貸金業制度等に関する懇談会(第6回)議事要旨

1.日時

平成17年7月29日(金)10時00分~12時18分

2.場所

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.議題

○ 参考人からのヒアリング

  • 商工ローン利用者・関係者
  • 柴田昌彦税理士

○ 質疑応答

○ 都府県担当者からのヒアリング

  • 東京都貸金業対策課
  • 大阪府貸金業対策課
  • 熊本県商工観光労働部
  • 長野県生活環境部

4.議事要旨

商工ローン利用者I夫妻から報告

資料6-1-1「陳述書」に沿って報告し、追加で、「商工ローン業者から生命保険に入るように言われ、申込用紙に書いたのだが、たまたま印鑑を持っていなかったので申込みにはならなかった。もし印鑑があったら、ここに夫はいなかったと思う。」旨述べた。

商工ローン関係者Kさんから報告

資料6-1-2「陳述書」に沿って報告。

茆原洋子弁護士から報告

  • 今の被害者の話は特殊ではない。大手商工ローンの最高裁の弁論が開かれる直前に実施したアンケートでは、手形を要求してそれを材料に借り増しを要求する、手形を決済に回すと脅して分割返済を認めない、といった例が報告されている。

  • 資料の6-1-4は私への依頼者だが、「仮登記をつけろ」という電話を昼も夜も受けて電話恐怖症になり、更に、保証人である妹が請求を受けたため、それを苦にして自殺未遂を3回繰り返し、体を壊して去年亡くなった。

  • 別の大手商工ローンに関するアンケートでは、取立ての武器となったのが手形小切手であることが報告されており、制度の改正が是非必要。また、生命保険で返して欲しいといって自殺する方が多く、この点も大問題。

  • アンケートでは、短期の予定で借りる方が多いが、返済を受け付けなかったり、借り増しを要求されるため長期化し、これに銀行への返済が重なったため、結局、全額を商工ローンで肩代わりしてもらう例が報告されている。

  • 平成12年の改正で状況がよくなっているという誤解があるが、実は悪くなっている。大手商工ローンは、12年夏から貸金業規制法第43条のみなし弁済を強行に主張して、弁護士が付くと強制執行する。これによる被害は12年の改正以降だんだんひどくなっている。

  • 資料6-1-2にある契約書は、保証人が1枚目にサインすると、債務者も保証人も目にすることがない2枚目の公正証書の嘱託委任状に複写でサインをしてしまうというもの。これにより非常に多くの公正証書を作成している特定の司法書士に委任されてしまう。この公正証書の嘱託委任状の債務者・保証人用控えは作成されず、債務者や保証人には交付されない仕組みになっている。

  • 大手商工ローンが社長名で従業員宛てに出した文書では、貸金業者の従業員が借増しを要求したり、返済を受け取らない理由が示されている。入社後5ヶ月以上で、3ヶ月以上連続して新規契約件数が2件未満の社員は自動的に退職勧告、顧客管理を行う社員の場合、3ヶ月連続して貸付け対象となる顧客の維持率が下がったり、一部の返済を認めると退職勧告、といったノルマが課されている。

  • 利息制限法を超えた高金利を保証人に要求する商工ローン業者は、皆同じように自殺者・行方不明者を生み出しており、法改正で変えていただきたい。

柴田税理士から報告

  • 税理士業務を行う立場から、金利が零細企業の経営に与える影響を説明する。TKC全国会の経営指標(17年度版)を用い、全産業黒字企業で売上規模5,000万円未満の27,639社(平均従業員数3.9人)の財務諸表をモデル企業とした場合、支払利息対売上高は1.29%だが、高金利(29.2%)で資金調達を行った場合これが21.17%となり、赤字企業に転落し、利息の為に働いているような状態になる。

  • この例の場合の損益分岐点借入利率(借入金に対する利息負担の限界利率)は11.38%であり、利息制限法の15%でも企業活動を行っていくことはできない。売上高が0.5~1億円の23,077社の財務諸表をモデル企業として計算しても12.19%となる。

  • 金利負担は企業経営の重要なファクター。借入返済は利益で償還するのが理想だが、現実は資金繰償還となっている。資金繰りに余裕のない時の解決策の一つとして、簡単に貸してくれる手軽さから一時のつもりで消費者金融や商工ローンで工面することになったら大変である。社長は決して消費者金融や商工ローンで借り入れたとは言わず、その支払利息は経費として計上せずに、社長の個人勘定、仮受・仮払勘定などのいわゆる雑勘定で処理する。支払利息を計上すると平均調達利率が高くなる、あるいは雑勘定が膨らんで銀行等から問題と指摘される。高金利での借入れが分かってしまうと余程でない限り新たな貸付けを受けることが困難となり、また消費者金融、商工ローンに手を出すという悪循環が生じる。結局、健全経営にはできるだけ低利での資金調達が必要であり、企業経営者も金利意識を十分持つ必要がある。

  • 中小・零細企業向けの中小企業金融公庫や国民生活金融公庫の基準利率は、現在、原則長期プライムレートで1.45%、TKCの経営指標黒字企業115,290社の平均調達利率は2.44%であり、消費者金融、商工ローンの上限利率29.2%はあまりにも高利率。消費者金融や商工ローンを利用する経営者の資質にも問題はあるが、「国民の生活と生命」「健全な企業経営」を守るためには適正な利率でなければならないし、上限金利の規制が必要。

質疑応答の概要は以下のとおり。

(質問)

  • 商工ローン独自の問題として、どの点を法改正すべきと考えているのか。

  • 商工ローンの金利は11%程度が適正とのことだが、これをどのようにして可能にするのか。商工ローン業者の資金調達構造はどうなっているのか。過剰な利益を生んでいるのか。

(回答)

  • 日栄・商工ファンド対策全国弁護団で議論したが、商工ローンへの規制として、金利を下げる他に、保証人の制度を変えていただきたい。保証人目当ての貸付けをなくすため、個人経営者以外から個人保証を取る制度をなくすことを要望している。更に、貸金業者は、本来一部返済を認めるべきところを、手形小切手により満額取立ての権利を持ち、事業の生死の鍵を握り、脅しに使っている。貸付けに際して手形小切手を取ることを禁止し、違反に対しては処罰をしていただきたい。

  • 利息制限法の権利義務を知らされないまま超高金利の契約書が作られている。契約書に「消費者の権利義務はここまで。100万円を超えた貸付けの場合、15%以上の利息を取る権利は貸金業者にはない」ということをはっきり書くべき。ただし、これは貸金業規制法第43条をなくすことによって改善されるため、最終的には「43条の廃止」を求めたい。

  • 11%は適正利率ではなく、損益計算書上プラスマイナス・ゼロになる数字に過ぎない。適正金利というのは、日弁連が言っているように、その時の資金調達金利その他を加味したものであると思う。利息制限法を見直し、過去10年間の国内銀行貸出約定平均金利に6%を上乗せした数値を上限とすることも考えられるが、もっとシンプルに過去5年ぐらいの長プラに上乗せすればいいのではないか。

  • 貸金業者の資金調達については、ある大手商工ローンの場合、有価証券報告書総覧(平成16年版)によれば、金融機関からの借入れがほとんどで、平均金利は2.25%、その他の借入れを併せて総平均すると2.21%。

(質問)

  • 借入れの際、いわゆる私製手形が契約書に挟み込まれており、それに署名したらいつのまにか手形が振り出されるケース、主債務者が利息を過払いしているため本来ならば可能な抗弁を切るために、改めて元金を一括した手形を振り出させるケースがあると思うが、どのような場面で行われているのか。

(回答)

  • 私製手形というのは、大手商工ローンが契約書に挟み込み、債務者が認識しないまま貸付額以上の極度額を書かせて、手形訴訟を提起するのに利用した手形のこと。ただし、これについては、平成15年11月17日の判決で一応の裁判所の理解と解決の目処が立ったと思う。

  • 手形については、この「私製手形」の問題と、銀行の手形帳で作り、銀行で決済される普通の手形の問題がある。後者のケースについては全く改善の目処が立っていない。今でも商工ローン業者の中には、貸付けの際に利息制限法を超過した金利分を差し引いた金額を交付して、満額の手形を振り出させているところがある。手形を取られると、利息制限法を超える金利であっても「次の手形決済期日をどうするのか」と攻め寄られてしまう。最高裁判決が出た後は、弁護士が間に立ち止めることも可能だが、少し前までは対応するのが非常に困難だった。今でも、手形取引の中に巻き込まれたまま脱出できない人が多くいるはずなので、制度改正が必要。

  • 公正証書については、どんな効果があるのか、誰に委任するのかに関し、説明がないまま署名する状況が変わっていない。公証人連合会に改善を申し入れたが改善されていない。日弁連はドイツの制度を調査して報告書を出している。現在、公正証書の作成に関する教示義務と注意義務、公証人の義務の明確化を主とした公証人法の改正に取り組んでいるところ。

東京都米澤貸金業対策課長から報告

  • 都知事登録業者は現在4,222業者。そのうち登録してから3年以内の都1業者が2,281と非常に多い。登録業者数は平成15、16年度と大幅に減少しているが、要因は新規登録の減少と登録取消し処分。

  • ヤミ金融問題が深刻化し、平成14年度以降都に寄せられる苦情相談が急増した。取組み強化のため、担当部局の体制整備を行い、16年4月に36名体制の専管組織を立ち上げた。

  • 悪質業者等に対する行政処分の徹底、登録審査の厳格化にも取り組んできた。行政処分に関しては、平成14年に、都知事の議会表明を踏まえて、17年振りに業務停止命令を発動するとともに、違反情状が特に重いとして登録取消処分を発動した。登録審査の厳格化として、平成15年には登録申請の際の現地確認調査の徹底、新規・更新登録手数料の改定を実施。

  • 主な取組み実績は、警視庁との連携のもと、平成16年度に過去最多となる617件の登録取消処分を実施。その内、違反情状が特に重いものは130件。中には、逮捕につながった事案もあった。取り消された業者の違反事由は、詐欺行為が大半を占める。

  • 平成16年度に都に寄せられた苦情相談件数は、前年度に比べて半減。ヤミ金融対策法の施行、登録審査の厳格化、立入検査、行政処分などの総合対策の効果ではないか。苦情相談内容は、商品買取りや融資紹介、保証金名目に関する詐欺行為が6割を占める。また、都外在住者からの相談が8割を超えており、全国から相談が寄せられている。17年度の苦情相談件数は、昨年度よりも増加傾向。最近の苦情相談には、正規の登録業者名あるいは登録番号を利用しての詐欺行為に関するものが目立っている。

  • 平成17年度の取消処分業者で違反情状の特に重い82業者をみると、都1業者が69者85%、都2の業者が11者13%、都3以上の業者が2者で2%を占めている。また、違反事由は詐欺行為が相変わらず多い。

  • 違反業者の代表者の年齢をみると、登録時の年齢が20代の者が約半数。30代も多いがほとんどが30代前半で、非常に若い者が多い。

  • 違反業者の代表者の経歴をみると、高等学校卒業あるいは中退者が数種類の職の経験を経て、貸金業を始めている。開業の動機も、「以前から興味を持っていた」、「金儲けができると思った」と安易。開業資金は300~500万円程度のため、元々営業は成り立たない。従業員は知人の紹介又はアルバイト雑誌等で募集し、代表者の他に主に20代の若者を3名程度雇っている。

  • 代表的な悪質業者について言うと、貸金業に関する十分な知識と経営能力を備えていない比較的年齢の若い代表者が、安易に開業し、経営に行き詰まる。または、当初から不正な意図を持って登録し、開業後すぐに違法行為を行う。貸金業への安易な参入の後、業者が悪質化するのを受けて行政処分を行うが、また新たな参入が行われるというような状況が繰り返されている。

  • 今後の指導監督上の課題の1点目は、貸金業を営もうとする者に対し、安易な参入を許さず充分な法令知識とその遵法意識を求めるべき。貸金業務取扱主任者資格をより厳格化すべき。悪質行為を行う若者の最大のウィークポイントは資格試験のため、現状の登録要件を改め、統一の資格試験を実施すべき。

  • 2点目は、インターネット及び口座取引の普及により、貸金業者の経営態様が拡がっており、登録地以外の他県で不法行為を受けた被害者が、住所地である県に相談を持ちかけても行政が対応できない。警察の摘発行為にも支障をきたしており、都道府県登録の業者については、営業エリアを規制できれば、より効果的な指導監督が可能となるのではないか。

大阪府澤田貸金業対策課長から報告

  • 大阪府では、ヤミ金融対策法の施行を受け、平成16年4月から金融室に貸金業対策課を設置し、職員も非常勤職員を併せて27名として、登録審査、検査、相談の体制を充実・強化している。

  • 大阪府の登録貸金業者件数は、平成16年1月の法改正以降大きく減少。主な理由として考えられるのは、法改正による本人確認、営業所の確認、財産的基礎要件等の登録審査の強化、登録手数料の増額、貸金業務取扱主任者の設置及び研修修了の義務付けなどの業務規制の強化。

  • 登録業者の中には、貸金業務について知識が非常に低い、あるいは経験が無いまま安易に登録申請している者が非常に多く、苦慮している。

  • 検査体制の充実を図った結果、立入検査数は平成14年度から16年度にかけて増加し、概ね2年に1回程度の割合で実施。17年4月からは、現職警察官2名を検査部門に配置して、検査指導体制の強化を図った。

  • 平成16年度の業務停止処分のうち9割強が貸金業務取扱主任者の未設置によるもの。また、登録取消処分の原因で一番多いのは、暴力団関係者にかかる欠格事由に該当したもの。

  • 営業実体のない業者に対する取消処分も増加。

  • 近年の苦情・相談件数は、平成14年度がピークで減少傾向。一方で、「債権譲渡等による請求」や「保証料」に関する苦情が増加。大阪府では、苦情・相談に積極的に応じているが、大半が債務整理に係るもの。平成16年度からは、専門の弁護士による「消費者金融無料法律相談」を実施している。

  • 最近の問題事例を4つ紹介する。保証料に関する苦情が増えているが、その多くは貸付けに際し、保証業者と非常に高い保証料率で保証委託契約を結ばせている。保証料については法による規制がない。また、保証業者にも規制がなく、個人でも保証能力が問われることはなく、保証を業として行うことが可能。「貸金業者と保証業者との間に密接な関係があることが明らかになれば、保証料についても利息とみなす」という判例があるが、そのような密接な関係を示す証拠物件を見つけることは非常に困難。

  • 2つ目は年金担保融資の問題。昨年12月に法改正されたが、依然として年金の振込口座の通帳、キャッシュカード等を預かる苦情が多い。

  • 3つ目は、債権を譲り受けたとして、債務者の記憶にない昔の債務を請求したり、関係のない親族や勤め先に対して請求し悪質な取立てを行うケースが増えている。

  • 4つ目は無登録業者の問題。多重債務者あるいは破産経験者などへDM(ダイレクトメール)を送る業者、登録番号や名称等を詐称して入会金や手数料等を不正に集めるが、貸付けを行わず行方をくらます例が増加している。

  • 貸金業者を監督するに当たっての問題点を3つ報告する。1つ目は、貸金業規制法に基づき報告徴収や立入検査を行っても、理由を付けて書類をみせないなど、対応に苦慮している。立入検査の拒否に対する明確な行政処分規定を設け、業者に対する指導を担保する必要がある。

  • 2つ目は、悪質な貸金業者による違法行為の手口が巧妙化しており、立入検査で証拠を見つけるのが困難になっている。貸金業者の預貯金の取引経過や税務関係資料、加入電話の設置場所等の調査による資金の流れの裏付けが不可欠だが、現状ではこのような調査のための明確な根拠がない。

  • また、他府県の保証業者の利用が増加しているが、保証業者に対し報告徴取や立入検査を行うなど国による何らかの積極的な対応が必要。

  • 貸金業務取扱主任者に登録拒否要件に該当するような違法行為があった場合でも、当該業者は行政処分対象に該当しない。重要な使用人や役員の場合と同様に、厳正に対応できるような法整備が必要。

  • 貸金業取扱主任者の研修有効期間は研修修了の日から3年間と定められているが、以前の有効期間の終了から3年間といった措置が必要。

熊本県島田商工観光労働部長、坂田経営金融課長から報告

  • 熊本県の日賦貸金業者の貸金業者全体に占める割合は15%だが、平成16年度に熊本県で受付けた熊本県登録業者に対する苦情・相談受付件数のうち約7割が日賦貸金業者に関するもの。また取立行為に関する苦情も約8割が日賦貸金業者に関するもの。日賦貸金業者数の最も多い沖縄県と比較しても、日賦貸金業者1者当たりの苦情は熊本県のほうが多い。

  • 平成16年1月のいわゆるヤミ金融対策法施行の対応等のため、昨年の4月、担当課に貸金業班を設けるなど組織を強化し、貸金業者の業務の適正化に取り組んだ結果、昨年度の後半から苦情件数が減少。

  • 熊本県登録の貸金業者数は、ヤミ金融対策法の施行後大きく減少し、平成16年度は対前年度比で3割減少。貸金業務取扱主任者の選任、登録手数料の引上げによる貸付残高の少ない業者の自発的廃業が大きな要因。

  • 貸金業の適正化のため、特に法令遵守を重視しており、法律改正等があった場合は、随時研修会を開催し貸金業者の資質の向上を図っている。

  • 立入検査の体制を強化し、現在は、従来より2名増の4名体制で、2、3年に1回の定期、苦情があった場合の随時の検査を実施。

  • 日賦貸金業者に対しては、昨年8月、熊本県弁護士会消費者問題対策委員会、クレ・サラ・日掛け被害をなくす会、司法書士会等により36社に対する一斉行政処分の申立てが行われた。この申立て後の9月に、日賦貸金業者を集めて研修会を実施し、今後悪質な違反行為があれば徹底的な処分を行う旨予告して立入検査を実施したが、4つの問題点が浮き彫りになった。

  • 1点目は、日賦貸金業者には、3要件を守ることで特例金利が認められているが、貸金業者が貸付期間の100分の50以上にわたり自ら集金を行う集金要件は、今日の交通手段、あるいは銀行振込等による返済手段等が発達した現状では必要ない。

  • 返済期間が100日以上という貸付要件も、貸付契約期間は100日以上だが、ほとんどが1ヶ月前後で借換えを行っており、実質的に守られていない。

  • もう一つの要件として、貸付けの相手方が主として物品販売業、物品製造業、サービス業を営む者でなければならないが、与信審査時の職業確認は不十分で、資金需要者も借入れをしたいとの理由から職業を偽っている例も多い。日賦貸金業者の3要件は、熊本県の状況をみたところ資金需要者の利益になっておらず、また、今日の社会経済情勢から乖離している。

  • 2点目は保証業者の問題。貸金業者と保証業者の間では業務委託契約を締結し、貸金業者は保証業者への保証料の払込みを確認して貸付けを行っているが、代位弁済が適切に行われているか懸念される。5~10%あるいは20%の高い保証料を取ることは、出資法上のみなし利息に当たり金利規制違反となるのではないかとの問題もある。保証会社は表面上は別会社を装っているが、実際は貸金業者何社かで保証会社を作っており、保証料を山分けしているといった実態もある。保証業者の法律的な位置付けを明確にして規制の対象にしてほしい。

  • 3点目は過剰貸付けの問題。苦情相談者の状況をみると、ほとんどが5~10社の貸金業者から債務があり返済能力は無い。過剰貸付けの影響もあり、熊本県の自己破産申立件数は全都道府県中、15年は6位、16年は10位。

  • 4点目は、貸金業者の利用者の書類管理等が十分でなく証拠資料を出せず、業者も協力的でない場合もあるため、裏付けがとれず行政処分を行うのに苦労している。また、業務停止処分を行う際は、行政手続法に基づき弁明の機会を付与するが、その通知後に処分逃れのために廃業届出を提出する業者がいる。そして廃業後、例えば別の名義で貸金業登録を行うため、行政処分の効果がなくなる。登録取消処分の場合は、聴聞の通知以降に廃業届出を提出しても、その後5年間登録ができない。業務停止と登録取消では処分の重さが異なるが、このような業務停止処分逃れに対する対策を取ってほしい。

  • 多重債務者を減らすには資金需要者に対する教育が必要と考えるが、熊本県ではいろんな取組みが行われている。県の消費生活センター相談員として多くの相談を受けていた経験から、消費者教育についての問題意識を持ち、NPO法人「お金の学校くまもと」の代表として、小さい子供を含めた消費者教育のためのプログラム開発や、講演会あるいは発表会を開催し消費者教育に実践的に取り組んでいる方がいる。

長野県太田生活環境部長、田野尻元生活文化課長から報告

  • 長野県では、被害者からの相談が相次ぎ、知事から、直ちに県としてしっかり対応を取るよう指導があったことから、平成14年12月に「ヤミ金110番」を開設。被害者に対しては相談体制の充実が大切と考え、消費者生活センターに加え、本庁内に2ヶ所、県内10ヶ所の地方事務所に相談センターを設け、計16ヶ所の相談体制をとった。

  • 同時に、長野県の関係機関が一体となって取り組まなければ解決できないという考えの下に「長野県ヤミ金融被害者救済緊急対策会議」を設置。当初は8団体でスタートしたが、その後、被害の状況を最もよく把握し、また、草の根的な被害者救済活動を実践している任意団体や市民団体の参画により、現在の15団体で構成する組織となった。

  • この組織の特色を挙げると、非常に強い連携が図られて、各組織とも積極的に参加していること。それから被害者救済のための具体的な対策を話し合い、会議で決定したことは実行に移すこととした。また、通常の組織と違って特別の役職を配置せず、都合のつく人は誰でも参加可能としたため、非常にフランクで実質的な会議を行える。

  • 対策会議ではいろいろな対策を講じてきたが、1番特色のあるものとしては、金融機関に対するヤミ金融口座の閉鎖等の要請。ヤミ金融に打撃を与える最も有効な対策は、口座の凍結または閉鎖で、これによって集金手段を奪い、被害の拡大を防ぐことを狙った。文書で要請しただけでは、その実効性が担保されないため、各金融機関にその結果を一定の期限までに取りまとめて報告するよう依頼し、報告が無い金融機関を公表することとした。

  • この要請に対し、金融機関からは「どのような権限に基づきこのようなことをするのか」という質問があったが、「これは金融機関が本来行うべき行為で社会的責務である」と答えた。その結果、金融機関の協力も得られ、また、金融庁の強力なバックアップもあって、全国に展開することができた。

  • この他の施策として、ヤミ金融からの嫌がらせによる離職を防止するため、企業に対しリストラしないよう協力依頼の通知を出した。また、小・中学校等へのヤミ金融からの電話に対しては、生徒に精神的な負担を与えないように各先生が冷静に対応するためのマニュアルを作成して、周知を行った。

  • 貸金業制度等に関する懇談会の場で2点お願いがある。1点目は被害の状況を再認識し、是非、もう一度ヤミ金融問題を大きな社会問題として取り上げ、国を挙げてこの問題に取り組んでほしい。

  • 2点目は、利息制限法と出資法の整合性について。利息制限法の20%を大幅に越えた金利の設定は極めて不自然。また出資法の上限金利である29.2%の妥当性についても検討が必要。預金した時の利息と比べると大きな乖離があり、消費者の立場に立ち、金融制度のあり方について考えることが必要。欧米の状況との比較も行い是非検討していただきたい。

質疑応答の概要は以下のとおり。

(質問)

  • 東京都には都以外の在住者からの相談が8割を超えているようだが、「悪いのは東京都の都1業者」という声をよく聞く。地方自治体において、東京都の都1業者の業務展開を拒否することはできないのか。東京都としても何か対策がとれるのではないか。

  • ヤミ金融からの借り手は、消費者金融から始まって多重債務に追い込まれていったのだろうと思うが、具体的にどういう人達なのかという分析も必要。

  • 長野県の取組みは評判が高く、効果的と聞いている。金融機関のヤミ金融口座の閉鎖が一番効果的という話は大変興味深かったが、実は、不当請求とか架空請求においても金融機関の口座利用が随分行われている。銀行協会のよろず相談所の運営懇談会でも「口座の閉鎖」をどう考えるべきか話をしている。

  • 不当請求と架空請求に対しては、現在は金融機関も協力的になっているとのことだが、これを全国展開していく必要がある。全国展開している銀行等はどのようなスタンスなのか。

  • 登録業者の10~15%が毎年行政処分を受けているようだが、処分を受けていないその他の業者の法令遵守状況はどうか。例えば熊本県の日賦貸金業者は、9割が違反行為をしているとのことだが、これは極端なケースなのか、あるいは大きな問題になっているのは本当は氷山の一角で、その他の大部分はグレーなのか。こういう被害は特殊ではなく、相当広範に行われているという話があったが、その辺りについてどのように感じているか伺いたい。

  • 悪質業者とか悪徳業者は消費者行政あるいは貸金業対策が弱いところをつけ狙ってくる傾向がある。例えば登録情報、処分情報、それから処分逃れの廃業情報というものをプールして、都道府県でネットワークを組んで共有するようなことはできないか。

  • 九州・沖縄地区には日賦貸金業者が多い、多重債務者が多いという特徴があるが、同地区において、都道府県別ではない地区としてのネットワークを組むようなことはできないか。

  • 東京都の業者が全国に業務展開することに対して、都道府県でネットワークを構築するような試みや提案はあるのか。

  • 多重債務者がターゲットになっているという話があったが、DMなどは多重債務者を狙って送られているように思う。なぜそのような情報が業者に流れて行くのか。多重債務防止のためのブラックリストの共有化が、逆に「あだ」になって、それが商売のネタになり売却されるといった危険性がある。実態として何か掴んでいるか。

(回答)

  • 「都1業者」が全国に被害を及ぼしているという話があったが、まず、業者が「都1」の登録を取りたがる理由は都知事登録にステイタスを感じているからである。彼らは、インターネット、チラシやDMを使って全国から顧客を募っている。現在、エリア規制は行われていないので、そういったことが簡単にできる。

  • 東京都では全国の被害者から相談があれば、ファクスその他の関係書類を証拠書類として残すように指導している。そうした中で、登録業者に対して徹底的な取消し処分を行っている。現在寄せられている相談のほとんどが、いわゆる正規の登録業者を装った無登録業者に関するもの。正規の登録業者に対して苦情があれば、すぐ対応して徹底的な処分を行っているが、こういう業者は詐欺集団であり、なかなか手を打てない。

  • 無登録業者とヤミ金融は区別して考えるべき。無登録の者は元々お金を貸さずに保証金名目で稼いでいる。ヤミ金融という定義を再考する必要がある。

  • ヤミ金融業者に対する方策として、まず地元の警察署に被害届けを出すよう指導している。警察からも我々に対し情報提供の依頼があるが、相互に情報交換を密にしながら取締りを行っている。電話番号が確認できれば、電話でも警告している。ただ彼らは電話を転送していることが多く、所在地が掴めないというのが実態。彼らに電話で警告した際にも、“私は留守番だからよく分からない”といった言い逃れをするので、なかなか取締りができない。

  • 借り手には多重債務者が多いという印象を持っている。保証金詐欺や買取詐欺については、どうしてこのような形で騙されるのかなという気がする。多重債務を抱えてしまうと、冷静な判断がなかなかできなくなるのだろう。

  • 各金融機関に閉鎖を依頼した口座は、弁護士や司法書士に被害者が相談に来た段階で明らかにヤミ金融業者の口座と分かるもので、かつ被害が大きいものだけ。平成15年8月から今年の6月までに347の口座閉鎖を依頼した。その結果、凍結したのが139、閉鎖が145、銀行自ら解約したのが25、調査中が38という状況。金融庁からも「全ての県において同様な対応を取って下さい」との通知があったので、現在は全国展開されていると理解。

  • 登録業者の質という点については、立入検査などでよく指摘するのが、貸金業者の職員が証明書を携帯していない、契約書の内容に不備がある、契約書を交付してない等で、こういう形式的な違反はほとんどの業者にある。悪質な業者が見つかるのは、苦情があった時ぐらいというのが実情。その苦情も、債務者が返済を続けている間は表面化せず、債務整理を弁護士や司法書士にお願いした場合、あるいは取立て行為で恐ろしい目にあった場合にしか分からない。実態は根深いものがあるのではないか。九州地区の各県で諸情報をプールするといった体制は、現在、構築されていない。

  • 全国的ネットワークという話があったが、代表者あるいは登録業者名については可能だと思う。ただ、今問題になっているのは「従業員」であり、従業員は偽名を3つも4つも使い、運転免許証でようやく名前が確認できるような状況。従業員は悪さをしても、ほとぼりが冷めればまた代表者として登録できるため、1人のボスが従業員に違法行為をさせている。全国ネットワークを立ち上げるためには、この辺りの法整備がまず必要ではないか。

  • 捕まえた業者に聞いてみると、多重債務者名簿が出回っているようで、それに基づいてファクスやDMなどが送られている模様。DMなどには「1%で借りられて1,000万までおまとめします」と書いてある。多重債務者はこれを見ると、舞い上がってしまう。そういうブラックリストの取扱いを何らかの形で制限する手立てが必要ではないか。

  • 金融庁では、各都道府県と協力して、貸金業者の登録情報をホームページ上に設けている。これは金融庁あるいは各都道府県のホームページからアクセスできるようになっている。行政処分については、現在処分中かどうかということだけが分かるようになっており、過去に登録が取り消された情報は分からない。その意味で、違法事例の蓄積という観点からは不十分かもしれないが、一般の方々もアクセスできることから、利用者の保護には資するものと考えている。

茆原弁護士から補足説明

  • 業者から公正証書が送られてきても、そこに何が書かれているのかを理解できる人は少ない。当初の契約を確認するだけのものと思い込み、封を開けない人さえいる。

  • 商工ローン業者の中には、無断で委任状を作成し、その内容と異なる公正証書を作る業者がいるので、こんなことは止めてもらいたい。

  • 違法な金利で貸付けていたこと等を債務者に知らせることなく、公正証書により差押えを行うようなケースが見られる。正しい金利や残額に基づいて作成するのならともかく、このようなずさんな形で公正証書を作るのは止めていただきたい。

以上

問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3567、3553)
本議事要旨は、暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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