第1回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1.日時:

令和2年6月9日(火)16時00分~16時40分

2.場所:

オンライン会議

3.議事概要:

 

(金融庁)

〇 金融機関が関わる書面、押印、対面の手続を見直して、電子化を進めるために、まず現状を把握し、課題を整理し、対応を検討することがこの検討会の目的。手続に関しては、既に電子化されているものもあるが、実際の利用があまり進んでいないものがあることも承知している。また、電子化自体が進んでいないものもある。電子化を進めるためには、制約となっている要因を把握することが重要。法律上の制約、コスト、人材や顧客側のニーズや体制の問題、慣習上の問題等が考えられるが、それぞれで対応が異なってくるものと承知。

 

〇 グローバルには、そして国内においても手続の電子化は進んでいるが、特に最近の新型コロナウイルス感染症によるテレワークが広がる中で、電子化がさらに拡大するモメンタムが出てきていると考えている。経済団体の方々も電子化を強く要望しており、事業者側のニーズが広がる中で、(規制改革推進室から話があると思うが)電子署名の法律上の論点についても整理がなされているところ。

 

〇 一方で書面、押印、対面の手続の中には「これまでそのようにやってきたから」という慣習によって電子化が進んでいないようにみえる手続もある。手続の電子化を進めるためには、当該手続だけではなく、それに関連する社内の内部プロセスについても電子化を行わないと、業務効率化の効果が発揮されないのではないかと考える。人材や体制面の整備も含めて経営陣の強いリーダーシップの下で全社的に考えていく必要がある。この検討会においては、皆様の意見を伺いつつ、金融機関における先進事例の紹介や、電子署名のサービスの紹介、事業者側の要望等を紹介しつつ、電子化を進めるための方策を一緒に探っていきたい。

 

(規制改革推進室)

〇 書面・押印・対面手続の見直しについては、4月30日に4経済団体から約350項目の要望をいただき、これに対する行政側の回答を5月18日に公表した。また、さらなる見直しが可能と考えられる回答もあったため、5月22日付で再検討を依頼し6月5日に再検討結果を公表した。

 

〇 代表的なものでは、社会保険、労働関係は、利用者のニーズが強く、押印を要するものが多いので、所管の厚生労働省に検討してもらっている。就労証明書については、事業者等の第三者による証明書であり、本人確認のための押印は不要ではないかとの議論がデジタルガバメントWGでもなされている。安全規制等については、立ち入り検査も実施するものであり、金融や建設、国税、地方税についても相手方は普段やりとりのある者であることが多く、本人確認のための押印は不要ではないかとの議論もしている。会計についても契約ではない領収書、見積書等は押印が不要ではないかと議論している。内閣府では契約以外は押印不要となった。民民間の商慣行等による手続については、出退勤簿への押印や、稟議等の社内における手続も含めて押印の見直しを行う。また、証拠を確保するために取引の相手方に押印をお願いしていることが多いが、そのお願いもやめるように、経済団体並びに関係省庁で立ち上げた協議会等の場を活用し、官民で連携して取り組んでいく予定。不動産の売買、賃貸では、宅建業法上、重要事項説明書等の書面交付が規定されているが、電磁的方法による交付等に向けて国交省に改正措置を求めている。

 

〇 また、取締役会の議事録作成時に必要な取締役の押印について、いわゆる「リモート型」や「クラウド型」のうち一定の電子署名の利用を認めることにした。株主総会招集時の配布資料である単体計算書類等についても、新型コロナウイルス感染症が広まる現下の緊急措置としてウェブで開示すれば足りることにした。

 

〇 今後の課題として、金融機関の窓口に振込にくる中小企業の方も多く、ついては電子化の普及率を上げていくことが必要。また、「リモート型」や「クラウド型」の電子署名の電子署名法における位置付けや、押印を省略・廃止した場合の懸念点に対する考え方について、関係省庁において検討を行っているところ。

 

(金融庁)

〇 新型コロナウイルス感染症の影響も受けて、テレワークの導入が業種を問わず増加している。テレワークの導入がうたわれるなか、押印や書面方式のために出勤をせざるを得ない状況があり、従来の商慣習が問題視されているという状況にある。金融業界においても、書面、押印、対面の手続が多く残っていることから、金融業界全体で手続の見直しを検討していく、このような背景を基に検討会を立ち上げた。

 

〇 検討会の方向性は、金融業界の各手続の電子化の状況をまずは把握することが第一。その次に電子化されていない手続にはどのような課題があるのか特定する。電子化されていてもあまり利用されていなければ、どのような課題があるかを同時に議論していく。課題のうち、優先的に解決すべきものから対処していく。本件を契機に、事務手続の効率化についても併せて検討していく。

 

〇 外との手続を電子化したとしても内部の手続が、十分電子化されていないと、効果が発揮されず、外の手続だけだとコストが見合わないということになりかねないので内部プロセスを含めた電子化の検討をしてまいりたい。

 

〇 次に、主に預取を中心の整理だが、現在の金融機関の電子化の状況について、カテゴリー分けして説明する。個人インターネットバンキング、ネット保険、ネット証券等の比較的利用の多いものは、更に利用率を上げていく観点、セキュリティの観点が課題との指摘がある。法人インターネットバンキング、でんさい、税公金収納等のあまり利用者数が多くないものは、顧客側のコストや使い勝手の不満等が課題との指摘がある。個人向けの新規口座の開設、ローン等の一部の金融機関が利用するものについては、顧客側のコストや使い勝手の不満等が課題との指摘がある。法人との新規契約、融資契約等の利用がかなり限定されているものは、法的証拠力、事業者側の体制整備、法令による制約が課題との指摘がある。

 

〇 課題をもう少し掘り下げることで、異なる側面や留保が必要な点もあると思うが、この枠組みを中心に検討していくつもりである。

 

〇 金融機関側のニーズがあれば、電子署名について整理・検討している関係省庁にも働きかけをしていきたい。また、事業者側の体制整備についても、政府の中で検討していけるよう当庁としても関係省庁と話をしてまいりたい。

 

(全国銀行協会)

〇 政府の方でどのような取組があるかよくわかった。印鑑レス等の取組については既に始めているが、民民に限らず官民についても取り組む必要があると考えている。

 

〇 検討会には、コロナ禍以前より書面・対面の見直しは進めてきているところではあるが、改めて、コロナにより必要性を実感しているところ。例えば、コロナ禍の状況で、お客様が窓口に来店して手続したものの中には既にオンライン対応している手続・サービスが多数あり、手続・サービスのオンライン化の浸透不足を感じたところ。各行、努力はしてきたところだが、普及が課題と考える。普及を加速させたい。

 

〇 例えば法人の取引においては初めから最後まで印鑑なしでできるようにはなっていない。必ずしもお客様に浸透はしていないし、簡便なものを提供できているかは疑問。法律面の手当ても必要だと思うが、浸透や簡便さの方も考えたいところ。

 

〇 手形であればでんさい、小切手であればインターネットバンキング、税・公金収納であればe-tax、ペイジー等の手段は、印鑑レスにすぐに結びつく訳ではないが、非対面には結びつくものだと考える。

 

〇 印鑑、対面は歴史の中で定着した文化の側面が強く、企業サイドのIT化も必要である。こうしたことを進めるためには、企業の自助努力もそうであるが、旗振り役である関係省庁の皆様と協力しながら、インフラ整備を含めて検討会の中で議論していきたい。


(金融庁)
→ 規制改革推進室もそうだが、金融庁としても前に進めるべく取り組んでまいりたい。

(規制改革推進室)
→ 関係省庁としっかり関係を持ち、連携しながら頑張ってまいりたい。

(日本損害保険協会)

〇 損害保険では場面で書面や対面を利用することが少なからずある。民民に限らず、行政とのやりとりの中で本当に紙や押印、対面が必要なのか一緒に考えてまいりたい。


(金融庁)
→ 官民手続についても、現在考えているところ。

(規制改革推進室)

→ 金融庁はかなり見直しを進めていただいているところ。官民手続で印鑑を用いる手続は1万件以上あると言われているが、原則としてそのすべてを対象に各府省に対して必要な検討を求めていく予定。

 

(日本資金決済業協会)

〇 内閣府規制改革推進室の資料である「経済界からの金融業界に対する要望例」の中に「日本資金決済業協会あて届出」として、商号、本店、代表者又は実務責任者の変更等における届出が記載されている。しかし、これは、協会の総会・理事会などで策定した民間団体の内部規程で定めている手続きであり、少なくともその他の要望例である口座開設や改廃、融資等の押印、金融機関における振込等の届出印及び福利厚生制度等の申請手続きの電子化とは、その内容・影響度などから全くレベルが違うものであることをご承知いただきたい。なお、当協会では、会員からの届出書類の押印について、個別に申し出があって書面の正当性が担保されているものについては、押印の省略又は後日の押印などの取扱いを既に実施しており、さらにコロナウイルス感染症への対応として押印の省略を実施している。また、会員等のテレワークにも配慮し、面談に代えて電話、メールを多用した連絡や新たにウェブ会議システムの活用などの対応を行っている。


(規制改革推進室)
→ 前向きな対応に感謝。引き続きよろしくお願いしたい。

(信託協会)

〇 信託には多種多様な取引があるので、その観点からも当局とご相談しながら検討させていただければ幸いである。金融庁資料の「電子化に向けた課題」の法的証拠力の懸念についてはそのとおりだと感じる。その懸念を払拭できるような代替手段も含めて検討させていただければ幸い。

 

(規制改革推進室)

→ 法的証拠力については、法務省と経産省と内閣府の連名での民事訴訟法第228条第4項の法律上の推定効について整理し、Q&Aの策定をしようとしているところ。書面の押印の効力は実は限定的であることを説明するとともに、電子署名の使い勝手を拡大していく。同時に、これまで電子署名と書面の押印がイコールフッティングになっていないが故に書面、押印になってしまっていたということをなくすために、それらがイコールフッティングになるよう、先に述べたQ&Aも含め努力しており、引き続き取り組んでいく予定。

 

(生命保険協会)

〇 生命保険においても、書面、押印を要する事務の電子化は積極的に進めていかなければいけないと認識している。個人契約の部分については、今までも、電子化を図ってきている。一方で、顧客保護の観点から、対面、書面を残している部分もある。積極的に電子化を検討する中で、顧客保護が毀損されれば本末転倒なので、電子化を進めるという大命題に向き合いながらも、一つずつ保険事務について検討してまいりたい。

 

(金融庁)

〇 協会の方々から前向きなコメントをいただき非常に勇気付けられた。確かにこれまでの慣習、文化に根差したものもあるが、顧客保護の観点も必要であり、単純に割り切れるものではないことも承知。しかし、我々のプラクティスの中に根付いているものでもあるので、ある程度、強いリーダーシップを持って推進力を持ってやっていく必要がある。できない分野を探すのは非常に容易な分野でもあるので、前を向いて力強く走っていく前提の下で様々なところにも目配りをしていくというスタンスでご協力いただければありがたい。今日はご参加いただき誠に感謝申し上げる。

ー了ー

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課(内線3387)

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