偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ(第4回)
議論の概要

1.日時

平成17年3月11日(金)18時00分~20時30分

2.場所

中央合同庁舎第4号館11階 共用第一特別会議室

3.議論の概要

○ 三井住友カード(株)広瀬常務執行役員より、「クレジットカード業界における偽造被害への取組」について、資料に基づき説明が行われた。

○ 松本貞夫委員より、「カード規定試案の制定経緯等」について、資料に基づき説明が行われた。

○ 金融庁より、「金融制度調査会エレクトロバンキング専門委員会における議論」について、資料に基づき説明を行った。

○ 説明に対して質疑応答が行われた。その概要は以下のとおり。

  • ICカード化されたクレジットカードについて、偽造された疑いのある事例はない。

  • 偽造クレジットカードが使用された場合の被害は、カード会社にて調査のうえ、会員が規約で定める善管注意義務を果たしていたと判断される場合は、カード会社で負担している。

  • 偽造クレジットカードによる被害は専らショッピングにおいて発生している。犯罪者は、暗証番号の調査の必要が無いショッピングを犯罪の対象としている。

  • 仮に偽造クレジットカードが使用されてキャッシングが行われた場合も、暗証番号の管理に瑕疵がなかったと判断される場合は、クレジットカード会社は会員に負担を求めない。

  • クレジットカードではICカード化が進んでいるが、クレジットカードは世界中どこでも利用可能である必要があるため、世界中の店舗に設置するカード読取用の端末が全てICカード化対応するまでは、磁気ストライプを併用することとなる。

  • ICカード化によるセキュリティ向上の効果はカード読取端末のICカード化対応が進まなければ限定的であるといえるのではないか。

  • 偽造クレジットカードの被害は、平成16年は減少する見通しである。不正使用対策は重層的・複合的に行っているところであるが、クレジットカード各社の不正使用の検知システムの精度向上、ICカードの導入本格化による抑制効果、刑法改正に伴う取締当局の努力等の効果が現われたのではないか。

  • クレジットカードには、通常のカードの他、ゴールドカードやプラチナカードといった複数の種類がある。ランクが上のカードであるほど、付帯サービスを充実させており、会員が支払う年会費も高くなっている。また、利用枠についてもランクの上のカードには高い利用枠を設定し、会員の利便性を高めている。例えば、各社により異なってはいるが、通常カードでは利用枠は40万円程度(年会費は1000円を超える程度)、ゴールドカードでは利用枠は100万円程度(年会費は1万円程度)である。

  • 松本貞夫委員の報告では、現在のキャッシュカードに関する約款(カード規定試案)の免責規定は、通帳の約款(普通預金規定)の免責規定と同様の考え方で作られているとあったが、現行の普通預金規定では、偽造預金通帳が使用された場合は、どのように対応するのか。

  • 現行の普通預金規定では、預金通帳の偽造については考えていない。この場合は民法の一般原則に戻ることになり、預金通帳を民法第480条に規定する受取証書と考えると、偽造通帳の場合は同条の適用がないと考えられるが、民法のどの規定を適用するかについては議論の余地がある。

  • 安全性を高めるためには、それなりのコストも生じ、その結果として現在と比較して利便性が低下するとともに、そのコストが何らかの形で反映されるという側面がある。その観点も議論に加えるべきではないか。

  • 偽造キャッシュカードの被害件数は、ATMにおけるキャッシュカードの利用件数全体から見れば極めて小さいことから、圧倒的多数の預金者は安全であり、キャッシュカードの利便性を享受しているといえる。しかしながら、個々の偽造キャッシュカードの被害者からみればその被害額は致命的なものである。このような問題を解決するには保険制度を活用することが適当である。保険によりリスク分散を図り、預金者(キャッシュカードの利用者)全体が少額の負担をすることで被害者を救済することが、現状では望ましいのではないか。

  • 偽造キャッシュカード問題に対する諸外国の実際の運用を調査した感想としては、偽造キャッシュカードによる不正使用と盗難による真正なキャッシュカードの不正使用を見分けることは、実務上困難な事例が多いと思われる。現実には、諸外国の銀行では、偽造キャッシュカードと真正なキャッシュカードのどちらが使用されたかについて厳密な調査は実施せず、まず被害者である顧客の損害をいかに早く回復できるかを重要な問題としている。このような方向になる1つの要因としては、引出し限度額が低い等の事情により被害額が低額である状況において、被害額を上回るリーガルコストを負担して裁判を行うことは銀行にとっても現実的に意味がないと考えられていることがある。

  • ATMの引出し限度額をどのようにするか、どの程度の金額であれば顧客(の日常生活)にとっても受け入れられるレベルなのかということを議論することが重要ではないか。米国の大手銀行では、ATMの引出し限度額を1回600ドル程度にしており、また、1日(または、1週間又は1ヶ月)あたりの引出し限度額をそれぞれの顧客に定めている。この結果、偽造キャッシュカードの被害の発見時に被害額が大きくならず、銀行が補償可能な金額にとどまる傾向がある。銀行のシステムが100%完璧に安全とは言えず、また、偽造キャッシュカードの問題も完全には消滅しないことを踏まえ、そのうえで、レピュテーショナルリスクを考えると、銀行は一度は預金者に補償を行うことが適当ではないか。日本で偽造キャッシュカードの対策を行う場合も、誰が責任を取るかというよりも、まず、顧客の損害を早期に補償するにはどういう形が一番望ましいかを重視して議論を進めていくべきではないか。

以上

本件に関する問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
監督局銀行第一課(内線3322、3388)
本議論の概要は暫定版であるため、今後修正があり得ます。


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