平成13年1月22日
金融庁

企業会計審議会第4回企画調整部会議事録について

企業会計審議会第4回企画調整部会(平成12年12月22日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第4回企画調整部会議事録

日時:平成12年12月22日(金)午後4時31分~午後5時53分

場所:中央合同庁舎第4号館4階共用第一特別会議室

○若杉会長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから第4回企画調整部会を開催させていただきます。

本日は、皆様方、年末でお忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

また、2時からの会議の後、引き続いてまた出られている委員もいらっしゃると思いますけれども、ひとつよろしくお願いいたします。

さて、本日は、まず、JWGの動向につきまして、山田委員から御報告をいただき、質疑応答を行いたいと思います。続きまして、前回の当部会において、鳥飼委員から御報告をいただき、質疑応答を行いました固定資産会計の審議の過程で指摘されましたさまざまな問題点につきまして、本日は、角田委員及び経団連の事務局の井上隆参考人から、産業界の考え方につきまして御報告をいただき、意見交換を行いたいと考えております。

それでは、まず、金融商品の会計基準にかかわるJWGの動向等につきましては、7月28日に開催しました第1回の当部会におきまして、山田委員から、検討経過の報告を受けたところでございますが、本日は、その後の状況等も踏まえまして、山田委員からの報告を再度いただきまして、その後に質疑応答を行いたいと思います。

先日、火曜日でしたか、会計士協会で、このJWGの公開草案につきましての報告会がございまして、私も出て話を伺ってまいりました。本日、その件をさらにこの場でもってお話しいただくということになると思います。

では、山田委員、よろしくお願いいたします。

○山田委員

山田でございます。

それでは、JWGの12月14日に公開されました基準案についてお話をさせていただきたいと思います。

今、皆様のお手元のところに、この赤い「Financial Instruments and Similar Items」ということで、300ページほどの厚さの基準案が出ております。

最初に、この基準案の構成を御説明申し上げたいと思うんですけれども、最初の5ページから、パラグラフ1以降、15ページまでございますが、これが、この基準案の序文ということでございまして、JWGのグループがつくられた経緯とか、ここの中でのスタンスといったものについてまとめて書いてございます。その後、17ページから、ここにDraft Standardというのがございますが、ここからパラグラフの195という、ページにしまして70ページまで、ここまでが基準の本体でございます。

したがいまして、基準本体としては、パラグラフの1から195まであるという構成になっておりまして、その次に、71ページに、APPLICATON SUPPLEMENTというのがございますが、これが、さらにまた、パラグラフとしては196から142ページのパラグラフ412までございます。これは、基準の本体の流れに沿いまして、そこでの適用に当たっての補足的な説明をしておりまして、この142ページまでが、基準として有効になる部分、つまり、本体とAPPLICATON SUPPLEMENTを合わせて、基本的には基準案ということになります。

それ以降、143ページから、BASIS FOR CONCLUSIONSというのがございますが、これが、議論した結論の背景ということでございまして、283ページまでございます。

さらに、285ページには、APPENDIX Aということで、これは、Dissenting Viewsということで、反対の意見を表明しましたフランスとドイツの反対の理由について、285ページから290ページまで、APPENDIX Aという形でついております。

それから、291ページのAPPENDIX Bというのは、この基準の入ることによって、多分変更が必要となるであろう現在の基準について、簡単に触れたものがついております。

APPENDIX Cという295ページでございますが、これは、用語のGlossaryということになっておりまして、基準の中で頻繁に出てくる主要な項目についての用語の定義が一まとめにされております。

最後、299ページから300ページまでがAPPENDIX Dで、この議論に参画した各国のメンバーの名前と紹介が載っています。これが、基準の今回公表されましたものの中身でございます。

それで、行ったり来たりで恐縮でございますが、一番前に、「コメントのお願い」というものと、その次に「要約」という日本語がついておりますけれども、これは、日本の方で準備いたしまして、特に「コメントのお願い」については、日本でのコメントの締め切りは来年の7月末まで、日本文の場合は来年の7月末まで、英文の場合は9月まで受け付けるということで、公開の趣旨を書いてございます。

それから、その後の「要約」というのは、JWGがつくりましたサマリーの英文を公認会計士協会の方で日本語に直したものということになっております。

それで、若干経緯を御説明した上で、基準の中身についてお話をしたいと思うんですが、お手元の資料の1-1をごらんいただきたいと思います。

この1-1には、JWGプロジェクトの経緯についてということで、簡単に経緯をまとめてございますが、この1のマル1からマル7までのところ、ここまでがIASCとして、金融商品プロジェクトを進めてきた経緯でございます。それで、マル8マル9マル10というのは、IASCもその一部でございますが、今、JWGとして予定しているスケジュールについて書いてございます。

IASCの方では、89年の1月から、金融商品のプロジェクトを開始しておりましたけれども、その後、91年と94年に、E40、E48という金融商品に関します認識、測定、表示、開示というすべてを一組にした基準案を2度ほど公表しておりますけれども、残念ながら、まだこの時点では、世界の賛同を得ることができませんで、結局は、95年の6月になりまして、開示と表示だけをIAS32号ということで、先行的に基準をつくりました。

その後、今度は認識と測定の基準を検討していたわけですが、97年の3月に、ディスカッション・ペーパーというものを公表しております。このディスカッション・ペーパーは、既にこの時点で、すべての金融資産、金融負債を時価評価し、その評価損益を損益計算書で認識するということを大原則として打ち出しておりました。ところが、この時点では、このディスカッション・ペーパーに対しまして寄せられたコメントは賛否、ほぼ同数程度であった関係もございまして、97年の10月になりまして、IASCとしては、とりあえず当時コアスタンダードをつくる必要があったこともございまして、暫定基準として、今日の日本の金融商品の会計基準と同じように、経営者の保有意図に基づいて会計処理を変えるという形のIAS39号を98年12月に設定しております。

ところが、この妥協的な基準にいわば満足しなかったアメリカとかカナダ、オーストラリア等々が中心となりまして、Joint Working Groupというグループをつくりまして、そこで97年3月のディスカッション・ペーパーの線に沿った基準案の作成というのを検討を始めました。その後、97年の年末から、約13回ほど検討を重ねた結果、ことしの12月になりまして、今お手元で見ていただいております金融商品及び類似項目という基準案がJWGの関係国で一斉に公開されたということでございます。

今後の予定ですが、各国によって、多少締め切りの時期がばらついておりますが、大体来年の6月から9月までの間にコメントを締め切りまして、特に非公開を望むコメントを除きまして、各国でコメントをシェアし合って、それを参考にして、各国で基準をつくることを考えていこうというふうに考えております。

ただ、現在の時点で、IASCの組織改革が来年の4月以降行われる予定ということもございまして、今後、JWGがもう1度集まって、このドラフトの最終案をつくるのか、それとも、IASCの新しい理事会が中心となってまとめていくのか、それとも、各国がこの現在のドラフトをベースにして、それぞれ別個に基準をつくっていくのか、この辺のところは、現時点では、まだ明確な合意に達しておりません。したがいまして、コメントの締め切り期間が終わる来年の夏ぐらいのあたりで、新しいIASCの理事会も動き出した頃に、多少方向性が見えてくるのではないかなというふうに考えております。

以上が、これまでの経緯と、それから、今後の展開の展望ということでございます。

次に、基準の中身につきまして、資料の1-2をベースにしてお話をしたいと思うんですが、1-2の1枚めくっていただきましたところに、これは先ほど見ていただいた基準案の中にも入っているものと全く同じものでございますが、「コメントのお願い」のところの第1パラグラフのところでございますが、JWGの参加国、以前も御報告しましたが、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツ、ノルウェー、ニュージーランド、日本の9カ国、それから、国際会計基準委員会の1機関という、9カ国1機関がJWGのメンバーでございまして、今回、これらの国で公開が行われております。

第2パラグラフの中で一応御留意いただきたいのは、このJWG参加メンバーが今回表明した意見というのは、あくまでも個人の意見でございまして、それぞれのメンバーの出身母体の組織が正式な意思決定をしているわけではないということです。したがいまして、もちろんアメリカのFASB、それからイギリスのASB等々の基準設定主体のスタッフないしはその代表という方が来たりしておりますが、ASBやFASBが組織決定としてこれを承認したということでもありません。

IASCにおきましても、IASCの理事会では、これを公表することは承認いたしましたが、この中身についても、かなり長い時間をかけて検討はしておりますが、あくまでもIASCとしては、ディスカッション・ペーパーという位置づけでございまして、IASとなるためには、IASCが持っているデュー・プロセス、すなわち、今度の新しい理事会できちんと議論をして、採決をして、公開草案にし、その後、公開草案のコメントを求めてから基準にするということでございますので、これが直ちに基準案として基準になるという性格のものではないという位置づけになっております。

では、1枚めくっていただきまして、次に「要約」のところでございますが、「要約」の第1パラグラフのところで、この基準案の特徴をa、b、c、d、eと書いてございます。基本的には、これをベースにいたしまして、多少追加をしながら御説明させていただきたいと思いますが、aのところにございますように、ほとんどすべての金融商品を公正価値で測定するという原則を打ち出しております。大きな特徴は、金融負債について、初めて公正価値の測定を正式に取り上げた基準案になっているということでございます。

日本の会計基準もそうでございますし、IAS39号、それから米国における基準もそうでございますが、デリバティブから生じる金融負債は別としまして、それ以外の借入金等の金融負債については、基本的には取得原価のままに置いておくというのが、現在存在している会計基準の多くの特徴でございますが、今回、初めて負債サイドについて、時価評価を行うということを提案しております。

したがいまして、この中で、特に一般になかなかなじみが薄いと思われるのが、みずからの信用リスクの変動に伴って、借入金や発行している社債に生じる評価損益、これも、時価評価の上、損益計算書で認識しようという立場をとっている点が大きな特徴でございます。よく言われるダウングレーディングのパラドックスと言われるものがありますが、それは格付けがAAの会社が社債を発行していて、その後、Aに格付けが落ちると、AA当時に発行した社債の方から、評価益が出てくるという計算になることをいいます。それは、当然、Aに落ちた時点で、調達の際に払わなければいけない金利が高くなるわけですが、既存の社債については、その発行した金利を変更しない場合が多うございますので、そうすると、評価益が出てくる。それを基本的には損益計算書で認識しようという点が1つ大きな特徴かと思います。

次のbというところでございますが、公正価値の変動により生ずる損益のほとんどすべてを発生した期の損益計算書に認識することということになっておりまして、この中での特徴としましては、現行のIASの39号ですと、売却可能有価証券とか、売却可能投資と言われるものについては、時価評価は行いますが、その評価損益を資本の部へ直接計上することができるという選択肢がございますが、今回、そういうような損益計算書をバイパスするようなことは考えていない。すべて時価評価の結果出てきた損益については、損益計算書に計上するということになります。

したがいまして、我が国で広く行われております持ち合いというような関係の株式も、実はこの例外にはなりません。持ち合い株式も、時価評価をした上で、評価損益を損益計算書に計上するという考え方をとっております。このあたりについては、日本からかなり強く、持ち合い株については性格が違うという主張をいたしましたけれども、結論の背景の中で、その点について触れられておりますが、会計基準としては、例外を認めるというところまで賛同を得られませんでしたので、残念ながらというか、原則時価評価の金融商品の会計処理がそのまま持ち合い株にも適用されるという形になっております。

先ほどaのところで、1つだけ言い忘れたんですが、金融資産の方はすべて時価評価なんですが、唯一例外がございまして、非上場の株式、これについては、公正価値評価の例外となっております。ただし、ベンチャー企業に投資することを業としているような会社については、その例外は適用にならないということになっておりまして、一般事業会社が持っている非上場の株式については、これは時価評価の例外で、取得原価で据え置くことができるということになっております。

またbに戻っていただきまして、ここのところで言っております公正価値は、実は、出口価値という概念をとっております。公正価値にも、入り口価値と出口価値があるというふうに言われておりまして、入り口というのは、購入してきた時点の時価ということなんですけれども、出口価値という概念は、今度は売る場合に実現するであろう価格ということになります。したがいまして、店頭市場のようなビッドとオファーの間に差がある場合には、資産についてはビッド、それから、負債についてはアスクトを用いるということになっておりまして、仲値を用いることも可能なんですが、その場合は、ビッドとオファーが大きく違わない場合に限られております。

ただ、純粋な出口価値というものを用いようとしますと、将来、有価証券を売るときにかかる手数料等のコストも本来は差し引かなければいけないというのが理論的な結論なんですが、これについては反対が多かった点もございまして、それは差し引かないという形で、純粋な意味の出口価値からはちょっと後退した中身になっております。

それから、次のcでございますけれども、ヘッジ会計に利用される金融商品に対する特別の会計処理の禁止ということで、いわゆるヘッジ会計はすべて禁止になっています。すなわち、現存している金融資産、金融負債については、これは当然時価評価をしますと、そのヘッジ会計がすべてPLに出てきますので、そこで相殺される。さらに、将来購入するであろう予定取引、将来予定取引のヘッジの場合であっても、ヘッジ会計のような例外処理を認める必要はないということで、後ほど申し上げますが、注記を行ってもいいという規定を入れることによって、ヘッジ会計はすべて禁止しております。

それから、dのところでございますが、金融資産の譲渡の会計処理に対する構成要素アプローチの採用ということなんですが、基準全体の中で、金融資産の譲渡ないしは認識の中止という部分が、今回かなり大きく変わっております。なおかつ、基準としても、かなり多くのパラグラフを費やしているんですが、今の時点では詳細は申し上げませんけれども、期末に支配をしている資産ないしは負債を自分の財務諸表に上げる。支配をしていないものについては、それは財務諸表には計上しないということになっておりまして、例えばローン・パーティシペーションについては、そのローン・パーティシペーションに出している部分についてはオフバランスすることができます。それから、現先のような取引の場合は、例えば自分の持っている有価証券を売った場合には、それは売買処理をすることが前提になっております。

次に、eのところでございますが、金融商品及び財務リスク並びに損益計算書への影響に関する開示の拡張ということなんですが、まず、この中で、必ずしもここに対応しないかもしれませんが、PLの表示のイメージから申し上げたいんですが、負債証券なんかを持っていて、金利が変動しますと、当然金利の変動に伴って、そこから評価損益が出てまいります。その評価損益は、すべてPLに認識するということになります。

したがいまして、受取利息、支払利息というのは、その時価評価に対する修正というような形で会計処理がなされますので、受取利息や支払利息といった概念が、今までのようにキャッシュに裏づけられたものとは、必ずしも一致しない。もっと言いますと、キャッシュ・フローと損益計算書との関係は、かなり切断されたような関係になります。したがいまして、金利変動があると、損益計算書の振れ方といいますか、ボラティリティーはかなり大きくなるのではないかというふうに考えられます。

あと、財務諸表の注記による開示が一部拡充されておりまして、例えば先ほどヘッジ会計のところで申し上げました将来の予定取引に対するヘッジについては、ヘッジ会計を認めないということだったんですが、そうしますと、将来生じるであろう、何か海外から機械装置を購入してくるときの購入代金の支払いに充てるために例えば為替を手当てしたというようなときには、その取引が起こるまでは、買掛金の計上がございません。

しかし、為替の方だけ当期に手当てしますと、その為替だけは時価評価されて、そちらの評価損益だけ損益計算書に出てくる。そうしますと、その関係がPL上はいびつに出てまいりますので、そのことについて企業が望むならば、損益計算書でこういうヘッジのために手当てした為替の評価損益は含まれているという開示を注記で行うことができるというのが、今回、特徴の1つになっています。

さらに、先ほどの現先といったようなものについては、例えばそれを有価証券を購入した処理をしているところが、将来売り戻さなければいけないというような契約を持っているときには、その売り戻さなければいけない契約が存在していることを注記で開示すればいいという形で、注記での開示を今回かなり拡充しております。

以上、この基準の特徴というのはまだまだあるわけですけれども、特徴的なところをざっとaからeまでに少し補足して説明申し上げました。とりあえず以上でございます。

○若杉会長

どうもありがとうございました。ただいまの山田委員からの御報告につきまして、御質問、それから御意見のある方は、どうぞ御自由に発言していただきたいと思います。

○辻前企業会計専門官

ちょっと確認させていただきたいんですけれども、このペーパーだと、フランスとドイツの反対意見が、一応項目を立てて、最後の方にとってあるんですけれども、それは、例えば日本の場合は、公表自体には反対しなかったので、こういう形で反対意見が載らなかったという理解でよろしいのかどうかということと、結論の背景のところに、少数意見というか、反対意見がいろいろ書いてあるんですけれども、その中に、日本側の主張がいろいろ入っている、そういう理解でよろしいのかどうか教えていただきたいんです。

○山田委員

JWGのメンバー全員が、この公開草案を公開することには賛成しています。基準の中身、つまり、3カ国どこもみんな100%満足しているわけではないんですけれども、それで、基準の中身について、最終的に、この中身で不満であるという意見を表明したのがドイツとフランスだったということです。それで、この反対意見については、その意見をこういうAPPENDIXできちっと載せるということが事前に合意になっていましたので、この反対意見が出ております。

実は、この反対意見を読んでいただくとわかるんですが、反対意見が書いてあるところの末尾にかぎ括弧がついていまして、ここで言われている主張については、パラグラフの幾つ、BASIS FOR CONCLUSIONSのどこで議論しているという形でそれがリファーされておりまして、ほとんどすべてだと思いますが、ここでドイツとフランスから主張されている意見については、中で議論されて、それについて、JWGとしての意見が表明されています。したがって、反対はこういう意見があって、それに対してこういう考え方をして、最終的にこうなったということが結論の背景に出ております。それらすべてを勘案して、ドイツとフランスが反対であるという意見を表明したということです。

日本は、これについて、不満な点もたくさんあったわけですけれども、最終的には、この基準案には賛成いたしまして、反対意見がこういう形で最後まとまってきたときに、我々としては非常に不満であったものですから、こんなに長く書くなということを主張したんですが――というのは、多くのここで指摘している問題点は我々も思っていることでして、そういう主張をしましたが、もともと反対意見については、それを載せるということだったので、彼ら、つまりドイツとフランスの反対が、かなり大きくなり過ぎる形でここに取り上げられているというふうに理解しています。

○八木委員

実務をやっている方からすると、いろいろな問題が出てくるわけなんでございますが、冒頭山田さんがおっしゃった、自分のところの信用リスクの変動で利益が出ちゃうというような、そういう感覚は本当に受け入れがたいものがあるわけなんで、これは、これからいろいろ議論していく必要があると思いますが、ちょっと教えていただきたいのは、例えば、資金調達する側が時価評価であって、その結果、買った設備の方は取得原価のままにしておく。

その辺にいろいろアンマッチが当然過程で出てくるということになると思うんですけれども、例えば、会計士さんたちが会計監査をやっていかれる過程で、特にフェアか何か知りませんが、マーケットバリューというものをどういうふうに把握して、我々が処理したものをいいとか、悪いとかを言える、そういう基準が合理的に担保し得るのかということを考えていきますと、非常に難しい部分があると思うんです。私どもが仕事をやる上でも、それでも大変なんですが、特に監査なんかで、こうだよ、ああだよと言っていただく過程で、非常に難しい点が出てくるんじゃないかというふうに思います。その辺、もし議論の中であったら、教えていただきたい。

○山田委員

まず、最初の設備投資のための借入に対して、借入側だけ時価評価して、設備の方は取得原価で置いておくことについて、この基準の考え方はいかがかという御質問だったかと思うんですが、ここでの考え方は、借入金が金利変動に対して受ける影響、直接的な影響と、それから、工場設備が、工場を稼働して製品をつくって、それを売って資金を回収するということになるかと思うんですが、そういう活動が金利変動によって受ける影響とは、必ずしも度合いが比例しているわけではないということなんです。

したがって、工場設備のために資金調達したという関係を経営者の方がそうだということは、そう思われて、設備投資はされているんでしょうけれども、そこに理論的に両者をひもつけて、会計処理をしなければならないほどの密接な関係はないというのが、一応ここの論理的背景になっておりまして、その上で、借入金だけは別途切り離して、金利変動を評価するような時価評価をしましょうということなのです。工場設備については、従来の有形固定資産の評価の基準をそのまま適用するというような形での仕切りに一応なっております。

それから、もう1点の時価の硬度といいますか、時価把握の困難性という点でございますが、これは、御指摘のとおり、まさに監査に当たって、会計士がこれからそういうことができるのかという問題はもちろんございます。ただ、前提となっている考え方というのは、多分当初は、精度というのがかなり劣るかもしれない。しかし、こういう時価評価を何年か繰り返すことによって、その時価の把握の仕方の精度が上がってきたり、それを把握するための内部統制が整備されたり、さらに技法が開発されたりして、長いうちには、かなりかたいものというか、ある程度の精度のものになるのではないか、そういうような前提に立っております。

○八木委員

今おっしゃった限りでは、御説明を伺ってわかったわけです。要するに、ここまで全部時価にしなきゃいけないというニーズというか、それはだれがどう求めるのでしょうか。

先日、20日に、日経にちょっと小さなある論文が載りました。あれは、実務家の方が書かれたんですが、その取得原価主義のメリット、デメリットから、今日に至る新会計基準に対する批判ということで出ているんですけれども、あの中にも、アナリストとか投資家とか、そういう方のニーズはあるのかもしれないけれども、本当にそれが我々事業をやっている人間が出す企業の実態というものをきちっと表明し、多くの投資家の方に理解されるのに、本当に正しい決算書なんだろうかというような、もっと根本から考えていかなきゃならない問題があるんじゃないかということを言っているんですが、そういう感覚を我々は持つんですね。

それから、フェア・マーケットバリューというけれども、いろいろ投機だとか何だとか、とてつもないことがいろいろ行われている。そういうものを果たして我々は正しいと認識して、それを使って、決算書をつくるのがいいのか、感覚的には非常に悩むところでございます。

しかも、僕は、これからぜひいろいろな国の動向を見ていきたいと思いますけれども、例えばアメリカのように、四半期決算をやっているところが、こういうものをどう受けとめて、PL、BSに本当に実務でやっていくのか。我々はとりあえず半期でございますけれども、それだけでもなかなか大変だと思うんですが、大体想像できるいろいろなある種の混乱みたいなものを考えますときに、本当に実務がついていけるか、それを受け取る側が有効と思って読む決算書になるかどうか、その辺を非常に心配して、今拝聴していた次第です。

○若杉会長

何か御説明、補足することはありますか。よろしいですか。ほかにどうぞ、御質問、御意見等をいただきたいと思います。

○角田委員

今の八木委員の質問に関連してですが、経団連の場でも、そういう話についていろいろ意見を聞いてみますと、本当にニーズというのは、一体どういうところの人がぜひこれをやってほしいと言っているのかという質問があって、まさに、それは返答に困るんですけれども、議論されていて、もちろん、委員は個人の立場で議論されているというのはよくわかるんですが、何かその背景というんですか、どういうニーズに基づいてこういう議論をしてきて、しかも、一応公開することには賛成ということですけれども、前向きにやろうというふうなことをおっしゃる国々はどういうところなのか、また、その背景は何なのか、ちょっと御説明願いたいのですが。

○山田委員

まず、積極的にこれを推進しているのは、アメリカのFASBです。FASBについては、FASBの133号の結論の背景の中でも、明確に方向性を打ち出しておりますが、現在の金融資産側だけ評価するようなものは、これは中間的な基準のあり方であって、究極的には、金融資産、金融負債については、すべて時価評価するのが最も適切であるという方向を出していると思うんですが、これは、いまだ変わっていない。ないしは、アメリカが非常にリードしているという状況だと思います。それ以外のG4プラス1の国、カナダ、イギリス、それからオーストラリア、ニュージーランド、このあたりは、すべて時価評価しかないという非常に強い信念を持っていると理解しております。

本当に時価評価を要求するニーズがあるのかという御質問なんですけれども、結局理論で詰めていきますと、こういう形の基準にならざるを得ない論理的帰結があるんではないかと私は思うんです。つまり、だれにニーズがあるかというと、非常に難しいんですが、実は、この検討している中で、最大の利害関係者ということで、銀行業界とJWGの幾つか――私は参加しなかったんですが、幾つかのメンバーが会談しているんですが、基本的に物別れに終わっております。

それで、ことしの4月に、バーゼル銀行監督委員会から出ましたIASに対する支持表明の中でも、IAS39号には賛成するけれども、このJWGの基準案には反対であるということが明確に言われておりまして、そことの間の調整は、実はつかないまま、これが公表されているということです。

私自身も、これは、理屈としては非常にきれいな論理が展開されていると感じております。先ほど八木委員からも御指摘がありましたように、これの実務への適用の困難性というのは十分予測できるところでございます。それから、ニーズというときに、では、どこかの業界がこれをぜひつくってくれという要請があったかというと、私の知る限りでは、それはありません。

ただ、基準をつくっていくときに、少なくともアメリカのFASB等の経験からいきますと、例えばヘッジ会計をうまく合わせるために、ヘッジの基準を詰めていけばいくほど、実は、非常に膨大な条文といいますか、手当てが必要になってくる。そういう中で、そのときの時価でしか、キャッシュの実現ということが期待できないような金融商品というものについて、さらにヘッジ会計というような非常にいろいろな手当てを必要とするようなものが果たしてワークするような形になるのかということなのです。

現在、IAS39号のインプリメンテーション・ガイダンスなんかをつくっておりますが、その中でも、詰めれば詰めるほど、いろいろな形で、経営者の意図と、それから、それを合わせるための会計処理のテクニックというのが、非常に膨大な量になってきています。そういうようなものを一気に解決する意味でも、これは理論的に整合性があるんだというような考え方になっています。

先ほど1つ疑念を示されました発行体のみずからの信用リスクの評価の問題なんですが、これも、もちろん賛否あって、多数決で決まったような事項なんでございますけれども、1つあるのは、値段がついているものの中にも、既に信用リスクは反映している。それから、デリバティブのような当事者間の相対的な信用リスクの差がプライスに反映しているものがある。そこで、信用リスクを除くんだとすると、市場で成立している時価からも、信用リスク部分を実は抜かなきゃいけないんじゃないかとかという理論的な整合性を考えると、必ずしもみずからの信用リスクを排除するということがいい結果をもたらさないのではないのかという議論が一部行われております。

○若杉会長

角田委員、よろしゅうございますか。

ほかに御意見、御質問等ございませんでしょうか。

○斎藤委員

ここは、このJWGのこのペーパーの中身について議論するんでしょうか。

○若杉会長

自由にいろいろこれをめぐってお聞きしたり、あるいは意見を述べたりということですので、おっしゃられるようにかたく考えなくても結構です。

○斎藤委員

議論するんであれば、それなりの議論をきちっとまとめてしなければいけないと思うんです。そうでなくて、きょうは、山田委員から、この背景なり事情なりを承ったということであれば、そのおっしゃられたことについて、当面確認しておきたいことを申し上げるにとどめたいというふうに思います。

○若杉会長

そういうふうに御理解いただきたいと思います。

○斎藤委員

既に議論が始まってしまいましたので、先ほど伺っていてちょっと気になった点の1点だけ申し上げて、あと1つ御質問申し上げますけれども、八木委員の御質問に対して、山田委員の御説明の中で、要するに、金融負債に対する利子のリスクの影響と、それから、金融負債で賄った資金を投下している事業投資に対する金利変動のリスクの影響というものは、必ずしも同じではない。それは当然でありますけれども、そのことが、一方だけを認識して一方を無視するという論拠にはならないということは申し上げておきたいと思います。

それから、これは、それ以外のことは、差し当たり申し上げませんけれども、1つ質問は、先ほどDissenting Viewsがありましたドイツとフランスは、これは結論に反対したという御説明でしたね。あとは、参加国すべてが、公表には賛成している。問題は、では、日本は、この結論に対して、賛成したんでしょうか、反対したんでしょうか。

○山田委員

賛成しました。

○斎藤委員

わかりました。

○若杉会長

ほかにいかがでしょうか。用意した時間はまだ若干ありますが。

○安藤部会長代理

先ほど若杉会長が言われた火曜日の公認会計士協会の説明会に私も参加して質問したんですが、2点質問しました。1点は、八木委員が言われた原価主義から時価主義化へ伴う監査の保証の水準ですね。その低下という問題を私も言いました。

それからもう1点は、これは、恐らく斎藤委員と同じことを言っているのかもしれませんけれども、ここで重要なことは、非常に典型的に言えば、ヘッジ会計を否定するという、これは御説明があったんですけれども、経営者の主観はけしからん、排除するんだ、客観的にやれという、わかりやすく言えばそういうことになるわけです。もしも、そうなりますと、まだ原価主義が生きている営業用不動産、事業用不動産についても、行く行くは時価主義化ということになってしまうのではありませんか。

歴史的に見ましても、ドイツが典型的ですけれども、客観価値説から主観価値説へ変化した。その主観価値説をわざわざ言うためには、今日言うところの事業用の資産の原価主義を導くために、主観を持ち出さざるを得なかったということですから、これまた、歴史が逆に動いて、客観主義がいいんだというと、当初のドイツがそうであったように、すべての資産について時価でやれというのは目に見えているわけでありまして、経営者の主観を全く排除するという、非常にリスキーだなということを申し上げたということです。そこで言ったことを改めてここで申し上げておきたいと思います。

○若杉会長

火曜日のあの会合での御意見をまたここで再度発表なさったというふうに御理解いただきたいと思います。

このエクスポージャー・ドラフトに対して、我々が審議会として何らかの意見をまとめて出すという、そういうことを考えているわけではありませんので、企画調整部会ですから、もし、このJoint Working Groupの最終的なそういうものが基準化したときに、我々がそれを(我々の基準の中に)どのように取り扱うのかという問題、これはずっと将来の問題ですけれども、とりあえず今一種の話題としまして、こういうものが出ましたので、我々としても、現段階での認識をしておこうじゃないかという、そういう趣旨から、今日、ここで取り上げたわけですので、ここで議論しても構わないんですけれども、そこまで考えておりませんので、ご自由にお願いします。

○辻山委員

中身の問題につきましては、今いろいろな意見がありますので、ちょっと差し控えたいと思いますけれども、資料の1-1の内容についてちょっと御質問したいんです。マル6の97年10月に、金融商品プロジェクトが分割されたというところで、そこで、9カ国プラス1という形になったわけなんですけれども、そのときに、9カ国の構成の中で、そもそもIASの39号に賛成する国と、どちらかというと反対する国の割合といいますか、固有名詞でもいいんですけれども、それは、最終的にこのJWGプロジェクトになって7対2になった。その構成はどう変わったのかということについて御質問したいと思います。

○山田委員

済みません、質問の意図が酌み取れなかったんですけれども、IAS39号は、現理事会は16議席ございます。それで、その16議席の中で、39号の賛否にどういう票だったかということですか。

○辻山委員

JWGの現9カ国としますと、9カ国を当時にさかのぼると、どういう構成だったのか。9カ国の中で、何カ国がIAS39号に賛成した国で、何カ国が反対していた国なのか。

○山田委員

今、記憶が定かではないんですが、イギリスとアメリカは反対していたような感じがありますが、申しわけありません。大分前のことなので、正確に覚えておりません。

○辻山委員

質問の趣旨は、もうちょっと簡単に申しますと、日本は、必ずしもIAS39号に反対するというスタンスではなかったように記憶しているんですけれども、そうしますと、9カ国の中で、このJWGを基準に考えますと、これに反対する意見から賛成する方に変わったのは日本だけという、こういう解釈でよろしいわけでしょうか。

○山田委員

それは、定かではありません。

○若杉会長

次の予定がございますのでその辺にしておきたいと思います。

本日、今、山田委員の方から報告がありましたJoint Working Groupの基準ドラフトに対しましては、今後、世界各国からさまざまなコメントなどが寄せられることになっていると思いますが、いずれにいたしましても、関係各界などから的確な意見が発信される必要があると思っております。この件は、そのくらいにとどめておきまして、次に予定しております固定資産会計の問題点に入りたいと思います。

先ほども申しましたように、固定資産会計の審議の過程で指摘されましたさまざまな問題点についての審議に入りますが、本日は、先ほど申しましたように、角田委員と井上参考人から、産業界の考え方につきまして報告をお願いしたいと思います。

時間は15分ぐらいの予定ですので、ひとつよろしくお願いいたします。

○角田委員

それでは、お手元の資料2として出しておりますけれども、「固定資産の会計処理に関する論点の整理」その他の指摘事項についてということで取りまとめたものでございますが、この論点の整理につきましては、経団連としましても、企業経営に及ぼす影響は極めて大きくて、市場環境などを踏まえた多面的な検討が不可欠だというコメントを出しております。

また、その中でも、特にその他指摘事項につきましては、減損会計の検討と同時に、その検討を進めるべきだというふうに指摘してまいったところでございます。その中で、特に減価償却の扱いにつきましては、今週ですか、会計の実務の方々にお集まり願って、皆様の御意見を聞いたところでございまして、それを取りまとめたのが、この指摘事項についてということでございます。

特に経団連として機関決定をしたという意味ではないし、また、すべてこの意見がこういうふうにまとまったというわけでもないんですが、方向として、こうした意見が多く出されたということで御報告したい、ということでございます。

細目につきましては、井上の方から御説明申し上げます。

○井上参考人

経団連の井上でございます。

今御説明しましたとおり、実務専門家で構成されております部会がございまして、そこで、固定資産の会計処理に関する論点整理のうち、その他の指摘事項につきまして、そのニーズあるいは検討の方向性について議論をした結果を取りまとめております。

関心は、減価償却の扱いというところに集中しているということが結論でございます。まず1番から、簡単に補足をしながら御説明を申し上げます。

固定資産の減価償却は、当然のことながら、本来、損益計算を行うための処理でありますから、経営者によって合理的に判断された一定の方式に従って、規則的、計画的に実施すべきものでございます。しかしながら、減価償却にかかる我が国の実務、特に耐用年数、残存価額等の処理につきましては、税務上の規定を中心として行われている。監査上も、これが容認をされている状況にございます。

昭和35年の連続意見書等で、所定の減価償却方法に従い、計画的、規則的に実施されなければならないとされておりますけれども、実際には、法人税法の31条におきまして、減価償却費は会社が損金経理をした金額のうち、政令で定めるところにより計算した額までが損金算入されるということがございますので、税務上のメリットを得るためには、最低でも税務上の損金算入可能額を計上する実務が多いということでございます。

監査上につきましては、昭和38年の監査第1委員会報告におきまして、正規の減価償却は、税法の規定に依存するものではなく、一般に公正妥当と認められる減価償却の基準に基づき、実質的に行われるべきものであるとされておりますけれども、後段におきまして、法人税法に規定する普通償却限度額は云々ということで、当面監査上妥当なものとして扱うということで、監査上も、税法を中心とした実務が容認されているという状況でございます。

一方で、近年、国際的な動向を踏まえた会計基準の見直しというものが急ピッチで進められております。その一環といたしまして、現在固定資産部会で減損会計のあり方につきましても検討が進められておるところでございます。

産業界といたしましては、減価償却における例えば耐用年数の見積もりのあり方等につきましても、減損会計の検討と同時に見直しを行わなければ、これは著しくバランスを欠く基準ということになってしまうのではないかということを懸念をしております。昨今、非常に比較可能性ということが強調されておりますけれども、比較可能性という観点はどこまで持ってくるかという問題は別途ございますが、もし、その観点に重きを置くのであれば、税務基準を中心にした減価償却が放置されているというのも、少々不可思議な状況だというように考えざるを得ないと思われます。

この点、財務情報からいろいろ導かれます企業の国際的なコスト比較等々においても、諸外国に比べて、日本企業が若干不利な立場に置かれるということもあり得るのではないかというふうな意見もございます。そこで、長らく検討が行われていない減価償却のあり方につきましても、ぜひとも国際的な比較を行いつつ、我が国として、基準の整備を図っていく必要があるんではないかというふうに考えております。

2に移らせていただきます。税法等の関係についてでございますけれども、説明するまでもございませんが、現行の減価償却が税法規定を中心に実施されている考えられる理由としては、まず1番目に、先ほど申し上げたように、税法上損金経理が要求されていますということ。2番目に、税と会計の一致が実務コスト面でこれまではすぐれていたということ。3番目に、他に明確な基準あるいは指針というようなものが存在していないこと。4番目、先ほど申し上げましたが、監査上も、それが容認されているといったことが考えられます。

しかしながら、投資家への適切な情報開示という観点と、税法の目的というのは、当然違うわけですから、特に近年の国際水準への会計基準のレベルアップという流れにおいて、両者を整合させていくことは非常に限界に近づいているんではないかということでございます。

税法側で考えますと、平成10年度の税制改正における法人税の課税ベースの抜本的な見直しによって、税法の方からも、会計基準からの乖離というものが決定的になっております。また、来年度から導入される予定の企業組織再編税制、さらには、再来年に見込まれております連結納税があわせて導入されますと、税と会計では、もはや全く別の扱いとなるというのが実態かと思われます。

一方で、会計面につきましては、税効果会計が既に導入されたところでございまして、一定程度での調整ということが会計上の手法としては可能になっているという状況でございます。

以上を踏まえますと、減価償却に関しまして、現行の税法規定を中心としたあり方を抜本的に見直して、企業経営のツールとして、そして、投資家への有用な情報提供の観点から検討を行う時期にあるんではないかというふうに考えております。具体的には、企業の自主的に見積もった合理的な耐用年数あるいは残存価額により、償却計算を行うことを基本といたしまして、その見積もりのあり方について基準化をする、あるいは償却方法の選択、変更、あるいはその監査上の取り扱い等についても、検討が必要ではないかと考えております。

会計面での検討ということはさることながら、問題は、先ほど指摘したうち、マル1マル2、税法あるいはコストをどう考えていくかということでございます。マル1の損金経理要件につきましては、これは、税法の規定でございますので、直接的に会計の問題ではないと言われますと、そのとおりなんでございますけれども、これまでも、「その他」というところに書いてありますけれども、当審議会では、証券取引法のみならず、税法あるいは商法を含む関係諸法令との関連や実務への配慮を行いつつ、実現可能な会計基準の策定というのに果敢に取り組んできた歴史がございます。

したがいまして、この会計上の適正な減価償却の必要性というものを前提として、当審議会あるいは市場の行政当局としても、損金経理要件のあり方というものにつきましても、ぜひとも働きかけをしていっていただきたいということでございます。

あとマル2のコスト面につきましては、従前に比べますと、会計のシステムというものも構造化しておりますので、対応が可能となってきているというふうには考えられますけれども、中小企業あるいは移行期間や金額の重要性等々については、十分な配慮が必要であろうというふうに考えております。

いずれにいたしましても、先ほど冒頭に申し上げましたけれども、連続意見書であるとか、非常に古い規定でございまして、企業会計の規則集を開いてもなかなか見つからない。何年か前のものを持ってこなければ見つからないというような基準というのが減価償却の実態でございます。したがいまして、今回、いい機会でございますので、減価償却のあり方ということにつきまして、ぜひとも検討をお願いをしたいという要望でございます。

なお、論点整理中、減価償却以外の論点につきましても、経団連の会合で、皆様のニーズというものを聞いてみましたけれども、実務サイドから、緊急に見直しを行うべきというような強い指摘はなかったということをあわせて御報告を申し上げます。

私からの説明は以上でございます。

○若杉会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの角田委員、井上参考人の御報告に関連しまして、御意見、御質問等をお願いしたいと思います。

○八木委員

同じ経団連でやっている人間として、一言具体的に、例えばどういうことかというのを二、三申し上げたいんですが、1つは、我々はこれまで長い間、税法というものを1つの常識として会計処理に通じるものとしてやってきたわけなんですけれども、昨今、説明がありましたように、いろいろ企業経営も苦しくなってくると、設備も大事に使うというのは当然のことで、今、法定耐用年数は10年と言われても、20年ぐらいは使っているのがざらにあるわけで、しかも、重厚長大の産業ほど、そういうウエートは物すごく大きいわけです。

ところが、実質使っている年数で償却なんかをしようものなら、会計士さんはそこまでは認めていただけないから、10年とか11年とかというもので、もちろんきちっと減価計算をやっているわけでございますが、端的な話が、こういうものを実務のところで実態に合わせるということができないか。極めて素朴な気持ちから、こういうものが1つ出ているというのがあるわけでございます。

それと、日進月歩の技術の中で、これは、税務の世界の方ですが、ああいう耐用年数表などを見ると、この機械は一体どれを適用したらいいのかと迷うぐらい、どんどん新しいものも出てまいりますので、そういう意味でも、さっきおっしゃいましたように、1つの見直しの時期に来ているんではないか。そういう現実のニーズがあるということですね。

それから、償却の方法ですけれども、今、残存価値を5%残せということで、我々は計算しているんですが、年々決算書を見ていてよく感じるんですけれども、営業外の損失のところに、雑損に、大滅却のロスがよく出るんです。これは、結構大きいんです。私も、決算書を見ながら分析して、何かあったのかというと、そうじゃなくて、要するに、御用を終えて償却、滅却する設備は、意外に大きな価値を持ってそこにある。この辺は、備忘価額というか、そこまで落として償却し切っていいんじゃないかとか、海外なんかでは、そういう国はたくさんあるわけなんで、そういういろいろな目からして、税法準拠型のこういう固定資産のいろいろな処理をもう1回、今いろいろ言われたような目で見直す時期だなと。

これは、決して小さなテーマではないので、その他指摘事項というよりは、むしろ審議会レベルでいろいろ各方面からの御意見をいただくようなテーマではないかな、こういうふうに考えておりまして、これは、私の個人的あれなんですが、経団連でいろいろやっていた実務者レベルの議論でも、さっきのような話が出ているわけでございまして、この辺は、実務界での1つのコンセンサスであるということです。

そのほかに、圧縮記帳とか、いろいろ話がその他の中にございましたけれども、この辺は、焦眉の急とか、全体の経営に与える影響の大きさとかか見ると、何といっても減価償却の関係かな、こういうふうに考えておりまして、それがさっきの意見表明になっている、こういう背景でございます。

以上でございます。

○若杉会長

ありがとうございました。お二方の報告のさらにまた補足をしていただきまして、どうもありがとうございました。

ほかに何か御質問、御意見ございませんでしょうか。

なお、この問題は、次回の審議会でも取り上げて扱いますので、御了承ください。

○八木委員

いつもここへ来るたびに、確定決算主義なんて、皆さんに笑われちゃうんですけれども、部分的に、例えば固定資産というローカルな部分において、例えば損金経理しないと税務上の損金として認めないというような、そういうつながりを打破して、評価をする。そういう感覚で、ここのところで、一種のつながりを断ち切っていくという感覚があり得ないのかどうかですね。その辺が1つ、こういう時代なんですから、いろいろあっていいんじゃないかと思うんでございます。

それからあと、さっき申しおくれましたけれども、減損会計を詰めていく過程では、これは、実際にその設備を使う、使わない、それから、それが回収できる、できないという、かなり実態から来る議論になっていくと思うんですが、そうなると、一方における起算となる耐用年数が、耐用年数表というのは税法のその基準からスタートすると、そこにも合理性というか、突っ込んでいくと、難しい点が出るんじゃないかなという、そういう感じもあわせてしております。

以上です。

○西川委員

おっしゃっていることは正論だと思いますので、監査をする立場からは特段ないんですけれども、一般に、税務減算を認めると、減価償却そのものが非常に少なくなっちゃうんじゃないか。それで、税務上の恩典だけとろうとする、そういう懸念を持つ、会計士の中にもそういう意見というのはあろうかと思うんですけれども、一応税務に乗っかっていればいいというような、本来監査のあるべき姿でもないでしょうから、それ自体、おっしゃることに関しては、我々の立場としては賛成できるという考え方があります。

ただ、監査をしていない企業が、会計上減価償却を全然しなくて、税務だけ減算するというのは、そこら辺までは責任は持てないという感じはしております。

○辻前企業会計専門官

井上さんにお聞きした方がいいかもしれないんですけれども、会社の方で、自主的に耐用年数を決めたいというふうにおっしゃったときに、監査人が、いや、これは税務上これで決まっているからこれでやってくれというような指導をするというのは、結構よく聞く話なんでしょうか。

○八木委員

それは、僕の方がいいかもしれませんけれども、そういう場はないですね。今現在、こういう環境の中で仕事をしていますから、そこは税務できちっとやっている。むしろ、少し短縮したいというようなことで、有税で増加償却をしたり、当然そういうニーズが当局とマッチする場合には、特別な短縮の認可を頂戴しますから、その限りでしか、今、ほとんどの企業は処理していないと思います。

○多賀谷課長補佐

どなたからでも教えていただきたいんですが、諸外国では、大体どういうような……。余り詳細な減価償却の基準があるというふうには聞いていないんですが、状況がわかればお教えいただきたい。

○若杉会長

どなたか御説明いただける方、いらっしゃいますでしょうか。

○山田委員

会計基準に限って言いますと、IASには、詳細な規定はありません。あくまでも経済的耐用年数で、その経済的耐用年数をどう決めるかということについては、当然経営者が見込まれているその見込みに立脚するという形になりますので、日本の税法の耐用年数表のようなものが会計基準として存在しているということは全くないと思います。

○若杉会長

ほかにいかがでしょうか。まだ予定した時間は十分ございますので……。

○鳥飼委員

この間、減価償却について調べましたときに、山田委員がおっしゃるように、IASにも規定がなくて、これは経済的利益の消費によって、消費のパターンに合わせて償却しなさい、そういう規定がございまして、米国につきましては、正規の償却で減価償却をやりなさい、こういうふうになっております。むしろ、調べましたところ、税法上米国なんかには詳細な規定があるというふうに思われます。

○斎藤委員

別にどうでもいいことですけれども、今の場合には、インターナル・レベニューのガイドラインがありまして、税務申告上はもちろんそれを使うわけです。会計は、別にそれを使わなくてもちっとも構わないんですけれども、参考にすることがしばしばあるということのようであります。

○若杉会長

ありがとうございました。確定決算主義をとっていなければ、そういうことがかなり自由にできるわけですね。

ほかにいかがですか。6時までなんですけれども、何も無理に6時までやっている必要はないんですから、決して無理強いはしませんけれども……。

○安藤部会長代理

気楽に発言いたしますけれども、産業界というか、実際企業の立場で、具体的な企業会計として基準が欲しいというのは、気持ちはわかるような気がするんです。日本的なやり方ですと、恐らく確定決算主義が、例えば分離主義ということがありますから、そっちへ、例えば証取法適用企業が変わるとしますと、税法でやっている耐用年数表みたいなものに変わるものを企業会計の畑でつくると、恐らくそういう要求が出てくる。そうすると、そういう要求は、監査される公認会計士の方も持つんじゃないか。自分が適正だという意見を出すのに、何の基準もなくてできるか。そうしますと、きっと公認会計士協会で、実務指針としてつくってくれなんて話にいくのかなという、雑談でございますけれども、そんな気がいたします。

○三國谷取引所監理官

全く雑談的にお伺いしますけれども、よく償却年数が、うちの方で経団連さんは要望されますけれども、税は短くしろ、そういうことも含めておっしゃっておられるのか、それはあわせるというのは、いろいろなあわせ方があるようですけれども、いろいろ実務等、この辺をちょっとお聞かせいただけると……。

○八木委員

最近は、短くしろというのは少なくなってまいりまして、むしろ、こうやって厳しくなってくると、いろいろきめ細かくああいう設備なんかも大事に使う企業も多くなってきまして、むしろ実態に合わせろと。ただ、確かに最新鋭のいろいろなIT関係とか、そういったものは少し短く、早目に経費に落とすということで、今度の税法でも、6年を4年にしてくださいなんていう要請が、電子関係の業界から出ておりますけれども、ああいうのは、ローカルな話としてはあると思うんですけれども、実際は、余り産業界なりのわがままな、そのとき、そのときでのというような風潮は大分減ってきたように思うんです。特別措置なんかも、大分減ってきましたね。課税額は、レートを下げていただいたんで、相当広くなったんで、最近、特別な御配慮を求めるという感覚がだんだん少なくはなってきているというふうに認識しております。

○三國谷取引所監理官

また、気楽にちょっと質問でございますけれども、今まで、例えば税の世界で、税制改正で、償却期間を短くしろという企業は私は随分見たことはあるんですけれども、長くしろという要求はされたことがあるのか、そこだけ伺いさせていただきます。事実関係で結構です。

○八木委員

1つあるとすれば、連結決算なんかはそうやったらいいじゃないかという解はやはりだめですよね。そこのところへの単独の積み上げという形で議論していきたいと思っております。

○乾総務企画部長

プリミティブな質問で恐縮なんですけれども、主税局も、耐用年数なんですけれども、皆様方の産業界の方から、本当に実態はこうなんだというのを事実を添えて示されれば、短くする方も長くする方も、それは何やかんや言っても、短くする方が、どちらかというと抵抗があることはわかるんです。短くすることは抵抗があることはわかるんですが、事実を添えてあれすれば、主税局も見直しはするんじゃないか、素朴にこう思うんですけれども、その点が1点。

それから、損金経理要件の見直しということなんですけれども、要するに、各事業年度に、収益に貢献したものに対して費用として見るというわけですから、損金経理見直しということが、費用性ということからすれば、損金経理というのは当たり前じゃないかという気もするんですけれども、そこを教えていただきたいんです。

○井上参考人

実務レベルでの議論でございますけれども、まず第1点、税との関係につきましては、まず基本的に、税の目的と会計の目的は、もう違いますでしょうというところから話はスタートしております。したがいまして、要求として、税の要求と会計の要求というのは、我々としても恐らく違ってくるものは出てくる。税は、あくまで極端な話をしますと、例えば特定の産業に対して、税制上の措置をつけるということは十分あり得るわけですから、それは、政策目的として考えていただくということはあると思います。

あと、損金経理要件につきましては、これは、弊害となっているのは、損金経理をしないと税務上認めていただけないということですから、税務上のメリットを取ろうとすると、必ず損金経理をしなきゃならない。逆に、実際には、もっと耐用年数が長くて、償却期間が少なくて、会計上はよかろうと思われるものまで、税務上のメリットを取ろうとすれば、損金経理をしなければならないということになっていまして、そこで、税と会計が密接につながってしまっていますので、我々の前提として考えております税の目的と会計を分けましょうというところにつきましては、その要件を外していただく必要があるということでございます。

○乾総務企画部長

耐用年数省令でも、実際にはもっと長いのに、損金経理を余儀なくされているということでございますか。

○井上参考人

例えば、実際、使用年数というのははるかに長いのに、タックスプランニングとして、税のメリットをとろうとすると、結局、税の規定に基づいて、短い年数での償却をせねばならないというところでございます。

○八木委員

以前は、切り放し低価法の損金経理しなくても、税務で申告計上できたという時期もあったんです。例えば、そういうことは今後もあり得ると思います。

○若杉会長

償却期間を長くすることに対しては、限度額を逆に下回ることになるから、税務上、特に問題はないように思うんですけれども、それはいかがですか。

○八木委員

ただ、健全ではない、こういう御指摘があるわけでございますけれども、ですから、我々は、いろいろやる過程では、耐用年数表というのは、長くするリミットと考えています。例えば、こういうケースがあります。家電品なんていうのは、国内でつくっているのは、非常に利幅が薄くなって、時として赤字ということで、以前は、そういうところの工場の設備も、短期償却を申請しますと、認可を受けて、無税で当然短い期間での償却が認められる。これは、今でもあるんでございます。

ただ、それが、企業のコストの実力を超える場合には、もとの10年に戻そうかということで、それで、設備を大事に使うというふうなことは、これはあります。それは、では、10年で終わるかというと、12年、13年、もちろん設備は大事に使えばもつものでございますけれども、そういう意味では、コストチャージは耐用年数できちっとやるんですが、税務的には、頂戴したメリットを最大限生かすというようなことをやっております。企業の製品とか、ジャンルによっては、長く使うということを余儀なくされている設備も相当数あるということなんです。

○若杉会長

その問題は、基本的に考えてみますと、今の確定決算基準じゃなくて、分離方式になれば、解決する問題ですよね。

いろいろまだ御意見あると思いますけれども、もし、ありましたら、どうぞ。

もう時間も大分たってまいりましたので、以上をもちまして、本日の検討会はこれで終わりたいと思います。

なお、次回の当部会の日程についてですが、決まり次第、事務局よりご案内したいと思います。

どうもありがとうございました。

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