決済高度化官民推進会議(第9回)議事録

1.日時:

令和3年2月16日(火) 17時00分~18時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号

 

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【森下座長】
 ただいまより決済高度化官民推進会議の第9回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところお集まり頂き、ありがとうございます。
 本日の会合は、新型コロナウイルス感染症対策の観点からオンライン開催とし、一般の傍聴はなしとした上で、メディア関係者の皆様にもオンラインで御参加頂くことといたしております。
 初めに、事務局より、本日の出席状況について御説明をお願いします。

【納富企画市場局企画調整官】
 事務局でございます。本日は参考人といたしまして、全国銀行協会の小川幹夫様及び株式会社全銀電子債権ネットワークの土師潤様にお越し頂いております。なお、本日は御都合により、早稲田大学の岩原紳作委員が会議途中より御参加頂くことになっております。
 事務局からは以上でございます。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に移ります。本日は、まず事務局より、決済分野等における制度整備の状況及び銀行と電子決済等代行業者との間の契約締結状況についての御説明をお願いします。次に、全国銀行協会の林委員より、決済高度化に関する取組状況について御説明を頂いた上で、全体について委員の皆様に御討議を頂くという流れで進めさせて頂きます。
 それでは、事務局より御説明をお願いします。

【端本企画市場局信用制度参事官】
 信用制度参事官の端本でございます。それでは、資料1に沿って御説明いたします。
 まず、2017年5月に成立いたしました電代業者に係る制度整備等ということで、電代業者に対しまして登録制を導入し、体制整備・安全管理に係る措置、2ポツ、電代業者の金融機関との契約締結等、3ポツ、金融機関におけるオープン・イノベーションの推進に係る措置ということで、金融機関と電代業者との連携・協働に係る方針の策定・公表、金融機関と電代業者との接続に係る基準の策定・公表、それからオープンAPI導入に係る努力義務とが定められております。このオープンAPI導入に係る締結状況につきましては、後ほど別途御説明がございます。
 続きまして、次のページです。2019年5月に成立いたしました法律では、暗号資産交換業に係る規制等の見直しということで、下のほう、その他情報の利活用の進展等への対応ということで、1つ目の黒いスターマークのところでございます。情報・データの利活用の社会的な進展を踏まえまして、金融機関の業務に、顧客に関する情報をその同意を得て第三者に提供する業務が追加されたということでございます。
 次のページに進んで頂けますでしょうか。2020年6月に成立いたしました金融サービス仲介法制・決済法制に関しましては、右側の決済法制のところでございます。資金移動業の規制を見直すということで、100万円超の高額送金を取扱可能な類型を創設する。それから2つ目の丸でございます。少額送金を取り扱う類型の規制を合理化するということ等の措置が講じられております。
 次のページに進んで頂けますでしょうか。2020年12月、金融審議会ワーキング・グループ報告ということで、この3月上旬の国会への法案提出を目指して作業を進めている銀行の業務範囲規制等の見直しということでございます。デジタル化等の持続可能な社会の構築に向けて、銀行規制を抜本的に見直すということで、(1)子会社・兄弟会社の見直し後、右側を見て頂きますと、フィンテック、それからデータ分析、マーケティング、ITシステム販売等の業務が子会社でできるようになっております。
 それから、(2)銀行本体につきましても、銀行業の経営資源を活用して行う自行アプリやITシステムの販売、データ分析、マーケティング等々が業務範囲に追加されるということでございます。
 以上で説明を終わります。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 続きまして、銀行と電子決済等代行業者との間の契約締結状況についての御説明をお願いします。

【山下監督局銀行第一課長】
 銀行一課長でございます。オープンAPIの利活用の推進に関し、銀行と電子決済等代行業者との間の契約締結状況について御報告いたします。
 銀行と電代業者の接続契約について、昨年9月末時点の締結状況を調査いたしました。回答内容について、現在引き続き、確認・精査中でございます。調査結果は、取りまとめ次第、後日公表予定ですので、本日は恐れ入りますが、口頭で概要のみ御報告させて頂きます。
 API接続を行う方針としている銀行が125行ありますが、この125行全てにおいて、API接続契約、もしくは、API接続への移行を前提とした暫定的なスクレイピング契約が締結済みであることが確認されました。また、その銀行ほとんどにおいて、少なくとも1件以上のAPI接続契約を既に締結済みであるということも、併せて確認されたという状況でございます。
 暫定的なスクレイピング契約については、先ほど申し上げたとおり、API接続への移行を前提としたものですので、可能な限り速やかにAPIへの移行が実現しますよう、当庁としても引き続き、モニタリングなどを通じてしっかりとこれを促して取り組んでまいりたいと考えております。
 私からは以上でございます。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 続きまして、全国銀行協会、林委員より、御説明をお願いします。

【林委員】
 林でございます。本日このような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。お手元の資料を使いまして、フォローアップ対象となっております14項目の取組の総括をさせて頂きまして、このうち重点5項目の具体的取組状況について御説明いたします。
 まず、資料2ページをおめくりください。そのページでは、先ほどありましたように、これまで本会議でフォローアップ頂きました項目を一覧化してございます。一部の項目は見直し、再編が行われまして、当初の13項目が現在14項目に整理しておりますが、2015年12月のワーキング・グループ報告書の公表以後、約5年にわたり、これらの課題解決に向けて、金融界として精力的に取組を進めてまいりました。これは金融庁はじめ、関係省庁の皆様の御協力・御指導のたまものでございます。誠にありがとうございます。
 いずれも具体的なアクションに着実に結びついていると考えてございます。今後も引き続き、ポストコロナ時代に向けて、ペーパーレス、押印レス、非対面取引の浸透を加速してまいりたいと考えてございます。
 3ページ目でございます。14項目のそれぞれの取組について、表にしてございます。このうち、四角で囲んでおります5つの重要項目の取組につきまして、この後、御説明を申し上げます。
 4ページにお進みください。足元、決済業務を取り巻く環境は大きく変化しておりますが、新型コロナウイルス感染症が流行する前にも、我が国企業をめぐる課題として、DXへの対応は指摘されておりましたが、ウィズコロナ時代を迎えて、DXの実現は、ニューノーマルへの適応に向けて必要不可欠な課題となってございます。
 左側のDXの必要性にありますとおり、経済産業省におかれましても「DXレポート」の中で、「2025年の崖」として様々な課題の御指摘、これにございますが、この後御説明申し上げます手形・小切手機能の電子化などの決済・経理業務の電子化は、DX推進の一環として解決されるべき課題と認識をしております。
 右下の図にもございますが、受発注から決済までの業務プロセスにつきまして、デジタル化によるストレートスルーな処理にシフトしていくことが重要でありまして、銀行界としても、事業者の皆様の業務プロセスのデジタル化につながる手形・小切手機能の電子化、あるいはXML電文への移行、そして税・公金収納・支払の効率化に注力してまいりたいということでございます。
 ただいま申し上げました3項目を含む重点5項目の具体的な取組状況については、以降のページで御説明させて頂きます。
 まず、7ページを御覧ください。手形・小切手機能の電子化の進捗状況でございますが、全面的な電子化を視野に入れつつ、2019年から5年で約6割を電子的な方法に移行するという中間目標を掲げております。1年当たりに引き直すと、年間616万枚の削減が必要でありますが、2020年の削減枚数は671万枚、達成率109%と、目標を超過してございます。昨年2019年の達成率が61%でありましたので、2年累計では未達ではございますが、加速をし、大きく前進していると考えてございます。
 また、でんさいの発生記録請求件数につきましても、引き続き増加基調を維持しております。単年の目標達成は、経済活動の停滞も要因の一つと推察されますが、でんさいの増加基調も踏まえますと、DX化、非対面取引といった社会的要請が強まった環境の変化を捉え、これまでの取組が一定の成果を上げたものと受け止めております。
 8ページを御覧ください。ポストコロナ時代を見据えて社会的要請が強まっております。昨年12月に成長戦略会議で取りまとめられました「実行計画」において、産業界及び金融界に対し、「約束手形の利用廃止に向けた行動計画」の策定を検討し、取組を促進する旨の明記がなされております。また、中小企業庁の「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」では、約束手形の利用の廃止等に向けた検討が進められるなど、電子化に向けて政府からの力強い発信、御支援がございます。金融界といたしましても、これと歩調を合わせる形で検討・行動を進めてまいりたいということでございます。
 9ページでございます。このように強まる社会的要請を踏まえまして、これまでも取り組んでまいりました手形・小切手機能の電子化をより力強く推進すべく、改めて、全面的な電子化を目標として打ち出してまいります。銀行界としての基本方針を整理の上、本年3月公表予定の「手形・小切手機能の電子化状況に関する調査報告書」にてお示しする予定でございます。
 10ページへお進みください。こちらは手形機能の全面的な電子化に向けた取組状況でございます。でんさいネットでは利用者のお声を踏まえ、①紙の手形との機能面の差分を解消する「機能・サービスの改善」、②でんさいへの移行によるコストメリットを享受頂くための「料金体系の在り方」、③電子化が困難な利用者、お客様向けの「新たな利用チャネルの構築」という、3つの施策を検討しております。紙の手形の廃止に不可欠な代替手段として、より安価で便利にお使い頂けるよう、取組を進めてまいります。
 11ページを御覧ください。小切手機能の電子化につきましては、インターネットバンキングの利便性向上、料金体系の在り方の見直し、またそれ以外の証券につきましても、業界団体等、関係者へのヒアリングや協議を実施するなど、引き続き必要な検討を進めてまいります。
 以上が手形・小切手機能の電子化の御説明でございます。この先も、企業、お客様のDXの推進に不可欠な取組として、電子的手段をより一層使いやすく御提供できるよう、不断の努力を重ねてまいる所存でございます。
 13ページにお進みください。税・公金収納・支払の効率化につきまして、改めて現状の御説明を申し上げます。13ページのグラフにありますとおり、既に電子納付の手段は複数存在してございますが、税・公金は銀行窓口等の対面納付が多く、高い割合を占めてございます。納付書の取扱いは、推計で、メガバンク・ゆうちょ銀行で年間約1億1,000万枚、地銀で年間約1億3,000万枚と、大変高い数字となってございます。こういった対面による紙納付を減らし、社会全体のDXを推進するためには、電子納付の拡大が非常に重要でございます。
 14ページを御覧ください。現在の税・公金の窓口収納は、書面・押印・対面による取引で構成されておりまして、これらの効率化・電子化が図られませんと、お客様・金融機関・自治体のそれぞれが社会的コストを払い続けることになってまいります。
 15ページにお進みください。こうした社会的コストを削減するためには、書面・押印・対面手続の見直しによる効率化・電子化が急務でございます。この点は、社会的要請の高まりを踏まえて、従前以上にその重要性が増していると認識をしております。他方、税・公金の収納は、電子化が進捗いたしましても、一定数の紙の納付書が残ることが想定されておりまして、紙が残る以上は、これを前提とした社会的コストの削減のための施策を別途考える必要もございます。ここではQRコードの活用による納付済情報のデータ化が、極めて有効な施策になると考えております。
 そのため、16ページにございますとおり、本年度は「QRコードの活用、納付済通知書の電子化」に注力してまいりました。銀行界としては実現に向けて、主体的にスキーム案や論点整理を実施し、主に総務省と協議を継続しているところでございます。また、QRコードの規格の取りまとめに向けた検討も進めておりますし、納付書の規格を定める団体との協議も進めているところでございます。
 17ページにお進みください。税・公金収納の効率化・電子化は、官民一体となって解決すべき問題でございますので、関係省庁に対して金融8団体連名によって、地方税共通納税システムによる賦課税目、特に自動車税・固定資産税への対応でございますとか、QRコードの活用について要望をさせて頂いております。この点につきましては、総務省・地方税共同機構両者が事務局を務めておられる「地方税における電子化の推進に関する検討会」に全銀協も参画をいたし、議論を継続させて頂いております。
 また、令和3年度の税制改正大綱において、自動車税・固定資産税を含む4税目が令和5年度以降の課税分から地方税共通納税システムの対象税目に加わる旨、記載がなされ、実現に向けて着実に前進をしてございます。個人を対象としたQRコードの活用についても、早期実現に向けた検討を要望させて頂いております。こちらは令和2年度の検討会取りまとめにおいて、「QRコードの活用についても引き続き検討していく」と御記載頂いておりまして、総務省におかれては早期に検討を終え、具体的な実現時期も含めた導入方針も決定頂きたいと業界としては考えております。
 18ページを御覧ください。政府におけるデジタル化の機運もますます高まってございます。昨年10月の第2回規制改革推進会議投資等ワーキング・グループにおいても、税・公金収納の効率化・電子化について御説明を差し上げました。その際、行政において検討が進められている、法人における「地方税共通納税システムの税目拡大」、個人における「マイナンバー・公金口座の活用」につきましても、将来的に目指すべき姿であると御説明差し上げております。
 一方、紙による納付が残ることは、先ほど申し上げましたとおり不可避でございますことから、QRコードの活用検討を同時に進めることが必要な点も、併せて御説明をしてございます。御出席された委員の皆様からは、税・公金収納の効率化・電子化について前向きな意見も多数頂戴し、その際の議論においては、現行の紙の納付に対して地方公共団体から手数料を徴求すれば、地方公共団体の電子化・効率化へのインセンティブになるのではないかという御意見も頂いてございます。この点につきましては、現在、関係者との協議結果を踏まえ、実態を把握すべく調査を実施し、調査結果を踏まえた要望活動を検討しているところでございます。このような活動をもって、社会的コストの削減のための税・公金収納・支払の効率化を推進してまいりたいと考えてございます。
 19ページは、税・公金収納・支払の効率化等に関する勉強会において、本年度の検討テーマとしていた事項に関する検討状況を記載してございます。お時間の関係から、詳細の御説明は割愛させて頂きます。
 20ページからは、XML電文への移行の御説明でございます。
 21ページ、全銀EDIシステム、愛称ZEDIの普及状況でございますが、1,054の金融機関のZEDI接続が実現してございます。サービス提供体制の整備はほぼ完了した一方で、事業者の方々の御利用状況は現状横ばいでございます。その理由として、会計システムのアプリケーション等がまだZEDIに対応頂けていないということが挙げられ、今後はソフトウェアのベンダーの皆様にZEDI対応を促進するための取組を進めてまいります。
 22ページではインボイス制度に言及してございますが、昨年12月、日本における電子インボイスの標準仕様としてPeppolが選定されました。これはソフトウェアベンダーの皆様が電子インボイスの対応を開始する契機になりますので、今後はZEDIを活用頂けるよう、各ベンダー、電子インボイス推進協議会との連携を一層強化してまいります。
 この電子インボイスは、事業者間でインボイスを電子的にやり取りする仕組みでございますので、金融EDIの情報を連動させれば、振込時のデータ作成負担が軽減されるということになります。これにより、受取側は売掛金消込を効率化でき、支払側は金融EDI情報の作成負担軽減が実現でき、双方ウィン・ウィンな仕組みになると期待をされているところでございます。
 23ページを御覧ください。こちらはソフトウェアベンダーとの連携強化に向けた取組として、好事例創出を促す助成施策等を紹介してございます。このような取組を通じて、事業者の皆様に御利用頂ける環境を整備してまいります。
 最後に、25ページ以降でオープンAPIの利活用の推進、そして金融機関におけるキャッシュレス化の推進について御説明申し上げます。
 まず、26ページでございます。全銀協では左下の表にありますとおり、2016年11月の「オープンAPIのあり方に関する検討会」設置以降、API利用契約の条文例、チェックリストの策定等、電子決済等代行業者の皆さんとの連携強化の枠組みづくりを主体的に推進してまいりました。その結果、未来投資戦略におけるKPI目標の80行を達成するとともに、昨年9月末に期限を迎えた電子決済等代行業者の皆さんとの契約締結につきましても、特段の問題なく完了しております。
 今後につきましては、先ほど金融庁様からも御説明ございましたが、右下にありますとおり、暫定的なスクレイピング方式からAPI方式への移行状況をフォローするなど、必要な対応を進めてまいります。
 27ページには、キャッシュレス比率のグラフをお示ししております。2020年上半期におけます都市銀行等のキャッシュレスによる払出し比率は53.7%と、2019年上半期と比べて2.8%増加しております。内訳といたしましては、インターネットバンキングでの振込やクレジットカードの口座振替の比率が上昇しているということでございます。
 集計期間が昨年の1から6月でございまして、コロナ禍の影響を完全に反映しているわけではございませんが、インターネットバンキングやクレジットカードなどのキャッシュレスによる払出し比率の増加の兆しが見られますことから、引き続き動向をフォローし、推進してまいりたいということでございます。
 28ページは、キャッシュレスによる払出し比率の定義などを掲載しておりますので、御確認を頂戴できればと思います。
 29ページでございます。全銀ネットで取りまとめております、「次世代資金決済システムに関する検討タスクフォース」における報告書の概要でございます。今年度、全銀ネットに設置いたしましたタスクフォースでは、「資金移動業者の全銀システムへの参加」、「多頻度小口決済の利便性向上」の2つのテーマについて、検討を行ってまいりました。
 この結果、まず「資金移動業者の全銀システムへの参加」につきましては、「参加に当たって求められる制度整備を行った上で、2022年度をめどに資金移動業者にも拡大することが望ましい」という結論を取りまとめております。
 もう一つのテーマであります「多頻度小口決済の利便性向上」につきましては、都銀5行による小口決済インフラ構想を短期的な現実解として位置づけて、2022年度早期の稼働を目指し、具体的な検討を進めてまいるとしております。この構想は「ことらプロジェクト」と呼んでおりまして、概要は30ページにお示ししてございます。後ほど御覧頂ければと思います。
 来年度以降の対応でございますが、今回取りまとめた報告書の方針に沿って、制度面・システム面に関するワーキング・グループを設置し、各テーマの実現に向けて具体的な検討を進めてまいります。
 最後になりますが、全銀協といたしましては、2015年12月のワーキング・グループ報告で決済高度化に関する御提言を頂戴して以降、その後の環境変化を踏まえ、項目の見直し・追加を行いながら、我が国の決済業務の高度化、利便性向上に向けた取組を主体的に進めてまいりました。一方、決済業務を取り巻く環境変化の流れは速く、今後も不断の取組を続けていくことが必要であるということを痛感しているところでございます。
 長年にわたり、我が国経済に欠かすことのできない決済インフラを中心となって支えてきた業界としての責任と覚悟を持って、今後も歩みを止めることなく、決済高度化に向けた不断の取組を進めてまいりたいと考えてございますので、引き続き皆様の御協力、御支援、御指導を賜りたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私からの御説明は以上でございます。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明を踏まえて、委員の皆様に御討議頂きたいと思いますけれども、その前に私より発言をさせて頂きます。
 事務局及び林委員からの御説明も踏まえますと、2016年に本会議が設置された当初、我々がフォローアップしていく課題として設定された各項目については、いずれの項目におきましても、関係の皆様の御協力により、一定の進捗が見られていると思います。つきましては、委員の皆様から御異論がなければ、本会議を定期的に開催してあらかじめ定められた項目をフォローすることは、今回までとしたいと思います。今後、決済業務等の高度化に向けて検討すべき個別の課題が出てきましたら、改めて本会議を開催して検討することとしてはどうかと考えております。今後の本会議の在り方や検討テーマについて御意見がある場合は、これまでの説明に対する御質問と併せて、御発言頂ければと思います。
 なお、御発言をされる際は、オンライン会議システムのチャットに、全員に宛てて御自身のお名前を入力・送信してください。それを確認して私が指名させて頂きますので、御自身のお名前をおっしゃって頂いた後、御発言を頂ければと思います。
 それでは、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
 それでは、瀧委員、お願いいたします。

【瀧委員】
 電子決済等代行事業者協会の瀧でございます。本日はどうもありがとうございました。また、事務局の皆様、全銀協の皆様、大変御準備等々頂きまして、ありがとうございます。
 まず、全体的に3つほど指摘といいますか、感想も含めたところがございますので、特にこのたび、まず全体感として、たくさんのイシューを追う会議を、ある程度の進展が見られたということで、形を変えていくというところは、全体的にはその方向でよいのではないかと思ってはおるところなんですけれども、どうしてもAPIに関連するところ、並びに個別の金融における、例えばインターネットバンキングとか、そういった非常に基礎的な金融の今後の在り方を考えるためのインフラについては、何らかのフォローアップが必要なのではと思いまして、一つ発言をさせて頂ければと思います。
 APIに関しましては、本日も言及がございましたけれども、参照系のAPIに関しましては、制度的な期限等々もございましたので、そこを難なく乗り越えるという意味では、大変様々な方々の御尽力もあって、制度的な壁を乗り越えたというところではあると思うんですけれども、ただ、このAPIの意義というのは、参照系をつなぎ終えるところで意義が取れるわけではないとも思っております。
 今後、例えば更新系のAPIにおいて、電子マネーのチャージを、これまでのようにいろいろなリスクをはらんだ形ではなくて、安全な形で進めていくことであったりとか、振込を、そもそも銀行のインフラの外から振込のニーズがあるところに接続をさせるといった形は、今、世界中のフィンテックで、例えばエンベデッド・ファイナンスであったり、フィンテック・アズ・ア・サービスとか、バンキング・アズ・ア・サービスとか、いろいろな表現がありますけれども、金融のニーズは金融の外から金融機関をいかに使えるかというところに移ってきている中で、この流れを、もし更新系APIの普及をちゃんとモニタリングしないと、ごく一部の余力がある、もしくはしっかりと投資ができている銀行さんでしか享受できないことにもなるのではないかという懸念がございます。
 このような公共的なといいますか、公の場でしっかりとフォローアップをしていくことは、ある種、ちょっと古い表現ですと、護送船団型といいますか、どんな津々浦々の銀行であったとしても、最終的には中小企業の、例えば経理業務の効率化であったり、個人の方々の不安の解消といったツールに対しても、スムーズなサービス提供を可能にするという意味で、大変意義があるところだと思っておったんですけれども、それが参照系もつなぎ終えたというところで、役割を終えてしまうというところに対しては、あまり十分であるという認識は当協会としては持っておりませんでして、この点をどのようにして今後フォローアップされていくのかというところにつきましては、後ほど金融庁様から、ぜひ御意見を頂ければと思っております。
 特に、今はAPIの基盤というのは、おおむねほとんどの銀行様でインターネットバンキングの基盤の上に乗っかっていますので、こちらは郵送ベースの調査では、個人・法人ともに普及率が2割台という統計もございます。2割の人たちしか使えない傍ら、様々なキャッシュレスの進展に従って、例えばATMとか店舗が減っていく社会の中で、同じ金融のサービスを提供するという意味では、この進展を見守ることは、何も電代業のような、どちらかというとIT的な進展をしている人たちだけではなくて、非常に多くの国民にとっての基盤になるという面でも、当方としてはフォローアップを希望するというのが1点目でございます。ちょっと1点が長くなりましたので、2、3点目は手短にいたします。
 2点目は税・公金の収納のところなんですけれども、紙がまちまちであるといったところは、電代業のお客様である社労士さんとか税理士さんに聞いていても、非常に大きな課題であるというところでございますので、これがQRの運用によって、ある程度実務的に、効率的になっていくのであれば、そこは非常に支援といいますか、応援的な思いを持っているところでございますので、ぜひ進めて頂ければというのが2点目でございます。
 あと、3点目については、ZEDIに関するお願いでございます。ZEDIに関しましては、表にもございましたように、最終的に各請求業務が楽になるというのが目的ですし、例えば私が所属するマネーフォワード社も、電子インボイス推進協議会の幹事をやらせて頂いているんですけれども、その流れの中にZEDIが入ってくることは、とても意義深いものだと思っております。
 ただ、2つほどお願いがございまして、一つは、ZEDIのためのXML電文をアップロードするための機能を、手作業ではなくてAPI化させて頂きたいというのがございます。こちらはぜひ今後の検討の中で見て頂ければというのがございます。
 あともう一つは、金融機関様から請求をされるケースにおいては、XML電文をぜひ添付頂きたいというのがございます。これは非常に手元の例で恐縮なんですけれども、例えばマネーフォワードでも、数十行の銀行様から毎月APIの利用料の請求が来るんですけれども、そこにXML電文が添付されてきたことはないんですね。これはネットワーク効果をつくっていく話ですので、最初にEDIが添付されてくるという状況をつくれば、業務的にも回すことができるものだと思っております。
 言語をはやらせるときには、メールの署名欄に法人マイナンバーを書く会社さんとかもおられますけれども、そういう様式で最初に誰が火をつけるかというのが、とても大事なことだと思っておりまして、せっかくつくったものですので、金融機関様にもぜひファーストユーザーになって頂きたいと、これは差し出がましいお願いではございますが、思っておるところでございます。
 長くなりましたが、当方からは以上でございます。御発言させて頂き、ありがとうございました。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは次に、山上委員、お願いいたします。

【山上委員】
 NTTデータ経営研究所の山上です。本日は御紹介頂きまして、ありがとうございました。業界の皆様の御努力があって、オープンAPIに関するKPIも達成できて、これからは本格的なAPIの普及モードというところに入っていくのかなと思っております。
 先進各国でこういったAPIの本格的な普及に向けて、どのような手が打たれたかということについては、多分、今の瀧先生のお話とも関連する部分があるのではないかと思いますが共有させていただきます。世界を見渡してみますと、API自体が制度となって導入された国と、日本もそうですけれども、制度ではなくて努力目標として紹介された国によって、推進母体なり推進組織というものの在り方が大きく違います。
 まず、英国がどうなっているかといいますと、OBIE(Open Banking Implementation Entity)というところがありまして、200人ほど抱えて、APIの標準化、整備、モニタリングといったことを業界のためにやっております。これは、日本で公取と言うと少し語弊があるのかも分からないですけれども、CMA、Competition and Markets Authorityというところがガバナンス組織で、実際の200人余りの運営費用については、CMA9と言われるオープンAPIを開示した銀行で分担してファイナンスしていると聞いております。
 一方、APIが制度化されずにボランタリーな形で進められている国。まず、シンガポールがどうなっているかということですけれども、API自体がシンガポールに大々的に紹介された時点で、まず金融庁様と同じような組織機構であるMASが音頭を取りまして銀行協会が、APIプレイブックと言われるものを開発いたしました。これは、いろいろな業者さんと一緒にAPIをどのように使えるのかということで、数百に及ぶ事例が紹介されていたように思います。これはかなり古いお話で、もう2016年にパブリッシュされたものです。
 一方、同じような境遇にあるアメリカ。ここは皆さんも御存じのように、フィンテックの先進地でもありますし、インターネットバンキングの先進地でもあるわけですけれども、ここはいろいろな人たちが、それぞれに独自なAPIを開発して使って、それがどんどん実用化されている環境にあるわけです。瀧委員が御紹介頂いたように、バンク・アズ・ア・サービスとかという銀行企業が、生活者のいろいろなところに入り込んでサービスを提供するパターンが普及してきますと、そういったAPIをより広く受け入れていくような体制が必要ということで、ごく最近になりまして、フィナンシャル・イノベーション・ナウという民間組織が立ち上がっております。
 これはビッグテック、それこそアマゾンとかアップルとかグーグルとか、それにストライクだとか、イントゥイットといった昔からのプレーヤーもちょっと含んでいますけれども、ビッグテックとフィンテックと理解するのがいいのかなと思いますが、そういう人たちが、7社だったかと思いますけれども、集まってAPIを進めているという、シンガポールとアメリカはある意味でデファクトスタンダード型なのかなと思います。
 そういう意味で、振り返ってみて考えられるのは、日本においてもこういったデファクトスタンダード型の、民間主導型でユースケース(事例)を共有していくような推進型の組織が出てくる必要があるのかなと思っております。その組織と、今後の決済高度化官民推進会議というのがどういう歩調を取っていけばいいのかということについては、また一考していくべきなのかなとは思っておりますけれども、座長から冒頭に御紹介あったような、もともとこの推進会議が発足した時点での課題というのは、おおむねクリアしてきたのかなということでありまして、今後の推進にまだまだ金融庁様なり、各界の皆様が関与していくことが望まれるようなものについては、名称が違うのかもしれませんが、何がしかのそういった推進を見守っていくというものは、継続的に必要なんじゃないのかなと感じています。
 以上です。ありがとうございました。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、河野委員、お願いいたします。

【河野委員】
 日本消費者協会の河野でございます。
 決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告書で示された15の課題の解決に向けて、金融庁様、全銀協様はじめ、関係者の皆様が主体的で粘り強い取組を実施してくださったことに、敬意と感謝を申し上げたいと思います。私も最初から関わってまいりましたので、この間の進捗に関しましては、確かに進んだなという実感を持っております。
 昨年からのコロナ感染症の拡大により、接触を恐れ、現金の使用を避ける消費者も増えたために、非接触型カードやデジタル決済の使用が促進されたという背景はあるものの、この推進会議で論点として上がっている課題は、粘り強く解決を図るべきであり、ロードマップ全体を見渡しますと、道半ばで改善や修正が求められている分野もありますところ、これまでの課題解決に向けた活動とその成果を軸に、さらにペーパーレス、押印レス、それから非対面の取引手続の推進に期待したいと思っております。
 また、事務局から御提案がございました本会議の方向性に関しましては、定期的ではなく必要に応じてという視点から、賛同したいと思っております。その上で、国民として危惧している点を1点だけ申し上げたいと思います。
 趨勢としては、金融のデジタル化・キャッシュレス化の進展は避けられないと思いますが、一方で、キャッシュレス先進国と呼ばれることの多いスウェーデンなどでは、ATMの設置台数が減少していると聞きます。既に銀行口座保有率が97%の日本では、金融包摂というのが十分であるため、余分な金融インフラについては、今回課題にもなっておりますとおり、キャッシュレス化の進展に伴って今後合理化が進められていくものと受け止めています。
 そこで、人口の大半が65歳以上の高齢となる中、デジタル化が進むことで、事実上金融が排除される不安、金融包摂に制約が生じる不安というのが生まれているのも事実でございます。デジタル化推進と同時に、いつでも相談に乗ってくれる、必ずしも銀行というわけではございませんけれども、いわゆるかかりつけ金融機関の必要性を改めて感じているところでございます。銀行の業務範囲規制の見直しの目的に、デジタル化とともに、地方創生など、持続可能な社会の構築が掲げられておりますところ、全ての人々、特に高齢者が必要とされる金融サービスにアクセスでき、またそれを利用できる状況というのを、今後も皆様のお知恵を総動員して、ぜひ担保して頂きたいと考えております。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは次に、戸村委員、お願いいたします。

【戸村委員】
 ありがとうございます。2点発言させて頂きたいんですけれども、一つは、今後の課題について発言させて頂きたいと思います。
 これまでは銀行業のアンバンドリングということが多かったと思うんですけれども、こちらは一般事業者が銀行の送金サービスを電子マネーで切り出して、電子マネー経由で銀行と一般事業者のシステムを接続するやり方だったと思うんですけれども、もう少し広く言いますと、電子マネーもあり、またデビットカード、クレジットカード、また電代業さんのAPI接続もあるという状況なので、今後については、アンバンドリングでシステム接続をしてもいいんですけれども、より広い視点でどのように銀行と非銀行の間のシステムを接続するかというのを課題として見続けるとよいと思います。
 そう考えると、銀行も非銀行も障壁なく、自由に新しいアイデアを速やかに試せる規制・競争環境が必要だと思いますので、銀行に対しては継続的な業務範囲規制の見直しと、非銀行事業者に対しては参入障壁のようなものがあれば、それをできるだけ取り除いていくという努力は必要だと思います。
 2点目は、今後の会議の在り方に関連する点でもあるんですけれども、日本の現状というのは、複数の省庁と日銀が決済システムの一部を見ているという形になっておりますけれども、そうすると、決済システム全体のデザインについての議論というのはどうしても空白地帯になって、それが日本の弱点になっているような気がいたします。
 そういたしますと、決済全体を統括する政府内部局があれば望ましいですし、もしくは、官民が問題を持ち寄れるような官民組織があるとよいなと感じております。この会議がそういう官民組織になるということもあり得ると思うんですけれども、日本は中銀と金融監督が分離している国ですので、個人的には後者の協会型組織、実務家が集まる協会型組織のほうが使いやすいかなと思います。
 以上です。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは次に、加藤委員、お願いいたします。

【加藤委員】
 日本商工会議所の加藤です。ご指名ありがとうございます。
 まず、長きにわたり、金融庁、全国銀行協会、関係各位の皆様におかれましては、各課題のフォローアップに粘り強く御対応なさっており、心から敬意を表します。
 本会議の在り方については、座長のお話のとおり、今後必要に応じて開催ということでよろしいかと思います。
 さて、資料に関連して意見を申し上げます。まず、7ページの「手形・小切手機能の電子化」についてです。御存知のとおり、昨年12月1日に、政府の成長戦略会議の実行計画において、「産業界と金融界による約束手形の利用の廃止に向けた行動計画の策定」が盛り込まれました。現在、具体化に向けて、中小企業庁の約束手形等の検討会で検討が進められています。私も同検討会に参加し意見陳述をしました。この動きは、本会議で以前、全国銀行協会が御提言されたのを起点として、その後、全国銀行協会で手形等の電子化の検討会が行われ、さらには今般、金融界そして経済界、官民挙げて連携して進めるということになったと思います。ぜひ前に進めていければと思います。
 21ページの「ZEDI」についてです。こちらも、創設から私も関与してまいりましたので、とても感慨深いものがあります。日本商工会議所では、これまでも様々な周知活動を行ってまいりましたが、引き続き対応します。特にZEDI、そして約束手形の電子化である電子記録債権につきましては、「決済・経理業務のIT化」となります。ITというと、中小企業はまだ活用が遅れておりますので、官民が連携しながら対応する必要があると思います。
 26ページの「オープンAPI」についてです。日本商工会議所は現在、中小企業、特に小規模企業の決済・経理業務のIT化として「クラウド会計」の活用を推進しています。拡張性が高く、ネットバンキングやZEDI等とのデータ連携が期待されるのですが、やはり「オープンAPI」が大変重要だと思います。参照系に加えて「更新系」まで進むことが重要です。何らかの課題等があれば、この会議でも結構ですが、ぜひ課題解決に向けてみんなで検討し、取り組めればと思います。
 27ページの「金融機関のキャッシュレス化の推進」に関連して、中小企業のキャッシュレス決済については、この会議でも申し上げましたが、3つの壁ということで、①決済手数料、②端末代、③入金サイクルの課題を申し上げてまいりました。特に「入金サイクル」については、「振込手数料」が鍵を握ります。昨年7月に閣議決定された成長戦略実行計画では、「振込手数料の見直し」ということで、銀行間手数料について見直しを図ると盛り込まれました。ただ、やはり本丸は各金融機関における振込手数料の引下げになりますので、中小企業のキャッシュレス決済の推進に向けて、御対応頂ければと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、中谷委員、お願いいたします。

【中谷委員】
 日本IT団体連盟、中谷です。私からは最初に全銀協さんの資料2についてコメントとお願いをさせて頂いた後に、今後の当会議について意見を申し述べます。
 資料2の29ページ、全銀システムの資金移動業者への開放についてのお願いというのは、一つは接続に要するコストです。1回当たりの送金に必要なコストというのをできるだけ低くして頂きたいと。使われなければいけないので、その部分です。
 また、レガシーシステムを前提としていない資金移動事業者が、なるべく接続をしやすいような接続方法にして頂きたいと考えます。
 2点目は次の30ページのことらプロジェクトは、当初からノンバンキングを巻き込んだ低コストのシステムを検討して頂いていますが、現時点ではCtoCの送金に限定されてしまっており、かつ、1回当たりの上限も数万円限度ということであり、使われるケースが少ないのではないかと思います。事業者同士の送金も可能にするとか、あるいは送金上限額を引き上げるなど、ぜひ御検討頂ければと考えます。間違った設計でつくってしまうと使われなくなりますので、ここは、ぜひお願いをしておきたいというところです。
 以上が全銀協さんの資料に関してのコメント、お願いでございます。
 引き続いて、今後の当会議に関する事務局の提案については、基本的に、私は賛成です。決済の高度化というのは技術の進展に伴ってずっと進んでいく、ネバーエンディングな努力であり、国、民間企業、団体、消費者が、それぞれどんな役割を担っていくのかと、お互いに目線合わせということをする場というのが必要だと思います。政府で成長戦略などの中でいろいろ出される、個別の戦略をそれぞれの役割にブレークダウンしていくということも重要です。そういう大きな流れの中で、この会議の位置づけというのが重要になってくるのだと思います。
 個別に言いますと、特に新しい決済技術、デジタル決済技術の社会実装が早まると申しますか、タイミングよく社会実装して役に立てることに資する議論が重要ではないかと思います。ただ、その際、デジタル庁創設の際の議論にもあるように、誰もがついていける、逆に言うと、誰かが取り残されてしまうことがないような建付けにするという議論も重要であり、それぞれの役割から意見を言っていくということが、先ほど消費者関係の方のご意見にもありましたけれども、重要ではないかと思います。
 あわせて、安心して使えるということ、特にデジタルの場合は目に見えない部分があり、決済を高度化するテクノロジーが高度化していきます。DXそれ自体もそうなのですが、「決済の高度化って、何がいいの?」ということがうまく伝わるようなコミュニケーションが重要です。コロナ禍での実際のキャッシュレスの状況を見ていますと、平時の利便性で有事の安心ということ、まさに決済の高度化は有事の安心にもなり、コロナ禍では人命にも関わることですが、新しい技術がきちんと世の中のために役立っていく仕組みづくりが非常に重要と思います。
 他方、決済の高度化というのは、悪い人たちからすると金融犯罪を容易にできる、あるいは多様な金融犯罪もできるというオプションを増やしていることにもなっているので、その点を議論することも重要です。利便性と安全性のバランスを取るというのは、今後ますます重要になっていくだろうと思います。議論をどこまでやるかは別としても、金融、特に決済のアプリというのは、センシティブな情報が盛りだくさんです。
 海外のアプリというのが実際、どの程度きちんと個人情報の取扱いをしているのかということを含めて、金融庁さんにそれを調査してほしいという話ではないのですが、普通のアプリの審査ではそこまで個人情報の部分について審査するわけではないのですが、安全性に直結しています。通常の議論はディレギュレーション、規制改革、規制を緩和するほうが多いのですが、安全性と利便性を両立する際には、場合によっては適切な規制をすることによって、キャッシュレス社会が進展するという側面は、十分にあると思います。
 私もいろいろな国に住み、訪問してきましたが、日本の決済システムは安全性が非常に高いと思います。今まで銀行業界の方々、全銀協様を含めて、相当なコストもかけて、きちんとした安全な決済ネットワークがつくられてきたわけです。そうしたよい面については、引き続き決済の高度化の中でも維持しながら、いかに便利さ、スピーディーな利便性というのを求めていくかを、様々な観点からパブリックに議論していくとことが非常に有意義です。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、翁委員、お願いいたします。

【翁委員】
 今日、お話を伺いまして、皆様がおっしゃっていますが、いろいろな環境整備や制度整備、それからプレーヤーの方々の尽力で、決済高度化が進んできているということがよく分かりました。また、今回コロナで、多くの方がおっしゃっていましたけれども、DXの流れというのは非常に加速しております。
 その意味でも、今日御説明あった手形・小切手、税・公金のペーパーレス化、それからZEDIといった様々な課題についても、税・公金のところでも、地方公共団体に手数料のインセンティブをつけるというお話もございました。それから、ZEDIにつきましては、会計システムと連携して、ベンダーと連携していく、またフィンテックと連携していく、クラウドファンディングと連携して、請求から支払い、消込まで、しっかり一気通貫でやっていくといった工夫をぜひ続けて頂いて、引き続き取り組んで頂きたいと思います。
 それから、オープンAPIにつきましても、瀧さんや山上さんがおっしゃっておられましたけれども、まさに今、緒に就いたところだと思っておりまして、どのようにこのシステムを構築していくかということを、しっかり考えていかなければいけないと思っています。イギリスのOBIEという推進母体の御紹介もございましたけれども、こういったところが標準化や、データの扱いのルールなどについて、推進しており、日本でもこうした体制を考えていくことが大事だと思います。これも引き続き、今後の大きな課題だと思っています。
 それから、全銀システムも最後のほうで御紹介頂いて、私もタスクフォースに参加させて頂いたんですけれども、今回、フィンテック事業者と接続していくとか、それから、ことらプロジェクトの新しい動きが出てきて、非常に好ましい動きだと思います。
 同時に、決済システムの高度化・効率化という観点では、全銀システムも技術革新を活用して、APIゲートウェイも含めて、参加者全体にとってメリットが出るような、長期的な検討もしっかり進めていく必要があると思っております。それも、海外の動きを見ますと、あまり時間をかけていられない状況かと思いますので、ここについてもしっかり検討を進めて頂きたいと思っています。
 最後に、今後の方向については私も、定期的にはやらなくてもいいかもしれないですけれども、様々な課題があることに加えて、Society5.0を考えていく上で、決済システムというのは、そういったデジタル社会の極めて重要なレイヤーとかアーキテクチャーの土台になる部分だと思いますので、しっかり官民で連携して高度化していくというのは、とても大事だと思っています。
 特にこういったネットワークの問題というのは、標準化が必要だったり、インターオペラビリティーについて配慮することが大事で、付加価値面で競争していくことと同時に、そういったところでは協調していくという動きが大事なので、こういった場があるということは非常に重要だと思っております。ですので、今後もこの会議を活用する形で、高度化をうまく進めていけるようにしていくといいのではないかと思っています。
 以上でございます。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、鳥海委員、お願いいたします。

【鳥海委員】
 ありがとうございます。鳥海でございます。
 金融庁事務局様、それから全銀協様、発表をありがとうございました。私からは、ごく簡単にコメントさせて頂きます。
 全銀協様からの御説明で、次世代の資金決済システム検討タスクフォースの検討結果ということでお話を賜りまして、ありがとうございました。その中で、このタスクフォースは昨年中開催されて、年末から年始にかけて報告書が公表されておりまして、その中で、全銀システムの第8次更改、2027年度予定かと思うんですけれども、これについても書き込まれていたように思うんですが、そこのお話が、今日はあまり触れておられなかったのかなと印象を受けまして、今度、資金決済高度化ということを論じるときに、どうしてもこの8次更改というのは避けて通れない、将来の非常に大きなプロジェクトだと思っております。
 そういう意味では、恐らくまだ緒に就いたばかりなのかなとは思うんですけれども、例えば私が思いますに、どのような技術を活用していくのかとか、先ほどどなたかおっしゃっていましたけれども、手数料の問題について、コスト・費用の分担をどのように見直していくのかといった問題ですとか、あと、今年度実証実験が進められていると思うんですけれども、マネロン対策の共同化とか共通化といったプロジェクトと、この次世代の全銀システム8次更改との関連性とか調和とか、何かそういったものが検討されているのか、こういった辺りは非常に関心がございます。
 あと、私ども国際銀行協会は、外資系の銀行と証券会社が加盟している協会でございますので、どうしても国際的な観点というのが頭にあるのでございますけれども、現在、政府・省庁を挙げて国際金融都市の本格的な推進ということで取り組んで頂いているわけなんですが、例えばアルファベットの顧客ネームにうまくこれはシームレスに対応できるようなシステムになっていくのかとか、こういった辺りをぜひ絡めて検討・議論していく、こういった場が必要なのかなと思っております。
 今日の全銀協の林様の御説明、それから、今後の決済高度化官民推進会議の在り方ということで述べさせて頂きました。
 それと、この場は恐らく、資金決済が中心に論じられている決済の高度化という場なんだと思うんですけれども、その場合、日銀ネットさんというシステムが存在するわけなんですが、私どもの業界で、このコロナ禍において、実は日銀ネットは一つ、ホットなイシューになっていまして、皆さんよく御存じのとおり、日銀ネットというのは資金決済に限らず、証券の決済も実はやっている、こういった端末ネットワークなんですけれども、そういう意味では、必ずしも御参加の皆様方全員に御関心のある分野ではないのかもしれないんですが、日銀ネットの端末というのは、基本的に営業所に設置して利用するという立てつけになっていまして、そうしますと、在宅勤務を推進しなさいといったときに、どうしてもこの日銀ネットの端末というのがネックになってしまうと。
 端的には、恐らく国債の入札とか、日銀のマーケットオペレーションに対応するといった業務について、どうしてもオフィスでやりなさいという運用になっているんだと思うんですけれども、翻って海外の金融センターを見ますと、ニューヨークとかロンドンとか、日本以上に厳しいロックダウン下にあったわけなんですが、かの地においては、在宅勤務がどうしてもできないんだ、中央銀行の決済システムのせいなんだという話は全く聞こえてきておりませんで、実はその辺り、かなりいろいろな工夫をしてくださっているようなんですね。
 こういう一事を取り上げましても、国際的に見た場合に、日本って本当に使い勝手のいいインフラが整っているのか、国際金融都市たる運用はできているのかという目で見られてしまいますので、必ずしもテクノロジーとか技術といった話題に限らず、本当に今持っている制度あるいはインフラが、最大限有効に活用できているのか、国際的に見て、グローバルなレベルで引けを取らないのかといった観点からも、ぜひ議論するような場であってほしいなと思っております。
 以上でございます。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、宮澤委員、お願いいたします。

【宮澤委員】
 私からは2点なんですけれども、安心・安全に使えるということがフィンテックの上の最大のインフラだと思っておりまして、プラットフォーマーにこのインフラの投資というのは相当重くなるだろうと。これからフィンテック活性化のためにも、一番問題となる個人認証の問題、本人認証の問題というのが、マイナンバーカードなどで既に個人認証がネット上で始まっておりますけれども、これを誰でも使えるような、あるいは、ある程度審査に通った企業が、もちろん認証してもらう個人の了承を前提として、希望を前提として使えるような方向を考えて頂けると、もっと活性化するのではないかなというのが一つでございます。
 もう一つは、不正が発生したときに犯人にお金が渡らないという仕組みを構築する必要がある。具体的には、今、こういう金融犯罪が起きますと、所轄の警察へ届け出るんですけれども、非常に速いスピードで資金が動いてしまいますから、これを守るためには、全国統一の1か所に情報を集めるべきだということを考えておりまして、この2つを御提案申し上げたいと思います。
 ありがとうございます。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、ほかの委員の皆様、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ほかに御発言がないようでしたら、討議を終了いたしたいと思います。活発な御議論を頂き、大変ありがとうございました。本当に貴重な御意見を数多く頂いたかと思います。頂きました御意見を踏まえまして、今後の本会議の在り方及び検討テーマ、それを踏まえたメンバー構成等につきましては、私と事務局において検討させて頂きたいと思います。
 決済を取り巻く環境は変化が続いています。本会議におきましては、これまで新たな課題に即した項目の見直し等を行いながら、決済業務等の高度化に向けた取組を官民挙げて実行に移していくため、連携・議論を深めてまいりました。委員の皆様方におかれましては、多大な御尽力、御協力を頂きまして、厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
 最後に、古澤企画市場局長より一言お願いいたします。

【古澤企画市場局長】
 どうもありがとうございます。
 本会議につきましては、本日を含め、これまで計9回開催し、様々な分野について御議論を頂いてまいりました。森下座長をはじめ、委員の皆様方におかれましては、多大な御尽力を頂き、厚く御礼を申し上げます。
 今後も引き続き、様々な機会において御指導を頂ければと思います。引き続きよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【森下座長】
 ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

 

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