貸金業制度等に関する懇談会(第8回)議事要旨

1.日時

平成17年12月8日(木)16時00分~18時05分

2.場所

中央合同庁舎第4号館11階 共用第一特別会議室

3.議題

○ 参考人からのヒアリング

  • 堂下浩 東京情報大学助教授
  • 西ヶ谷葉子 (株)生活行動研究所所長
  • 西村隆男 横浜国立大学教授

○ 質疑応答

○ 事務局から貸金業制度等の実態に関する海外調査報告

4.議事要旨

堂下助教授から報告

  • 前回の懇談会で出された質問に対する回答の補足をする。

  • カウンセラーの平均的な収支についての質問に関しては、前回報告したカウンセリング団体CCCSの上部団体であるNFCCのデータから試算。基本的に債務者の相談は無料で、カウンセリング事務所の収入は、DMP作成に伴い債権者から寄付されるフェア・シェアが中心。NFCCを通して返済される金額が年間50億ドル、うちカウンセリング事務所へのフェア・シェアは平均8%で4億ドル。収入の40%を占める活動管理費を控除して2.4億ドル、これをカウンセラー総数2,000人及び同数(仮定)の事務職員で割ると、スタッフ1人当たりの年間収入は6万ドル(約600万円)。ただし、有資格者であるカウンセラーは取分が大きい可能性あり。また、地域格差が存在。

  • 中小都市ではカウンセリングをボランティアに依存している。一方、大都市では多数処理に対応したコールセンター等の設備投資が必要。

  • アイオア州の例では、カウンセラーは、一日平均、来所者6人程度(新規3人、既存の利用者など3人)、電話相談2、3件で、計8人程度に対応。

  • セカンドオピニオンとしてのカウンセラー機能について質問があったが、住宅ローンを組む場合の相談は金銭カウンセラーの守備範囲。実際、米国の住宅都市開発省が住宅ローンの設計に関して開く講演会ではカウンセラーが講師を務めることが普通。カウンセラーは個別対応も無料で実施。

  • カウンセリング機能として重要なのは早期発見、早期処置であり、(1)専門知識を持った金銭カウンセラーが各地に身近な立場で存在し、(2)多重債務者が返済に困った早い段階で気軽に相談できる場所であり、(3)カウンセラーが身近な存在として債務整理を行う機能を持っている。

  • 日本の自動車ローンの金利帯に関し、本年9月から10月に中古車の提携ローンを調べたところ、大手、準大手の信販会社では金利が4~14%だが、いくつかの中古車業者は15%以上の自動車ローンを提供する地元金融業者の存在を指摘。ただし、最近活発になっている個人間の売買、オークション等に伴う自動車ローンには金利20%も存在。したがって、4~20%が日本の自動車ローンの金利帯と思われる。

  • これは米国のサブプライム層向け自動車ローン金利20%前後と差があるが、この理由として市中金利の違いもあるが、流通する車の品質の違いが大きい。この背景には、米国では低所得者でも自動車が必要という事情がある。この点を考慮すると、日米の自動車ローンにおける金利差はさほど大きくないと考えられる。

  • 韓国では、1997年の通貨危機でIMF管理下に置かれる前の上限金利は25~40%。1998年に利子制限法が撤廃されたが、2002年に再び66%の上限金利を設定。一方、延滞債権が増加しているが、これは金利とは関係のない要因で起きている事象であると考えるべき。

  • クレジットカードの利用は、金利規制の撤廃ではなく、政府による奨励策(カードの利用金額に応じた所得税の控除、カードの領収書による福引制度)により急増。しかし、個人信用情報センターや金銭カウンセリング等の市場インフラ機能が未整備な状況下で政府がカード利用を促したことで、延滞債権が徐々に増加し、信用不良者の数は、2000年末の208万人から2003年末には372万人となった。政府は一転して2002年以降、上限金利の設定を含むクレジットカードの使用制限策を採用。

  • 最近、5年前の日本同様、上限金利規制の弊害が見受けられる。合法業者の撤退やヤミ金融が跋扈し、違法な回収行為が社会問題化している。中小貸付業者の調達コストが上昇し、市場の縮小に一層の拍車をかけている。

  • 次に前回、充分に説明できなかった米国のペイデーローンについて補足する。ペイデーローンは、小切手を貸し手に発行する約定形態が一般的。業者は給料日まで現金化しないことに同意し、利用者は現金で取り戻すか、手数料を払って更新する。金利は年利数100%、回収行為は通常、手紙による督促のみ。

  • ペイデーローンの利用者は銀行口座を持っていることが条件となっている。米国では一定の信用力がないと銀行口座を開設できない実情を考えると、この時点で業者は一定のハードルを利用者に課していることになる。ペイデーローンは誰でも利用できるのではなく、一定の信用力が必要。ペイデーローンは、こうした人が利用している金融商品である(銀行口座を開設できない消費者が小切手を換金する際に利用する、チェックキャッシングと呼ばれる金融機能と区別する必要がある)。

  • ペイデーローンの金利に関しては、米国のFlanneryとSamplykによる調査で、(1)ペイデーローン業者は高すぎる金利のローンを提供している、(2)ペイデーローン業者は、慢性的に借り替えを押し付けている、との仮説が否定されている。高金利は店舗運営の固定費、貸倒損失によって説明され、業者の収益性は慢性的に借替を続ける顧客の比率でなく、主としてローン残高によって決まっている。

  • 英国のDTIも同様な調査をし、米国の消費者は主流のクレジットよりもペイデーローンを選好している、特に、家計が逼迫している借手は資産を担保として要求されないペイデーローンを選ぶ傾向があるとしている。その上で、ペイデーローンの発達により米国のサブプライム市場は多様になり、競争が激化し、金利には下方圧力が働いていると結論付けた。

西ヶ谷所長から報告

  • 当社が首都圏と京阪神圏の消費者金融利用者に対して実施したアンケート調査(18歳以上の男女1,128サンプル。男性が約7割、女性が約3割)に基づき報告する。

  • 利用者の平均年齢は39歳。20~30代が多いが、50歳以上も約4分の1を占める。既婚・未婚がほぼ半分ずつ。職業は多岐に亘るが、パート、アルバイトもいる。一方、管理職課長以上も1割超。

  • 消費者金融の平均利用件数は2.8社。利用年数は4年。10年以上の利用は1割。1回当たり利用金額の平均は18.9万円。

  • 消費者金融を知った契機は、テレビのコマーシャルが多く、新聞広告、街頭で配られるティッシュ、ビルの看板など。

  • 最初に利用する店を選んだ理由も、テレビコマーシャルがトップ。次に新聞広告。有人・知人が利用していたからという理由もある。

  • 利用目的のトップは交際費で40%。続いて国内旅行とレジャー、小遣いの補填、生活費の補填で、その他に借入金返済やギャンブル資金(ともに1割程度)がある。利用目的と利用年数の相関関係はあまりない。

  • 借り手からみれば、金利は低いほうがいいが、金利以外の選択要因として、「利便性」、「緊急性」、「合理性」などがある。

  • 消費者金融の利用について、「満足」、「まあ満足」が約半数強(53.5%)。「不満」、「やや不満」は約1割。どちらとも言えないが34.6%。

  • 今後の利用について、「利用したい」、「利用してもよい」が7割。「利用したくない」、「利用できそうもない」が約3割。

  • 「利用したい」、「利用してもよい」と答えた理由は、「困っていた時に借入ができたから」が約6割。その他、「社員の対応が良かったから」、「利用しやすい場所にある」など。

  • 「利用したくない」、「利用できそうもない」と答えた理由のトップは「これ以上借りると返済が大変だから」。その他、「金利が高いから」「審査が厳しくなってなかなか貸してもらえないから」という理由がある。上限金利が40.004%の時はもっと借り易かったのかもしれない。現在の上限金利(29.2%)では、業者はリスク回避のため客を選別せざるを得ない。

  • 消費者金融利用者の大半は、銀行もクレジットカードも利用している。利用していない理由は、「そもそもカードが嫌い」、「消費者金融のカードは持ちたくない」など。クレジットカードはショッピングのため、大きなローンは銀行から、チョイ借りは消費者金融から、と決めている人がいる。過去に延滞などの事故を起こしたため、職業や勤続年数によっては消費者金融を利用できない人もいる。

  • 消費者金融会社以外からの利用状況は、「銀行からの借入」が24.1%。「銀行系クレジットカードのキャッシングを利用」あるいは「カードローンを利用」が36.6%。「信販会社のローンやキャッシングを利用」が約3割。消費者金融会社以外のカードの保有状況としては、約半数が銀行系クレジットカードで、信販系26.2%、流通系17.9%、銀行のカードローン専用カード14.5%。目的や期間によって使い分けている。

  • 多重債務に陥る主な原因について、「日本クレジットカウンセリング協会」や弁護士からヒアリングしたところ、昔は、若者を中心に遊興費やギャンブルが多かったが、最近は「生活苦」が増えている模様。ただし、ギャンブル等で浪費したため生活苦に陥ったのか、給料が減り生活苦に陥ったのか不明。

  • 返済困難の主な原因は失業や減収で、その場合再び借金せざるを得ない。

  • 相談者のパターンとしては、基本的な生活資金(若者の場合は就職までのつなぎ資金など、年配者の場合は減収や賞与カットなどの穴埋め)として借ることが多い。

  • また、借金依存的な人もいる。ホワイトカラー層にもいる。最初はクレジットカードや信販会社を利用するが、その支払いに困って消費者金融を利用、最後はヤミ金融に手を出してしまう。ヤミ金融に手を出す前に縁が切れればいいが、業者が巧妙なため破産することがある。カウンセラーと弁護士が言っていたが、利用者のパーソナリティに関わる部分が大きい。

  • 最近では、最初から破産するつもりで相談に来る人が結構いる。

  • 教育ローンや住宅ローンにリストラが加わると返済に窮し、消費者金融に手を出すこととなるが、希望どおり貸してくれるのは3件ぐらいまでで、次第に中小零細業者に頼らざるを得なくなり、ついにはヤミ金融に走る。

  • 多重債務は、債務総額と収支バランスによるが、個人ごとに様々なパターンがあり、一概に論じることは困難。

  • 多重債務者の数については、支払命令の件数、信用情報機関に登録された事故情報などから推計されて、100万人、150万人、200万人といった数字が一人歩きしているが、どんな人でも多重債務者に陥る可能性がある。

  • 借入方法については、中小業者を含めると、店頭での対面型の借入が7割近く、自動契約機が25%弱。

  • 都市生活者の約6~7割は、何らかのローンやキャッシングを利用している。消費者金融の利用は全体の約5~10%。借入目的や金額によって、借入先は使い分けられている。

  • クレジットカードを利用するにはカードを作る必要があるが、消費者金融の場合はその日のうちに借りられるので、緊急性がある場合はそちらに行く。

  • 消費者金融の利用パターンとしては、最初は名前の知れた大手から限度額ぎりぎりの50万円ぐらいまで借り、次第に件数が増えてくると中堅・中小・零細業者に行き、最後はヤミ金融に行くというケースが多い。

  • ヤミ金融は、金利について実に巧みに書いてある。スポーツ紙やインターネットを使って派手に勧誘しており、釣られて利用してしまう人も多い。

  • 昔はヤミ金融やっていたが、今は振り込み詐欺をやっているという者もいる。消費者を狙う悪質業者は、手段を変えており、なかなか無くならない。

  • ローンやキャッシングに関しては、「返済が困難。どうやって自分の生活を立て直して返済したらいいのか」といった相談がある一方で、「返すのが嫌になったので返さないで済む方法はないか」というのもある。また、銀行でも「おまとめローン」をやっているが、「返済を一本化したい」という相談もある。しかし、一本化で釣っている業者の多くはヤミ金融である。

  • 名義貸しや借金アルバイトの相談もある。友達に名前を貸したり、携帯電話に突然掛けてきた相手に金を貸したりするケースも多い。

  • ヤミ金融や振り込み詐欺の相談は、まだまだ多い。

  • 個別企業に対する不満も時々あるが、その内容は、「処理が遅い。対応が悪い。」といったものが大半。また、「カードを申し込んだのに、なかなか送られて来ない」、「事故、トラブルがあって、カードを盗まれて作られ、自分に請求が来た」など。これは業者側にも問題がある。

  • 事業者ローン利用者の中には、「銀行でも借りられたが、銀行から借りるには時間がかかるし、見返りを要求される」という声があった。例えば、「1,000万貸すから定期預金をお願いします」、「給与振込みを全部当行にしてください」、「保険に入ってください」など。

  • 中小企業の場合、早急に仕入資金が必要になることがあるが、銀行から借りるには1ヶ月を要し間に合わない。資金を1週間で調達したい人は事業者ローンを利用する。

  • 苦情がある人は表に出てくるが、銀行を利用している人でも、うまく利用している人はそれを周囲に言わない傾向があり、大部分の利用者はうまく利用しているのではないか。大多数の健全な消費者金融利用者と健全な金融業者がいる一方で、不健全で悪質な業者、また不幸な被害者もいる。ただ、これは全ての業界に言えることではないか。

  • 金利だけで借入先を選ぶわけではないし、破綻する要因も金利だけではない。金利1~2%台の住宅ローンでも破産する人は大勢いる。破産は家族の問題でもある。カウンセラーによれば、「破産したい」と相談に来る人達は、本人だけではなくて家族全員が同じような状況にあることが多い。家庭教育が難しいのであれば、学校や公共の場での社会教育が必要。

  • 金利の議論だけで多重債務者が救われるとは思わない。本当にだれからもお金の使い方を教えてもらっていない人がいる。誰かがきちんと教えていれば、ヤミ金融の被害には遭わなかった人がいることを痛感している。

西村教授から報告

  • 多重債務者問題研究会をこれまで25回主催し、平成16年暮れに議論の中間取りまとめとして問題解決に向けた意見書を提出した。

  • 最近の消費者金融の利用者は、年齢は20~30代が中心で、年収200~300万の所得層が多い。多重債務化の原因は、主に生活費充当の借入増で、返済のために他社から借入を行って肥大化する例である。また、破産者の約半数は負債額500万円以下である。

  • 現在の消費者金融の規模は、年間の新規供与額が約35兆円。消費者信用全体では、これとほぼ同額の販売信用が加わる。

  • 消費者ローンの分野では、消費者金融会社いわゆる専業者の市場規模はクレジットカードのキャッシングを大きく上回る年間10兆円。

  • 1993年から2003年の10年間で、クレジットカードでのキャッシングの伸びは1.47倍だが、消費者金融会社の信用供与の伸びは1.93倍。

  • キャッシングサービスの利用しやすさのイメージ調査によれば、銀行のキャッシング、クレジットカード会社のキャッシングは半数以上が概ね利用しやすいと答えているが、銀行と消費者金融の共同出資会社では31.7%、消費者金融会社では23.1%の人が利用しやすいと答えており、そのイメージは相対的に低くなっている。一般的には、銀行やクレジットカードのキャッシングに比べて、消費者金融会社は利用しにくく、若干壁があると感じているように思われる。

  • 消費者金融のキャッシングサービスの利用者に限ると、56.6%と大半の方が当然に消費者金融会社のキャッシングサービスを利用しやすいと感じている。

  • 大手消費者金融5社の新規供与で利用者の年齢層をみると、圧倒的に20代が43.9%と多い。テレビコマーシャルの影響あるいは交通広告で情報を得た若者の借入が急増していると考える。

  • 複数のデータから分かることは、消費者金融の利用者が多重債務者に転落する経緯は、何らかの原因によって収入の減少や生活費に不足をきたしてキャッシングの利用が増大したり、他人の債務弁済の肩代わりをしたり、自らの返済のために借入を重ねて、次第に多重債務化していく形が推量される。

  • ギャンブルにのめり込んで債務が累積するケースも多いが、データを見るとそれが破産申立てに直結することは多くない。サラリーマンの一定所得のある人は、債務を抱えても、相談を行った結果、破産を回避するために親族が立て替えるケースが多い。

  • 多重債務者の債務件数と債務額をカウンセリング協会のデータで時系列にみると、多重債務者の債務額は年々減少しており、平成16年度は354万円で12年度から比べると約80万円減少。日弁連の調査では、500万円以下の負債額での破産申立てが48.22%と約半数を占めるが、2年前に行われた日弁連の同様の調査では500万円以下の負債額は43.98%であるため、破産申立者の負債額も若干低くなっていると言える。

  • 多重債務者問題研究会に参加している、実際に相談に対応しているメンバーからよく出される意見は、相談者の多くが金利や相談先など十分な情報を持ち合わせておらず、1人で悩みつつ返済に走るというもの。金利やいざという時の相談先の確かな情報や知識があれば、大きな債務を抱えなくて済むと思われるケースが非常に多いと考えられる。以下は多重債務者の例。

  • 仕事の憂さ晴らしのために、家族に内緒で借りてパチンコにつぎ込んでおり、自分では何とかしなければと思っているが、誰にも相談できずキャッシングを重ねて債務が累積する大卒の生真面目なサラリーマンは少なくない。

  • 週に2回キャッシングで借り入れるが、返済は月にせいぜい1、2回という債務者がいるのは、利用のしやすさが生んだ悲劇と言えるのでは。

  • 司法書士の事務所を尋ねた後、ようやく自分の借入状況が深刻であると気付くケースがある。

  • 多重債務者には、誰にも内緒で借りている人が圧倒的に多く、金利について無頓着で、借入残高は利用限度額の上限になっていることが多い。また、多重債務者であることが一度明らかになれば、家族崩壊を招くこともある。

  • リボルビングでの返済額のうち利息に充当される額を理解している人は皆無ではないかという指摘がある。金利の明示はもとより、利息の額、計算式を契約当初に利用者に対しきちんと示し、正しく認識させることが必要。

  • アメリカではいわゆる「リボ中毒」という表現がよく用いられるが、最低限の支払いで常に借入上限まで借り続け、いつまでも残高が減らずむしろ累積的に増え続ける。その結果、多重債務者になって破産以外に取るべき手段がない状況に追い込まれる場合がよくあり、破産者がこの5年で約700万人いる。そこで、債権者、業界側も破産濫用に歯止めをかける法改正を要求するに至り、消費者保護と破産濫用に関わる連邦破産法が最近改正された。

  • 今回の破産法改正では、破産の急増による債権者側の要請による破産申立ての厳格化が行われているが、13章破産適用率の拡大を狙うためのMeans Test、資産調査を破産の申立て段階で行うこととした。所得が州の平均以上ある場合には原則として13章破産の申立て扱いの範疇として、EOUST(アメリカ司法省)が認証したCCCS(カウンセリング事務所)による事前カウンセリングを義務付けた。

  • また、免責決定前の債務者教育も義務付けており、これもEOUSTが認証した教育機関が行うが、実際の指導の担い手は、教師、ファイナンシャルプランナー、会計士、CPA、あるいはAAFCS(アメリカ家政学会)等の認証者。教育方法は、最低2時間の学習を義務付け、直接対面型の他、電話やインターネットによる教育方法を用意している。

  • 債務者教育は、Budget Development(短期及び長期の生活設計に関するもの)、Money Management(金銭管理、ニーズ・ウォンツの区別あるいは生活に必要な予備の貯え)、クレジットの利用に関わるコストや消費者信用の利用に伴うクレジットの記録、信用教育あるいは消費者詐欺に関する法律を理解させることが必須となっている。

  • 今後の課題としては、社会基盤としてのカウンセリングと金融消費者教育の必要が挙げられる。金利規制、貸出規制、広告規制といった貸し手に対する規制は当然必要だが、多重債務者が150万、200万とも言われる現状では、借り手に対する事前の教育あるいは再発防止のためのカウンセリングの充実は、クレジット社会の基盤整備のためにどうしても必要と考えており、早期に相談体制を充実させていく必要がある。

  • 具体的には、多重債務者問題研究会の意見書で提言している4つの実現をお願いしたい。(1)多重債務者問題に関する相談機関紹介窓口となるホットラインの整備、(2)多重債務者に陥ることを避けるための柔軟な貸付制度の整備、(3)多重債務者を出さないためのカウンセリングができる生活支援アドバイザー(仮称)の全国配置推進、(4)金銭管理や消費者信用に関する一般教育として市民教育の推進

質疑応答の概要は以下のとおり。

(質問)

社会教育がなされていないことや個人の責任もあり、個人破産に陥るとの問題提起があったが、貸す側の問題はないのか。

(回答)

貸し手の責任もあるが、消費者金融利用者の大半は上手に利用している。そうでない人については、教育・知識が必要。知識があれば、ヤミ金融問題、クレジット詐欺、スキミング事件などは減少するのではないか。

(質問)

簡単に消費者金融が利用できる状況になっており、借入を行う人が金利計算やシミュレーションをしていないのは、貸し手側にも責任があるという話があったが、これについて意見を伺いたい。

(回答)

借りては返すということを繰り返している利用者は、利息をどれだけ払っているか理解できない状況になっている。金利の負担額は貸付けする際の最も重要な事項だと思うので、例えば、契約や広告を行う際に、金利の文字表記を大きくすることは一つの方法。また、再発防止のためのカウンセリングや教育指導が行われないと生活を再建することはできないので、何らかの手当、支援策を考える必要がある。

利用者は金利何%と言われても自分の負担が分からない。返済額、その内の利息がいくらという言い方でないと分からない。金利ではなく金額が重要であり、パーセントではなくて金額で定義する方法を考えてもらいたい。

(質問)

テレビコマーシャルでは金利を掲げているが、利息の金額について情報提供しておらず、利用者が理解していないのは大変問題と考えるが、金利、パーセントで表示するように規制されているのか。

(事務局回答)

貸金業規制法では、広告する際、金利を表示するよう規定している。

(質問)

韓国では、2002年から上限金利が66%になったが、現状の貸付金利は上限に近いのか、それとも競争によりもう少し低くなっているのか。

1998年に利子制限法が撤廃されて破産者が増えたのは、金利規制よりクレジットカードの利用が増加したことが大きいという話だが、規制撤廃が誤りだったのではないか。

(回答)

韓国の現在の上限金利の状況だが、中小貸金業者の調達コストが増加し、従来以上に金利を上げざるを得ない状況にあるため、上限金利近くで営業しているのではないか。

韓国では、景気が良くなることに伴い、個人消費を促すための政府によるカード奨励の政策が採られ、量的な成長が一気に進んだ一方で、貸金業者の与信に関する審査能力は伴わなかったために不良債権を増加させたと言える。量的な成長と質的な成長にアンバランスが生じたのは政策ミスが大きかったと考える。

事務局から報告

  • 海外調査(アメリカとイギリス)の報告をする。資料8-5は全て訪問先から手交された資料を和訳したものであり、内容も訪問先から聴取したとおりである。訪問先は別紙のとおり。今回の調査は特に実態・現場をみることに重点を置き、消費者・業者・規制官庁の3者を訪問した。

  • 英米両国で、多重債務者問題があるのかという質問をしたが、全訪問先において「ある」という回答であった。多重債務者問題の定義が難しいが、今回は破産者数の資料を作成した。日本については、個人破産が左側の表、2000年から個人再生(民事再生法)が施行されたことを踏まえ、個人再生と破産を合計したものが右側の表。グラフの頭についているのが人口比。アメリカにおける自己破産の申立件数が左側。そのうち第7章破産(個人破産)が右側。次のページの左側が11章破産(事業者破産)。これは非常に数が少ないので縦軸の単位を変えている。右が個人の民事再生の数。イギリスはイングランドとウェールズ地方だけの資料しかない。次の資料は破産者数の人口に占める割合。ただし各国の破産制度の申立要件も違い、効果も異なる。社会的な評価も異なるので一概に破産の人数だけで比較できないが、1994年から2004年の10年で日本は6倍に、アメリカは2倍に増えている。

  • 両国では多重債務者問題に取り組んできて、その結果としてアメリカでは破産法が改正され今年の10月から施行、イギリスでは消費者信用法案が議会にかかっている。イギリスは2000年に当時の担当大臣によって多重債務問題特別委員会が結成され、毎年詳しい報告書なりアクションプランが発表され5年後に改正法案が議会に提出された。

  • アメリカ、イギリスでは、日本と比べマーケットの状況がかなり違う。クレジットにアクセスできる国民とアクセスできない国民の二極化が非常に進んでいる。ニューヨーク州銀行局は、低所得層は中間層が借りているようなクレジットにはアクセスが制限されていると指摘している。アメリカでは、年収200万円未満の20%ぐらいの国民が消費者金融を利用しており、それ以外の国民は消費者金融を通常利用せず、クレジットカードを主に利用する。クレジットカードを作れない信用力のない者が消費者金融を利用する一方、クレジットカード利用者はリボ中毒になっていて、それが破産数増加の一因になっている。イギリスも銀行口座が持てない者が国民の約20%存在し、年収は9,000ポンド以下(約200万円以下)である。総括すると中流階級がクレジット、低所得者層がキャッシングを利用している。

  • ワシントンDCの低所得者の居住地域を訪問したが、銀行は見当たらず、ペイデーローン(低所得者層専門に融資する消費者金融)の店舗がブロックの角々にあった。ペイデーローンの一軒で実際に店舗内に入り申込書をもらってきたが、実質年率などが書かれていなかった。

  • 訪問先の1番のデービスポーク&ワードウエル法律事務所は金融専門の大手法律事務所で、金利の輸出理論について説明があった。金利の輸出理論は、連邦銀行が他の州で営業する場合、自分の州の金利規制を適用することができるという連邦最高裁判例理論である。これにより連邦銀行が上限金利のない州へ集中する現象を生み出したと言われている。

  • 同法律事務所によると、金利の輸出理論はノンバンクには適用されない。ノンバンクが高い金利で営業しているのは、免許の貸出し、つまり名義貸しなどによるとのこと。ちなみにペイデーローンの金利は、ある有名な消費者向けの教科書を発刊している団体によれば平均470%。

  • 海外事例を紹介した資料は貸金業における行政処分についてまとめたものである。(1)はニューヨーク州の司法長官事務所が金利780%というペイデーローンについて、ニューヨーク州の金利規制違反として訴訟を提起した例。(2)はペイデーローンが年利500%で営業した例。

  • ニューヨーク州銀行局などでは、最近のペイデーローンの拡大について、銀行がペイデーローンの収益に惹かれ提携を強めていること、アメリカで貧困層が拡大してきていること、などが理由であるとしている。

  • FTCやOCCでは、この免許許の貸出しについて、金利規制の潜脱であると認定される場合には、連邦免許を否定し州法の金利規制を適用する解釈を採っていると説明しており、実際にFTCによる行政処分の例がある。

  • デービスポーク&ワードウエル法律事務所ではSmall Loan Lawsに関する説明を受けた。これは、銀行が低所得者層に貸付けを行わず、ノンバンクが高利で貸付けている状況を踏まえ、ニューヨーク州が、銀行等に対して低所得者層へ貸付けることを奨励するため上限金利(25%)を超えた金利(30%)での融資を厳しい要件の下で認めたもの。小口貸付けに限定され、リボルビング契約は対象とされない。

  • アメリカでは、金利規制をしている州が38州。金利規制がない州でも、6州が貸付上限額を規制している。ニューヨーク州など19の州ではペイデーローンについて上限金利を定めている。デラウェア州など6つの州では当事者が合意すれば金利はいくつでも構わないとされているが、貸付期間等の規制がある。25州ではペイデーローンを実質的に真正面から認め、免許制をとってボンドなどを要求しているが、金利は391~720%と高い。

  • アメリカのサブプライム層への貸付残高は、1997年は1,250億ドルだったが、2003年に3,320億ドルと2倍以上に増えた。他方、略奪的貸付けが問題になっている。例えば、低所得者の住宅を担保に入れてConsolidation、いわゆるおまとめローンとか債務の一本化といわれるようなローンを組んで最終的に住宅を取り上げてしまうという点が問題にされている。これに対する行政処分例を資料に掲げた。非常に莫大な金額が没収されている。このような違法行為をした業者からは、例えば21,500万ドルというような多額の違法収益を剥奪して被害者に分配している。(イギリスについては次回引き続き報告する。)

以上

問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3567、3553)
本議事要旨は、暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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