平成13年3月1日
金融庁

企業会計審議会第14回第二部会議事録について

企業会計審議会第14回第二部会(平成13年2月9日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第14回第二部会議事録

日時:平成13年2月9日(金)午後2時00分~午後4時00分

場所:中央合同庁舎第4号館10階共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより第14回第二部会を開催させていただきます。

初めに、今般の中央省庁の再編に伴いまして、本審議会に関係いたします政令が改正されましたので御報告をいたします。去る2月2日に、当審議会の総会が開催されました。総会では、改めて本第二部会において、「監査基準等の一層の充実」について、引き続き審議することが決定されております。

なお、企業会計審議会令の改正により、専門委員が設けられましたことから、専門委員として任命された方もございますが、御紹介は割愛させていただき、お手元に審議会第二部会の名簿がございますので、それをご覧いただきたいと思います。

それでは、早速、これより議事に入りたいと思います。

本日は、監査基準の改訂事項の整理につきまして、前回の引き続き、全般的に自由に御議論いただくこととしたいと考えております。

用意いたしましたものは、この資料1でございます。ただ、前文は基準の内容が固まりませんと議論ができませんので、本日は、2ページ目の基準の部分を順を追って議論してまいりたいと思います。その中で、このようなことは前文に書いてはどうかという御意見がございましたら、御提案をいただきたいと思います。

それでは、ただいまご覧いただいております資料1の2ページの基準のところから、早速検討してまいりたいと思います。

2ページをご覧いただきたいと思いますが、横長のA4の用紙でございます。最初のところが、「監査基準 第一 意義」と書いてございますが、これは、「監査の意義」ということに改めさせていただきたいと思います。「監査の意義」のところは、全体の基礎をなすところでございまして、もう少しこの内容等につきましてイメージを固めた方が、皆様方の御議論いただく上で都合がよろしいかと思いますので、また、用語の意味につきましても、明確にしておいた方がよろしいと思いますので、初めに、山浦委員から、議論の口火を切っていただくという意味で、「監査の意義」を御説明いただきたいと思います。

それでは、山浦委員、お願いいたします。

○山浦委員

お手元の資料2、それから、それに添付されております参考と付してあります米国監査基準(SAS)、それから、国際監査基準(ISA)、そこから、恐縮ですけれども、日本語に訳していませんけれども、これについては後ほど説明させていただきます。この2つの資料をもとにして御説明させていただきます。

我々、基準の改訂案の原案を起草するメンバー間で、現時点で、監査の目的としまして、ほぼ意見の一致を見ているところを本日御紹介しまして、皆様の御意見を伺いたいと考える次第であります。

この目的というのは、いわば監査基準改訂作業の全体枠にかかわる問題でもあります。それから、個々の具体的な基準設定をする上で、文言の表現とか、あるいは基準の構成、そういったところにもかかわりますので、是非とも現時点で、できれば皆様の御了解を得ておきたい、こういう考えでもって、最初に御説明させていただきます。

「監査の目的について(試案)」、こういう目的観を最初に提示したらどうかということで、まず最初に読み上げさせていただきます。「財務諸表の監査の目的は、企業が作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して適正に作成され、かつ、表示されているかどうかについて、監査人が自ら入手した証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある。財務諸表が適正である旨の監査人の意見には、財務諸表に、その利用者の判断に影響を及ぼすような重大な虚偽の表示がないという合理的な保証が含まれる。」こういった目的観を最初に提示したいと考える次第であります。

若干これについて、用語等の説明、それから、ここで目的観を示しました背景にある考え方、それから、国際的な監査基準との比較について、さらに説明を加えさせていただきます。

まず、この目的というのを入れたこと自体についてなんですけれども、これまで我が国には、監査基準はもちろんありますけれども、実は、この目的に相当するものが明確な形では示されておりませんでした。したがいまして、逆に、この目的観がいわば明確でないために、監査人の方も、それから監査を受ける側も、それから、監査の結果、対象となります財務諸表を利用する側も、何かと監査の役割について、いろいろな意味での考え方の違い、理解の違いがありまして、それが、ある意味では、期待のギャップといいますか、監査人側が提供するサービスの内容と、それから、利用者ないし監査を受ける側が期待する、あるいは要望する監査業務の内容、そのあたり、随分と差がありまして、このあたりを是非とも今度の基準改訂では埋めておきたい、こういう趣旨であります。

そこで、これまで理解されていたところとどのように違うのかということについて、次に御説明させていただきますと、前段の部分、これは意見の表明であるという点、これについては、大方の共通の理解は得られているんではないかと思うんです。ところが、後段の部分が、あえてここで皆様に提示した上で、できれば御了解いただきたいというところでありますけれども、「財務諸表が適正であるという監査人の意見には、財務諸表の利用者の判断に影響を及ぼすような重大な虚偽の表示がないという合理的な保証が含まれる」というこの文言です。

特に、この文言の背景には、特に虚偽の表示をもたらす原因となります誤謬や不正、場合によっては違法行為、こういったものに対して、監査人は一体どういうスタンスでもって自らの責任を果たすべきなのか。こういうことをある意味ではメッセージとしてこの目的の中に示しておきたいということであります。

用語の整理ということで、その下につけておりますけれども、実は、これは国際監査基準(International Standards Audit)、それから、SAS(米国監査基準)、これは、近年の監査基準ではMisstatementという用語を用いて、重大なMisstatementを見逃してはならない、こういったことを掲げているわけです。このMisstatementを虚偽の表示という言葉でもって表わそうとしております。

このMisstatement、その中身を若干説明させていただきますと、一番最初に紹介しました参考という資料です。米国監査基準、それから、国際監査基準、これを見ていただきたいのですけれども、まず最初に、米国の監査基準につきまして、一番最初の「AU Section 110」という一番最初の基準の部分ですけれども、この監査の基本目的、これは、我々の方で提示していますと同じように、適正性に関する意見の表明である。

そして、さらに、この意見の表明のために、ここで言う「material misstatementがない」、我々の訳では、「財務諸表中に、重大な虚偽の表示がない」という、そういう合理的な保証を得るための監査の計画を立て、そして監査を実施する、そういった責任を負う、こういう流れです。

では、その虚偽の表示の原因となる事項のうち、errorについては、特段、監査基準で敢えてこれを対象とした独立した基準を設けるということを、今米国の基準はしておりません。昔は、これはしていたんですけれども、近年の改訂でもって、特にfraud、いわゆる不正、これに起因するmisstatement、これに対する基準設定を独立させて提示しております。これが、AU Sectionの316です。

ここで言う第3パラグラフ、第4パラグラフ、第5パラグラフですけれども、ここでは、財務諸表の重大な虚偽記載を引き起こすようなfraudulent acts、不正の行為、これについては、監査人は特別な関心を持つ。

では、それは、どういうものなのかということで、第4パラグラフ、第5パラグラフで、「Misstatements arising from fraudulent Financial reporting」、つまり、不正な財務報告から生じる虚偽の表示、これが04です。

それからもう1つ、これは第5パラグラフですけれども、「Misstatements arising from misappropriation of assets」、資産の流用から生じる虚偽の表示。こういう2つに原因を分析しております。

この仕組みは、実は、国際監査基準の方も同じような仕組みをとっておりまして、1枚めくっていただきまして、この国際監査基準の抜粋のところを見ていただきますと、最初に、監査の目的、これも基本的には意見の表明である。

それから、6で、後ほど問題になりますけれども、professional skepticism、当面は職業的懐疑心という言葉を当てておりますけれども、それを持つことが監査人の注意義務の中に入っている。

そして、その上で、重大な虚偽の表示がないという合理的な保証を提供すること、これが、監査の要点である。

その上で、独立した監査基準として、240で、不正及び誤謬という基準を独立させております。国際監査基準の場合は、米国基準と違いまして、error、誤謬についても、この基準の中に入れております。

監査人の義務として、不正または誤謬に起因する重大な虚偽の表示のリスクを検討するんだ、こういう記載であります。

その重大な虚偽の表示の原因となるのが、fraud、つまり不正、あるいはerror、誤謬である。では、ここで言う誤謬あるいは不正というのはどういうものかといいますと、第3パラグラフ、これは誤謬、それから第4パラグラフに、fraudをそれぞれ定義しておりまして、このfraudの中身としてというんでしょうか、米国の基準と同じように、「Misstatements arising from fraudulent Financial reporting」、不正な財務報告から生じる虚偽の表示、第6パラグラフでは、「Misstatements arising from misappropriation of assets」、資産の流用から生じる虚偽の表示。これについて、監査人は特に重大な虚偽の記載を引き起こすような、こうしたfraudに対しては、相当の注意を払う必要がある、こういうくだりであります。

我々の方の資料2に戻りまして、今回提示した目的観の中に、こうした趣旨を踏まえた上で、その利用者の判断に影響を及ぼすような重大な虚偽の表示がないという、こういった合理的な保証を提供する。これを監査の目的観に入れようとしている次第でございます。

これは、ちなみに、我が国の現在の法律等との整合性も考えました。例えば、公認会計士法の第三十条には、「故意あるいは相当の注意を怠った場合に、虚偽、錯誤または脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合」の責任が課されております。

この文言を目的観の中に入れようかという案も一時あったんですけれども、何せこれは法律用語でありまして、監査基準の中にそのまま入れるというのはどうも入れにくい。一応我々の解釈としては、財務諸表に虚偽、錯誤あるいは脱漏のある状況、これを虚偽の表示という、こういった理解の仕方をしたいと思っております。

それからもう1つは、虚偽の表示と「Illegal act」、違法行為について、これもかなり監査人に対する社会の期待として、よく指摘されるところでありますけれども、この「Illegal act」に対する監査人の責任はどうなのか。これについては、実はかなり難しい問題を含んでおります。「Illegal act」だけを取り上げますと、財務諸表に関係しない多くの行為が含まれることになりますし、また、財務諸表に関連していても、金額が小さかったり、あるいは違法性について判断が監査人としてはとても難しいものがたくさんあります。したがいまして、これについては別に扱いたいと考えております。

もちろん、違法行為が行われると、当然隠すという行為が次に伴いまして、そのために、それが虚偽の表示となる。そうしますと、虚偽の表示自体が、ある意味では違法行為でありまして、このあたりの定義の仕方、まだ今の段階で詰めているところでありますけれども、無論この違法行為の結果、隠された財務諸表上の虚偽の表示で、特に金額等が大きいもので、利用者の判断に重大な影響を及ぼすものがあるとすれば、やはり何らかの監査人にとっては責任の対象となる。こういった理解をしております。

それからもう1つ、目的の文言の中に含まれておりますが、「合理的な保証」という、この文言です。これは、「reasonable assurance」という用語を米国の基準、あるいは国際監査基準、あるいはイギリスの基準、カナダの基準、そういっところで等しくこの用語を使っておりますけれども、これは、ある意味では、監査の現場にとっては使い古された理解かもわかりませんけれども、監査というものは、サンプリングを中心とした試査で行われる。それから、内部統制にかなり依存するんですけれども、それについても、当然固有の機能的な限界がある。あるいは入手できる証拠というのは、かなり間接的なものも含まれておりまして、決定的な証拠というよりは、ある意味では、直訳しますと、説得的といいましょうか、証拠を積み上げて、ある意味では類推をして、その上で意見を形成する。そういった監査の証拠の積み上げ方をしております。

こうした中で、証拠集めあるいは意見形成には当然限界があるわけで、その意味では、監査人が付与する保証というのも、絶対的なものではない。したがって、監査人として、監査基準に従った監査を行って、その上で付与できる保証の範囲、こういったニュアンスで合理的な保証という言葉を使いたい、このように考えております。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいま山浦委員から、御審議いただくに先立ちまして、「監査の意義」――この「監査の意義」のところは、先ほど「意義」を「監査の意義」と改めていただきましたけれども、さらに、今御説明ございましたように、「第一 目的」という見出しにさせていただきたいというふうに思っております。そこの中で、さらにイメージとして、この文案を御提示いたしまして、特に用語の意味につきまして、今、その経緯、そして、このような言葉の解釈と申しますか、理解に立って審議を続けたいということで御説明をいただきました。

それでは、ここで、まず改訂事項、これから、あと1つずつにつきまして御検討いただいてまいりますけれども、ただいま山浦委員から御説明いただきましたところについて、御発言ございましたら、どうぞお願いしたいと思います。

○内藤委員

それでは、御質問させていただきます。

山浦先生初め、友永先生、それから脇田先生も、この改訂の内容について、非常に多くの時間を費やされていると思いますので、もう既にそこで議論があった点かもしれないんですけれども、今山浦先生から伺った点で、3点ほど質問させていただきます。

まず第1点目の目的について、SASとISAとの比較をしていただいたわけですけれども、その中で、今回出てきている目的の中に入っていない言葉で、アメリカのSASと違うところは、「Independent Auditor」の「Independent」というのが入っていない点。それから、SASとISAの両方そうなんですけれども、「in all material respects」という用語を今回示していただいた資料の方には出されていないと思うんです。

これは私の意見ですけれども、まず、前者の「Independent Auditor」という部分については、これは監査の主体の話ですので、目的の中に、監査人というのがもともと持っておくべき「Independence」というのが入っていると思いますので、これはなくてもいいかなというふうに思いますので、問題ではないと思うんですが、第2番目の「in all material respects」、これは重要な点についてという文言を制約条件として目的の中に示されないというのは、何か特別な理由があるのでしょうかという点です。それがまず1つ目です。

それから2つ目は、この目的がそのまま別の基準になるとか、説明文に入るかどうかということは別にしまして、日本語の表現で、今日、山浦先生が、用語の整理をきっちりするということでしたので伺うんですが、目的の第2文の「財務諸表が適正である旨の監査人の意見には」これこれ「合理的な保証が含まれる」という日本語の表現があるんですが、財務諸表が適正である旨の監査人の意見は、合理的な保証を与えるという意味なんでしょうか。それとも、合理的な保証が含まれるものであって、それ以外にも何か保証しているというふうに読むんでしょうか。非常に細かい点かもしれませんが、その辺が少し日本語としてはあいまいではないか。

SAS、ISAは、ともに合理的な保証を与えるように監査を設計しなさいというふうに書いていますので、ここは監査人の意見は合理的な保証を与えるものであるというふうにはっきり積極的な表現をした方がいいんじゃないでしょうか。それが2つ目です。

それから3つ目なんですけれども、虚偽の表示についての御説明、これは非常によくわかって、このとおりで大丈夫ではないかというふうに思うんですが、ただ、目的の方の文言で、これは「重大な虚偽の表示」という表現をされたわけです。そうしますと、SASもISAも、いずれも「material」という言葉を使っていまして、これは、我が国でずっと「重要な」というふうに訳してきていますね。そうしますと、「重要な虚偽の表示」という場合と、「重大な虚偽の表示」という場合と、これは意味が違ってくるんではないか。その点についてはどういうふうにお考えなんでしょうか。

以上、3つをお願いしたいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま御指摘いただきました3点ございまして、第1点の「in all material respects」という文言が含まれていない点、それから、2番目といたしましては、合理的な保証が含まれているという文言についての御質問、それから、「重大な虚偽の表示」という点と「重要な」という言葉の使い方、この3つについて御指摘をいただきましたけれども、山浦先生、御説明いただけるとありがたいと思います。

○山浦委員

内藤先生の御指摘、どうもありがとうございます。また、参考にしたいところが出てきておりまして、そういった意味では、持ち帰って検討することも幾つかありそうです。

まず1つ目、「in all material respects」、確かにおっしゃるとおりなんですけれども、これを第2番目の文章の中に、「利用者の判断に影響を及ぼすような重大な虚偽の表示」この文章の中に、「in all material respects」という表現を込めたつもりでいるわけです。これが、1つは、日本語の文章でどうも座りが悪いというんでしょうか、「in all material respects」、あらゆる重要な点においてという、これはこういった訳にするかどうかは別としまして、直訳しますとこういうことでしょうけれども、これをそのまま入れようとしても、どうも日本語の文章として座りが悪いので、もう少し利用者の判断に影響を及ぼすようなというのが、おのずとこの意味を酌んでいるんではないか、酌んでいるというふうに我々自身理解した上で、この点をこれに変えたというふうに考えております。

もちろん、せっかくの御意見ですので、これについてはもう1度考えることにいたします。

それから、「合理的な保証が含まれる」という、おっしゃるように合理的な保証を付与する、こういう意味でこれは使っております。ですから、内藤委員の御指摘を反映させるとすれば、「重大な虚偽の表示がないという合理的な保証を与えることを意味する」とか、恐らくそういった表現にすればいいんではないかと思うんですけれども、この原案の段階では、「合理的な保証が含まれる」という表現の中に、与えること、付与すること、その意味を込めたつもりではあるんですけれども、もう1度日本語の座りとして、これを今の内藤委員の方の御指摘を酌んだ上で、これについてはもう1度検討させていただきます。

それから、「重大な」と「重要な」なんですけれども、実は基準の各論のところでは、重要性の原則といいますか、重要という言葉を用いております。ただ、証拠集め、それから、それを合理的な基礎というか、監査判断に持っていって、最終的な意見を形成する。そのプロセスの中では重要性という言葉を使うんですけれども、最終的な目的観のところで、どうも重要な虚偽の記載という表現で、もう少しインパクトというか、あえて一番大きな目的観のところで、個々の監査行為の集約、あるいは監査判断の段階ですから、重要性をもう少し引き上げた、あるいは集約したつもりで、この「重大な」という言葉を入れたつもりなんです。

これも、実は、各論の基準については幾つか既に文案があるんですけれども、重要性の概念はかなりいろいろなところに出てきますけれども、これを使って、そして、最終的な整合性を確かめた上で、この用語の「重大な」にするか、あるいは「重要な」にするか、これについては判断させていただきます。今の段階では、今言ったような個々の行為なり判断の段階での重要性、これを最終的に目的観として集約させたという意味で、「重大な」という言葉を使ったつもりなんです。このあたり、無論我々の方でもう1度検討はさせていただきます。

○脇田部会長

内藤先生、いかがでございましょうか。

○内藤委員

よくわかりました。ただ、「in all material respects」に関しては、山浦先生の言われることも最もよくわかりますので、それを第2文として生かすということであれば、第2文を合理的な保証を与えるものであるという文面の中に、重要な点に関して合理的な保証を与えているという表現を強めにわかりやすく出していただきたい、そういうふうに思います。どうもありがとうございました。

○脇田部会長

ただいまの御指摘いただきましたところを踏まえて、今、山浦委員が御説明いただいたように、条文としての整備もしながら、全体的な整理をしていきたいというふうに思っております。

ただいまの件につきまして、御発言ございませんでしょうか。

○須田委員

「重大な」という意味をもう少し教えていただきたいんですけれども、この文章を読んでいると、「利用者の判断に影響を及ぼす」ということがあったら重大だと読めて、重大とは何が重大かというところの判断なんです。そうすると、もし、虚偽の表示というのが、量的にどう考えるかは別にして、それが、本当に大したことではなくても、利用者、投資家は何を考えるかわからないので、それが結果論として重大な虚偽の表示になってしまわないかなという気がしたんですけれども、そこら辺は、要するに、重大な虚偽の表示というは、すごくあいまいなような気が、私自身はしたものですから……。

○脇田部会長

この点、もう1度山浦先生に御説明いただきたいと思いますが、「利用者の判断に影響を及ぼすような」という表現は、こういう監査の議論をいたしますときに、重要性あるいは重大な虚偽の表示ということとのかかわりで、比較的よく使われている言葉でございますけれども、この点、山浦先生からもう1度御説明いただきたいと思います。

○山浦委員

須田委員のおっしゃることはもっともでありまして、ただ、我々、会計学なり監査論の観点から、御指摘の点は、過去随分と歴史的にも議論された経緯があります。我々が考えるのは、平均的な投資家の投資意思決定を考えているわけです。もちろん、これは平均的といいましても、投資家はいろいろな目的で投資行動をします。それから、財務諸表の利用者は、単に証券投資家ばかりではなくて、そのほかにも、例えば取引先の選定であるとか、それも広い意味では投資活動の1つかもわかりませんけれども、例えば、卑近な例で言いますと、我々学生がリクルートするとき、企業訪問するときの訪問先を決定するときに、もしかしたら使うかもわからない。いろいろな意味で、利用者がいます。

ただ、そういった意味では、何が利用者の利用目的に、いわば障害になるような虚偽の表示かというのは、実は、そういった意味では特定できないんですね。ただ、我々は一般にこの言葉を使っているときは、平均的な、通常は証券投資家あるいは株主の投資判断といいますか、その判断をする上で、例えば利益額が5%程度の上下だったら、投資判断にはそれほど影響がないかもわからないけれども、例えば10%だと、投資判断にかなり影響するかなと。そういう一定の投資パターンを想定した上で、そこを1つの線引きラインとしているんです。

当然一番最初にお答えしましたように、利用者によっては、別の見方、あるいは別の利害をもって、この虚偽の表示に対する反応をする人がいるかもわかりません。ただ、これは、恐らく訴訟等が起されれば、その訴訟の場で、ケース・バイ・ケースで対応させられるのではないかと思うんです。そういう個々のケースまでを考えますと、逆に言いますと、監査人としてのいわば責任ラインが非常に不明確になりますし、それから、当然職業としてこの監査という業務が成り立たないということにもなりますので、一応今お答えしたような形の平均的な投資家の投資意思決定の判断のパターン、これを想定している、こういうことであります。

○加藤委員

この最初の方の文章なんですが、2行目に「適正に作成され、かつ、表示されているかどうかについて」監査人が意見を表明するということが書かれているんですが、そのSASの方は、会社の財政状態とか、経営成績、あるいはキャッシュ・フローについて、そういうものが適正かどうかを表示しているかどうかについて意見を述べるということで、表示の方だけ触れているわけですが、ISAの方は、作成されているかどうかしか触れていない。

ところが、これは両方入れているんですが、この表現を見たときに、財務諸表そのものが会計基準に準拠して適正に作成されているかどうかについて述べるというのはわかるんですが、かつ、表示されているかどうかということが、何を表示しているかということをここで言わなくていいのか。

適正に作成されていれば、適正に表示されている。勘定科目だとか、配列の仕方とか、いろいろなことは当然適正に作成されるの中に入ってきますから、あえてまた、適正に表示されているということを言う必要がないと思うんですが、そうなると、ここで言う表示というのは、財務諸表の表示、形式的なことではなくて、SASで言っているような財政状態とか経営成績とかキャッシュ・フローとか、そういうものが表示されているかどうかということを言うんじゃないかという気がするんです。

それで、SASの場合は、表示されているという表現ではなくて、している。受け身ではなくて、能動態というか、目的があって、それを表示しているという表現になっているわけです。アメリカの監査意見も、私どもが監査意見を述べるときは、財務諸表は財政状態とか経営成績、キャッシュ・フローを適正に表示しているという、受け身でなくて、ですから、主語は財務諸表ではないんです。何を表示しているかということになる。ここのこの表現ですと、表示されているというのは、財務諸表そのものが適正に表示されているというふうにも読めますので、そうすると、前に、適正に作成され表示しているというのは、同じことを言っているような気がするんですが、その辺の御意見をお聞きしたいんです。

○脇田部会長

この点につきましても、多く議論いたしました。この点、山浦先生から、また御説明いただきたいと思います。

○山浦委員

おっしゃるところ、我々は何度も議論したところであります。1つは、まず、少し話が一番基本的なところに戻るんですけれども、この監査基準が一体どういう監査を対象とするかということを考えたときに、例えば、キャッシュ・フローの状況等、こういったものを表示する。今のおっしゃるように、SASの目的観の表現を最初取り込もうかということも議論しました。

ところが、我が国には、こうしたキャッシュ・フロー計算書については、例えば商法にはないとか、あるいは職業監査というのは、いろいろな意味で今広がりつつある中で、適用範囲を逆に特定の計算書を列挙するような形になりますと、例えば具体的に言いますと、特定の証券取引法なら証券取引法監査だけに限定されてしまいそうだ、こういう考え方がありまして、もう少しこのあたりは、ぼかすと言うとちょっと語弊がありますけれども、一般的というか、一般性を持たせるような表現にしたい、これが1つありました。

その上で、「作成され、表示されている」ということの表現には、基本的には、経営者によってということを入れたつもりでありまして、二重責任の原則といいますか、作成責任が経営者にある。経営者によって、適正に作成され表示されている、こういうことを含めたつもりなんです。ただ、ここでありますように、適正に表示されているだけでもいいじゃないか、あるいは適正に作成されているだけでもいいじゃないか、こういうことで、この文章を過去の我が国の監査基準等も、歴史的な経緯も、ずっと見てまいりました。その上で、これまで我が国の監査基準では、作成され、かつ表示される、こういった文章が比較的使われているわけで、ここを敢えて変えることもないんではないかということで、大体意見の一致を見たところなんです。

もう少し言いますと、財務諸表を作成する、そして、そこで込められたメッセージが表示されるという、そういうプロセスをこの文章の中で追ったつもりなんです。ただ、どうもこれも、もちろん加藤委員の今の御指摘、我々はもう1度考えますけれども、趣旨は、財務諸表の作成して表示するというプロセスを一応追った、こういう考え方です。

○加藤委員

そうすると、1つの解釈が、作成の方は会計基準に基づく会計処理であって、表示の方は、その結果を表示する。前の方は会計基準の準拠性、後の方は、表示というか、そういう表示に基づくディスクロージャーの面というような意味があるんでしょうか。

○山浦委員

大体ニュアンスとしては、そういうニュアンスじゃないかと思います。

○脇田部会長

ただいまの御指摘いただきました点も、加藤委員の指摘されました内容について、文章の面でも、少し推考しなきゃいけないかもしれませんが、この点については、今山浦委員から御説明いただいたような、かなりいろいろな議論を引き出してまいりました。また、これも参考とさせていただきたいというふうに思っております。

○藤田委員

2行目の「監査人が自ら入手した証拠」という、「自ら」という表現がちょっと引っかかるんですが、これから内部監査人あるいは監査役、企業内部の人と連携プレーしながら進めていくという意味では、ここの「自ら」という解釈にもよるわけですが、そのあたりが、連携プレーをこれから図る上では、余り「自ら」というのを殊さら強調するのはいかがなものかなというふうに考えるんですが……。

○山浦委員

これは、あくまでも、たとえ監査役あるいは内部監査人と連携をしても、意見表明の責任の主体は監査人ですので、例えばこれを連携をしたとしても、監査役あるいは内部監査人の方で提供してくれた資料を監査人自らの判断の資料にするかどうかというのは、別個の手続なり判断なりが必要ですし、そういった意味では、たとえそういった連携があっても、この「自ら入手する」という、この基本的なところは変わらない、こういう理解です。

ただ、文章として、ある意味ではしつこいというか、藤田委員とはまた別の意味で、この文章表現が煩瑣な感じを与えるということであれば考え直しますけれども、趣旨は今言ったとおりです。

○脇田部会長

ただいま山浦委員から御説明がありましたように、監査人が判断をしていくという、監査人の責任という面を強調するという意味もありまして、このような文言になっております。

それでは、引き続きまして、「一般基準」の方に移りたいと思います。

ご覧いただきますと、2ページのところに、「第二 一般基準」というのがございまして、その中が、「監査人関係」、それから、「不正・違法行為関係」、「監査の質の管理関係」、「守秘義務の関係」といったようなところを総括しておりまして、従来の一般基準のところが「監査人関係」のところで、特に監査人についての規定として定められております。

ここにつきましては、いろいろ御意見もあるかと思いますが、これまでの御議論の中で出てまいりましたのは、1つは、「職業的専門家としての正当な注意義務等」ということと、その次の「重要な虚偽記載に繋がる恐れのある不正・違法行為についての懐疑的態度」、この注意義務と懐疑的態度ということが並列的に記載するということにつきまして、宮島先生から御指摘いただきました。

そのとおりでございますけれども、監査に臨む場合には、大きな意味での正当な注意義務というのがあり、特に監査人が監査をしていく過程において、特に重要な態度、姿勢としての懐疑的な態度という、この文言自体が適切かどうかは、これからまた議論の生ずるところかもしれませんけれども、そういった趣旨として取り上げてまいりたいというふうに思っております。

それからもう1つは、今、虚偽の表示と申しますか、先ほどのところにありましたように、「重大な虚偽の表示」というような文言を使いましたけれども、これと、そして、山浦委員に御説明していただきましたけれども、不正あるいは違法行為、こういったものとの関連につきまして御議論がいろいろあったかと思います。この点につきましては、まず、違法行為は、これは区別して記載するという方向を採ってはどうだろうか。不正や誤謬とはまた異なった、不正行為と違法行為、これはまた、別記して規定していってはどうかというふうに考えております。

また、監査の質の管理でございますけれども、ここでは、監査の質の管理につきまして包括的に述べ、個々の点、ここでは「品質の保持・管理に関連する事柄」と書きました。「(組織的監査、文書化、受託能力調査、審査等)」というふうに括弧書きになっておりますが、これらにつきましては、「実施基準」以下で、それぞれの適切な場所に、この監査の質の管理ということを組み込んで規定していくという方向を採ってはいかがかというふうに思っております。

まず、この点につきまして、不正行為というものは、どうしても監査人に対して、個々の不正行為の発見ということが期待されるおそれもございますけれども、この不正な財務諸表、虚偽の表示と、不正行為との関連というものにつきましては、いろいろな御理解があり、ここに期待ギャップ等も生じてまいりますので、この辺、那須委員、御発言いただけるとありがたいと思いますが、まず、そこから口火を切っていただきたいと思います。

○那須委員

先に言いわけをするようなことを言わなきゃいけないのが心苦しいんですが、例えば我々が会計監査でお客さんのところに伺っていて、税務申告書等を見る場合がありますけれども、そのような場合に、例えば使途秘匿金というものがある。その使途秘匿金というのは何なんだというときに、そこの使途についてまで、我々が事細かにチェックするかというと、必ずしもそうでない場合というのが多いと思います。

では、それは何もしないのかと言われれば、そういうわけではなくて、当然何に使われたのか、まず物を買ったのかとか、どういうものに費やされたのかとか、領収書はありますかといったようなところについては、通常の他の取引と同じように見るということですので、その先どこに行ったのか、どういう目的だったのかとか、そういうことについてまで踏み入るということは、一義的にはないと思います。

そういうことが前提としてありますので、たとえ100円でも1,000円でも、違法行為的なお金の使い方がされていたら、それについて会計士が発見せよと言われると、それはそもそも無理でしょうというふうに申し上げなければいけないのかなと。

それ以前の問題として、例えば、最近話題になっている行政機関での機密費というものもありましたけれども、そもそも何に使われたのかもチェックをしない。あるいは幾ら使われたのかもチェックをしない。請求書、領収書という証票がなければ、そういうものについては一切後づけができませんので、仮にそういう領収書等がとれない費用、例えば慶弔費用というのは、我々が見る中でも、領収書がとれない費用だというふうに言われていますが、では、そういうものが、1人がお金の管理も使途についても、すべてを管理しているという状況が正しかったのかどうかというのは、よく考えてみる必要がある。

通常の企業のお金の出し方、あるいはそういう使い方という場面では、お金を持っている人と、それを実際に使う人というのは、必ず別の扱いにしておいて、内部的にチェックがかかる、内部統制の基本と言われるところだと思いますけれども、そういうものが働いていてしかるべきだろう。

ですから、そこで共謀されては仕方ありませんけれども、そもそもそういうものがあるかどうかということは、他の費用についても、同レベルで見ていますので、仮に使途秘匿金なりが極めて金額に重要性があって、それこそ先ほどの話ではありませんが、投資家に当然これは伝えるべきだろうと思えば、さらに追加して、本当に何に使ったんですか、どういう目的だったんですか、それは本来企業活動について本当に必要だったのか、それは違法行為ではないのかといったようなところまで踏み込んでいくこともあるかとは思いますが、一義的にそういう使途秘匿金ですと言われたからといって、そこに興味本位で踏み込んでいくといったようなことは我々はしないと思いますので、先ほど部会長から御説明がありました違法行為とか不正、そういうところは切り分けて、基準で検討していただけると、我々としては仕事がしやすいというふうに考えております。

○脇田部会長

ありがとうございました。突然に御指名しまして、口火を切っていただきましたので、この点の御議論をいただければありがたいと思いますが、ございますでしょうか。

御発言がないようでございますので、それでは、続きまして、「実施基準」のところに移らせていただきますが、先ほど申し上げましたように、「実施基準」あるいは「報告基準」ともに、監査人の正当な注意という問題でございますけれども、先ほど申しましたように、正当な注意で十分カバーできますけれども、懐疑的態度ということにつきましては、国際的にもこのことが強調されておりますので、特に監査人の注意義務としてこれを強調するという記載を「一般基準」の中で行いたいと考えております。

それでは、それをもとにしまして、「実施基準」に移らせていただきますが、ここでは、リスク・アプローチ全体の構造を前文で御説明すると申しますか、内容を明らかにするということでございますけれども、私から御議論いただくきっかけとして、3ページの「ディスカッション」という、今回の監査基準の改訂の中で、今まで監査基準にございませんでした「ディスカッション」、事業内容、経営環境、内部統制の理解に関する経営者とのディスカッションということが論点整理の中でも盛り込まれておりまして、これを規定していく方向をとっておりますが、この「ディスカッション」というのは、どのようなものであるのかという御理解をいただく必要がございますので、この点について、まず少し御審議をいただいて、「実施基準」についての御発言をいただきたいというふうに思いますが、この点について、大変恐縮ですけれども、友永委員から御発言をいただけるとありがたいと思います。

○友永委員

論点整理では、監査手続という位置づけを与えられておりまして、監査手続であるということであれば、それを実施した上で、何らかの監査証拠を入手するということになろうかと思うんですが、これは、私どもも馴染みがございませんし、企業のサイドも、かなり戸惑われるのではないかというふうに思います。

それで、なぜディスカッションを監査人が監査を行うに当たって実施すべきということにするのかということ、それから、何について話し合うのかということ、どういったタイミングでディスカッションをするのかといったようなところにつきまして、もう少し詰めた御議論をいただかないと、これが監査基準の中で、一定の手続としての地位を占めるというのは、なかなか実務的にこなしていくのが難しいのかなというふうに思っております。

私なりに考えますと、なぜというところでは、財務諸表の作成責任は経営者にあるということがございますので、これは、作成責任は経営者にあるというのをどこか前文でお書きいただくことになろうかと思いますけれども、財務諸表の作成者と監査人が適正な財務諸表の作成に関連して、認識している問題やリスクについて相互に理解し合うということではないかと思っております。

何についてかということにつきましては、財務諸表作成に関連してくる事柄というには、現在、非常に幅広くございまして、会社の事業内容ですとか、経営環境、あるいはそうした事業内容や経営環境の変化、それから、経営者が構築します内部統制や、毎期毎期事情の変化に伴いまして、会計処理方針というものが妥当なのかどうかといった検討なども含みまして、そのリスクの高い部分についての認識を相互に確認し合うということで、監査人も、この監査計画のところの一番上に書いてございますように、まず、監査計画を立案する段階におきましては、そういったものの実態の把握や理解に基づいて、当期の監査計画というものをつくるわけでございますので、そこら辺の認識、知識といったものを経営者とのディスカッションによって、さらに豊かなものにしていく。それによって、有効な監査計画をしていくということになろうかと思います。

タイミングの問題ですが、現在、これは監査計画のところに書いていらっしゃるわけですけれども、当然ながら、監査実施過程において、さまざまな問題が発生する。それから、ゴーイング・コンサーンの問題などが生じるというような場合には、相当頻繁に経営者との意見の交換ということも必要になろうかと思います。そういった意味で、このディスカッションというものの、なぜ、何を、どういったタイミングでといったところについて、なるべくわかりやすい書き方、あるいは御議論の上で、協会の実務指針に落とすということでもあろうかと思いますけれども、そこら辺の御配慮をお願いしたいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。これまで「質問」といったような監査技術と申しますか、手続がございましたけれども、この「ディスカッション」というのが1つの監査の技術、手続として位置付ける方向性が出されておりますので、もし御発言がございましたら、どうぞいかがでございましょうか。

それでは、この点につきましては、今友永委員が実務の観点から御指摘いただきました点、あるいは実務指針との連携というものを考えながら、今後これを基準の中で文章化する努力をさせていただきます。

もう1つ、ディスカッションと並びまして、この「実施基準」の中では、ゴーイング・コンサーン、つまり、企業の継続性に関する手続と申しますか、この取り扱いにつきまして、もう1つの今回の監査基準の改訂の大きな要点としてございます。そこで、このゴーイング・コンサーンは、この後御検討いただく報告基準にも関連がございますけれども、ここでもう1度ゴーイング・コンサーンの流れにつきまして、国際監査基準をもとにいたしまして、髙山委員から御説明をいただきたいと思います。お願いいたします。

○髙山委員

日本公認会計士協会の髙山です。

私からは、ただいま部会長の方から御説明がありましたとおり、今回の監査基準等の改訂に当たりまして、中心的なテーマでありますゴーイング・コンサーンに関する考え方について、国際監査基準の指示を使いまして、ここでもう1度確認をさせていただきたいというふうに考えております。

ゴーイング・コンサーンは、皆様御承知のとおり、現行の監査基準においては全く含まれておらない内容でありますので、今後具体的な文章化を行うに当たりまして、どのような、いわゆる監査のステップが文章として表現されるのかということをまず確認させていただきたいと思います。とともに、最後に、今「実施基準」「報告基準」という話がございましたが、どのステップが具体的な形で盛り込まれていくのかというところを資料1と対比いたしまして述べていきたいと思います。

それでは、お手元に資料3というものが配付されておるかと思いますので、これに従いまして、国際監査基準におけるゴーイング・コンサーンの考え方の流れを確認してまいりたいと思います。

まず、これまでの部会において何度も指摘されておりますが、財務諸表の作成責任は経営者にあります。監査人の責任は、経営者が作成する財務諸表が適正に作成され、かつ表示、開示されているかどうかということについて意見を述べることにあります。この財務諸表の作成に当たりまして、経営者は企業のゴーイング・コンサーンの前提が妥当であるか否かについて評価しなければならないということであります。監査人は、その評価が妥当であるかどうかということについて検討しなければならないという、この二重責任という表現が使われておりますけれども、そういう関係にあるという前提がまずございます。

具体的にですけれども、監査計画の立案の段階で、まず、企業の事業内容や経営環境等について、今友永委員の方からも御指摘がありましたけれども、経営者等のディスカッションを通じまして、このような内容の把握あるいは自己の理解というものの整理ということを当然行うわけですけれども、その中で、ゴーイング・コンサーンに関する状況ということも判断するということを今回盛り込もうということになるわけですけれども、そういったことに関しての知識ですとか、あるいは今期の状況等を勘案した上で、ゴーイング・コンサーンについての評価が行われるということであります。

まず、この段階では、ゴーイング・コンサーンに疑念をもたらす事象や状況があるかどうかということが検討されるわけですけれども、フローチャートに従えば、そのような疑念がなければ、ゴーイング・コンサーンの前提は当然妥当だという結論がつけられまして、ゴーイング・コンサーンに関する評価についての特段の追加的な手続というものは要求されません。したがいまして、計画された手続が実施されまして、結果、重要な問題がないと結論づけられれば、フローチャートに従いますと、適正意見が表明されるということになろうかと思われます。

また、疑念をもたらす事象や状況があると認識された場合には、経営者がそのような事象や状況について評価し、適切にそれに対処しているかどうかということを監査人は次の段階で評価しなければならないということが指示されております。

その評価の結果、ゴーイング・コンサーンに疑念をもたらす事象や状況があるにもかかわらず、経営者が評価していない、あるいは評価が不十分であるという結論に仮に至った場合には、監査範囲の限定ということになりまして、意見差し控えとなると考えられます。これは、監査人は、ゴーイング・コンサーンの前提についての評価に当たりまして、十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならないわけですけれども、その証拠が得られないということになりますので、結果的にそのような形になろうかというふうに考えております。

次に、経営者が評価を行って、かつ対処しているという結論が得られた場合に、次の段階で監査人はその疑念についての所在ですとか、その内容につきまして、追加的な手続を実施するということが指示されております。その手続の結果、ゴーイング・コンサーンの前提は妥当と言えないという結論に仮に達した場合には、ここで不適正意見が表明されるというふうに考えられます。このような状況は非常にまれであろうかというふうに考えられるわけですけれども、ISAにおいては、そのような指示がなされているということであります。

続きまして、ゴーイング・コンサーンの前提は妥当であるというふうに判断された場合ですけれども、ゴーイング・コンサーンについての重大な未確定事項が存在するかどうかという判断が指示されております。これは、現状の前提は妥当だというふうな結論があったとしても、将来、その前提が覆るような事象や状況が発生する可能性があるんじゃないかという、そういった状況がないかどうかということをまず確認しにいきまして、もし、そのような状況があれば、それについても評価しなければならないということになろうかと思われます。

ゴーイング・コンサーンの前提は、以前の部会においても報告させていただいたと思いますが、個別の事象が大変重要で、それが疑念になるということもあろうかとは思いますけれども、いろいろな事象が複合的にかかわり合って、結果としてゴーイング・コンサーンの前提に疑念が生じるということも、そちらの方が、どちらかというと多いのではないかなというふうに思われます。

ゴーイング・コンサーンに影響するような、そのような重要な未確定事項が存在しないと結論づけられれば、先ほど申し上げましたように、計画された手続が実施されて、結果、重要な問題がないと結論づけられれば、適正意見が表明されるということになろうかと思います。

一方、重要な未確定事項の存在が認識された場合には、その事象、事項が、ゴーイング・コンサーンに与える影響というものを次の段階で評価しなければならないということになります。当然この検討は、まず経営者によって認識、対処されるものであろうかとは思いますけれども、監査人は、その経営者の認識や対処というものが、まず適切に行われているかどうか。さらには、財務諸表において、事象、事項が適切に開示されているかどうかということが次の段階で検討されると考えられます。

その検討の結果、適切に開示されているというふうに判断された場合には、適正意見が表明されると考えられます。ただし、その未確定事項の影響が極めて重要であるというふうに判断された場合には、意見差し控えとなる場合もあるということが述べられております。

次に、適切な開示がない、あるいは不十分であると判断された場合には、その重要性によって、限定つき適正あるいは不適正意見が表明されるという流れになろうかと思われます。

流れといたしましては、ざっとこのようになるかと思われますが、ここで、今回のこの監査基準等の改訂に当たって、実際文化されるであろう部分について、資料1と対比させていただきますと、まず、「実施基準」で表現されるであろう部分といたしましては、この資料3のスタートから2番目に、監査計画に当たりゴーイング・コンサーンに疑念をもたらす事象や状況について評価するというステップがありますが、そこの部分、及び経営者の評価、取り組み、それについての検討、並びに、疑念がある場合の追加手続の実施という、この3つが主に考えられるというふうに思います。

資料1で言いますと、2ページ目の「第三 実施基準」の「基本原則」の3にあります「企業の継続性関係」というところがありますが、ここで、そのような内容――どういう形で盛り込まれるかは、今後の話になろうかと思いますが、このような内容が盛り込まれるのかなというふうに考えております。

また、「報告基準」で表現されるであろう部分といたしましては、資料3の一番下に、5つほどボックスがありますが、その中の監査意見に至るまでの監査人の判断について、恐らく指示がされるのであろうというふうに考えております。

なお、適切な開示がなされている場合に適正意見が表明されると申し上げましたが、その内容につきまして、強調文を付すということがISAでは述べられておりますけれども、これは、資料1の4ページ目にあります「報告基準」の七に、「その他の事項」というところがございますが、そこに該当するのではないかなというふうに考えております。

また、限定つき適正あるいは不適正となる場合についての理由ですとか、その付記の内容につきましては、同じく「報告基準」の6のところに該当するのではないかなというふうに考えられます。

また、適正意見については同じく四に、不適正意見は六に、意見差し控えは五に、それぞれ該当するのではないかなというふうに考えております。

私の方からは以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま髙山委員から御説明いただきましたけれども、ゴーイング・コンサーン関係につきましては、それぞれ「実施基準」あるいは「報告基準」の中で規定されてまいりますが、「実施基準」の中でも、2カ所ほどに分かれております。今後は、「基本原則」のところにまとめて規定してはどうか。それに当たっての規定の内容について、ただいま試案と申しますか、流れ、考え方を示していただいたわけでございます。

そこで、ゴーイング・コンサーンにかかわりまして、内藤委員から、ゴーイング・コンサーンの米国の開示事例を研究されました関西学院大学の林隆敏先生の論文を御紹介いただきました。そこで、資料4としてお手元に配付しております。この論文は3月に発表される予定とのことでございます。部会で御紹介することにつきましては、林先生に御了解を得ておりますので、内藤先生から、この点、御説明をいただけるとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

○内藤委員

今、脇田先生の方から御紹介があったんですが、過去のこの部会でも、監査先進諸国で、ゴーイング・コンサーンに関する実例がどうなっているんですかということをたびたび御質問をいただいていたわけですけれども、私自身、90年代前半までのアメリカあるいはドイツについての研究成果を出していたんですが、ここ最近、5年間ぐらいのデータが手元になかったものですから、何も申し上げられなくて、残念な思いをしたんです。

先月、1月末に、大学で監査を研究している学者の集まりがありまして、そこで、今御紹介のありました関西学院大学商学部助教授の林隆敏さんが、独自にデータベースを駆使して、アメリカのニューヨーク証券取引所、アメリカ証券取引所、そして、NASDAQ市場に上場している会社について、ゴーイング・コンサーンの開示及びそれに対する監査報告書での取り扱いについて、基礎的な研究をされた結果が紹介されたわけです。

そこで、これはぴったり、前から質問のありました点について、非常に議論の参考になるんではないかということで、今日、御紹介させていただくわけです。

ただ、申し上げるまでもありませんけれども、この実態の分析をされているのは林先生ですので、私が内容について、全部理解していない部分もありますので、私の理解させていただいた範囲で、資料4をかいつまんで御説明させていただきます。

まず、4ページの方に図表1がございまして、「普通株式がニューヨーク証券取引所、アメリカ証券取引所、NASDAQで売買されて事業継続中の会社の監査結果」という表題で出ている表でございますが、そこの99年度に、合計数7,992社、これをCOMPUSTATというデータベースから、その7,992社の監査報告書をすべてダウンロードされて、その中で、どういう意見になっていたかという分布があるわけです。

アメリカでは、御承知のように、ゴーイング・コンサーンについて重大な疑義あるいは疑問がある場合には、説明パラグラフで、監査人は強制的に記載をしなければならないという規定がございますので、無限定適正であって、かつ説明文節がついているものが幾らあるのか、これを林先生はまず調べられて、7,992社のうち1,112社がその対象になっている。

そしてさらに、ゴーイング・コンサーンを原因とする意見差し控え、今髙山先生の方からもありましたけれども、意見差し控えのケース、これが4つですね。合計1,116社が、ゴーイング・コンサーンの可能性があるというわけなんです。

この1,116社について、次の5ページの図表3のところで、この1,116社について、ゴーイング・コンサーン関係の問題と、それ以外の問題を峻別されたところ、ゴーイング・コンサーン問題については225社該当があった。そうしますと、もともとの調査対象7,992社ですから、アメリカの上場企業、多分14,000社ぐらいだと思いますので、そのうちの約6割のうちの225社、すなわち2.8%が、このゴーイング・コンサーンの問題が出ているということなんです。

その図表3では、その1,116社が、過去98、97、96、95とさかのぼってどうだったかという調査をされているんですけれども、そういう意味で、98年以前のデータというのは、正確にこのゴーイング・コンサーン問題の全体をとらえているわけではありませんので、1,116社が以前はどうだったかという調査をされているというふうに見ていただければと思うんです。

この2.8%という数が多いか少ないかということになるかと思うんですけれども、私が以前した88年から93年のSECオンラインという別のデータベース、以前のデータベースとか、それから、それ以外のアメリカの大学の研究者が使っているデータベースで調べた結果では、ゴーイング・コンサーン問題について、4.34%あるいは5.9%という全体に対する割合でしたので、それよりは減っていますけれども、しかし、3%の企業が毎年こういう形でゴーイング・コンサーン問題を扱っているということになりますと、これはかなりの数があるというふうに判断していいんではないでしょうか。

ですから、以前、ここで御紹介がありましたけれども、アメリカのAccounting Trends&Techniquesの中の未確定事項の紹介が非常に減っている、二、三件しかないという情報が出て、それだったら意味がないんじゃないですかというような御意見もあったかと思いますが、決してそんなことはないということが、これではっきりするんじゃないでしょうかということです。

第2番目は、この225社について、どういうような理由でそれをゴーイング・コンサーンの説明文節としたかという理由が、7ページから9ページにわたって、図表4に、どういうような兆候があったのでこういうふうに判断したかという内容分析をされています。

そこでは、アメリカのSASが、4つの範疇にそういったような兆候を分けていまして、1つ目は、財務指標の不利な傾向、それが1つ目の範疇。それから2つ目が、起こり得る財務的困難、その他の指標という範疇。そして3つ目が、企業内部の事項によるもの。そして4つ目が、既発生の外部事項によるもの。こういったものをアメリカの監査基準で挙げているわけですけれども、実際の調査では、財務指標が非常に悪化しているというところが50%を超えています。

そして、将来起こり得るであろう財務的困難に関する指標が約4割というわけで、その両者を合わせますと9割になりまして、そこで林先生がおまとめになっているのは、10ページに、この全体的な傾向を見ると、今申し上げました範疇AとBというふうに分けてございますけれども、財務指標あるいは財務的な困難に関する指標、それを会計士が判断の根拠として監査報告書にゴーイング・コンサーンに関して重大な疑義がある、そういうことについて説明を載せたという結果が出ていまして、どちらかというと、その企業が存続可能かどうかという判断をしたというよりも、こういう財務情報を重視して、現にある数字をもって判断しているということがこの結果からは出ているんではないでしょうか。それが、第2番目だと思います。

それから、第3番目に、資料番号をつけていなくて順序が少しはっきりしていないんですけれども、後ろの方に、実際の監査報告書の事例と、そして、財務諸表の注記の英文、そして、その一部和訳をつけたものを添付してございますが、本日、その3つの資料がついてございまして、私の方で順番を指定すればよかったんですが、一番最初に、一番まずい事例が出ていまして――まずいというのは、非常に簡単にゴーイング・コンサーンのことを書いている事例が出ているわけです。

その2ページを飛ばしていただきまして、次の取引所がニューヨーク証券取引所で、「フロアリング・アメリカ株式会社取締役会御中」という訳をつけている部分を見ていただきたいんですけれども、これは、既に前回、監査報告書について、公認会計士協会の持永先生から、アメリカの監査報告書の標準ひな型については御説明があったので、それと同じ文言が、この第1パラグラフ、第2パラグラフ、第3パラグラフまでは出ているわけです。

それにつけ加えて、第4パラグラフ目に、説明文節と呼ばれるものがついていまして、その中に、訳を見ていただいたらわかるかと思うんですけれども、キーとなる用語がきっちり入っているわけです。どの事例も同じなんですけれども、1つ目のキーとなるのは、この監査報告書が対象としている財務諸表が、ゴーイング・コンサーンとして存続することを仮定して作成されているということを必ず書きます。

そして、その財務諸表の注記で説明がもう既にあるんだけれども、こういうようなゴーイング・コンサーンに関する重大な疑義が生じていますよと、その状況を説明しています。

3つ目は、そういった事情から、ゴーイング・コンサーンとしての存続能力についての重大な疑問を惹起しているという事実を述べ、そして、それらに対して、経営者はどういう計画を持っているかということがどこに書いてあるかを言っています。

しかし、計画はそういうふうに書いてあるんだけれども、こういったゴーイング・コンサーンとしての存続能力についての重大な疑問を惹起させるような事項があるんだけれども、それに関して、添付の財務諸表には、そういった影響を反映するような修正は行われていない。こういった4つのことが必ず反映されて記載されています。

ですから、説明文節と言いましても、これは強制記載事項であるわけですが、ゴーイング・コンサーンの未確定事項については、強制開示事項なんですけれども、その内容も、文言をもって、ある程度きっちりした形で出すようにされているという特徴があると思います。

それから、もう1つ、少しこれは問題になる事例だと思うんですけれども、資料4の後ろから3枚目を見ていただきますと、そこに「リンク・キャピタル株式会社取締役会及び株主御中」という、これはNASDAQの会社に対する意見差し控えの事例が出ています。

この事例では、1999年度と98年度の連結財務諸表を監査した結果が述べられているわけですけれども、通常の上から3つ目までのパラグラフでは、98年度の財務諸表に関して、無限定適正である意見が述べられた後に、説明パラグラフがついて、ゴーイング・コンサーンとして非常に重大な疑義がありますよと。その後に、その結果として、1999年度の連結財務諸表に対する意見を表明することができないし、表明しないという文言が出てきているわけです。

では、その中身が、先ほど御紹介しました事例と比べて、これがなぜ意見差し控えになったのかということが、この事例2つだけでは判然としないわけですけれども、いずれにしても、このゴーイング・コンサーンに関して意見を差し控えるということについて、少し議論を整理しないと、この意見にどういう形で反映させるのか。説明パラグラフで書いておきながら、またその意見に反映させているような事例がここにあるわけです。ですから、そういった問題点も、意見を差し控えるというときに、いろいろ問題が出てくるんじゃないかということがこの事例からわかると思います。

いずれも、これは関西学院大学の林先生の御研究でありますので、この後、いろいろこういった分析が出されて、成果が公表されると思いますので、そちらも随時、わかり次第この議論に反映させていただければというふうに考えています。

以上でございます。

○脇田部会長

御紹介いただきまして、ありがとうございました。ただいま御紹介いただきましたように、ゴーイング・コンサーンにつきましては、このような事例等の検討が必要であり、そうでありませんと、監査基準の方にも具体性がなく、かえってゴーイング・コンサーンの範囲が非常に拡散するということも考えられますので、今後、このような具体的にその事例によって範囲を明確にしていくという努力が必要なのではないかというふうに思っておりますけれども、この点を含めまして、「実施基準」全体及び今髙山委員、そして内藤委員から御説明いただきました点を含めて御発言ございませんでしょうか。いかがでございましょうか。

○内藤委員

先ほど髙山先生の方からの資料3について、ちょっと確認したい事項が3つございます。ISAのフローチャートを示していただいて、大変わかりやすいんですけれども、その中に、先ほど手続の問題として、ちょうど上から4つ目の四角のところに、「GCに係る重大な疑念について、追加手続を実施(経営者確認書も含む)」とありますね。これは、先ほど友永先生がおっしゃった経営者とのディスカッションと、経営者確認書との関係ということも含めて、ゴーイング・コンサーン問題についても、経営者とのディスカッションというのは当然対象となるというふうに考えるんでしょうかということと、それから、ISAの中では、こういう経営者のディスカッションという意味で、この確認書ということをとらえいてるのかどうか。私、ちょっとその辺がはっきりしていないので、教えていただきたいというのが1つです。

それから、ISAのフローチャートの下から2つ目のところに、ゴーイング・コンサーンについて重大な疑念を抱かせる重要な未確定事項があったときに、適切な開示があるかどうかという判断は、この適切な開示というのは、注記での未確定事項の開示の適切性という意味なんでしょうか。あるいはそれ以外に、何か特別にIASの方でその開示基準があるんでしょうか。これが2つ目です。

それから3つ目は、このフローチャートの下に、意見差し控えが2つ出てまいりますね。経営者がゴーイング・コンサーンの評価及び取り組みをしていなければ意見差し控え、これはよくわかるんですが、適切な開示があっても、なお意見差し控えになるという部分ですね。これの関連というんですか、要するに、それは全く判断できないからということなんでしょうかということと、それから、無限定適正意見の場合であっても、強調文と書いてありますね。この強調文は、SASでは、ゴーイング・コンサーンに関する未確定事項は、これはmustで書かなければなりませんが、ISAの場合もmustでしょうか、それともneedでしょうか。

以上、お願いしたいと思います。

○脇田部会長

内藤委員から今御質問いただきました。大きく分けて3つございますが、まず、全体的に髙山委員から御説明いただきまして、ディスカッションとの関係、そして経営者確認書との関係で、友永委員から御発言いただけるとありがたいと思います。

では、まず髙山委員、お願いいたします。

○髙山委員

まず、1点目のディスカッションの対象になるかどうかということですが、たしかISAの中では、具体的にゴーイング・コンサーンに関するディスカッションというような指示はないと思います。ですので、ここで今こういう書き方をさせていただいていますけれども、先ほどのディスカッションの対象かというところで、私はそういう表現をしましたけれども、今回の監査基準の改訂においては、そういったところも念頭に置いたディスカッションが行われるんであろうというふうに考えております。

また、それを裏づけるための書面という意味では、経営者確認書へのゴーイング・コンサーンの問題があれば、それに対する記載というものも経営者に対して求めるということも必要な手続になってくるのではないかなというふうに、私個人は考えております。

それから、ISAでの開示の基準という点でありますけれども、私の理解では、個別の開示基準というのは、ISAでは求められていないのか。具体的に何と何と何を書きなさいということは、詳細な形での指示はないんではないかなというふうに考えております。その辺の理解は、もし、私の考え方が間違っているようであれば、どなたか、フォローしていただければと思います。

それから、無限定適正の場合の強調文の点でありますけれども、ここの部分についてのmustかneedかというところでありますが、私は、ここの部分については、どちらかというのは、そこまで覚えておりません。申しわけありません。どなたか御存じの方がいらっしゃいましたら、フォローしていただければというふうに思います。

私の方からは以上です。

○脇田部会長

ただいまの点で、補足していただけるとありがたいんですが、それでは、友永委員、お願いいたします。

○友永委員

ディスカッションの件につきましては、そういう用語を使っていたりはしておりません。それで、ここで言う追加手続というのは、マネジメントのつくっているプラン、行動計画についてレビューをしろということを言っておりますけれども、そうしたレビューをするには、これは非常にシビアな問題ですから、経営者にさまざまな質問をし、回答を得ながらこれをレビューするということが当然予定されているのではないかなということを考えております。

最終的に経営者の確認書という言葉は、文章に限らず、経営者の陳述と日本ではよく訳されておりますけれども、そういったもので、最終的に書いたものでもらいなさいということですから、そういったものを最終的にもらうという規定だろうと思います。

それから、開示基準というお話につきましては、ISAはあくまで監査基準でございますので、それぞれの国が持っている開示についてのフレームワークに従ってやってくださいということです。具体的にそのフレームワークがない場合でも、経営者には開示責任があるし、監査人は監査する責任があるという立場はとっております。

それから、全部覚えておりませんけれども、強調文ですね。そこはブラックレターになっておりますので、モディファイしろということを言っております。強調文をつけなさいということは言っております。

あとの部分は、山浦先生に補足していただきたいと思います。

○脇田部会長

では、山浦先生、よろしゅうございますか。お願いいたします。

○山浦委員

ディスカッションについては、友永先生の方でお答えになったことで、その筋でよろしいんじゃないかと思うんです。

それから、注記については、これは加藤先生がおいでになっていますので、国際会計基準で、もし、この点について、何か御存じのことがあったらお伺いしたいと思うんです。

それから、もう1つ、最後の強調文については、mustというよりも、こちらではshouldという言葉を使っています。要するに、mustに相当しますけれども、そういった表現になっております。

○脇田部会長

山浦先生からございましたが、加藤先生、よろしゅうございますか。

○加藤委員

手元に持っていないので、余り具体的なことがわからないんですが、たしかPresentation of Financial Statementsの中で、ゴーイング・コンサーンについては一定の開示をしなきゃいけないというのがあったと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。今、いろいろと御発言いただきましたが、内藤先生、いかがでございましょうか。

○内藤委員

まず、このゴーイング・コンサーンに関して、追加手続で、経営者の計画をレビューする。それは非常にいいことかもしれないんですが、先ほどの経営者とのディスカッションについて、私も十分考えたわけじゃないんですけれども、ディスカッションをして、共通の理解を深めるという意味はいいんですが、しかし、それをしているということで、ゴーイング・コンサーンについて、経営者の見通しに監査人が結果として関与してしまって、責任追及の言質をとられないかという心配はないんでしょうかというふうにちょっと思うんです。

それがまず1つと、それから、IASのプレゼンテーションのパラグラフ23に、こういうゴーイング・コンサーンに問題があるときには、経営者は開示しなさいという規定はあるわけですけれども、しかし、では、我が国で、この監査基準をつくるに当たって、適切な開示の基準をどうされるのかということが改めて問題になってくるんじゃないかと思うんです。

では、これを監査基準の中にこういう開示をしているかどうかについて見るという規定だけで事足りるのか、あるいはそういうことを書いていいのかどうかという問題も出てくるんじゃないかということなんです。

それから、今お答えいただけなかったんですけれども、適切な開示があるにもかかわらず、重要な複数の未確定事項が存在していると意見差し控えになるという関連性が、なぜそこだけ未確定事項について、それがあれば意見差し控えになって、不適正には何でならないのかなという、そこの区別というんですか。先ほどのアメリカの事例でも、私はやり方がおかしいのと違うかと思うんです。

今、強調文というのはshouldだという、要するに、そういう問題があったらちゃんと出しなさいよ、それは監査人の使命として、情報提供として出しなさいということだと思うんです。ところが、意見差し控えとなってくると、それは情報提供というような意味ではなくて、これは先ほどの目的にありました監査の結果を示すということで、これは意味は違うと思うんです。だから、強調文として書ける場合は書きなさいよ、強調文として書くのに確信がないんであったら意見差し控えにしなさいよというと、これは実務上、同じようなケースで違った対応になってくるんじゃないかという危惧を持っているわけです。

だから、この辺について、私自身も意見があるわけじゃないんですが、もう少し詰めなければならないんじゃないか。ですから、ISAのフローチャートだけでは、その部分がはっきりしないなという感想といいますか、それについてもう少し御議論が欲しいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。今御質問といいますか、御発言は3点ほどあったと思いますけれども、第2点につきましては、このゴーイング・コンサーンを取り上げますときに、第一部会との関係で御発言いたしましたように、一応第二部会の方で、このゴーイング・コンサーンの議論をしていくということになっておりまして、今、その点については、適切な開示の基準の設定については、第二部会が先行しているという形で議論をしております。この点は、できれば若杉会長から御発言いただけるとありがたいんですが……。

○多賀谷課長補佐

開示基準をどこでつくるかということで、証券取引法であれば、証券取引法の規定としてつくるということだと思います。御提案をいただければ、それはそれでできると思います。ただ、前の段階で、shouldというところを判断するというのは、これは監査基準の中での問題……。つまり、GCに関して監査人に提示するものを外にも提示するかとか、あるいは外に出しているもの―その計画―を監査人には少なくとも提示をしないと、この図だと、意見差し控えになっちゃうんだと思いますので、そういう会社と監査人との関係部分は監査基準での御判断だと思います。具体的な開示規定が必要であるという部分については、それは、基準に応じて対応するということはできると思います。

○内藤委員

そうしますと、この監査基準の改訂と、ゴーイング・コンサーンの開示については、セットで提案をするということでよろしいでしょうか。

○多賀谷課長補佐

審議会でそういう御提案があれば、当然今までも、会計基準も同じですので、会計基準で注記事項が必要だということであれば、それに応じた証券取引法上の取り扱いを定めておりますので、行政的な手続としては、別に同じだと思います。その議論をされる場が、別に第一部会であるか、第二部会であるかということは問題ないということだと思います。

○脇田部会長

今、多賀谷課長補佐から御説明がありましたように、この問題を取り上げるに先立ちまして、開示の基準でございますから、第一部会での審議ということになっておりますけれども、いろいろな調整を若杉先生のもとでしていただきまして、一応第二部会が先行して、監査の問題として、ゴーイング・コンサーンを取り上げていく。その中で、必要に応じて、これから開示基準については考えるという形で、今先行しておりまして、最終的に、今多賀谷課長補佐が説明されたように、これからの問題として考えておりますので、検討が必要となれば、その検討をしなければならないと思います。また、これは、若杉会長に御相談をして、全体的な調整もお願いしなければならないかと思っております。

○若杉会長

今までは、第一部会、第二部会というふうに、縦割りの問題別の部会をつくって審議していただきますけれども、昨年から、企画調整部会というものを新たに設けまして、いろいろ微調整とか、縦割りでもって扱っていく問題を横に関連づけながら、全体として調整していくという、それだけではありませんけれども、今の問題に関して言えば、そういう機能が企画調整部会にありますので、そういう今のような問題を、この第二部会で扱う場合に、もし、関連すれば、第一部会にも御報告するというふうにして、縦割りの審議の仕方を企画調整でもって、全体的につなぎ合わせて調整していくという方針をとっておりますので、必要に応じて、そういうことができると思います。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。

○山浦委員

内藤先生に幾つか重要な点を御指摘いただいたわけで、1つは、ゴーイング・コンサーンに係る重大な疑念について追加手続を実施する。その中で、先ほど出てきましたディスカッションの問題、これは、この問題だけにかかわらず、内藤先生がおっしゃるような意味での御懸念は、要するにディスカッションという、これを監査手続と位置付ければ、これはすべてにかかわってくることだと思うんです。

これについては、基本的には、経営者側の財務諸表の作成責任、それで、監査人は監査人側の意見表明の責任、このいわゆる二重責任の原則をある意味ではクロスする場面になるんではないかと思うんです。特に知識を共有して、あるいはもっと先に進めば、責任を共有する、こういったことにもなりかねない。恐らく日本の監査実務の中で、まだこれについてはなじみのないところですので、これを監査手続として位置付けるにしても、この性格等については、いわば明確な理解を我々自身がしておかなくちゃならないんではないかと思います。

少なくとも経営者側で問題の把握をしているかどうか、それをどういう評価をしているか、具体的にどういった対処をしているか、そういう知識を得て、監査人側としては、新しい知識に基づいて、リスクの在り処を理解する。こういうスタンスでもって位置付けられているんですけれども、これがなかなか現実にどの程度のそういう二重責任の原則が貫かれているか、これは、もう少し研究は必要なところではないかと思っております。

それからもう1つ、適切な開示がある場合に、強調文をつけて無限定適正意見を出す。こういうことで、その1つの代替的な措置として、意見差し控えの場合もある、こういうことで、確かにこれは、国際監査基準では、無限定適正意見で強調文をつけるというのがブラックレタリングで、ところが、その代替案として、ブラックレタリングじゃない形で意見差し控えをする場合もあるかもしれない、そういう非常に弱い表現をしております。

これは、実は、SASのほうでも同じような議論がありまして、たとえ無限定適正意見で、日本で言いますと特記事項で説明をしたとしても、その未確定事項がかなり複数あって、こんなのでは、とても監査人は責任を負えない、こういうケースもあるんではないかということで、SASの中でも、この意見差し控えについての許容というか、これを実務側から大きな要望があったということを聞いておりまして、結局これは入れざるを得なかった。現実問題として、先ほどの林先生の方での論文にも掲載されておりますような形での監査報告書が出る。

これは、確かに内藤先生の方で御指摘のように、問題点で我々も随分と議論して、どういうところでこの判断を違えるのか、悩ましいというか、議論したところですけれども、もう少しこれについても、我々は研究する必要があると思います。

○脇田部会長

ただいま内藤先生から、ゴーイング・コンサーンをめぐりまして、林先生の論文を御紹介いただき、かついろいろ御指摘をいただきました。今後の議論にこれを生かさせていただきたいと思っております。

これから時間が少し迫ってまいりましたので、「報告基準」を含めて御発言いただければありがたいと思いますが、1つだけ、「実施基準」の中の3ページのところの四番の「監査証拠の入手と評価関係」というのがございまして、これも、御発言の糸口として申し上げておきたいのですが、ここに、2番目の「・内部統制の有効性の評価のための監査手続、分析的手続を含む実証的な監査手続を通して十分かつ適切な監査証拠を入手することについて」ということで、従来、「通常すべき監査手続」とか、あるいは個々の立会とか、確認とかいったような個々の監査技術と申しますか、そういったものが列挙するような形で規定されておりました。

それにかえまして、ここでは、テスト・オブ・コントロールというような、統制テストと申しますか、そういった内部統制の有効性の評価のための監査手続、それから、実証テストと申しますか、Substantive Testと申しますか、そういった実証的な監査手続というような広義の目的と申しますか、手続が、個々の手続ではなくて、ある監査の立証をダイナミックにとらえる形でこの文言を規定するという方向、これが国際的にはそういった監査手続の実務での状況、それを反映した形で規定する方向をとりたいというふうに考えておりますけれども、この点について御発言はございませんでしょうか。

○友永委員

この点は、特に実務指針をつくる協会の立場から申し上げますと、ぜひこういった「Test of Control」、あるいは「Substantive Procedure」といった概念をきちんと入れ込んでいただいて、整理していただきたいと思います。

現在、取引記録及び財務諸表項目の監査手続というのが「Substantive Procedure」に相当するものとして、言葉としては使っているんですが、期中取引を見ることと、それから、期末の財務諸表項目の内容を見ることの監査手続なんだというような誤解を受けておりまして、リスク・アプローチ上の監査計画の段階で、実施すべき監査手続、実施時期、その範囲を決定するといったところの内容が理解されていないというか、余り理解されにくいというところが、そういった用語の定義に相当起因しているのではないかと思っておりますので、ぜひここら辺は明確にしていただきたいというふうに思っております。

よろしくお願いします。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま友永委員から御発言がありましたけれども、山浦委員からも、どうぞ。

○山浦委員

おっしゃるとおりでありまして、この「audit procedure」は英語の表現ですけれども、実は、「audit procedure」を我々は一般に監査手続と訳しております。ところが、これまでと過去の我が国の監査基準では、実は非常にあいまいに、定義がうまくされないままに、この監査手続という言葉がいわばひとり歩きした上で、多義的に使われております。

最も狭い意味では、個々の技術、例えば突合であるとか、実査、立会、確認であるとか、そういう個々の技術を指すというケース、それから、そうした個々の技術を監査の領域で選択して、適用して、そして、最も広い意味では、それから入手した証拠を評価する。そういうことまで含めて監査手続という言葉を使っている場合もあります。

したがいまして、この際、もう少し監査手続という概念を定義づけるなり整理するなりする。それから、その上で、今のリスク・アプローチの根幹になっております「Test of Control」、それから、「Substantive Test」、この用語に相当する基準上の言葉、これを改めて考えるなり、あるいは過去あった監査手続という言葉の定義をした上で、もう1度整理し直すというか、位置づけをし直す、こういったことも必要ではないかと考えております。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいまの点につきまして御発言ございませんでしょうか。

それでは、今御指摘いただきましたように、そしてまた、私が申し上げましたように、この「Substantive Test」、あるいは「Test of Control」といったような、そういった実務上における監査手続の実施の状況、現況というものを踏まえて、こういった監査基準の中でも、それを反映した監査手続の設定の仕方をより明確に示すということをこれから検討するということにさせていただきたいというふうに思っております。

このほかに、報告基準を含めまして、御意見ございませんでしょうか。

それでは、御発言がございませんので、1つだけ私からまた申し上げますけれども、4ページのところに、「報告基準」がこのような形をとるのではないかというふうに思っております。それで、ここを一覧いたしまして、「基本原則」のところに、「意見表明の基礎関係」「監査意見の表明関係」というのがございますけれども、ここにもう1つ、監査意見に行き着くまでの過程と申しますか、そのプロセスを明らかにし、その中で、文書化の必要性、そして、審査の位置づけといったようなものをここに記載してはどうかというふうに考えますが、この点はいかがでございましょうか。

また、この中で、例えば六番の「監査意見の限定」のところに、2つ目でございますけれども、「・会計基準への準拠性は取引の実質を踏まえて判断することについて」ということがございますけれども、これは、むしろ「基本原則」の方に移して、監査意見の表明の中に、実質判断というものを盛り込むという形で規定化してはどうかというようなことを考えておりますが、この辺、皆様方の御意見はいかがでございましょうか。

それから、あと、監査済み財務諸表と非監査情報との不整合が「その他の記載事項」にございまして、これも御指摘いただいておりますけれども、これまでの監査基準とは異なると申しますか、取り上げられていなかった、明記されていなかった部分でございまして、この点の何か御発言がございましたら、御教示いただければありがたいと思います。

○多賀谷課長補佐

今、部会長から御指摘いただいた監査済み財務諸表と非監査情報の不整合ということで、この資料は前回の資料と変えておりませんので、いま1度若干表現が不十分なのでつけ加えさせていただきますが、ここで言う監査済み財務諸表と非監査情報との不整合というのは、監査済み財務諸表が付いている開示書類といいましょうか――における非監査情報との不整合ということで、監査報告書の上で言及する必要がある範疇は、そこに限定をしているということ。

以前、加藤委員からも御指摘をいただいたと思うんですが、その部分でございまして、「実施基準」の方の、先ほど「監査証拠の入手と評価関係」の中にございます下から2番目の「財務諸表に重大な影響を及ぼすおそれのある会計記録以外の情報への注意について」、ここはそういう特定をせずに、監査中、いろいろな情報源といいましょうか、それを幅広く注意をするということで、そこはその監査上注意をする範囲の全部を監査報告書で言及するということではないということで、制約が加えられているということでございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。御発言ございますでしょうか。

それでは、そろそろ予定の時間となりましたので、特に御発言がございませんでしたら……。

○加藤委員

今日のいろいろ具体的な基準についてのことではないんですが、タイミングとその他についてちょっとお聞きしたいんです。私ども、この審議会でいろいろ監査基準の見直しを審議するときに、国際監査基準とかアメリカの基準を今日のように非常に参考にしているわけですが、そういうものがこれから大きく変わるかもしれないという状況になっているわけですね。

例えばアメリカの場合は、この間、山浦先生から御報告がありましたように、POBというところが報告を出しまして、場合によったら、不正発見型監査というものをAICPAは導入するように提案しておりまして、これをどのように最終的にAICPAが反映するかわかりませんけれども、当面の期日としては、来年度からの財務諸表には新しい監査基準を適用するというようなことが提案に入っているわけで、これの動きが非常に気になるということ。

それから、国際監査基準の方も、IFACのほうで、IAPCとは別に、フォーラム・オブ・ファームという新しい組織をつくって、いろいろ監査基準の検討をするという動きがあるということですね。それから、IOSCOのほうでも、これからは監査の国際監査基準の批准ということに向けて検討を始めていく。

この審議会が参考にしているこういうものが、大きく変わるか変わらないか知りませんけれども、動こうとしているときに、私どもがこういうふうにして、いろいろそれを参考にしていても、場合によったら、私どもの結論が出たときには、もうそういう参考にしているものが変わっている可能性もあるということで、その辺をどのように考えられているのか。そういう海外の動きとは関係なく、こちらでどんどん進めて結論を出すのか。あるいはある程度まとまったところでも、そういう海外の動きを見て待つのか。その辺、どういうお考えなのか、ちょっとお聞きしたいんです。

○脇田部会長

ちょうどこの点については、事務局からもお答えさせていただきますが、私としては、最大限公式、非公式のいろいろな情報がございますので、それらについて、会計士協会を初め、皆様方あるいは金融庁の事務当局等の情報網を最大限に活用しまして、世界の監査基準の動きを反映するような努力を最大限いたしますが、やはりあるところで決断しなければならないだろうと思っております。その点につきましては、逆に加藤委員を初め、皆様方の御協力をいただきたいというふうに思っております。

一応この監査基準の改訂作業のスケジュールがございますので、その中での最大限の努力をする。ただ、今御指摘のように、全く違った結果が出るかもしれません。現在のドラフトの段階でも、物が全然違うものになるおそれがありますし、否定されることもあるかもしれませんが、その点については、できる限りの拡張性を求めて、審議の中に反映したいと私は思っております。

○多賀谷課長補佐

手続的な面で申し上げれば、いつまでというふうに決めてはおりませんが、公開草案を出して、また、それに対する御意見も頂戴して、その後、また審議する段階で、当然必要な変更なり修正というのも加えられる余地があると考えております。

○脇田部会長

それでは、ただいま加藤委員の御指摘は大変重要なことでございますけれども、最大限の努力をいたしますし、皆様方にも、その点での御協力をお願いしたいと思います。

それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。

最後に、今後の日程でございますけれども、今、お手元に、第二部会の日程案を配付させていただいております。なるべくこの日程に従いまして、今後審議を続けてまいりたいと思います。ただ、途中でいろいろな事情も生ずるかと思いますので、詳細はその都度事務局から改めて御連絡させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

なお、次回は、3月16日の金曜日を予定しております。本日の御議論を踏まえまして、御指摘いただいた点、あるいは御教示いただいた点等を踏まえまして、基準部分を文章化したものをできるだけ可能な限り作成いたして、皆様の御議論を受けたいというふうに考えております。

それでは、本日の部会はこれで閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

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