平成13年1月22日
金融庁

企業会計審議会第13回第二部会議事録について

企業会計審議会第13回第二部会(平成12年12月22日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第13回第二部会議事録

日時:平成12年12月22日(金)午後2時00分~午後4時05分

場所:中央合同庁舎第4号館4階共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより第13回第二部会を開催させていただきます。

本日は、前回申し上げましたように、まず、監査報告書の見直しにつきまして、公認会計士の持永参考人に御報告をいただくことにいたします。

その後に、論点整理や、これまでの御議論を監査基準の形に整理いたしたものを用意いたしましたので、それを御説明いたし、皆様方の御意見をいただきたいと考えております。

それでは、初めに、持永参考人から、監査報告書の見直しにつきまして、全般的な御報告をいただきたいと思います。

それでは、持永参考人、よろしくお願いいたします。

○持永参考人

皆様、こんにちは。公認会計士の持永でございます。着席して進めさせていただきます。

私が、本日、この監査報告書に関して御用意いたしましたのが、資料の1、監査報告書の見直しに関する検討結果として、1つの試案を御提示申し上げております。それから、資料の1の下に、参考資料といたしまして、参考資料の1、これが、アメリカの監査基準による監査報告書のひな型、この解説をしたものが参考資料の1になります。

そして、参考資料の2ですが、これは、日本公認会計士協会の連結財務諸表に対する監査報告書、無限定適正意見だけでございますが、これと、現在御審議いただいております監査基準との関係、それを明らかにしたものが参考資料の2になります。

次に、参考資料の3ですが、これは、日本企業の中で、アニュアルレポートで日本文を翻訳してお出しになっていらっしゃる会社、ソニーさんがございます。このソニーさんのアメリカ基準における監査報告書、それから、それを会社が翻訳された日本文、そして、ソニーさんが日本でお出しになっていらっしゃる有価証券報告書に添付されています証取法ベースの監査報告書、これを事例としてお出ししております。

そして、最後になりますけれども、参考資料の4といたしまして、アメリカの公認会計士協会が出しております事例分析本になります。前回も、八田参考人の方からお話がございましたAccounting Trends&Techniques、この中に監査報告書に係る事例分析もございますので、参考資料の4としておつけしております。

まず、資料の1から御説明申し上げたいと思います。1ページの書き出しでございますが、「監査報告書の見直しが必要とされる背景」、まず、私の肩書の方に、実は、会計制度委員会の副委員長として、ちょっと場違いではないかと思われるかもしれませんが、実は、ことしの夏まで、監査基準委員会の方でお仕事をさせていただいておりました。その仕事の中で、実は、きょうの発表のテーマの根幹にかかわるわけですけれども、不正、誤謬、そして違法行為の監査基準委員会報告の作成に携わってまいりまして、この監査報告書にどのようにというのが、そのとき以来の懸案事項の1つでございました。

ただ、そうは申し上げましても、例えば、不正、誤謬、違法行為、これを監査報告書にどのようにという話だけですと、この監査報告書の全体的な見直しはできなかったわけで、部分的な問題意識であったわけですけれども、今回、皆様の御審議の中、全般的な見直しもされるということで、私の方から御報告させていただく、そういうことでございます。

本文に戻りまして、1番目の「監査報告書の見直しが必要とされる背景」でございますが、これは、皆様がおっしゃられている言葉、そのまま追いかけているとおりでございまして、我々会計士としても、この社会的な期待にどのようにこたえていくかということで考えてきている、悩んできているということでございます。

ただ、背景の中で、1つだけ海外に目を転じましたときに、どうしてもアメリカの背景というのをぜひ御報告しておきたいと思います。実は、アメリカでも、監査報告書の見直し、今から12年前になりますが、これが、アメリカでは40年ぶりに改訂されたと聞いております。ですから、アメリカにおける監査報告書の見直しも、非常に長期の期間が間に入って見直しがされた。ただ、その詳細については、私以上に適任の委員の先生方がいらっしゃいますから、まず、40年ぶりに、87年とか88年に、このアメリカの監査基準、SASと言わせていただきますけれども、この58号によって、監査報告書の内容が全般的に見直しがされております。

ただ、その背景の中で、ぜひ御理解いただきたいのが、このSASの53号からSASの61号、9つの基準書、別名でエクスペクテーション・ギャップ・ステートメントという言われ方をしています。それは何かといいますと、アメリカでも、金融破綻等の問題がございまして、社会的な期待が高まる中で、では、会計士は何を伝えるべきなのかとの議論があって、このSASの53から61、これが別名エクスペクテーション・ギャップ・ステートメント、要は、社会的期待にこたえるために、どのようにすればいいのか、それがアメリカの中で議論になって、その1つとして、このSASの58号が出ている。ですから、この背景、それから中身は、どうしても無視し得ないということで、特にこのアメリカの監査基準の中身というのは検討いたしました。

3行目になりますけれども、その具体的な見直しの内容、4行目にございますように、例えば二重責任の原則を明示するですとか、重要な虚偽記載の発見責任に係る記載をするですとか、そして、監査手続に係る具体的な記載をする。そして、監査の特徴に関する説明をする等、質的量的充実をここで図ったわけでございます。

ただ、これ以外にも、従来アメリカの監査報告書のひな型等を見ますと、2つの区分で監査報告書ができていましたけれども、このSASの58号以降、3つの区分――ただ、この区分に関しては、これもぜひ監査論の先生方の御説明にゆだねたいと思うんですが、従来の範囲区分、意見区分というだけではございませんで、導入区分、それに監査の手続を示す区分、そして、意見区分と、3つの区分になっております。これは、後ほど事例で御説明したいと思います。

このような国際的な調和化を配慮しつつ、十分に検討する必要があるんではないかというのが背景でございます。

2番目になりますが、では、国内に目を転じますと、公認会計士審査会、この平成9年4月24日、会計士監査の充実に向けての提言というのを発表されております。その中で、監査報告書に係る部分を抜粋いたしますと、3行目の後半になりますけれども、監査報告書の情報提供の拡充の項におきまして、まず、国際監査基準等においては、監査報告書における情報提供を充実する観点から、我が国には見られない種々の内容の記載について対応が図られている。

2行飛びまして――飛ばしましてというのは、この問題意識のもとに、では、何が必要かということで、具体的には、(1)二重責任の原則等監査責任範囲についての明確化、(2)としまして、監査手続に関する具体的な記載、(3)内部統制状況に対する評価等について検討を進める必要があるという提言がございます。

また、平成11年の7月2日、会計士監査のあり方についての主要な論点が公表されております。その中では、監査報告書について、企業の実態をどのように反映すべきかという議論がされる中で、コーポレート・ガバナンスの強化という観点等も踏まえて、議論が進められているということになります。これが背景でございます。

一たんこの資料の1を置きまして、では、参考資料に基づきまして、簡単に概略を御説明したいと思います。

まず、皆様が御審議されています監査基準との関係、それから、会計士協会のひな型、これをベースに、日本の監査報告書の現状、これからまず御説明したいと思います。参考資料の2をお手元に開いていただけますでしょうか。

まず、タイトル「監査報告書」とございまして、その下に日付がございます。これは、監査報告準則の一に、作成の日付、そして、署名、押印等求められている中の日付として出てきます。

次に、○○株式会社、代表取締役社長だれだれ殿とございますが、これについては、直接規定しているものはございません。

その下に、監査法人どこどこ、代表社員、関与社員、公認会計士の何がし、これも、監査報告準則の署名、押印を受けまして、監査証明の総理府令第四条に、この署名に関して、監査法人の場合には監査法人の代表者のほか、業務執行社員が自署かつ押印するということになっております。

監査報告書の本文になりますと、「当監査法人は」に始まりまして、対象となる年度、財務諸表の内容について監査を行った。これは、監査の概要の部分で、監査報告準則二の(1)になりますが、監査の対象となった財務諸表の範囲、それを監査報告書に書けというのをこのような具体的な文章にしております。

次のパラグラフになりますと、「この監査に当たって、当監査法人は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠し、通常実施すべき監査手続を実施した」これは、監査報告準則二(2)におきまして、監査基準に準拠して監査が行われた旨、そして、準則の二(3)で、通常実施すべき監査手続が実施されたかどうかということを具体化しております。

次に、「監査の結果、連結財務諸表について会社の採用する会計処理の原則及び手続は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠し、かつ、前連結会計年度と同一の基準に従って継続して適用されており、また、連結財務諸表の表示方法は、『連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則』に定めるところに準拠しているものと認められた」これが、報告準則三の3において、会計基準への準拠性、それから、継続適用の話、そして表示方法の準拠性、これについて具体的に規定しています。

最終的な結論、総合意見と言われるものですが、これが、「よって、当監査法人は、上記の連結財務諸表が○○株式会社及び連結子会社の平成○○年○○月○○日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適正に表示しているものと認める」ということで、財務諸表が企業の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況を適正に表示しているかどうかという監査意見を最終的に述べているということになります。

そして、最後の2行ですが、会社と監査法人、もしくは関与社員との間の特別利害関係、これについて明言している。これは、監査証明の総理府令四条の一二を受けて、こちらの方に明示するということでございます。ですから、今御審議いただいている監査基準とひな型との関係、これを見るだけで、皆様の御審議いただいている内容が、監査報告書にどのようにあとは反映されていくかという大体の関連がおわかりいただけたと思います。

では、この日本の監査報告書を見ていただいて中で、どうも日本の監査報告書が何か足りない。足りないのは何かというのを明らかにするために、参考資料の1をごらんになっていただけますでしょうか。1枚あけていただきまして、2ページ目をあけていただければと思います。私が翻訳してもとても威厳がございませんので、児嶋先生の翻訳を使って確認してまいりたいと思います。

まず、タイトルですが、これに「独立監査人の監査報告書」ということで、インディペンデント、独立というのをここにまずタイトルに出しております。あて名ですけれども、「×会社の株主各位および取締役会へ」ということで、日本の代取だれだれというタイトルとはまた違っております。

本文になりますけれども、「私たちは、この報告書に添付されている」いうことで、まず、会社の財務諸表の年度、そして、財務諸表の内容について明示した上で、3行目になるわけですけれども、これらの財務諸表は同社のマネジメントにその責任がありますと。私たちの責任、会計士の責任というのは、私たちの監査に基づいて、これらの財務諸表について意見を表明することです、これがいわゆる二重責任の原則と言われている文言になります。

次のパラグラフになりますけれども、「私たちは、一般に認められた監査基準に準拠して監査を実施した」監査基準の準拠性です。これらの基準というのは、財務諸表に重要な虚偽記載がないかどうかについて合理的な確証を得るために、私たちが監査を計画し、実施することを要求している。監査は、財務諸表における金額及び開示を裏づける証拠をテスト・ベースにより検証することを含んでいます。監査は、また、財務諸表全体としての表示を検討することに加え、マネジメントによって適用された会計原則及びマネジメントによって行われた会計上の重要な見積もりの評価を含んでおります。私たちは、実施した監査が私たちの意見表明のための合理的な基礎を提供しているものと信じております。

最後、意見でございますが、「私たちの意見では、実施した監査に基づいて、上記財務諸表は、すべての重要な点において、X会社の19×2年および19×1年12月31日現在の財政状態ならびに同日をもって終了する事業年度の経営成績およびキャッシュフローを一般に認められた会計原則に準拠して適正に表示している」という総合意見が同じように付されている。

その下に署名と日付がまいります。

これを参考資料の1ページにお戻りいただきたいんですが、今、説明の中で、数カ所は説明をいたしましたけれども、そこに吹き出しでつけております。まず、タイトル、「Indepedent」というのは、独立の第三者であるということを明示しております。

宛先ですけれども、今申し上げました株主及び取締役会というのが、実例を分析いたしますと8割になります。この分析結果につきましては、参考資料の4につけておりまして、参考資料の4をごらんになっていただきますと、下の表になるわけですが、「ADDRESSEE OF AUDITORS'REPORTS」ということで、最初の「Board of Direktors and Stockholders」、ここで、例えば1998年、469社で、これが、事例600社調べておりますので、約8割の会社がBoard of DirektorsとStockholdersをあて先にしているという事例でございます。

1ページの本文にまいりまして、3行目のところに網かけをしておりますけれども、これが、先ほど申し上げました二重責任の原則を説明していることでございます。

2つ目のパラグラフにまいりまして、まず、2行目の最後の方、「reasonable assurance」、飛びまして、「free of material misstatement」重要な虚偽記載がないかどうかについての合理的な確証であります。

文章の中で、例えば監査手続で1社でやっていますとか、経営者の見積もりの判断をやっていますとか、財務諸表全体の表示の評価をしております、こういったことは日本の監査報告書にないような、個々の監査手続の説明ですとかを具体的に記載しているという内容でございます。

2つ目のパラグラフの最後の方になりますけれども、結局このようにして監査を計画して、実施して、これが意見表明のための合理的な基礎を与えているということを説明しているわけです。

最後の3つ目のパラグラフ、「In our opinion」というところですが、この1行目の最後の方、「ln all material respects」ということで、ここに重要性の原則というのを明示しているということになります。

最後、署名、そして日付でございますが、ここは、会計事務所名で署名しなさい。「manual or printed Auditor's firm」会計事務所ということになっております。そして、日付ですが、現場作業の終了日、「the last day of field work」ということで、日本の作成日とまたこれは異なっているということでございます。

どうしてもこの吹き出しですと読みにくいので、参考資料の3をあけていただきたいんですが、1ページが、これがSECに出されました監査報告書、これはEDGARの方から引っ張ってまいりまして、原文をつけております。

これに対しまして、2ページになりますが、会社が、ちょうどアニュアルレポートについて訳文をつけておりますので、ごらんになっていただきますと、お気づきになられましたとおり、実は、ビッグ5の中で、プライスウォーターハウス・クーパースさんだけひな型が変わっております。実は、書き出しが、「In our opinion」というのが出ておりまして、ビッグ5の中で、プライスウォーターハウス・クーパースさんだけが変わっている。中身は同じような中身で、私どもの意見によれば、添付の連結貸借対照表等の財務諸表の範囲を話した中で、3行目になりますけれども、2000年3月31日現在の財政状態並びに経営成績及びキャッシュフローを米国において一般に公正妥当と認められた会計原則に準拠し、すべての重要な点において適正に表示している。まず最初に、意見を述べている。

6行目以降になりますけれども、ここの部分で、これらの財務諸表というのは、会社の経営者の責任にあるですとか、あとは監査手続の内容とか、今御説明申し上げたようなものを具体的に織り込まれている。ですから、ひな型で、先ほど主に3つの区分で御説明した中の順序を入れかえて、しかも、3つ目と1つ目の内容が若干合わさっているというのが、このソニーさんにおける事例でございます。

同様に、3ページになりますけれども、日本の監査報告書の事例といたしまして、12年6月に出されました証取法ベースのソニーさんの監査報告書、ほとんど先ほど申し上げたひな型に、会社名ですとか、年度ですとか、それが加わっているだけになります。

以上の説明を踏まえまして、資料の1、2ページ以降の御説明を差し上げたいと思います。

2ページの先ほどからのつなぎになりますけれども、公認会計審査会等で議論していただいている中で、我々会計士が監査報告書に対する考え方からしますと、まず、この審議会の場で、何を監査報告書に記載しないといけないのか。必須の要件等をぜひ明確にしていただくという意味で、この監査報告書による情報提供機能の明確化ということで我々は監査報告書を見ております。

具体的な見直しの内容でございますけれども、まず、監査報告書の名あて人、これにつきましては、1行目の最後に書いてありますように、だれに対して監査報告書によって情報提供を行うのかという観点が一番重要かとは思っております。この場合に、国際的な調和化を考え合わせますと、先ほどの例えばアメリカの事例、この株主及び取締役会が8割を占めている現実をどう考えるのか。もしくは、例えば監査役協会の監査報告書のひな型で、名あて人が明示されておりません。このような考え方はどのようにとらえるのかというようなことが、御審議のときの参考になるかと思います。

次に、二重責任の原則に係る記載でございますが、このような二重責任の原則、ディスクロージャーの根幹と考えております。ましてや、今の監査の実務の中で、経営者の確認書の中に、財務諸表の作成責任は経営者にありますというのを私ども会計士は会社の経営者の方からいただいております。ただ、その場合に、反省しないといけませんのは、こういう当たり前、大前提ですというようなことでありながら、一般の財務諸表、それから、監査報告書の利用者に対して、何にも説明しないでいいのか、大前提であっても、監査報告書等に明示するというのは適切ではないかというふうに考えております。

次に、3番目、監査手続に関する具体的記載ということでございます。この監査報告書、特に1ページで終わりますような監査報告書、短文式の監査報告書という言われた方をします。この監査報告書の情報の提供の仕方、これもぜひ監査論の先生方から御意見をいただければと思うんですが、短文式監査報告書にどこまで記載すればいいんだと。逆に、長々と記載して、どういう有用性があるんだ。いろいろな議論はあるようでございます。ですから、この定型的な説明文を加えて、本当に有用なんですかというような議論、これは、アメリカでもされたようでございます。

ただ、そうは言いましても、アメリカの場合も、定型的な文章にする有用性をとったというような結論を踏まえまして、先ほどの参考資料の1のようなひな型が生まれております。この定型的な説明文を書きますという大きい枠組みがあれば、その中で、監査手続に対する具体的な記載、これを監査報告書の利用者に対して伝えることが有用ではないか。先ほど御説明しましたような、下から3行目になりますけれども、例えば財務諸表に重要な虚偽記載がないかどうかについての合理的な保証を得るために、監査が計画されて、実施されている。このようなことは説明すべきではないかというふうに考えております。

(4)番になりますけれども、我々の会計士によります財務諸表監査の目的、これは、世界に目を転じまして、国際監査基準とか、その中身からこの文書は持ってきておりますが、わかりやすい方を言いますと、5行目の最後の方に、公認会計士の監査というのは、財務諸表全体との関連において重要な虚偽記載がないという合理的な保証を得るために監査を計画し、実施するのであるが、監査には固有の限界があります。公認会計士がすべての虚偽記載を発見することができるとは限らないため、絶対的な保証は提供できてはいないのです。

このような監査の本質というのを財務諸表及び監査報告書の利用者に正確に伝える必要があるのではないか。その中で、先ほどのアメリカの監査報告書のひな型の最後の方で御説明申し上げました、監査手続には重要性の原則が適用されているんですよと、これも誤解を招かないために、ぜひ明示すべきではないかというふうに考えております。

次に、3ページになります。正当な理由による会計方針の変更です。これを実は、正当な理由による会計方針の変更というものを全く知らないような方に御説明するのは、非常に大変だというのは身をもって感じております。それは何かと申しますと、正当な理由による会計方針の変更で、結果としてどっちなんですか、適正なんですか、不適正なんですかと、会計士はそれで適正と言ったんですよね、それであれば、では、限定をつけているのは何ですかというのが、世の中の方がわかりにくいとおっしゃる正直なところだと思います。

これについては、実は、平成3年の監査基準等の改訂時において、御議論されたというのをその当時の解説から拝見しております。5行目に書いておりますけれども、最終期な結論においては、公認会計士に対して、会計方針に係る何らかの抑止効果を期待するというふうなことで、その平成3年の当時は、やはり意見区分にこの会計方針の変更について何らかの記載を行わせるということで残されたという解説がされております。

ただ、7行目以降になりますけれども、この監査報告書に期待される機能自体が時代の変遷とともに変化していると理解しておりますし、あと、先ほど申し上げましたけれども、情報提供機能を純化して考えていきますと、正当な理由による会計方針の変更についてのみ意見区分で取り上げるというのはどうなんだ。かえって逆にわかりにくくなっているんではないかというふうに考えております。

最後の行になりますけれども、例えば意見区分の後に、その他の説明――タイトル等は今後の検討課題かもしれませんが、記載することはいかがですかというふうに考えております。

今申し上げましたその他の説明として、(6)に設けております。公認会計士が監査の対象となる財務諸表に監査意見を表明する際に、利用者の理解を深める目的、もしくは、利用者の注意を喚起する目的で、その他の説明を記載するということが有用であると考えております。この具体的な項目、御提示した方がいいと思いまして、SASによる項目を参考に、日本には全く関係のないようなものを外しまして、そこに8つのものを記載しております。

今、(5)で御説明いたしました正当な理由による会計方針の変更。これは、その他の説明として記載すればいいんではないか。

次に、マル2番として、会計基準の改廃。このように数字が変わっているんですよと。

マル3番、他の監査人の監査結果に依拠している場合。

マル4番、財務諸表の作成に当たり、会計基準の適用が特殊な状況である場合。

マル5番、継続企業として存続する能力に対し重大な疑念がある場合。

マル6番、財務諸表が含まれる書類、例えば有価証券報告書の中で、前段の非財務情報がございますけれども、この非財務情報と財務諸表上の情報との間に重要な矛盾があるような場合。

マル7番、偶発事象、後発事象のうち、重要性があると判断された場合。

マル8番、監査人が強調したい事項。

これはバスケット条項的になりますが、こういったことがSASを参考にすれば、その他の説明事項として考えられるのではないかというふうに考えております。

次に、(7)番ですが、公認会計士の独立性ということでございます。先ほどの事例等を踏まえてお話しいたしますと、我が国の今の監査報告書のひな型、最後に2行がついておりました。「特別な利害関係がない」と記載しているわけです。ただ、私の考えでございますが、我々会計士の業務において一番大事なもの、これは独立性だと思います。

公認会計士の監査業務において一番重要な要件である独立性なんですが、これは、経済的よりも、当然精神的な独立性から大事というふうに考えておるわけですけれども、どうも公認会計士法の文言等の特別な利害関係がないというのが、どうしても経済的な要因が色濃いと思っております。それであれば、まず高邁な精神的な独立性こそ忘れるなということであれば、直接的に独立した監査人との文言を用いて表現するのはいかがかというふうにも考えております。

次に、(8)番でございます。「監査報告書の署名および押印」でございます。この監査報告書の署名及び押印につきましては、財務諸表の監査証明に関する総理府令、この中に、例えば監査法人であれば、業務執行社員の自署及び押印ということが求められております。ただ、今、会計士協会の取り組みの中、まず監査基準委員会報告書の第12号の監査の品質管理、もしくは、ピアレビュー制度の整備運用という中で、まず、監査事務所、これが監査の品質管理を行いなさいと。さらに、第一義的な監査の責任は監査事務所ですということがこれだけ整備されてまいりましたので、監査事務所名による署名ということも考えられるのではないか。

ただ、4ページになりますけれども、監査報告書における署名は重要な議論だと思うのですが、この具体的に署名を行う者が担当の公認会計士の個人名なのか、事務所名なのか、これ自体を監査基準で明示する必要があるのですか、そのような議論もあろうかと思います。これは何かと申しますと、責任を追求する公認会計士法の中に別途規定がございますので、こちらに委ねるということも考えられるのかと思います。

最後になりますが、「監査報告書の日付」でございます。前々回のこの審議会の中でもお話が若干ございましたけれども、公認会計士の意見表明に対する責任を明確にするためにも、監査の終了日をもって監査報告書の日付とするのはいかがかというふうに考えております。

現行の中で、若干イレギュラーと思われるケースで御説明いたしますと、まず、証取法に係る監査実務、株主総会によって利益処分案が確定するのを待って有価証券報告書を出して、その有価証券報告書を出す日、その作成日が監査報告書の日付とされております。ですから、通常の上場会社ですと、5月20日前後に商法の監査報告書が出まして、証取法の連結を含めた監査報告書、6月29日とか30日に出ているわけですけれども、タイムリー・ディスクロージャーですとか、この連結財務諸表の枠組みの中で、再考していただく必要性があるのではないかというふうに考えております。

もっとわかりやすい事例で申し上げますと、例えば、公開会社で社長の交代がございました。商法については、例えば平成12年3月期の経営責任があった社長さんあてに、商法の監査報告書は出します。ただ、有価証券報告書の証取法の監査報告書のときには、その作成日現在、その社長さんというのは新任の社長さんになっていますので、その平成12年3月期には、経営に携わっておられなかった新任の社長さんあてに監査報告書のあて名としてする。その方から、経営者の確認書もとるというのが今の実態でございます。

最後、なお書きをつけておりますけれども、監査報告書の日付、これは、監査人の責任や検証期間といった問題に関係がある一方で、監査基準において規定する内容であるかどうかという問題もございますので、これについては議論の余地が残るというふうには考えております。

私からの御報告は以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま持永参考人より御報告をいただきました。

持永参考人の御報告につきまして、御質問あるいは御意見がございましたら、ここで御発言をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。

○渡辺委員

御説明をお聞きしておりまして、一応利用者の立場ということなのですが、報告書の文言がこういうふうに変わると、利用する側から見て、よし、これは今まで以上に立派な信頼できるものが出てくるなと思える部分というのは特になくて、それぞれ論理的にはそういうことだろうという、特に会計士さんのお立場から見れば、こういうふうに書いてある方がいいということを述べられたと思うんですが、実質的な部分だと、要するに、会計方針の変更を、簡単に言うともう少し気楽にできるようになるという変更しかないように私には思えるんです。正しい会計方針でも、限定意見というのはおかしい。これは、形式的な議論としてはそうかもしれませんが、実態的な議論は、どうも余り正しくない会計方針の変更が正当なものとして行われている。

ことしも、石油会社の在庫評価がありましたけれども、為替が動いたりすると、また別にその在庫評価を変えるとか、そんなに減っていないと思うのです。ですから、1つは、そういう個々の事例は、それは私がそう見えるだけで、実際にどうなのかというのはちょっと別ですけれども、そういう安易な会計方針の変更が行われなくなるような具体的な方策というのは何かあるのかどうかということと、それからもう1つ、会計方針の変更を利用者から見て本当に嫌だと思うのは、プロフォーマーが出ないんです。さかのぼって、過去の会計データを修正した数値、これが出ないので、そこで継続性が全くなくなってしまって、わけがわからないという状態になっているんです。ですから、そこのところを何か手当てをする。過去すべての期間にわたって、新しい、例えば減価償却の方法なら方法で組み直すというものが出てくれば、ここでおっしゃるような形式的なものを整えるというのも納得できるのですけれども、そちらの方の実態的な処置というのか、それはどんなふうにお考えなんでしょうか。

○脇田部会長

ただいま渡辺委員から、継続性の変更に関する記載につきまして、2点御指摘と御意見を含めて御発言がございました。持永参考人から御発言いただきたいと思います。

○持永参考人

今の御発言は、まさしくそのとおりと思っていまして、まず、2つ目の話から、プロフォーマーの話を今御意見いただきましたけれども、実はそのとおりと思っていまして、継続性の変更に関しまして、一番確実な抑止力というのはプロフォーマー。日本における商法と証取法の会計情報のディスクロージャーの仕方がございますので、プロフォーマーがいいのかどうかという話がありますけれども、もし、継続性の変更で、どうしてそういう会社が継続性の変更をしたがるのかということを考えれば、例えば、この13年3月期については、新しい会計基準で処理した金額だけが損益計算書に出るようにする。

となりますと、では、リステートと同じように、前の年度について剰余金を変えることによって、新しい会計基準による純然たる会計上の金額の損益計算書にするというのは、ある意味ではプロフォーマー、それからリステート等の考え方、あとは整理しないといけないと思いますけれども、一番の抑止力だとは思っております。商法で単独が難しいというのであれば、例えば連結でできる、できないという話は議論の余地があるかとは思っております。

それから、最初の御質問ですけれども、実は、正当な理由による変更、さまざまな事務所の中で、例えば私どもの事務所で言いますと、監査報告書の意見を付します前に、事務所の意見審査というのを通さないといけません。その中で、継続性の変更の場合は、意見審査のチェック項目になりまして、事務所の審査というのが通っています。ですから、会社と担当する会計士だけで単純に話し合いで終わるというのではなくて、それぞれの事務所で、果たしてこれでいいのかという議論というか、スクリーニングがかかるようにはなっております。

○脇田部会長

ありがとうございました。渡辺委員、引き続き御発言ございますでしょうか。

○渡辺委員

プロフォーマーあるいはリステートがなぜ出ないのかというのは、商法の方と会計の方の間の話になるのかなと思いますが、私がちょっと調べたというか、どういうふうになっているかというと、商法の方は、証取法の会計でどういう計算をしても、これはできるはずです。だから、商法が確定計算とか何とかと言っても、そんなことは気にしないでやってください。会計の方の方は、いえいえ、そうではありません、単一性の原則というのがあって、商法の方が、言ってみれば法律でもあるし、だから、商法の方がやらないとできませんと。

要するに、利用者から見ると、これはたらい回しになっていて、どっちもわからないという感じがありますので、もう少し前向きに、国際会計のスタンダードに合わせるということであれば、プロフォーマーが出ない国というのは余りないような気がしますので、もう少し何とかしていただきたいなというふうに思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。御発言ございますでしょうか。

○林委員

一般的なお話なんですけれども、持永参考人のお話を聞きまして、全体的な印象ですけれども、SASの基準をもとにしてでき上がった監査報告書、要するに、より有用な情報を利用者に提供するという意味では、非常にわかりやすいですね。ですから、1つの模範になるんでしょうが、また同時に、国内では、平成9年の公認会計士審査会の報告あるいは11年ですか、そういったものも、SAS基準の監査情報というのが、ある意味では示唆しているんでしょうが、ですから、全体的には、非常にこれはわかりやすい。持永参考人の示された青写真はわかりやすいということで、評価いたします。ただし、若干もどかしい点が残りますのは、そうであるなら、なぜ、早くこういうふうにできなかったのかなと。

もう1つは、欧州ではどういうふうになっているんでしょうかね。どうもアメリカの基準をそのまま、わかりやすいからいいんでしょうけれども、写すようなことだけでは、どうもある意味でもどかしさが残りますねということで、印象と、若干の御質問ですね。

○持永参考人

前段の話は、私の話ではないと思いますので、後段のお話について、若干御説明いたしますと、まず、アメリカ、SASをベースに今御説明いたしました。ただ、まず、国際監査基準ということで御説明いたしますと、大体SASの内容をそのまま受けてきているというのが国際監査基準でございます。これに対しまして、私が手元に取り寄せましたのは、イギリスですとか、カナダ、オーストラリア、フランス、スペイン、ドイツ、スイス、スウェーデン、マレーシア、日本、あとオランダ、ルクセンブルクですか、わけのわからない国までいろいろございますが、この中で、全般的な話をいたしますと、まず、大きく2つ分けまして、監査報告書のちょうど真ん中の部分と申しますか、具体的な監査手続等については、ヨーロッパの国を含めて、書いていらっしゃる国がほとんどでございます。

さらに、ヨーロッパの国で、若干国際監査基準等の中でも議論されておりますが、例えばフランスですと、経営報告書、これについてレビューした結果についてもコメントされております。ですから、保証を与える範囲がフランス等で広がっている。これはスペインも同等でございます。という形で、監査手続等に関しては、アメリカとヨーロッパ、ほぼ同じような形、それは、監査の対象となる財務諸表の範囲、それから、二重責任の記載、どこの監査基準に準拠したか、合理的な保証を与えているかどうか、そして、具体的な監査手続で、監査作業の十分性、重要性の概念の強調、継続性の取り扱い等、このあたりは、ほとんどアメリカと同じような形になっていると思います。

これに対して、若干アメリカとヨーロッパで違いますのは、まず、タイトル。先ほど独立監査人のと申し上げましたが、アメリカと国際監査基準は、独立監査人のということで、インディペンデントというのを強く入れております。これに対して、オーストラリア等は、文章の表現の中で、独立監査人による監査報告書ということで、文章の中に入れております。これは、スイスも同じでございます。

これに対しまして、その他のイギリスですとかカナダですとかスペイン、ドイツ、ここでは、特段独立性の文言自体は入ってきておりません。

あと、あて先につきましては、取締役会、株主各位という話をいたしましたが、これは、国によって結構ばらけております。例えば、ヨーロッパの中で、イギリスですと、株主各位、取締役会というのは使っておられます。カナダでも、株主各位、取締役会というのが結構使われております。ですから、出し方としまして、株主、それから取締役会、こういった内容――ただ、財務諸表の承認の仕方というのもあって、例えば株主総会あてとか、会長あてとか、さらに、関係者各位、ストックホルダーという形も見えるような書き方、さらには、あて名がないような監査報告書というのもございますが、総じて言えば、株主ですとか、取締役会が意識されているなということでございます。

さらに、監査報告書の最後の方になりますけれども、監査人の署名、これは、アメリカ基準がファーム名だけです。これに対して、国際監査基準は、ファーム名もしくは個人名、もしくは双方ということで、ヨーロッパの国々もある程度考えた書き方になっております。イギリスはファーム名、カナダもファーム名、オーストラリアはファーム名と個人名、フランス等においては、ファーム名と個人名、ドイツもファーム名と個人名、スペインはファーム名、スイスはファーム名と個人名という形で、この署名においては、ヨーロッパの中でも、イギリス、それに対して、フランスとドイツ等は、我々のサーティファイド・パブリック・アカウンタントというよりは、チャータードというわけでもないんですけれども、どうも個人的な色合いが非常に強く出ている国もございます。

ですから、きょう御提示申し上げる試案をお出ししますときに、実は、アメリカ型でいかれますか、もしくはヨーロッパ型でいかれますかというお話を最初にお話しすることも考えておったんですが、全般的な監査報告書の中身ということであれば、ヨーロッパの国々も含めて、まず監査手続については書いて説明はしておる。さらに、微妙なところで、タイトルに、例えば独立監査人というのを記載しますか、署名はどうしましょうかと、そのあたりで若干その国の慣行があらわれるかというふうに分析しております。

○須田委員

その他の説明ということの位置づけなんですが、その他だから、メーンではないんでしょうけれども、そこで、例えばマル5マル6ですね。最初に目についたのがマル6なんですけれども、非財務情報と財務諸表上との情報で、もう重要な矛盾があるとか、あるいはゴーイング・コンサーンについて重大な疑念があるということがあった上で、メーンの意見が済んでいて、何でその下に入っているのか、すごく奇妙な気がするんです。ということは、監査は上はオーケーと言ったって、見るのはここで、こっちが重要なんですか、それがその他ですかと、そういうちょっと感想ですが……。

○持永参考人

今の先生の御質問に対して、わかりやすい事例でお話ししますと、例えば、会社が債務超過、真っ赤っかで、資金繰りも非常に厳しい状況ですとしても。財務諸表自体が適正に表示されておれば、総合意見はあくまでも適正意見です。ただ、そうは言いましても、会社が例えばメーンバンクと今借り入れの折衝をしていますとか、もしくは社債が発行できるかどうか、格付機関等との話を踏まえてやっていますとなりますと、財務諸表自体は適正意見ですが、このゴーイング・コンサーンについて、重大な疑念がありますよということで、その他の説明で、(6)番の2行目の最後の2つ目の方になるんですが、やはり利用者の注意を喚起すべきではないか、こういう目的で、その他の説明というのはあり得るのではないかということでございます。

○須田委員

重要な矛盾があっても、それで通っちゃうんですか。

○持永参考人

なかなか具体例というのは出てこないんですけれども、例えば財務諸表の貸借対照表や損益計算書自体は出ていても、前段の方で、生産計画ですとか、設備投資計画ですとか、いろいろある中で、すぐには貸借対照表とか損益計算書には影響しないんだけれども、どうも違うよねと。会社の宣伝的な文言がどうしても色濃いですよねという場合には、そこについても注意を喚起するような記載というのがあり得るかというふうには考えています。

○須田委員

とにかく、それでも通っちゃうわけですね。通るというか、適正意見になってしまうんですね。

○多賀谷課長補佐

後でまとめのときにもう1度御説明しますが、これは、逆に言いますと、須田委員のおっしゃったその裏返し、適正であっても書くというふうにお考えいただいたらいいと思います。ですから、当然継続企業としての存続能力に対する会社の対応なりの開示が、だれが見てもおかしい、あるいは財務諸表と非財務情報の不整合が財務情報の方がおかしいというようなことは、これは不適正ということで、ここにはもちろん書かれないで、この前の意見表明で、この財務諸表は不適正です、その理由はこういうおかしな点があるからですというふうになるということが前提で、その他の説明があるということになっております。

○脇田部会長

どうもありがとうございました。今課長補佐から補足説明をしていただきました。

○藤田委員

私は、監査役として、監査の中で、もう少しシンボルメントを強める方が効率的な監査になるんじゃないかとかねがね思っているわけです。そこで、監査報告書の名あて人のところで、アメリカの場合は、株主及び取締役会、取締役会の中に、監査委員会というのがあるから、これでいいんだと思うんですが、日本の場合は、商法特例法が適用されるような大会社は、確かに監査役会というのがございますね。連結財務諸表の監査、これについては、監査報告書の名あて人というのは、監査役会というのは出てこない。今現状どうなっているのか、そのあたりと、今後どうあるべきかという御意見とお聞きしたいんです。

○持永参考人

先ほどの参考資料の2で御説明申しましたように、実は、この名あて人については、今、直接規定するもの、条文はございません。これは、会計士協会の担当の弁護士の方にお聞きしたんですけれども、結局、日本の実務慣行ですねということで、我々はある意味ではそれで了解したということでございます。

ですから、逆に言うと、我々会計士協会の方で、名あて人はどうしますという話があるのかもしれませんけれども、ただ、そうは言いましても、名あて人と署名、このあたりはある程度ワンセットに考えるべきではないかというのが一般的な常識に考えられますので、この部会での御審議の中で、ある意味では署名等御審議いただく中で、この名あて人、だれに対して監査報告書を出すんですかという観点をぜひ念頭に置いて御審議いただければというふうに考えております。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それでは、そろそろ次の事項に移らせていただきたいと思います。その後に、まだ御質疑いただく時間はございますので、次に移らせていただきたいと思います。

本日の第2の事項は、監査基準の改訂事項の整理でございます。この点につきましては、資料の2に用意いたしておりますが、事務局から、この点について御説明をさせていただきます。

前回も申し上げましたけれども、論点整理やこの部会で皆様方に御検討いただいてまいりました事項を今後具体的に文章化するためのひな型あるいは枠組みとして、監査基準という形は、全体としてどういう感じになるのかをごらんいただきたいという趣旨で、私の責任で作成したものでございます。

各項目は、現在の監査基準あるいは準則等を参考にし、その体系を踏まえつつも、準則という区分をやめまして、基準としてふさわしい事柄を監査手続の手順などを考慮いたしまして、まとまる事項ごとに項目を付しております。また、項目や内容は、備考の欄にございますように、論点整理から要約して並べたという段階のものでございますので、いまだ固まったものではございません。あくまでも今後の監査基準全体は、このような感じになるのではないかということを私のもとで作成したものでございます。

それでは、この内容につきまして、事務局から説明をさせていただきます。それでは、多賀谷課長補佐、お願いします。

○多賀谷課長補佐

それでは、御説明させていただきます。

時間の制約もございますので、かいつまんで御説明申し上げます。お手元の資料2に沿って御説明をさせていただきます。

ただいま部会長からもお話がございましたとおり、これは、これまでの検討事項を監査基準という形にした場合のひな型という趣旨で作成したものでございます。左の欄に項目を一応つけてございます。それから、内容の欄に盛り込まれる事項という、その趣旨といいましょうか、そういうものを書いてございます。右の欄にございます論点整理やこれまでの御議論の要約というのをその内容に反映させるような形で書いておりますので、逐一は御説明申し上げませんが、その論点整理で出たところ、あるいは現行のままのところもございますが、そこがもとになっているというような趣旨でございます。

なお、用語も含めまして、この文章というのは、こういうことを書いてはどうかということでございますので、固まったものではございません。

初めに、前文でございますけれども、これは、全体の説明ということでございます。最初の1ページ、全体でございます。諸外国でも、会計基準や監査基準で、パラグラフに濃淡をつけるですとか、基準の後ろに付録として背景を記載するというような、いろいろな基準の形がございますけれども、企業会計審議会の意見書は、一般に前文ということで、前に趣旨や説明をつけるという形になっております。前文は、ご覧いただきますように、5つに大きく分けております。

最初の「経緯」ですが、これは、この審議の背景、それから審議経過、それから、今回の改訂の趣旨、こういうものを記述するということでございます。

二の「財務諸表監査の意義」というところは、今回の改訂が、おそらく全面的なものになるであろうということですので、監査基準を理解するために必要な基本的前提を明確にするとの趣旨でございます。

その中に3つございまして、1つには、「監査の意義」として、監査の目的、適正性の意味、監査の限界、会計基準への準拠性や実質的判断、いずれも論点整理の段階で、これらを整理し、明確にすべきであるところでございますが、こういうことを盛り込んではどうか。

それから次に、「監査基準の位置付け」ここは、まだ御議論もございますが、現行の監査基準の前文にもありますとおり、法令によらなくとも、監査人が遵守すべき規範であるということを強調するということでございます。

それから、後ほど御説明いたしますが、準則の区分をなくしたこと。実務指針も含めて、監査規範の体系、全体として体系となることというようなことでございます。それから、監査の質の管理、この必要性について述べてはどうかということでございます。

それから、監査基準の適用範囲ですが、これは、論点整理にも明らかになっておりますが、いわゆるレビューは監査と区別して、ここら辺の区別を明確にしてはどうかということでございます。

次の三の「改訂の基本的考え方」ここは、今回の改訂の基本的方向として、リスク・アプローチ、内部統制の意義と監査上の位置づけ、不正発見に関する姿勢の強化、ゴーイング・コンサーン、企業の継続性の問題でございますが、それから、情報提供機能の充実というのが大きな柱であると考えまして、この考え方をよく説明してはどうかということでございます。

それから、次の四は、改訂の各項目についての説明を考えておりますが、中身は、基準の内容が決まってから、ここがこう変わったというようなことを書くということになろうかと思います。

最後の五は、実施時期や経過措置、公認会計士協会の実務指針への委任などについて述べてはどうかということでございます。

なお、実施時期は、今後の御審議で御検討いただく事項ですので、具体的には何も書いてございません。

ここが前文の全体でございます。

それから、2ページ目、これ以降が監査基準ということでございます。まず、全体の構成でございますが、監査の意義を前文だけでなく、基準でも明確化してはどうかという観点から、第一として「意義」を置き、監査の意義を明確化する、こういう趣旨でございます。そして、「第二 一般基準」、「第三 実施基準」、「第四 報告基準」というふうになっております。現在の監査基準では、この一の部分「意義」というのがないので、1つふえるということでございます。

それから、監査基準全体としてはこのように従来どおり体系的構成を採用しておりますが、論点整理に対しての御意見もございましたので、従来の準則という区別をやめまして、監査基準1本としております。現行基準の「実施基準」「報告基準」の部分をそれぞれこの資料では、各基準の基本原則というふうにしております。ですから、例えば実施基準の基本原則というのが、今の監査基準の実施基準のところ、それ以下のところは準則というふうになっていたということでございます。したがいまして、基本原則を最初に置いて、その後に各論を並べるという形になろうかと思います。

この準則の区別をやめたのは、論点整理に対しての御意見もございましたが、昭和31年の監査基準の前文に、準則の意味といたしまして、その趣旨を申し上げますと、監査慣行の十分確立していない我が国の現状では、抽象的な基準のみでは不十分なので、監査基準の補足及び監査報告書の様式や書き方を準則として設定した、このような趣旨が述べられております。

現在では、監査慣行は、もはや十分定着していると考えられますし、平成3年の監査基準の改訂におきましても、そういう意味から、準則を純化して、多くの部分を実務指針に委ねるという改訂が行われたところです。今回は、さらに基準を整備充実するという改訂の意義がございますので、準則の役割は実務指針に委ねられるという考え方かと思います。

一方、国際的な動向をも踏まえて、基準としてふさわしい重要な事項はより高度な観点から、この監査基準として取り上げるという趣旨で、新たな項目を整理をしてございます。

それでは、監査基準の中身を御説明申し上げます。

第一の「意義」は、これは、今申し上げましたとおり、前文を受けて、財務諸表の信頼性に関する合理的保証の提供といった趣旨を明確にしてはどうかということでございます。

第二の「一般基準」は、これは現在の一般基準と同じ位置づけでございますが、監査基準全般にかかわるという位置づけになっております。内容的には、監査人自体にかかわるものといたしまして、ここに3つ、監査人の能力、監査人の独立性、監査人の注意義務の3点を掲げております。それから、不正、違法行為に対する懐疑的態度という項目、それから、いわゆる品質管理の項目、これには、中身的には、組織的監査、文書化――監査の経過ですとか結果の文書化、それから、監査の受託、これは、新規に監査を受託するときの問題、あるいは審査、監査の経過や結果の審査など、これまで御議論をいただいた項目で、品質の保持、管理に関連する事柄をまとめてといいましょうか、その事柄について、「一般基準」に入れてはどうかということでございます。

それから、最後の守秘義務は、現行と同じでございます。

次に、第三「実施基準」でございますが、「実施基準」の中の基本原則は、申し上げましたとおり、現行の監査基準の中の実施基準と同じく、監査実施に関する基本的全般的事項という意味でございます。この基本原則は、監査上のリスクの評価と重要性、すなわち、リスク・アプローチに基づく監査計画の立案や監査の実施ということ、それから次に、十分かつ適切な監査証拠に基づく意見形成、それから、企業の継続性、すなわちゴーイング・コンサーンの問題、そして、不正、違法行為を発見した場合の追加手続の実施、この4つを基本原則として挙げてございます。

次に、3ページ目でございますが、ここから各論的なところになります。

初めに監査計画でございますが、論点整理において、監査の手順に沿ってとの御趣旨がございますので、まず、監査計画に関する事柄をまとめております。少し細かいようにも見えますが、当部会で、国際的にも、監査における実地の検証作業に入る前段階というんでしょうか、その段階をより重視していく傾向が見られるというような御議論があったことも踏まえまして、特に経営環境や内部統制の理解、経営者とのディスカッションなどを強調しております。

内容的には、論点整理でおおむね記述されている事柄ということになろうかと思います。ここで、情報通信技術等の利用についても、今は重要な事柄ということでございましたので、別立てにして並べてございます。

それから、次の三の内部統制の評価関係でございますが、内部統制については、大変御活発に御議論をいただいたところでございますが、内部統制の有効性の程度を考慮して、適切な監査を行うという趣旨では、これは監査全般に本来かかわることになろうかと思います。内部統制は、内部統制組織の整備のみならず、その運用の状況が非常に重要であるということが、何回か御報告がございましたので、こういった議論も踏まえまして、ここで1つの項目としてまとめております。

備考にもございますが、この内容的には、内部統制についていろいろ書いてございますが、その結果といたしまして、備考に御意見を書いておいたんですが、内部統制が有効であるほどより効率的な監査手続が実施できるんだというような関係も示すという趣旨もございます。

次の四、監査証拠の入手と評価関係、ここも、かなり項目が多いかと思います。いわば監査手続に関する事柄をまとめております。最初の事項は、論点整理での御指摘とその後の審議で、那須委員等からも具体的な御報告がありましたところですが、監査要点として、取引記録の信頼性というものと、費用、収益の期間帰属の適正性、これをなくしまして、そのかわりというんでしょうか、資産・負債―権利・義務とも言われますが、この資産・負債の帰属性というのを監査要点として入れております。これで、つまり、実在性とは別に、帰属しているのかどうかということで、物的なものでなくて、会計的な認識というものをとらえられるのではないかということでございます。

それから、会計上の見積もりというのが、これから非常に重要になってくるという御意見がございましたので、ここは、評価に入るのかもしれませんので、評価というところに括弧で「見積もり」というふうに一応入れております。

また、監査要点に適合した監査手続の選択適用、その次の項目の十分かつ適切な監査証拠の入手ということ、この2つを掲げることで、現在、通常実施すべき監査手続というふうに使っております文言は、ここでは使っておりません。この文言をやめまして、一応この2つの項目で、監査手続の選択適用と、今は「十分」しか書いてないんですが、「十分かつ適切な」監査証拠を入手するということで、より明確にしてはどうかということでございます。

それから、次の3番目の項目で、適用する監査手続の選択や範囲は試査を基礎とすることについて、「原則として、試査とする」というのが現在の監査実施準則でもあるわけでございますが、この試査という用語が非常にあいまいであるという御指摘がございました。これは、サンプリング、抜き取りをするという意味だけで使われることもございますが、これは、先ほどソニーの監査報告書の御説明もございましたが、テストベースという意味で使うということでございます。そういう意味での試査ということ、幅広い意味で使っております。

それから次に、ゴーイング・コンサーンの問題への対処ということでございます。当然そういう兆候を発見した場合には、継続性を前提とした財務諸表の作成の妥当性について検討をしますということでございます。それから、不正、違法行為を発見した場合の対処について、これも、論点整理にございますので、この場合には、しかるべきところに報告をして、それが最終的に財務諸表の重要な虚偽記載に結びつかないかどうか、検討していくということになろうかと思います。

また、その次に、財務諸表に重大な影響を及ぼすおそれのある会計記録以外の情報への注意についてとなっておりますが、これは、いわゆる非監査情報との整合性についてですが、ここも意見がいろいろございました。監査の途上では、広くいろいろな情報をとらえるという方向で、ここに入れております。ただ、後ほど御説明いたしますが、監査報告書では、監査済みの財務諸表と一体の開示書類、例えば有価証券報告書においては、有価証券報告書の中に書かれている財務諸表以外の部分との整合性について記載してはどうかという形で、少し取り扱いが違っております。

最後の経営者の確認書でございますが、これは、監査手続であるという位置づけから、この監査証拠の入手と評価関係という項目に入れております。

次の五「他の監査人の利用等」ですが、現在は、他の監査人の利用については、実施準則にございます。さらに、これと区別して、会計士以外――ここで言っていますのは、監査法人の中にいる人以外という意味でございますが――の専門家や、あるいは会社の内部監査の利用、これについても明確にしてはどうかということでございます。

非常に急いで申し上げていますが、最後に、4ページの「報告基準」でございます。ここも、実施基準と同じく、準則というのはなくしております。その意味から、従来のように、主に監査報告書の形式あるいは書くべき文書そのものというものを示すということよりも、監査報告書における意見表明の判断あるいはその意味という観点から、項目をまとめております。

第1に、基本原則でございますが、基本的には、現行基準がベースとなっておりますけれども、論点整理等を踏まえまして、最初の項目では、「意見表明の基礎関係」ということで、「財務諸表全体に対する意見表明」という趣旨を特に入れております。いわゆる準拠性や継続性といった個別の事柄だけが適正の形式要件であるという感覚を変えようということでございます。

また、次の事項では、監査意見の表明関係となっておりますけれども、「すべての重要な事項において」というところは、これは先ほど持永参考人からも御報告がありましたが、あらゆるレベルで監査上の保証を与えるということは、現実にはできないわけでございますので、当然重要性を勘案するという趣旨でございます。しかし、一方で、また、適正の意味として、「重要な虚偽記載がないことの合理的保証を含む」ということは明確にしていただく。合理的ということで、絶対的ではないわけですが、しかしながら、その範囲では、重要な虚偽記載がないということを監査報告書では表明をしている。あるいはその判断をしていただくということが非常に重要なポイントではないかと考えております。

次の二以下が各論となりますが、二の「監査報告書の基本的事項」のところは、従来、監査報告書の記載事項と申しますか、盛り込まれるべき事柄を、従来は意見ごとに、こういうふうに書きなさいとなっているわけですが、そういうことも含めて、分かれていたところを1つにまとめております。ここでは、先ほどの報告にもありましたように、経営者の財務諸表作成責任と、監査人の意見表明責任、これはいわゆる二重責任というのを監査報告書で明らかにするということも含めて、このように書いてございます。

ただ、まさに今、御議論になりました日付ですとか、あるいは監査人の署名の問題というのは、特に監査基準で明示すべきなのか、監査を実施する法令なり実務慣行によって実務的に考えていくべき事項なのかということがございますので、特に特定はしてございません。

それから、この全体的なこういう事柄を入れてくださいというものを受けまして、次の三「実施した監査の概要」というところでは、いわゆる監査の方法や手続を簡潔に表現するという趣旨でございます。この中でも、重要な虚偽記載がないことの合理的保証を得るために監査が行われたということを明確にするということで、監査人の姿勢及び責任というのをより明らかにしようということでございます。

また、会計処理の選択や見積もりの評価、これは、経営者が財務諸表をつくる際に選択した会計基準あるいはその際の経営者の見積もり、こういうものの評価も監査において検討されたということを入れております。この点につきましては、論点整理でも、現在会計基準の方が非常に見積もりの要素、あるいは予測の要素というものも入ってきたので、強調すべきであるという御意見があったかと思います。

それから次に、四、五、六というのがございますが、それは、いずれも監査意見について掲げてございます。従来のように、意見表明の文章表現を規定するという趣旨ではございません。従来ですと、例えば、会計基準に準拠している場合は準拠していると書きなさい、そういうふうになっていたんですが、そういう趣旨ではございませんで、判断基準といいましょうか、意見の意味というものをここで示すという趣旨でございます。

そういったことから、これまでいわゆる継続性の変更による限定意見ですとか、意見差し控えとか、不適正意見とかということの区別が、書き方はあるんですが、区別の基準というか、どうしてそういうふうになるんだろうという考え方が非常にわかりにくかったということが論点整理でもいろいろ御指摘をされていたかと思います。また、先ほども御議論になりましたが、正当な理由による継続性の変更が限定意見になるといった問題がございます。では、限定つき適正意見とはどういう意味なのかということも含めまして、こういう基本的なことを監査基準で整理してはどうかということが四と五と六の趣旨でございます。

四は、これは適正意見の記載でございますので、これは適正そのものということでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、現行の報告基準のような会計基準あるいは表示の準拠性、それから継続性がある、ない、こういうふうな文章で書きなさいというようなことは考えておりません。

次の五の「監査範囲の限定」というのと、六の「監査意見の限定」との関係でございますけれども、「監査範囲の限定」というのは、監査手続が十分できなかった、あるいは十分かつ適切な監査証拠が得られなかった。そして、そのために監査人の方の結論が得られないというような状況での判断ということでございまして、それで、重大なものであれば、当然結論が得られないのですから、意見を差し控えていただく。そうでなければ、限定つきの適正意見となるということを想定しております。

また、「監査意見の限定」というのは、監査手続はできました。十分かつ適切な監査証拠も得ました。その上で、会計基準の適用や注記に誤りがある、あるいは適切ではない。極端に言えば、虚偽記載がある、こういった状況における判断でございます。もちろん、重大なものであれば、当然全部不適正という意見になるでしょうし、そうでなければ、限定つきの適正意見となるということを想定しております。

そして、この監査意見の限定における会計基準の準拠性の判断として、いわゆる実質判断をしていくということも述べてはどうかということでございます。いわゆる形式的3点セットというのをやめまして、会計基準も適用の状況なり、そういうことも実態に合わせて判断をしていただくということでございます。

このように現段階では、一応意見表明の考え方を項目立てして整理してみたところでございます。具体的には、今後さらに御審議いただきたいと思います。

最後に、先ほども御報告がございました「その他の記載事項」のところでございます。これは、監査意見は適正だけれども、監査報告における情報提供機能の充実という観点から、監査意見ではないという位置づけで監査人が説明してはどうかという事柄でございます。確かに先ほども御質問がありましたように、この関係というのは、なかなかわかりにくいと思います。

そこで、その四、五、六というまず監査意見の分類というのを先に挙げてございます。例えば、不適正意見とか意見差し控えというふうになった場合には、なぜ不適正なのか、なぜ意見差し控えなのかという、その理由は、その意見の一部として記載されます。例えば、五の監査範囲の限定に関する理由というところで書かれまして、ここで言うところのその他の記載事項には記載はされないということになろうかと思います。

こういう趣旨から言いますと、現在この辺りが特記事項というのは非常にあいまいでございまして、意見にかかわっているのか、かかわっていないのかというのがわからないというのがございましたので、ここでは、特記事項という表現はせずに、意見として述べるところの理由と、そうではなくて、適正であるという前提で注意を喚起するなり、説明をするという位置づけで、基本的に考え方を分けております。

具体的事項といたしまして、内容のところにございますが、継続性の変更があった場合、または正当な場合ということですね。あるいは重要な後発事象や偶発事象、それから、ゴーイング・コンサーンの注記、これも、財務諸表は適正であってということが前提です。その開示状況について、監査人が述べていただく。それから、非監査情報との整合性ということでございます。

繰り返しになりますけれども、このゴーイング・コンサーンで申しますと、例えばゴーイング・コンサーンの注記に合理性が認められないということで、不適正意見だという意見がまずあるとすれば、これは監査意見の理由として記載されます。ですから、先ほどの監査報告書のひな型ですと、真ん中の監査意見の表明のところに、かくかくしかじかで不適正である、あるいは意見を差し控える、そういうふうに書かれますので、これは、監査意見でございます。

ここで言うところは、ゴーイング・コンサーンが兆候があっても、それに関する注記、あるいは会社の対応に関する開示、こういうものが合理性があるということで、財務諸表の作成はゴーイング・コンサーンを前提としているということが適正であるという前提で、注意を喚起するという位置づけでございます。したがいまして、ここに書いてあるということは、監査人としては、一応継続企業として財務諸表を認めたということになろうかと思います。

なお、先ほど少し触れましたが、監査済み財務諸表と非監査情報との整合性の範囲については、これも御議論があったところでございますが、ここでは、監査された財務諸表と一体となって開示されている書類における整合性という趣旨で書いてございます。すなわち、監査を実施している過程においては、これは実施基準のところで、会計情報以外の種々の情報にも十分目を配りなさいというふうにしております。

一方で、監査報告書の上では、監査報告書が含まれている開示書類における記載事項を超えて、監査人が独自にどこか別のところで会社が出した情報を、こんなところにこんな情報があるというようなことを書くというのは、ちょっと無理であるというようなことで、監査人として注意を喚起する範囲というのは、そこに書かれているものの範囲である。ただ、そこに至る過程の監査では、もう十分広く注意をしてくださいというふうな整理になってございます。

また、他の監査人の監査結果を利用した場合というのが最後に入っているんですが、これは、むしろ監査を受けている企業の問題ではなくて、監査人独自の問題でございます。

それから、備考の2番目なんですが、例えば、米国でも、非常にまれなケースということで、特定の会計基準の適用において、それと異なる処理をした方が妥当という判断があった場合、こういう場合など、どう考えるのか。少しまれなケースだということでとらえられておりますので、備考の方に入れております。このほか、どのような事柄が考えられるかということがございます。

それから、備考の最後にございますが、外形的独立性の記載なんですが、これは、現在、公認会計士法あるいは監査証明省令で記載事項となっておりますので、監査基準の文脈としての必要かどうかということで、特に必要はないのかもしれないということで書いてございません。ただ、実際の監査報告書には、法令の定めがございますので、利害関係がない旨の記載が――もちろん、利害関係があったら法律上監査はできないわけですが、そういう記載がされることになっております。現段階では、一応このような事柄としておりますが、これ以外にもあるかどうかということで、今後御審議をいただければと思います。

以上、大変かいつまんだ御説明でございましたが、以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それでは、ただいま御説明を申し上げました監査基準改訂事項の整理につきまして、御意見をちょうだいいたしたいと思います。

なお、先ほど申し上げましたように、本日は、全体を見ていただく。監査基準として、このような形になるのではないかという全体を見ていただくことを主眼としております。したがいまして、全体としての構成あるいは項目、あるいは文章をつくっていく上でのこのような点を注意すべきではないかとか、こうすべきではないかという御要望、そういったような観点から御意見をいただければと思っております。

まず、今回の改訂事項で一番大きいことは構成でございまして、我が国で監査基準が制定されまして以来、ずっと基準、そして準則、途中で実施準則、報告準則がふえるといったような形もございましたけれども、昭和31年以来は、こういう構成をとっております。こういった長い歴史がございますけれども、今回は、その準則と基準を一体化いたしまして構成をいたしております。この点あたりからの御意見を伺うことができれば幸いでございます。

それでは、どうぞ御発言くださいますように。

○伊藤委員

大変よくできておると。全般的に結論を申し上げますと、結構ではないかと私は思うわけです。ただ、ここでいつも言っている勝手な意見を申し上げて恐縮なんでございますけれども、どこに入るかとは申し上げられませんけれども、今回の監査基準の改訂の1つの理由として、産業界、財界が考えていましたのは、レジェンド・クローズがついたので、これを世に出したときに、そのあたりについての理解が十分得られるであろうかという観点についての事務局のお見通しというか、非常に難しいところですけれども、聞かせていただきたいのが1点です。

2番目は、私は、これは中地先生がいらっしゃるので、むしろ御意見を拝聴しなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、経営者として、今非常に悩んでおりますことは、世の中の社会的通念が変わってきておる。つまり、企業のゴーイング・コンサーンというのは、もちろん会計上適正意見をいただくということもさることながら、世の中の通念上、倫理性が非常に求められてきておるわけです。したがって、幾つかの会社で、いろいろな事件がことし起こったわけでございますから、20世紀最後にいろいろな問題が起こってきた。

それは、会計上は、恐らくみんな立派な会社は適正だと。しかし、そういうことが次のゴーイング・コンサーンの企業としては許されなくなる存続性が出てきているわけですね。そういう企業は、大企業であっても、世界的な企業と合併されてしまわざるを得ないとか、そういうような問題は、監査をしている過程において、何となくわかってくるんではないかということがなかったかどうかなんですね。

そういうのは、あるいはまた、ある会社について言えば、例えば税務上の使途不明金が非常に多いとか、それから、いわば重加算税が課せられた事実があるとか、それは会計上は関係ないから、これは適正だというふうに、会計というのは全く会計上の数字の適正だけだということで、その他の記載事項に関連してくると思う。

先ほど多賀谷さんが、苦渋のお気持ちで言われたのかもしれませんけれども、外形的独立性の有無は法令云々といろいろ言われましたけれども、我々経営者というのは、経済的な、あるいは事業採算的経済的リスクは、これは当然のことながら、我々はかけてあるわけですが、社会的通念上の変化はいろいろ踏まえて、倫理性を我々は曲げるわけにはいかない。これは、経営者としての信託の問題であり、会社の存続性によって極めて重要なものだ。それだけは、絶えず我々経営者はチェックしているんです。意識として、絶えず考えている。そこが極めて重要なんですよ。

そういうのは、せっかくこの21世紀を迎えて、新しい会計基準をつくるという点において、何らかの形で、どこかの言葉に、前文でもいいから、格調高く謳いませんか。そして、またそういうのも踏まえて、監査を行うという会計監査人の独立性と先ほどおっしゃったけれども、日本の監査人は独立性があり、そういう非常に品位の高いことをやっているんだということを明確にうたい、単なるアメリカサイドが言っているレジェンド・クローズの問題というものを、そういうものもあるかもしれないけれども、日本の会計監査は違うんだということが言えないか。

以上、大変勝手な言い分でございますが、全般的には結構でございますけれども、どこかで、そういうことが考慮されるような文面があれば、大変ありがたい。以上でございます。これは全く個人的な意見で、経団連と打ち合わせしたわけではありません。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま御発言の中に、中地先生にお話がございましたので、中地先生からどうぞ御発言いただければありがたいです。

○中地委員

その1、2の1をちょっと先にお伺いします。

○多賀谷課長補佐

レジェンド・クローズの問題は、いろいろ私が伺っている限りは、各監査法人での対応も、かなりいろいろなパターンがあるということで、我々の方からどうこうというのは、ちょっと立場ではないというふうに考えております。ただ、この監査基準の改訂におきまして、前文で、そういう背景ですとか、あるいは日本がそういうことを含めて、国際的な監査レベルというものを目指して改訂をしているというような皆様の御意見に沿って記述してはと思います。

○脇田部会長

その点は、私もこの部会自身の最初の問題提起のところにございましたので、十分意識しております。

それでは、よろしければ、中地先生、よろしくお願いいたします。

○中地委員

せっかくこの第二部会に参加させていただきながら、別のところで忙しくて、随分欠席して申しわけありません。幸い、年の暮れ、最後のときに時間ができたので、出席いたしましたけれども、皆さん方の精力的な審議で、いい論点整理ができたことに対して、まずお礼と感謝の言葉を述べたいと思います。

それから、今度は、伊藤委員の方からの突然私に指名されちゃったものだから、これはまごまごしていますけれども、私の個人的な考え方で、あるいは伊藤さんの御質問のポイントに私が必ずしもお答えできるどうか知りませんけれども、一応はビジネスの立場から、今の時代に合った倫理観があるから、だから、その観点からビジネスをやって、それをフェアに財務諸表を作成して、そのときに、日本の公認会計士、監査人が、国際的に見ても、独立性があって、そして、監査手続も十分に国際的に通用するものであって、そして、監査報告書もそのように国際的に遜色ないのができたというような方向で走りさえすれば、多分レジェンダ問題も消えてなくなるだろう、そういう伊藤さんの御意見で、私はそう思うんだけれども、一体公認会計士として、中地、おまえ、どうするんだという御質問じゃないかと思うんですが、いかがですか。

おっしゃるとおりで、まさに監査基準というのは、前から非常にすばらしいものができているんだけれども、今回さらに、時代の変化に合わせて、今、改訂事項の整理にあるように、現時点で望ましい形へと直していっておられると思うんです。まだ整理の段階なんだけれども、実際に、基準としてできるのは、まだあと何日かかかるんでしょうけれども、それができたときには、私たちとしては、必ずこれが外国語に翻訳してもいいのだと。その次は、今度はボールを投げられたのは、実務家の我々しがない会計士が一生懸命その基準のもとに実行できるかどうかということにかかると思うんです。

ですから、独立性の関係、それからさらに、個々の会計士、それから、グループとしての監査グループが十分に基準に照らしても後ろめたくないような独立性に合った形、そして、手続も基準に合って十分にやるということであれば、それから、独立性というのは、個人のこともそうですけれども、監査というのは1人でやるものじゃありませんから、監査法人のステータスといいますか、それが国際的な常識に照らして、そこに甘えの社会のなあなあはないですよ、しかし、うっかりそれを行き過ぎると、日本人同士で、あいつはしょうがないやつだな、冷た過ぎるぞという批判をこうむるかもしれませんけれども、そこは、職業の上の独立性というので、一歩一歩前進していきたいと思います。

それから、公認会計士制度そのものについては、2年前に、ちょうど50周年のときに、事項改革、制度改革、社会貢献をやったんですけれども、事項改革というのは、おっしゃるように、倫理規定も改訂いたしまして、果たして個人はどうするのか、拳拳服膺しろという形になっていますけれども、その次の制度の問題のときに、今、いろいろな面で反省しながら直していこうとするプロセスにありますので、伊藤さんのような財界にあって非常に理解力のある方々の御意見を承りながら直していきたいと思っていますけれども、ただ、制度制度というときに、会計士だけじゃありませんで、関連する企業もあります。それから、行政の側にいらっしゃる方々の非常に理解のある形で、昔流で言えば、御指導いただきたい。

最近、そればかり言うと、へ理屈だ、卑屈になっているんじゃないよと言われそうですから、いろいろとお力をかりながら、御一緒に日本の制度を改善していきたい、そう願っておりますので、今でもういいよということではいけないと思いますけれども、レジェンド問題も、一日も早く、国際的に見て、日本の監査制度はオーケーだという日が来ることを、早く来るようにというふうに努力をしております。そんなように、私個人でも考えられますから、よろしく御理解いただきたいと思います。

○友永委員

今の議論について、若干私なりの考えを述べさせていただきたいと思いますけれども、レジェンド問題につきましては、日本の監査の基準、それから、実務が特殊なものではないかという海外からの批判であるわけです。現在、国際監査基準、これは、IFACの中のIAPCというところでつくっておりますけれども、それに代表される国際的な標準と言われる監査基準、それとの対比ということが必ずあると思います。これから先も、日本の監査基準、実務は置いておいても、監査基準は国際的な基準と同等かという議論があった場合に、今、IAPCでつくっております国際監査基準については、金融庁も御参加のIASCの承認を一括で受ける。これは、2002年を目標にしておりまして、相当なスピードで基準づくり、全面的な見直しを含めてやっております。

そうした状況について、今回の監査基準の改訂作業において、現時点で取り入れられるところは最大限取り入れていただくということがあったとしても、その後の2年間、あるいはそれから先ずっと実務の問題というのは、絶えず新しいものが出てきて、それを改訂しながらやっていくという世界でございますので、特に、この前文のところでも触れていただくことになっております実務指針も含めた監査規範の体系、あるいは実施時期等のところに書いていただいております日本公認会計士協会の実務指針への委任等という形で、今後の国際的な監査基準の動向を協会の実務指針に取り入れるという形で、これからつなげていくということも視野にしっかり入れた形での基準の改訂であってほしい、そういうふうに思っております。

○中地委員

ちょっと補足しますけれども、4つばかり。基準の議論のときに、抽象的な言葉が続きますので、私は、会計士協会のプラクティスの面で幾つか御紹介しますが、まず、これも、審査会の方の近年の要望を踏まえまして、品質管理レビュー制度というのは既に制度化しまして、初めは、大型の監査法人であれ、中小であれ、公開企業を監査するのを幾つかとりまして、3年では全部必ずカバーするつもりでいますけれども、レビュー専門の人も協会の方でフルタイムにいまして、もちろん、彼らは全部現場へ行って、それぞれの監査法人の監査のやり方について、内部のシステムを本当にそれが機能しているかというんで、サンプルで幾つかの会社をとって、ワーキングペーパーを見る。そういう具体的な品質管理の中に入っていますので、そして、それを結果をやったかどうかについて、一番トップの方は、外部のいろいろな業界を代表した方々に、こういう品質管理をやって、その結果、まだ不備がありますとか、これを来年直しますとか、そういう外部へのディスクロージャーのプロセスもとっております。

2番目は、1年先から始めてはいるんですけれども、まだ義務化はしていませんけれども、それは、CPEといって、継続的研修制度。時代がどんどん新しくなるから、新しい知識を持たなくちゃならないといって、今、積極的に公認会計士全員に、継続研修制度に参加して勉強しろと言って、カリキュラムも非常に進んでいる形でつくっていますので、それもやっております。

それから3番目は、先ほどちょっと申し上げましたけれども、今まで規律規則と言ったのを改訂しまして、倫理規則という形で、幾人かの個人の方々から、そんなことをしたら、今まで1人できちんとやったのが独立性がないなんて文句を言われたらこっちは困るというんですけれども、それはいけませんという形で、外見から見ても独立性があるとか、そんなことも織り込んだ規則があるわけです。

それと、もう1つ申し上げたかったのは、そういうのをやるというプラクティスの中で、だんだん、だんだん、実態をやっていく。そうすると、大型監査法人の中に、実を申しますと、横文字の報告書を書くときには、提携先の外人が1社数名いますね。何人か駐在しているんですけれども、それを私は個人的に、私がもと属したような大型監査法人は、そいつをフィールドに出せと。うちの中にいて、うちでレポートを書くときに直すようでは、日本の監査法人はアメリカ人のオーディターを中で一緒に使っているとは見えないよと。だから、現場に追い出して、そこでやらせてみろということを言っていますので、だんだん、だんだん、彼らも日本化してしまいまして、あちこちの、特にたくさんの時間を投入されながら監査報酬を上げないような会社には外人を送り込んでやろうかというふうに思っています。国際的なレベルで、時間も投入してみたらどうか。そういうような動きがありますので、4点だけ御報告しておきます。

○脇田部会長

ありがとうございました。どうぞ御自由に御発言くださいますように。

○藤田委員

前の論点整理の段階でも申し上げたことなんですが、ぜひ会計監査人の監査の結果の報告、あるいは他の内部監査人を利用するとか、いろいろな関係、要するに、会計監査人と経営者との関係、あるいは会計監査人と監査役との関係、あるいは会計監査人と内部監査人との関係というところをもう少し連係プレーを強めるような、何らかの表現が欲しいなと思いますので、ぜひ……。

内部統制関係のところに、監査上の位置づけ等というのがございますし、一番最後のところには、五番のところですか、内部監査の作業結果を利用するとございますので、何らかあるんだろうと思うんですが、我々現場で見ていて、ちょっといささか不満に思う点は、一方交通になりがちだと。つまり、時間ぎりぎりで、こういうような結果になりましたという一方通行になりがちなんで、これを双方向になるように、そこのところの、この前申し上げたとおり、端的に言うと、単なるコミュニケーションじゃなくて、ディスカッションの段階にぜひ入るような、そういう双方向をぜひ考えていただきたいなと思います。

○脇田部会長

ただいまの点につきましては、今御指摘いただいた3ページの二の「監査計画関係」のところの第3行目でございますか、経営者の方々とディスカッションというのを一応項目としては用意いたしております。今の御趣旨は、非常に大切なことでございますので、触れたいと思います。

○林委員

2点あるんですけれども、1点は、実施時期等というところがありますね。要するに、早期適用、早目にやれよというんですが、ある程度期間を明示されてやった方がいいんじゃないかというふうに思います。といいますのは、この会議で何回か出たと思うんですけれども、なみはや銀行とか、あるいは赤井電機ですか、あるいは日本レース、こういった監査報告書におきまして、ゴーイング・コンサーンに関する特記事項が記載されるということで、要するに、実態が先行しているわけですね。

しかしながら、明確なルールがないがゆえに、記載方法が、監査人の方々の判断で、かなりばらつきがあるということがございます。したがって、2002年の3月期からは、これは適用を義務づける。なお、来年の3月からやるものについては、これは前倒しで結構ですよというふうな適用を妨げるべきではない。要するに、2001年3月からですね。そういうふうなことをして急がないと、今、非常にグローバルに、また資金も非常に動きが早い中で、対応できなくなるんじゃないかなという危惧がございます。

もう1点は、先ほどの多賀谷さんが言われましたところで、監査意見の記載のところで、特記事項という表現ではなくて、意見という形で記載した方がいいんではないかというふうに理解したんですが、意見というふうに書くのがいいのか、この監査情報をより有用に投資家なりいろいろな方が利用する場合には、わかりやすく注意を引くという観点から言いますと、特記事項というような記載の方が、私は表現がいいんではないか。

もちろん、先ほど中地委員がおっしゃいましたように、国際的な観点から、日本の会計は非常に真実性原則にのっとって、すばらしいものですよ、なおかつ、国際的なスタンダードに照らしても何の遜色もないようにするというふうにおっしゃいましたから、それを担保いただけるならば、私は、それに余りこだわらないんですけれども、それが担保できない以上は、ちょっと議論が必要かなというふうに思います。

○多賀谷課長補佐

第1点の実施時期につきましては、実務指針の問題もありますし、また、この中でも、できるものもあると思うんです。その実務指針だけでもできるものがあるということで、基準全体としては、完成後、皆様の御賛同を得て、なるべく早くというふうなことになろうかと思います。

それから、特記事項につきましては、私が申し上げましたのは、今の特記事項が、意見なのかどうかというのが、林委員がおっしゃったように、先行している事例で、随分ばらつきがあるという御報告がございましたので、そこをこれは意見なんだったら意見の方に、意見でないならば意見でない方にきちっと分けないと、あいまいである。ここで、その他の記載事項という項目は、この名前がいいのかどうかはちょっと別ですので、御説明の上で特記事項と使いますと、今のと誤解されますので、そういう言葉を今のところは使っておりませんので、今後、また御検討いただければというふうに考えております。

○脇田部会長

そろそろ予定されました時間がまいりましたが、どうぞ御発言ください。

○多賀谷課長補佐

先ほど渡辺委員から、プロフォーマーのことで、もう十分御承知だと思うので、私が改めて説明する必要はないとは思うのですが、我が国の場合、これは、会計基準といいますか、開示等の注記の基準ということで、直接監査基準ではないのですが、商法か証取法かということは別にしまして、現在の証取法上の書き方としては、継続性、いわゆる会計方針を変えた場合には、今年変えたものを、去年の変える前でやったらば幾ら影響が出るかという書き方をしていまして、これが、いわゆる米国ですと、改訂した事項によって違いもあるようでございますが、去年を今年の改訂した後でやったらどうかという書き方になっているということで、去年幾ら影響が出たのかということになろうかと思います。

日本の場合は、今年幾ら影響が出たのかということになりまして、今年変えたことによって、これだけ利益がふえましたとか、これだけ損失が減りましたとかいう、ある意味では、非常にビビットな出方をするという面もございまして、これは、どちらが有用なのかというのは、また別の観点から御検討いただければと思います。いずれにしましても、影響額につきましては監査報告書でも言及をされるということになりますので、ご説明した趣旨は監査報告書での書き方といいますか、位置づけを変えるということでございまして、書かなくするという意図ではございません。

○渡辺委員

今おっしゃったのは、会計方針の変更の場合でも、アメリカは、前年度だけしか変えないということを言われたんですか。

○多賀谷課長補佐

いや、アメリカは、前年度、さかのぼって変えてくるわけですので……。

○渡辺委員

全部の年度……。

○多賀谷課長補佐

はい、それは、監査の対象が、ことしの監査の中で過去のものの監査をまたやるということでございますので、変えた後の過去のものを監査し直すというのがアメリカの形でございます。日本は、単年度ということで、今年の変わった後のものを監査をするという形をとっておりますので、監査報告書も、日本は今年の分、去年の分、おととしの分、こういう形で、アメリカは1枚ということで、何年分かを1枚という形で、そこの表現も違っているということになっております。

○渡辺委員

使う方から言うと、2年分というか、要するに、ことしの分だけぽこっと出ても、全然継続していないんです。ですから、先ほど正しい会計方針の変更であっても、限定意見になるのはおかしいと言われましたけれども、今の日本のあり方だと、正しい会計方針の変更と言われたものであっても、継続性をそこで断っているんです。そういう継続性が断たれた財務諸表が出てきて、これが適正だというのは、継続性の原則というのが意味があるんだとしたら、私はおかしいと。そういう意味で、プロフォーマーをつけて、今の限定意見から外すか、そうでなければ、継続性を担保する道がないんだから、限定意見のままで、今のように継続性は開示もしない、取り入れているというコメントが出るのが、私はいいように思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。それでは、そろそろ予定された時間がまいりましたので、最後に、若杉会長から御発言いただきまして、まとめたいと思います。お願いいたします。

○若杉会長

きょうは、貴重な御意見をいろいろ賜りまして、まことにありがとうございます。

最後に、私が感じておりますことを申し述べまして、脇田部会長が今後作業をなさるときの1つの参考といいますか、そういう言い方は失礼ですけれども、御配慮いただければ幸いに存じます。

それは、平成3年ですか、1991年の監査基準の改正が行われまして、そのときに、それまでの監査基準は、監査論の教科書みたいな、非常に詳しい説明、特に準則あたりでもって、そういう説明がありましたけれども、近代監査が段階的にずっと行われてきましたけれども、もうすっかり監査をする側も、監査を受ける側も、監査に対する理解を深めたであろうから、教科書的な、そういう基準の表明の仕方は変えて、もっと要点だけをあらわすような、そういうものにすべきではないか、そういう趣旨でもって、91年の監査基準がああいう形に変わったと思います。

それを受けまして、中地会長、恐らく会計士協会で、実務指針をそのときからつくられて、詳しいことはそちらにお任せするという形、そういう体制が整ったと思うんですけれども、あるとき、二、三年前に、商法の先生たちを交えて研究会をやりまして、その席に私も呼ばれて出て報告をし、それから、商法の先生たちの報告を聞き、ディスカッションをしたんですけれども、皆さん、こういうような理解をなさっているんです。それは、91年の改正は、非常に簡単な基準になっちゃって、いわば監査の厳密さというものがそこでもって緩和されちゃったんだ。言ってみれば、規制が弱まっちゃったんだ、そういうふうなとらえ方をされますものですから、とんでもないと。さきに申しましたようなことを言って、いろいろ弁明に相努めましたけれども、なかなか理解してくれないんです。

それで、そのときの状況というものを、間違った理解をされている向きがありますので、この基準をつくるときには、前文のところで、9年前の監査基準の改正というのはこのような趣旨で行われたんだということを入れておく必要があると思うんです。特に、91年の基準がああいうふうになった後、バブルの崩壊とともに、いろいろ大会社が倒産し、また、会計上の不祥事事件が表に出てきましたので、その不祥事事件と監査基準がかなり甘くなったと見ているんですけれども、それとがつながっているような理解をしております。

ですから、その辺、我々は、どちらかというと、できた基準だけをぽこっと出すような形で今までやってきましたけれども、今、もちろん審議会の状況も、詳細に一般の方がホームページで見ていただけるような体制が整って、実行されておりますけれども、何分にも我々がやっていることは、やった結果だけじゃなくて、このような考え方でこういうふうにしてやっているということを広く理解してもらうことが大事じゃないかと思うんです。

そういう意味から言いましても、前回の基準改正の趣旨とかねらいとかいうものを、一応今日に至る今回の監査基準改正の経緯の中でもって、よく説明する必要があるんじゃないか、こんなふうに考えておりますので、その点、どうぞ御配慮いただけますとありがたいと思います。

以上です。ありがとうございました。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま御指摘いただいた点は、今後、生かさせていただきまして、監査基準が、そういった実務会、あるいは関係をお持ちになっている方々に対する理解を求めるための規範となるように作成するように心がけたいと思っております。ありがとうございました。

それでは、本日の審議はこの辺で終了させていただきたいと思います。持永参考人には、貴重な御報告をありがとうございました。

それでは、これからの審議の進め方について申し上げさせていただきたいと思います。先ほど林委員からも、早期適用の必要性を御発言いただきましたが、それを踏まえまして、さらに努力いたしますが、今後は、具体的に、項目や文章をつくっていくことになります。本日も御議論いただきましたけれども、大変な分量になると思われます。先ほど若杉会長の御指摘にありましたように、多くの方々に御理解をいただくためには、相当の量の基準を作成することになるかと思われます。

そこで、私といたしましては、今後とも、山浦委員、友永委員に御協力をいただきまして、たたき台のようなものを私の責任でつくらせていただきたいと思います。それをもとにいたしまして、皆様に今後も御審議をいただき、修正を繰り返しながらまとめていくという形をとらせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。

それでは、そのような形で今後の審議を進めさせていただきたいと思います。

なお、すぐに文章化をいたしますということは大変無理でございますので、次回の部会では、本日の御意見を踏まえまして、内容を議論していただきたいと思っております。そこで、今後も、御意見や御提案がございましたら、どうぞ事務局の方に、いつでも結構でございますので、お寄せいただくようにお願いいたしたいと思います。

最後に、今後の日程について御案内申し上げます。次回は、一応来年の1月26日金曜日を予定しております。年頭に、省庁再編が予定されておりますので、詳細は、今後事務局から改めて御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

それでは、本日の部会はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。

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