金融経済教育懇談会(第2回)議事要旨

1.日時

平成17年3月28日(月)18時00分~20時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.主な議題

  • 高橋委員より金融経済教育の現状と課題、東証アカデミーでの取組状況、金融庁に期待する教育的支援等について意見発表。

  • 神戸委員より金融に関する社会人・高齢者教育の現状と今後の目指す方向について意見発表。

  • 山本委員より金融経済教育と生涯学習振興との連携・協力の可能性について意見発表。

  • 自由討議

【意見の概要】

(社会人・高齢者向け金融経済教育のあり方)

  • 「貯蓄から投資」へという政策は、「みんなで株式投資をしよう」ということではなく、各個人がそれぞれのライフスタイル・ライフステージに応じて主体的に投資を行うことで実現するもの。社会人向けの金融経済教育に重要なのは、必要性を認識して主体的に学ぼうとする個人を応援すること、また、そのための動機付けである。従って、社会人の場合、教育というより、むしろ「啓発」や意欲のある人の「学習」というとらえ方が適当かもしれない。

  • 国民全体のマネー・リテラシー向上の中で、知識・スキルの平準化を目的とする「キャッシュフロー・マネジメント教育」と、もうかる・もうからないの差が生じ得ることを前提に競争原理の働く「投資教育」を区別する必要があり、前者は高校までの学校教育を中心に、後者は、大学・大学院や企業による社会人教育を中心に実施するという整理ができるのではないか。前者に、キャッシュフロー表の作り方など、ライフプラン全般、株式、債券の区別、分散投資の考え方までを含めるべき。また、前者の初期段階として、「こづかい帳のつけ方」のような金銭教育は家庭中心に行われるべき。

(金融庁に求められる役割)

  • 金融庁に期待する役割は、(1)金融システムに関する理解の促進、(2)法的知識(各種ルールやトラブル対処)の普及、(3)利用者相談室とも連携したタイムリーな情報提供の3つ。教育内容については、金融広報中央委員会等でそれなりの蓄積がある中、民主導で考えるべき。各団体がさまざまな活動を行っており、独自性と競争原理が発揮されている現在の姿は肯定的に評価できる。

  • 金融経済教育について、国として教育の中身まである程度、関与することも必要ではないか。文部科学省、金融庁、金融広報中央委員会、NPOなどが、縄張り争いをせず、ベストプラクティスを組み合わせていくことが重要。

  • 米国の監督当局は、金融機関等に対する苦情を受け付けてその結果をランキングの形で公表したり、インターネット上にうまいもうけ話のニセ広告を出し、クリックした消費者に被害防止の教育を行うなど、ユニークで柔軟な対応をしており、英国のFSAも、ウェブサイトで不正な金融商品や金融取引に関する警告を行っている。これらの取り組みが参考になるのではないか。

  • 米国では20の連邦政府機関の長で構成される「金融リテラシー・教育委員会」が戦略を策定、また、英国では政府、業界、消費者代表で構成される「金融能力推進グループ」が教育の対策領域を7つに分け、それぞれの領域ごとにワーキンググループを立ち上げ具体策を策定している。これらの例も参考とすべき。

(「投資」、「投資教育」に関する意識の現状)

  • 「リスク」という言葉の認識を改める必要がある。一般の人は、安全か危険かの二分論で、100%安全でなければ安心しない傾向がある。不確実な部分とどう付き合うかを教えていく必要がある。

  • 投資教育は儲けるための教育ではなく、儲からなくても投資をするという動機付けがあってよい。そのためには、投資というものに、例えば地球環境保護などの別の価値も読みこませていくほうがよい。

  • 教育現場にある「投資=ギャンブル」という意識を変える必要がある。私腹を肥やすのは良くないが、利益を社会に還元するならよいという整理もできる。

  • 投資はリターンを求めるものであり、儲からなくていいという視点を正面から盛り込むことには無理がある。社会責任ファンド(SRI)やアイドルファンドといった、純粋なリターン以外の要素も考慮するファンドは既に出てきているが、金融経済教育のメインストリームにするのは難しいのではないか。

  • スペキュレーターという英語には、よく考える人という意味もあり、要は「損切りできる人」。まずは、「投資」と「投機」を区別できる人を育てることから始める必要。森林を買うことも、「分散投資」の範囲に入るかもしれない。

  • 例えば、「負けがこむと何とか取り戻したいと思う」など、投資には心理的な要素も入ってくる。自ら進んで金融について学ぶ動機付けと、パーソナルファイナンスとして金融商品を主体的に選べる目を身につけてもらうことが必要である。

(今後の社会人・高齢者向け金融経済教育の具体的方法)

  • 現在の社会人、高齢者教育の主な機会としては、確定拠出年金の導入時研修、企業従業員対象の研修、メディア・金融機関主催のセミナー、マネー誌などの記事などが挙げられる。今後の担い手としても、(1)企業勤務者に対しては、確定拠出年金運営管理機関や企業自身、(2)企業勤務者以外の自営業者、高齢者、専業主婦等に対しては、公的機関・地方公共団体、(3)中・上級者に対しては、大学・大学院の役割がそれぞれ期待されるが、とりわけ、個人の資産運用・管理を教える担い手として金融機関に期待したい。銀行のセミナーは、その顧客層から、「投機」と「投資」を区別し、「分散投資」という資産管理・運用の基本を教えることに適している。

  • 普通の商品と異なり、金融商品は評価付きインフォメーションを得て、即ち売り手に背中を押されて買う商品であるから、売り手である金融機関の職員を教育して個人対象の資産運用ビジネスに関する理解を深めさせ、与信業務と同様の動機付けを持たせることが重要。

  • 金融知識の普及について金融機関の果たす役割があることは否定しないが、一般の人々は、金融機関のアドバイスには営業目的があるかもしれないという警戒感を拭いきれず、社会人教育の主要な担い手として位置づけることは難しい。

  • 金融経済教育と生涯学習振興の接点は、人々が人間的価値と経済的価値を調和的に追求する場合に生じてくる。生涯学習のニーズについてはさまざまな調査が行われており、成年人口が約8,000万人として、生涯学習の潜在的ニーズをもつのはその4割(3,200万人)、実際に何か受講しているのは3割(2,400万人)くらいではないか。このような規模のターゲットに対して金融経済教育をすすめるのであれば、例えば「生涯学習インストラクター」等を活用した全国的なヒューマンネットワークの構築が必要。

  • 金融経済教育について、仮に国レベルで立派な方針を立てても、各自治体レベルに下りていくと地域格差が出てしまうおそれがある。投資というと、儲け話として敬遠されてしまう地域があり、そのような意識格差を考慮しなければならない。例えば、地域通貨、携帯などを利用して地域で金融経済教育の振興を展開してはどうか。

  • 金融というととかく難しくなってしまうが、一般の人の目線はかなり低いと思う。具体的で身近な問題からのアプローチが重要である。成功した経営者を登場させ、インパクトのある話をしてもらうのも良いのではないか。

  • 一般消費者を金融トラブルから守るための法知識の教育が重要であり、その際、基本になるのはインターネットの活用だと思うが、高齢者には、印刷物の配布等も有効である。

  • 複雑な金融のことを分かりやすく説明するためには簡略化が必要だが、そうすると誤解を生むリスクも出てくる。簡略化のレベルをどこに設定するかの按配が重要である。

  • 学校における金融教育の中身は何か、を考えてみると、「生きる力をつけるための知識」という幅広い捉え方ができると思う。社会人教育の場合は、投資教育や消費者教育に絞る捉え方と、もっと目線を下げて人生という広い文脈で捉える方法がありうるが、後者でないと人はなかなかついてこない。

問い合わせ先

総務企画局政策課
Tel  03-3506-6000(代表)
寺門(内3167)
川西(内3168)
本議事要旨は、暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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