偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ(第3回)
議論の概要

1.日時

平成17年3月4日(金)10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館11階 共用第一特別会議室

3.議論の概要

○ 川地委員より、「キャッシュカードの不正使用をめぐるドイツの法状況」について、資料に基づき説明が行われた。

○ 岩原座長より、「偽造その他無権限キャッシュカード等取引に関する英米仏等の法制」について、資料に基づき説明が行われた。

○ 金融庁より、「民法第478条とATM引出しの適用事例等」について、資料に基づき説明を行った。

○ その後、説明に対して質疑応答が行われた。その概要は以下のとおり。

  • キャッシュカードにICチップを使用する場合、暗証番号をICチップに保存することはあり得る。磁気ストライプを使用する場合には、読み取られる危険性があるため、暗証番号をホストコンピューターで管理することが一般的であるが、必ずしも銀行のホストコンピューターに保存することが一番安全というわけではない。最近の生体認証の情報についてもICカードにのみ保存するという手法を採っている。

  • ドイツでは、キャッシュカード上に保存された情報にトリプルDESの暗号処理を行い暗証番号を導き出すという方法が採用されており、銀行が暗証番号を決定している。これにより、預金者の誕生日や電話番号などから暗証番号を知られる危険性はなくなるが、その反面、銀行から付与された暗証番号を預金者が暗記しなければならず、また、第三者にDESが解読されると、カード上の情報から安易に暗証番号を知られる危険性がある。

  • ドイツのキャッシュカードには、カード自体にMM-Merkmalと呼ばれる偽造防止策が組み込まれ、ドイツ国内のATMでは偽造カードの使用が不可能となっている。しかし、MM-MerkmalはEU域内の他国のATMでは機能しないので、国外において偽造カードが使用される危険性を否定できない。

  • 現金主義の日本と小切手等の使用が中心の国では、責任分担ルールが異なるのではないか。例えば米国では、スーパー等で100ドル札を使用することは考えにくい。

  • ドイツ人にとって、キャッシュカードやデビットカードは札入れの替わり。小銭入れとして電子マネーを造っている。日本人は、キャッシュカードは給与を引き出すための金庫の鍵のようなイメージか。米国も基本的には現金を所持しない国。

  • 日本のある主要行の特定日の例では、ATMによる引出しが1日あたり約110万件あり、その4分の1以上が10万円を超える引出し。この点からみても日本では現金の使用頻度が高いと考えられ、現金社会といえるのではないか。

  • ATMの1日あたりの引出限度額は、個人的な記憶になるが、米国では500~1000ドル位、また、ドイツに関しては、調査による限り平均1000ユーロ位。

  • 米国では、小切手の例に倣い、預金の口座維持手数料を徴収する一方、ATMの使用手数料を徴収しないことが多かったと記憶している。決済に係る費用はどこかで負担する必要があり、どういう形で利用者に負担してもらうかで違いがでてくる。

  • ドイツでは、決済性預金は利息が付かないこともあり、預金者は残高を必要最低限にしていると思われる。この預金残高は、保険を付す際の保険料負担の議論に影響。日本のように普通預金の残高が多いと、保険の対象額も大きくなるため保険料を銀行側で負担することが難しくなり、顧客から口座維持手数料など何らかの費用の徴収を検討することが必要になる。この点ドイツとは事情が異なる。

  • 日本では、普通預金の取引を申し込むと、窓口で説明が不十分なまま総合口座を勧められる。総合口座を選択すると、定期預金を担保とした借入れ(払出し)が可能となる。このため顧客がリスクを限定しようとして普通預金と定期預金を分けたつもりでも、結果としてリスクが遮断できない。この点は改善すべき。

  • ドイツの場合は、カード自体に偽造防止の仕組みを有しており、また、ATMの出金限度額は低い。日本の場合は、ほとんどのキャッシュカードは磁気ストライプのみを使用しているため、偽造される可能性がある。また、多額の金額を扱うにもかかわらず、セキュリティは必ずしも高くない。

  • ドイツも日本(民法第478条)も過失責任主義に立っているが過失の主体が異なる。ドイツでは預金者の過失の有無を問うのに対し、日本では銀行の過失の有無を問う。内容が正反対であることから、銀行と預金者の双方に過失が無い場合の損失負担も逆になっている。これは法律構成の違いによるものと考えられる。

  • ドイツでは、過失責任主義に基づき、預金者以外の第三者が預金の払戻しを請求した場合に、預金者に過失があるときは、銀行は預金者に損害賠償請求権を有する。このため預金者に過失があった場合にのみ銀行は費用負担を求めることができる。

    これに対して、日本では民法第478条の解釈として債務者(銀行)側の過失を問題としている。このため消費者契約法第10条の適用を検討した場合も、現行の約款は現行法を逸脱していない(民法第478条に沿っている)ことから、民法第478条と比較する限りでは有効な規定と考えられる。

  • もともと民法第478条は、弁済期限が到来した債務について、債務者において債権者が分からないために履行遅滞が生じることを防ぐため、債務者保護の観点から、債務者(銀行)が善意無過失であればその弁済を有効と扱う規定となっており、債権者(預金者)の過失については論じていない。現行の約款もその流れにあると考えられる。今後補償の問題を議論するにあたり、債務の弁済が有効か無効かとの議論になれば、負担割合は0%か100%のどちらかとなり、ドイツのような10%ルールを採用することは難しくなる。このため民法第478条の枠内だけで補償の問題を考えることは難しいのではないか。

  • 日本では、預金の払戻しは預金債務の弁済と捉えている。しかし、ドイツでは、預金の払戻しは、預金債務の弁済ではなく、銀行が預金者の指示に従い行う現金化という事務処理であり、銀行が預金者に現金を交付した後に、事務処理に要した費用の償還として銀行が預金者の口座から当該金額を引き落とすものと捉えている。この考え方に立てば、債務の弁済ではないため民法第478条を適用する必要はなく、日本においてもこうした解釈は可能と考えられる。

  • また、民法第478条を適用することを前提とした場合であっても、本来同条は、民法第480条と関連付けて考えると、誰が債権者であるかに関する認証システムを債権者が主導して作っている場合を前提にしているのではないか。ところが預金については、誰が債権者(預金者)であるかに関する認証システムについて、債務者である銀行が主導して作っている。これは民法第478条の前提とは異なると考えられることから、預金については、同条の適用を否定できるのではないか。

    他方、従来から、預金通帳による不正払戻しの事案において民法第478条を適用する最高裁判例が積み重ねられているので、同条の適用が当然視されている。

  • 法律の適用面において、民法第478条のみで事案を処理することの当否については、議論の余地はありうる。民法第478条は債務弁済に関する一般的基本法であり、預金債権についてこの規定だけで問題解決することは困難ではないか。

  • ドイツ民法第676h条(カードの不正使用について原則としてカード発行者に責任を負わせる)のような規定を、日本にも導入できないか。その場合、預金通帳の問題が残ることになる。

  • ドイツやフランスでは、キャッシュカードに関する特別規定を定めており、預金取引に関するルールとしてどういうものを作ることが合理的か考える必要あり。

  • 今後、民法や約款の改正等新たなルールの策定を行う場合には、ある主要行では2700万の口座があり、また新規に作られても使われない口座も多いという、現金社会日本の現状を踏まえる必要があるのではないか。

  • 銀行協会等が約款ひな型等を作成することについては、独占禁止法の問題も検討する必要があるのではないか。

以上

本件に関する問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
監督局銀行第一課(内線3322、3388)
本議論の概要は暫定版であるため、今後修正があり得ます。


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