偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ(第6回)
議論の概要

1.日時

平成17年3月25日(金)10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館11階 共用第一特別会議室

3.議論の概要

○ これまでの議論を踏まえ、中間取りまとめに向けた議論が行われた。その概要は以下のとおり。

  • 偽造キャッシュカードによる被害の損害負担ルールとして、預金者の過失の程度により、預金者と金融機関の損失を負担すべきそれぞれの範囲(割合又は金額)を、法令又は約款において予め定める方法については、例えば預金者に軽過失がある場合では、その割合又は金額の根拠について明確な説明が困難であるため、適当でないのではないか。

  • 米国の50ドルルールは、1970年代の法律に基づいた数字がそのまま使われており、また、香港の500香港ドルルールでは、作成した銀行協会は特別の根拠はないとしている。各国の法制やルールにも数字について明確な根拠・説明はない。

  • ドイツの銀行約款では預金者に軽過失があった場合に損失の10%を預金者に負担させるルールが定められているが、これは保険で90%カバーされるという実務を反映させたもの。我が国の場合、保険でどれだけカバーできるか未だ不透明なので、ドイツの10%ルールをそのまま導入する必要はない。また、ドイツでも公的な金融機関である貯蓄銀行は10%ルールを採用していない。重過失と軽過失を分けるにしても、軽過失の場合の責任割合は各金融機関に任せればよいのではないか。

  • 偽造キャッシュカードの問題では、カードの所持と暗証番号の二重のセキュリティシステムの一方が働いていない実態がある。このため、損害負担ルールの議論の出発点としては、金融機関が全額負担するとし、被害が発生したことについて、預金者にいわば共同不法行為者的な評価を受けるような重過失がある場合に、預金者が負担するという考え方が適当ではないか。

  • 偽造キャッシュカードに関しては金融機関の責任が大きいが、暗証番号の管理に関して預金者に全く注意を求めないということは無理があるのではないか。このため損害負担ルールとしては、原則金融機関の負担としつつ、カード又は暗証番号の管理につき預金者の重過失がある場合は、預金者が負担する方法が適当ではないか。

  • 暗証番号の管理ミスだけが争点になることは預金者には厳しいのではないか。預金者が、カードと暗証番号の両方の管理について問題があった場合に、預金者に重過失があるとすべきではないか。

  • 暗証番号の管理については何らかの形で預金者に求めざるを得ないため、これを全く預金者の過失として評価しないと明文化することは抵抗がある。ただし、現実的には預金者の暗証番号の管理ミスについて金融機関が立証できることはあまり無いので、それを理由として金融機関が補償しないケースは少ないのではないか。

  • 現在、ATMの引出し限度額を下げるに当たって、希望者が限度額を下げることができるようになっている。しかし、多くの預金者は積極的に行動を起こさない可能性があるので、まず、引出し限度額を低い額とすることを基本とし、希望者が引出し限度額を引き上げられるようにした方がよいのではないか。

  • 現在、キャッシュカードには、磁気ストライプを使用したもののほか、ICカード化したものがあるが、金融機関によっては、それぞれの引出し限度額が異なっている。これはカードの種類によって実際に補償できる範囲が違うとの考え方によると思われるが、ある意味では磁気カードを使用する限りその引出し限度額を定めその範囲でしか補償しないとすることも合理的ではないか。逆にそのようにしないと、いくらICカードの方が安全だとしても預金者にICカードに移行してもらえないのではないか。

  • 預金者は、銀行の勧めに従い預金口座開設の度にキャッシュカードを作成・保有しており、さらに、クレジットカードの暗証番号やインターネットのID等もあることから、現実問題として、預金者のキャッシュカードや暗証番号の管理が難しくなっている。このような中で、暗証番号のメモ等をキャッシュカードと一緒に携帯した場合や、預金者自身の誕生日等外部から容易に推察されうる番号を暗証番号として使用した場合、暗証番号と同じ番号を金融機関以外の第三者との取引きに使用した場合について、それだけで預金者に重過失が認められるとすることは、現実的ではないのではないか。

  • 暗証番号とキャッシュカードは2つの鍵であるが、預金者の暗証番号の管理が問われないこととなると、現在金融機関が行っている暗証番号に関する注意喚起や変更要請が無意味になる。また、暗証番号を厳重に管理した預金者とそうでない者を全く同じに評価することは如何なものか。

  • 預金者の重過失を評価するに当たって、暗証番号として誕生日を使用していれば即重過失に該当するのではなく、さらにキャッシュカードを偽造されやすいような管理を行っていた事実があるなど、他の事情も一緒にした上で評価を行うべきではないか。

  • 預金者の暗証番号の管理を重過失として認定するためには、暗証番号の管理の必要性について、預金者に対してかなり周知徹底を図る必要がある。既に、ATMにおいて暗証番号に関する注意喚起の画面を出すようにしている金融機関もあるが、今後も口座開設の際に窓口での暗証番号設定の注意喚起を行っていく必要があるのではないか。

  • 預金引出し後長期間が経過すると、金融機関の保有するビデオの記録等が廃棄されるため、金融機関側が預金者の重過失を立証することが困難となる。このため、第三者の出金があったがこれに気付かず一定期間を経過した場合については、金融機関が補償することを原則とすることは適当ではないため、預金者の重過失として評価することはできないか。

  • 日本では、定期的にステートメントを送る方式ではなく、預金通帳を利用する制度となっているため、一定期間を経過した場合について預金者の重過失と評価するには、一定期間ごとにきちんと通帳の記帳をする必要があることを、預金者に対して通知することが前提となるのではないか。

  • 預金者が金融機関の調査に協力しない場合に、免責約款のような形で預金者の実態上の権利を無くすのであれば、この不協力の内容についてかなり厳格なものを要求しないと、その効力について疑問をもたれる可能性があるのではないか。

  • 補償の悪用(被害の偽装等)対策として、偽造キャッシュカードに関する情報を金融機関で共有することについては、偽造カードの更なる使用を防ぐため、偽造カードの番号を共有することは可能と考えられるが、偽造カードの被害者についての情報を共有することは困難なのではないか。

  • 明らかにおかしい事例のあった預金者や、過去に補償の悪用を行った預金者について、他の金融機関も情報を共有したいということは理解できるが、逆にそれを行うと金融機関が取引きの不当拒絶を行っているとされる可能性もあるため、本件は非常に難しい問題である。

  • これまで、本スタディグループにおいては、偽造キャッシュカードの問題について優先して議論してきたが、キャッシュカードに係る消費者被害について全般的にどう考えるかについてまとめる必要があるのではないか。また、盗難通帳についても除外する理由はあまり考えられないのではないか。

  • 盗難通帳による不正取引については、機械を通じて行うキャッシュカードの不正取引とは異なり、窓口で対面し印影を肉眼で照合する、ヒューマンエラーの部分があるなど違う点があるため、両者を違う視点で見ることが必要ではないか。

  • 偽造キャッシュカードの問題は、民法第478条の預金取引への適用にあたり、現行のシステムでは金融機関が過去のように無過失を主張できないケースが増加していることへの対応をどうするかの問題と認識している。これを盗難キャッシュカードや盗難通帳まで対象とするのであれば、現行の金融機関の窓口では通帳と印鑑を使用して支払いを行うという前提を考え直す必要があるのではないか。例えば、出金時に別の本人確認を行う、あるいは現金による出金は窓口かATMかを問わず出金限度額を設けることにまで繋がるのではないか。また、種々の取引に適用される民法第478条の規定を金融機関の預金取引にのみ適用しない理由をどのように考えるのか。これらは今すぐ対応することが可能かという点で次元が異なるのではないか。

以上

本件に関する問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
監督局銀行第一課(内線3322、3388)
本議論の概要は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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