決済高度化官民推進会議(第4回)議事録

1.日時:

平成29年12月20日(水) 9時00分~11時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

 

【森下座長】     

それでは、定刻になりましたので、ただいまより決済高度化官民推進会議第4回会合を開催いたします。皆様ご多忙のところご参集頂きまして、まことにありがとうございます。

本会議は平成27年12月の金融審議会決済高度化ワーキング・グループの報告書で示された13項目のアクションプランの実施状況をフォローアップし、決済業務等の高度化に向けた取組みを継続的に進めることを目的として、昨年6月に設置されたものであります。本年6月に開催いたしました第3回会議では、全国銀行協会より、13項目のアクションプランに加え、手形・小切手の電子化、及び、税・公金収納の効率化について、新たな課題としてご提案頂き、官民連携して取り組んでいくこととなりました。

本日は、こうした取組みの状況、また、フィンテックの動きが最近さらに進展しつつあることを踏まえ、今後の取組みに向けて議論を進めてまいりたいと考えております。

初めに、新たにご参加頂く委員、オブザーバーと、本日参考人としてお越し頂いている方について、事務局よりご紹介をお願いいたします。


【井上総務企画局信用制度参事官】 

おはようございます。金融庁信用制度参事官の井上でございます。

 

今回、異動に伴いまして、委員等の変更がございましたので、ご紹介申し上げます。

 

ヤフー株式会社の別所直哉委員でございます。


【別所委員】 

別所でございます。よろしくお願いいたします。


【井上総務企画局信用制度参事官】    

なお、本日はご都合により、花王の牧野秀生委員がご欠席となっておりまして、かわりまして、花王グループカスタマーマーケティング株式会社カスタマートレードセンター物流開発グループ部長の斎藤和志様にお越し頂いております。


【斎藤委員代理】    

よろしくお願いします。


【井上総務企画局信用制度参事官】    

次に、オブザーバーについて新たにご参加頂く方をご紹介申し上げます。財務省大臣官房信用機構課長の堀田秀之オブザーバーでございます。


【堀田オブザーバー】    

堀田でございます。


【井上総務企画局信用制度参事官】    

また、本日、参考人といたしまして、全国銀行協会事務・決済システム部長の相澤直樹様。


【相澤参考人】    

相澤です。よろしくお願いします。


【井上総務企画局信用制度参事官】    

三菱東京UFJ銀行デジタル企画部長の相原寛史様。


【相原参考人】    

おはようございます。


【井上総務企画局信用制度参事官】    

中小企業庁経営支援部技術・経営革新課長の師田晃彦様。


【師田参考人】    

師田です。


【井上総務企画局信用制度参事官】    

財務省国際局調査課外国為替室長の菊地渉様。


【菊地参考人】    

菊地でございます。


【井上総務企画局信用制度参事官】    

金融情報システムセンター監査安全部次長の亀水宏次様。


【亀水参考人】    

次長の亀水と申します。よろしくお願いします。


【井上総務企画局信用制度参事官】   

以上でございます。


【森下座長】    

続きまして、議事に移らせて頂きます。

 

本日は、全国銀行協会から、アクションプランに掲げられた13項目と手形・小切手の電子化、及び、税・公金収納の効率化に関する取組みの進捗状況についてご説明を頂き、その後、中小企業庁より、中小企業の受発注業務のIT化に関する取組状況について、財務省より、外為報告の合理化の検討状況について、金融情報システムセンターより、情報セキュリティに関する取組状況についてご説明を頂き、その後、討議を行いたいと考えております。

 

それでは、まず、全国銀行協会林委員より、決済高度化に向けた全銀協の取組状況についてご説明をお願いいたします。


【林(尚)委員】    

おはようございます。今年度の全国銀行協会の会長行を務めております三菱東京UFJ銀行の林でございます。本日は、このような機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。

 

本日は、お手元の資料、右肩に資料1と書いてございますが、こちらの資料を用いまして、金融審議会決済高度化ワーキング・グループ報告書の主要13論点の状況のご報告を申し上げました後に、前回の会議でご提案を申し上げております手形・小切手の電子化、並びに、税・公金収納の効率化に関する取組みの状況をご報告申し上げ、最後に、簡単に海外銀行協会とのフィンテックに関する協働強化の取組みにつきましてもご説明を差し上げたく考えてございます。

 

それでは、早速でございますが、資料の3ページ目をご覧頂きたいと思います。

 

3ページ目の表でございますが、提言の中の主要13論点の現在の取組状況を簡単にまとめたものでございます。

 

金融庁をはじめとした関係省庁等のご協力も賜り、活動を進めてまいりました結果、いずれも具体的なアクションに着実に結びついているものと理解をしております。この場をおかりいたしまして、皆様にあつく御礼を申し上げます。

 

具体的な取組みにつきましては、次ページ以降でご説明申し上げたいと思います。

 

おめくり頂いて、4ページでございます。まず、1点目、XML電文への移行に関しましては、平成30年12月のサービス開始に向けまして、全銀EDIシステムの開発を継続しております。

 

また、産業界及び金融庁・経済産業省・中小企業庁等の関係省庁等と連携をさせて頂き、XML電文移行に向けた周知活動も実施してございます。具体的には、10月から12月にかけまして、企業向け周知説明会、あるいは、NTTデータとタイアップをいたしましたビジネスコンテストを開催いたしましたほか、11月には、金融機関向けにも新システム稼働に向けた取組みに関する説明会を開催してございます。現在、広範に配布するチラシを作成するなどしてございますが、今後も周知活動等を推進、強化していく所存でございます。

 

また、将来的な活用策として、全銀EDIシステムに格納されます金融EDI情報等を利用いたしました電子領収書スキームの検討も進めていきたいと考えております。

 

またXML電文移行に関する産業界の対応状況等につきましては、関係省庁と連携をさせて頂き、調査を進めたく考えてございます。

 

続きまして、2点目の送金フォーマット項目の国際標準化でございます。

 

全銀協では、前回会合以降、企業・銀行に対して、アルファベット表記の口座名義やBIC・IBANの採用に関するニーズ等に関するアンケートを新たに実施いたしました。この結果、外国人向け国内送金等において、一定のニーズがある受取人名をアルファベット表記とした送金取扱いについて、対応の検討に着手しております。

 

BIC・IBANにつきましては、現時点でのニーズは限定的、かつ、企業・銀行双方のシステム開発コストが必要となる等、影響も大きいものと考えられますため、短期的な対応は行わず、中長期的な課題としてニーズ等をフォローしていきたいと考えております。

 

続いて、5ページ目をご覧ください。3点目の国際送金における「ロー・バリュー送金」の提供につきまして、ご説明を申し上げます。平成29年6月に、APN HUBの構築事業者が決定いたしましたことを受け、APN HUBのサービス開始に向けた事業者間での協議が本格化しております。

 

したがいまして、先行して協議を進めておりました韓国向け送金を含めまして、接続先拡大の効率化が期待できますAPNプラットフォーム上でのロー・バリュー送金の実現に向け、日本のAPNネットワーク事業者でございますNTTデータが事務局を務めております「ロー・バリュー送金検討会」にて検討を継続してまいります。

 

4点目の大口送金の利便性向上、5点目の非居住者口座に係る円送金の効率性向上につきましては、前回までの対応でご報告をいたしましたとおりでございますので、今回は説明を割愛させて頂きます。対応につきましては、3ページの表をご参照頂ければと思います。

 

続きまして、6点目の携帯電話番号を利用した送金サービスの検討についてでございます。

 

複数の金融機関が参加をいたします携帯電話番号送金サービスの実現に向け、3メガがP2P送金プラットフォームの実証実験の検証を開始いたしましたほか、SBI Ripple Asiaが事務局を務めます「内外為替一元化コンソーシアム」においても、送金アプリ等を開発中でございます。

 

新たな技術を活用した金融機関の取組みが活発化しておりますことから、これらの動向をフォローするとともに、新たな実証実験ニーズが発生した際には、次の7点目でご説明を申し上げますブロックチェーン連携プラットフォーム上での実験環境提供等により、実用化に向けた取組みを支援してまいりたいと考えております。

 

おめくり頂いて、6ページでございます。7点目に、ブロックチェーン技術の活用可能性と課題にかかわる検討でございます。

 

全銀協では、29年9月に、銀行界を中心とした連携・協働型の実証実験環境である「ブロックチェーン連携プラットフォーム」の環境ベンダーといたしまして、NTTデータ、日立製作所、bitFlyer、富士通の4社を選定いたしまして、10月から運用を開始しております。11月からは、同プラットフォーム上で、でんさいネット実証実験を開始しております。

 

その他のブロックチェーン実証実験といたしましては、デロイトトーマツと3メガが金融庁のFinTech実証実験ハブの第1号案件となりました本人確認高度化に関する実証実験を開始しておりまして、来年に予定されます第2フェーズでは、本プラットフォーム上での実験を開始する予定でございます。

 

8点目のオープンAPIのあり方に関する検討につきましては、29年6月に、FISCにおいて、「API接続チェックリスト」が策定されましたほか、7月には電文仕様標準を策定いたしました。

 

また、銀行界のオープンAPIの取組みを促進いたしますため、この6月から8月にかけて、全会員行向けの地域会合を、金融庁のご協力も頂きながら、全国5カ所で開催をしてございます。

 

また、11月からは、銀行と電子決済等代行事業者の意見交換の場として、「オープンAPI推進研究会」を設置し、現在、API接続にかかわる契約内容の論点整理を実施しております。

 

また、この12月には、銀行界のAPIに対する取組状況等についてアンケートを実施いたしまして、KPIであります2020年6月までの接続行80行、この達成に向けて、114行が既に提供、あるいは、体制構築済み、あるいは、提供する方向で検討と回答してございますことから、着実に進んでいることを確認してございます。

 

次のページでございます。9点目、全銀ネット有識者会議の運営見直しにつきましては、昨年7月に運営方法の見直しを実施いたしました。平成29年2月には、運営見直し後初回となる全銀ネット有識者会議を開催してございます。平成29年度は、そこでの議論や官民推進会議における議論等を踏まえ、国内外の新たな決済サービスや新たな技術のヒアリング調査、ブロックチェーン技術の資金決済システムへの活用可能性の検討、全銀EDIシステム等に係る企業ニーズのヒアリング等を実施してございます。

 

来年1月には、今年のヒアリングや調査の結果、並びに、本日の官民推進会議の議論を踏まえ、平成29年度全銀ネット有識者会議を開催する予定としてございます。引き続き、当該会議を軸に、PDCAを回してまいります。

 

10点目の電子記録債権をめぐる課題への対応でございますが、でんさいネットと各行記録機関において、電子記録債権の移動実現に向けて、各機関を接続する方針を決定済みでございます。現在、平成31年上期以降、順次、債権移動を実現すべく、業務要件・システム要件等の詳細を検討中でございます。

 

11点目のCMSの高度化は個別行の取組みでございますが、例えばブロックチェーン技術を応用した貿易業務の効率化コンソーシアムに参加をいたしますなど、グローバル企業を中心に、ニーズにお応えできるよう、引き続き、メガを中心に、しっかりと取り組んでまいる所存でございます。

 

12点目の外為報告の合理化、13点目の情報セキュリティにつきましては、それぞれ財務省、FISCのご担当の皆様からプレゼンテーションが本日ございますため、ここでの説明は割愛をさせて頂きます。

 

以上がワーキング・グループ報告書で提言された論点に対する現時点での取組状況でございます。各テーマは、全銀協だけで解決できるものではございません。関係省庁や産業界、IT企業等の皆様と連携して進めてまいることが重要でございますため、引き続き、ご協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 

続きまして、オールジャパンでの手形・小切手電子化、及び、税・公金収納の効率化についてご説明をさせて頂きます。

 

資料の10ページをご覧頂ければと思います。まず、オールジャパンでの手形・小切手の電子化についてでございます。前回の本会合以降、全銀協が事務局となります「手形・小切手機能の電子化に関する検討会」を立ち上げまして、先日、第1回の開催をしてございます。本検討会には、金融機関のほか、経済団体、商工会、ITベンダーの皆様、法律家、学識経験者、関係省庁等、幅広いメンバー、オブザーバーの皆様にご参加を頂戴しております。来年11月の取りまとめに向け、今後1年間をかけて、電子化に向けた課題の整理と対応策について検討を行っていきたいと考えてございます。本日は、第1回の検討会の概要につきまして、この場を頂きまして、ご説明を申し上げます。

 

11ページをご覧頂ければと思います。検討会では、初めに、我が国社会のデジタル化の流れの中で、手形・小切手も将来に向けて電子化していくべき対象であることの確認をさせて頂いております。左側の表に記載しておりますとおり、現在の日本は、ICTの発達も進み、情報化社会の進展が加速してございます。また、本格的な景気回復に向けて、社会的コストの削減を通じた成長性の高い分野への再投資、再配分が必要な状況と認識をしております。また、少子高齢化が進む中で、働き手不足が顕在化してきてございまして、働き方改革が推進される中、生産性向上も急務な状況であるとの理解でございます。

 

このような中で、第5期科学技術基本計画での「超スマート社会」の実現でございますとか、未来投資戦略2017において、オールジャパンでの電子手形・小切手への移行が掲げられておりますわけでございますが、我が国がSociety 5.0の実現に向かう流れの中で、官民が一体となって、手形・小切手機能の全面的な電子化を検討していくべきであることを確認させて頂いております。

 

その上で、新しい法律の制定や新たな電子手形・電子小切手などのプラットフォームを開発するというアプローチではなく、まずは手形はでんさい、小切手は振込にシフトすることをメインシナリオとして検討することを確認してございます。右側の表にも記載してございますが、社会的コストの削減の早期実現や企業の対応容易性の観点からは、既存の商品サービスで対応を進めることが最も効率的であると考えてございます。

 

12ページにお進みください。第1回検討会では、電子化の進め方といたしまして、手形・小切手の流通量がピーク時の10分の1まで減少しておりますほか、多様で多彩な決済手段が出現しておりますため、手形・小切手の使命が縮小していると想定されます中で、日本の生産性向上、社会的コストの削減、あるいは、先ほど申し上げましたとおり、人手不足の観点等から、手形・小切手の電子化を推進すべく、目標時期を設定し、手形・小切手制度の見直しとその電子化を実現することを検討するといった方針案をベースに協議を行ってございます。具体的な目標時期や推進方法などはこれからでございますが、目標時期を設定して進めるという方針につきましては、参加者の間で確認をしておるところでございます。

 

本件につきまして最も重要、大切なことは、特に中小企業・小規模事業者が新たな方法にスムーズに移行できますよう、金融界、関係省庁、産業界が一丸となって対応策を検討することであり、中でも、金融機関は、産業界やお客様の意見を真摯に承りながら、移行のための具体的な施策を検討し、生産性向上等の社会的課題の解決に貢献することが大切であると、このように考えてございます。金融機関自身が、ご利用頂いております皆様に対し、最大限丁寧かつ十分に対応する必要があると認識をしてございます。 未来投資戦略2017では、中小企業等のIT化に向けたKPIとして、今後5年間に、クラウドサービス等を活用してバックオフィス業務を効率化する中小企業の割合を4割程度とすることを目指すと、こういったKPIが掲げられておりますが、まさにこの手形・小切手の電子化も、中小企業等のバックオフィス業務の効率化に資する取組みであると考えてございます。今後、産業界、関係省庁等の皆様と連携しながら、丁寧に検討を進めてまいりたいと考えてございます。

 

続きまして、13ページでございます。13ページでは、税・公金収納の効率化の検討に当たりまして、前回の会議にてお示しをいたしました課題の解決に向けたアプローチ案とその後の取組状況を記載してございます。

 

まず、①の地方税の電子納付につきましては、地方税電子化協議会にて進めております全自治体での地方税、申告税の電子納付が可能となる地方税共通納税システムの開発につきまして、特に金融機関との決済の面でサポートを申し上げるべく、銀行界から2名の人材派遣を行い、地方団体と金融機関との間の実務協議等の活動を始めてございます。

 

また、今般のシステム開発は申告税を対象としたものでございますが、地方税においては、賦課税の取扱いが圧倒的に大きく、その電子納付化につきましても、関係省庁・団体との議論を開始してございます。

 

さらに、②にありますとおり、その他の公金につきましても、地方6団体や関係省庁の皆様への働きかけを継続してございます。

 

中段③の納付書の様式一元化への取組みとしては、「地方税納付書類の書式不統一による支障事例」等を規制改革推進室に提出をさせて頂き、意見交換を実施してございます。問題意識の共有なども進めさせて頂きました。

 

また、④のフィンテック企業等との連携につきましても、金融庁のご協力を頂戴し、複数のフィンテック企業との意見交換を開始してございます。

 

続きまして、14ページでございます。ここでは、今後の活動につきまして、具体的な対応とその枠組み案をご提示させて頂いております。

 

今後は、「1.地方税(申告税)の電子納付の実現のための協働・支援」、「2.地方税(賦課税)の電子納付の実現に向けた関係省庁の皆様との連携強化」、「3.税・公金収納・支払の効率化などの検討」、「4.フィンテックを活用した新たな電子収納・支払スキーム等の検討」、この4つを柱として、活動を進めてまいりたいと考えております。

 

この活動の枠組みといたしましては、納税者、地方団体、金融機関等の関係者がWin-Winとなる官民一体となった取組みを目指すべく、全銀協が事務局となり、新たな官民での協議・検討の場の設置を検討してございます。関係省庁とご相談も進めているところでございます。税・公金収納の効率化による社会的コストの削減に向けまして、課題や問題意識を共有しながら、確実に検討を進めてまいりたいと考えてございます。

 

前回も申し上げておりますが、手形・小切手の電子化、税・公金収納の効率化、いずれも、長年なれ親しんでおります慣習への改革へのチャレンジでございますが、人手不足の中、大企業から中小企業、そして、国から地方自治体にわたるまで、幅広く事務の効率化に寄与するものと考えられ、まさにオールジャパンで取り組む社会的費用の削減を実現する大切な施策と考えております。引き続き、産業界や官庁等、関係者のご協力も頂きながら方針を決定し、実現に向けて取り組んでまいりたいと考えてございます。

 

続きまして、海外銀行協会とのフィンテック領域における協働強化の取組みについて、簡潔にご報告を申し上げます。

 

1ページ飛ばして頂きまして、16ページでございます。全銀協は、現行の第5次中期計画に基づきます本年度のアクションプランにおきまして、海外銀行協会との関係強化に向けた積極的な交流を掲げてございます。金融庁とシンガポールのMAS、英国のFCAが当局間のフィンテックに関する協力的枠組みを構築されましたが、民間金融団体としても、シンガポール銀行協会及びUK Financeと覚書を締結するとともに、フィンテックにおける協力的枠組みを構築いたしました。今後、この枠組みを活用し、決済を含めた金融サービスの高度化を目指してまいりたいと考えております。

 

最後になりますが、全銀協といたしましては、既存の13論点に加え、ご説明申し上げました手形・小切手の電子化、税・公金収納の効率化も含めまして、全体として影響度の大きいものへの対応も十分意識しながら、引き続き取組みを行ってまいりたいと考えております。

 

冊子の後段は関係資料でございますので、お目通し賜りたく、お願い申し上げます。

 

当方からのご説明は以上でございます。ありがとうございました。


【森下座長】 

  ありがとうございました。

 続きまして、中小企業庁、師田参考人より、中小企業の受発注業務のIT化に関する取組状況について、ご説明をお願いいたします。


【師田参考人】 

  それでは、私、中小企業庁の師田から、資料2に基づきまして、中小企業の受発注業務のIT化に関する中小企業庁の取組状況についてご説明を申し上げます。

 

1枚おめくり頂きまして、スライド番号2番の受発注情報の企業間データ連携についてでございます。

 

中小企業の受発注のIT化につきましては、大きく3つ、課題があると思ってございます。この図の左下をご覧頂ければと思いますけれども、まず、①番として、発注側の企業がそれぞれ受発注の独自システムを構築しているということ、それに伴いまして、②番ですけれども、複数のサプライチェーンに属する企業につきましては、その発注側企業のシステムをそれぞれ導入しなければいけないということで、中小企業がその複数のシステムを導入するというような課題があるということ、さらに、3つ目としては、さらに小規模・零細企業になってきますと、そのそもそもの受発注自身を電話とかファクスを使っているというケースが多うございまして、こういう課題を克服することで、電子化を進めて、中小企業の生産性を上げていくということが大事だろうということを考えてございます。

 

このために、これは右側のポンチ絵にございますけれども、国連のCEFACTという標準がございますので、この共通辞書を用いまして、この複数のシステム、これはシステム自体を変えるのは非常に大変なことでございますので、その複数のシステムをそれぞれ共通辞書を用いて変換をして、その共通のシステムが使えるようなシステムを実証するということを今、取組みを進めているところでございまして、平成28年度の補正予算を頂きまして、今年度中を目標に、この取組みを実施しているというものでございます。

 

これ、言葉ではちょっとわかりづらいので、もう一枚おめくり頂きまして、ちょっと若干ポンチ絵的に書いてございます。従来の中小企業の取組みですと、例えば取引先であるA社、B社、C社と受発注をする場合に、EDIを使うためには、A社用のEDIであったり、B社用のEDIであったりというものをそれぞれ導入しなければいけなかったんですね。また、C社とは、これはもう電話とファクスしかないという状況で、この中小企業から見ると、それぞれの端末に対応して、その端末の仕様が違うものですから、それぞれを例えば手入力をしながら自社のシステムに使っていくというものだったものを、今回はこの共通EDIプロバイダというCEFACTの共通言語を用いまして、一括して変換をすることで、1つの画面で統一的に対応できると、こういうようなことを実現したいと。このための共通EDIのプロバイダという、いわゆる共通EDIの仕様をつくっていくと、こういうような実証実験を進めているものでございます。

 

1枚おめくり頂きまして、これはちょっと細かいんですけれども、今回の実証プロジェクトは、12個のモデルプロジェクトというのを並行に走らせてございます。この共通EDIがあらゆる業種、あらゆる取組みにも対応できるものである必要があるために、例えば、業種であるとか、地域であるとかというのをかなりばらけまして、例えば農林漁業のEDIとしてこれが使えるかどうか、貿易の手続に使えるかどうか、製造業向きに使えるかどうか、地域としても、北海道であったり、静岡であったり、多摩地区であったりと、いろいろなところで共通EDIというCEFACTに変換するという技術ができるかどうかを今実証しているというところでございます。

 

この実証を今年度中に終了させまして、この共通EDIの仕様を固めまして、この共通EDIの固まった仕様を、来年度以降、普及させていくということを考えているものでございます。

 

おめくり頂きまして5ページ目ですけれども、現在、この中小企業の共通EDI標準のサイトにおきまして、この仕様のパブリックコメントというのを実施してございます。ぜひ、ご関心があればご覧頂ければと思いますし、また、積極的なご意見などを頂いて、我々としても実現に向けて取り組んでまいる所存でございます。

 

続きまして、6ページ目になりますけれども、今までは受発注のEDIでございましたけれども、受発注だけですと、やはり生産性向上という意味ではまだ限定的でして、これがさらに実際にお金の支払い、それから、検収、そして、いわゆる売掛金の消込み作業というところまで一気に電子化することが求められるということでございまして、まさに平成30年度から、金融EDI、30年の12月から実施されるというのを捉えまして、来年度におきましては、この受発注の共通EDIと金融EDIを連携させることによって、まさに受発注から売掛金の消込みまでを全てを電子化できるための実証実験というのを取り組もうということで今、考えているところでございます。

 

だから、これも予算の今、最終調整局面でございますけれども、来年度、幾ばくかの予算を頂きましてこの取組みを進めていくということで、実際に金融EDIと連携をさせた実証実験というのを来年度、実施していく予定にしてございます。

 

それから、7ページ目、これは過去の取組みのご紹介ではございますけれども、今回、金融EDIのXML電文の中にどのような情報を載せるべきかということについて、やはりある程度標準的な項目が必要だろうというご意見が非常に多かったことを踏まえまして、これは当省と、あと、金融庁、さらに、関係団体の皆様にも入って頂きまして、金融EDIにおける商流情報として格納すべきものは何であるかということを検討させて頂きまして、昨年の12月に報告書をまとめているものでございます。

 

これ、例えば管理上利用する項目、最低限必要な項目、それから、合理化に必要なもの、利用可能とすべき項目ということで項目を上げさせて頂きまして、これは来年、実現していく金融EDIのぜひご参考としてご活用頂きたいという項目をお示しさせて頂いているところでございます。こういうところも、いわゆる金融の皆様と連携しながら、このシステムに取り組んでいるところでございます。

 

最後は、このEDIを実施していくためには、中小企業自身がきちんとIT化をして、このデジタルの受発注に対応できるシステムを導入していくことが非常に大事だと思ってございまして、いわゆる中小企業の生産性向上のためのいろんな支援策というのをこれも今、要求をさせて頂いているところでございまして、予算の最終調整局面でございますけれども、大きく2つ、ご紹介をさせて頂きます。

 

1つは、ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業、いわゆるものづくり補助金と言われているものでございますけれども、これは中小企業向けの設備投資を応援する事業でございまして、今回、この事業の中に、例えば複数の企業がデータを連携しながら取り組むような場合には、補助上限を上乗せしていくような措置を講じることによりまして、いわゆる企業の設備投資だけではなくて、そのデジタル化を支援していくというようなものも盛り込む予定にしてございます。

 

それから、2つ目はこのサービス等生産性向上IT導入支援補助金というものでございまして、これは中小企業がいわゆるITツール、これはソフトウエアであるとか、クラウドサービスであるとか、こういうようなものを活用しながら、例えば会計システムであるとか、人事管理であるとか、もしくは、顧客管理であるとか、こういったITを導入しながら生産性を上げていくという取組みに対して補助をするというものを用意しているものでございます。

 

これは予算もまだ調整中ですけれども、ものづくり補助金につきましては1,000億円、それから、サービスIT導入補助金につきましては500億円の予算を計上しながら、これを取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

 

以上、私からの説明とさせて頂きます。ありがとうございました。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

続きまして、財務省、菊地参考人より、外為報告の合理化の検討状況についてご説明をお願いいたします。


【菊地参考人】   

財務省で外為法を担当しております菊地でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

外為報告の合理化に関しまして、これまで、金融庁のご調整のもと、企業、銀行、日本銀行のご意見をお伺いし、検討してまいりました。これを踏まえ、合理化の方向性がおおむね見えてまいりましたので、お手元の資料3の1枚紙に沿いまして、ご報告させて頂きます。

 

まず、外為報告についてご説明いたします。外為法では、対外取引の正常な発展や国際収支の均衡及び通貨の安定を図ることを目的といたしまして、国際収支統計等の作成を財務大臣に義務づけております。また、同法は、国際収支統計の作成や対外取引の実態把握のため、対外取引の当事者に対しまして、各種報告書の提出をお願いしております。これらの報告がいわゆる外為報告でございます。

 

外為報告の合理化に関しましては、決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告書におきまして、企業がEB、エレクトリックバンキングや、FB、ファームバンキングを通じて、電子的指図により外国送金を行うことが増えているということを背景としまして、送金に係る銀行への指図と外為報告、すなわち、支払報告を統合できないか等の提言がございました。

 

現行外為法上、貿易外に係る支払報告は、企業が直接、日本銀行に電子的に提出する方法と企業が仕向銀行に書面で報告書を提出し、その仕向銀行が日本銀行に書面で転送する方法を主に想定しております。他方、一部の銀行では、企業にかわり、報告書を代理作成するサービスを提供しております。

 

こうした中、提言を踏まえまして、最も利便性の高い方法を見出すべく、関係者の皆様のご意見を改めて承った上で得られたコンセンサス、方向性をお示しいたします。

 

提言に対応するためには、支払報告に必要な情報を送金と同時に仕向銀行に送信する必要がございます。そのため、EB、FBの改修が伴うことになります。具体的には、EB、FBは銀行と企業とのコンピュータを電話回線でつなぐ仕組みとなっているため、企業または銀行においてシステム開発が必要となり、これに伴うコストや事務負担が相当程度見込まれるという点について、企業、銀行ともに慎重なご意見がございました。

 

こうしたご意見、及び、その他の企業からのご要望等も踏まえまして、金融庁、日本銀行、銀行会と検討を行い、資料の下段にありますAからDの改善策を取りまとめました。

 

具体的には、Aは、電子の都度報告に関し、現行の専用画面入力方式から、利便性のより高いExcelテンプレート入力方式に切りかえることができないかというものでございます。この措置を講ずることにより、企業で作成したXML形式のファイルでの報告が可能となるほか、現行の専用画面入力方式より煩雑さが解消されるなど、企業にとっては一定の効率化や負担軽減が見込まれます。

 

また、この関連で、Bは、一部の銀行で実施中のいわゆる支払報告作成支援サービスの一環としまして、銀行がExcelテンプレート入力方式に対応した電子フォーマットを企業に提供し、企業による電子報告を可能とするものでございます。この措置を講ずることにより、企業による電子報告が容易になります。

 

次に、Cですが、電子の都度報告、及び、1カ月分を取りまとめる一括報告の提出期限を10日間延長するものであります。

 

さらに、Dは、電子で一括報告する場合に、銀行の店舗ごとではなく、全ての銀行をまとめて提出することを可能とするものでございます。

 

以上、AからDの改善を行うことにより、企業は、自社システムから送金情報を含む外為報告に必要な情報をXML形式で抽出して日本銀行に直接電子的に提出することが可能となります。これまで、仕向銀行に書面で報告書を提出している企業からは、AからDの改善がパッケージで実現すれば、電子報告の導入を前向きに検討したいというご意見がございました。

 

次に、対応の方向性の3つ目でございます。関係者からは、外為報告制度に関する周知を充実してほしいというご意見がございましたので、電子報告の推進に資するよう、財務省、日本銀行としましては、外為報告制度のさらなる周知の充実に努めるとともに、電子報告の浸透度合いに係りますレビューを実施したいと考えております。

 

以上が、提言への対応の方向性でございます。

 

最後に、また重ねてでございますけれども、外為報告は国際収支統計の作成や市場実態の的確な把握などに不可欠なものでございますので、引き続き、皆様のご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

以上でございます。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

続きまして、金融情報システムセンター、亀水参考人より、情報セキュリティに関する取組状況についてご説明をお願いいたします。


【亀水参考人】   

公益財団法人金融情報システムセンター、監査安全部の亀水と申します。よろしくお願いいたします。

 

本日は、現在改訂を進めております当センターの安全対策基準、先月11月に安全対策専門委員会の場で原案をまとめ、現在は会員意見募集を行っております。その安全対策基準の改訂概要についてご説明させて頂きます。

 

まず、おめくり頂きまして、右下2ページになります。これまでの安全対策基準の改訂の流れを簡単にお話しさせて頂きます。

 

安全対策基準は昭和60年の初版発刊以来、金融機関等を取り巻くさまざまな環境の変化に応じて改訂を行ってまいりました。下の表にあるとおり、最近では23年度の8版ですとか、27年度の8版追補改訂において、大震災への対応、ウェブ化の進展、クラウドサービス利用やサイバー攻撃対応、といったことに関する改訂を行っております。そして、今回の第9版の改訂においては、安全対策に対する抜本的な考え方の見直しを行っております。

 

おめくり頂いて、3ページになりますが、今回の安全対策の抜本的な考え方の見直しに当たり、当センターにおける外部委託の有識者検討会、フィンテックの有識者検討会、という2つの有識者検討会から得られた提言に基づき、現在、安全対策専門委員会で改訂を行っているということでございます。

 

さらにおめくり頂きまして、4ページです。左側に有識者検討会の提言、それを踏まえた今回の改訂の主なポイントを右側のほうに4つ、示しております。それぞれの改訂のポイントについて、次ページ以降、簡単にご説明させて頂きたいと思っております。

 

右下5ページになりますが、まずは、リスクベースアプローチの導入に伴う改訂でございます。先ほど、この第9版では考え方について抜本的な改訂を行うと申し上げましたけれども、一言で言うと「ITガバナンスに基づくリスクベースアプローチの導入」ということになります。

 

リスクベースアプローチというのは、金融機関が安全対策を決定するに当たり、リスクの特性に合わせて、適切な安全対策をとるという考え方になります。経営資源が限られる中、全てのシステムについて高い安全対策をとり、リスクゼロを追求するということは合理的ではありません。経営層の使命というのは企業価値の最大化であり、コンティンジェンシープラン等の対策を手当てした上で、リスクを容認するという判断もとり得るということでございます。

 

経営層はITガバナンスを発揮し、リスクベースアプローチの考え方のもと、システムの特性、リスクの特性に応じて安全対策を決定していくことになります。ただし、金融機関等は、社会インフラとして社会性・公共性を有しているということもあり、重要なシステムにおいては高い安全対策をとるべきとしております。その重要システムの定義として、左下のほうにあります「重大な外部性」ということと「機微性」という2つの定義を示しています。

 

「外部性」というのは、リスク顕在化による影響が個々の金融機関の統制可能な範囲を超え、外部に及ぶという性質、「機微性」というのは、いわゆる機微情報等を保有する、といった性質ということになります。

 

また、一方で、重要な情報システム以外の金融情報システムにおいても、基礎的な安全対策は最低限実施するべきとして、今回の改訂を行っております。

 

続いて、右下6ページをお願いいたします。リスクベースアプローチの考え方に基づき、安全対策を決定していく上で、今回の改訂においては、従来の基準を基礎基準と付加基準の2つに分類しております。基礎基準については、全ての金融情報システムで適用すべき基準としており、付加基準については、重要なシステム、今回の改訂で特定システムと定義しておりますが、その特定システムにおいては必ず適用、それ以外の通常システムにおいては選択的に適用するということにしております。

 

続いて、7ページになります。従来の安全対策基準では、自営のシステムというものを適用対象としてまいりました。初版発刊以来、安全対策基準では、自営システムというものを意識してきたのですが、システムの外部への依存度が高まり、その形態も、共同センターやクラウドサービス利用、といったものが増加し、多様化してきております。

 

さらに加えて、フィンテック企業等と連携した金融関連サービスなどが登場してきています。このような状況を踏まえると、外部に対する統制の重要度が増しており、統制のあり方もまた多様化してきていると考えております。そこで、安全対策基準の適用対象を改めて整理し、金融機関等の外部の統制について、統制が及ばない、または、部分的となる、といった場合の安全対策基準の適用方法の考え方、これを新たに示すこととしております。

 

続きまして、8ページになります。先ほど申し上げましたフィンテックに関する有識者検討会の中で、クラウドサービス利用における安全対策についての議論が行われました。そこで提言されたクラウド固有の安全管理策の内容を踏まえて、今回の改訂の中では、既にありました外部委託に関する基準、クラウド利用に関する基準、といったものを外部の統制の基準として改めて整理、統合する、といった改訂を行っております。

 

続いて、9ページになりますが、もう少し具体的な変更内容について説明させて頂きます。

 

まず、基準構成の変更についてです。先ほども申しましたとおり、金融機関においてシステムの外部委託への依存度が高まっており、その形態も多様化してきている。そういったことを踏まえて、統制面の安全対策基準を明示するということが有効であると考えております。

 

そこで、安全対策基準の構成を見直し、従来は運用基準、技術基準といった構成を行っていたのですが、それを統制基準、実務基準といった構成に再編いたしました。また、その実務基準の項目も従来の勘定系システムを前提とした構成から、利用目的に沿った構成に並びかえを行っております。

 

続いて、10ページになります。安全対策基準は、先ほど申し上げたとおり、昭和60年の初版以来、数多くの改訂を重ねてきております。個々の改訂の中では、必ずしも記述の様式や表現の統一等がなされてこなかったということもあり、利用者にさまざまな解釈を生んでいると推察されます。

 

今後、フィンテック企業等新たな金融関連サービスの担い手も、適切に安全対策を決定、判断するといった上で、記述内容を理解しやすくする必要があると考え、今回の改訂に当たり、記述の様式、表現のルールを再度見直し、読みやすさの対応ということも行っております。

 

最後、11ページになりますが、今回の第9版の考え方の適用時期についてです。今回は考え方の抜本的な変更を行っていることから、急激な適用の変更はそれ自体がリスクになる可能性を含むと考えております。そこで、金融機関等において、新規のシステム構築やシステム更改といったものに合わせて適宜適用していく、といったことも可能であると、説明を加えております。

 

今後の改訂のスケジュールですが、現在実施している会員意見募集は来年1月12日までとしており、そこで頂いた意見等を集約、反映し、2月23日に予定しております最後の安全対策専門委員会で承認を得て、3月末までには内容について開示し、いわゆる書籍としての発刊は5月末をめどに予定しております。

 

以上でご説明を終了させて頂きます。ありがとうございました。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

それでは、これより、皆様からご意見、ご質問をお伺いする討議の時間とさせて頂きます。活発なご意見を頂ければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。どなたからでも結構ですので、ご発言をお願いいたします。鳥海委員。


【鳥海委員】   

ありがとうございます。

 

私からは、全銀協様と、それから、財務省様、それから、金融庁の事務局にコメントをさせて頂ければと思います。

 

まず、初めに、全銀協様に意見、要望を1点述べさせて頂きたいと思います。

 

これまでの関係の皆様のご尽力に深く感謝申し上げたいと思います。その上で、私ども外資系銀行の立場からコメントさせて頂きますと、XML電文への移行、それから、金融EDIの活用についてなのでございますが、来年末に稼働予定の新システムについてはこの仕様はほぼ固まっているようですので、この場で多くは申しませんけれども、マネーロンダリング対策などに照らして、EDI情報のスクリーニングは十分にできるのかという点に引き続き注目しております。具体的には、送金指図が送られてくるのと同じタイミングでEDI情報も全件スクリーニングできるレベルの仕様が望ましいと考えております。

 

2019年には、FATFの対日審査が予定されておりますほか、2020年をめどに予定されているXML電文への全面移行、こうした先々を展望して、一番望ましいソリューションを見出すべく、ご協力を頂ければと存じております。先ほどご紹介がございましたとおり、全銀ネット様では、有識者会議など検討の場を設けていらっしゃるということですので、そうしたPDCAサイクルの中で、こうした点にも目配りをして頂ければと存じております。

 

次に、財務省様に2点。

 

先ほどご紹介頂きました外為報告の合理化についての前進を歓迎するとともに、そのタイムライン、実現のタイムラインについてもう少し具体的に教えて頂ければと存じます。

 

先ほどお伺いした内容を私なりに解釈しますと、金融審議会の決済高度化ワーキング・グループにおける企業側の要望は、銀行へのデータ送信をもって法令上の外為報告として位置づけてもらうことはできないのかという、いわばワンストップ・ショップという要望だったというふうに理解しておりますが、今回の案は、それに比べますと、真正面から答えるというよりは、電子化を打ち出しながら、仕向銀行経由ではなくて、企業から日銀へ直接報告するルートへと促そうとしているように伺えます。これが企業様にとって本当の意味での省力化メリットにつながるのかどうか、EXCELテンプレート方式の採用がどの程度アピールするのか、このあたりは企業側の皆様の受けとめ方を見てみないとわからないように思います。

 

私どもからは、送金指図を作成する際に、企業様がご利用になるパッケージソフトウエアベンダー様のノウハウなども活用しながら、さらなる合理化の工夫を続けて頂くようお願いしたいと存じます。

 

もう1点、これは今回の検討会のスコープには必ずしも入っていないのかもしれないの ですけれども、外為法との関連で申しますと、海外送金における取引時確認等の際に、幾つかの考え方として、例えば犯罪収益移転防止法における住居の確認、それから、外為法における居住者・非居住者の確認、これに加えて、外為法においては居住性の判定という考え方があるように伺っております。

 

これらの考え方の間には、お互いに齟齬はないのかもしれないのですけれども、金融機関の現場におきましては、その理解と実務に若干混乱がみられるようでございます。今後、こうした考え方の整理をして頂いてもよいのではないかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 

最後に、金融庁事務局にお尋ねを2点いたしたいと存じます。

 

1つは、今年の6月21日に、「FinTech時代のオンライン取引研究会」が立ち上げられましたが、現在までの検討の進捗状況はいかがなのでしょうか。また、今後、いつごろのタイミングで、どのような成果を公表して頂ける予定なのか、教えて頂ければ幸いです。

 

もう一つは、FATFが11月の初旬に、FATF position on FinTech and RegTechというメッセージを公表しておりまして、これを拝見したのですけれども、あまり多くは語られておりませんでしたので、その意味するところや方向性について、おわかりであれば、もう少しご説明頂けるとありがたく存じます。

 

以上です。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

今、ご意見とご質問があったと思いますけれども、相澤参考人。


【相澤参考人】   

相澤でございます。お答えを申し上げます。

 

全銀EDIシステムでございますけれども、まず、この対象は総合振込でございまして、データの流れとしては2種類ございます。1つが、XML電文が銀行のシステムを経由する方式、これをIB方式、インターネット・バンキング方式と呼んでおります。もう一つが、銀行を経由しない方式、これをFB方式、ファームバンキング方式というふうに呼んでおります。

 

まず、前者、インターネット・バンキング方式ですけれども、こちらにつきましては、銀行のシステムをXML電文が経由しておりますので、各銀行において工夫をして頂くということは可能だというふうに考えております。

 

一方、XML電文が銀行を経由しない方式、こちらにつきましては、このXML電文は全銀EDIシステムに格納されておりまして、これを金融機関がダウンロードして確認することができるということにしております。

 

お尋ねのところで、リアルタイムという話がございました。総合振込という点も含めまして、そのリアルタイムという点について、どこまでの機能が必要なのかということにつきましては、金融機関の声も聞きながら、その必要性について検討を重ねていきたいというふうに考えております。もとより、マネロン、テロ資金対策の重要性は十分に認識をしておりますので、このようなご回答とさせて頂きます。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

財務省のほうから、いかがでしょうか。


【菊地参考人】   

まずは、お示しした措置のタイムラインについてのご質問についてお答えいたします。

 

まずは、お示しした方向性でご理解が得られればという前提でございますけれども、その後に、今後必要な作業等を進めてまいります。対応としましては、外為法に基づく省令の改正とか、省令に伴うパブコメとか、それから、日本銀行におけるシステム改修等もこれから行います。周知期間等も設けますので、おおむね今見込んでおります時期というのは2019年ぐらいではないかというふうにおおまかには踏んでございます。

 

次に、パッケージベンダーさんのノウハウなども取り込むべきではないかという点に関しましては、今回の改めて皆様のご意見を伺う中には、システムベンダーさんのご意見は実はお伺いしてないんですけれども、先ほどご説明しましたとおり、送金フォーマットの改定にはシステム開発に係るコスト負担等、相当程度見込まれるということで慎重なご意見がございましたので、それを踏まえまして、別途ご意見のありました企業のコスト負担等のほとんど見込まれないAからDの対応を行ってはどうかというふうに整理した次第でございます。

 

また、ご提言に真正面から対応してないのではないかというご指摘がございました。確かにそれはそうでございますけれども、先ほど申し上げた点なども踏まえまして、報告の合理化といった観点からは、一定の合理化がこちらで見込まれるんではないかと考えております。

 

また、送金に係る取引時確認とか、犯収法上の義務、それから、居住性の判定などについての理解を進めたほうが良いのではないかというお話ですけれども、そちらに関しましても、今回の提言外ではございますが、あわせて、今後、考え方の整理等を検討してまいりたいと考えております。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

それでは、事務局から、お願いします。


【松尾総務企画局参事官】   

オンライン研究会の件でございますが、これ、本年6月末に設置して以来、5回開催しておりまして、私も参加して、いろいろなお話を伺わせて頂いております。

 

そういうような意見、事業者の方からさまざまな意見とかアイデアを頂いて、また、自社の取組みなんかもお聞きしているという中で、日本でもオンラインで完結するような本人確認の方向、方法を設けられないかということで議論をさせて頂いておりまして、そういう議論も踏まえまして、現在まさに関係省庁といろいろ具体的な案について調整も進めている状況ということでございます。

 

そういう意味で、具体的ないつまでということを、物事の性質上、なかなか申し上げられないですけど、その重要性は十分踏まえた上で、一生懸命調整しているということでございます。


【森下座長】   

よろしいでしょうか。

 

FATFの件については。


【森総務企画局企画課調査室長】   

FATFの件につきましては、手元に情報を持っておりませんので、申しわけありませんが、この場でお答えしかねます。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

いかがでしょうか。加藤委員。


【加藤委員】   

日本商工会議所の加藤です。私から4点申し上げます。

 

まず、1点目の「XML電文・金融EDI」について、先ほど全国銀行協会さんからお話がありましたが、まず大事なのは「周知」で、そのあと「活用」という段階になると思います。

 

「周知」に関し、私ども商工会議所では、日頃、①気付きを促す「チラシ」(A4両面等)の配布や会報・ホームページ・メールマガジン等での周知、②内容を直接伝える「説明会」の開催、③外部資源の活用で中小企業庁の「ミラサポ」のメールマガジンへの掲載依頼などを実施していますので、参考にしていただければ幸いです。

 

特に、「チラシ」については、全銀協さんにお願いしていますが、ぜひ早めにご対応いただけると幸いです。また、「説明会」については、全銀協さんの資料1の19ページ目に説明会という項目がありますが、全て商工会議所で対応させていただいています。これらは拠点都市の商工会議所ですが、商工会議所は全国に515あります。全て全銀協さんにご対応いただくのは困難だと思いますので、おって地元の金融機関が講師となって、希望する商工会議所で説明をしていただければ、周知が進むと思います。もちろん商工会議所だけでは力不足ですので、様々な団体・府省庁などにもご対応いただけると良いのではないかと思います。

 

他方、今申し上げたのはある意味「横の対応」ですが、あと「縦の対応」もございます。具体的には、いわゆる業界団体とか、それらを所管する府省庁を巻き込む必要があると思います。また、中小企業等経営強化法に基づいて、業種ごとに「事業分野別推進機関」を設置し、業種毎の生産性向上に向けた「事業分野別指針」を策定しています。例えば、その指針の中に「金融EDI」を盛り込んでもらえば、周知が進むと思います。

 

また、政府においては、様々な府省庁連絡会議等がありますので、あらゆるチャネルでシャワーのように周知依頼をすることが大事だと思います。

 

次に「活用」の段階です。企業側からすると、とにかく「利用コストが低い」ことが重要です。厳密に言えば「費用対効果」なのですが、特に中小企業の場合は、金融EDIを頻繁に使う機会がないとすれば、「初期コスト」「利用コスト」の両面で低コストというのが大事になりますので、ご配慮をお願いします。

 

さらに、より効率よく活用するためには「IT化」が必須になると思います。先ほど、中小企業庁の師田技術・経営革新課長からお話がありましたが、事業者向けのものづくり等補助金やIT導入補助金、さらには支援体制の構築等によって、中小企業・小規模事業者のIT化を推進していただきたいと思います。さらには、先ほどお話がありました受発注EDIと金融EDIの連携も大変重要だと思います。

 

2点目の「手形・小切手の電子化の検討」については、月曜日(平成29年12月18日)から会議がスタートしましたが、日本商工会議所など中小企業関係3団体が連名で意見陳述をしました。ぜひ、良い方向に進むことを期待しています。

 

3点目の「税・公金収納の効率化」については、前回、私から意見を申し上げさせていただきましたが、期待していますのでぜひよろしくお願いします。

 

最後に4点目の「キャッシュレス決済への対応」についてです。近年、頻繁に、マスコミ報道等で、キャッシュレス決済の話が放映されています。ただ、中小小売り・サービス業、特に地方の中小企業ではなかなか進んでいないという声が聞かれます。中小企業においては、私は勝手に「3つの壁」と申し上げていますが、①決済利用料、②カードリーダー等の端末代、③入金までのタイムラグ、の3つの壁が障害となり、キャッシュレス決済になかなか対応できていない状況だと思います。

 

他方、「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日閣議決定)において、「キャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指す」という目標が掲げられておりますので、この3つの壁を解消し中小企業が低コストでキャッシュレス決済を活用できるような、画期的な環境をぜひ整備していただければ幸いです。以上です。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

林委員、お願いします。


【林(尚)委員】   

ご意見、ご指摘、ご指導、まことにありがとうございます。

 

まず、XML電文につきましてはご指摘のとおりと理解しております。あらゆる方法でシャワーのように周知を徹底すること、それにつきまして、全銀協・加盟行として、できるべく努力は全てきちんとしてまいりたいと、このように考えております。引き続き、方法論等につきましても、さまざまな観点からご指摘を賜りたく、よろしくお願いを申し上げます。

 

また、中小企業におけるIT化につきましても、私どももぜひご一緒させて頂きたいと、このように考えております。さまざまな観点、場面において、皆様に使い勝手のいいUX、UIをご提供申し上げるとともに、操作につきましても、ご一緒にタッチパネルに触れながらといったような機会もこれから積極的に設けてまいりたいと、このように考えてございますので、ぜひともご指導頂きたいと思っております。

 

手形、税・公金につきましては、期待を頂戴しているということでご発言を頂きまして、まことにありがたいことと理解をしております。手形交換の、手形・小切手の廃止ありきというスタンスではなく、世の中の流れを踏まえて、個別行として、あるいは、協会全体としてサービスを磨いていくその結果として、手形・小切手が電子化されていくというゴールに収れんしていければというふうに考えておりますので、この点につきましても、お客様お一人お一人の利便性を阻害することなく、どういう解決策がお示しできるのかということについて、真摯に取り組んでまいりたいと、このように考えております。

 

最後に、キャッシュレス対応につきましても、3つの壁ということでご指摘を頂戴いたしました。この3つ、これまでなかなか乗り越えてこれなかった壁でございますが、金融機関としても、ここから先々、こういったご利用の壁を下げていくことがさまざまな観点で社会的費用を削減することに直結すると、このように理解しておりますので、新しいサービスのあり方をご提供できますように努力をしてまいりたいと思っております。

 

どうぞよろしくお願い申し上げます。


【森下座長】   

  ありがとうございました。

 

 いかがでしょうか。戸村委員、お願いします。


【戸村委員】   

ありがとうございます。全銀協さんのご発表について、2点、コメントさせて頂きたいと思います。

 

第1点は、有識者会議について思うところを申し述べさせて頂きたいと思います。

 

全銀ネットは民間の事業体ですけれども、ACHでもありまして、決済システムに欠かせない独占的なサービスの提供者でもあります。その意味では、公的なインフラであるとも思います。そうしますと、日本経済全体を考えたときの全銀ネットのあり方について、何らかの形での公的なガバナンスが継続的になされることは避けられないと思います。その意味では、銀行界にとっても、効率的にガバナンスを受けることがよいと思いますが、今回改組された全銀ネットの有識者会議がそのような効率的なガバナンスの一翼を担うような形になるとよいと思います。そういう意味では、一利用者としても期待をしたいと思っております。

 

2点目は、手形・小切手、税・公金収納諸項目の電子化についてでございますが、これらの電子化の望ましいあり方を社会全体の、ある種、経済学的な視点ですが、社会全体の最適な資源配分の視点から考える場合には、各事業者・自治体が電子化に対応するためのコストと銀行が紙ベースの処理を行うための事務費用を比較して、コストの低いほうを選ぶというのが原則になると思います。

 

ただ、このような比較において難しいのは、各事業者・自治体が感じる電子化対応コストが当事者にしかわからないという点であります。この課題に対しては、紙ベースの手形・小切手の取扱い手数料に銀行が負担している事務処理費用を反映させた上で、各事業者・自治体に電子か、紙かを選んでもらうということが解決策になると思います。

 

現在のような決済システムの転換期においては、紙ベースの手形・小切手、税・公金収納の取扱い手数料に事務処理費用が反映されない場合には、社会的に不効率な選択が行われる懸念があると思いますので、意見として申し述べさせて頂きたいと思います。

 

以上です。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

相澤参考人。


【相澤参考人】   

ご指摘、ありがとうございます。全銀ネットの有識者会議につきましては、そのような視点から運営、PDCAを回していくということを考えてございます。

 

それから、もう一つの手形・小切手、あるいは、公金の電子化についてですけれども、ご指摘のとおり、要するに、便利で安いほうに当然流れていくということではございますが、全銀協自体が業界団体でございますので、あまり手数料について深くコミットするということもできないというところもございます。

 

さはさりながら、何もないということではもちろん議論になりませんので、モデルケースのようなものをお示ししながら、これだけ非効率なんですけどというようなご提示をさせて頂くという方法はあろうかと思いますので、考えてまいりたいと思っております。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

河野委員、お願いします。


【河野委員】   

ご報告、ありがとうございました。私は多分、この推進会議には、消費者というか、一般国民の感覚で参加させて頂いておりますので、ここまでのご報告に対して、どう受けとめたかというのを、専門的な知識はございませんけれども、お伝えしたいというふうに思っています。

 

まず、消費者から見える今の決済関係の現状というのをお伝えしますと、はっきり言って、不安感というのが一番前面に出ています。フィンテックという言葉は市民権を得てきているとは思うんですけれども、ただ、フィンテックが一体何を意味するのか、それはやはり私たち一般国民にはよくわかっていません。

 

ざっくり言いますと、例えば最近ですと、仮想通貨が投機の対象になっていて、10倍、100倍みたいな情報が流れてきますし、法定通貨以外に、決済に利用されるそういった、代表で言えばビットコインだというふうに思っていましたが、実はビットコインというのが単なる一つの名称、銘柄であって、それ以外にも非常にたくさんあるということなど、そういった仮想通貨の存在とその価値や、実際の市場でどういう振る舞いをするのかということも私たちはよくわかっていません。

 

それから、金融サービスへのアクセシビリティというところで、やはり一般国民とすればちょっと不安があります。例えば、大手メガバンクさんが、この間、人員削減等を含めて、全国展開の規模縮小というのを打ち出しましたが、それの真意というところがやはりよく見えてきませんし、そのかわりというか、コンビニには銀行ATMがあるじゃないかと言われていますが、それもいつまであるのか、ちょっと不安です。

 

さらに、つい最近では、スーパーのレジで、小口現金を引き出せるような方向に考えているということで、じゃあ、一体これまでの私たちが考えてきたお金のやりとりってどうなっていくのだろうか。先ほどお話もありましたけれども、キャッシュレスというのも浸透してきていて、スマホに、決済アプリを入れればスマホ決済ができることはわかりますが、その中のフリーマーケットのアプリでは、現金を出品して、それに利息をつけて取引するという、いわゆる円というのが商品になって、民間でC2Cで取引が成立するという報道もありました。それは禁止されて今はやられていないと思いますが、私たちを取り巻く金融のありようというのがものすごく変わっている感じがしています。

 

今回、決済の高度化対策がきちんと方向性を決めて、全銀協さんはじめ、関係各所の方々がほんとうに鋭意努力してくださっているということはよくわかるんですけれども、一方で、若い世代も含めて、金融教育みたいなところにやはり力を入れて頂きたいというのと、それから、もう間違いなく目前に迫っている高齢化社会に対する、逆に言うと、一人も見逃さない、IT技術にあまり慣れていない世代に対しても、しっかりとした取組みとその見える化というのをやはり保障して頂きたいと思っていて、ぜひ、広報、それから、教育の面でその決済の高度化ということを国民に向けてアピールして頂きたいなというふうに思っています。

 

それが、まず、受けとめでして、質問が幾つかあります。よろしいでしょうか。


【森下座長】   

どうぞ。


【河野委員】   

質問の1点目は、イノベーションという言葉がこの会議の中でどんなふうに使われるのかなと思っていたんですけれども、何となく、現状を少し小手先を変えて対応するというふうなご提案かなというふうに感じています。

 

それはなぜかというと、先ほどからのご議論で出てきているように、コストがやはり見える化されていないといいましょうか、合理化に対してはみんな確かに取り組みたいと思っているけれども、それぞれのステークホルダーのところで、一体どれだけのコストを負担すればいいのかというのがやはり明らかになっていない。  なので、スケジュール感は示されていますけれども、そのコスト負担が見えないということがほんとうにこのスケジュールを設定しておいて実効性が担保できるのかというところがどなたか教えて頂ければというふうに思っているのが1点目です。

 

それから、2点目の質問は、全銀協さんの資料の金融ITイノベーションに向けた新たな取組みの6番目で、これは一般の消費者にも非常に近しい話だと思いますが、携帯電話番号を利用した送金サービスの検討、5ページの下に書いて頂いているものです。ここで、今、鋭意検討していて、送金アプリ等を開発中というふうに書いて頂いているんですが、そもそも、携帯電話番号を利用した送金サービスは、ここで新たに開発しなければいけないものなのか、既に諸外国を含めて、実際こういうものはあるんではないかと思うんですけれども、ここでわざわざ開発中とおっしゃっているのは、やはりメガバンクも含めて、全ての金融システムにおいて、携帯電話番号を利用した送金サービスというのを実現するためには、大きなシステムを開発しなければいけないという意味なのかというのを教えて頂ければと思います。

 

3点目が、FISCさんが提案して、ご報告してくださった安全対策基準のその改訂版の概要で、新たな方向性については、私自身もそうだなと非常に納得感もありますし、ぜひ頑張って頂きたいと思うんですけれども、11ページにお示し頂いた経過的措置というところで、基準というのは、こういうふうにすべきだというふうにあくまでも強制力なく示すものだと思うんですけれども、その実効性の確認といいましょうか、例えば、この第9版に沿った形で自社というか自行は安全対策をしていますというふうなその認証といいましょうか、確認というのはどうされるのか。

 

いわゆる厳格な認証制度を入れてしまうとお金もかかるし、大変だと思いますが、あくまでもこういう指標だから、これに沿ってやってねということで、皆さん、そういう形で取り組んでいくんだろうなというふうに考えていらっしゃるのか、何らかの実効性の担保みたいなものを考えていらっしゃるのか、教えて頂ければと思います。

 

長くなりましたが、以上です。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

林委員、お願いします。


【林(尚)委員】   

ご指摘を頂戴しまして、まことにありがとうございます。

 

一番最初にご指摘を頂きましたフィンテックの意味合い、これをしっかりとお示し、お伝えできてないということにつきましては、今後の大きな課題として、協会としてもしっかりとした広報活動、あるいは、教育情宣活動をしてまいらなければならないと改めて肝に命じているところでございます。対象領域が大変広く、輻輳、錯綜している部分もございますので、一つ一つひもときながら、しっかりとコミュニケーションさせて頂きたいと、このように考えてございます。

 

イノベーションにつきましても、今回のお示し申し上げた内容につきまして、小手先を変えているというようなご指摘もございました。実際のところ、非常に高度に発達してまいりました日本国内の決済の仕組み、枠組みについて、非連続なジャンプを行おうとするときの実態的・実質的な着地をどこに見出すかということについては大変難しい問題というふうに捉まえております。

 

やはり、100歩、200歩先に行くというよりも、もう一歩、あるいは、2歩前に出られるかどうかというところに現実的な着地点があるんではないかと。また、フィンテックそのものも非常に一種内容がつかみにくい、そういう実態、存在であるということを踏まえ、今回はこういったご提示とさせて頂いてございます。この辺は、今後のコミュニケーションの中で、さまざまな実効性を担保する仕組みをまたお示しできるように努力をしてまいりたいと、このように考えているところでございます。

 

携帯電話番号についてもご指摘頂きましたので、それについては相原のほうからご説明を申し上げたいと思います。


【森下座長】   

相原参考人、お願いします。


【相原参考人】   

今現在、個別行の取組みといたしまして、メガバンクにおいて、まだ実証実験という段階ではございますが、実際に、携帯番号などを利用して頂いて、銀行から銀行へのお金の送金を行って頂けるような開発をやってございます。

 

ご質問にございました、じゃあ、例えば諸外国、シンガポール等で既にこういったサービスが実現しているのに、実際に銀行で開発が必要であるかというご質問であったかと思いますが、大変申しわけございませんが、私どもの口座から例えば三菱東京UFJ銀行のほかのお客様への口座のご送金、こういったものをやるためには、実際に手前どもの勘定系のシステムというのがございますので、そこからお金を引き落しをさせて頂いて、先方の銀行の指定のお口座に入金するような、そういう形の裏側の仕組みをつくらないといけない。こういった連動等の仕掛けが必要になってまいりますので、システム開発はどうしても必要になると、こういうことでございます。

 

携帯番号に限らず、日本におきましては、いろいろなSNSのIDでございますとか、そういったものも活用できないかということも含めまして、お客様の利便性向上につながるような、そういったサービスがつくれないかということで、今、研究を進めていると、こういう状況でございます。

 

以上です。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

亀水参考人、お願いいたします。


【亀水参考人】   

先ほどご質問頂きましたことに対しては、そもそものこの安全対策基準の位置づけをご説明したほうがいいかと思っております。

 

この安全対策基準は、いわゆる業界の自主基準という位置づけになっておりまして、いわゆる認証制度というものがあるものではございません。昭和60年に初版が発刊されて以降の改訂というのは、金融機関のさまざまな各業態から代表を出して頂いた委員からなる安全対策専門委員会で行っております。そこで各業態の代表が皆で知恵を集めてつくってきている、そして、改訂を重ねてきているといった基準になっています。

 

金融業界全体の代表が集まって全員でつくっているものなので、逆に、皆でこれを守っていきましょうと、そういった自主基準の位置づけになっています。委員会には、金融庁の方にオブザーバーとして入って頂いているという形になっております。

 

そういった改訂を重ねてきた安全対策基準ですが、現状、既にかなりの金融機関において、これに基づいたいろいろなシステムの安全対策をとり、またリスク管理を行って頂いているということで浸透していると認識しております。

 

あと、質問にて、先ほど11ページに触れて頂きましたけれども、今回、大幅な改訂を加えるものですが、この基準のほうを変えたからといって、そのとおりにシステムの対策を打つ、早急に対応するのは非常にリスクが高いと考えておりますので、それについてはシステムの新規構築や更改のようなタイミングで適用していけばよいということで、このような記載を加えているという内容でございます。

 

以上です。


【森下座長】   

よろしいですか。


【河野委員】   

はい。


【森下座長】   

翁委員、お願いします。


【翁委員】   

三、四点、コメントをさせて頂きたいと思います。

 

まず、XML電文への移行につきましては、先ほど加藤委員からもご発言がありましたけれども、できるだけこれを普及させていくことが非常に重要だと思っております。特に、先ほど中小企業庁のほうからご説明頂きました受発注EDIとの連携によって、かなり中小企業の生産性の向上というのが期待できるというように考えていますので、こういった方向で、全体として、日本の中小企業の生産性向上につなげて頂きたいというふうに思っております。

 

2つ目は、ちょっと質問等もあるんですけれども、先ほど、オープンAPIにつきまして、かなり未来投資戦略に沿った形で、オープンAPIへの取組みというのが進んでいるということを、29ページですか、アンケート調査でご説明頂いたんですけれども、Cというところで、全くこういった状況にないというところが23行ぐらい入ってございます。

 

2020年までということで、関心がないという銀行はもう仕方がないんですけれども、技術的なこととか、そういう制約でできないということであれば、それをサポートする仕組みというのが必要なんではないかというふうに思うんですが、このあたり、どういう状況なのかということを教えて頂きたいですし、また、オープンAPIというのは不可逆的な動きだというふうに私は思っておりますので、できるだけそういう方向でできるような体制をつくって頂きたいというのが2つ目でございます。

 

それから、3つ目は、税・公金収納というのが非常に私も重要な取組みだというふうに思っております。非常にOECD諸国の比較でOECDアット・ア・グランスというのもあるんですけれども、それでも、税収納の効率性というのはかなり日本は低いほうでございまして、やっぱり行政全体のコストを削減していくということや、企業にとっても非常に煩雑になっておりますので、ここはぜひタイムスケジュールを組んで進めて頂きたいというふうに思っております。

 

最後のコメントなんですが、13の項目で進めてきているわけでございますけれども、例えば、携帯電話を利用した送金サービスとか、ブロックチェーン技術のところとか、技術でくくったものと、それから、P2Pの資金取引というようなことでご説明頂いたんですけれども、例えば民間銀行のデジタル通貨とか、そういうのも出てきていて、キャッシュレスという視点で見ると、またここに入り切れないいろいろな動きが出てきているような感じがしております。

 

ですので、これはこれで私、非常に進捗していてすばらしい取組みだというふうに思っているんですけれども、何か情勢もいろいろ変化したり、いろいろ新しい動きが出てきたりしていて、これで拾い切れないような新しい動きについて、どういうふうに見ていくべきなのかなということをちょっと問題意識として持っておりますので、お伝えしたいと思います。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

オープンAPIに関して、いかがでしょうか。相澤参考人、お願いします。


【相澤参考人】   

資料の29ページのC、23行もあるではないかというご指摘、厳しいご指摘だと思います。技術的な問題なのかという点については、それぞれの金融機関にベンダーがついているわけでございますので、何も自前で全てやる必要もないわけでございます。

 

むしろ、このCの23行というところが、オープンAPIの意義といいますか、これを導入することによって、銀行にとっても最終的にメリットがあるんだというところの意識、そこが果たしてどうなのかなというところもございますので、今後も引き続き、この23行を狙い撃ちにするわけではありませんけれども、ご理解を賜りますように、取組みを進めていきたいというふうに思っております。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

木原委員、お願いします。


【木原委員】   

三井住友カードの木原でございます。先ほどからお話を伺っておりまして、我々カード会社として、日々、フィンテック企業と連携したイノベーションも進めているんですが、実際、未来投資戦略で言われているようなキャッシュレス決済比率の水準を10年かけて4割の水準に持っていくということはなかなか難しいなと思っております。

 

ここでの議論もオープンイノベーション、技術革新の観点に非常にフォーカスされているんですけれども、先ほど河野委員がおっしゃいましたとおり、我々自身、事業者として消費者に対して、あるいは、先ほど加藤委員からもありましたが、加盟店様に対して、こうした最新のペイメント技術を理解し使いこなして頂くまでにどのような道のりをたどっていくべきかという課題は非常に難しい話だと思っております。

 

具体的に、例えば、先ほど、加盟店様には3つの壁というご指摘がございましたが、例えばスマホ端末スキームを提供されている事業者様の場合ですと、加盟店手数料は3%そこそこでまだまだ高いというご批判もありましょうが、ひところの水準からいうと、随分低くなりました。

 

あるいは、入金のラグにつきましても、特定行を振込口座に指定した場合には、翌営業日にはご入金させていただくような仕組みも導入されています。端末も、スマホにつなげるようなICカードリーダー代も、これも使って頂ければ、実質無料にするというようなことで、相当程度、事業者として、利用のハードルというのを下げる努力はしており、その結果は弊社個社としてはそれなりの動きではあるんですが、まだまだ世の中全体で見ると、アクセプタンスの外延が拡がってきたと言うにはまだまだというところがあります。

 

他方、現状を捉まえますと、日本における小売・サービス業の中で、大手は、例えばクレジットカード、電子マネー、いろいろな支払手段を導入されています。ところが、皆様も皮膚感覚としてご認識頂いていると思いますが、例えばスーパーでも長いレジ待ち行列があり、これはカード払いをしていただくと、わりとすっとお支払いできるんですが、相変わらず別にご高齢の方に限らず、皆さん、現金払いがとても多いのが実情だと思います。やはりインフラはあるんだけれども、それを消費者の方々が望んで使おうとするところまで至っていないという、このギャップがキャッシュレス決済推進上も非常に大きな課題ではないかと感じています。

 

ですから、いろんな加盟店様に向けても、消費者に向けても、便利なものをどんどん提供していくことは、アーリーアダプターの人たちはすぐ採用して頂けるのかもしれませんが、デジタルデバイドじゃないですけれども、いくらインフラを整備しても、それを理解し、便利だと思っていただけるような、全体を底上げするような努力をやっていかなければ、なかなかキャッシュレス決済は進んでいかなと日ごろ認識しております。一事業者としてもしっかりオープンイノベーション促進政策に呼応して取り組んでいかなければならないと思っておりますが、半面こういうアプローチをする中で、河野先生からのご指摘のとおり、消費者・加盟店啓発にも少し力を入れてやっていかないと、なかなか技術オリエンテッドなアプローチだけでは厳しいのかなという感想を持っております。

 

以上でございます。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

山上委員、お願いします。


【山上委員】   

林委員、それから、参考人の皆様、レポート頂いて、ありがとうございました。つながる経済というのが着々と準備が進んでいるんだなという状況が理解できました。

 

ただ、いろんな先生方からご指摘頂いていますように、例えば、公金の収納を効率化させる、手形・小切手のペーパーレス化を進める、それから、中小企業の受発注をIT化する、さらに、それを金融EDIと連携させていく。こうしたインフラ側の動きや業界側プッシュがもたらすものは、世の中にデジタルデータが供給されて、それがオープンAPIによってより加速的に利用されるような環境になるということです。一方、今、ご指摘頂いたように、ラストワンマイルにある3つの壁だとか、消費者の方が受け入れられないだとかというところのギャップを埋めていく人たちというのが、ある種のフィンテックだったりもするわけだと思うんです。

 

こういうデータが世の中にいっぱい行き渡った世界を、さあ、どうやって生産性の向上に結びつけていきますかというときに、きちんとした、それをどこが困っていて、どういうふうに解決してほしいんだけどというのが、必ずしもフィンテックの人たちも、いろんなことがサイロの中でぼんぼん起きているような感じなので、きちんとしたステートメントになって伝わり切れてないのかもしれないと思います。

 

ちなみに、シンガポール、それ以外でも行われているのかもしれませんけれども、1年に一度、フィンテックフェスティバルなどというものがありまして、そこではMASが中心になって、100個のプロブレムステートメントというのを事前に何カ月も前に出します。それに対して、各フィンテック事業者が、その問題に対して解決策をどんどん提案していって、コンテストが行われて、イノベーションが実現していくというような、そんな流れがあるわけで、今日も参考事例として、全銀のEDIのときに、NTTデータさんが主催のビジネスコンテストもありましたよというのがたしか20ページに挿入されていたかと思うんですけど。

 

そういうものを意図的につくっていったりしない限り、なかなかちまたに認識されるというのは難しいんじゃないかなと思っていまして、誰が責任を持つ話なのかはちょっとわからないんですけれども、そこら辺までえぐっていかないと、なかなか普及というのは難しいのかもしれないと思いました。

 

それから、もう一点、先ほど翁先生のほうからご指摘頂いていた新しいものに対してどういうふうな構えをしていくのかということでありますが、これは前回の同じ会合でも、私のほうでも提言を申し上げたものと非常に近いのかなと思っています。そこは私もずっと気になっていまして、特にキャッシュレスもそうですし、いろんな動きがあると思っています。これをどういうふうにこの会議として取り上げるのがいいのか、もしくは、最近立ち上がっておりますけれども、スタディグループとこの会議がどう連携していけばいいのかというのも明確にしておくべきではないかと考えております。

 

以上です。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

岩原会長、お願いします。


【岩原金融審議会会長】   

本日ご報告頂きました皆様、それぞれ、決済高度化に向けて大変努力されて頂いて、金融界におかれましても、林委員のご報告にありましたように、13項目のほか、手形・小切手の電子化、あるいは、公金の電子化、公金収納等の電子化等ご努力頂いていること、大変高く評価したいと思います。うまくいっているものもあれば、なかなか進まないものもあるようですけれども。

 

ただ、1点、先ほどの林委員のお話からは申し上げるまでもないかなとは思ったんですけれども、手形・小切手の電子化については、非常に注意深く進めて頂きたいということを申し上げたいと思います。

 

全銀協資料の12ページのところを見ますと、このオールジャパンでの手形・小切手の電子化とあって、3行目のところに、「目標時期を設定して手形・小切手制度の見直しやその電子化を実現することを検討する」と書かれておりますが、手形・小切手の電子化といっても、前の11ページの上の3つのポツの2つ目のところに書かれているところでは、手形はでんさい、小切手は振込にシフトすることを検討と書かれていますので、新たな電子化した手形・小切手のシステムをつくるのではなくて、手形についてはでんさいのほうに移行してもらう、小切手は振込のほうに移行してもらうということで、むしろ、ここに書かれているのは、手形・小切手を廃止することによって、でんさい、あるいは、振込に移すということが電子化になるというように読めるわけであります。

 

確かに、既に、電子記録債権制度、でんさいをつくってありますから、ここにさらに上乗せする形で電子手形の制度をつくるというのは非常に難しい。そうなると、でんさいと振込にシフトしてもらって、利用の非常に減っている手形・小切手を廃止することによって、社会的なコストを削減しようという声が出てきているものと理解しております。

 

ほんとうに手形・小切手の利用が非常に減ってしまって、いわば自然死のような形になっていった場合、これは当然、廃止ということになると思います。しかし、確かにピーク時に比べますと利用量は10分の1に減っておりますが、過去10年ぐらいを見ますと、10分の1に減った後は一定量の利用がずっと続いています。大体5,000万枚から6,000万枚の利用があるわけでありまして、低位かもしれませんけれども、安定したニーズが依然としてあるということがわかります。

 

これはやはり中小企業等で手形・小切手をなお使う、使いたいというニーズがそれなりにまだあるということを示していると思います。アンケートなどを見ても、特に顧客から手形・小切手で支払ってもらいたいという要望を受ける中小企業が多いようです。これはおそらく、銀行の不渡処分などによって一定の支払いの確実性のある手形・小切手で払ってもらうことによって、同時履行性を確保したいというようなニーズがあるものと思われます。

 

そのように、まだなお一定のニーズがあるものを直ちに廃止するという方向に持っていく前に、十分検討する必要があるのではないかと思います。でんさいに関して言えば、期待したほど利用量は伸びておりません。使い勝手をもっとよくできないのかという問題がありますし、さらには、さっきの同時履行性との関係などから言うと、振込等で十分に小切手等の機能を代替できるのかという問題もあり、そこら辺もよく検討し、場合によっては、でんさいや振込等のサービスで改善する余地がないのかということも検討する必要があると思います。

 

しかも、仮に手形・小切手を金融機関が扱わないとして、それによって、手形・小切手部門に張りついている金融機関の人的資源を削減することができるようにする場合、手形・小切手というのは、手形交換所等を構成して、全ての金融機関がそれに加盟することによって全体の制度を動かしているものですから、もしやめるとすると、全ての金融機関がある意味、足並みをそろえてやめるということにならざるを得なくなります。

 

そうすると、独禁法の問題も出てくるということになりますので、もし消滅させていくにしても、よほど手順というか、プロセスをよく慎重に考えて、そういう問題が起きないようにする必要があると思います。そういうことを含めて、最近発足しました検討会において、よくよく慎重に検討の上、手形・小切手を今後どのように扱っていくのか、もし最終的に安楽死させるのであれば、どのように安楽死させるかということを検討して頂きたいと思っております。

 

以上です。


【森下座長】   

林委員、お願いします。


【林(尚)委員】   

今の先生のご指摘、心にとどめて、丁寧に慎重に進めてまいりたいと思いますので、引き続き、よろしくご指導頂きたいと思います。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

與口委員、お願いします。


【與口委員】   

ご説明、ありがとうございました。

 

全銀協さんの資料の中で、先ほど来出ておりますけれども、携帯電話の送金に関することでご質問と、感想を述べさせて頂ければと思います。

 

携帯電話番号の送金の実証実験というのが24ページにあるんですけれども、この実証実験の利用シーンというんでしょうか、どういうものを想定されているのかということをお尋ねしたいと思います。あくまでも個人間のP2Pの送金ということで書かれていますし、そのように理解をしているものの、右側のほうでコンソーシアムのほうを見ますと、QRコードなどを用いて、アプリをつくられるというようなことを考えられているようですが、何となくAlipayだとかWeChatPayみたいな、何かそういう、その先に決済のようなものもイメージをされているような気もいたしますので、そのあたりのお考えが実証実験の中にあるのか、ないのかというようなことをちょっとお尋ねをしたいということです。

 

そういう、もしですけれども、そういった決済系の使われ方、ネットでも個人間でいろいろとやりとりをするというのは今、普通に行われていますので、そういう決済で使われることというのは当然想定されると思うのですけれども、そういうときに、いわゆる消費者が、そういう消費者間なのか、あるいは、個人事業者間と消費者なのかわかりませんけれども、使われるときの、規制のあり方というとちょっと大げさですけれども、いわゆる消費者保護という観点で何らかのお考えがあるのかどうかということをお尋ねをしたいというのが1つ目でございます。

 

それと、もう一つ、公金の収納の件で、今、フィンテックを使われて、新しい収納の支払いスキーム等もご検討されているというのが14ページにあろうかと思いますけれども、こちらのほうでモデル事業の試行等も今議論されているというところでございますので、今、Pay-easyだとか、口座振替とか、いろんな収納方法があると思うのですけれども、具体的に何か今ご検討されている収納方法みたいなものがおありになれば、教えて頂ければというふうに思っておりますので、この2点、お願いしたいと思います。


【森下座長】   

相澤参考人、お願いします。


【相原参考人】   

じゃあ、私のほうから、1点目のご質問でございます携帯番号による送金についてご回答申し上げたいと思います。

 

手前どもが主に実証実験を進めておりますのは、この24ページ目、左側にお示し頂いております3メガバンクで実証実験を進めているという内容でございます。実際の利用シーンといたしましては、よくテキストメッセージを送れるような携帯番号同士での相手に、相手先の携帯番号を指定して頂いて、そこにわざわざ銀行の店番、口座番号を入れなくても、必要な金額を送金して頂ける、こういうようなアプリケーションの開発、これをできないかということで実験を進めてございます。

 

それ以外にも、例えばシンガポールの個人間の慣習というのは非常にテキストメッセージを使う文化でございますので、携帯電話番号だけでフィットする、こういうこともあろうかとは思うんですけれども、日本におきましては、SNS、こちらのボリュームも多うございますので、こちらのIDで送金ができる、こういう利用シーンでございますとか、先ほど、QRコードという話がございましたけれども、加盟店決済というよりは、例えばお友達登録みたいな機能を、QRコードを表示することによりまして、相手先の例えば携帯番号を読み取る、もしくは、IDを読み取る、こういった形で、IDを入力せずに簡単にアドレスの登録を頂けるような、こんな利用シーンを模索していきたいと、こういうふうに考えているという状況でございます。

 

加えまして、利用者の保護につきましては、私どもの今、実証実験で進めている前提といたしましてはお口座をお持ちのお客様ということでございますので、それと同等のセキュリティ等でご利用頂けるような環境を目指していきたいと、こういうふうに考えてございます。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

相澤参考人、お願いいたします。


【相澤参考人】   

現状では、まだ具体的なスキームの案は持ち合わせておりませんが、例えばということになりますけれども、賦課税ですとか公金収納におきまして、フィンテック企業が課税関連データ等にアクセスした上で、スマートフォン等のアプリを利用して税額を納税者に通知をすると、納税者がそのアプリから納税システムに接続して、納税をワンストップで済ませるというようなことが想定されるのかなというふうに考えています。

 

いずれにいたしましても、これはフィンテック企業だけでできる話でもございませんし、金融機関、フィンテック企業、それから、関係省庁、あるいは、地方団体との連携、これが必須になってくるわけでございますので、今後、官民双方の効率化に向けて、どのようなことが考えられるのか、検討を進めていきたいという段階でございます。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

鳥海委員、どうぞ。


【鳥海委員】   

私から2点、特にお答えを期待しているわけではなくて、コメントになりますけれども。

 

1つは、決済高度化に関連しているのですけれども、推進会議では取り上げられていないトピックとして、日本銀行の日銀ネットの高度化というものがあると思います。昨年の2月に稼働時間が午後9時まで延長されたことに加えまして、今年の4月にはグローバルアクセスというポリシーが公表されまして、日銀ネット端末を海外に設置しても構わないという新しい方針が打ち出されました。今月からは実際の利用の受付も開始されております。

 

実際のユーザーである金融機関、邦銀、それから、外資系の外銀ともに、自分自身のニーズ、それから、お客様のニーズを踏まえますと、まだ普段使いというところまではニーズが盛り上がってはいないようでございますけれども、むしろ、障害対応、さまざまな資金繰りとか担保の差し替えですとか、あるいは、災害対応、こういったニーズについては十分使えるのではないかというふうに受けとめております。まだ幾つか制約がございまして、例えば端末のユーザーインタフェースが日本語のものしかございませんで、英語が無いとか、あとは、国債の入札とか日銀オペについては使えないとかいった制約がございます。

 

ただ、一方で、幾つか柔軟性も勘案してくださっておりまして、海外拠点に設置するに当たっては、私どもの銀行であれば、自グループの支店でも構わないし、別法人たる銀行でも構わないし、あるいは、第三者たるオペレーションを委託している先でも構わないといったこともおっしゃってくださっておりますし、在日拠点から海外拠点に対して、あらかじめ事前に包括的な使い方についての指図を与えていればよいと、都度指図を与える必要はないと。さらに、海外端末を利用する際には、在日拠点のスタッフが日銀と連絡をとれる体制が望ましいとはおっしゃっておりますけれども、災害などの際には例外的なケースもあり得べしといったことまでおっしゃってくださっております。

 

こうしたことも勘案しまして、私ども外国銀行支店では積極的にこの制度を利用していきたいというふうに考えておりますし、日本の決済制度の高度化、利便性の向上に向けて、こうした動きを歓迎しますとともに、引き続き、ご尽力をお願いしたいと考えております。

 

もう一つは、決済高度化について必ず話題になる点なのでございますけれども、いわゆる資金移動業の送金1回当たりの送金限度額の件でございます。我が国が少額の取引について、政令で100万円に相当する額以下と決めているのは事実だと思いますが、例えばアメリカなどでは、1万米ドル超については、米国財務省のFinancial Crimes Enforcement Network 、FinCENに対するCurrency Transaction Report、CTRと申しておりますけれども、この届出が必要となっております。

 

CTRの届出に伴って、自主的に、あるいは、業界の標準で追加的なデューデリジェンスが行われます。これはハイリスク顧客として分類するとか、事後検証をするとか、継続的なモニタリングをするとかいったことでございまして、法令の上限ではないのですけれども、実態としては業者が送金を受け付ける際に、1万USドル、あるいは、1万カナダドルなどが目安とされております。

 

こうした海外の実態を踏まえますと、単に100万円という上限を見直すだけでは不十分で、少なくとも海外送金については100万円超の送金について、追加的、付加的にどのようなデューデリジェンスとか態勢整備を行うのか、こういった議論を抜きに見直しを検討することは不十分ではないかというふうに考えております。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

浜委員、お願いします。


【浜委員】   

どうもありがとうございます。

 

XML電文につきましては、商取引の最後の最後、資金決済の部分がデジタル化されるということで、もちろんここでもデジタル化されることで情報量が増えるということは非常に有効であるというふうに思っておりますが、そこへ持ってくるまでの情報というのがアナログであると、商取引の中でどこかにしわ寄せが来て、全体の生産性向上ということにはならないと思いますので、中小企業庁さんのようなこの受発注のところからIT化を進めるとかいうことがどんどん進んでいけばいいというふうに思っております。

 

なので、このXML電文というのはあくまでもきかっけで、これが最後ではなくて、利用者サイドみんながここへ向けてのデジタル化というのを進めていくべきだというふうに思います。

 

そういう意味だと、日本全体での生産性向上ということも含めて考えると、官も民もないというふうに思っております。民だけが一生懸命やっても、どこかでまだまだアナログが残るというようなことになってしまうと、全体の生産性向上にはならないというふうに思いますので、ぜひ官もデジタル化というのを進めて頂きたいというふうに思います。

 

このような会でルールを決めたりされる方々と、違った部分で、現場で官の中でもオペレーションされている方々がいらっしゃいます。その方々への周知徹底という部分もぜひお願いしたいというふうに思います。

 

この中小企業庁さんの実証プロジェクトの中に官が一切ないなという感じがしますので、ぜひこういう実証実験にも官のどこかが入って頂いて、結果を横展開して頂けると、民以上の効果があるんじゃないかなというふうに思いますので、そういう部分も取り組んで頂ければというふうに思っております。


【森下座長】   

ありがとうございました。

 

ほぼ予定の時間になりましたけれども、よろしいでしょうか。はい。


【長楽委員】 

先ほど、資金移動業者の1回当たりの送金限度額(100万円相当額)に関し、ご発言がありましたので、一言申し述べさせていただきます。

 

資金移動業者の1回当たりの送金限度額の引上げの検討に当たりましては、現在の100万円相当額が所与のものということではなく、資金移動業者の送金の実態とか、利用者のニーズ、国際的な動きなど幅広い観点からご検討をお願いしたいと思います。また、マネロン等に係るリスク管理の観点につきましては、規模・特性を踏まえた資金移動業者のリスク管理の実態なども勘案し、ご検討いただければと思います。


【森下座長】   

よろしいでしょうか。

 

ありがとうございました。この間、関係の皆様におかれましては、本当に熱心にお取組みを頂きまして、ありがとうございました。今日頂いたお話の中で、幅広い理解を得て、より良く使ってもらえるようにしていくためにはどうしたらよいかとか、あるいは、新しい取組みについてどう考えていくか、というようなことについても考えたらどうかというようなお話があったかと思います。そういった点については、また事務局の方にもご検討頂きまして、この会議が貢献をできていくようになればと考えております。

 

本日は、活発なご議論を頂きまして、また、有意義なご意見を頂き、まことにありがとうございました。本日頂きましたご意見も踏まえまして、次回以降も決済業務の高度化に向けた取組みを進めてまいりたいと思いますので、各委員におかれましては、引き続きよろしくお願いいたします。

 

最後に、事務局の方からご連絡がございましたら、お願いいたします。


【井上総務企画局信用制度参事官】   

次回以降の会合の進め方、具体的な日程等については改めて事務局よりご案内させて頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


【森下座長】   

どうもありがとうございました。多少時間が超過して、申しわけありませんでした。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させて頂きます。ありがとうございました。

── 了 ──

 

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