偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ(第14回)
議論の概要

1.日時

平成17年5月11日(水)16時00分~18時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館4階 共用第二特別会議室

3.議論の概要

○ これまでの議論を踏まえ、第二次中間取りまとめに向けた議論が行われた。その概要は以下のとおり。

  • 預金者から盗難等の届出が行われた場合に、金融機関の当該口座の停止措置が遅れた場合の負担については、明記する必要は無いのか。

  • 金融機関は、預金者から連絡があれば、遅滞無く当該口座を停止することが基本であり、それが遅れた場合には金融機関に過失があることとなり、補償の対象となる。

  • 預金者が行う疎明はどのようなものか。

  • 預金者が金融機関に対して合理的な説明を行い、金融機関が預金者の説明を一応確からしいと推測したときには、預金者は疎明を行ったことになる。

    このような考え方を導入したのは、預金者側が自らに過失が無いことを立証することは困難であり、酷であると考えられ、逆にこの点を金融機関に立証させることも極めて困難。したがって、預金者側の無過失については証明より一段下の疎明で足りるとしたもの。

  • 預金者の立証負担軽減のために「金融機関及び預金者の過失の有無に応じて個別に負担割合を考える損失負担ルール案」が修正され、「あらかじめ標準的なケースにおける金融機関と預金者の負担割合を定めておく損失負担ルール案」が提案されているものと理解しているが、預金者の立証負担の軽減であれば預金者が無過失の立証ができなくても金融機関が50%負担し、かつ預金者の立証責任を疎明責任に軽減することで充分なはずで、金融機関が預金者の重過失ではなく過失を立証すれば預金者の100%負担とすることが、修正案としては適当ではないか。

  • 金融機関が免責されるために、預金者の重過失を立証する必要がある点は、偽造キャッシュカードの場合と同様である。

  • 預金者としての注意義務を果たしていないなど盗難被害について保護に値しない者については全額負担とすべきであるが、被害者がそのような者であるか否かについては、金融機関が立証すべきではないか。

  • 疎明という言葉は、立証よりも証明レベルが低いとの意味で捉えて良いのか。

  • 預金者側が自らの無過失を説明するに当たり、立証責任という言葉は重過ぎるため、疎明という言葉を使用したところ。ここでは、純粋な法律的な用語とは異なり、軽い立証責任との意味で使用している。

  • 預金者がキャッシュカードの盗難・紛失について、そのストーリ-を金融機関に対して全く説明できない(疎明できない)のであれば、論外となるのではないか。次に、被害者が嘘をついているか否かを判断するという難しい問題があるが、嘘で無いとの証明は犯人が捕まらないとできないのではないか。

  • 預金者には金融機関への協力義務があるため、金融機関が主体的に動けば、ある程度は過失の存在等について分かるのではないか。

  • 預金者が預金を他行設置のATMで引出した場合には、どちらの金融機関が当事者となるのか。例えば、他行のATMに過失があった(つい立に問題があり暗証番号の覗き見が可能であった場合等)ことにより、被害が発生したと考えられる場合はどうか。

  • 金融機関間でATMの提携を行う場合には、事故が発生した場合の責任分担は予め契約により定めており、その内容による。一般論としては、提携先の金融機関(ATM)に過失があって被害が発生した場合には、提携契約を行った金融機関(被害者の口座がある金融機関)が責任を持って預金者と対応し、その後金融機関の間で求償を行うことになるのではないか。

  • 補償対象期間を盗難の届出時から48時間前以後とすることは、預金者に厳しくないか。財布ごとキャッシュカードを盗まれた場合には、恐らく2日以内に盗難の事実に気が付くと考えられるが、財布からカードだけ盗まれたケースでは難しいと思う。逆に言えば、2日毎にATMにおいて引出しを行う人は少ないのではないか。

  • 実態として、預金者は必要とする以上のキャッシュカードを保有している。このため多くの家庭では、普段使用しないキャッシュカードを家に置きっぱなしにしている。こうした実態を踏まえれば、補償を届出時の48時間前以後に限定することは厳しすぎる。金融機関がもっとキャンペーン等で周知を行い、消費者の金融知識が増大してからそのようなルールとすべきではないか。

  • 今年のゴールデンウィークのように連休が続く場合があること、また、預金者に毎日ATMで記帳させることは現実的でないことを踏まえると、48時間は短いのではないか。

  • サンプル調査の結果では、キャッシュカードの盗難・紛失にあった預金者の8割以上が、48時間以内に金融機関に通知している。大半の預金者は注意義務を果たしており、仮に補償対象期間を48時間前以後から10日前以後に延長しても、追加対象となり救済される預金者の割合は小さいのではないか。

  • キャッシュカードには所持認証機能があるが、補償対象期間の拡大は、預金者のカード管理への注意義務の水準を落とすことに繋がるのではないか。

  • 補償対象期間を長くする場合、金融機関は被害額の拡大を防ぐため1日あたりの引出限度額をより低く設定する必要性が生じる。これはATM取引の利便性が大きく低下することに繋がるのではないか。

  • 被害の偽装などの犯罪を防ぐためには、被害額が拡大しないようにする必要がある。そのためには補償対象期間は短い程良く、48時間が適当ではないか。

  • 預金者に酷な結果とならないようにしつつ、また補償対象期間を無制限としないためには、預金者が盗難の事実を知ってから48時間以内かつ金融機関への届出日の10日前以後とし、盗難の認知後に通知が遅れた場合は預金者の過失と扱ってはどうか。

  • 盗難キャッシュカードに関する届出は多数になると考えられるが、金融機関における実務を円滑に行うためには、基準はなるべく外形的に分かりやすいものとする必要があるのではないか。預金者が盗難の事実に気付いた時という基準は、預金者以外には確認できない点が問題となる。

  • 米国では、ステートメントの送付に関連して補償対象期間は最大60日となっているが、その期間が長い理由は、ATMの引出限度額が日本に比べて極めて低く抑えられていることにより、被害額が大きくならないためではないか。

  • 今後、金融機関が偽造や盗難キャッシュカード被害の補償を行うようになるのであれば、預金者にもキャッシュカードの所持・管理の徹底や類推されにくい暗証番号の設定とその管理などのリテラシーを確立してもらうことが必要ではないか。

  • 盗難キャッシュカード被害について、金融機関と預金者の双方が無過失の場合に金融機関が全額負担することについては、その理由について明確なものはなく、疑問がある。

  • また、新しい補償制度の導入により、被害の偽装の増加を助長することになるのではないかと懸念される。

  • さらに、キャッシュカードと暗証番号については預金者が管理しているものであり、盗難の事情は一義的に金融機関では分からない。それにもかかわらず金融機関側に立証責任があることは、金融機関にとって厳しい。

  • この補償ルールの基本的な考え方は、まず、盗難キャッシュカードによる払戻しは、無権限者による行為であり、本来有効な行為ではないという点が挙げられる。さらに、金融機関への預金の安全性に関する預金者の信頼を尊重する観点からは、金融機関の過失のみに着目し金融機関が善意無過失の場合には免責される民法第478条的な考え方ではなく、特に預金者が通常求められる注意義務を果たしている場合には、預金者が保護されるべきではないかとの考えによるものである。

  • 今までの盗難キャッシュカード被害の責任分担については、民法第478条の規定の適用範囲が判例の積み重ねにより拡大しつつあり、逆に民法第479条の範囲適用が小さくなっていった。金融機関としては判例に従って実務を行っておりその点は理解できるが、しかし、本来、479条が原則で、478条はその例外規定であると考えられるところ、預金者及び金融機関の双方が無過失な場合については479条が適用され、それ以外の場合は478条が適用されるのが本来の姿なのではないか。

  • 偽造及び盗難キャッシュカードの問題については、議論のスタートは、無権限者に対する払戻しは本来有効な行為ではない、という点から考え始めるべきではないか。債務の弁済と捉えれば478条を適用することは理解できるが、預金者は安全を求めて金融機関に預金するという点を踏まえれば、違う結論となるべきと考えられる。新しい補償ルールは適切なものと考えられるのではないか。

以上

本件に関する問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
監督局銀行第一課(内線3322、3388)
本議論の概要は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る