第4回証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会議事要旨

1.日時:

平成18年4月25日(火曜日)14時00分~15時45分

2.場所:

中央合同庁舎第4号館2階共用第三特別会議室

3.議題:

発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮について

投資家に対する証券会社のチェック機能の発揮について

4.議事内容:

  • 「発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮について(論点整理)」を事務局より報告、追加的な意見交換。
  • 委員・オブザーバー等からの報告。
    • 野村證券(株)~証券会社の公募引受審査の品質管理について
  • 「投資家に対する証券会社のチェック機能の発揮について」の主な論点について事務局より説明、意見交換。

主な意見は以下のとおり

【発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮について】

引受け審査の強化(MSCB含む)について

引受審査項目・内容の見直し

  • 株式引受部長会という組織そのものが独占禁止法の精神からみて疑義があるということで消滅したが、日本証券業協会の自主規制会議の下部機関として引受にかかる公益的なことを議論する場があってもよいのではないか。

  • 引受審査項目の見直しを行うことには賛成。

  • 審査の重点項目として、適時開示を適正に行うための人的、組織的体制、財務データの充実度を明記することにより、発行体の情報開示が充実し、より高いレベルのコンフォートが監査法人から得られ、引受審査に資することとなると考えられる。その前提として上場規則の改正(適時開示への対応体制、財務データの充実度等の上場要件)も必要。

  • 審査項目として「資金使途の適正性」が重要。新興企業については、上場時より、急速な需要拡大時における増資の場合の引受審査時の十分なチェックが特に重要。

  • 上場推薦書にかかる審査の根拠をルール化する必要がある。

私募CB、第三者割当増資について

  • (東証でパブリックコメント中の「上場制度の改善に向けたディスカッションペーパー」における「特定株主への一定の議決権割合以上の株式、新株予約権等の発行については、原則として株主総会に付議する旨を定めた規定を上場規則に明記する」について)定款自治の問題であり、取引所が強制すべきものではない。実務的にも、機動的な資金調達、株式保有による業務提携等の妨げになるおそれがある。割合を何%にするかといった技術的な問題もある。

  • ニューヨーク証券取引所では20%ルールが規則化されているが、これは米国では州によって会社法が異なり、授権株式数や有利発行に関する規制が一律でないためであり、会社法において有利発行等に関して明確なルールが設けられているわが国においては同様の規制を導入する必要性に乏しいと考えられる。

  • 証券業協会において、私募CBや第三者割当増資等の引受・買取りをする場合に留意すべき事項の整理・明文化のための検討を行うことは賛成だが、証券会社ではなく、ファンドへ割当てられる例も実際にあり、ファンド等への潜脱的な割当に対する当局の適切なチェック、ペナルティも必要。

  • MSCBについての開示義務は発行体が負っており、その開示義務に基づいた適切な開示を行うよう証券会社が発行体を指導することは必要。

  • 現法規の下では開示の最終責任は発行体にあるので、発行体は弁護士等の外部アドバイザーを活用して、開示の正確さ、有利発行か否かについて適正な自己判定に万全を期す必要がある。

引受審査体制について

  • 引受審査部門の独立性確保、引受審査マニュアルの整備、内部監査部門等における引受審査のチェック体制の構築等に関する具体的基準の整備を日本証券業協会で行うことは賛成だが、マニュアルが「これだけやれば合格」というようなボーダーラインとして使われるようなものになると、逆手にとられて有効な審査ができなくなる。また、全ての業種、業容をカバーすることは不可能で改定も追いつかない、といった技術的な問題も生ずることになる。常識の範囲での検討が望まれる。

  • 欧米においては、いわゆる営業部門と審査部門を分けて引受業務を行うのではなく、投資銀行部門の企業担当者が一貫して行うのが一般的。顧客企業やその業種に関する専門的知識を活用して質の高いデュー・デリジェンスが可能となる利点があり、その適正性はリスク管理者、アナリスト等からなる独立した委員会の承認、内部監査による定期的検証等の社内けん制により担保される。

  • 海外の例などを踏まえると、引受審査体制の強化の検討に当たっては、引受審査部門の独立ということではなく、適正な社内けん制が働いているかに着目すべき。

適切な発行条件

ブックビルディングについて

  • 重複申告や空積みは問題だが、その行為を行う者の意思の問題だけに規制は困難。

  • 投資家への周知方法や需要申告の受付方法の基準について証券業協会での検討を要請することは賛成。

その他

証券会社と監査人との連携について

  • 証券業協会と日本公認会計士協会の建設的な協議に期待するが、進展が見られない場合は、監査法人の引受審査への協力義務を法律化ないしは規則化することを検討すべき。

  • 日本公認会計士協会に懇談会へ来て頂き、話をして頂いてはどうか。

上場会社の上場主幹事証券会社による指導遵守義務について

  • 精神的には理解できるが、証券会社による上場会社の継続的監視となると証券会社、上場会社双方の実務上、無理が生ずる。監視委員会のように法的強制力を持たない証券会社に警察的行為を求めるのは無理がある。あくまで上場当初時の品質管理という視点が重要。

  • 上場後のセカンドファイナンスで他の証券会社が主幹事となるケースも考えられ、特定の証券会社が管理するというのは困難ではないか。

主幹事証券会社等の開示について

  • 取引所変更や主幹事証券交代の事実関係の公表は、何をもって交代と認定するのか、一定の期間を間におけば公表義務は消滅するのか等技術的に課題が多い。さらに主幹事交代発表を避けるため、最初からハードルの低い証券会社を使った方が良いといったモラルハザードにも結びつきかねないので、慎重に考えるべき。

  • 例えば、業績見通しについての判断の相違などどちらが悪いともいえない理由による主幹事証券交代も考えられ、問題とすべきではない交代もあることに留意すべき。

  • 新たに主幹事になった証券会社には高度な説明義務が課されるという趣旨の倫理規範のようなものを定めた方が有効ではないか。

日本証券業協会コメント

  • これまで当懇談会において議論されてきた証券会社の引受審査にかかる論点については、当協会としても問題意識を持っており、今後、先に立ち上げたワーキング・グループにおいて、当懇談会における議論も踏まえ、対応を検討していきたい。

【投資家に対する証券会社のチェック機能の発揮について】

インサイダー取引関係

取引所における内部者情報のデータベース化と証券会社による利用について

  • 取引所規則に上場会社から取引所に対する情報提供を明記するなどにより個人情報保護法に抵触しない形で実現可能なら、是非とも取組むべき。

  • データベース化のために上場企業から自社の内部者情報が一括で取引所に提供されるとなると、証券会社に口座を持たない個人の情報も当然含まれることになる。証券取引を行ったこともない人の情報が取引所に登録され、証券会社が自由にアクセス可能ということになると問題ではないか。

  • データベースへの証券会社のアクセスについては、証券会社からの照会に対し、ヒットする情報があれば次の段階の情報にアクセスできるようにする等不公正取引の防止という利用目的から逸脱しないように配慮した運用が必要。

  • 「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」の解釈として、上場会社から取引所への情報提供が本人の同意なしに行えるとされている「相場操縦的行為など不公正取引の防止等に必要」な情報をどこまでの範囲に限定すべきかは今後詳細に詰めていかなくてはならない問題。

  • データベースへの情報提供について、役職員のどこまでの範囲のどのような内容のデータの提供が必要なのか、プライバシーの問題も絡むことから、詳細な検討が必要。

  • 取引所は全国に複数あるので、効率化の観点からデータベースは一つに集約すべき。

内部者登録の対象拡大について

  • 一般職員全てを内部者登録の対象とするのは過剰規制ではないか。上場企業は役員に加えて、ごく一部の内部者情報を有する立場の部署の職員を把握しているはずなので、その範囲に限定するなど、内部者情報に接する立場の職員を対象とすべきではないか。

  • 転職が多くなってきている昨今、一般職員まで内部者登録対象を拡大するのは現実的ではないのではないか。

その他

  • 上場会社が従業員に対し、インサイダー取引禁止の周知徹底を行うのが第一にやるべきこと。

  • 主幹事証券会社から上場会社へのインサイダー取引防止のための適切な助言も必要。

相場操縦関係

証券業協会における取引停止顧客等の情報の集約について

  • 証券会社を渡り歩いて不公正な取引を行おうとする顧客に対しては証券会社単独のチェックでは限界があることから、不公正な取引の疑いのある顧客、取引停止顧客等の情報については、顧客に口座開設時等事前に告知した上で証券業協会に集約して、証券会社の閲覧に供する仕組みを構築すべき。そのためには、取引所における内部者情報のデータベース化と同様、個人情報保護法等との関係の整理等を行い、関係者間のコンセンサスを形成していくことが必要。

  • 不正取引等にかかる情報の当局に対する提供について、電子データによる提供や様式の統一、WANの構築等により効率化が図られるべき。

顧客の本人確認及び原始委託者の把握

海外からの注文受託に際しての原始委託者の確認について

  • 当局からの照会に対して原始委託者を回答することを注文受託に際しての条件としても、委託者の背後に何重にも人が噛んでいるような場合(不公正な取引を行おうとする場合にはこうした方法がとられることが多いと考えられる)には真の原始委託者を特定できることは困難で実効性が低いのではないか。また、委託者の同意なしで回答できるのかも疑問。

不公正取引防止のための内部管理態勢について

  • 規制内容が不明確であることにより各証券会社の対応が区々になっているので(例えば空売り規制)、明確な基準を自主規制なりで定めるべき。

その他

国境を越えた不公正取引への対処

  • 当局や取引所の監視が及びにくいヘッジファンドを含む海外投資家による不公正取引を防ぐための方策を良く考えるべき。例えば、先に証券取引等監視委員会から出された建議にある事前需要調査などはその情報を利用した不公正取引が行われる可能性があり、最終投資家の実態把握が困難な海外投資家に対して行うことは再考されるべき。

  • 証券会社が自らの顧客がマナーのある投資家であるか否かを検証することも必要。

  • 証券監督者国際機構(IOSCO)を通じた各国当局間の情報交換がスムースに行われることが望ましい。

金融経済教育について

  • 不公正取引の防止には、金融経済教育を充実するなど地道な啓蒙活動を継続していくことも必要。

反社会的勢力の排除について(日本証券業協会コメント)

  • 株式市場が活況を呈していることもあり、反社会的勢力の株式市場への参入も活発化している兆候がある。反社会的勢力がらみの相談案件も増加傾向にあり、また、ネット口座のID、パスワードを担保に取る等の新たな手口も現れていることから、行政、証券会社それぞれが反社会的勢力の排除に本格的に取組んでいく必要がある。協会としても早期にこうした問題に取組むための組織を立ち上げたい。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局証券課市場機能支援室
(内線3379,3312,3314)本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る