います。長期であるということは検証もしておられますし、積立もそれでいい。これ、月3万円ずつぐらいですか、そういう感じになりますかね、それでいいんだと思いますね。
 
 問題は、分散ということをかなり強調しておられるので、数字を逆戻りして、世界の指数を割ってチャートを作ると、お作りになっているようなチャートになるわけなんですね。ところが、実際どう分散の商品を本当に売り買いする。売り買いというか、買うという。ここのところは、分散というのは、投資信託の中を分散しているのもあれば、私、取引所にいたこともあるものですから、あえて言いますと、例えばETFも分散商品であると。そういうものを、3万円ですから、何百円ずつ分ぐらい買うような形になったり、1万円ずつ3本組むのか何か知りませんけど、その単位が、ちゃんと本当に分散ができるか。逆算してこうなっているというのは、よく出るものなんですけれども、間違うのは、あのデータをやって、じゃあ、それを実際インプライしようと、プラクティカルにですね、やったときに、なかなか組み合わせのポートフォリオができないんですね。そこのところ、結構ハウトゥー的なんですけれども、そこをまた複雑にしちゃうと分かりにくくなって、投資なさる方がまた混乱なさるので、本当は理想的に分散した1本の商品があれば、非常に分かりやすくて、それが単位的にちゃんとラウンドナンバーで売買できれば非常にいいんですけれども、それだけだとまた絞り過ぎになりましょうし、国際分散もあるでしょうし、プロダクト分散といいますか、債券とエクイティとか、そういうものを組み合わせるとか、幾つかのマトリックスの組み合わせの分散があると思いますが、その分散をどうするか、一番非常にデリケートなところじゃないかと、かように思います。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。神戸委員、どうぞ。
 
【神戸委員】
 まず、今回積立NISAができるというのは大変素晴らしいことだと思います。もともとNISAは、これまで投資して来なかった方が投資を行うようにという意図で導入された仕組みだと思うんですが、先ほどのご説明の中にもありましたが、口座は開いたけれど実際には投資していないという方が半分ぐらいおられるという状態になっている1つの理由として、これまで投資されて来なかった方でNISA口座は開いたが、やはり投資はしていないという方が多く存在していることがあると思います。これまで投資して来なかった方は、儲けに対して課税されるからやらなかったわけではありません。損するのが嫌でやらなかったわけですので、NISAを実際に使って投資した方の大半は、これまでも投資していた人がその一部をNISA口座で行うことにしたということでしょう。つまり、「貯蓄から投資へ」ではなくて、「投資から投資へ」という動きが起こっただけなのだろうと思います。
 
 これまでやって来なかった方に投資をさせようとするのであれば、儲かったときにやさしい税制ではなくて、損したときにやさしい税制というのが本来は必要だったのではないでしょうか。例えば年間で、一定の上限額は必要なんでしょうが、50万円までNISA口座で損が出た場合は給与所得と通算してあげるといったように、マイナスを恐れる人たちがそれでもやる気になる仕組みでないと難しかったと思います。
 
 NISAの口座を開設しても、そういう方々にしてみると、100万円という当初設定された金額を考えますと、いつ100万円分買おうかとどうしても考えてしまいがちなわけですね。買って損をした場合、今度は一般の特定口座と違って損益通算もできないということを考えると、値下がりするのは嫌ですから、買い場を待って状況を見ていたくなります。12月ぎりぎりまで見て、今年の枠がなくなっちゃったら嫌だというので買う方もおられるとは思うのですが、まとめて買って値下がりしたら嫌だということで、なかなか踏み切れないまま投資されていない方が結構おられるのだろうと思います。
 
 そういった損するのが嫌だという方に関しましても、今回の積立形式というのは、あまりストレスを感じにくい投資手法ということが言えると思います。定額投資スタイルですと、値下がりすればするほどたくさん買えますので、スタートしてしばらくは値下がりしてくれたほうがむしろたくさん買えて好都合なくらいだということを教えてあげればいいわけです。その後少し戻っただけでも収益が出る可能性が高いので、途中での値下がり自体が大きなストレスになりにくい投資スタイルといえます。それを今回、形にしてきちんと提供するというのは大変意味があると思っています。
 
 1つ残念なのは、金額が12の倍数になっていないことです。伺った話では、森長官が10年といわれたのを20年に押し戻されたということで、素晴らしかったと思うのですが、もう一押し、12の倍数にしていただけたらさらによかったと思います。積立ということで、何なら40万円じゃなくて36万円でもよかったと思うんですよ。半端な数字のほうが積立というメッセージがより強く伝わるのではないかと思います。積立形式で投資すると、資産形成段階ではむしろボラティリティが大きい商品のほうが、ドル・コストの効果が高まって有利なんですね。日本人の多くは、地道に貯めて、貯まってから投資を、貯まったら株でも、と考えがちですので、その辺りについては、3番目の話題になるかもしれませんが、貯まる前の資産形成の段階こそ、リスクをとった積立投資、それが一番有効だというところをアピールしていく必要があると思います。
 
 ただ、資産形成全体の中の位置付けということで考えますと、今年から始まった個人型のiDeCoと従来から存在するNISA、それから今回の積立型NISA、それらをどういうふうに使い分ければいいのかということで、また生活者が悩んでしまう可能性もあると思いますので、使い分けの方法みたいなものもきちんと示していく必要があるのではないかと思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。永沢委員、どうぞ。
 
【永沢委員】
 私も積立NISAの創設に関しましては、先ほども何人の委員からもご指摘もありましたように、家計が退職後に備えていろいろ年金資産を作っていく上で制度的なバックアップがなければ、やはりそういうほうに動かないと思いますので、そういった意味でいろんな制度的な手当てが充実するということは大変望ましいことではないかと思っております。
 
 また、私は今年齢的には、ちょうど自分の子供たちが社会人になり家庭を築き始めている時期ですけれども、自分たちの時に比べると、彼らが20年、30年たった時の生活という時に、社会保障制度だけではなくて、自助努力で自分で備えていくことが必要であろうと思っておりますので、やはりこういう制度を私たち世代も応援して、若い方々にもっと使っていただくように呼びかけていく必要があると私は思っております。
 
 先ほど斉藤委員からご指摘がありましたように、積立NISAのターゲットというのは、1,700兆を全部移すのではなくて、1,700兆の中の、20年後ぐらいに資産を、少し人生の稼働率が落ちてくるような世代の人たちが今から備えるというようなところをターゲットにして、前のNISAのときには全面方位だったと思いますが、積立NISAは私も是非使いたいとは思いますけれども、使う層というのは少し絞り込んでもいいのかもしれないと。対象者というのは絞り込む必要はないんですけれども、こういう人たちに使ってほしいというメッセージはもっと出していっていいのではないかと思っております。
 
 それで、年金作りに適した商品というものがここでは必要になってきますので、それなりのバランスのとれたポートフォリオを構築していくのに必要な商品というものに必然的に、初心者の方が使われるということを考えると、ある程度リードしていくことは必要ではないかと私も思っております。
 
 1点、ここでやはりそのときに、長期・積立・分散投資に関しては、今まで皆様がその有効性についてはいろいろお話しされていますので、それに適した商品であると同時に、やはり私はもう1点希望を申しますと、投資信託に関しては、ガバナンスがちょっと弱いというところがございまして、長期で良い運用をしていただくためにも、受託者責任を全うしていただくためにも、少し後見的なものが、後ろからこのようなものに、積立NISAに使われるような商品については、ガバナンスに関して少し後見的なものが必要なのではないかと思っております。
 
 今まで投資信託というのは、情報開示をしていただいて、市場の中の競争でより競い合って良いものが残るというような発想でおりましたけれども、それで正しいとは思っているんですけれども、積立NISAに使われる商品というのは、果たしてそのようなものでいいのか。失敗はあまり許されないのではないかと。失敗しないようなものをご提供いただきたい。すごい成功は必要ありませんが、みんなが後で、やってみた時に、ああ、失敗したと思うことのないような運営をしていただけるようなものであってほしいと思っておりまして、最後、希望的なことを申し述べさせていただきました。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。植田委員、もしご意見があればお願いします。
 
【植田委員】
 それでは、2つだけ申し上げたいと思いますが、1つは、広い意味でNISAは長期の投資を促進するという、そこに税制の特典をつけるということですから、逆に言えば、短期売買の方にはタックスをかけるような話であるわけです。それがマーケットにとって、あるいは経済にとって望ましいことかどうかというのは非常に大問題でして、ただ、どちらの議論も立ち得るんだと思います。そういう中で、これは個人にとってある程度限った額でやっていこうという話で、それは特に個人にとってはそういうのは1つの有効なストラテジーである。ご説明いただいたような理由でですね。ということなので、これは1つ政策としてあり得る道かなと思います。
 
 その上で、ただ、20年持ったら必ずすごい儲かるんだとか、そういうイメージをあまり作り出してしまうのは危険なように、先ほど申し上げましたが、思います。長く持てば結果的に儲かるかもしれないんですが、本当に個人の手取りが増えるかどうかは、言うまでもなく、手数料をとられた上でどれくらいに上回るかということでございまして、事務局の資料には5ページにありましたような、投資信託の手数料の日米比較を見ますと、これでは日本の投資信託は売れないようなデータ、もちろんこれはちょっと不利な部分を拡大しているようなデータなのかもしれないですけれどもというふうに思います。低いほうのアメリカであっても、昔から、特にアクティブ系の投資信託は、手数料、なかなかカバーしてリターンを出せないというのがアカデミックなリサーチでもずっと出ている結果でありまして、手数料控除後でうまく回るのかどうかという問題は常に考えないといけないと思います。
 
 その点では、斉藤委員、他の方も仰ったと思うのですが、この積立NISAの哲学とはちょっとずれるんでしょうが、ETFのような手数料がパッシブ型に近くて、手数料が非常に低いというもの、あるいはそれに近いような投資信託商品を選択できる中に入れておくというのは非常に重要なことのような気がいたします。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、時間の関係もございますので、3番目の論点である実践的な投資教育・情報提供のあり方についてご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。永沢委員、どうぞ。
 
【永沢委員】
 実践的な投資教育ということですけれども、やはり使える知識、実際に行動に結びつく知識というもの、あるいはスキルというものが求められているんだと思っておりまして、アンケートの結果、そもそも投資の知識は不要とお答えになっている方が多いということですけれども、私は実はここは、本当はそう思っているのではなくて、自分が無いことを恥ずかしいという気持ちも若干あって、そういうふうな意味で開き直っている方も結構実はいるのではないかとも思っておりまして、もう投資知識が無くてもいいんだと、初めはなくてもいいんだと、実際にやりながら身につけていくのは恥ずかしいことではないということを、そういう感覚を共有できるようなコミュニティみたいなものが必要だと思っておりまして、そういった意味では、例えば、今日厚生労働省の方もお見えになっていますが、職域でのDCですね、DCなどのところの現場とも結びつけながら、職場というところでもっと気楽なお話ができるような場というものをこれからもっと本当は作っていくべきではないかとまず第一に思っております。
 
 投資教育の推進をしていく上で、教材の開発なんですけれども、先ほども申し上げましたけれども、どうしてもやはり自分も含めて、金融に慣れ親しんできた人間ではこれぐらいのことは分かっているに違いないというところが、もしかしたら初心者の方は分かっていないし、それを説明するときに、自分たちの言葉と大きな溝があるのではないかというところを出発点としてもう少し認識しなくてはいけなくて、若い現役世代の人たちに通用するようなSNSを使ったり、それから、金融機関という場になかなか行けない方々が多いと思いますので、金融機関の場ではないところのアプローチの仕方というのを、職域、それからSNS、色々あると思いますが、私、この辺はあまり知識がありませんが、もっと今までとは違う教育の場といいますか、アプローチの方法を考えていく必要があるのではないかと思っております。
 
 それからもう1点、私は先ほども申し上げましたけれども、金融庁のほうでスタートをいただきました金融経済教育研究会のほうからこのたびの金融経済教育の推進プロジェクトに関わらせていただいておりまして、今も推進会議のメンバーをさせていただいております。研究会の中で、今の日本が直面している金融に関する問題として、私は2点問題を認識したと思っております。
 
 1つは、金融資産を持たない世帯が3割近くになっているという問題。それからもう1つが、先ほどの投資経験があまりない方がすごく多いという、この2つの問題なんですが、この2つを一緒に追いかけることは実はなかなか難しいなと、ちょっと正直なところ、推進会議のメンバーとして出席しながら思っております。
 
 どうしても、ややもすると、金融資産を持たない層というのは非常に重要な課題ですので、こちらの方にもちろん重点がいきがちになりがちなのと、やはりどうしても学校教育に話が集中するような傾向がありまして、今現在、金融経済教育推進会議のほう、金融広報中央委員会が中心になって一生懸命やっていただいておりますし、金融機関の業界団体の方もご協力いただいているんですけれども、成人の分野というのは、成果として実のところあまり出てきていないように思っていますし、そこで議論すべきなのは、もう少しスキル的なもの、実践的なものになってきますので、小さな部隊をもう1つ作っていただくことも選択肢としてはあるのではないのかなと感じている次第です。どうしても推進会議の場ですと、理念的なこともお話として出てきますし、実際の実践的な投資という話にまではなかなか至れていないし、年に4回程度の開催でもありますので、これは繰り返しになりますが、もう1つ小回りの利く部隊が作られてもよろしいのではないかというふうに、この機会にご提言させていただけたらと思っております。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。他にいかがでしょうか。神戸委員、どうぞ。
 
【神戸委員】
 投資に関心がない層とか、あるいは時間的な余裕がない方向けにということで考えますと、事務局からのご説明で10ページにありました金融・投資リテラシーの現状というのを拝見いたしましても、結局、必要性を感じていないということですから、動機付けというのがおそらく一番重要になると思います。投資教育全体の六、七割は動機付けに費やしてもよいのではないかと。自分にとってなぜ投資が必要なのかというところが分かっておられない方が大半ですので、そこをまずクリアした上で、次に、先ほどお話ししましたように投機的な行為を投資だと思っている方が非常に多いという問題があります。今だったらどれを買えば儲かるのかと考えますと、本音の部分でその裏側にあるのは、できれば手っとり早く上がりそうなものを教えてよになってしまいがちなんですね。本人も意識しないままに短期スタンスで、儲かりそうな商品を選ぼうとする行為を投資だと思っている方が大変多いことを考えると、相場観やタイミングが命なのではなくて、まずは投資観を持つことが必要で、それをいかに分かっていただくかということが重要になるような気がします。
 
 投資観というのは何かというと、今回の資料の中にも、長期・積立・分散を促進する、それが重要だと記載されていますが、なぜ長期がいいのか、あるいはなぜ分散するべきなのか、あるいはなぜ積立がいいのかということです。そこの部分をきちんと理解していただく、腹に落としていただくことが投資観を持つということを意味しています。というところを、これまで投資してこなかった方には、まずきちんと伝える、あるいは学んでいただくような教育の場が必要になると思います。
 
 そのときに、今、永沢委員からのご説明もありましたが、DCが導入されておりますし、職域NISAも始まっていますので、職域での教育ということで、企業の方々にもご協力いただけないかということと、労働組合の中にも、組合員向けのライフプランの教育に熱心なところが出てきております。以前と違いまして、年俸制の導入などで労働組合の存在意義も以前とは大分変わってきていまして、労働組合がどうやって組合員に貢献しようかというときに、個人のライフプランを実現するサポートを行うというような方向で動かれているところも多くなってきていますので、企業だけではなくて、労働組合にもできればご協力頂きたいところです。iDeCoの話も絡みますので、今日ご出席になっておられると思いますが、関係団体や様々な省庁が、一体となって実際に推進していくようなコンソーシアムを立ち上げて、教育を進めていくというアプローチが効果的ではないかと思います。
 
 さらに、社会人向けには、私は金融機関も主役になるべきだと思っております。その理由というのは、できるだけ多くの方々に教育を早いところ受けていただくということが非常に重要になってくると思うのですが、これまでは今日ご参加されているような公的な機関が様々なシンポジウムやセミナーをやってこられていますけれども、年間全部合計しても何百回かで、1回につき100人、200人集めてと考えると、どんなに多く見積もっても数万人が1年間に教育を受けられる人数ということになります。これで、教育が行き渡るのには何年かかるのかと考えると、スピードという部分で、公的なところだけがやっていたのでは大変厳しいと思います。多くの金融機関が、それぞれかなりの回数、全国でセミナーを開催されておられますので、そういうセミナーの一部を金融経済教育の場にしていただけると大変効果的ではないかと思うからです。
 
 これまでも金融経済教育推進会議などの中でそういう話をさせていただいたんですが、大抵の場合、現状では、営業、ビジネスに結び付きかねないと。そうすると、金融機関にお願いするのは、ちょっと大丈夫かしらというご意見が多かったわけです。
 
 ただ、今後は、ちょうど昨年来議論して参りましたフィデューシャリー・デューティーの考え方について、きちんと各金融機関が受けとめて前に進んでいただければ、状況が変わる可能性があります。日本人の個人金融資産を活かし、守ることが自分たちの使命であるという、ちょっと大上段かもしれませんが、そういう認識を各金融機関に持っていただくことがフィデューシャリー・デューティーの目指す方向だと思うんですね。その流れの中で、きちんとオールジャパンで、日本人の金融リテラシーを高めて行くことに協力するという趣旨でセミナーの場を使っていただけると、大きく教育のスピードが上がるのではないかと思います。職域における教育と、金融機関も巻き込むというようなことを考えましても、何かそういうコンソーシアムが必要だと考えます。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 ありがとうございました。斉藤委員、お願いします。
 
【斉藤委員】
 時間もありませんので。あまり建設的な意見じゃないんですけれども、どうしてこれをやったほうがいいと思うか、思わないか。自分の資産を将来に向かって積み立てたほうがいい、積み立てる必要があると思うか、思わないかというのは、国があなたの将来は完全に保障していますと言ったら、やらないと思いますね。要するに、アメリカで、非常に皮肉なんですけれども、何で個人がこれまでやるかというと、国が保障しないからなんですよね。非常に将来に対して不安があるので、自分のことは自分でやらなきゃいけないという気持ちで必死で財産を増やそうとするんですね。もちろん、先ほど委員から話があったように、上の人はちょっと違いがあると思いますけれども、一般的には、国家の保障が、だから、非常に皮肉なんですけれども、あなた、年金は大丈夫よと、日本の年金は何年たっても大丈夫なんだということを強調すればするほど、じゃあ、こんなことしなくていいということになるんですね。
 
 だけど、事実はそうじゃないわけでありまして、そんなこと言うとちょっといけませんけれども、どう計算したって、それは成り立たない。そうすると、事実を少し上手く伝える必要があるということが1つ。特に若い層にですね。やっぱり先ほど言いましたように、1,000兆円というか、60歳以上の人の心理状態は、増やすよりも元本保証なんですよね。だから、そこで退職金等々頂いた後、自分の人生計画を立てるときに、リスクをとって増やそうという人はかなり少ないと思います。何を一番先に考えるかというと、安全。この元本が減らないこと。だから、本当はインフレが一番困るんですね。そこで、経済がインフレ化してきたときに、あなたは今のままだったら、パーチェシングパワーが落ちるよというようなことをきっちり意識させて、1,000兆円のほうも少し、積立になるかどうか知りませんけれども、有価証券投資に動かすとか、そういうような総合的な非常に丁寧な構造を持った教育システムというのが必要なんじゃないかと思います。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。北澤委員、どうぞ。
 
【北澤委員】
 実践的な教育ということでいいますと、実は資産運用に関する知識というのは、まずは始めてもらうのが一番肝心なわけでありまして、知識の無い方たちも始めて、初めて金融市場とか商品について関心を持つようになって知識を蓄積していくという、こういうパターンが非常に多いと思います。
 
 そういう意味では、これまでしてこなかった人たちに資産運用していただくためには、できるだけ資産運用をするためのハードルを低くしてもらうことが大事なのかなと思います。これは金融機関の取り組みとして、コストの見合いで大変なのかもしれないですけれども、例えば積立の最低投資金額を1,000円単位にするとか、それから、若い人たちは、なかなか金融機関に親しみがないというなら、楽しみながら投資とか資産運用できるようなアプリを作ってみる、ゲーミフィケーションなのかもしれないんですけれども、そういうものも必要なのかもしえません。ハードルを下げるための創意工夫はがまだまだい色々できるのかなと思います。
 
 それと、先ほど神戸委員が仰いましたように、動機付けのところで使えるような、積立が何でいいのかとか、長期が何でいいのとか、そういうことをわかりやすく伝えるテキストがなかなかあるようでない。そういうものももっと活用していかなければいけないかなと思います。
 
 それから、神戸委員がおっしゃっていましたコンソーシアムですか、今はそういうものを考える本当にいい機会だと思います。金融資産をめぐる制度が大きく変わり、こういう会議が開かれるように政策が資産運用の普及を強く後押しするというこのきっかけを逃すと、なかなかこの国で資産運用は広がっていかないのかなと思います。
 
 歴史的に見れば、ちょっと大げさですけれども、戦後、証券民主化運動があって、一般の個人投資家が非常に増えましたけれども、実はその時よりもさらにすそ野を広げるチャンスが今あるのではないのかなと思っております。そういう時には、やはり国全体でこの流れを大きくしていくような取り組みというのも必要なのかなと思います。コンソーシアムというお話ありましたけれども、そういうものも考えていただけたらなと思います。
 
 戦後の貯蓄増強中央委員会ですか、そんなものも1つの例として何か考えていただいてもよいのかなということを提案させていただきたいと思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。植田委員、この点についてはいかがでしょうか。
 
【植田委員】
 教育といえば、高校生卒業ぐらいでわかるような金融論の非常にやさしい教科書を書き始めましたので、できましたら皆様にお届けしますし、積立NISAのことも書いてみたいと思います。
 
 ただ、それではあまり上手くいかないと思いますので、その上で、いろんなフィナンシャルプランナー、その周辺の方々に頑張っていただくのが大事だと思いますが、同時に、素人考えで思いますのは、金融資産運用の道で本当に成功した人、かなりの人が知っているような人に手弁当で体験とか哲学を語ってもらう。もちろんたくさんの数をやることはできないわけですが、それはテレビとかインターネットを利用するとか、いろんなやり方があると思います。というようなことは、特に若い層とかに夢を与えたり、あるいは考える材料を与えるという意味では非常に有効な気が私はします。しかもその場合、なるべく1つの戦略とか哲学に偏らないで、いろんな違った考え方を持っている複数の方々のご意見を聞けるといいなという気がいたしますけど。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。色々ご意見をいただきまして、貴重なご指摘も多くいただきまして、ありがとうございました。
 
 そこで、先ほど事務局から若干ご提案があったと思うのですけれども、1つは、長期・積立・分散投資に資する投資信託のあり方ですね。それから、もう1つは、投資家が個々の投資信託を容易に比較・検討できるような商品比較情報等というんでしょうか、その提供のあり方。これらにつきましては、この会議とは別に実務者等から成るワーキング・グループを順次設置して検討を行いたいということが先ほどの事務局からのご提案でございます。大変結構なことかと思いますけれども、そういう方向で進ませていただくということで、皆様方にもご了解いただけますでしょうか。
 
 (「異議なし」の声あり)
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 なお、ワーキング・グループの人選等につきましては、事務局にご一任をいただくということにさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
 
 (「異議なし」の声あり)
 
【神田座長】
 ありがとうございます。
 
 それから、もう1点、ご議論の中でも若干出ておりましたけれども、関係団体や関係省庁等が一体となって資産形成の促進に取り組むための推進母体というんでしょうか、そういったものの立ち上げにつきまして、金融庁をはじめ、日本銀行や関係省庁から関係諸団体との調整を進めていただくということで少し先へ進めたいと思うのですけれども、そのように進めさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。
 
 (「異議なし」の声あり)
 
【神田座長】
 どうもありがとうございます。
 
 そうしますと、こういったこととの関係では、皆様方にはこの会をいわば親会のような位置づけとして引き続きご意見等をいただければと思います。このテーマ、大変長く指摘され、また言われ続けてきていながら、合成の誤謬というか、うまくいかないという大変重たいテーマなのですけれども、今、また1つのチャンスというか、きっかけにできるようなタイミングに差しかかっているかと思いますので、ぜひこれを日本の将来のためにもうまく生かせればと私も感じております。
 
 それでは、本日は、大体予定の時間ですので、このあたりとさせていただきたいと思います。最後に事務局からご連絡等ございましたら、お願いいたします。
 
【武田政策監理官】
 次回の日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 事務局からは以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、以上で散会いたします。どうもありがとうございました。
 

以上

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総務企画局政策課(内線3710、2796)

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