平成12年12月15日
金融庁

企業会計審議会第12回第二部会議事録について

企業会計審議会第12回第二部会(平成12年12月1日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画部企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第12回第二部会議事録

日時:平成12年12月1日(金)午後2時00分~午後4時07分

場所:中央合同庁舎第4号館4階共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより第12回第二部会を開催いたします。

本日は、前回に続きまして、ゴーイング・コンサーンにつきまして御検討いただくことになっております。

初めに、前回までに御議論いただきましたゴーイング・コンサーンに関する企業のリスク情報の開示、それと、監査につきまして、簡単に整理をさせていただきたいと思います。

リスク情報は、何でも広範に記載するという考え方は、投資家にすべての判断責任を負わせることとなります。一方、リスク情報が開示されずに、ゴーイング・コンサーンの評価を監査人の判断だけに委ねてしまうという考え方は、監査人に過度の責任を負わせることとなります。いずれにいたしましても、実際的ではないという御意見がこの部会では多数であったというふうに思っております。

したがいまして、ゴーイング・コンサーンに関する問題につきましては、経営者の責任による開示を前提とした監査人の評価という枠組みで、それぞれが責任を分担し、一定の評価を受けた情報が投資家に開示されることが有効な方法であるということであったと思われます。ただ、具体的な状況といたしましては、経営者の方々が持たれる感触と、投資家の皆さんや監査人の方々が持たれる感触には、おのずから違いもありますので、この点は議論が半ばであったというふうに思います。これまでのこの部会での御議論は、以上のように整理されるかと思います。

さて、本日は、日本監査研究学会におきまして、課題別研究部会、「ゴーイング・コンサーン問題と監査」の部会長をされておりました駿河台大学の八田進二教授に、ゴーイング・コンサーン問題と監査につきまして御報告をいただくことにしております。続きまして、日本公認会計士協会監査基準委員会委員の市川公認会計士に、ゴーイング・コンサーンの開示のあり方につきまして御報告をいただきたいと思っております。

それでは、まず、八田参考人から御報告をいただきたいと思いますが、今お手元に、この小冊子が配られておりますが、これは、課題別研究部会の冊子でございまして、日本監査研究学会におきまして公表されたものでございます。参考としてここにお配りさせていただきました。

それでは、八田参考人から御報告をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○八田参考人

ただいま御紹介いただきました駿河台大学の八田でございます。座ったまま失礼させていただきます。

今御紹介いただきましたように、2年間にわたる日本監査研究学会からのスタディグループ、正式には、課題別研究部会と申し上げますが、そこで、「ゴーイング・コンサーン問題と監査」という題目で、私を含めまして、全12名で、2年間にわたる研究会を行いました。研究会の進め方としましては、1年たった段階で、全国大会で中間報告を行い、2年目の全国大会で最終報告を行うということになっておりまして、昨年、既に中間報告というのを明治大学で行われました全国大会のときに公表しております。

そして、それを踏まえまして、その後1年研究して最終報告書を完成させ、今般甲南大学で開催されました学会会場において報告したところであります。したがいまして、今般、私に与えられましたテーマは、恐らくこの研究会での経緯あるいはこの研究会での議論の集約したものを御紹介し、今後の御参考にしていただきたいということだと思いますが、本日は、私個人で命を受けておりますので、基本的には、部会の代表する意見というのではなくて、個人の意見ということでお話をさせていただきたいと存じますので、その点御了承いただきますようお願い申し上げます。

まず、お手元には、このグリーンの表紙の冊子があり、大部なものでございます。したがいまして、まず、この報告書の性格づけから先に御説明させていただきます。

それから、本題とはちょっとずれますが、私が監査論を研究している者として、いつも考えております私自身のスタンスを先に申し上げますが、2つの点を私自身研究のスタンスとして持っております。

その1つは、会計と監査というのは、当初、私が指導を受けた亡き日下部興市先生のお言葉にもありますが、会計と監査、領域、業務は、唇歯輔車の関係にあり、これは、両輪の関係にあるということで、両面からかかわりを持たなければならないという視点で議論をしていきたい。きょうも、そのような点でお話をさせていただきます。

それもう1つは、会計業務そのものがそうですが、とりわけ監査に関しましては、欧米社会を見るまでもなく、実践と研究、あるいは実務と教育、こういったものは完全にリンクしたもので、整合性を持って発展しなければならないということでありますので、私は、きょう、先に御案内いただいたときには、学者の立場でという一言が入っておりましたが、立場はそうではありますが、基本的なスタンスは、何か実践実務の改善、あるいは世界的な動向における整合性を持つような形の提言をさせていただければと考えておりますので、そういう視点でお話もさせていただきます。

それでは、この報告書のまず性格づけでございますが、目次のところをごらんになっていただきますと、大きく3つのセクションに分けて作成しております。それは、「本研究の枠組み」、それから、国際会計基準委員会、それから、国際会計士連盟という国際的な統一の団体を含む諸外国の制度、そして、我が国の制度というものの各国間比較、これを「制度篇」ということで行っております。そして、報告書を出した11月の段階の最もアップデートする形で見直しを行っております。中間報告に比べてということでございます。

そして、3番目が「理論篇」ということで、これまでどのような研究が行われてきたのか。個人研究、それから、グループ研究、そういったものを基本的に今後我々がこれをまたさらに研究を進めていく場合に、寄って立つべき根拠となる理論研究を一応代表的なものを含めて、共同研究と個人研究ということで整理をし、そこで論じられている特徴すべき内容について、若干のコメントを付しているという点であります。

したがいまして、特にこの「理論篇」の方は、これで会計あるいは監査上のテーマが、1回研究すれば、あるいは検討すれば、事足りるというものではなくて、時代の変革とともに、継続的に見直しが必要であろうということもありますが、少なくとも現時点までの諸外国、我が国も含めまして、研究成果に関しては、恐らくほとんど網羅的に検索をしておりますので、これからもし研究あるいは検索をされる方は、ここから先の議論をしていただきたいという考えを込めて、かなり大部な資料を抄録しております。

それから、2番目の「制度篇」に関しましては、先ほど申し上げましたように、国際会計基準委員会、それから、国際会計士連盟を含む諸外国、そして我が国の例を取り上げておりますが、きょう、これからお話し申し上げる各論にも触れるところでありますが、実は、私どもが約2年間にわたって行っておりましたゴーイング・コンサーン問題と監査にかかる研究、この途上におきまして、幾つか特筆すべき状況が我々の前に生起いたしました。

その1つは、もう御案内のように、本年5月、国際会計基準委員会の国際会計基準、いわゆるコアスタンダードが証券監督者国際機構によって、いわゆるエンドーズされた、是認されたということ。そして、それを踏まえて、国際会計士連盟の方も、ほぼそれと連動する形で、若干相前後するのですが、監査基準についても、そのような動きになっていくだろうということで、国際環境の中における基準が、国際会計基準あるいは国際会計士連盟をコアに、次第次第に収れんする方向に向かいつつあるということであります。

それともう1つは、アメリカの状況というのは、これは経済環境が非常に強いということもあるのでしょうが、他国に類することなく、独立独歩の道を依然歩み続けているような感じがします。したがいまして、実は、この「制度篇」のところで、集約的にお話し申し上げますと、この2年間の間に、幾つかの状況がありました。それは、例えば、後半の方に書いてあります南アフリカとかオランダという国がございますが、これは、この2年間の間に、従来持っていた自国の会計基準あるいは監査基準における、とりわけこのゴーイング・コンサーン問題を絡めた領域ですが、これはほぼイコール国際会計基準、そして国際監査基準に全部同意する方向に向かいました。

あるいはカナダの場合ですと、それまでは、みずからの会計上の問題として、あるいは監査上の問題として、ゴーイング・コンサーン問題を扱う規定をイクスポージャードラフト(公開草案)というものを出しておりましたが、この国際会計基準委員会の動き、あるいは国際会計士連盟の動向を照らして、ついに1999年、これまで公表しておりました、長きにわたってたなざらしになっていましたイクスポージャードラフトをすべて廃案ということに持っていきました。つまり、自国でつくることを断念したという方向に向かっているようであります。

したがいまして、制度の中での議論は、基本的に国際会計基準及び国際会計士連盟が牛耳っていく流れの方向なのか、もう1つは、恐らくこれは議論がされているんだと思いますが、いわゆるアメリカ型と申しますか、特に会計基準の方では手当てをすることなく、監査基準の中で取り組んでいくという方向、この2つがある程度明確に見えてきたというふうに理解することができるのではないかと考えております。

それにつきましては、一応網羅的にごらんいただけるように、ちょっと小さい図柄ですが、この「制度篇」の一番末尾に、グリーンの109ページなんですが、ちょっと小さくて見づらいかもしれませんが、「各国におけるゴーイング・コンサーン問題に対する制度的対応比較一覧表」ということで作成しております。実は、これは既に1997年でしょうか、日本公認会計士協会の方でも各国比較をした資料がございますが、それをベースに、その後の動きを、そして、我々が議論したいテーマを掲げながら、一応まとめております。これをごらんになっていただくと、先ほど申し上げましたように、オランダとか南アフリカは、もうほとんど自国で記載するものはなくなっております。

そんなことで、2つの流れの方向があるということ。これをまずもって御理解いただければと存じます。

それと、今回の研究グループの1つの特徴は、メンバーをごらんになっていただけばわかりますが、全12名なのですが、私、部会長としての希望もございまして、できるだけ若い研究者といいますか、新しい研究を行うという学界人と、それから、基本的に第一線で、そして、オピニオンリーダー的な立場で御活躍されている実務家の方、実際には4名の方に入っていただきましたが、その中で議論をしてきたということであります。

そして、とりわけ実務家の先生方に関しましては、共通的な認識がございました。それは、1点、ゴーイング・コンサーン問題というものに対するニーズにどのように監査が対応していくかということなんですが、それは、途中の段階での御意見はいろいろあったのですが、基本的には、我々がやっている監査に実質的に変化はないんだ。つまり、変化するとするならば、例えば会計上の規定がない。それができれば、さらに仕事はしやすくなるだろう。

あるいは現行の会計のルールがすべて、公準とも言われますように、継続企業の公準といいますか、企業実態の公準ですか、いわゆる反証のない限り、継続的な事業活動を停止することはないというこの公準ですが、これをベースにつくられているわけであって、それをベースにつくっているということさえ、我々が社会に発信するならば、仮にこのゴーイング・コンサーン問題に何らかかわらなくても批判されることはないというような、基本的にはスタンスは基準、規則が明確にないがゆえに、社会的に批判を浴びる遠因でもあろうし、あるいは自分たちが歯がゆい部分でもある、こんなような御意見がありました。

ただ、やはりそうは言っても、このグローバル化社会の動向の中、とりわけ我が国の場合には、マスコミ等が非常にスキャンダラスな取り上げ方をしているかもしれませんが、例のレジェンドクローズの問題、いわゆる大手監査法人が、国際社会において我が国の会計及び監査が基本的に信頼性が乏しいということで、いわゆる警句を付するということはゆゆしき問題であるがゆえに、これを削除する、あるいはこれを取り除く。こういった世界的な認知を得るためには、ひとつゴーイング・コンサーン問題に関するルールが何らかの形で手当てされなければとれないだろうという危機感を非常に持っておられることは事実でありました。したがいまして、私どもの研究も、最終的には、会計の方、あるいは監査の方と、見方はございますが、何らかの形で手当てをしなければならないという時代はもう来ている。

ただ1つ言えることは、ここでも議論になったし、たまたま私は、きょう、個人の立場でお話し申し上げますが、先月、FASBの委員のゲルハルト・ミューラー先生が日本に来られて、東京でも何回か御講演あるいは御発表がございました。縁がございまして、私は、4つの研究会、講演会にお供する機会があったんですが、その先生が期せずして言われたことは、会計の基準というのは、常に経済活動に対して後追いである。それは何も恥じることではない。経済活動は、先に新しい秩序、あるいは新しいルール、新しい経済取引が起きる。それを追いかけていくのが、会計のルールである。

したがいまして、私の表現を申し上げますならば、会計のルールがそのように後追いならば、さらにそれをすぐ追いかけるのは監査のルールであろうということでありまして、逆に言うならば、一度会計監査のルールができ上がれば、2年3年放置すればよろしいというのではなくて、継続的な見直しをすること、そして、そのためには、FASBは、EITF(エマージェンシー・イシュー・タスク・フォース)と申しますか、緊急問題研究班、そこで大事な問題をどのようにするか考えています。

同時に、もう1つは、ミューラー先生が言われていましたが、18カ月を目途として、戦略計画を練っているんだと。そういった大所高所に立った議論。それから、言うならば、近時の緊急問題を並行的に扱っていくこと、これが会計監査に与えられている基準づくりの宿命なんだということを言われております。

そういうことで、会計のルールというもの、余り長い時間をかけて、2年3年たってできたときには、世の中は変わっているのかもしれませんので、できるだけそういったスタンスで、もしおつくりいただけるならばという個人的な感想も含めまして、実際の内容に入らせていただきます。

一応どのような御報告をすればよろしいのか、私もよく要領がつかめませんでしたので、この報告書の I というのが、「本研究の枠組み」というところがございます。これは、1から全部で17の提言という形を導き出すための流れを行っているわけですが、若干内容がございます。これは、基本的には、実は、報告書の冊子の一番最後に、付録という形で添付したのですが、こちらの方の企業会計審議会が本年の6月6日に公表されました「監査基準等の一層の充実に関する論点整理」これに対して、8月上旬を限度としコメントを求めるということがございました。

そして、この中には、我が国の監査をめぐるいろいろな改革問題が提言されていたようですが、たまたまこの時期に、私ども、学会の立場で、ゴーイング・コンサーン問題というかなり奥深い問題にかかわったこともございますので、何らかの形で貢献をしたいということで、必ずしも全員のもんだ議論ではなかったんですが、一応Eメール等で各自やりとりしまして、異論はないか、少数意見があった場合には、後ほどまた報告書を出そうということもありまして、その形で、簡単なペーパーですが、部会としての考え方、問いかけを行いました。

これは、草案としてのイクスポージャードラフトが出てのコメントではございませんで、論点整理でしたので、そこではこういうことをまとめておられるんですねと。したがいまして、こういう問題提起に対して、どのようなスタンスでこれからおまとめになるんですかという論点整理に対する論点整理――ちょっとおかしいんですが、そういった質問事項で、大変失礼だったと思うんですが、時間の関係もございまして、この辺も、今後御検討いただくならば、折り込んで御検討いただきたいということで申し上げました。これが添付されているということでございます。

これを添付した手前、部会としてはそれはどういうふうに考えてしたのかということがございましたので、これにこたえる形の枠組みというものを我々はつくりたいということがございまして、非常にタイトな時間の中でありましたが、一応つくって公表いたしました。ただ、きょうは、先ほどありましたように、学問研究といいますか、学会の方でこのゴーイング・コンサーン問題に対してどのような理解をし、この研究成果をどのような形で反映していけるのか、こんなことの多分御意向があると思いましたので、別途私の立場で、私見ということで、きょう、8ページにわたる資料を添付、配付させていただきました。したがいまして、残りの時間は、これに則しまして、概略御説明させていただきたいと存じます。

まず、「ゴーイング・コンサーン問題に係る会計および監査上の対応」(私見)ということで述べております。

先ほど申し上げましたように、委員会のメンバーは12名おりまして、その中には、学者の中でもう既にゴーイング・コンサーン問題だけを自分のライフワークのような形で御研究されている先生もおられます。あるいは他のところで研究会をされている方もおられました。したがいまして、幾つかの議論が出、何らかの形で手当てをしなければならないという議論があったのですが、基本的には、実務家の先生方の大勢は、会計の方の形の開示のルールを何か欲しいという議論が非常に強かったように思います。

それから、学者の中には、開示のルール、それから、監査上は未確定事項を含む定義の問題を明確にしてもらいたい。そういうことさえ明確になっているならば、あと、監査報告書で何か追加的な情報を発信したり、あるいは別途補足的な記載事項を入れることはないのではないかというような議論もありました。

それから、当初、これは私、八田でございますが、私が抱いていたのは、このゴーイング・コンサーン問題の歴史を見ますと、アメリカが一番長い歴史を持っているわけですが、御案内のように、我が国もそうですが、例外ないのですが、経済低迷の環境下におき、企業破綻あるいは企業の状況が危ぶまれるという環境が露呈したときに、この問題が非常に重要な問題になってくるということであります。

ということは、基本的には、マーケットをベースに、不特定多数の人々から資金を調達している、いわゆる公開会社における問題が一番問題企業として取り上げられるんであって、同じ株式会社であっても、中小零細の企業の場合には、確かに企業が破綻するという問題は、関係当事者には大きな問題があるかもしれませんが、これが社会問題になる。アメリカの言葉を使いますと、公共の利益に反するような状況にはなり得ないだろう。

パブリックインタレストを守るためのルールが必要だとなると、私は、もっと短絡的に、マーケットを規制している当局、証券取引所あるいは証券業協会、そういったところがいわゆるマーケットの上場継続要件という形のリスク情報の開示の一環として記載さえすれば、そして、実際に会計士監査の場合には、それを踏まえて監査を行っているわけですから、十分ではないかという議論もありましたが、それでは、必ずしもマーケットに縛られない部分での大企業、商法特例法会社の場合の議論もあるのかもしれないということもございまして、それでは、会計の開示規定、あるいは監査基準の方で何かという方向で考えました。これが、まず前提であります。

そこで、きょう、お配りさせていただきました冊子、8ページのものですが、まず「はじめに」ということで、先ほど申し上げましたように、2つのアプローチがある。第2パラグラフ、その1つは、ゴーイング・コンサーン問題を具体的な手続を含む監査人が対応すべき問題として扱うアメリカ型のアプローチ、このように考えます。

もう1つは、既に御案内のように、国際会計基準委員会が公表している会計基準、この枠組みの中、そして、基本的なとらえ方をした上で、先ほど座長の脇田先生も御紹介いただいていますが、まず、経営者の責任というものを前提に、そこでの状況を踏まえて監査人がその経営者の判断規定を評価する、こういう流れ。これは、恐らく私どもの考え方で言いますと、この2つ目のIASC、IFAC型というような感じがしております。

この2つのものがあるだろう。歴史的に見ますと、アメリカの場合に、例えば、場合によっては、例の限定事項といいますか、条件づき、我々はこれをサブジェクト・トゥ・オピニオンといいますけれども、条件づきで、こういう条件はあるけれどもという、私などは、これは逃げの理論だというふうな言い方をしますけれども、そのような言い方をした。

ところが、それに対して、そうではなくて、説明事項として記載することで、あとは適正意見を述べればいいんじゃないかという動きになってくるという動向がございますが、少なくともこちらが我が国の会計基準あるいは監査基準にかかわりを持つ責任主体であると思いますので、そういう状況を踏まえますと、基本的には、私は、この研究会を通じて強く思ったことは、確かに我が国の監査制度あるいは監査基準、あるいは監査研究というのは、非常に多くの部分は、アメリカを追いかけている。

私もそれに近い研究があるわけですけれども、したがって、アメリカ型を受け入れるということに対して、一般的には抵抗がないのかもしれませんが、しかしながら、先ほど御紹介申し上げましたように、世界の動きは、少なくともアメリカは独立独歩、独自の道を歩んでいるけれども、それ以外の例えば同じ英語圏でありましても、カナダ、イギリス、あるいはEU諸国、こういったものはすべてIAS、ISA、国際会計基準、国際監査基準、こちらの方向を受け入れる形、特に会計のルールは、御案内のように、100%国内化はしていないわけですけれども、少なくとも国際マーケットをベースにした場合には、避けて通れないということになると、日本の方向性も、それを度外視して考えることはできないだろう。

つまり、2ページの方にずっと書いておきましたのは、下から3行目、会計監査制度の改訂に当たっては、この国際会計基準、国際監査基準を度外視して考えることは恐らくできないというふうに考えております。

そこで、では、どのような視点でゴーイング・コンサーン問題に取り組んでいくべきなのかというところで、具体的にモデルを2つ提示させていただきました。3ページから現行開示モデルというのと、それから、5ページの国際会計・監査モデル、これは、先ほど申し上げましたように、基本的には、アメリカの考え方、あるいは国際会計基準、国際会計士連盟の考え方というのがあることを念頭に置きながら、実は、もう1つモデルがある。それは、日本型、何もない国のモデルであります。ということで、アメリカ型は、そういうことがありますので、少し世界の動向とは相入れないかな。

ただ、アメリカの場合に、では、会計のルールは全くないかというと、実はそうではなくて、これも研究の途上で、我々研究会の報告で議論したのですが、何回もこの未確定事項の問題、あるいはゴーイング・コンサーンの問題、1960年代の後半から始まりまして、議論されて、いろいろなところで会計の開示ルールは手だてができているということで、今さら会計基準、FASBが取り上げる問題ではないのかということが、どうもアメリカ公認会計士協会の中にあるようである。ただ、それは、個人研究の領域ということで、御紹介申し上げます。

ただ、もう1つは、我々が意を強くしていること、つまり、国際会計基準、国際監査基準の方向にいくであろうということを意を強くしているのは、実は、ことし8月31日、アメリカ公認会計士協会の中におきます、我々は公共監視審査会と訳しますが、パブリック・オーバーサイト・ボードというところが、監査の有効性に関するパネル報告書というものを公表しました。

この紹介も2ページに書いておきましたが、ここでは、このパネルの中では、FASBに対して、国際会計基準が用意しているようなゴーイング・コンサーン問題に対しても、会計の規定を明確に策定すべきであるという勧告提言を行っております。したがって、同じ国においても、立場が違いますと、国際的な動向は無視できないという視点があるようですので、今後、どうなるかわかりませんが、少なくとも1つの間違っていないであろう見方は、国際会計基準、国際会計士連盟型のモデルを模索することがよろしいのではないかということが1つ言えるかと思います。

そこで、一応念のために、何もない場合、どうするのがいいか。それが、いわゆる3ページからの現行開示モデルであります。つまり、ここでは、先に4行だけ読んでおきますが、3ページの2の現行モデルと我々が名前をつけたところでありますが、「財務情報の開示に当って、それがゴーイング・コンサーンに基づいて作成された財務諸表であることや、企業がゴーイング・コンサーンであるかどうかに関する評価が経営者の責任のもとで行われていることについて、経営者による言明は行われていない」つまり、何もしていない。そういったことが社会に何ら発信されていないということであります。

この場合にどうするかということの議論であります。そこで、一応結論から先に申し上げますが、4ページ、こういった状況の中において、とるべき対応として、1つは、まず具体的に監査人がどのようなスタンスをとるべきなのか、それから、ゴーイング・コンサーン問題という場合には、将来の話をするわけですので、いつまでの将来なのかというのが非常に重要な問題であります。

実務家の方たちの御議論、あるいはアメリカでもそうですが、一番問題になるのは、どこまで先のことが読めるだろうか。あるいは逆に言うならば、これまでどういうスタンスで監査とかかわって、その状況を読んできたのか。今期だけ監査に入って、急に過去のことも知らずして先のことが言えるわけないだろうということがあって、期間というのが非常に問題だ。これに関しても、若干ぶれがございます。例えば、端的に、翌事業年度が始まるまで。つまり、向こう1年ということ。いやいや、そうではない、半年ぐらいか。そうではなくて、そういった形式基準で読めるのではなくて、経営者がみずからの経営事業環境をもってして、予測し得る状況が1年半、2年前で読めるならば、そこまで当然折り込むべきじゃないか、こういう議論があるようであります。これは、IFAC型といいますか、国際会計士連盟型であります。

それも踏まえまして、一応対応として、3つの流れを書きました。これだけ先に重要なところですので、読ませていただきます。2-1、ここは会計の手当てが何もないわけですから、「経営者確認書において」――現行の経営者確認書ですが、「財務諸表がゴーイング・コンサーンに基づくものであり、そこでの評価が経営者の責任にもとで行われている旨の表明を求める」ということです。場合によっては、アメリカ型でありますが、監査報告書の例の概要区分、範囲区分のところで、そのように経営者の責任で行われていますよという一文を明示するということで、まずもって、先ほど冒頭の座長の脇田先生からお話もありましたが、経営者の立場をまず明確にする。これが第1点、企業側の責任ということ。

そして、それを踏まえまして、2番目が、今度は期間の問題です。貸借対照表日以後、少なくとも1年以内において、合理的な発生可能性を有する重要な個別的なリスクに関して、経営者に対して財務諸表の注記による開示を求める。これは、政省令などで定める、あるいは市場の要件等で定めれば、行われるかと思います。特に、会計基準という大仰な話をしなくても、手当てができると考えますので、そのような開示を求め、その範囲及び内容は、これは監査人側の対応ということを考えますので、例えば日本公認会計士協会の実務指針等で具体的に規定をする。そして、この情報開示を踏まえて、監査人は意見表明をする。

ここでも、わざわざ財務的と書いてありますが、実は、ゴーイング・コンサーン問題、その前の未確定事項の問題もそうかもしれませんが、これは、一番問題なのは、すべてが会計マターで解明できない場合が多くあるということであります。実は、アメリカにおける問題もそうなのですが、1990年代の後半、我が国において投げかけられた会計監査上の一番の大きな問題というのは、情報といいますか、学問の世界で、これをよく情報監査と実態監査というふうに分け、場合によっては、情報の表示の監査と行為の監査というふうに分ける立場もありますが、実は、私はそれを与する立場ではございません。

それは、確かに真空状態の実験室では分類できるかもしれませんが、実務社会においては、それは無理である。行為があって、初めて情報が発せられるわけであって、情報の背後には、必ず業務活動があるわけで、会計士は、何も机の上の数字だけを見ているわけではないということもございますので、私はそれに与するわけではありませんが、そこで言うところの実態行為、立ち入ってどこまでやるかという問題、これが日本で欠けていたんではないか。アメリカも、それの反省があって、そういった揺り戻しがあるようであります。

そういうふうに考えますと、少なくとも内部統制の有効性を吟味しなければならないというのは、今日監査上も至極当然のことであります。これも突き詰めていくと、では、これは会計マターですかと。そうじゃないという部分が多分にあるわけですが、これをもって監査人が、それを拒絶する環境はない。そのように考えますと、会計マター以外のことにもかかわらなきゃいけないということがあると思います。それが3番目。

そんなことも踏まえまして、特にこれは会計財務というリスクをつけないで、こういった個別リスクに含まれない重要なリスク情報については、監査人が評価を行い、その結果について、特記事項――今ある特記事項とはちょっと違いますが、特別に記載する場所、あるいは新たな記載区分を設けてそれを記載し、程度に応じて、その意見の差し控えなどを行う場合もあるかもしれないというモデルを提示しております。

ただ、これは、先ほど申し上げましたように、会計上の手当てがほとんど皆無の状態、監査人側だけの制度的対応ということを考えますので、若干この段階で、もう既に国際的な足並みにおくれをとっているという環境もございますので、やはり国際会計監査モデル、こちらの方が、21世紀を目途とした考え方かなという気がしております。

それでいきますと、6ページの考え方が提言できるのではないかと思います。3-1、先ほど同じ視点でのすみ分けを説明しているわけですが、経営者が、財務諸表がゴーイング・コンサーンに基づくものであること、その評価が経営者の責任のもとで行われていること、そして、リスク情報はすべて開示されている旨の言明を記載させる。さらに、経営者確認書及び経営者報告書において同様の記載を行うということであります。

それから、2番目のところは、基本的に同じでございます。それから、3番目も、それについては同じ。つまり、違うところは、まずもって、経営者の責任であるということの明示をできるような環境を先に整備してあげるということであります。

そこで、私としては、きょう、このような形で命を受けてまいりましたが、基本的に監査人の対応として、この2つ用意しましたモデル、恐らくこれ以外に、アメリカ型があるのだと思いますが、これは若干度外視いたしまして、このうち、国際会計監査モデルといいますか、一応現時点で、国際社会に通用するであろうと考えられるスタンスをとるならば、どのようにチャートがあって、監査人は対応していくのかということをAとBという形で、流れ図的なものを用意させていただきました。

これは、まず、1つ目の方が、企業にゴーイング・コンサーン問題がない状況を念頭に置いた場合、それから、ゴーイング・コンサーン問題を有するという場合であります。先ほど申し上げましたように、ゴーイング・コンサーン問題が悩ましいところは、未確定事項と全く同じですが、すべて現行の厳格な監査報告書、すなわち、会計情報にターゲットを置いた監査報告書の中で、すべておさまりきらない場合が、ややもしてある。それに対して、監査人がどこまでかかわるか。当然監査人の立場でいきますと、責任問題が生じます。そうしたら、責任が無制限に過大になるということなわけですが、それは、ルールをある程度設けることによって、明確に位置づけることができるのではないか、こんな気がしております。

そこで、基本的には、あと1点、ここでは述べませんでしたが、アメリカの例を見て、非常にうまくできているというのは、先ほど冒頭でも申し上げましたが、会計の基準や監査の基準は、でき上がった段階で陳腐化することが宿命的であります。したがいまして、次のルールを見直す。環境に即して見るためには、時間がかかる。そのときに、アメリカはどのような対応するかといいますと、御承知かと思いますが、アメリカ公認会計士協会の場合には、いわゆる現行の会計基準、一般に認められる会計基準の中で、解明できない、あるいは逆に、その基準に従っているがゆえに、経済活動の実態を正しく映し出さないという場合には、会計基準から離脱することを認めます。

つまり、会計基準には反するけれども、反して処理したことの方が、正しい情報であるという規定をアメリカ公認会計士協会の倫理規則203というところで用意しております。会計の世界では、これを離脱規定とか、逸脱規定というふうに呼んでいるようであります。こういうものをどこか一文で設けることによって、仮に現行、まだ手だてがついていない場合であっても、会計プロフェッションとして、あるいは監査プロフェッションとして行える対応があるのではないか。

なぜ、このことを申し上げるかというと、もう既にどこでも紹介されておりますし、私どもの報告書の我が国の中の分析にもありますが、既に例のなみはや銀行の場合に、ゴーイング・コンサーン問題が特記事項の中に付されたということで、マスコミで取り上げられました。今年に入っては、直接ゴーイング・コンサーン事業継続という言葉を使っていなくても、ほとんどそれに近いような文言での報告書も幾つかあるというふうに報告されております。

これは、いわゆる一般社会から見ると、それは先駆的であり、勇気ある行動だと言われていますが、私はこれは違うと思います。ルールなきところに、ある面では、実務家のフライングではないか。本来であるならば、実務指針に書いていないことをやっているということは、日本公認会計士協会の会則違反ではないか。ちょっと本題とはずれますけれども、そのような理解を持っております。そのときに、逸脱規定をちゃんと持っているんであれば、それは正しく対応できるのではないか、こんなことを考えて、一応時間がまいりましたので、この辺で終わらせていただきます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

後ほど市川参考人からの御報告の後に、まとめて御意見の交換の時間をとっておりますけれども、ただいまの八田参考人の御報告につきまして、若干御確認のことがございましたら、どうぞ御発言ください。

○高山委員

7ページ目のBのb-1のところで、「経営者は、個別リスク情報の開示を行う」というところがあるんですけれども、これは、ただ単に、こういうリスクがありますよというレベルだけということなんでしょうか。それとも、それに対する経営者の対応までを開示させるというふうに理解したらよろしいんでしょうか。

○八田参考人

実は、このリスク情報の開示を行うということに関しましては、既にマザーズ、それから、ナスダック・ジャパンなどで、上場審査基準の中に、既に入っているという先行例がございまして、そこでの考え方をここで理解しております。したがいまして、それに見合ったリスク情報を開示するということですので、そのように御理解いただきたいと思います。

○加藤委員

この6ページの4から、監査人の対応ということで、7ページにかけて、フローチャートが書いてあるんですが、この6ページの書き出しに、「上記の二つのモデルのうち、国際会計・監査モデルに基づいて、企業の状況別のチャートを以下に示す」ということで、7ページのチャートには、ゴーイング・コンサーン問題がない状況の場合と、ある場合と、両方書いてあるんですが、どうも6ページの方を読むと、ゴーイング・コンサーン問題がない状況のことだけ述べているような感じがするんですが、このフローチャートは両方カバーしているように書かれているんですが、その辺をちょっと確認したいんです。

○八田参考人

ちょっともう1回御質問を……。6ページの3-1、3-2、3-3ということですか。

○加藤委員

6ページの4に、「上記の二つのモデルのうち、国際会計・監査モデルに基づいて、企業の状況別のチャートを以下に示す」と書かれていますね。6ページの一番下ですね。それで、このフローチャートを見ると、AとBに分かれていまして、ゴーイング・コンサーン問題がない状況の場合と、ある状況の場合と、2つに分かれていますね。ところが、この3の国際会計・監査モデルの特に6ページの3-1、3-2、3-3を見ると、これは、Aの方だけのようなが気がするんですが、そうではないんですか。

3-1、3-2、3-3というのは、ゴーイング・コンサーン問題がないことも……。

○八田参考人

わかりました。実は、これは、英国型と言ってもいいんですけれども、基本的に、自分たちが会社側が公表する財務諸表、この公表する前提として、ゴーイング・コンサーンでありますよということを会社側の立場で書く。つまり、ありませんよというふうに書いた場合には、すべてその先のモデルは崩れますので、そういうことを言っているわけですから、確かにスタートはあるという前提で、ただ、実際には、ないかもしれないということであります。したがって、チャートではない場合も書きますが、スタートはある場合しかないのではないかと思います。

○加藤委員

ただ、むしろある場合の方が、これからいろいろ何か我々が議論しなきゃいけないんじゃないかと思うので……。

○八田参考人

そうなると思います。ですから、Aの方は、ここで御議論される必要のないところだと思います。

○加藤委員

そうすると、我々が一番知りたい7ページのBのここの御説明とか何か、その辺が文書としては特にないということですか。

○八田参考人

ないです。

あと、それは、私どもの報告書の I の枠組みのところの中側から後半は、ない場合を念頭に置いて書いていますけれども、ここでは触れていません。

○脇田部会長

それでは、まだ御発言があるかと思いますが、後ほど時間をとりますので、また十分八田参考人からも御説明いただき、また委員の皆様方と御質疑をしていただきたいと思います。

それでは、八田参考人、ありがとうございました。

それでは、そろそろ次に移りまして、市川育義参考人に御報告をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○市川参考人

日本公認会計士協会監査基準委員会の委員をしております市川と申します。よろしくお願いいたします。

私の方からは、監査というよりも、むしろゴーイング・コンサーンの開示のあり方というテーマで一応解説をさせていただきたいと思います。

協会の委員会の中でも、いろいろな意見がございます。その中の意見をすべて取りまとめたというよりも、私の個人的な見解ということで御理解いただければというふうに思います。

冒頭、脇田部会長からも御説明がありましたとおり、私どもとしましては、会計監査人の責任ということから考えまして、国際的なルールであるところの経営者の開示責任、それに乗っかったところの会計士の監査責任といったような枠組みが本来あるべきであろうというふうに考えているところでございます。そもそも、ゴーイング・コンサーンの論点、先ほど八田先生からも話がありましたとおり、企業の倒産ということが契機になって議論になっているという認識をしております。この場合、出てくるギャップですね、いわゆる投資家と経営者の間、ないしは監査人と投資家との間のギャップ、これをどう埋めるのかということが重要な論点になってくるのかなというふうに思います。

このゴーイング・コンサーンの論点を制度化するにおきましては、少なくとも投資家にとって過大な期待は与えない。少なくともここまでしかできないんだといったことをはっきり制度として明確にするということがまずもって必要かなというふうに思っております。

例えば、これまでの財務諸表の中で、前期の財務諸表が債務超過の状態を示していたといった場合には、財務諸表それ自体の情報として、投資家に対し、この会社は危ないといったような警告を既に基本財務諸表を通じて発しているというわけです。ところが、その会社が、例えば翌期倒れてしまったといったときに、投資家は、それだけで満足するかと申しますと、それだけでは満足しない。それ以上の情報を求めているというのが根本的な問題なのかなと思います。いわゆる予測情報をある種求めているということが基本的には投資家にとって考えられていることかなと思います。したがって、予測情報の意味でありますけれども、どこまで出せるのかといったこと、この点を議論する必要があるのかなと思います。

また、監査にとりましては、例えば、会計士の監査意見、財政状態、経営成績が適正であるといった意見だけでは足りない、こういった声が投資家にはあるのかなと思います。したがって、例えば予測情報ということで申しますと、継続性の保証をしてほしいといったような期待が投資家サイドにはあるのかなというふうに思います。

ところが、国際的にも、継続性の保証ということまでは求められておりません。確かに会計士である以上は、経営者が判断するところの継続性の評価というものに関しまして、その合理性を判断するということは当然求められます。ところが、判断するということと、イコール保証するということは全く別の話だということ、この点は、今回の制度化に当たっては、十分明記していただきたいというふうに思っているところであります。

そもそも、会計士が会社の継続性を保証するんだということは、投資家の自己責任といったこととなりますと、ある種矛盾することかなと思います。会計士としましては、投資家が自己責任で判断できるような材料を漏れなく開示しているのかといったこと、この点を監査するということで対応すべきではないのかなと思っております。あくまでも企業の継続性等々を判断する最終的な判断者は投資家である。したがって、投資家の判断の材料として必要な情報が開示されているかということを監査人が監査するんだといったような位置づけでとらえるべきであるというふうに思っております。

先ほどの経営者に対するギャップということを申し上げましたけれども、債務超過の状態だけでは足りない。何が必要なのかということでありますけれども、いろいろな情報、リスク情報といったような話もございます。その中でも、私は個人的に思っているのは、いわゆる対処方針といったことですね。具体的に申しますと、経営者が実際現在の会社の状況から考えて、具体的にどういった手を打っているのかといったこと、そういったことを財務諸表を通じて開示すべきというふうに考えているところであります。

債務超過になっている、そういった情報は既に基本財務諸表を通じて開示しているんだ。それだけではなくて、そういった状況を踏まえて、経営者が具体的にどういった手を打っているのかといったこと、こういった情報を開示することによって、投資家と経営者の間のギャップを埋めるといったようなことにつながるのではないのかなというふうに思っているところであります。

したがって、基本的な考え方というふうに申し上げますと、いわゆる経営者としましては、企業の継続性の前提を評価するといったこと、そして、それを踏まえた上で、必要な情報を開示するんだといった責任を有しているという点と、さらに、監査人にとってみますと、そういった経営者の判断の合理性を監査するといったことと、情報が漏れなく開示されているかといったこと、こういったすみ分けと申しましょうか、位置づけをもって、今回のゴーイング・コンサーンにかかわる監査を制度化すべきであるというふうに思っているところでございます。

その点が、私がまとめました1の「基本的な考え方」の前段に対応するところであります。

もう1つポイントがあるのかなというふうに思います。それは、ディスクロージャーと申しましょうか、開示が前提なんだということを申しますと、何も財務諸表だけに限定した開示というような話をする必要はないのかなというふうに思います。後ほど申し上げますが、例えば、対処すべき課題というのが、有価証券報告書に設けられております。既にそういった項目が設けられているわけですから、有価証券報告書全体の開示の中で、どういった対応をとるべきなのかといった包括的な検討をすべきではないのかなというふうに思います。

ただ、財務諸表の中での開示ということも重要な点でありますけれども、それとともに、財務諸表全体のディスクロージャーとしてどうなのかといった論点、こういった検討もあわせて必要だというふうに思っているところであります。

以上2点が、この基本的な考え方で掲げられているところでございます。

今、財務諸表外の情報でといったことになりますと、では、監査はどうなんだという話が当然出てきます。会計士は、財務諸表外の情報については、監査人が対象になっていないから、全く見なくていいのかということになりますけれども、そもそも、先般、審議会の方から公表されました論点整理の中にもありますとおり、財務諸表外の情報におきましても、監査人は非監査情報との整合性について、相応の注意を払う必要があるんだということが言えますから、当然その点は考慮すべきというふうに考えております。

では、財務諸表、そして財務諸表外の情報ということで、ディスクロージャー全体の話ということを申し上げますと、両者の関係ですね。この関係を整理する必要があるというふうに思っております。それが、2つ目の財務諸表と財務諸表外の情報との関係ということになります。

投資家サイドから申し上げますと、いわゆる末期的な事象と申しましょうか、段階において、急にゴーイング・コンサーンの開示があるということは望ましくないというふうに思います。ある程度その前の段階で、一定の段階で財務諸表外の情報を通じて開示すべきといった対応を本来とるべきではないのかなということがこの2つ目の項目で言っているところであります。

当事者に早期にゴーイング・コンサーン情報を提供するためには、まず前もって、財務諸表外の情報として、会社の置かれている状況、そして、それに対応する経営者の対処方針を開示した上で、その後、どうしてもうまくいかないといった状況になったときに、初めて財務諸表の中の開示という形で開示される。こういった整理、関係にあるという形で考えております。

次のページ、2ページ目でありますけれども、では、一体いつから開示すればいいのかということ、これが3つ目の論点、開示開始時点ということになっております。

一番上の箱にありますとおり、倒産過程の例ということで、これは一例でありますけれども、第1段階から第6段階、最終段階まで、こういった段階が考えられるのかなというふうに思っております。例えば、第1段階におきましては、売上が減って、今期減益になったといったような状況、これを想定しております。

第2段階におきましては、ついに赤字に転落してしまったといったような状況を想定しております。

そして、第3段階ですね。赤字の累積額が、これまで過年度獲得した剰余金を上回ってしまった、欠損金になってしまったといったような状況が、第3段階として考えております。

そして、欠損金の金額が、法定準備金を超えるほどの状況になった段階、資本の欠損、資本金を食ってしまっているような段階、これが第4段階として考えられるのかなというふうに思います。

そして、第5段階、欠損金が資本金額を超えてしまったということで、債務超過に陥ったという段階。これが、第5段階ということで、第6段階の最終段階で倒産するということを一応例として示させていただいております。

この場合、真ん中のP/Lの横に、キャッシュフローの状況を示しております。営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、そして、財務活動によるキャッシュフローということで、3段階のキャッシュフローを示している。

まず、第1段階のキャッシュフローの状況でありますけれども、これまでいろいろな状況が考えられますので、プラス・マイナス、いろいろな状況があるだろうということをここでは示させていただいております。

そして、第2段階から、会社は赤字決算に陥ったということになっておりますので、ここは仮定しているんですけれども、営業活動からのキャッシュフローはマイナスに転じているということを一応前提としております。

マイナスになったわけでありますから、当然トータルのキャッシュフローをプラスにするために、例えば投資活動のキャッシュフローを改善するとか、財務活動のキャッシュフローを改善するといったような対処が見られるわけであります。

一定の設備投資を維持していくためには、当然一定の投資額というのは欠かせません。したがって、投資額を例えばプラスにするということであれば、例えば資産を売却するといったようなことが考えられるわけであります。

ところが、将来のキャッシュフロー、将来の営業活動のキャッシュフローをプラスに転じているということで、例えばある事業を興すということで、ここをマイナスにするといったような対応も当然考えられるのかなというふうに思います。この段階では、いろいろな対応が考えられるということで、この中でもプラス・マイナスといったようなことを考えております。

財務活動の方でも、いろいろな展開が考えられるということで、プラス・マイナスで、投資と財務のプラス・マイナス、これはいろいろな対処方針があるということで、第4段階までは、一応プラス・マイナスといったことを仮定しております。

第3、第4、第5となりますと、例えば、財務の方のリストラということを当然考えなければなりません。償還期限を迎えるような借入金について、例えば借りかえができるのか、できないのか。できない場合には、違う銀行等々、融資先を探すといったような対応も当然考えられます。また、1銀行に対して、債務を免除してもらうとか、金利を減免してもらうといったようなリストラも当然考えられるわけであります。

こういったいろいろな展開があるわけで、財務の方は、最後までプラス・マイナスということを前提としておりますけれども、この紹介しました第1段階から第5段階のいずれの段階が適当なのかということをちょっとここで紹介させていただきたいと思います。

まずもって、財務諸表外の情報として開示する時点ということを考えますと、第5段階では、当然遅過ぎるということは、これは明らかだと思います。また、第1段階は、これも早過ぎるかなというのが一般的な理解かなというふうに思います。真ん中というわけではございませんけれども、この真ん中の欠損金に陥った段階という段階では、例えば一番右端の方を見ていただきたいんですけれども、配当可能利益がなくなる。配当できなくなるということで、株主総会に損失処理案を提示するといったような状況が当然想定されるわけです。

こういった行動が行われるということは、株主総会におきまして、無配に陥ったということで、それなりの説明をするということが当然求められるわけでございます。したがって、株主に対して、今後どうするんだといったような対処方針も含めた説明がなされるということを前提とするならば、株主だけじゃなくて、それを一般投資家にも開示すべきではないかということで、この第3段階をもって、財務諸表外のゴーイング・コンサーン情報の開示時点というふうに考えてはどうかなというのが、この下の(1)の話でございます。

この第3段階が絶対かというわけではございませんけれども、一応株主総会において、対株主に対して、対処方針等々を含めた今後の展望を説明されるということがありますので、投資家に対しても説明すべきではないのかということで、こういった提示をさせていただいております。第3段階に該当するということを規則上――先ほど申しました有価証券報告書におきます対処すべき課題の例えば記載上の注意の中で、こういう場合にはちゃんと書くんだということをはっきり明記するという形で対応することが必要なのかなというふうに思います。

このようなことが制度化されますと、例えば第3段階以降のどこかの段階で、今度は、財務諸表本体の中で、ゴーイング・コンサーン情報を開示するというような局面を迎えるわけであります。少なくとも財務諸表にいきなりゴーイング・コンサーン情報が出てくるということが避けられますから、財務諸表外の中で、2期、3期、続けて開示するのかどうかわかりませんけれども、1度開示すれば、その後の経緯等々も含めて、継続的にその内容が開示されますので、ゴーイング・コンサーン情報の制度化という面からしますと、環境整備ということから考えますと、こういった対応が一番ベストなのかなというふうには個人的には思っております。

問題は、第2の財務諸表の中の開示時点ということになりますけれども、これを明確にするということが非常に難しいというふうに思います。結局のところ、経営者が、ここに書いてありますとおり、継続企業を前提に重大な疑念を生じさせる事象または状況が存在したと判断したかどうか、この判断に基づいて、基本的には開示するといったことにならざるを得ないのかなというふうに思います。

例えば、欠損金を計上した第3段階を例示してしまいますと、そうでない場合には書かなくていいんだなという、逆の読み方もされてしまいかねません。そういうこともありますので、逆にこの財務諸表の開示時点ということを議論する場合には、具体的にこの場合には書かなきゃいけないんだという書き方も、逆に危険なのかなという気もいたしているところであります。

ただ、一般的に財務諸表を通じて、例えば赤字決算ないしは債務超過の状況というのは、発信されて、投資家に対してアナウンスされているわけでありますから、投資家は、当然それに対応して、経営者がどういった手を打っているのかということを知りたい。ないしは、将来どうなのかということを考えるわけでありますから、まずもっては、財務諸表外の情報で開示するとしても、経営者の判断で、ある時期におきまして、当然財務諸表本体の中で触れざるを得ないということは出てくるわけであります。

この場合に、幾つかの状況が考えられるんですけれども、3ページを見ていただきたいと思います。これは、SASの例示を引っ張ってきております。ここのマル1からマル4の切り口で、具体的な例示をしておりますけれども、ここに掲げられている情報イコール、ゴーイング・コンサーン情報ということではありません。こういった状況を踏まえて、企業の継続性に重大な疑念があるかどうかということを判断した上で、開示につながるということでございます。

例えば、マル1の財務諸表の悪化ということ、これは、そもそも財務諸表の開示を通じて発信されている情報でありますから、当然投資家も知っている情報ということになります。

表に出ていない情報というのが、このマル2以下の状況ということになります。例えば、マル2財政破綻の兆候ということで、ある借入金の契約、返済ができなかったといった状況でありますとか、配当が払えないといった状況ですね。こういった兆候がある場合には、今後どうなのかといった判断は当然求められることになるということで、こういった例示をしているわけであります。

それ以外に、例えばマル3マル4でありますけれども、問題が生じているということで、内部に生じている問題ということ。例えば、ストライキ等の労働問題が発生しているといったこと、これは、表に出ませんから、こういう問題を契機として、企業の継続性に重大な影響があるのかどうかということも当然判断する必要が出てくるということになります。

また、外部問題の最たるものとして、訴訟問題というのがありますけれども、こういった問題が出てきているといった場合にも、経営者はこれを踏まえて、今後どうなのかということを当然判断しなきゃいけないということになります。したがって、制度としましては、ゴーイング・コンサーン情報を開示する時点、財務諸表において開示する時点を明記することはできないとはいえども、どういった状況なのか、こういった状況の場合には、経営者は判断するといったような一定の状況を必ず例示するということが、少なくとも求められるのかなと思います。

規則上、このような状況、例えば継続企業の前提に関する事項といったような形で例示するといったこと、こういうことを例示することによって、投資家サイドないしは経営者との間でのギャップを埋めるといったような効果も期待できるのかなと思います。こういった例示が全くないという中で考えますと、投資家サイドから過度の期待を求められるということにもつながりかねませんから、こういった状況の場合には、経営者は判断をすることになっているんだということを少なくとも制度としては明記する必要があるというふうに個人的に思っているところでございます。

そして、3ページの下の4番目の論点ということになります。先ほど八田先生からも話がありましたとおり、いつまで評価するのかといったこと。これも、非常に重要な論点ということになります。基本的に、結論から申しますと、財務諸表が年次報告であるといった点を考慮しますと、例えば1年といったようなことが当然出てくるわけであります。1年以上、2年、3年ということではなくて、少なくとも1年なんだといったことは、制度としても、この点、はっきり明記する必要があるというふうに思っております。

そして、4ページの5番目の項目です。開示項目。何を書けばいいのかという論点であります。先ほどから申し上げていますけれども、会社の置かれている状況だけを開示するというだけでは足りない。どういった手を経営者が打っているのかということを投資家に対して説明するといったようなこと、そのことによりまして、投資家が自己責任におきまして投資判断をするんだといったこと、これにつながるのかなというふうに思っております。したがって、下の開示項目ということで、マル1からマル3といった形で例示しておりますけれども、状況を開示するのは当然のこととして、マル2対処方針の記載を含めた開示になるということが必要かなというふうに思います。

状況を説明するといったときに、単に状況だけ列挙するということだけで足りるのかなということなんですけれども、それとともに、あわせてだと思うんですけれども、継続企業の前提に重大な疑念を生じさせる事象または状況なんだ。そういったこともあわせてはっきりと明確に書くというような対応も求められるのかなというふうに思います。だからこそ、開示しているんだということがわかるようにしなければいけないのかなというふうに思います。

マル3のところなんですけれども、ちょっとこれは異質であります。財務諸表が継続企業を前提として作成されている旨、これを書くんだというふうにしておりますけれども、いわゆる清算価値に従った財務諸表ではないといったことも当然あるんです。そういった誤解を招かないようにといった配慮もあるんですけれども、例えば債務超過に陥った会社が実際倒産したときに、債務超過は膨らむといったような状況がかなりあると思います。

現在、会計基準がかなり見直されていますので、狭まってくるかなと思いますけれども、しょせん継続企業を前提とした価値と、清算価値というのは、当然差があるというわけでございます。したがって、当然差があるんだよといったようなニュアンスも含めて、こういった旨を書くといった対応も必要かなというふうに思います。

そして、最後の6番目、その他ということで、他の論点を幾つか紹介させていただきたいと思います。

まずは、中間財務諸表ということです。有価証券報告書の議論だけではなくて、適時開示の観点から、半期報告書を通じて、中間財務諸表が開示されています。この場合に、ゴーイング・コンサーン情報、先ほどの1年といった話も当然含んで考えなきゃいけないんですけれども、この場合は、では、どうするかといったことを当然論点として考えなきゃいけないのかなと思います。基本的には、年度末までといった形の書き方をしていますけれども、逆に、疑念が中間時点で生じた場合にも、それでいいのかといったことがありますので、この点も今後議論する必要があるのかなというふうに思います。

また、2番目の論点、連結財務諸表における取り扱いということであります。結論から申しますと、ここに書いてありますとおり、企業を支配しているのは、あくまでも親会社でありますから、連結財務諸表、個別財務諸表を問わず、提出会社にかかるゴーイング・コンサーン情報といったような考え方をすべきだというふうに思います。個別財務諸表の方ではゴーイング・コンサーン情報は書いてあるけれども、連結では書いていない。ないしは逆といったような運用は絶対避けるべきだなというふうに思っているところでございます。

最後、3番目、商法計算書類ということであります。私ども証取法の監査だけでなくて、商法の監査も行っております。証取法、商法、両方監査しているといった会社の場合だけでなくて、商法の単独の監査といった局面も当然ございます。その場合に、商法の場合には、ゴーイング・コンサーンの監査はしなくていいんだ、開示しなくていいんだといったような運用にならないように、この点御留意していただければと思います。

ただ、商法の場合には、ちょっと気になっているんですけれども、財務諸表外の情報は会計監査人の監査の対象外ということになっておりますけれども、商法の場合には、例えば対処すべき課題というのは、営業報告書の中に書くということになっているんです。その場合には、会計に関する部分ということで、会計士の監査の対象になるのか、ならないのかといったこと、この点、新たな論点になるのかなと思いますので、この点も含めて、検討していただけたらというふうに思っているところでございます。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

市川参考人より、ゴーイング・コンサーンの開示のあり方について御報告をいただきました。

それでは、ただいまお2人の参考人の方々から御報告をいただきました。これを踏まえまして、御意見、御質問をちょうだいいたしたいと思いますけれども、その前に、少し議論を整理させていただきたいと思います。

前回の部会におきまして、未確定事項の意味がなかなか難しいという御議論がございました。宮島先生からも御指摘がございました。これまで未確定事項という用語は、監査のテクニカルタームとして使ってまいりました。また、内藤委員からは、米国ではむしろ不確定な事象という概念に移りつつあるといった御指摘もございました。さらに、加藤委員からは、個別的に偶発損益に関連する事象と、もっと総合的な企業経営に関連する事象があるといった御発言もございました。

いずれにいたしましても、これまで使われてまいりました未確定事項という用語と、ここで議論すべき事象の概念が一致していないという感覚が生じているのではないかと思います。一方、監査基準というルールをつくるという観点からいたしますと、具体的な状況について、共通の理解をしていくことが重要であるという御指摘がございました。

そこで、未確定事項につきましては、一応不確実な事象を一般的に言うこととして、その中で、ゴーイング・コンサーンにかかわる具体的な状況という観点から論点を絞って、開示と監査のあり方を御議論いただいてはどうかというふうに考えております。

そのような観点から、まず、御指名して恐縮でございますけれども、経団連の伊藤委員から、御発言があればちょうだいしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

○伊藤委員

その件に対する意見ですか。そうではなくて、全般的な話としてもよろしいですか。あるいは経団連の意見をこの際披露しろということでもよろしいですか。

経団連では、きょう、ここに関連者3名おりまして、私の横に角田本部長と、それから葛馬専門部会長さんがおりまして、こういう具体的な問題に関しては、葛馬さんを中心に、若手の実務者が集まりまして、いろいろこの問題を討議を先般行っていただきました。そういったことも含めて、詳細について、また葛馬さん、あるいは角田さんから補足説明をお願いしたいと思います。

私としては、現時点において、経団連としての経済法規委員会で取りまとめた総論的になりますけれども、お手元にございますペーパーで御説明をさせていただきたい。それから、必ずしもこれにこだわらないで、私自身の個人的な意見も、後ほどまた、若干御質問させて、あるいは御説明させていただきたい、こういうふうに思っています。

前回の会合で、若杉会長から、ゴーイング・コンサーンに関して経営側の経験からの例示をいただいて、事例を用いながら議論を進めたい、こういうような御発言をいただいたんでございます。それを受けまして、経団連では、先ほど申し上げました実務者のアンケート調査を行うとともに、葛馬さんが部会長を務めておられます会計制度専門部会というのを開催いたしまして、実務者の検討をやる、こういう次第でございます。

残念ながら、御紹介できるようなちょっと適切な事例というものが、今のところ披露しがたいというような状態でございますが、そういうことで、本日は、少しまとめた形になっております。若干抽象的でありますが、多少具体的にかみ砕いて御説明させていただきたい、かように思っております。

まず、監査の信頼性回復の必要性に関して、経営者サイドとしてはどういうふうに考えているかということでありますけれども、会計・監査制度というのは、資本主義におけるインフラであって、国際的に通用する制度整備というのは、資本主義の利用者である企業、ひいては我が国産業の国際競争力強化のために不可欠である。これは当然で、我々も認識いたしております。こういった観点で、経団連としては、いろいろな形で、この会議を含めまして、前向きに取り組んでおりまして、この監査制度の改革に関しても、前向きに努めたい、こういうふうに思っております。

ただ、我々が、年金会計とか、金融商品の時価会計の導入といった点で、過去、皆様方の御協力もいただきまして、ここ数年来、急ピッチで進めてきたのでございますけれども、一部の企業で、経営の破綻を来すとか、監査の不備といったことが原因となって、我が国全体の会計に関する、また監査制度に関する国際的信頼性が大きく揺らいでいるということも事実でございまして、まずもって、そういう点では、我が国の会計監査制度の質の高さについて、国際的な理解を深める必要があるんではないか。そういう点では、今度のIASCの新しい動きだとか、我が国の企業会計のあり方に対しても、経団連としては積極的に対応して努めたい、こういうふうに思っているわけです。

特に、それに関連して、レジェンド問題というのが発生しておりまして、これは、レジェンド問題とゴーイング・コンサーンとが表裏一体のものでは理論的にないと思いますが、現時点においては、一般的にレジェンド問題がとれない理由として、やはり会計基準とこのゴーイング・コンサーンの問題と言われておりますので、会計基準の方は、もう残されている問題というのは限られてきておりますが、もう1つのこの監査の問題についても、ゴーイング・コンサーンだけじゃなくて、監査制度そのものについても、監査制度小委員会等で、御当局の方でいろいろ対応していただいておりますし、今回の監査基準の中でのゴーイング・コンサーン監査というものを何からの形で対応していただいて、レジェンド問題というものを早く我々として解決してほしいというふうに思っております。そういう点では、ぜひこれを日本公認会計士協会の方々はもちろんでございますが、御当局の方にもぜひ御協力を賜りたいという点がまず1点目であります。

2点目には、ゴーイング・コンサーン監査の導入の問題なんですが、このあたりは、多少腰が引けているというふうに思われるかもしれませんけれども、我々自身は、企業の経営に関して、当然のことながら、継続性を持って事業経営を努めるということが、これは経営者の当然の責務でありますので、そのために、我々としては、日本の会計制度自体をベースにして、しかも、日本のコーポレートガバナンスの常任監査役制度というものを踏まえて、事業形態を行って、それに対する会計監査をお願いしているわけです。

そういう点においては、実態面では、ここに書いてございますように、必要な枠組みは一応整備されているというふうに私どもは考えておるわけです。適切な対応も行われているのではないかというふうに判断を実はしているわけです。監査制度小委員会等で、会計監査の整備を、不備なところも多少ありますけれども、そういった整備をきちっと行っていけば、それなりに監査制度が確立されて、監査の質が高まっていくというふうに判断をいたしております。

先ほど来両先生からいろいろお話をいただいて、私も拝聴いたしておりました。いろいろ新しく御指摘して、いいところも大変あるということもよくわかっております。そういう点も取り入れられるべきは取り入れられていいと思いますが、それだけの視点ではなくて、現在行われているものをもう少し基準化するということで、殊さら新たにやらなきゃいけないということがあるんだろうか。今まで何をやっていたのかということにもなるわけです。では、今までそれを見ていなかったのかと。本当に自ら今まで何もやっていませんでしたということを日本の会計制度、監査制度として、世の中に公示する必要はあるのかというのはちょっと疑問ですねという感じをいたしております。我々としては、したがって、殊さら新たな監査手法を導入する必要は余りないのではないかというふうに思っております。

ゴーイング・コンサーン監査の基準ということについて、企業経営は前々から申しておりますが、常にリスクをしょって企業経営をやっているわけで、逆に言えば、リスクを負わないと、リターンが得られないわけで、いかにしてリスクをミニマイズして、企業経営を継続的にやっていくかというのが、経営者の実力であり、経営者の経営者たるゆえんである、こういうふうに思っているわけです。

ただ、その類型や程度というのは、千差万別でありますから、ゴーイング・コンサーンに重大な疑念を生じさせる事項というものを一律に監査基準の上で列挙するということは、それは確かに公認会計士さんのお立場としてはそうだけれども、必ずしもそれでいいのか。したがいまして、米国基準等を参考に一応例示をやっていただくということは大いに結構だと思いますが、それにとどめておいていいんではないかというふうに思います。

問題は、会計士さんが単に項目を決めて、その項目をプラス・マイナス、あるいはマル・バツでチェックしたら、監査が終わるというものではないのではないかと私どもは考えております。つまり、会計士さんというのは、経営者の判断に対して、独立した第三者として、実質的かつ高度な判断を行っていただきたい。大変難しい表現なんですけれども、つまり、公認会計士さんの質に関して言えば、大変的確というか、一級の人物であり、社会的に認知された、いわば高度な資質と判断力を備えている人であると私どもは考え、この前の監査小委員会でも、そういうことが皆さん、納得の上において、責任問題を理解してきたというふうに判断しているわけです。

そういうふうに私ども経営者サイドは監査人に求めている、こういうことであります。したがいまして、経営的な行為もさることながら、経営者の質に対しても、きちっと御判断されていいんじゃないか。先ほど来先生からもお話がございましたが、どういうふうに経営者がその手を奮っているか。やっていることの項目はわかるんですよ。それだけの資質があるのか。

したがいまして、単に1年というような期間をキャッシュフローがいいとか何とかという問題だけではなくて、その後を含めて、経営者が、それでは次の2年目以降の能力はあるのか。つまり、経営的能力が本当にあるのか。会社自体は存続しても、経営者としての資質を欠く経営者がたくさんいて、それが、ある意味において引き金になって、何年か後に倒れているという例が最近もあるわけです。それは、そのときは必ず経営者の資質が問われているわけです。ですから、そういうことに関して、会計監査人というのは、適切な意見を言うべきではないかというふうに思うわけです。

次に、4番目の基準の検討に関する留意点ということでございますが、ゴーイング・コンサーン監査というのは、二重責任の原則に基づいて、企業が財務諸表の注記開示を行うことを前提としております。二重責任の原則というのは、公認会計士さんは、財務諸表の適正性に関する自らの意見を表明する責任を負うということです。会計記録や財務諸表の正確性や誤謬の有無等といったような財務諸表自体は作成者たる経営者が責任を負うという考え方です。したがって、極端に言えば、監査基準と同時に、注記開示のあり方についても、検討を進める必要があるのでないか。

それから、もう1つ、これは先生も御指摘されておられましたけれども、連結子会社の継続能力というのは、基本的に親会社の経営方針にゆだねられることである。したがって、証券取引上は、連結財務諸表を中心にすることを踏まえれば、ゴーイング・コンサーン監査というのは、連結財務諸表を対象として導入する方向で検討を進めるべきだと思います。

それから、ほかの先生もおっしゃっていましたけれども、やはり私は、この監査というのは、資本市場に対するものが重点ですから、上場子会社が重点であるということはよくわかります。そういった方向に進めたらいいんじゃないかと思っています。

既に論点整理に関するコメントで指摘したとおり、諸外国におけるゴーイング・コンサーンに関する監査意見の実例、記載対象企業の顛末、経営者や監査人の責任の実態等の具体例を参考にして検討を進めていただけば、大変ありがたい、こういうふうに思います。

いずれにしましても、企業というのは、こういう監査以外に、格付けとか、あるいはアナリストのレポートとか、いろいろな形で企業の評価は行われておりまして、そういったことを踏まえて、監査というのは経営者の質を問うという観点からやっていただきたい、こう思います。

私の具体例を申して恐縮なんですけれども、ビッグファイブに勤めた会計監査人の代表の方がリタイヤして、有名な銀行の非常勤取締役に入っている人を知っておりますが、それは、その人の資質と申しますか、高度な監査人としての力が評価されて、本来、監査人というのは、そういう人がいっぱい集まって、監査人集団というものを形成していただきたいということをお願いして、もちろん、経営者としての我々も、経営者としての資質を高めなきゃいけないと同時に、監査人の方々も、そういったことを高めていただくとありがたい。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。補足の御意見ございますでしょうか。

○葛馬委員

それでは、今の伊藤さんのお話に続いて、私どもの会計制度専門部会というのが経団連にありまして、私がそこの部会長をやらさせていただいていますけれども、そこでいろいろ議論したところで出てきた意見は、具体的な意見、これも必ずしも一つの結論に到達したというわけではないんですけれども、そこで出た意見なんかを参考にし、私自身の個人的な考えも含めて発言させていただきます。したがって、部会長のおっしゃった最初の未確定事象云々ということについてのお答えには全くならないので、恐縮なんですけれども、別の方にいってしまいますけれども、そちらの方で話させていただきます。

1つは、今、伊藤委員の方からもありましたように、レジェンド問題ですね。これは、皆さん非常に関心が高くて、せっかくこれだけの議論をして、ゴーイング・コンサーン条項を入れた以上、必ずレジェンドは外せるんだよねということを確認してやるようにしないと、これはやったものの、やはりレジェンドは外れないよというんでは、ばかばかしいよねということがありましたので、これまでレジェンドの問題というのは、必ずしも当局のマターではなく、これまでのところは、要するに、会計士とクライアントの問題で、日本の会計士の背後に提携しているビッグファイブがあるという文脈で、レジェンドというのが入れられてきたように理解していますけれども、どこがどういう働きかけをすることによって、レジェンドが外れるのかというのは、現象的には、おっしゃるように、個々の監査法人と、クライアントの問題でもありますけれども、もう少しきちんとした組織的な動きがないと、なかなかこれは外れないんではないのかな。

というのは、理屈としてそれが必要というんではなくて、何かもっと大きな、言ってみれば、政治的な動きがあったような気がしてしようがないんです。現にその会議でも出てきたんですけれども、我々の監査報告書が、ゴーイング・コンサーンを意識した監査手続を経たものではないから、レジェンドがつくんだというようなことなんかは考えられないですよね。要するに、ここにいる会社がいつ倒産するかわからないんで、きちんとしたチェックを受けているのと。そういうことが必要だからレジェンドがついているんだということではおよそないはずですよねという話がありましたので、これは、理屈から言うと、それがゴーイング・コンサーンの監査手続が導入されたからというだけで自動的に外れるものではない。やはりきちんとした働きかけは必要ではないかなということであります。

それと、あと技術的なことでは、監査監査と言うけれども、これは商法監査と証取法監査をどういうふうに意識しているのと。今日配られた冊子にもありますけれども、どういう会社を対象にするのかということが、もう1つきちんと枠組みを決めてもらう必要がありますねという意見がありました。

それから、これは若干の個人的な意見も入るんですけれども、前回、若杉会長の方からも最後にありました具体的な事例をということに関連して、その会議でも出たのは、ゴーイング・コンサーン問題というのは、頭で考えて、あるべき論というのに到達できるような問題ではないよねと。やはりどうしても実例が要るということは、もう10年も言われている。にもかかわらず、いまだにどうもその辺からきちんとした機能的なアプローチで、そういうレポートというのが出てこないのはどうしたことかなという不満が、これはだれがやる仕事かなという不満が出されました。

今日、八田先生のレポートは、非常にコンプリヘンシブなレポートで、私もまだ全部読んでいませんけれども、ちょっと早く来たんで読ませてもらって、なるほどと、いろいろ新しい発見もあったわけです。これでも、八田先生のお話にも、実践と教育というキーワードがありましたし、これをゴーイング・コンサーンというのをライフワークにしているような学者もおられるんだということでしたけれども、実例から、どう機能していくのかという研究の成果をぜひ聞きたいなと。

それも、日本のケースが幾つか整理されて挙がっていますけれども、これは、要するに、そういう特記事項に記載された――つぶれた会社ではなくて、特記事項にゴーイング・コンサーン問題絡みのことを記載されたケースが並べられているわけですけれども、むしろ私は、これは、実益的なやり方としては、倒産してしまった会社で、結果的に必要な監査報告書上の文言がなかった。何が抜けていたのか。

現にアメリカなんかでよくあるように、倒産してしまって、その結果、裁判に訴えられて、負けたケースですね。結果から判断して、事前にこういうことを書いておけば、そういうことにならなかったのにというのは、どういう状況だったのか。どういう兆候があったのかというような、むしろゴーイング・コンサーンに関する記載がなかったがために、倒産してしまって、投資家が多大の損害をこうむって、その結果、経営者ないし監査人が訴訟で負けたケースはどういうことかという実例を並べてみれば、それでは、ゴーイング・コンサーンに関しては、少なくともこういうことは書くべきであるなということがだんだん見えてくるんではないのかなと思います。

日本のケースで言うと、私は、これはゴーイング・コンサーンに関する監査基準問題以前のことが多いんじゃないかと思うんです。だれでもすぐに思い出す某証券の場合には、はっきりと、これは含み損失のあるものを隠していたという虚偽記載の話で、これはゴーイング・コンサーンとか何とか難しいことを言わなくても、要するに、うそをつかない、正しく財務諸表をつくってくださいというレベルの話じゃないかと思うんです。

そういうレベルの話が起こったのに、それを一般化して、要するに、ゴーイング・コンサーンに関する監査基準がないから、日本では会社が倒産して、投資家が損害をこうむったんだということで、不必要にゴーイング・コンサーンに関する監査基準の必要性というのが大げさにされているというんですか、どんどん、どんどん拡大していって、不確実なことを全部リスクを開示しましょうというようなことに、私は不当にこれに関する監査手続が膨らんでしまう懸念を非常に抱いているものなんですけれども、要するに、不確実性というのは、言い出したら切りがない。「不確実性の時代」という本が売れたのはもう何年も前ですけれども、あのときに比べると、今やドッグイヤーとか言って、ずっと不確実性が増しているわけですね。

そういうところで、そういう世の中にあって、不確実性・事象をずっと列挙しようとすると、それこそ時代を描き切らなければならないというような、途方もない話になってしまうんで、できるだけ伊藤さんのぺーパーにもありましたように、限定的な事例を列挙するぐらいにして、それも、本当にそういう実証研究に基づいた事例を列挙するというようなことが有効ではないかなと。そういうアプローチなしには、本問題に対して、有効な結論を得ることは極めて不確実ではないかなという気がいたします。

とりあえず以上です。

○角田委員

お2人のお話で尽きているようでございますけれども、委員限ということでお配りしました伊藤委員のペーパーの中の2項のところで、ゴーイング・コンサーン監査の導入についてとございますが、この一番最後の3行を読まれると、まさに伊藤委員がおっしゃったように、腰が引けているとおっしゃいましたけれども、別にそういうわけではなくて、とにかく実例に基づいてこれが必要なんだということがわかれば、もちろんそれを導入すべきであるということについては、皆さん異論はないんです。

ただ、若杉先生から言われましたように、経済界から実例を出してみろと言われて、確かにアンケート調査もやり、会合もやったんですが、経済界の方から、なかなか具体的な実例は出ないんです。その場でも、実際に監査されている方だと、幾つかそういう例というのは出るんじゃないだろうか。また、諸外国の例を見ましても、この前もお話にございましたが、それほど例が少ないということはよくわかるんですけれども、そうした中でも、参考になるものを探して、そして、一つの具体的な例示を示していただければありがたいということでございます。それに尽きます。

○脇田部会長

ありがとうございました。今御発言いただきましたけれども、ゴーイング・コンサーンという問題は、健全な企業にとりましては、特異なことと思われる点もあるかもしれませんけれども、ある程度具体的でわかりやすい基準でないと、実務でも混乱いたしますし、かえって投資家の方々に過大な期待を与えてしまうということにもなりかねません。

財務諸表がゴーイング・コンサーンを前提として作成されておりますことは、経営者の皆様方も、監査人の方々も御理解いただいていると思います。そういう意味では、ここでゴーイング・コンサーンについて、明示的なものを明らかにし、そして、内外の理解を得られるようにしよう、そういう方向であるということで進めてまいりたいと思っております。

それでは、ただいまの伊藤委員、そして葛馬委員、角田委員の御発言、そして、お2人の参考人の方々の御報告を踏まえまして、しばらく御意見の交換をさせていただきたいというふうに思います。どなたからでも結構でございますので、御発言ください。

○山浦委員

幾つか2人の御発言の中に質問があるんですけれども、まず、八田参考人にお伺いというか、確かめたいというところなんです。八田先生の方で出されました今回のレジュメで、6ページから7ページにかけまして、先ほど加藤委員の方から指摘されたフローチャートがありますけれども、そこで、整理して、ゴーイング・コンサーン問題がない状況、それから、ゴーイング・コンサーン問題を有するという状況、この2つに分かれる。

これについては、当然この前提として、監査人自身がゴーイング・コンサーン問題があるか、ないかについては、経営者とは別個の独自の立場からの評価が必要であるわけで、御存じのように、日本には、そのための具体的な指針が基準にないわけですね。今我々が問題としているところの一つの大きなテーマは、このAかBかというその前に、それがあるかないかということを監査人が判断するその指針がないと、だから、これは、明確にすべきだという、そういう理解を八田先生の方もされているということでよろしいのでしょうか。まずそれを1つ確かめたいと思います。

○八田参考人

基本的にはそのとおりでありまして、実は、その前に、経営者と監査人が事前にキャッチボールをしているということがあります。つまり、監査途上において、それほど大きなゴーイング・コンサーンに結びつくかどうかわからないにしても、リスクを感じたときに、これに対して説明を適宜求めるということの中で、監査人が対応するということですから、今山浦先生が言われたように、全くそのとおりであります。言葉としては表現しておりませんが、そのようなスタンスで書いております。

○山浦委員

その上で、もう1つ確かめたいのは、八田先生の方で、我々が出しました論点整理についての研究会としての御見解あるいは質問という形で寄せられているんですけれども、1つは、先ほどから伊藤委員あるいは経団連の方々からもお話がありました。市川参考人からもあったんですけれども、この問題を証取法の適用会社だけに限定するのか。あるいは商法の監査対象会社も問題にするのか。それについて、この点だけ八田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

○八田参考人

私は、今でもゴーイング・コンサーン問題に関しては、証取レベルでよろしいという個人的な見解を持っております。ただ、これに関しまして、先ほどミューラー先生の例示をお話ししますが、会計基準に折り込むときに、中小会社レベルの会計基準と大会社レベルの会計基準があるのか、ないのか。用意すべきか否かといったときに、ミューラー先生は、今中小でも、あした、大になるかもわからない、そういう説明をされたんです。今未上場でも、あした、上場するかもしれない。そんなことはないんですけれども、そうすると、先を目途としたときに、公開する、あるいは資金をマーケットで調達するということはなきにしもあらずと思いますが、私は、現行は、証取レベルで問題を解決すればよろしいんではないかというスタンスをとっております。ただ、これは、研究会の総意ではありません。

○山浦委員

ありがとうございました。私自身は、もう少し商法レベルまで含めた監査のあり方、枠組みというのを考える時期かなという気もしておりますけれども、これについては、もちろんこちらの方で、また検討したいと思います。

それから、もう1つ、伊藤委員の方から出されましたレジュメがあるんですけれども、そこで、米国基準でいいのではないか。それから、現在の必要な枠組みはほぼそろっているから、もう少し明確化する程度で、この問題については、これから先も十分対応できるのではないか。大体大筋そういう御意見かと思うんですけれども、例えば、先ほど八田参考人の方に確認したような、例えばゴーイング・コンサーンに疑義がある状態にあるかないかということを監査人が独自の立場から評価をする必要がある。そういうことのためのルールが――ルールというよりは、目安がない。各監査法人等には、それなりのマニュアル等があるらしいのですけれども、少なくとも明文化されたものはないので、すべての監査人にこの基準が行き渡っているわけではない。

そういう意味では、国際的な監査基準の今の動向からしても、何らかの形でのそういうチェックポイントというか、それなりの指標的なものは出す必要があると思うんです。このことについて、伊藤委員は、それは必要と考えられるのか。あるいはここで書かれたことは、そこまでは必要ないんじゃないかという御意見なのか。これが1つ。

それから、もう1つは、2ページの基準の検討に関する留意点ということで、ゴーイング・コンサーン監査というのは、二重責任の原則に基づいて企業が財務諸表の注記開示を行う、こういうことでありますので、もう少し具体的な話を限定した形で御質問したいのは、財務諸表の作成責任が経営者にある旨を記載する。そして、しかも、その場合に、この財務諸表は、ゴーイング・コンサーンを前提として作成されている旨、これを記載するということについては、伊藤委員というか、葛馬委員でも構わないんですけれども、どういう御見解をお持ちなのか、その点をお伺いしたいと思います。

○伊藤委員

2つございまして、私は、経団連イコール私ではないんですが、もちろん、経団連としての全体的な総和で出しているので、これは、基本的に経団連ベースとしてこういうことなんですが、多少この場合という形で、個人的な意見を言わせていただければ、私も、何らかのルールがあった方が、今の段階においてはいいんじゃないかと、個人的に思っています。ただ、それが、ここに書いているその日本独特の基準ではだめなわけなんだ。つまり、レジェンドクローズとの絡みから言えば、米国基準等を参考にしながら、より実態を踏まえたものでいいんじゃないか。

ただ、そのために、葛馬さんも言われたように、幾らやっても、それは切りがないですよと。問題は、私が言っているのは、資質の問題だと。経営者の資質と、会計士の資質なんですよということを申し上げたわけです。したがって、その中に、お互いの葛藤もあるかもしれないけれども、二重責任というのは、会計士がその財務諸表の適正性を見るんだということははっきりしているんだから、意見を言いなさいと。つまり、クライアントであるか、ないかというのは、関係ないと、私ははっきりと言っていただきたいということが重要である。

それから、その前提として、さっきの八田先生と同じような見解なんですが、すべての企業にこれは適用する必要はない。社会的責任が非常に大きい企業、つまり、資本市場に上場しているような企業は、これは資本家から金を集めているわけですから、そういう点では、会社規模が大きくても、未上場の会社に関しては、株主というのは自らじゃないか。したがって、それは、異議はないかと。しかし、資本市場から金を集めているものについては、これはディスクローズの責任があるからというふうに私は判断しております。

したがいまして、経営者の質というのは、経営者の実施行為も、当然のことながら、数値に関しては、経営者が責任を負っているわけです。それに対して、監査役が、要するに監査人が、その適正性を監査という観点でやればよろしいんじゃないですかということを行うということにおいて、みずからの人格をかけてやるべきではないかということを申し上げたい。

葛馬さんが言ったように、今までの倒産の例を見ても、全く本当にゴーイング・コンサーンに出くわし、こういうことをやったら、それがわかるかといったら、結局はわからない。つまり、問題は、そういうことがわかって、果たして表示できるんですか、表示しますかという、人格をかけてやってもらわなきゃ困るんですよ。したがって、有限責任、無限責任の問題もいろいろございましたけれども、監査の責任意識をどこに持っていくかということに関連してきますというふうに私はこのあたりは判断いたしております。

そういうことで、先生の言われたのと若干問題がすれ違うなと思います。葛馬先生、補足を、あるいは個人的な御意見を含めてお願いしたいと思っているんです。

○葛馬委員

経団連でやったといっても、これは必ずしも意見を出して、多数決をとっているわけでも何でもない、この中でもいろいろな意見が出ているわけで、常に総意を伝えるというわけにはいかないんで、多分にこれは個人的な意見も入ってくるのはやむを得ないと思うんですけれども、本日配られたこの冊子にもありますように、会計士がきちんと見れば、危ない会社の七、八割は、危ない兆候というのを会計士のエクスパティーズを持ってすれば見通すことができるけれども、実際にそれを書くのは5割ぐらいになってしまうということがあるので、そこのところをある程度は枠組みを、七、八割がわかったらそのことをきちんと七、八割書けるような枠組みを整備してやる必要はあるのではないかなと思います。

例えば、その点で、きょうの新聞にも出ていた会社のケースでも、あれは、一種のまさにゴーイング・コンサーン・マターだと思うんですけれども、そういう意見ないし意見差し控えが出てきたときに、それがどういうふうに処理されるのかということが、いろいろな規制当局の間で、はっきりしていない。どこで上場取り下げになるのかもわからない結果、損失をこうむった投資家が出てきたりしているということも含めまして、ある程度の会計士の方が動きやすい枠組みというのは整備する必要はあろうかと思われますけれども、その場合にも、繰り返していますように、何もかにもやるべきだというふうにはすべきではない。

そこのところは、抑制的にスタートし、八田先生のお話にも、これは非常に感銘を受けた言葉なんですけれども、会計基準というのは、経済実態の後追いで、監査基準はさらにその後追いであるということなんで、それで不十分なところはどんどん突き出していくし、余計なところは省いていくという継続的なインプルーブメントのプロセスを条件にして、できるだけ抑制したところからスタートすべきではないのかなと思います。

○脇田部会長

ただいまの御発言の中に、八田参考人の発表に言及されたことがございましたので、八田参考人、御発言ありますか。

○八田参考人

先ほどアメリカの例えばゴーイング・コンサーンに関してどのような文言が記されていたか、いわゆる機能的なといいますか、実証研究、あるいはどういうのが免責があるか。実は、私は全部調べたわけではありませんが、前回ですか、前々回でしょうか、こちらでも資料として出たと思いますが、アメリカのSEC登録会社600社を事例にとりまして、毎年度AICPA、アメリカ公認会計士協会がいろいろなデータをとっております。

そこにも、未確定事項あるいはゴーイング・コンサーン問題の付された例が出ているのですが、実は、今も御紹介がありましたように、会計士は、恐らく8割以上の確率で、ゴーイング・コンサーンに関して結論を述べることができる。こういう実証研究がもう長い間認知されております。ただ、実際には付さない。付さない理由は、もう少しメンタルなといいますか、ポリティカルな理由があって付さないということであります。

ただ、現実問題として、実は、では、実証の中で、こういう例がゴーイング・コンサーンで付されていましたよという例があるか。あるのですが、実は、本当に倒産したり破綻しているところにはついていない例がほとんどであります。それから、仮につけたからといって、何か訴訟になったときに、つけた後、倒産した。そのときに、訴訟になったときに、それが免責にはならないということが判例の中で出ています。

ただ、アメリカの場合に、誤解していただくと困るんですが、よく訴えられていると、ことごとく会計事務所が負けているといいますが、結審に至る例は、私が知っている限り、数%であります。本訴になって、結審に至るまでのは二、三%しかございません。つまり、ほとんど99%が和解であります。会計事務所が、一応プライドあるいは評判を落とすのが嫌だということと、時間がかかるということで、したがって、それも、SECの審決事例になりますと、連続通牒に出てきますが、訴訟の事例はそんなにないということで、我々の研究が進まない、こういうジレンマがあります。

ただ、いまひとつ、これとは別に、私、心強く思いましたのは、経団連の方々から、経営者の質を問う監査、あるいは先ほど市川先生の方から、対処方針を明らかにするような監査アプローチ、これはまさしく私どもの理解で言いますと、内部統制の問題でありまして、いわゆる統制環境と申しますか、コントロール・エンバイロメント、つまり、経営者の資質、方針、施策、あるいは倫理観、こういったものを継続的に監査人はチェックする。こういう中に当然入っているわけでありまして、どのような姿勢で行っていくか。

したがって、これは、ゴーイング・コンサーン問題だけの問題ではありませんので、こういった奥深い監査をしなければならないというのが今の環境ですから、当然それは念頭に置いて、監査が行われているというふうに御理解いただいてよろしいのかと思います。

ちょっと補足させていただきました。

○山浦委員

何度も重ねて申しわけありません。

1つは、先ほど伊藤委員の方に質問した事項で、もう1つお伺いしていないことは、経営者のゴーイング・コンサーンに関する前提を表明する、しないという、その点について、どういうお考えかということが1つ。

もう1つは、実は、これは、我々の監査基準の策定作業に直接かかわることですけれども、今、ここで検討している監査基準というのは、監査人の行為の基準あるいは判断の基準でありまして、それは、証取法であろうと、商法であろうと、監査は同じなんですよ。ですから、証取法だけに適用される基準というのは、非常にやりにくいというよりは、おかしな基準ではないかと思っております。ですから、制度的な手当てはまた別の話になるかもわかりませんけれども、監査基準としては、証取法であろうと、商法であろうと、監査をするという主体にかかわる基準としてつくるべきじゃないか。これは、私自身の考えです。

○伊藤委員

済みません、ちょっと私は答えられなかったのがありまして、たしか経営者の意見云々の問題については、ちょっと私の具体的例を申し上げますと、当社の場合は、必ず会計士さんから求められまして、経営者として、事実関係について相違ないということを一応出しておりまして、変な話ですけれども、一応私どもは、社長の名前で、それを会計事務所に出す、こういう形でやっておりますので、それは、当然私は行われているというふうに判断をいたしておりましたが、そういうことでよろしいんでしょうか。

○友永委員

今、山浦委員からもお話があったように、対象を何にするかという議論で、経団連と、それから八田先生の方から、証取法対象という御意見が出たんですが、これについて、公認会計士の立場から一言申し上げておきたいんです。それは、最も影響を受けている広い範囲で、利害関係者がいるという意味では、証取法は当然のことなんですが、山浦先生がおっしゃったように、我々の監査をしていく基準、いろいろな意味での行動基準ということで、対象をどこにするかという議論があったと思うんですが、当然に証取法だけでなく、商法も対象になる。

それと同時に、同じ水準の保証を求めるような仕事を依頼されれば、任意監査であろうと、すべて監査基準でやっていくんだというのが私どもの立場だと思うんです。そうした意味で、開示基準が明確にあってほしいと思いますけれども、これは、証取法の開示基準ということでおつくりいただくとして、もし、商法でないという場合であれば、それは、私どもとしては、できる限りつくっていただきたいところではあるんですが、ない場合には、アメリカ流のといいますか、そういった準用したような形で対応するのかなというふうに思っております。

○宮島部会長代理

商法監査あるいは証取法監査という話が出ましたので、法律から物を考えると、少なくとも証取法監査と商法監査とでは、違うべきだろう。そして、それは法律関係が商法監査と証取法監査で、会社と監査人との間の関係が異なる以上は、決して同じ監査の基準であるということは多分ないだろう。しかも、商法という問題で言うと、ただ監査の基準という問題だけじゃなくして、会社法の要するに全体的な基幹構造の問題があるものですから、単に会計監査人が、結局、今までのお話を聞いていると、業務監査をすべてやれと。

しかも、伊藤委員のお話のように、経営者の経営判断についても、それは見ることの資質を問われるということになったときに、果たして今の商法の特例法適用会社みたいなものについても、会計監査人の監査権限というものがあれにとどまるものなのかどうか、そういう根本の問題にかかわってくると思うんです。したがって、ここで、商法まで含めてという話になると、商法学者としては、にわかに賛同できないという、そういう問題がございます。

しかも、アメリカと日本との監査の構造というものは、まるっきり違うわけですから、アメリカで監査人がそういう監査にまで権限が及ぶとしても、日本のときに、商法監査でそれがいくかというと、それは私は無理な理論かなという個人的な印象です。

○藤田委員

私も実務の立場から言いますと、企業の立場から言いますと、企業というのは、こういう財務諸表の作成者であると同時に、ユーザーでもあるわけです。例えば、eコマースの言葉で言えば、ビー・トゥ・ビーの取引であっては、財務諸表のユーザーでもあるわけです。その場合には、商法監査、証取法監査の区別というのは、必要ないといいますか、商法上の監査であっても、ゴーイング・コンサーンは実務上は絶対必要です。証取法だけでいいというのは、これは現実的ではないというふうに私は思います。

○山浦委員

せっかく宮島先生の方からお話があったんで、監査人は、監査報告書を書くわけですね。それで、先ほどの業務監査の云々というのは、最終的には、財務諸表に対する適正意見という形で集約されますので、具体的な中身は、そういう業務領域まで入らないと会計の中身がわからない。そういう意味では、手段として、証拠集めの一環として、そういう業務の中身に入っていくということはあると思うんです。しかし、それは、業務監査権という形で、例えば商法の問題に抵触するとか、そういう理解は、会計監査の側からしますと、どうも合点がいかない。

それから、もう1つは、監査報告書というのは、利用者側からしますと、やはり監査なんです。監査というのは、監査人が自らの責任でもって保証する意見なんですね。意見の水準という点からしますと、証取法であろうと、商法であろうと、公認会計士が監査人として証明をしたということであれば、同じ水準で見られるんです。ましてや、これから先、ずっと証取法であろうと、商法であろうと、いろいろな形で、例えば海外にも、この監査報告書は添付されて、流通しますので、そういったレベルでは、利用者側からしますと、同じ保証水準で意見を形成してもらいたいというのは、当然マーケットからの要望で出てくると思うんです。

もちろん、商法監査の場合に、マーケットアビリティーがある企業と、そうでないところがありますけれども、それとマーケットが対応するときには、監査は同じレベルという理解が、商法学とはまた別個の視点から必要じゃないか。そういう形で、そういう意識で監査基準はつくっていくべきじゃないかと私は考えております。

○辻前企業会計専門官

先ほどの宮島先生の御説明なんですけれども、そういう商法とはまた別だというふうに考えますと、商法の方でも、監査基準をワンセット、整備しないといけないという話になるのかどうかということなんですが、要するに、法務省が監査基準をつくらないといけないのかということなんですが、その辺をちょっとお聞かせいただきたいんです。

○宮島部会長代理

あるいはそういうふうになってくるのかもしれませんね。これだけ状況が、証取法の問題と商法の問題が分離してきちゃうという状況になると、あるいはそういうことが起こるのかもしれない。ただ、今、この2年内に、商法改正が行われているような動向だと、要するに、いわゆる公開会社については、証取法の方で対処しようなんていう流れがあるものですから、そうすると、ますますあるいは分かれるのかもしれませんね。商法監査も、証取法監査も、大企業については1本。中小企業については、商法が今監査基準の方もつくっていくのか、あるいは証取法の監査基準をそのまま商法の監査基準で準用するかどうか知りませんけれども、ただ、少なくとも根拠が違ってくるということは、これから先、あるいはあるのかもしれません。

○八田参考人

済みません、一言だけお願いします。

私は、監査基準は、会計プロフェッションの基準で、複数あるはずがないと思っております。それは、法定監査であれ、任意監査であれ、先ほど山浦先生が言われたように、プロとして行う監査の行動の水準が決めている話であって、問題は、そうではなくて、実質的な処理の判断基準が何なのか。それから、表示の基準が何なのか。私が、証取だけで、ほかは不要だと言っているのではなくて、今現在、火急の問題として求められているのは、証取レベルのゴーイング・コンサーン問題の開示である。

つまり、それは、政令か省令か知りませんが、もしも、そうではなくて、いわゆる企業たるもの、会計処理の段階で、実質基準の中に、このゴーイング・コンサーン問題も折り込むというならば、いわゆる一般に公正妥当と認められる企業会計の基準、この中に折り込むということになります。その中に折り込まれるならば、それは、商法だろうが、証取だろうが、中小だろうが、全部それは一般承認妥当性があるわけですから、適用になることで、自動的に適用になる。私はこういう理解を持っているわけです。

したがって、今回、実質処理ではなくて、表示、開示の部分だけで、取り扱い、そして、それも証取レベルでよろしいのではないか。なぜそういうことを申し上げるかというと、これも1点ありますが、SECの問題で、MD&A、マネジメント・ディスカッション・アンド・アナリシス、これは、経営者観測予測といいますが、言うならば、リスク情報の開示に対して、それに対して監査人が、監査ほど水準は高くないけれども、レビューをかけるということで、予測情報としては、非常に重視されているというような情報であるという理解が、これに対して反した場合には、それなりの制裁が与えられる。

こういった方向づけは、私は、証取法のレベルならば、十分に組み込むことができるし、何もゴーイング・コンサーンという大きな問題ではなくて、常にそういったものを継続的にリスク情報として発信する場を用意することは可能であるということで、このMD&Aの制度は、我が国にとっても参考になる例ではないか。ちょっと申し忘れましたので……。

○多賀谷課長補佐

今の問題につきまして、ちょっと整理させていただきますが、宮島部会長代理がおっしゃった意味は、恐らく投資家の側から見たときの効果ということだと思うんですが、それは、各法制で、効果なり、監査報告書の位置づけなり、法律上の位置づけなり、それは異なっておりますので、当然法目的に沿って異なるものがあり得るということは、そのとおりということで考えております。

ただ、ここで今御議論をいただいているのは、公認会計士という職業専門家として、監査を依頼されたときには、どういう基準でやるのか。ある意味では、商法でも、証取法でもなくても、そういう法律で求められなくても、プロとして監査をやるという、プロとしての監査というのはどういうものかということで御議論いただければよろしいんではないか。

それが、むしろ宮島先生がおっしゃったように、監査基準の側で、商法ではこういうふうにしなさい、あるいは証取法ではこういうふうにしなさいというのは、むしろそれは、僭越でちょっと順番が逆です。それをどうやって法律上位置づけていくのか、監査報告書の効果をどうやって、例えば、虚偽の証明をした場合、どういうふうな責任として取り扱うのかというのは、各法律の目的なり趣旨に沿って判断されるということでございますので、それは、おっしゃるとおり、効果は違う。

ただ、そこと切り離して、今は、プロとして公認会計士さんに監査を依頼したというときには、証取法であれ、商法であれ、任意監査であれ、会社はお金を払って依頼している監査なわけですから、それで求められる水準、あるいはやらなければならないことというのは、1つは、共通のものとして定めておかないと、監査制度自体というのが、その都度その都度違うということでは、そういう疑念もなきにしもあらずなんで、今問題になっているんだと思いますので、そういう観点で、文章化するとき等については、整理をさせて、また、よく御相談をさせていただきたいと考えております。

○伊藤委員

そういうものにも関連するんですが、私の個人的に1委員として、ここには触れられていないんですけれども、日本の監査役制度、これは、欧米に対して、日本独特のコーポレートガバナンスを形成しているんですね。株主総会において、監査役が選任をされて、もちろん、その選任の過程において、CEO的な人から、内示があって、そういう形で選ばれてくるという、実質的に選ばれ、形式的には、もちろん株主総会で選ばれます。

そのあり方についても、もう少しいろいろ検討はされていると思いますけれども、そういう日本の独特のコーポレートガバナンスがあった場合における日本の公認会計士、会計監査人の監査のあり方ということも、これは全然どこにも触れていないんですけれども、必ずしもアメリカ以上に、そういう点では、より制度がきちっとされているんではないか。それにもかかわらず、国際的に認知されておらないというところの問題点というのが、やはり反省すべきではないかというふうに私は思います。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。そろそろ定刻を過ぎるころでございますので、最後の問題は、非常に基本的な問題でございますが、今後、また検討する機会も持ちたいと思っております。

そろそろここで、本日の審議は終了させていただきたいと思います。八田参考人、市川参考人には、貴重な御報告をいただきまして、ありがとうございました。

具体的な監査基準の文書につきましては、これから、まだまだ検討いただくことになるわけでございますけれども、私といたしましては、本日御報告いただきましたところ、また、これまで御議論いただきましたところで、一応ゴーイング・コンサーンに関する枠組みというものは絞られてきたのではないかと思っております。

最後に、次回の部会につきまして御案内を申し上げます。次回は、12月22日の金曜日の午後2時から開催することを予定しております。前回、時間を午後3時半からというふうに御案内申し上げましたけれども、この第二部会が終了しました後、企画調整部会が開催されることになりました。したがいまして、次回の第二部会は、12月22日の金曜日、午後2時からとなりましたので、よろしくお願い申し上げます。

なお、次回の部会におきましては、本日の御議論も踏まえまして、監査報告書の具体的な記載につきまして、持永公認会計士に参考人として御出席いただき、御報告をいただくこととしております。

また、これまで一通り御審議をいただいてまいりました事項につきまして、監査基準という形にすると、どのような形になるか、ひな型のようなものに整理してみたいと考えております。詳細につきましては、後日事務局から御連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。

それでは、本日の部会はこれにて閉会いたします。

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