企業会計審議会第34回監査部会議事録

1.日時:平成25年3月13日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより第34回監査部会を開催いたします。皆様には、お忙しいところご参集いただきましてありがとうございました。

まず、会議の公開についてお諮りします。本日の監査部会も、企業会計審議会の議事規則にのっとりまして公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○脇田部会長

ご了解いただきましたので、そのように取り扱わせていただきます。

それでは、議事に入ります。前回の部会では、不正リスク対応基準(案)及び監査基準改訂(案)につきまして、公開草案に対して寄せられたコメントの概要をご紹介するとともに、その対応などについてご審議をいただきました。

本日は、前回の部会でいただきました意見等を踏まえ、監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定について及びコメントに対する考え方につきまして、事務局と相談の上、所要の修正をさせていただきました。そこで、まず、その修正等についてご確認をいただきたいと考えております。

次いで、幾つかの検討課題について、その進捗状況を報告させていただきたいと考えております。

それでは、監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定について及びコメントに対する考え方の修正等につきまして、事務局より説明させていただきます。お願いします。

○栗田企業開示課長

お手元に資料1-1から1-3をご用意させていただいております。1-2は、前回の資料から修正した点を見え消しにしたものでございます。資料1-1は、その修正部分を溶け込ませてきれいな形にしたものでございます。資料1-3は、コメントの概要及びコメントに対する考え方でございます。

本日は資料1-2に従って修正点について順次ご説明をさせていただきたいと思います。なお、資料1-3は、本体の修正に伴いまして修正が必要になる箇所について、若干修正をさせていただいております。

まず、資料1-2の2ページ目でございます。ここの上のほうでございますけれども、今回、監査部会として意見を取りまとめるという段階に入っておりますので、少し文言を直させていただいております。ちょっと読ませていただきますと、「平成24年12月、公開草案として公表し、広く各界の意見を求めた。当審議会では、寄せられた意見を参考にしつつ、更に審議を行い、公開草案の内容を一部修正して、これを「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準」として公表することとした」と直させていただいております。

それから、次は3ページ目の一番下から4ページ目の頭のところでございます。ここは、監査人の責任について述べたところでございますけれども、前回の部会では、法律の話と監査論の話は別な話であって、それがわかるようにというご意見がございました。いろいろ検討させていただきましたけれども、おそらく最後の「監査人は責任を問われることはない」という、この「問われることはない」という言い方が何となく法律論ぽいという感じを持たせているのかなということでございますので、少し直させていただきました。前のページの終わりのほうからですけれども、「職業的専門家としての正当な注意を払って監査を行った場合には、監査人としてはその責任を果たしたことになる」と直させていただきまして、あくまでこれは監査論の世界の話であるということを明確にさせていただきました。

それから、同じく4ページ目の下のほうでございます。これも前回ご議論をいただきました、中間監査に本基準を準用すべきかどうかということでございます。結論としては変わっておりません。中間監査にも準用されるとしておりますけれども、説明のところを少し変えております。「年度監査の一環として行われるものと位置づけられている中間監査」という書き方をしておりましたけれども、四半期レビューもある意味で年度監査の一環と言えるということでございますので、そこは少し直しまして、「基準上不正に関する実証手続が定められている中間監査にも準用される」ということで、ここが四半期レビューと中間監査の大きな違いになるのであろうということで修正をさせていただいております。

それから、続きまして5ページでございます。ここは職業的懐疑心と正当な注意義務の関係についてでございます。前回の部会におきましては、「職業的懐疑心の保持は、正当な注意義務の重要な要素であり」という言い方をしておりましたけれども、この「重要な要素」という言い方をすると、正当な注意義務のほかの要素はどういうことかということも考えないといけないというご議論がありましたので、ここはもう少し漠然としますが、「正当な注意義務に含まれるもの」という言い方に修正をさせていただいております。

それから、そのページの下のほうでございます。これは「職業的懐疑心の保持や発揮が適切であったか否か」ということで言葉を補わせていただいております。

それから、6ページ、ここも前回ご議論をいただきました、抜き打ち監査について記述をするかどうかということでございますけれども、抜き打ちの監査手続という言葉は監査基準にも監査実務指針にもございませんので、誤解を避けるために「予告なしに往査して監査手続を実施すること」と修正をさせていただいております。

それから、続きまして9ページでございます。9ページの上から3行目は、前回ご指摘がありました「品質管理のシステムの」の「システムの」という言葉を落としております。

それから、その下のほうで、監査契約の更新の際の検討ということでございますけれども、「更新時はその程度に応じ」と書いていましたけれども、明確にするため、「更新時はリスクの程度に応じ」と修正させていただいております。

それから、少し飛びまして13ページ目でございます。ここの4のところの後段につきまして、前回いろいろご議論をいただきましたが、結論としては修正はしておりません。事業上の合理性という言葉がいいのか、経済合理性という言葉がいいのかということでございましたけれども、ここでは「事業上の合理性に疑問を抱かせる特異な取引など」ということで、事業上の合理性の後に取引という言葉で受けていることから、範囲がむやみに拡大するというおそれもありませんので、ここは前回の案文どおりとさせていただいております。

それから、15ページ目でございますが、14のところは、「監査実施の段階」という言葉をほかとの平仄をとるという観点から、「監査実施の過程」に直させていただいております。

それから、15は、前回「適切な段階で適時に」というのは重複があるというご指摘がございましたので、「適時に」というところを削除しております。

それから、17ページに飛んでいただきまして、監査事務所内における監査実施の責任者間の引継というところでございます。ここも前回いろいろご議論をいただきましたけれども、結論としては、この項目は残しております。ただ、前文とこの基準文言に少し相違があったので、そこは誤解なきようにということで、文章をそろえるという観点から、「同一の企業の監査業務を担当する監査実施の責任者が全員交代した場合」と直させていただいております。主な修正点は以上でございます。

○脇田部会長

それでは、ただいまの事務局の説明に続きまして、皆様から「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定について」及びコメントに対する考え方の修正等に関しまして、ご質問、ご意見等を伺ってまいりたいと思います。どうぞ、ご発言いただきたいと思います。八木委員、どうぞ。

○八木委員

もし、今回の基準内容に対するコメントのある方がいたら、その方が先に発言されたほうがいいと思うのですが、委員の方から手が挙がらなかったので、基準の内容についてではなく、若干飛躍した発言をさせていただきます。

今回の不正リスク対応基準については、私は、普通に会計処理をして、会計士と誠実に対応している事業会社に対しては、ネガティブな影響は少ないと理解しております。

私が監査部会で最初から関心を持っていたのは、一定の基準ができたときに、この実効をいかに上げるかということです。基準は作成したのに、あまり実態は変わらないというのが一番問題だろうと思います。この点については、昨年12月の部会の中で数点コメントさせていただきました。同じことの繰り返しでしつこいのですが、1点だけ発言したいと思います。

今回の基準の設定については、O社の件というのが1つ大きな背景にあると思います。今回の基準を導入することによって、いわゆる大手事業会社と大手監査法人との関係でみると、有効に機能するのではないかと思っております。多分、マスコミ的な興味のあるところは、ほとんどこれでクリアできると思います。一方監査の現場では、もう一つの問題として、問題のある事業会社に対して、問題があるのではないかと思われる監査法人との組み合わせということがあり、これが全体的な会計情報の品質を痛めているという現実があると思っています。

本来、監査基準とか品質管理基準が改訂されたときに、その改訂をした精神というものを守ろうとすれば、(私は現行の監査品質基準も相当立派なものだと思っていますので)当然、これに対応するために、監査法人の中における業界の再編とか、または構造改革ということが本来は起こっていなければならないはずです。現実には監査基準を改定しても一向に監査法人内部に何も変化が起こっていないのではないか。その結果、協会のレビュー等でもかなり重要な問題が指摘されることが続いているということだろうと思います。ただし、改定の精神を遵守せよというと現場が混乱するので、そこまで言いたくありません。今回は基準適用の範囲を上場会社等という形で金商法の対象に絞り込んでいます。広範囲の利用者がいるとか、多数の利害関係者がいるとか、社会的責任が大変大きいということが背景にありますので、ぜひこの機会に、上場会社監査資格制度の厳格な運用ということをお願いしたいと思います。

私は、あまり規制というのは本来やるべきではないと思いますが、利用者を守るという意味で考えれば、入り口規制をするほうがいいと思っています。多分、これは公認会計士協会の内部の中でそんなことはとてもできないということが言われると思いますので、最低でも厳格なレビューをしていただいて、問題があれば、上場会社を監査する資格を一旦、停止するとか、という対応を検討していただきたい。本来、上場会社等ということですので、取引所は資本市場を守る番人だということからすれば、今回の不正リスク対応基準に合わせて、取引所のルールの中に織り込んでいくことも考えられるのではないか。それから、これはまた後々の議論だと思いますが、充分な監査をするためには、監査報酬が少ないことも大きな問題になっております。少なくとも株式を公開するということであれば、最低監査報酬というものが当然あるべきだと考えます。責任とリスクとコストがあるのだということを前提にして株式公開をするということもこれから重要になると考えます。ここには東証の委員の方はいらっしゃいませんけれども、上場会社等ということで決めた基準ということであれば、ぜひとも報酬についても、取引所のルールを作り、資本市場の健全化ということに取り組むべきだと思います。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。どうぞ、ご発言がありましたらご発言いただきたいと思います。林田委員、どうぞ。

○林田委員

抜き打ち監査という言葉が落ちたことで一言申し上げたいと思います。

前回の部会で、私は、この抜き打ち監査という言葉は、「大きな誤解を招くのでなければ残しておいていいと思う」という趣旨の発言をいたしました。所用で途中退席しました後に、関根委員だったと思いますが、抜き打ち監査というと査察のような強制権のあるものが行われるんじゃないかといった誤解があるという趣旨のご紹介がありまして、「林田委員が誤解がないようであれば入れておいてよいのではないかと言っていた」、「私は誤解を気にしているので、ないほうがいい」というご発言をされていました。私の発言の趣旨は、大きな誤解というのは、何かこの表現では誤解する人が大変いっぱいいて、混乱を巻き起こすという意味で申し上げたつもりでした。

監査人が強制権を持って乗り込んでくるという誤解は、多分そんなにないのではないかと思います。全体の趣旨としては残しておいたほうがいいという発言であったものが、何か外したほうがいいという意見の補強材料として扱われたことに若干不本意な感じがありましたので、一言申し上げたかったということです。

それを踏まえて、直した修文の言葉について、ご指摘させていただきます。ここは、「往査して監査手続を実施することを含む」という表現になっておりますが、往査という言葉は、多分、訪問して監査するという意味がありまして、後段の監査手続をするという意味が重なっているのではなかろうかと。直す前は、「往査する、いわゆる抜き打ちの監査手続」と言い直しておりますので問題ないのですが、「往査して監査手続を実施する」となると、監査手続を実施することが重なると。ですので、本来であれば、「予告なしに往査することを含む」とするか、あるいは「予告なしに訪問して監査手続を行う」とか、そのような表現のほうが日本語として正しいのではないかという気がいたしました。

それから、最後ですけれども、抜き打ちという言葉を残しても残さなくても、不正発見のために有効と思われる監査手続を会計士に求めるという趣旨は変わらないので、それはそれで構わないと思います。しかしながら、私のような会計の世界の外部の者からすると、抜き打ちという言葉に会計士の方々がこれほど着目して、いろいろと意見をおっしゃられて、結局外れたというところを見ると、どうもこの「予告なしの往査」ということに会計士の方々はあまり積極的ではないのではないかと。いわゆる空文化するのではないかという懸念を禁じざるを得ないということであります。

ですので、重大な疑義がある場合には、積極的に行うということを会計士協会のどなたでも結構ですけれども、そういったお考えなのかどうか確認させていただきたいと思います。

以上です。

○脇田部会長

今、協会の方のご発言をということでしたけれども、ご指名してよろしければ、関根委員にお願いできますか。

○関根委員

ありがとうございます。前回、林田委員がいらっしゃらなくなってしまった中で引用させていただきましたために、もしかして誤解を生じるようなことがあったとしたら大変失礼いたしました。私が誤解が生じると発言したのは、そういったつもりではなくて、これは監査人の側の問題かもしれないですけど、今回の件を通じても思ったのですが、監査人は、一般の方々が使われている言葉以外の言葉をかなり使っている中で、違う言葉が使われると非常に敏感に反応するところがあります。それはある意味、非常に厳密に考えていることからそういったところがあるともいえるのですが、抜き打ち監査というと、一般に考えれば、予告なしに往査するということとほぼ同義と見られる方も多いかと思いますが、予告なしに往査するというのは、もともと監査人としては使用しているものであるので、それよりもっとすごいことなのではないかと考えるのかもしれません。これは前回の説明のときも申し上げたんですけれども、不正リスク対応ということで、査察とか、そういったことのイメージが強く残っている中で言われたので、大きな誤解を生じていたということです。これは監査人の側が特にということかもしれないですけれども、その他監査を受ける側からも似たようなやりとりがあったということでしたので、そういう言い方をさせていただきました。

なお、そういう意味で、「予告なしに往査」というのを否定しているわけではなくて、「予告なしに往査」というのをここに組み込むこと自体は、反対はしておりません。むしろ、あのときも、正確な発言は忘れてしまいましたけれども、ここで明記させていただいたということは意義あることだと申し上げたと思います。結果それがすごく多く行われるかというとまた別な話かもしれませんけれども、そういうふうに理解していただければと思っております。

○脇田部会長

林田委員、よろしゅうございますか。では、ほかにご発言ございませんでしょうか。

○林田委員

文言の件はどうなりましょうか。

○脇田部会長

失礼しました。それは課長から。

○栗田企業開示課長

文言はおっしゃるとおりに、往査というのは、どこかに行って調査をするという意味だと考えられますので、そうすると、監査手続を実施するということが中に入っていると解するのが普通であろうと思います。特にここで異存がなければ、「予告なしに往査することを含む」と直させていただきたいと思います。

○脇田部会長

八田委員、どうぞ。

○八田委員

今のところですけど、せっかくこれだけの行間を使ってますので、「往査して」をやめて「必要な」という言葉に変えるのはいかがでしょうか。

○脇田部会長

もう一度お願いいたします。

○八田委員

「往査して監査する」というのはトートロジーですから、なくすことは私も同意します。いいと思います。ただ取るのではなくて、どうせ取るというのでしたら、そこに「必要な」という言葉をつけて、「必要な監査手続を実施する」という表現のほうがいいのではないでしょうかというご提言です。

○脇田部会長

そうすると、「予告なしに往査して必要な」……。

○八田委員

「往査」は要らない。

○脇田部会長

「予告なしに必要な」ですね。というご提案です。

今ご発言いただきましたけれども、「往査」という言葉をとってただ「必要な」にするとどうなんでしょうか。往査という言葉の訪問するということの点が弱まりません?これは監査人の立場なんですけれども。

○八田委員

例えば今日の日程は、経理部のここだけを見るということを会社に伝えていたものの、そうではなくて総務とか財務とか、そちらのほうに行って、当日の日程には入ってない部署にまで対象を広げるということもあるんじゃないでしょうか。

○脇田部会長

では、課長。

○栗田企業開示課長

今おっしゃった「予告なしに必要な監査手続を実施する」ということであれば、予告なしに行くということ以外に、上にもありますような監査の場所を変えるとか時間をずらすとか、そういうことも入ってくるんだと思います。そのこと自体を別に否定するわけではなくて、まさにそれが企業が想定しない要素を組み込むことでございますので、その中には入っていると思いますけれども、これまでの議論の経緯から言えば、まさに予告なしに往査すること、抜き打ちで監査することというのが一定の局面では有効であるということが議論になっていたということでございますので、でき得れば、ここは予告なしの往査という言葉を残しておきたいと考えております。

○脇田部会長

この点についてご発言ございますか。よろしいでしょうか。関根委員、どうぞ。

○関根委員

度々すみません。私の発言がもとなので、お騒がせして申しわけございません。「予告なしに往査することを含む」、そういう形にされるということの確認です。

先ほど申しましたように、企業が想定しない要素の組み込みとか予告なしに往査するということをここに入れることは意義のあることと思っています。企業が想定しない要素というのは、いろいろな段階がある中で、特に予告なしに往査するというのは一番強いイメージがあるという意味でここに書かれていると理解していますので、そのようなシンプルな表現でもよいかと思っております。

○脇田部会長

ご発言は。では、林田委員。

○林田委員

表現の問題でもう1点。これは質問ですけれども、見え消しで4ページになりますが、下のところです。「本基準は、年度監査のみでなく、基準上不正に関する実証手続が」云々とありますが、その2番目の基準上の基準というのは、本基準のことを言っているのでしょうか。

○脇田部会長

これは栗田課長からお願いします。

○栗田企業開示課長

これは本基準ではなくて、中間監査基準上ということでございます。「基準上不正に関する実証手続が定められている中間監査」ということですので、中間監査基準にそういうことが定められているということでございます。

○林田委員

ちょっとわかりにくいかなと思ったものですから。本基準と来ていきなり基準上となると、一般にはわかりにくいかなと思ったんですが、専門家には誤解がないのであれば結構です。

○栗田企業開示課長

実は、ここのところは、「中間監査基準上」と書こうかと思ったんですけれども、そうすると、「中間監査基準上実証手続が定められている中間監査」というトートロジックな表現になるので、シンプルに「基準上」とさせていただいたということでございます。

○脇田部会長

ということで、ここはよろしいかと思いますが。

○林田委員

誤解がなければ。

○脇田部会長

よろしくお願いいたします。

それでは、先ほどのところに戻りまして、どう整理しましょうか。

それでは、6ページのところは「予告なしに往査することを含む」とさせていただこうと思います。

そのほかにご発言ございますでしょうか。いいですか。

それでは、修正等に関しますご質問、ご意見はもうよろしゅうございましょうか。特にご発言がございませんようでしたら、意見交換等はこのあたりで終了とさせていただきたいと存じます。

本日いただきましたご意見等を踏まえまして、字句等の所要の修正をさせていただいた上で、本意見書を監査部会としての意見書の案とさせていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。

ありがとうございました。それでは、ご承認をいただきましたので、安藤会長ともご相談の上、今後必要な修正をさせていただき、当部会としての意見書の案として企業会計審議会総会にお諮りさせていただきたいと存じます。

なお、修正後の意見書案につきましては、後日、皆様方に送付させていただきます。ありがとうございました。

それでは次に、幾つかの検討課題につきまして、進捗状況を報告いただき、ご意見等を伺ってまいりたいと存じます。

議事次第にもございますけれども、まず、議事次第3、その他の検討課題についての1にございます「有価証券報告書等の提出期限の承認について」でございます。これまでの当部会における不正リスク対応基準の審議の過程におきまして、監査人が不正リスクに対応して必要な監査手続を実施しようとすると、監査報告書の提出がおくれ、企業が提出期限までに有価証券報告書等を提出できなくなるのではないかとの懸念がございました。不正リスク対応基準の検討とあわせて、こうした懸念への対応もあわせて行うべきであるとのご指摘がございました。

この点に関しまして、まず事務局より説明をお願いします。

○栗田企業開示課長

資料2をごらんいただきたいと存じます。これは一番上に書いてございますけれども、企業内容等開示ガイドラインに以下の規定を追加してはどうかということで、現在、金融庁で検討している案でございます。この案につきましては、もう少し精査した上でパブリックコメントにかけたいと考えている、そういう段階のものでございます。

まず、バックグラウンドからご説明させていただきますと、金融商品取引法第24条、これは有価証券報告書の提出に関する規定ですけれども、そこでは有価証券の発行者である会社は、事業年度ごとに有価証券報告書を当該事業年度経過後3月以内に内閣総理大臣に提出しないといけないと規定されております。ただ、3月以内というところに括弧書きがございまして、「やむを得ない理由により当該期間内に提出できないと認められる場合には、内閣府令で定められるところにより、あらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた期間内」ということが書いてございます。現在でも、一定のやむを得ない理由がある場合には、有価証券報告書の提出を延期するということが認められているわけでございますけれども、この点について、明文のガイドラインはこれまで制定はされておりませんでした。

実務上は、その資料2の(1)のやむを得ない理由に書いてありますマル1マル2マル5に該当する場合、すなわち、天変地異があった場合とか民事再生法の手続の開始を申し立てた場合、あるいは、外国の企業が本国のルールのために提出期限までに提出できないという場合には、延期を承認してきたというのが実態でございます。

しかしながら、今部会でも、先ほど部会長からお話がありましたように、期末間際などに問題点が見つかった場合に、必要な手続をしていると時間がなくなってしまうのではないかというご疑念もあったところでございまして、そういう点を踏まえまして、今回、企業内容等開示ガイドラインに、延期の承認に関する取り扱いを明文で規定しようと考えております。

特にポイントになりますのは、(1)のやむを得ない理由のところのマル3マル4のところかと思っております。マル3は、「過去に提出した有価証券報告書等のうちに重要な事項についての虚偽の記載が発見され、当事業年度又は当連結会計期間の期首残高等を確定するために必要な過年度の財務諸表若しくは連結財務諸表の訂正が提出期限までに完了せず」ということでございまして、過去の分について何らかの問題が見つかった場合に、当期の有価証券報告書もそれに引っ張られて提出できないというような場合を想定しております。

マル4は、「監査法人等による監査により当該発行者の財務諸表又は連結財務諸表に重要な虚偽記載が生じる可能性のある誤謬若しくは不正又は不正による重要な虚偽の表示の疑義が識別されるなど、当該監査法人等による追加的な監査手続きが必要なため、提出期限までに監査報告書を受領できない場合」ということでございまして、これはまさに当年度の監査において何らかの問題が発見されて、監査手続が期限内に終了しないような場合を想定しているものでございます。

いずれの場合も、「発行者がその旨を公表している場合」ということを入れさせていただいております。この趣旨は、一定の期間、有価証券報告書が出ないということになりますと、投資家は何が起こっているのかということについて、当然、関心をもつわけでございますけれども、発行者のほうで、そこはこうこうこういう事態が起こっておりますということを開示していただかないと、投資家としては非常に困ったことになるということでございますので、その旨の公表を前提にしているということでございます。

それから、次のページに行っていただきまして、(2)の承認を必要とする理由を証する書面ということで、この延長承認を受けるためには、一定の書面を提出していただくことになります。その中心になるのが理由を証する書面ということでございますけれども、それは例えば報道とか適時開示等、承認を必要とする理由が発生したことが客観的に明らかになるもので、提出期限の延長の必要性を判断するために必要な事項を明瞭に記載した書面ということでございます。さらに、承認の申請理由が先ほどの(1)のマル3またはマル4に該当する場合には、それに加えて、監査人の意見、発行者の代表者による当該申請を行うことについての認識、及び有価証券報告書を早期に提出するために実施する方策について記載した書面も確認するものとするということで、先ほどのようなケースにおいては、監査人の意見も聴取する必要があるであろうということと、当然ながら、早期に出していただくのがいいわけでございますので、そのために企業としてはどういう認識でどういう方策をとろうとしておられるのかをあわせて提出いただくということにしたいと考えております。

それから、(3)の新たに承認する提出期限のところでございますけれども、この期限設定はおそらく企業の申請に基づいてケース・バイ・ケースで判断していくことになりますけれども、そこのところにありますように、「個々のケースにおける提出期限の承認を必要とする理由の発生時期、復旧可能性、発行者の事業規模、事案の複雑性などを考慮したうえで、公益又は投資者保護のため必要かつ適当な期限を定める必要がある」と考えております。「この場合において、長期間にわたり企業情報が開示されないことによる不利益と、正確な企業が開示される利益とを比較考量の上、判断することに留意する」ということにさせていただいております。

なお、その下でございますけれども、「承認の申請理由が(1)マル3又はマル4に該当する場合であって、提出期限を1月以上延長する旨の承認を行おうとする場合には、長期間にわたり企業情報が開示されないことによる投資家への悪影響に配慮し」、「当該発行者が財務諸表若しくは連結財務諸表に重要な虚偽記載が生じる可能性のある誤謬若しくは不正等についての確認を行っていること、又は過去に提出した有価証券報告書等の重要事項についての虚偽の記載を自認し、その解決及び是正に向けた真摯な取組みを投資家に対して早期に表明しているかなど、当該発行者による情報開示の状況も考慮した上で、その期間の妥当性について判断するものとする」ということでございまして、企業サイドも何らかの虚偽の記載はあるということを自認した上で、その中身について解明するのに時間を要するということであれば、その必要な期間を差し上げましょうという趣旨でございます。逆に言えば、単なる見積もりに関する監査人との意見の相違であるというご主張であれば、その意見を調整するのに必要な期間の延長しか認めないという趣旨でございます。

なお、この規定は有価証券報告書に関するものでございますけれども、当然のことながら四半期及び半期報告書についても準用することを考えております。

私からは以上でございます。

○脇田部会長

ただいまの事務局の説明につきまして、ご質問、ご意見がございましたら、どうぞご発言いただきたいと思います。いかがでございますか。引頭委員、どうぞ。

○引頭委員

ご説明ありがとうございました。

確認させていただきたいことがございます。取引所の適時開示ルールですと、期間が45日だったと記憶しております。法定開示は3ケ月ということで今ご説明ありました。(3)において、このようなケースが起こった場合には、取引所と連携して期間等を決める、といったようなことが書いてあります。取引所が定めた適時開示の日数と、法定開示の日数との間に幅があるわけですが、実際の運用としてどのようにイメージすればよろしいのでしょうかというのが質問です。

つまり、この法定開示延期事由に該当しそうであれば、自動的に取引所のほうの運用もそうなるのか、取引所の決定のトリガーをどのように考えたらいいのかということについて質問です。

○脇田部会長

栗田課長からお願いします。

○栗田企業開示課長

今おっしゃった45日というのは、おそらく決算短信の話だと存じます。これは取引所のルールの話でございますので、決算短信が出せない場合は、そのルールに従っていただくということになると考えております。

もう一つ、こちらのほうとの関係で重要なのは、今の取引所の上場廃止ルールですと、有価証券報告書でいえば、事業年度終了から3月たって提出されないと、そこからさらに1カ月たっても提出されない場合は、上場廃止という扱いになります。3月決算法人でいえば、7月末までに提出されないと上場廃止になるという取り扱いでございます。

ただ、内閣総理大臣の承認を受けて延長されている場合には、その延長期間が終わってから1カ月待つという取り扱いになっていると認識しております。

この改訂を踏まえて、今、東証で上場廃止ルールについて検討していただいているわけでございますけれども、延長が認められてからさらに1カ月も待つ必要はおそらくないだろうと思っておりまして、延長承認があった場合のその後の提出の猶予期間、東証における猶予期間というのは、少し短くする方向でご検討をいただいているというところでございます。

○脇田部会長

よろしいでしょうか。

○引頭委員

ありがとうございます。

○脇田部会長

では、五十嵐委員、どうぞ。

○五十嵐委員

ありがとうございます。法律上の文章でございますので、2点だけ確認させていただければと思います。

1ページ目のところのマル3マル4でございますが、例えばマル4の箇所で、監査法人の監査で重要な誤謬不正があって監査手続ができないとの記述について確認させていただきたく思います。監査実務の実施において、監査人の側からとりまして監査手続は実施ができないという主張をし、企業側にとりましては、監査手続はもう十分に行っているのではないかという議論があった場合に、どのような手続をとったらよろしいのかにつきまして、教えていただければと思います。

2点目でございますが、2ページの(2)の3行目でございますが、「報道、適時開示等、承認を必要とする理由が発生したことが客観的に明らかになるもの」と記述してありますが、例えば報道とか適時開示などで客観的に開示されていない、つまり潜在的に問題があったような場合には、企業側は、当該事項を明瞭に開示又は記載することが妥当でないとして拒絶した場合には、監査人または監査法人の側は、潜在的であり顕在化していない、または、潜在的なものが発生しているのではないかといった場合には、どのようにして取り扱ったらよいのかにつきまして教えていただければと思います。

○脇田部会長

では、栗田課長からお願いします。

○栗田企業開示課長

まず、この延期の手続は、あくまで発行者である企業が行うものでございますので、企業がその必要を認めないという場合には、当然延期の申請というのはなされないと考えております。監査人がなお監査が必要だと言っているにもかかわらず、企業サイドはもういいと言っている場合は、企業が延期の申請を積極的に出すことはないのかもしれませんけれども、その場合は監査報告書が受領できませんので、結局は企業としては延期手続をせざるを得ない状態になるだろうと考えております。

もし発行体が公表をしないということであれば、その場合は延期手続が認められないので、当然、当初の法定期限までに出していただかないといけない、遅れたらそれは遅延という扱いになりますということです。

それから、先ほどの「客観的に明らかになる」書面を出すことを拒絶するということであれば、延期は認められないということでございます。その書面というのはいろいろなものがあると思いますけれども、その理由が明確にわかるものを出していただかなければ延期はできないということになります。

○脇田部会長

よろしいでしょうか。

○五十嵐委員

どちらの2つの例にとりましても、監査法人の責任において、法律で規定している監査法人の役割に基づき、監査法人が監査報告書を発行するかどうかを決定することになると理解いたしましたがよろしいでしょうか。

○栗田企業開示課長

監査報告書を提出するかどうかは、今でもそうだと思っておりますけれども、あくまで監査人の責任と権限に基づくものでございます。

○五十嵐委員

どうもありがとうございました。

○脇田部会長

ほかにご意見ございますか。では、熊谷委員、どうぞ。

○熊谷委員

これも確認ですけれども、3カ月プラス1カ月の延長、それ以上は長期ということになりました。私は、監査の実務に詳しくないものですから、1カ月の延長というのが十分なのかどうかというのはよくわからないのですが、これは基本的に再延長の申請というのはできないという理解でよろしいのでしょうか。それから、これは私の聞き間違えかもしれないのですが、東証の上場廃止ルールについて、延長した期間よりも短い期間で上場廃止に抵触するという、そういうルール設定になるということなんでしょうか。それも変なような気がしたものですから。

○栗田企業開示課長

まず第1点目は、再延長でございますけれども、これは否定はするものではないんですけど、好ましくないとは思っております。よほどの事情があれば別ですけれども、一度設定した期限を守れないからもう一度延期してくれというのは、相当な理由のある場合に限られるんだろうなと考えております。

それから、先ほど申し上げましたのは、今は法定期限から1カ月たてば上場廃止になるということです。そのルールをそのまま使いますと、今回、延長が例えば2カ月認められれば、そこから1カ月たてば上場廃止という扱いになるわけですけれども、2カ月延長した上で、さらに1カ月も東証として待つ必要性はおそらくないであろうということで、その場合の1カ月を短くしていただく方向で考えているということでございます。

○熊谷委員

わかりました。どうもありがとうございます。

○脇田部会長

逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

確認であります。1ページ目のマル3マル4の末尾に、公表という二文字がありますが、具体的には取引所の適時開示、あるいは、臨時報告書という制度的な開示、また企業が任意に行う開示もあるかもしれない。この公表については、何か枠を決めるのかどうかという確認であります。

○脇田部会長

では、栗田課長からお願いします。

○栗田企業開示課長

特に枠を決めるということは考えていないんですけれども、実際問題としては、提出期限内に提出できないということになれば、これは適時開示が求められますので、それで要件を満たすことになるんだと考えております。

○脇田部会長

よろしいでしょうか。ご発言はほかにございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、次に移りたいと思いますが、議事次第を見ますと3の(2)と(3)がございます。まず、(2)が日本公認会計士協会の監査実務指針改訂(案)について。それから、(3)が公認会計士と依頼者との契約に基づき行われる非監査業務(株価算定等)についてでございます。

不正リスク対応基準の設定に伴いまして、日本公認会計士協会におきまして、不正リスク対応基準の具体的な指針が監査実務指針として検討されておりますので、検討状況につきましてご報告をいただきたいと思います。また、公認会計士と依頼者の契約に基づいて行われる非監査業務(株価算定等)につきましても、昨年11月に開催されました第31回監査部会におきまして議論がなされました。

合意された手続に類似した業務として行われている株価算定に係る業務につきましては、日本公認会計士協会の研究報告「企業価値評価ガイドライン」に基づいて実務が行われておりますけれども、基本的には、会社からの情報をそのまま利用できるとされていることなどについて、規定を見直すべきではないかとの指摘がなされました。この点に関しましては、日本公認会計士協会のほうで改訂作業を進めていただいているとのことでございますので、その状況をご報告いただきたいと思います。

この2つの項目につきましては、まとめて日本公認会計士協会からご報告をお願いします。関根委員及び住田委員、並びに本日参考人としてご出席いただいております市村参考人、坂上参考人、よろしくお願いいたします。

○関根委員

ありがとうございます。昨年5月からこの監査部会で検討を続けてきました不正リスク対応基準は、先ほど監査部会での検討を終えたところですが、私ども日本公認会計士協会としましては、現在、この不正リスク対応基準を適用していくための実務指針の改正を行っております。既に多くの部分にいて公開草案化しましたので、その概要についてこれからご説明させていただきます。

不正リスク対応基準に記載されていることは、日本公認会計士協会で作成されている監査の実務指針に既に記載されていることを強調するために記載されている部分も多くありますが、異なっている部分、また記載の仕方が異なる部分もあり、また、今回の監査部会での問題提起というのは、監査の社会的影響などを考えた場合、監査人としての立場からも真摯に受けとめなければならないものと思っております。

不正リスク対応基準の作成に当たり、監査部会等で監査人のご批判というものも多くいただきましたが、逆に、これは監査人への期待の声、すなわち応援メッセージではないかと考えております。こうした期待に応えられるようにしていく必要があるのではないかと思っております。

もちろん、不正リスクへの対応は監査人だけで行われるものではなく、市場全体での対応も必要と思っております。また、基準を議論する監査部会の場で恐縮ですけれども、不正リスクに対応していくために重要なのは、基準や指針をどうつくるかということだけでなく、これをどう適用するのかでもあるという声もよく聞かれます。これは極論すれば、基準や指針を改正しなくても監査はきっちり行っていかなければならない、不正による重要な虚偽の表示には対応していかなければならないということも言え、これはある意味当然のこととも言えるかもしれません。

しかしながら、近時の企業不祥事等において監査が有効に機能していなかったという指摘がある中、監査がより有効に機能していくよう、不正リスク対応基準の制定をきっかけに、さらに襟を正して監査を行っていくことができればと考えているところであり、そのための指針づくりをしていきたいと思っているところです。

それでは、具体的な内容につきましては、資料3に沿いまして住田委員から説明させていただきます。

○住田委員

それでは、資料3のスライドに沿って、今、日本公認会計士協会で行っております実務指針の改正の状況についてご説明させていただきます。

スライドの1番に改正の基本方針等を記載させていただいておりますが、具体的な改正の内容に入る前に、協会が公表しております実務指針の概要について簡単に説明させていただきます。

協会は、企業会計審議会の定める監査基準と監査にかかわる品質管理基準の実務指針として、監査基準委員会報告書と品質管理基準委員会報告書を作成しています。監査基準は、ここ数年、国際監査基準の動向を踏まえた改正を行っておりますので、協会の実務指針も2007年から2011年にかけて国際監査基準のクラリティ・プロジェクトを踏襲する形で、実務指針の全面改正を行ってきております。

新起草方針に基づく実務指針は、監査報告に関する部分は監査基準の改訂にあわせて2012年の3月期から適用となりましたが、残りの部分は2013年の3月期から適用になっておりまして、まさに今進行している3月期の決算からの適用ということになります。

これらの実務指針の一覧表は、お手元の資料の最後のページに別紙2として添付しておりますので、そちらをご参照いただければと思います。

新起草方針に基づく実務指針は、国際監査基準のクラリティ・プロジェクトを踏襲しましたので、監査基準委員会報告書の報告書番号も国際監査基準の番号と同一の番号を付しております。

それから、新起草方針とは何かということですが、スライドの13から14に参考としてお示ししていますが、この構成に従って各報告書の書き直しをしております。この新起草方針の最大の特徴は、監査人が行わなければならない手続を要求事項として明確化しており、その要求事項を実際に行うに当たって参考になる背景ですとか、例示などを記載したのが適用指針という位置づけになります。

また、報告書の中には付録が付されておりまして、付録は適用指針の一部を構成するものと位置づけております。

今回、この不正リスク対応基準の制定に伴いまして、監査基準委員会、品質管理基準委員会で、この不正リスク対応基準に対応するための改正作業を実施しております。その改正の基本方針は、スライド1に記載させていただいておりますが、まず、今の報告書の体系は維持することとしたということでございます。これはどういうことかと申しますと、新たに不正リスク対応基準のための実務指針を1つ別個に設けるということではなくて、現行の監査基準委員会報告書等の中に不正リスク対応基準で要求されていることを織り込んでいくという方式を取らせていただきました。

それから、不正リスク対応基準は、上場会社を中心とした金商法監査に限定されますので、既存の監査基準委員会報告書に織り込む方式をとった場合、どの部分が不正リスク対応基準で遵守が求められているかを明確に識別する必要が生じます。従って、不正リスク対応基準で要求されている事項については、項番号の冒頭にFという記号を付して識別を図ることといたしました。

それから、3番目は、瑣末なことではありますが、監査基準委員会報告書は、協会が出しております他の監査実務指針でも引用されておりまして、既にいろいろなものが積み上がっておりますので、今回新設する項番号は、枝番号を付して、従来の項番号を変えないという方式にさせていただきました。これらの基本方針に基づき今回改正する報告書は、ここに記載があります10本に及んでおります。

1つめの監査基準委員会報告書900の監査人の交代は、2013年の1月末に公開草案を既に公表しておりまして、パブコメ期間も既に終了して、現在、委員会でコメントの検討をしているところです。

それから、監査基準委員会報告書の(序)というものから910の中間監査にわたる7本については、2月末に公開草案を公表しておりまして、今パブコメ期間ということになります。3月末にコメントを締め切り、その後、コメント対応を図る予定にしております。

それから、下の品質管理系の2本については、まだ公開草案を公表するには至っておりませんで、協会内で検討を進めている状況でございます。3月末に公開草案を公表できればと考えているところです。

では、続いて、スライド2の監査基準委員会報告書200の概要に移らせていただきます。監査基準委員会報告書200には、監査の基本概念や全ての監基報、監査基準委員会報告書を監基報と略称で呼んでいるのでそのように呼ばせていただきますが、すべての監基報に共通となる事項が書かれています。その中に、我が国において一般に公正妥当と認められた監査基準に準拠して監査を実施するということの意味を説明したところがございます。

今回、不正リスク対応基準の適用が法令で求められている場合は、不正リスク対応基準が一般に公正妥当と認められる監査の基準に含まれるということをまず明記させていただきました。

一方、それ以外の監査では、この不正リスク対応基準で準拠が求められる要求事項は遵守義務がないということもあわせて200で記載させていただいております。

それから、付録については、先ほど適用指針の一部であるというのが新起草方針で決められているというお話をさせていただきましたが、不正リスク対応基準の付録2を監査基準委員会報告書の240の付録4としてそのまま取り込むことといたしました。したがいまして、240の付録4は、適用指針の一部ということではなくて、要求事項の一部を構成する、つまり、この場合は必ず所定のアクションを監査人としては要求されているということを明確にするための必要な改正をしております。

以上、200において不正リスク対応基準に対応する項の適用関係は明確にしたということになります。

続いて、次のスライドに移って、監査基準委員会報告書240の公開草案の概要を説明してまいります。240は「財務諸表監査における不正」というタイトルからもおわかりいただけると思いますが、財務諸表の監査において、不正リスクをどのように評価して対応するかを取り扱った実務指針ということになります。したがって、不正リスク対応基準の第1の「懐疑心の強調」の部分と、第2の「不正リスクに対応した監査の実施」の各号に対する要求事項と適用指針を240にほとんど反映しております。

ただ、1つ、確認手続については、監査基準委員会報告書505というものが別途ありますので、確認についてだけは240の中に織り込んでいないということになります。

今日は時間も限られておりますので、一つ一つの改正の内容については説明を割愛させていただきますが、公開草案を公表するときに、各報告書のどこの部分を加筆したかということを一覧で掲示しております。その資料を別紙1として、今日の配付資料の中でおつけしておりますので、後でごらんいただければと思います。

それから、スライドの3番の後半の部分、F付事項の位置づけの説明という小見出しを付している箇所ですが、前回の部会で逆瀬委員から、この240の1-2のなお書きが適用関係を非常に曖昧にしているのではないかというご指摘をいただきましたので、この記載の趣旨をご説明させていただきます。先ほど申し上げましたように、不正リスク対応基準が法令で求められている場合は遵守する必要があるという監査人の遵守義務については監基報200に記載しております。

では、なぜこのなお書きを追加したかということですが、監査基準も監査の実務指針もルールベースではなくて、原則ベースで基本書かれており、また、監査は全過程で監査人が色々な手続を選択したり実施する際に職業的専門家としての判断を行使しながらやっていく必要があります。特に不正リスク対応ということになりますと、機械的に手続をやるだけではなかなか有効に見つけることはできませんので、この専門家としての判断が非常に重要になってくるものと考えております。

そのような監査の性質を考えますと、不正リスク対応基準が金商法監査に限定されるとしても、不正リスク対応基準で取り込まれている基本的な考え方ですとか、監査のアプローチは、現行の監査基準委員会報告書の240と何ら変わるものではないと考えておりますので、金商法以外の監査においても参考にすることができるという意味合いでこのなお書きを付させていただいております。

監基報240は、新起草方針の書きかえ作業によって、前身の監基報35号の中では単なる平文で書かれていたような手続のかなりの部分が要求事項として明確化されています。先ほど関根委員からも話がありましたが、今回、さらに不正リスク対応基準を定めていただくことによって、実務指針の要求事項から基準のレベルにさらに引き上げられて、社会的なコンセンサスといいますか、認知がなされたという受けとめ方もできるのかなと我々は考えているところであります。

それでは、次のスライドの4番に移り、240の用語の定義にどういう改正をしたかということを簡単に触れさせていただきたいと思います。

(2)は従来からあったものですけれども、不正リスク要因の定義を不正リスク対応基準にあわせて、下線部の「不正行為に対する姿勢・正当化」という部分を足しました。

240は付録1に不正リスク要因の例示しており、動機やプレッシャーと不正を実行する機会とともに、姿勢・正当化の状況も含めています。ただ、姿勢・正当化というのは、不正を行う人の内面の問題で、監査人がなかなか直接的には観察しにくいものであるということで、あえて定義には記載していなかったものであります。ただ、今回、不正リスク対応基準で不正リスク要因を3つきちっと書くということになりましたので、240の定義も修正を加えさせていただいています。

それから、(3)から(6)は、今回、240の用語として新設したものです。ただ、(3)の「不正リスク」と(4)の「不正による重要な虚偽表示の兆候」は従来から240の中で使用していた用語で、特に用語の説明をすることなく、文中で使われていたものです。なぜこれを用語として新たに解説をすることにしたかということですが、(5)の「不正による重要な虚偽表示を示唆する状況」と(6)の「不正による重要な虚偽表示の疑義」は、ともにFという記号が付されていますけれども、これらが不正リスク対応基準の非常に大事な用語になろうかと思います。それらとあわせて、従来の(3)と(4)、特に(4)のを理解しないと、不正リスク対応基準に従った監査というものが難しくなるということで、この(4)から(6)の用語の説明を加えさせていただきました。

(4)の「不正による重要な虚偽表示の兆候を示す状況」というのは、従来から付録3として提供されていたもので、その中からより不正による重要な虚偽表示が行われている可能性が高いものとしてピックアップされたものに日本の事例を追加したのが不正リスク対応基準の付録2ということになります。それを240ではそのまま付録4に掲載させていただいているという関係になります。

従来の240の付録3と新しく不正リスク対応基準で設けられた付録2の関係をどうつけるかというのが実務指針の改正に当たって一番考えた点でございます。

次のスライド5番で、両者の付録がどのような共通点と相違点があるのかということをまとめたものになっております。共通点としては、ともに不正による虚偽表示が存在している可能性を示唆する状況として例示したものであるということと、それを探しに行く手続をわざわざ設計する必要はないということ、これが両者の共通点であります。

相違点といたしましては、不正リスク対応基準の付録2のほうが、より不正による虚偽表示が存在している可能性が高いと思われるものであり、疑わしさのレベルの相違と考えております。

したがって、監査人に求められるアクションというものも、240の付録3と不正リスク対応基準の付録2では差が設けられているということになります。

さらに、2つの付録の関係を説明したのが次のスライド6です。240では両者の違いをより明確にするために、まず、全ての監査で付録3の兆候を示す状況を識別した場合は、アサーション・レベルの不正による重要な虚偽表示のリスクが依然として適切であるかどうかを判断しなければならないとする要求事項を32-2項として新設しました。これは全ての監査に共通ということになります。

ただ、新設といいましても、今まで全くなかった要求事項を新たにつくり出したということではなくて、監査基準委員会報告書330の要求事項に関連づけて240の適用指針で書かれていたものを240の中で要求事項として再掲したという位置づけになります。

また、付録3に、基準案の付録2で加えられた11項目を追加しております。

一方、基準案の付録2は、付録の番号が実務指針と基準で違うのでややこしいですが、240の付録4として取り込みましたので、そちらについては、不正リスク対応基準に準拠した監査で、この状況に遭遇した場合は、経営者に質問し、説明を求めるとともに、追加的な監査手続を実施しなければならないという要求事項を追加しております。

次のスライドには、グラデーションの線表を記載していますが、既存の240で使われていた用語、今申し上げた付録3の「不正による重要な虚偽表示の兆候を示す状況」とか、「不正が存在する可能性があることを示す情報」とか、「不正の疑い」というものと、新たに不正リスク対応基準で用いられている用語との関係を重要な虚偽表示に結びつく不正の疑わしさのレベルという観点からまとめたものということになります。

以上が240の主な改正点であります。240が今回の不正リスク対応基準に対応するための改正の一番のメーンになる部分ということになります。

続いて、スライドの8番は、先ほど申し上げた確認手続に関してですが、積極的確認に対して未回答の場合の取り扱いが不正リスク対応基準の中で設けられましたので、それに対応する要求事項と適用指針を監基報505につけ加えさせていただいております。

それから、スライドの9番は、不正リスク対応基準を連結財務諸表監査でどのように適用していくかということについて、追加した指針の解説になっております。監査基準委員会報告書600では、親会社の連結財務諸表の監査を担当する監査人をグループ監査チームと呼び、子会社の監査人を構成単位の監査人と呼んでおります。このグループ監査チームが連結ベースでリスク評価を行って、構成単位の監査人に適切な指示を行うということが、既に、監基報の600で要求されているところであります。そこで、不正リスク対応基準が適用となる監査においては、グループ監査チームと子会社の監査を担当する構成単位の監査人との間でどういうコミュニケーションが必要になるかという要求事項と適用指針を600に追加したという内容になっております。

続いて、スライド10番ですが、これはトピックとして独立している感がありますけれども、監査人の交代に関する公開草案の概要ということになります。

900の改正案では、前任監査人と後任監査人との間で引き継ぐべき重要な事項というものをどういうふうに説明するのが一番わかりやすいかということを考えました。といいますのも、監査人は、前任監査人の立場に立つこともあれば、後任監査人の立場に立つことがありますので、監査人同士の共通ルールをしっかりと構築していく必要があるということで、監査基準委員会報告書260で監査役等にコミュニケーションが要求されている事項が重要な事項に当たるとしました。監査役等にコミュニケーションしなければいけない事項を、監査人の交代が起きたときの重要な事項として、お互いのコミュニケーションの必要性を認識する際の指針にしようという方向でこの900の改正はしております。

また、前任監査人の閲覧に供する調書の範囲につきましても、この重要な事項と期首残高に関連する調書は閲覧に供することということを明確に記載しております。

また、引き継ぎの記録についても、双方で確認をするということも要求事項に新設しております。

この900は、不正リスク対応基準の適用になる監査に限るということではなくて、全ての監査において2013年の10月1日以降に起きる交代から適用するということで、公開草案を公表させていただいております。

続いて、スライドの11番、中間監査の公開草案です。中間監査に関する改正はシンプルで、監査基準を準用して成り立っている中間監査の特質を踏まえて不正リスク対応基準も適用するべきということをまず冒頭に書いております。

それから、通常は、年度監査に比べて中間監査の発見リスクというのは高目に設定することができるということになっていますが、中間監査の実施の過程で不正による重要な虚偽表示を示唆する状況を識別した場合は、年度と同じレベルに発見リスクを設定し直す必要があるのではないかということで、240の指針に従って必要な中間監査手続の手続を実施しなければならないという要求事項を加えております。

それから最後に、スライド12番になりますが、品質管理に関する指針の2本の改正状況になります。これは先ほど冒頭でも申し上げましたとおり、品質管理に関しては適用時期が本年の10月1日以降とされていることもありまして、まだ公開草案を公表するには至っておりません。不正リスク対応基準の第3の監査事務所の品質管理のセクション、それから監査基準の一部改正として審査を要しないことができるということが設けられましたので、その審査を実施しないことができる範囲と、審査を実施しない場合に、意見が適切に形成されていることを確認できる他の方法というものにどういうものが考えられるのかという点を今委員会で検討しております。こちらについては3月末をめどに公開草案を公表したいと考えているところです。

以上です。

○関根委員

引き続きまして、資料4の企業価値評価ガイドラインの主な改正予定事項について説明させていただきます。

昨年11月16日の監査部会では、公認会計士と依頼者との契約に基づいて行われる非監査業務(株価算定等)のあり方ということで、本日、席上にあります備置資料の中の参考資料として配付されている資料の3ページ目にある3点の論点について議論がなされておりまして、本日はこのうち最初の2つの論点に関連してご説明させていただきます。

具体的には、11月16日の監査部会でも少し触れさせていただきましたように、日本公認会計士協会では、本日の資料4の方、あちこち行って恐縮ですけれども、こちらの最後に参考として添付している通達を昨年7月に公表させていただいているものの、こちらはどちらかというと精神論のような形で書かれておりますので、実務上、具体的に対応するのが難しい面があるのではないかということで、ここで掲げられているガイドラインの記載についても考えているというご説明をさせていただいたかと思います。本日は、その改正の方向性についてご説明させていただきます。

なお、11月16日に説明させていただきましたように、ガイドラインで規定している評価業務というのは、公認会計士が行っている監査などを含む保証業務や合意された手続とは異なるものです。その点の明確化と周知も必要ではないかというご指摘もいただいたところであり、その点は今回の資料にも記載させていただいておりますが、具体的にはこの資料4の4ページ目に、非常に簡略化しているので若干不正確な面もあるかと思いますけれども、イメージ図がありますので、それをまずごらんいただくと話が理解しやすいかと思います。

では、こちらについては、具体的には市村参考人から、資料4に沿って説明させていただきます。よろしくお願いします。

○市村参考人

日本公認会計士協会で経営研究調査会を担当しております常務理事の市村でございます。そして、隣には、この改正を担当しております専門部会の坂上部会長にも来てもらっております。

関根委員から話がありましたように、現在、日本公認会計士協会では、企業価値評価ガイドラインの改正中でして、この資料4に基づきまして、その企業価値評価ガイドラインの主な改正予定事項、これについてお話ができればと考えております。

まず、1ページ目をごらんいただけますでしょうか。企業価値評価ガイドラインの概要と改正予定事項ということでございますが、この企業価値評価ガイドラインは、我が国の企業価値評価実務を広範に検討し、分析して取りまとめた研究報告でございますので、強制力はありませんが、会員が算定業務を行う上で参考にしてもらうとともに、広く利用をしてもらうために作成したガイドラインでございます。

主な改正予定事項としておりますのは、2.にございますように、監査部会における議論を踏まえまして、これは当たり前のことなんですけれども、公認会計士は企業価値評価を悪用した不正に関与してはならないこと。2番目には、企業価値評価をめぐる紛争の予防または回避に配慮する必要があること。さらには、公認会計士はこの業務を行う際にも、当然に協会の倫理規則を遵守する必要があること、これに言及する予定でございます。

加えて、ガイドライン本来の趣旨が理解されにくい表現、あるいは誤解を生じる表現もございましたので、これをより明瞭な記載にするために改正を行うこととしております。

次の2ページ目が、このガイドラインで作成した算定書がどのような位置づけなのかを示すイメージ図でございまして、典型的なM&Aの場合のケースを記載したものでございます。

一番上に四角が3つございまして、これが買収の流れで、買収の流れは、買収交渉に始まり、契約が成立し、買収が完了するということでございますが、この算定評価書は、この買収交渉の時点で使われる算定書ということでございます。

下の四角の左側をごらんいただきますと、買収しようとする会社、買い主ですね、ここが公認会計士に依頼しまして、買収企業の算定業務を行い、公認会計士は、その算定業務の結果の算定書を買い主に提出する。その提出を受けた買い主は何に利用するかというと、この買収交渉において価格決定等の交渉をする際の意思決定の参考情報として利用すると、こういう位置づけを想定してこのガイドラインが作成されております。当然、売却側も同じような形をとると思います。

このイメージを前提に3ページに移りまして、前回の11月の監査部会でご指摘いただきました論点1について、どのように対応するかというのがここに記載してございます。論点1はここの矢印に書いてありますように、監査と異なり、報告の利用者が限定されている合意された手続等の業務について、その手続の性格に関して広く周知する必要があるのではないかという点でございました。

ここでの改正は、企業価値評価における算定業務の性格を明確に記載するために、以下の3つの事項を改正する予定でございます。

一番上の黒ポツですけれども、この算定業務は保証とか合意された手続と違う手続なんですよということです。つまり、算定業務は算定人がみずから算定を行う業務でありまして、他の者の作成した情報について、独立の第三者が結論を述べるような保証業務、あるいは実施した手続の実施結果を報告する合意された手続業務、これとは異なります。

そして、2番目なんですけれども、決められたことを決められたとおりに行う業務なのかというと、決してそうではない。算定業務には専門家の判断が必要で、算定人は専門家の立場で総合的に検討、分析し判断を行います。これを明確にしようと改正中です。この判断業務には、評価アプローチの検討、あるいはアプローチの中での評価方法の選定、加えて提供された情報の有用性の検討、さらにはパラメーター等の推定があるでしょうということでございます。

3番目は、算定人は、算定結果に対して個別具体的に、また批判的にその結果を検討する評価専門家(検討人)、これはM&Aの相手方とか、売買対象会社の買収に反対している株主とか、そういういろいろな方が存在することを強く意識してちゃんと業務を行ってくださいということを、明確にする方向で修正を検討しております。

次の4ページですが、これは論点1に関連しまして、先ほど関根委員からも紹介がありましたように、保証業務、合意された手続と評価業務はどういうふうに違うのかというのを簡単なイメージ図として記載したものでございます。一番左は保証業務でございまして、会社が情報を作成して、それに対して公認会計士が手続を実施して、保証報告書を会社に提出する。それを会社が情報とセットにして想定利用者に提出する、これが保証業務の簡単な流れです。合意された手続は、会社が指定した情報を公認会計士に渡し、その情報に対して会社と契約時に合意した手続を実施し、その手続の結果を会社に報告するという流れでございます。

一方、評価業務、算定業務は、会社が情報と資料の提供を公認会計士に行いまして、公認会計士はみずからの判断で提供された資料、情報を利用して算定を実施し、その結果の算定報告書を会社に提出するということでございまして、左側2つの保証業務、合意された手続は、会社の情報に対して手続を実施し、その結果を報告する業務であるのに対し、評価業務は、公認会計士がみずから算定書を作成し、金額の入った算定書を作成し、会社に報告する業務ということになります。

続きまして、5ページをごらんいただけますでしょうか。5ページも監査部会において指摘された2つ目の論点でございます。これはどんなものだったかというと、矢印にございますように、株価算定に係る企業価値ガイドラインにおいては、合意された手続に類似した手続ということから、基本的には、会社からの情報をそのまま利用できることになっているが、有用性の観点から検討分析の結果、職業専門家としての公認会計士が不適切と判断した場合には適切な対応をとることを明確にする必要はないかという指摘でございました。

これに対応しまして、企業価値評価における専門家としての判断、つまり、提供された情報が利用可能かの検討分析、これが必要である旨を明確にするために、以下の黒ポツ4つを対応しております。

1つ目は、提供された情報を無批判に、機械的にそのまま使用するものではないということ。それから、提供された情報の有用性の観点から、専門家としての慎重さと批判性を発揮して分析、検討を行うこと。そして、3番目は、提供資料が有用性の点から不適切と判断した場合は、訂正、再提出を依頼したり、あるいはそれを利用しないということもあるということです。

それから最後に、場合によっては、利用ができない場合は業務を受嘱しないとか、あるいは業務の途中でもその契約を解除する、こういう対応もとるべきであるということを明確に記載することにしております。

6ページ目ですが、実はこれが一番、この情報の有用性の点で問題になった部分でございます。現行のガイドラインの「資料の有用性」というところで、この点々の四角で囲ってある部分が現行の文章でございます。

1行目から3行目に、「評価は、依頼人との一定の契約関係や双方の合意を前提に実施される。そのため会社から入手する資料に関して、真実性・正確性・網羅性を検証するための手続を別途行うことは稀である」との記載があります。この記載を「資料の有用性」の箇所の冒頭に記載してしまったので、とても誤解を受けてしまったということでございまして、まずは、ここの冒頭からこの3行を一旦削除します。削除した上で、「稀である」というところを「義務を負うものではない」に変えて、後段のところに入れ込むようにし、さらに検証の意味、これは保証に近い手続なんですけれども、これの意味についても補足するということにしております。

ということで、この上の3行がなくなりましたので、4行目から6行目が冒頭に来まして、有用性の観点から検討分析を行う必要があるというのが明確に示されるようになります。そして、さらに、そこで慎重さと批判性を発揮して検討、分析を行う必要がある旨の追加をさせていただく予定でおります。

以上、簡単に改正予定事項を説明させていただきました。

○脇田部会長

ありがとうございました。それでは、ただいまのご説明に基づきまして、2つの検討課題につきましてご質問、ご意見を伺ってまいりたいと思います。ご質問、ご意見がございましたら、どうぞ2と3、順序、いずれでも構いませんのでご発言くださいますように。逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

ただいまいただいた1つ目のほうですが、不正リスク対応基準を受けた実務指針の説明でありました。前回、本部会でも申し上げた点ですけれども、もう一度確認させていただきます。問題は、監基報の240の新たに設けられました1の2のパラグラフ、これは240の冒頭の範囲の項のところの追加パラグラフでありまして、そのルールを読むときの大前提の位置づけで追記されたものであると理解しました。ただいまのご説明だと、この追加された、業務の状況に応じて参考となることがあるといった部分については、強制なのか任意なのか、適宜なのかよくわかりません。少なくとも今回の不正リスク対応基準においては、前文において議論の前提が金商法におけるディスクロージャーに係る監査を前提に議論したということがあり、位置づけもそのようになっているところで、参考となることがあるという表現では、監査人が非常に理解に悩むところがあるのではないかということであります。

この一連の監基法は、もともとクラリティ・プロジェクトの成果でありますから、明瞭化プロジェクトなのに、明瞭でない新たな条文が加わったということで、受査側としても甚だ困惑するのであります。非常に曖昧なわけであります。ご説明されたような趣旨であれば、実務指針の一文として追記するよりも、解説ものか何かで丁寧に説明するのが趣旨に合うのではないかという気もいたしましたので、ぜひ善処をお願いしたいということであります。

それから、2点目は、同じく240絡みなんですけれども、付録のご説明もありました。付録の3については、既存の項目に加えて、今般、基準で付録2として掲げられた項目の20項目のうち11項目をセレクトして、30プラス11にしたと、こういうことになっています。20項目のうち11項目をセレクトした基準、あるいは考え方について、ご説明をいただきたいということです。

最後ですが、2つ目のご説明資料企業価値評価のガイドラインですけれども、冒頭のご説明で、これは強制ではないというご説明であったと思います。今回ご提案の改正内容はしごく常識的な話であって、これを遵守すべきルールとしない理由は何か教えていただきたいと思います。

以上です。

○脇田部会長

この点については、まず協会からご説明いただきたい、参考の点、付録の件、それから3番目の強制ではないということに関しての言及、よろしくお願いします。

○関根委員

ご意見ありがとうございます。3点ありましたけれども、まず1点目について、私からご説明させていただきます。

1点目につきましては、前回もご質問いただいたところでありまして、趣旨としては、先ほど住田委員から説明があったとおりでございます。ただ、実際、わかりづらいというご意見もいただいておりまして、公開草案化しているところでございますので、わかりやすくなるような文章の変更も含めて検討させていただきたいと思っております。

2点目につきましては、住田委員から説明させていただきます。

○住田委員

240の付録3になぜ11項目だけをピックアップして加えたのかというご質問ですが、不正リスク対応基準の付録2は、もともとあった240の付録3の中から、過去の日本の不正事例に照らして、より不正による重要な虚偽表示につながるものをピックアップして作られています。したがって、残りの9項目は、既に240の付録3の中に例示としてあったものです。ですから、リスク対応基準の付録2から11個選んだということではなくて、付録2に日本固有の不正事例から学んで独自に作った例示を240の付録3に追加したという関係になります。

○市村参考人

3番目の企業価値評価ガイドラインの研究報告の性格なんですけれども、これはあくまでも公認会計士協会としては研究報告という形で出しております。監査における対応、いわゆる監査基準に基づく監査の実務指針は、これはあくまでも会員全員の監査の標準化を保つために強制されるルールなんですけれども、こちらの算定業務は、あくまでもアドバイザリー業務の中の位置づけでございまして、いろいろな手法等々があるので、このガイドラインは一応標準化されたものなんですけれども、強制的にこれをやりなさいということはなかなか言えない。しかしながら、このガイドラインは、企業価値評価の実務を幅広くいろいろな意見を聞き、実際の実務を検討し、分析したものでありますので、できる限りこれに従ってやってくださいというお話はしております。

○脇田部会長

ありがとうございました。逆瀬委員、よろしゅうございますか。

○逆瀬委員

ご説明はいただきました。

○脇田部会長

ということでございまして、ほかにご発言がございましたらどうぞ。では、八田委員、どうぞ。

○八田委員

まず最初のほうですけど、今回の不正リスク対応基準と、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準との関係がいまひとつはっきりしないんですね。それは、パワーポイントの2枚目、先ほどご説明もありましたが、この文章を読みますと、法令によって適用が求められている場合には、それは監査の基準に含まれるということになっています。そうじゃない場合は含まれないということになります。我々、監査論のベーシックな議論をしていくときに、そのような議論などあるのだろうかということです。逆に、これは我が国の企業会計審議会、金融庁が責任を持ってつくった基準だということで、まずは、我が国における一般に公正妥当と認められる監査の基準の中に入っているということです。ただ、法令によってこの基準が適用されない場合には別出しして、例えば監査報告書のところに括弧などを施して、不正リスク対応基準には準拠していないということを注記するといったような見方をするんじゃないんでしょうか。そうしないと、一般に公正妥当と認められる監査の基準があって、また別枠があって、この2つを使い分けていくというような捉えられ方がなされる恐れがあります。監査報告書の読み手はそれをどういうふうに読めばいいのか。特に、未上場の会計監査人監査の場合に、監査報告書を読んだときにどうなるのだろうかという疑問が1点あります。

したがって、先ほどのスライドの3枚目のほうにもありますけれども、業務の状況に、参考となると書いてありますが、その辺も解消するためには、監査報告書の書き方を考えたときにどうなるのかなということです。ただ、私はそれでいいと思っているのですが、問題は、中間監査のときの監査報告書にどうやって書かれるんだろうかということです。中間監査の基準に従っているときは準用されると言っているので、それでどうやって書くのだろうかと。一般に公正妥当と認められる監査の基準の中にこれが入っているということなのか。中間監査はそれを全部使って、またそれを抜き出すとかということで、全体のカテゴリーがよく見えないというのがまず1つ大きな質問だということです。

それから2つ目、スライドの4ページ目の定義のところですけれども、(2)の不正リスク要因で、追加した文章のところにアンダーラインがありますけれども、これはいわゆる不正の三角形の話であり、動機、プレッシャー、それから機会、そしてここで「または」となってますけど、これは「及び」でないのかなと。この2つか、あるいはまたはこっちを言うのかということではありませんから。つまり、これら全部を不正リスクの要因として扱っているわけですから。これは「及び」にすべきだと思います。そしてさらに日本語的に、「不正行為に対する姿勢・正当化する状況」となっていますが、姿勢はいいですけれども、正当化するのは、不正行為を正当化するということではありません。文法的にといいますか、言葉的に意味が通じないんですけどね。不正行為に対する正当化する状況とか、ちょっと日本語的に推敲が必要だというのが2つ目です。

それから、後半のほうのガイドラインについて準用される、強制するものではないというのは、これはよくある話であって、これはコンサルティング業務の一環だと思っています。したがって、会計士が行ったコンサルがある程度、客観性、信頼性を担保できると考える当事者は、この公認会計士協会の研究報告に従った評価をしていますよと一筆書けばいいわけです。したがって、それを何も書かないと、かつて日本でもありましたけれども、例の不祥事があった時に設置される第三者委員会の報告書が非常に真偽が問われた時期があって、日弁連がガイドラインをつくったために、今はほとんど例外なく日弁連のガイドラインに従ってやってますよと書いてるわけで、それでいいと思うんですね。そういう流れにありますから、別にここのところは独占業務でやってるわけじゃないから、と同時に、それをもう少し演繹的に考えるならば、会計士じゃない人がこの基準を使ってやってもいいのかどうかという問題もあります。つまり、このガイドラインの性格ですが、その辺はどういうふうにお考えなのか。幾つかご質問させていただきます。

○脇田部会長

それでは、3点ほどご発言がありましたけれども、いかがでしょうか。

○住田委員

最初に、スライドの2番の書き方があまり適切ではなかったのかもしれませんが、200の17項に加えた修正というのは、「監査人は、監査基準、法令により適用が求められる場合、監査における不正リスク対応基準、及び監査基準委員会報告書を含む日本公認会計士協会が公表する監査実務指針のうち、個々の業務に関連するもの」について遵守が求められるという言い方をしておりますので、プラスなのかマイナスなのかという疑義を招く言い方は避けた表現にはしております。スライドの書き方が適切ではなかったということかなと今反省しております。

それから、中間監査ですが、「我が国で一般に公正妥当と認められる中間監査の基準」に準拠してという言い方になりますが、中間監査が求められている企業の場合、年度監査において不正リスク対応基準に準拠した監査が求められているため、不正リスク対応基準が準用されない中間監査はないということになるのではないかと考えています。

それから、不正リスク要因のこの3つの要素を「または」にするか「及び」にするかというのは、確かに日本語としては、不正リスク要因には3つのカテゴリーがあるという意味では、「及び」のほうが適切なのかなという気も今ご指摘いただいてしましたので、最終化の過程で検討をさせていただきたいと思います。

○脇田部会長

3点目について。

○市村参考人

八田委員の最初の点ですけれども、通常の実務として、もしこの企業価値評価ガイドラインに従って算定業務を行っている場合は、通常、この企業価値評価ガイドラインに従って作成しているという表現をほとんどの場合記載されております。ということで、もしこれの記載がない場合は、どんな基準でやっているのかは明確でないということになるかと思います。

2点目なんですけれども、前提としまして公認会計士協会がつくったものですから、公認会計士の行う業務が前提なんですが、もちろんほかの方がこれに従って利用して算定業務を行っても全く構いませんし、それはそこのガイドラインの中にも明記されております。

ただ、会計士の倫理規則は、今回つけ加えましたけど、当然ながら公認会計士以外には適用されません。

○脇田部会長

ありがとうございました。それでは、熊谷委員、どうぞ。

○熊谷委員

不正リスク対応基準に実効性を持たせるために、こういう実務指針が出てきてるのだろうと思いますが、最初にご説明頂いた実務指針の改正に関しましては、いろいろ要求事項が入っているようです。要求事項、監査の実務に詳しくないものですから伺いたいのですが、仮に要求事項に従っていないということが起こってしまった場合、それは会計士協会としての処罰の対象になるのでしょうか。またこれと似た質問ですが、企業価値評価ガイドラインについても強制力はないということでありますけれども、一方で、倫理規則を遵守する必要がある云々とあります。これは、このガイドラインに従っている限りは、必ず倫理規則を遵守しているという前提なのでしょうか。しかし、先ほども八田先生からございましたように、企業価値評価に当たって、O社の事例などでは、普通に考えるとあり得ないような前提、会社側からもらった前提を使って価格算定が行われて、それが第三者の行った価格算定である種、権威づけを持って受け入れられたということがあるわけであります。このガイドラインに強制力はないのであるなら、企業側の意向に沿ったような算定をしてしまったといったときに、何かペナルティーというのはあり得るのか。これはガイドライン自体にペナルティーの規定があるということではなくて、倫理規則違反ということでペナルティーを課されるのか。そのあたりはどういうふうなたてつけになっているのでしょうか。

○脇田部会長

この点も協会からご発言ください。

○住田委員

監査基準委員会報告書の要求事項を遵守しない場合どうなるのかというご質問ですが、基本的には、要求事項はすべて遵守することを求めておりまして、ただ、一定の場合、個々の監査業務の状況によっては、要求事項で求めている手続が適合しない場合もありますので、その場合は遵守しなくてよいというたてつけになっております。

したがって、本来やらなければいけない局面であるにもかかわらず、要求事項が遵守されていないという状況がもし仮にあったとしたら、協会の品質管理レビューの過程で指摘事項になったり、あるいは監査が失敗したときには、監査人の正当な注意義務を問われるということになると考えます。

○脇田部会長

ガイドラインについてよろしいですか。

○関根委員

もう1点のほうの企業価値評価ガイドラインでございますけれども、こちら自体は、参考としてもらうためのもので強制力はないということですけれども、ご指摘のように、公認会計士は倫理規則の規定を遵守することが求められております。こういった企業価値評価の算定業務にかかわらずですけれども、公認会計士が業務を行って倫理規則に違反しているのではないかという事実があった場合には、日本公認会計士協会は自主規制機関としてその点を調査していくという形になります。

○脇田部会長

ありがとうございました。それでは、先ほど挙手されていました五十嵐委員、どうぞ。

○五十嵐委員

どうもありがとうございます。企業価値評価のガイドラインにつきまして、2点、ご質問又は確認させていただければと思います。

パワーポイントの4ページ目につきまして、公認会計士が行う業務のイメージ図が記載されておりますが、ページ数又は、スペースの関係で3つに分けられ内容が非常に集約されていると思いますが、一般的には、こうした単純化された監査と監査以外の業務を記述するには、より包括的な内容を含む必要があると理解しています。

IAASBでも基準開発の視点から同様な内容が議論されておりまして、その関係につきまして若干ご紹介させていただきたいと思います。本ページの左側に保証業務と記載されておりますが、これは合理的な保証業務であり、現在の監査の概要を示していると思います。右側の表の評価業務は、保証業務に含まれている適用する基準の記述はなく公認会計士みずからの判断で行うと記述されておられますが、この内容が大きな課題となると思います。監査以外の保証業務への適用基準が、合理的で、かつ一般的に受け入れ可能な適用基準とは何かということでございます。

評価業務を行う場合に会計士協会が出されているガイドラインであったとしても、それが一般に受け入れられるという適用基準の内容を持つ必要があると思いますので、私は、現段階でその内容を詳細に読んでおりませんが、こうした内容を提示されることが望ましいと感じました。私の理解によりますと、現在の右側の表は、監査人の業務の視点からダイレクトレポーティングと言っており、公認会計士が会社に対して直接、その情報と資料の提供を行い、そして監査人が判断を行うということになると思いますが、各国の実例につきまして2月に報告を受けましたけれども、各国でも非常に多様な実務と理解しております。したがいまして、日本で企業価値の評価が現在のように問題になっている状況ですので、みずからの判断とは何かということをもっとより具体的に記述することが必要と思いました。本表はスペースの関係で簡略化され、ガイドラインには詳細に記述されておられるかもしれませんが、本表だけを拝見しましての感想ですけれどもそのように感じました。2番目は、本ガイドラインのご説明の中で、有用性という専門用語が使用されておりますが、監査または会計でも、一般的に、有用性は、経済的意思決定に関連して使用される場合が多いと理解しておりますが、評価業務のダイレクトレポーティングの有用性の内容をより明確にする必要性があるように思いました。または、他国で使っています合理的保証業務以外の業務の目的は「意味のある」情報を利用者に提供すると使用されることが多いと理解しています。

したがいまして、有用性と言われますと、監査との有用性と監査以外の有用性とを混同される可能性がありますので、この有用性の言葉の定義について本ガイドラインではすでに記述いらっしゃるのかもしれませんが、国際的な内容と平仄を合わせられたほうがよろしいように感じました。

以上です。

○脇田部会長

ただいま五十嵐委員からガイドラインについてご指摘ございましたけれども、協会からいかがですか。

○市村参考人

まず1点目ですが、3つの業務を単純に比較できないということは、五十嵐委員のおっしゃるとおりでございます。ということで、これを比較して比べるべきものでもないし、ここに並べるべきものでもないと考えており、ご指摘いただいたところは、ごもっともでございます。

しかしながら、今回、どうしてこの図を入れたかといいますと、今回の算定評価業務が最終的な金額が正しいよと言って保証してるんじゃないかと言われている一面と、もう一面では、ただ決められた手続だけやって、計算だけしてて、会社から出された資料をそのままうのみにして数字だけ出しただけじゃないのと言われる一面と両面がありますので、算定業務はどちらでもないことを示すため、あえてこのイメージ図をお出ししたということでございまして、実際、五十嵐委員のおっしゃるとおり、比較するものではございません。

それから、有用性なんですけど、これは確かに検討させていただきます。監査で使っている有用性とは全く違う意味合いで使っておりまして、しかも、これは算定書の有用性とか、そういう意味ではなくて、企業価値評価を行う上での会社から提出された資料が実際に企業価値の算定に利用していいものかどうかの有用性を検討するという意味合いで使っておりますので、言葉遣いにつきましては検討させていただければと考えております。

○脇田部会長

ありがとうございました。そろそろ時間が参りましたけれども、ご発言ありますか。荻原委員、どうぞ。

○荻原委員

このM&Aの現状というのは、現実はこういうふうにきれいにいかなくて、実際、会社を買うほうと売るほうでは、私どもはほとんど買うほうばっかりなんですけれども、安く買いたいと。売るほうは高く売りたいということなので、まず最初に妥当性のある金額の合意というのが大体あるわけなんですけれども、我々は先生方にいつも求めているのは、その決めた価格そのものが妥当性の範囲内に入るかという、ある意味、保証行為を求めているんです。でないと、価格は成立しないんです。後々、のれんの価格に影響してきますので、やはり我々は先生方にお願いするときは、価値の評価の本来あるべき妥当性の範囲の中に入っているのかどうか。もちろん、提示する資料そのものの有用性、妥当性というものももちろんチェックした上でお出ししてるわけですけれども、だから、そこが現実は保証行為なんじゃないかなと私はいつも思ってるんですけど。

○脇田部会長

ありがとうございました。ご発言あれば。よろしいでしょうか。

○市村参考人

算定業務と保証業務とは明らかに違うと思います。監査で言えば、企業が作成した財務諸表が適正に表示されているという意見を述べる保証業務です。一方、今ここで言っている企業価値の算定業務では、評価額算定のもととなる数字、あるいはキャッシュフローのプロジェクション等々につきましては、検証は行わないんですね。つまり、細かくここが正しくて、この数字はよくてという検証は行わない。しかしながら、公認会計士の専門的な知識あるいは経験から、これが実際に蓋然的に利用するのに適したものであるかどうかの判断を行うという意味で、保証とは間違っても言えないものかと思っております。

○脇田部会長

ありがとうございました。それでは、最後となるかと思いますけれども、引頭委員、どうぞ。

○引頭委員

申しわけありません、手短にします。ご説明ありがとうございました。企業価値評価に関してですが、今後、業界としては二項業務を増やしていかなければならないという認識があるなかで、新たなガイドラインが策定されることは、まだ作成途中ということではございますが、非常によいことだと思っています。

その中で、先ほど熊谷委員がご質問されて、関根委員がご発言されたことに関してですが、問題が起こった場合に、協会として調査し、倫理規定違反として処分を検討するという話でございました。現在協会として品質管理レビューを行っています。これは事務所の品質ということなので、必ずしも監査手続のみならず、事務所として、例えば人の教育や評価をどのようにやっているか、といった多面的な部分も対象にされていると理解しておりますが、その品質管理レビューの観点として、今回のガイドラインを加味していくというご用意があるのかというのが質問の1点目です。

2点目は、今回、ガイドラインができた暁に、会員の方々に対してどのようにして浸透させていかれるのか。ガイドラインですので必ずしも遵守が求められていないということは理解しておりますが、教育という観点で何かお考えがあれば教えてください。

以上です。

○脇田部会長

協会からいかがですか。

○関根委員

ご意見ありがとうございます。

まず1点目の品質管理レビューでございますけれども、私どもが今行っているのは、監査事務所の品質管理レビューとなっておりますので、たてつけの問題等ございます。けれども、おっしゃっていらっしゃるのは、こういったことをきちんと行っていくべきという趣旨と理解していますので、品質管理レビューのような形というだけではないと思うのですけれども、どのような形で遵守を求めていくかというのは課題だと思っており、そういう意味で検討させていただきたいと思っております。

○脇田部会長

ありがとうございました。よろしいでしょうか。

○市村参考人

企業価値評価ガイドラインなんですけれども、これは実はかなり前にできたものでございまして、できた時点から例えば実務補習所ではこの講義をしておりますし、あるいは協会としてはセミナーを行っている、あるいは地域会にも行ってセミナー等々を行っております。ということで、この企業価値算定業務を行う人で、この企業価値評価ガイドラインを知らない会計士は多分ほぼいないと理解しております。さらに、今回の改正もございますので、改正が行われた後には、同様のセミナー等で周知をさせていく予定をしております。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。それでは、本日の審議はこれで終了させていただきたいと思います。

監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する当部会の審議は、本日で一応一区切りになります。委員の皆様には、9回にわたりまして精力的かつ熱心にご審議をいただきましてまことにありがとうございました。お礼を申し上げます。

今後の予定につきまして事務局から発言をしてください。

○栗田企業開示課長

当部会におきましては、まだ検討事項として残っております監査報告書の記載内容の見直し等について、引き続きご審議をお願いしたいと考えております。日程につきましては、改めて事務局からご連絡を差し上げたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

○脇田部会長

それでは、本日の監査部会を終了させていただきます。委員の皆様には、お忙しいところご審議をいただきまして大変ありがとうございました。これで閉会とさせていただきます。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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