第2回金融危機対応会議議事録

1. 開催日時 平成15年11月29日(土)21時00分~21時20分
2. 場所 官邸大会議室
3. 出席議員
議長   小泉 純一郎   内閣総理大臣
議員   福田 康夫   内閣官房長官
  竹中 平蔵   金融担当大臣
  谷垣 禎一   財務大臣
  福井 俊彦   日本銀行総裁
  高木 祥吉   金融庁長官
4. 議事次第
議題「 預金保険法(昭和46年法律第34号)第102条第1項に基づき、株式会社足利銀行について同項第3号に定める措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことについて」(諮問事項)
5. 議事内容
  • (金融担当大臣)  それでは、ただいまから第2回金融危機対応会議を開催いたします。

    本日の議題は、お手許の議事次第のとおりでございます。

    初めに、総理からご発言をいただきたいと思います。

  • (内閣総理大臣)  我が国の金融システムについては、「金融再生プログラム」に掲げた施策の着実な実施により、主要行を中心に不良債権処理は順調に進捗してきており、その一層の強化が図られているところであります。また、中小・地域金融機関につきましては、中小企業の再生と地域経済の活性化を図ることで不良債権問題も同時に解決することを目指し、取り組みを着実に進めているところであります。

    このような諸施策の進捗の中で、大変遺憾なことではありますが、今般、足利銀行から、15年9月期決算において債務超過となる旨の報告があり、併せて、預金保険法74条第5項に基づき、「その財産をもって債務を完済することができず、その業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがある」旨の申出がありました。同法第102条第1項に定める措置が講ぜられなければ、同行が業務を行っている栃木県を中心とする地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずることが懸念されるところであります。また、現在の金融環境の下、地域において同行が果している金融機能の維持が必要不可欠であることなどを総合的に勘案すれば、同項第2号に定める措置でなく、同項第3号に定める措置によらなければ、この支障を回避することができない事態が懸念されます。

    本日は、このような状況を踏まえ、金融危機対応会議を招集し、預金保険法第102条第1項に基づき、足利銀行について同項第3号に定める措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことについて、審議を求めるものであります。

    よろしくご審議をお願いいたします。

  • (金融担当大臣)  ただいま総理から諮問いただきました、足利銀行に対する特別危機管理の必要性の認定についての審議に移りたいと思います。

    まず、同行の状況につきまして、事務方から説明をお願いいたします。

  • (金融庁)  説明申し上げます。

    まず、銀行の概要でございます。

    株式会社足利銀行は、栃木県宇都宮市に本店を置く地域銀行であり、15年3月期において、預金残高4.9兆円、貸出金4.0兆円と、全国の地域銀行117行の中でも、預金で第11位、貸出金で第7位とトップクラスの規模を有しております。足利銀行は、本店のある栃木県を始め、近隣の群馬県、埼玉県、茨城県等を営業基盤とし、当該地域に多数の預金者と中小企業等の取引先を抱えており、特に栃木県におけるシェアは、15年3月期において、預金で48%、貸出金で52%と極めて高いものとなっております。また、中小企業及び個人の取引先数は21万先に上り、総貸出金残高に占める中小企業及び個人向け貸出の割合は80%となっております。さらに、栃木県並びに栃木県下の全49市町村及び他県2市の指定金融機関となっております。

    以上のように、同行は、地域の金融及び経済において大きな役割を果しております。

    なお、足利銀行は、グループ4社とともに、本年3月に銀行持株会社あしぎんフィナンシャルグループを設立し、現在は同持株会社の子会社となっております。

    次に、15年3月期決算及び検査について申し上げます。

    15年3月期決算においては、足利銀行の自己資本比率は単体で4.54%となっております。金融庁は、去る9月2日から11月11日まで、15年3月末を基準日とする立入検査を実施し、その資産内容等について実態把握を行い、11月27日に、同行に対し検査結果の通知を行いました。当該検査結果を踏まえた追加償却・引当額等を前提とすれば、15年3月末時点において、同行はマイナス233億円の債務超過となっていたと見込まれます。この結果、自己資本比率はマイナス0.7%と見込まれます。

    次に、15年9月期決算について申し上げます。

    足利銀行に対しては、検査結果通知の当日、当該検査結果を踏まえた15年9月末時点の財務状況等について、銀行法第24条に基づき報告を求めたところ、11月29日、同行から当庁に対して、15年9月期決算についてマイナス1,023億円の債務超過となる旨の報告があり、併せて、預金保険法第74条第5項に基づき、「その財産をもって債務を完済することができず、その業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがある」旨の申出がなされたところであります。

    なお、本日、政府として、日本銀行法第38条に基づく特融発動の要請を行ったところでございます。

    以上でございます。

  • (金融担当大臣)  それでは、審議をお願いしたいと存じます。

    財務大臣。

  • (財務大臣)  ただいま諮問をいただいた件につきまして、一言申し上げます。

    今般、株式会社足利銀行が、15年9月期決算において債務超過となり、預金保険法に基づく破綻の申出を行うに至ったことは、大変残念なことでありますが、関係省庁等一体となって金融システムの安定確保に努めていく必要があると考えます。

    本件につきましては、平成17年4月のペイオフ完全解禁に向けて、金融システムの一層の安定確保を図ろうとしている現在の金融環境の下、今回の事態により、信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずることがあってはならないと考えます。したがって、ただいま諮問のあった預金保険法第102条第1項第3号に定める措置を講ずることは、やむを得ないものと考えます。

    今後、地域経済に与える影響を最小限とするためにも、できる限り速やかに同行の受け皿が確保され、金融機能の維持が図られることが不可欠であり、関係者のご努力を期待いたします。また、今回の事態の処理に係る最終的な損失額が最小限のものとなるよう努力することが、国民の理解を得るためにも必要であると考えます。

    なお、同行が業務を行う地域における信用供与の円滑化を図るため、財務省として政策金融機関に対し、迅速かつ適切な対応を行うよう要請することとしております。

    以上でございます。

  • (金融担当大臣)  日本銀行総裁。

  • (日本銀行総裁)  一言申し上げます。

    我が国の金融システムの現状をみますと、なお厳しい状況にございますけれども、不良債権の経済価値のより適切な把握と、それに基づく引当、更には産業・金融一体となった対応、また株価変動リスクの軽減など、大手行を中心にこれまでの取り組みの成果が徐々にあらわれ始めていると考えております。

    しかしながら、金融システムの健全化に向けてはなお多くの課題が残されております。金融システム全体としてみて、市場や預金者の十分な信認を確保できていないと判断せざるを得ない状況でございます。

    こうした状況の下で、足利銀行から、同行が9月末において債務超過となり、「業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがある」との申出があったわけでございまして、仮に同行について元本一千万円超の定期預金など、預金保険制度の保護対象となっていない債権について、その一部を切り捨てる処理を行うというふうなことになりますと、同行の多数の預金者に甚大な影響を及ぼすだけではなく、他の金融機関の預金者や市場参加者等にも動揺をもたらしかねないというふうに考えられます。また、同行が業務を行っている地域における役割からみまして、同行の営業の継続が困難となった場合には、当該地域における信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると考えられます。

    従いまして、同行が主要な営業基盤としている地域を中心に、広く信用秩序維持を図るため、迅速かつ適切な対応を講じていく必要があると考えます。その際、足利銀行の状況を踏まえれば、破綻した同行の管理について、国がより直接的に関与を示していくこと、すなわち同行に対し、預金保険法第102条第1項第3号に基づく特別危機管理の措置を発動することにより、地域における金融機能をしっかりと維持していくことが適当であると考えられます。

    日本銀行といたしましても、政府において適切な措置が講じられることを前提として、同行の業務継続に必要な資金の手当てについては、万全を期して参ることといたしたいと思っております。先ほど、財務大臣及び金融庁長官より、日本銀行法第38条に基づく特融の発動の要請を頂戴いたしましたが、この後直ちに、特融発動の件を審議するための政策委員会を開催することとしたいと考えております。

  • (金融担当大臣)  私からも、一言申し上げたいと思います。

    先ほど、事務方の説明にもありましたとおり、足利銀行は栃木県を中心とする地域に多数の預金者と中小企業者等の取引先を抱えていることなどから、預金保険法第102条第1項に定める措置が講ぜられなければ、同項に規定する「当該金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれ」があると認められると考えます。さらに、同行の規模や、栃木県における融資比率が非常に高率であることなどから、現在の金融環境の下、地域において同行が果している金融機能の維持が必要不可欠であることなどを総合的に勘案すれば、預金保険法第102条第1項第2号に定める措置によっては、この支障は回避することができないと考えております。

    他に意見はございませんでしょうか。

    それでは、足利銀行に対する特別危機管理の必要性については、ご異存ないものとさせていただきます。

    それでは、これより答申案の審議に入らせていただきます。

    お手許に、総理のご指示を踏まえて作成した答申案を配付しておりますので、これを事務方から読み上げさせていただきます。

  • (金融庁)  それでは、朗読いたします。

    平成15年11月29日付諮問に対する答申(案)

    平成15年11月29日
    金融危機対応会議議長
    小泉 純一郎

    本会議は、平成15年11月29日付で内閣総理大臣より「預金保険法(昭和46年法律第34号)第102条第1項に基づき、株式会社足利銀行について同項第3号に定める措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことについて、審議を求める」との諮問を受け、審議を行った結果、以下のとおり答申する。

    本日、株式会社足利銀行から金融庁に対して、平成15年9月期決算において債務超過となる旨の報告があり、併せて、預金保険法第74条第5項に基づき、「その財産をもって債務を完済することができず、その業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがある」旨の申出があった。

    同行は栃木県を中心とする地域に多数の預金者と中小企業者等の取引先を抱えていることなどから、同行について預金保険法第102条第1項に定める措置が講ぜられなければ、同項に規定する「当該金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがある」と認められる。

    さらに、同行の規模や、栃木県における融資比率が極めて高率であることなどから、現在の金融環境の下、地域において同行が果している金融機能の維持が必要不可欠であることなどを総合的に勘案すれば、「第2号措置によっては第1項の支障を回避することができない」(預金保険法第102条第3項)と認められる。

    したがって、株式会社足利銀行について預金保険法第102条第1項第3号に定める措置を講ずる必要があると判断する。

  • (金融担当大臣)  それでは、お手許の答申案を、当会議の答申とすることにつき、ご異議はございませんでしょうか。

    (「異議なし」の声あり)

  • (金融担当大臣)  それでは、異議なしと認め、そのように決し、諮問についての審議につきましては以上とさせていただきます。

    本会議の答申を踏まえ、総理から足利銀行に対する特別危機管理の必要性の認定についてご判断をして頂くことになります。

    最後に、総理よりご発言をお願いいたします。

  • (内閣総理大臣)  ただいま頂きました本答申を踏まえ、同行に対する特別危機管理の必要性の認定を行うことといたします。

  • (金融担当大臣)  足利銀行に対する特別危機管理の必要性の認定と同時に、預金保険法第111条第1項に基づき、預金保険機構が同行の株式を取得することの決定を行うことといたします。

    以上が本日の諮問に関する審議ですが、本件に関連しまして、足利銀行が業務を行っている栃木県を中心とした地域の金融及び経済の安定に万全を期すため、関係省庁で連絡を密にして対応する必要があるのではないかと思っております。

  • (内閣総理大臣)  政府一体となってきちんとした対応をして下さい。

  • (金融担当大臣)  以上をもちまして、本日の金融危機対応会議を終了いたします。

    なお、後ほど、会議の審議結果等について、私から記者会見をさせていただきます。

(以上)


別紙1 PDF内閣総理大臣による諮問(PDF:7K)
PDF平成15年11月29日付諮問に対する答申(PDF:9K)

第2回金融危機対応会議資料

資料1 PDF内閣総理大臣による諮問(PDF:7K)
資料2 PDF資料(PDF:533K)
資料3 PDF参考資料(PDF:36K)
資料4 PDF預金保険法(抄)(PDF:33K)

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