第5回 金融庁政策会議の概要

日時:平成21年12月2日(月)8時00分~9時00分

場所:金融庁15階第1・2研修室

議題1: 平成22年度税制改正要望について(証券税制等)
  議題2: 報告事項
  • 国際的に活動する銀行に関する規制改革の動きについて
  • 「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」について
  • 中小企業金融円滑化法の政府令(案)・監督指針(案)・金融検査マニュアル(案)について

【大塚副大臣より冒頭挨拶】

  • ○ 大塚副大臣

    中小企業金融円滑化法案の可決の御礼を先生方に申し上げたい。

【大塚副大臣より議題1に関する説明】

  • ○ 大塚副大臣

    今回、特にご議論いただきたいのは、少額の上場株式等の投資のための非課税制度の措置(日本版ISA)の実現について。

    民主党が掲げる大きな目標としては、簡素な証券税制であること及び株式の長期保有を促す税制であること。一方、長年「貯蓄から投資へ」との目標を掲げ様々な税制を措置しているが、日本では株式の金融資産に占める比率は依然低いまま。そこで、英国において成果を上げている制度を参考に、類似の税制を導入してはどうかと考えている。是非ご意見を聞かせていただきたい。

【議題1に関する質疑応答】

  • ○ ISAは複雑であり、10%の軽減税率を適用する方が簡素。当面は軽減税率を維持し、将来的に本則に移行すべき。その際、配当は10%とする一方で、譲渡益については、20%に戻すか10%を維持するかは議論の分かれるところ。

  • ○ 20%の本則税率適用をISA導入の前提にする必要はないのではないか。現在の株式市場の状況は、投資家の利益よりも企業の設備投資や雇用情勢といった社会的な影響が非常に大きいことを主張の根底に置いて議論すべき。

  • (答) ISAは証券税制全体の中で、一つの恒久的な制度としたいと考えている。他方、本則税率に戻るタイミングで導入するとの発想がないとは言えないが、法制化後にシステム対応をしなければならず、実施までに時間がかかるという事情もある。

    民主党においても、当面軽減税率を維持するとしているが、「当面」がどのくらいの期間か不明なため、今のままでいくと平成24年に本則税率が適用されるかもしれない。そうなったときに慌ててISAを導入するのでは間に合わないため、準備しておきたいということ。

  • ○ 日本では高齢者が多くの個人金融資産を保有しており、こうした高齢者からの贈与によるファンドの買い付け等が非常に大きいため、ISAも20歳以上という開設者の要件をなくせば、非常に効果が大きいのではないか。また、贈与からの投資枠を拡大させていく方が、日本の個人金融資産を株式へと誘導するには意味があるのではないか。

  • ○ ISAは英国で非常に効果を上げている制度。株価がこれだけ低い状況で、市場においては現政権がマーケットに無関心と危惧されているところでもあるので、ISAの提案に際しては、20%の本則税率適用開始時という前提を無くして導入すればインパクトは大きいのではないか。

  • ○ 税率は10%、20%という以前に0%にすべき。ISAについては、シンプルさに欠けるところがあるが、全体的な方向性としては、ポジティブに考えたい。

  • ○ 譲渡益に対しての課税を低くするというよりも、投資の場合は損が出ることがあるため、損益通算の幅をもう少し広げる等の措置を採った方が若い世代にとってはメリットがあるのではないか。

  • (答) 本日いただいたご意見を参考に税務当局と交渉させていただきたい。本則税率に戻すということを前提にした議論にならないよう、しっかり対応させていただきたい。

【大塚副大臣より議題2(国際的に活動する銀行に関する規制改革関係)に関する説明】

  • ○ 大塚副大臣

    金融規制の強化、中でも自己資本比率規制の強化に関する議論が進んでいる。今後は、2009年中に市中協議文書を取りまとめ、2010年半ばまでに、それを実施した場合にどのような影響が出るかを調査し、2010年末までに最終案を策定する。2012年末までを目標に、景気が持続的に回復する環境が確保されれば実施することになる。この動きを先取りして既に増資ラッシュが起きており、我が国としてこの問題に如何に対応していくかという点は、有用な検討事項。

【議題2(国際的に活動する銀行に関する規制改革関係)に関する質疑応答】

  • ○ バーゼルでの交渉に関しては政治主導で徹底的に日本の主張を打ち出してほしい。自己資本の質の改善に関する国際交渉については、優先株、とくに強制転換型優先株の扱いなど、もっと戦略的に動いて国際交渉が出来ないのか。普通株の発行の仕方に関して既存の投資家の株式のダイリューション(希薄化)を起こさないため、第3者割当(増資)の制限や、既存株主への新株割当て等の制度を導入するなどの措置を検討してほしい。国債のリスク・アセットが現在の0%より高くなった場合、日本国債によるファイナンスへの影響などが懸念される。

  • (答) 国債のリスク・ウェイトが変更されるとは聞いていないが、足許をすくわれないように注意していきたい。

    また、基本的な交渉スタンスについて、もっと自己主張をしていくべきだということは、着任以来交渉担当者に指摘している。普通株の発行については、ダイリューションを起こさせないために、ライツ・イシュー等も含めて、既存の株主が不利益を被らないための対策を考えていきたい。

  • ○ 規制改革の背景として「金融危機の再発を防止し」とあるが、自己資本の質と量が強化されれば金融危機が必ずしも防げるわけではなく、むしろ別の要因の方が大きいのではないか。バーゼル委員会等の議論をそのまま持ち帰って実施するという姿勢を転換すべき。

  • ○ 自己資本を巡る国際的な議論については、今までの何倍もの影響が(国債市場を含め)日本の市場に及ぶということを更に主張すべき。需給関係やダイリューションなどの問題が大きいということを、もう少し強く主張すべき。

  • ○ 制度変更だけでお金を使わない株価対策となるので、ライツ・イシューを是非検討すべき。今後、検討を前向きに行うことでマーケットに対して良い影響があるのではないか。

  • (答) アジェンダ・セッティングに関する官邸と各省庁とのプロセスについては、政権全体としてフォローしていきたい。

【大塚副大臣、田村大臣政務官より議題2(「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」関係)に関する説明】

  • ○ 大塚副大臣

    改正貸金業法の附則の中に完全施行の前に経済情勢等を見ながら検討を踏まえ、完全実施に備えることが規定されている。先般、当該規定に基づき検討するためのPTを設置し、その下に事務局会議を設けた。改正貸金業法は多重債務者問題やその他様々な問題があって改正されたものであり、総量規制は当然に導入されるものと考えているが、一方で資金ニーズがありながら借りられない人が出てくるという問題への対応を図るべきとの意見もある。多重債務者を減らしていくために何が出来るのか、改正貸金業法の完全施行に向けて検討を進めていく。

  • ○ 田村大臣政務官

    事務局会議は今週月曜から開始し、基本的にはヒアリングを実施する予定。第3回までは貸金業協会や日弁連等の貸金業の関係団体から、それ以降は有識者からヒアリングを行う予定となっている。

【大塚副大臣より議題2(中小企業金融円滑化法関係)に関する説明】

  • ○ 大塚副大臣

    中小企業金融円滑化法の施行令等については、政策会議でのご意見、国会審議の中のご意見を反映させていただいた。また、信用保証制度についても、会議の意見を反映し、中小企業庁に調整していただいている。

    金融検査マニュアル改定の概要について、今回の改定により、経営管理(ガバナンス)、金融円滑化編、リスク管理等編の3つのセクションとなる。特に金融円滑化の部分については、今回新設されたものである。金融機関の財務だけが健全で、与信先が疲弊していては本末転倒ではないか、ということが金融担当大臣や民主党の考えである。そこで、マニュアルは、与信先を育てていくという金融円滑化の機能と金融機関の財務の健全性の2本柱に変わった。

    法律については、今週末の施行を目指したいと考えている。

【議題2(中小企業金融円滑化法関係)に関する質疑応答】

  • ○ 今回の検査マニュアルの改定により、金融機関の対応はどのように変化するとお考えか。

  • (答) 金融庁が金融機関のコンサルティング機能の発揮の状況をチェックしていくという姿勢で検査・監督を実施する方向に舵を切ったことは大きな変化。金融機関も、それを踏まえた対応を行っていただきたい。いずれにせよ、今回の措置が金融機関の現場まで十分に浸透するようしっかりと対応してまいりたい。

(以 上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課総合政策室(内線3182、3716)

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