金融経済教育懇談会(第4回)議事要旨

1.日時

平成17年5月24日(月)18時00分~20時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.主な議題

  • 米国・英国の現状についての説明

  • 西村委員より米国のNPO全国金融教育基金についての説明

  • 藤沢委員より金融庁が担うべき金融経済教育とは何かについて意見発表

  • 水上委員より金融経済活動に必要な「情報」という観点から日本型の金融経済教育をどう考えるかについて意見発表

  • 生島委員より媒体・伝え方について意見発表

  • 金融庁ホームページ改善についての説明

  • 自由討議

【意見の概要】

(金融経済教育の意義・内容)

  • 伝統的な教育でカバーされることのなかった金融経済教育が、今、なぜ必要となったのか、その背景を考えると、(1)個核化や少子高齢化といった人口動態・社会構造の変化の中で、資産管理や保険的な機能について個人が重要な決定をする機会が増えており、そのために必要な知識・情報の多寡によって対応に格差が生じやすい環境にあること、(2)さらに、必要な知識の複雑化・技術進歩のスピード化を背景に、情報通信技術や金融商品・サービスの多様化・複雑化への対応力によって成果に格差がより生じやすい構造にあること、があげられる。

  • 「個人の情報環境」の観点から見れば、上記種々の構造変化の下、個々人が自らの資産管理について重要な決定をしなければならなくなっている一方、IT化や金融商品・サービスの多様化・高度化が利便性・価値向上の機会とだまされて損をする事例の双方を発生させており、適切な情報にアクセスし選別する能力の格差が、社会的分配の格差にまで結びつく状態が生じている。その場合、法規制の強化や、再分配政策の強化という話になるが、規制レベルの引き上げによる非効率な資源配分の発生や、分配問題における社会的亀裂の高まりは回避・抑制する必要がある。この点、金融経済教育には、個人の情報対応力を高めることにより、社会経済的にも、情報の面から資源配分を効率化させるとともに、社会的コストを抑制・軽減する効果が期待できる。

  • 金融経済教育で教えるべき内容は、一言で言えば、「お金を賢く使うために、あるいはお金を巡ってだまされないために、何を身に付けておかなければならないか」ということであるが、当然ながらその具体的内容は対象者の世代、知識、環境、心理、経験等に応じ、極めて多面的、多次元的である。従って、さまざまなケースがありうることを前提に、情報をシェアすることによって学ぶことが重要。

  • 情報をシェアするための原則は、(1)多方面の連携、(2)ベスト・プラクティスのための評価(効果分析)、(3)個人のニーズとのマッチングを図るためのアウトリーチの3つである。まず、社会の多様化を前提に、情報が偏在しているリスクをカバーすることが大事であるが、そのためには、偏在している情報への対応も含めて、演繹的(トップダウン)なアプローチではなく、帰納的(ボトムアップ)なアプローチを採る必要がある。その場合には、連携がキーワードとなるが、連携を増やすためには、ガイドラインの存在、連携を求める側の行動規範の明示、中立機関による連携円滑化のためのイニシアティブが重要。こうした中で政府と民間企業との協同作業も一層推進されるべき。

  • 情報量が多すぎる場合には情報を選別することが必要だが、その前提として情報の評価が必要になる。この点、米国では「金融教育プログラム成功のための8つの要素」の1つとして「効果(impact)」を挙げ、(1)具体的なゴールを設定し、進展度合いがわかる指標を利用すること、(2)テストやサーベイ等の評価方法により、参加者への効果を示すこととしている。日本でもこれまで色々なアンケート・サーベイが行なわれているが、きちんとした効果測定や評価まで行き着かないことが多いのではないか。先天的にベスト・プラクティスが分からない以上、ボトムアップで対応していくべき。

  • 社会の変化が速い中、適確な情報にタイムリーにアクセス出来るか否かで対応や成果の格差が大きくなるということは、放置すると脱落する人が増えるということでもあるので、学校・社会での教育の必要性は一層高まる。その際、教育のスタイルは目的や効果に応じて柔軟に考えるべきであり、教育対象者の裾野を広げるためのアウトリーチが重要となる。

  • 教育には、基礎知識・応用知識・実践と3つのステップがある。金融経済教育について言えば、基礎知識として、お金の意味、使い方、貯蓄、運用、就労、起業、社会構造の理解などをベースとした、生き方、働き方の教育が求められる。応用知識としては、ケーススタディ的なもの、体験学習的なものが求められる。実践の段階では、身に付けた知識を日々の生活でのさまざまな活動に生かしていくことになるが、実はこの段階が一番重要なのではないかと感じている。

(金融庁に求めること)

  • 教育の3ステップ(基礎知識・応用知識・実践)の中で、基礎知識、応用知識の段階で金融庁に求めるのは、諸団体の具体的な活動を支援することに尽きると思う。他方、実践については、そもそもそうした場に足を踏み出す人が少ないのが問題であり、諸団体が積極的に取り組んでも、まだアメリカ並みの個人金融資産の構成にはなっていない。多くの人々は、まだ安心して実践に踏み出せないでいるのが実情。

  • 金融庁に対しては、役所の信頼性、知名度を活かし、金融経済教育にとって重要である「実践の場」作りに努力している民間・NPO等諸団体の優れた活動を種々のルートで支援して欲しい。具体的には、そのような諸団体の活動が存在することを知らしめる「告知支援」や、「お墨付き」としての「後援」名義の積極的付与を図るほか、将来的には何らかの金銭的支援についても検討してはどうか。また、これは狭義の金融経済教育の範囲を超え、むしろ金融行政全体としての課題であるが、身近な「実践の場」の強化として、ワンストップ型の金融サービス提供の枠組み作り、販売員の知識・倫理両面での資質向上、地方や中小企業が「参加しやすい市場作り」、子供に金銭管理を行なわせるための何らかのインセンティブについても今後検討してみてはどうか。

  • また、国民が安心できる相談機関と解決手段を提供することも必要ではないか。現状でも金融トラブルに関してはかけ込み寺はあるが、かけ込むだけで泣き寝入りになるのが現状ではないか。金融トラブルに関する裁判所のような場で、実際にトラブルが解決されることを通じて判例を蓄積し、その情報を業界や国民で共有していくことが重要である。

  • 現在、幅広い金融商品・サービスについて包括的・横断的な利用者保護の枠組みを整備すべく投資サービス法の議論が行われているが、金融経済教育によって1人1人が健全な判断力を養うことは、バランスのとれた投資家保護の枠組みの構築にも役立つものである。ただし、その際には、過度な投資家保護は、かえって学びの機会を阻害する点に注意を要する。

  • 社会に対して大きな効果をもたらした「貯蓄から投資へ」というビジョンについては、民間がこれを旗印にさまざまなビジネスを起こして来た実情に照らし、金融庁として今後これを引き継ぐ新たなビジョンを示して民間が積極的に取組みたくなるようなキャンペーンを張ってはどうか。

  • 政府に求められる役割としては、情報をシェアすることによって学ぶための3原則((1)多方面の連携、(2)ベスト・プラクティスのための評価(効果分析)、(3)個人のニーズとのマッチングを図るためのアウトリーチ)に対応する形で、

    (1) 多方面との連携において、中立的立場から全体の動きのモニタリング等を行うこと、

    (2) ベスト・プラクティスの選別においても、これに自ら関与し、あるいは民における努力を支援すること、

    (3) アウトリーチにおいても、関係する各方面の重複する取り組みの調整や共通の場の設定、関係者の関心を引くような全体の動きについての具体的データに基づく情報発信を行うことが期待される。

  • 金融庁には具体的に次の3点を提言したい。(1)金融リテラシー年次報告(いわゆる白書)を作成して、我が国の金融経済教育全体のシンボル、モニタリング・センターとしての役割をはたすこと。(2)教育効果に関して仮説検証型の実証的な研究を推進すること。(3)米国で20省庁が参加している「金融リテラシー教育委員会」の例にならって政府関連業務のワンストップ型ウェブサイトを開設し、ライフステージや結婚・出産・退職などのライフイベントに応じた政府の関わり方を明らかにすること。なお、金融庁が教育現場に直接アクセスする必要はないが、財務局を活用した教員研修等はあった方がよい。

  • 本懇談会のメッセージとしては、(1)現代における金融経済教育の必要性、(2)政府内外の関係者による積極的・多角的な参画の必要性、(3)プログラム評価のための調査研究の重要性、という3点を広く伝えていくことが重要ではないか。

(媒体・伝え方について)

  • メディアを使って、金融経済教育を普及させることを考える場合には、資金を出してその範囲で一方的な情報を「告知」する「広告」の発想ではなく、資金を使わなくともニュースの形で伝わり告知されることによって「客観的」「信頼できる」情報として消費者から受け止められ、大きな効果が得られるPR(Public Relations)の発想で臨むことが大切である。「最大の広告はニュース」であり、対象となる伝えたい情報をニュースの形で伝えてもらえるよう、受け手との「共通言語」を含ませることで情報に客観性と信頼性を与えることや、感動、今日性、物語性といった「ニュース作りの法則」を踏まえることが肝要である。

  • メディアに関して、もともとなじみの少ない人にも受け入れられるためには、「分かりやすい」だけでは不十分であり、「おもしろさ」、エンターテイメント性が求められる。例えば、現在、制作されている子供向けニュース番組のような、徹底的な受け手のレベル、素人目線での情報作りとクイズ感覚や実体験に根ざしたエンターテイメント性の付与、が必要である。他に、例えば、大人の影響を受けやすい子供にとって、金融経済教育に関するヒーロー、カリスマを作ることなども大きな効果が期待できる。

  • 最近、年齢本と呼ばれるものが流行していることに鑑み、例えば「3歳からの金融経済教育」といった親が子供に教えやすい絵本の作成をしてみてはどうか。また、現在も「投資の日」(10月4日、日本証券業協会、東京証券取引所等関連団体が主催)等が設定されているが、さらに幅広い連携の下「お金の記念日」を設定し、集中的なイベントを試みることも有効かもしれない。

  • 教育現場に金融経済教育を普及させていくためにまず必要なのは勤労を尊ぶあまり「お金はタブー」といった固定観念の払拭。先生や親の意識を変えるには説得的で統一したコンセプトを作成することが重要であり、金融経済教育を通じてお金や経済について学ぶことが生きる力の向上につながることを理解してもらう必要がある。

  • 教育現場では、やはり制度的なものから教えたい部分があるので、そうした要請に応えたいが、なかなか難しい。教育現場に「お金」や「投資」を話題にすることに抵抗感があるのは事実であり、まずはこうした悪いイメージを払拭することが重要。

  • 金融庁のアンケートからは、教育現場は現状で手一杯であり、金融経済教育に取り組む余裕はないという印象を受ける。この改善策として、一般には社会人・高齢者教育の担い手であるファイナンシャル・プランナーについても、その継続教育の過程において学校教育の講師として活用してはどうか。これにより、資格をもったファイナンシャル・プランナーが実社会で資格を活かすと同時に、先生の過大な負担も軽減されて、金融経済教育の促進に向けたよりよい相乗効果が生み出せるのではないか。

  • 金融庁のホームページは、トップページはよく整理されているが、中身に入っていくと今ひとつ違和感がある。専門知識を分かりやすく伝えるのはどの分野でも難しく、固い知識と分かりやすい説明の間をつなぐ人材がいない。金融の専門家であって誰にでも平易に説明できる人材を育てる必要がある。

  • 金融庁のホームページは民間と比べて、毎日見たくなるような面白さがない。新着情報配信サービスをもらって興味がわき、ホームページを訪問しても、どこが変わっているかすぐには分からない。民間のようにページの更新が目に見えるような形にするなどの工夫が足りないのではないか。また、米・英の当局のホームページには、苦情への対処方法、金融広告の見方、投資商品に関するリスクの説明などもっと多様な情報が提供されている。

(その他)

  • 米国におけるNPOの活動について、全国金融教育基金(NEFE)を紹介しておきたい。クレジットユニオン協会、農務省、州立大学のエクステンション・サービスとタイアップしているのが特徴であり、主たる活動は高校生向けのファイナンシャル・プランニング教育。2004年からはネットによるe-ラーニング用のカリキュラムを提供している。

  • NPOへの財政支援はNPO自身の説明責任を向上させるためにも、また、分権的なシステムを構築する上でも、財政支出という所得再配分方式よりは、寄付金控除の増額という方法が望ましい。

  • 金融経済教育という教科を新たに創設することは現実的でないが、既にある学習指導要領の記述と関連付けながら、現行のさまざまな教科の指導で金融・経済に関する素材を取り入れる工夫を進めること(「インフージョン」)を考えていくべきである。

問い合わせ先

総務企画局政策課
Tel  03-3506-6000(代表)
寺門(内3167)
川西(内3168)
本議事要旨は、暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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