平成14年4月1日
金融庁

企業会計審議会第7回企画調整部会議事録について

企業会計審議会第7回企画調整部会(平成14年2月22日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第7回企画調整部会議事録

日時:平成14年2月22日(金)午後1時29分~午後2時48分

場所:中央合同庁舎第4号館9階金融庁特別会議室

○若杉会長

皆さん、こんにちは。定刻になりましたので、これより第7回企画調整部会を開催いたします。委員の皆さまにはお忙しいところをご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

本日は、まず、去る1月25日に当審議会におきまして取りまとめられ、公表されました「監査基準の改訂に関する意見書」の中で、監査基準に関連して提言しております事項がございますので、今後の対応について、皆さまからご意見を頂戴したいと考えております。

始めに、提言の確認と検討点につきまして、事務局の方から簡単にご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○多賀谷課長補佐

それでは資料1とそれに関連しまして参考の1の1、1の2、1の3、1の4というものがお手元にあると思いますので、それに基づきましてご説明をさせていただきます。

資料1にまず、「監査基準の改訂に伴う検討事項」というのがございます。監査基準の改訂に関する意見書におきましては監査基準の改訂に関連する、あるいは、周辺の事項について前文で言及をしているところもございます。したがいまして、監査基準それ自体の変更の部分と、その周辺、前文等でご提言いたしました事項につきましてお諮りをさせていただくということでございます。

なお、監査報告書の関係が多いわけでございますが、一応ここでは証取法の監査報告書というのを念頭においております。なお、商法の監査報告書というのもございますけれども、これは監査基準の改訂の意見書の前文におきましても「監査の目的」というところでその監査にはいろいろございますので、財務諸表の種類をはじめとして監査の根拠となる制度や契約事項が異なればそれに応じて意見の表明の形式は異なるとされていますので、その商法の法定の監査の形を制約するということまでを今回申し上げるわけではございません。

監査基準の改訂に伴って、いわゆる証券取引法上の監査報告書あるいは財務諸表の作成に関しましてかかわり合いがあるというところについてご説明をさせていただきたいと考えております。

まず、会計方針の変更の取扱いでございます。

1といたしまして、「重要な会計方針の変更に関する監査上の取扱いの改訂及び提言の趣旨」というのがございます。まず、「正当な理由による会計方針の変更は除外事項とはしない」ということが前文に盛り込まれております。

一応、参考1-1に「監査基準の改訂に関する意見書」の前文を抜粋してございます。この中でいちばん下の(3)追記情報というところの下線を引いてあるところでございますが、いくつかの事項が入っておりますが、その下線の3行目「また」というところでございますけれども、「この改訂に伴い、会計基準の変更に伴う会計方針の変更についても、正当な理由による会計方針の変更として取り扱うこととすることが適当である。」ということでございます。

また、会計基準が変更された場合をどうするかということもございます。これは3番目でございます。まず、正当な理由の会計方針の変更は監査基準の方で除外事項としないというかわりに、その次のポツでございますが、「追記情報に記載する」と。これは今は監査基準及び監査証明に関する内閣府令というところで具体的には監査報告書の記載方法が定められておりますが、そこではいわゆる2号限定といわれているもの。会計方針の変更があると全部除外事項にしてしまって、その上で正当なものか正当でないものか理由を書くという形になっております。

今回の監査基準の考え方では、正当な理由による会計方針は「除外事項」、すなわち限定事項、限定意見の対象とはしないということでございます。そのかわり追記情報として記載をする。こういう枠組みになっております。

それに加えまして、ただいま申し上げましたように、会計基準の変更による会計方針の変更の場合も会計方針の変更に含めて取り扱うということでございます。これは資料1の2というところに一応比較の表をつくってみました。現行の取扱いでは正当な理由による変更と正当な理由以外の変更といいましょうか、正当な理由でないという場合がございます。そして通常の変更、これは選択し得る会計基準が複数ある場合に、ある方法から他の方法へ変えた場合。それから会計基準自体が変更されたことによって会計方針が変更された場合。現行では正当な理由の場合でも、正当な理由以外の場合でも少なくとも限定付適正意見ということで除外事項として書く。意見区分に書いて、なお正当であるか正当でないかを書く。もちろん、正当でない場合には不適正意見になるということもございます。

それから会計基準の変更の場合ですが、これは会計基準の変更は会計方針の変更にあたらないということで、個々の会計基準を出すときにそういう取扱いを大体してきているというのが現状でございまして、これに関しましては公認会計士協会から「追加情報の注記について」という実務指針が出ておりますけれども、その中でも同じような取扱いがされているということでございます。

それにつきまして参考1-3に抜粋をしております。「追加情報の注記について」という、これは公認会計士協会の監査第一委員会報告書でございます。この中で追加情報の分類等ということでございまして、その中に会計方針等の記載に併せて「注記すべき追加情報」として「法令の改正等によりある方法の採用が強制され、他の方法に任意に選択し得る余地がないため、監査上会計方針の変更と取り扱わない場合」となっております。これが会計基準の変更もこの項に入るということで、現在までは追加情報としての取扱いということになっております。

ただ、これは国際的には会計基準が変更された場合も会計方針の変更にあたるという取扱いがされておりますので、ちょっと日本は困っておったところでございまして、監査報告書の欄外というのでしょうか。正式に記載する部分の外にこういう会計基準の変更が実はあったのですよということを、現在はちょこっと書いていただくというようなことを公認会計士協会の方で申し合わせていただいてやっていると。ちょっとそこも多分に稀な方式なものですから、国際的な一般的な考え方に合わせるということでございます。

このように今は定められているものがあるわけでございます。

また、資料1に戻っていただきまして改訂での取扱いでございますが、改訂された基準の考え方によりますと、まず正当な理由による会計方針の変更は、これは「無限定適正意見」である。そして追記情報に変更事項を記載する。そして会計基準の変更があった場合も同様でございますので「無限定適正意見」であると。意見区分には何も書かれない。追記情報だけに書かれる。ただし、変更があった旨は追記情報の中で、今のように欄外ではなくて追記情報という監査報告書の正式な部分に含まれて書かれるということでございます。それから正当な理由でない場合、これは当然限定付意見あるいは不適正意見になるということでございます。

このような整理になると思います。このような整理ということでございますので、こういう方向で監査報告書なり関連の今の取扱いを定めているもの等を修整する必要があるのではないかということでございます。

その点を含めまして3として「検討点」と書いてございますが、このように会計方針の変更は従来一律に除外事項として監査意見に反映されていたのですが、今後は変更理由の正当性による除外事項とするとか否かを判断するということから、正当な理由について厳格な判断が求められる。これも先ほどの参考1-1にございますが、(3)の追記の情報の下線の最初のところ(参考1-1参照)ですが、「会計方針の変更理由が明確でないものがあるとの指摘もある点を踏まえ、監査人には厳格な判断が求められることは言うまでもない」となっています。

これは現在でも当然のことではございますが、とりあえずという言い方はちょっと不適切かもしれませんが、いずれにせよ意見で除外してしまいますので、正当かどうかということにかかわらず除外してしまいますので、その判断はあまりする必要はないと。まず除外事項になると言うことでございます。今後は「無限定適正意見」か「限定意見」かということで厳格に分かれますので、当然その判断もより厳格にしていただきたいということでございます。このような点が検討する必要があるということでございます。

それから「会計基準の変更による場合も会計方針の変更にあたることを明確にすること。」これはただいま申し上げました例えば公認会計士協会のこの指針の修整等も必要となるのではないかということでございます。

それからこれに関連しまして「「重要な会計方針」の範囲を明確にすること」。これはそもそも会計方針の変更にあたる重要な会計方針とは何かということが問題になるわけでございまして、ただいま財務諸表規則の方でそれは一応規定がございます。参考1-2にその抜粋がございます。「重要な会計方針の記載」というのがございまして、上の段が内閣府令・規則でございまして、下の欄がその取扱い、いわゆるガイドラインでございます。上の段に「一.有価証券の評価基準」、このようなものから二からずっと入っておりまして、最後が「その他財務諸表作成のための基本となる重要な事項」ということでバスケット的になっております。

もちろん、まずこれだけでいいのかどうかという問題がございます。例えばセグメント情報のセグメントを変更した場合、現在は会計方針の変更として取り扱っていると思いますが、そういうものをどこで明確にするのか。どこまでが重要なものに入るのか。こういう他に問題がここに明示されていないものであるとすれば、何か明らかにする必要があるかないかということが一つございます。

それからやはり参考1-1の意見書の前文のところの9の(1)「適正性の判断」というところの抜粋でございますが、「財務諸表において収益の認識等の重要な会計方針が明確に開示されることも必要である。」となっております。この点につきましては参考1-2の中では2枚目の七というところに「収益及び費用の計上基準」というのがございまして、その下にガイドラインで八の二-七というのがございます。

ここでは「収益および費用の計上基準は割賦販売、長期請負工事等に係る収益及び費用の計上基準、業界特有の収益及び費用の計上基準、財務諸表について適正な判断を行うための必要があると認められる事項を記載するものとする。」ということになっております。ですから現在の考え方はここに明示されたもの。そのほかにも若干ございますが、これについて書くというのが一般的な取扱いになっております。いわゆる基本的な収益の計上基準については書かないで、特別なものをやっているときだけ書くということになっております。ここら辺はいかがなものかと。あるいは諸外国はもう少し詳しく書いているのではないかというご指摘がございました。

また、特にソフトウェア等につきましては収益の計上基準が非常に難しいということもございまして、この記載範囲をもう少し幅を広げるといいましょうか、柔軟にするといいましょうか。明らかにした方がいいのではないかというご意見が第二部会の方ではございました。このような点も踏まえてもう少し欧米等の例も踏まえながら、重要な会計方針の範囲・記載すべきものを明らかにしていくというようなことも今後必要ではないだろうかということでございます。

これが1枚目、会計方針の変更の取扱いに関するところでございます。

資料1を1枚おめくりいただきまして、2番目が「会計方針の変更に係る影響額の注記方法」となっております。提言の趣旨でございますが、「当期に会計方針を変更した項目について、変更前の会計方針に基づき計算した金額を影響額として注記するが、期間比較の観点から、過年度への影響に関する情報提供について、財務諸表の表示の問題として検討する。」というような趣旨の提言がございます。

「問題点」ですが、これはどういうことが問題かと申し上げますと、「前期との比較の観点からは、当期に会計方針を変更した項目について、前期の金額を変更後の会計方針に基づき計算して開示することが有効ではないか。」諸外国ではそのようなやり方が多く行われているのではないか。こういうようなご指摘でございます。

それから会計方針を変更したあとに、変更前の方法で計算をもう一度行うということになりますと、変更前の経理システムを維持しておく必要があり、合理的ではないのではないかというご意見もございました。米国等では会計方針の変更を行った場合には前期の金額を修整する。その場合には前期の財務諸表を修整するということが多いということでございます。

「注」としまして、「監査基準の意見書での提言では表示の問題として検討するとしており、前期の財務諸表自体を作成し直すことや期首剰余金を修整することなど会計処理に関わる事柄は除く。」ということで一応は二部会での議論はそのような範疇でということでございます。したがいまして、現行の取扱い、注記の方法という範疇でこれをもう少し見直してもいいのではないかということでございます。

参考1-2の3枚目でございますが、会計方針の変更に関する注記第八条の三というのがございまして、その記載要領が下の段、八の三-一というのがございます。

「当該変更が財務諸表に与えている影響とは、当該会計処理について前事業年度と同一の基準を適用した場合において計上されるべき営業損益」云々ということを書きなさいと。例えば前期まである固定資産について定率法を採用をしていた。当期は定額法に変えたという場合には、当期に定額法に変えた計算をもう一度定率法で当期やり直した金額を書きなさいと。すなわち、システムは定額法に変えてあってももう一度定率法で計算し直して、定額法でやった場合と定率法でやった場合にいくら違うのかを書きなさいという趣旨でございます。ただ、前期からの影響をみるのであれば、前期を定額法でやっていればいくらだったのかという情報の書き方もあってもいいのではないかという形でございます。

このような取扱いは基本的には今までされてはいないのですが、外貨建基準が平成7年に大幅に見直されたときには、いわゆる、期末時レートの換算の影響というのは、前期を期末時レートで換算した場合どのくらい影響があるかという書き方でもよいと。この場合は現行の取扱いですので追加情報として記載いただきましたけれども、そのような方法をとったことも事例としてはございます。このような意味でございます。

ただ、今「注」にございましたような事を踏まえますと、検討点といたしまして会計方針の変更後の方法による前期の金額を影響額として当期の財務諸表に注記すること。そのやり方を変えるということでいいかどうか。

影響額の注記方法を上記方法に統一するかどうか。つまり、必ずそういう方法にしなさいということで、注記の方法自体を全部変えるか、あるいはいずれの方法によってもいいという形にするかということが一つ問題になろうかと思います。

これはどういうタイミングでやるかあるいは調整するかという問題はあるとは思うのですが、表示の問題以外のところというのは、ただいま国際会計基準等でも検討されている部分でございまして、例えば当期に会計方針を変えた場合には当然前期にさかのぼると、前期の金額が変わりますので当期の期首の剰余金なり、期首の固定資産の償却すべき残高も変わっているわけですから、それをもとに当期またやり直すということになりますと、そもそも当期のいわゆる償却費自体が違ってくるということになろうかと思いますので、いわゆる遡及して計算をやり直すという考え方。これはまさに会計処理をどうするかということに関わる問題でございます。それとは切り離して会計基準を変更した場合の影響額に限ってこういう方法が当面、許容されるかどうかということを検討してはどうかということでございます。

それから最後になりましたが、「継続企業の前提に関わる情報開示の充実」。これもまず提言の趣旨といたしましては、「企業活動の継続が損なわれるような重要な事象や状況は突然生起することは稀であり、財務諸表の注記が行われるまで何ら投資者に情報が開示されないことも問題であると考えられるので、上記のような事象や状況につながるおそれのある重要な事項については、有価証券報告書等において適切に開示する。」ということでございます。

すなわち、ゴーイング・コンサーンに関わります注記及び監査上の取扱いの対象となる事象というのは、ある程度客観的なものということで絞り込んでございます。例えば債務超過でありますとか連続して営業キャッシュ・フローがマイナスになっている場合、連続して営業損失がある場合等、いくつかの事項がある程度明らかにされております。そこに至る前の段階での企業としての情報開示ということも必要ではないかという提言がございました。この点につきましては「検討点」で、「有価証券報告書等の「対処すべき課題」の項目、有価証券届出書の「特別記載事項」における記述の充実を図る。」ということを検討してはどうかということでございます。

これにつきましては参考1-4というのがございまして、ちょっとご覧いただきますと、これは有価証券報告書の様式、記載要領を定めた企業内容等に関する内閣府令の第二号様式でございます。ここにはいくつかの項目がございまして、下の(1)は飛ばしまして(32)「対処すべき課題」というのがございまして、「最近日現在における連結会社の事業上及び財務上の対処すべき課題について、その内容、対処方針等を具体的に記載すること。」となっております。ただ、これ以上の規定がございませんので、何を書くのかということが少しあいまいであるという点がございます。

そうしまして(1)ですが、これは要約しますとハイライト情報とかリスク情報と言っておりますが、有価証券報告書のいろいろな箇所に書いてあるものの中で、投資リスクに関する重要なものについては前の方にまとめてもう一度書くというような規定でございます。したがいまして、例えば「対処すべき課題」に書いてあることが財務あるいは経営上の重要な問題であって、投資のリスクに関係するものであれば自動的にといいますか会社の判断により届出書の場合にはハイライトされる。このような仕組みになっております。

現在、下にありますガイドラインでいくつかの項目について書き方をずらずらと書いてあるのですが、一応それを付けさせていただいておりますが、この中には今のところは直接的にゴーイング・コンサーンは取り扱っておりません。ただ、その中でも例えば1枚おめくりいただきましてガイドラインの2「財政状態及び経営成績の異常な変動に係るもの」というような項目もございますし、あるいはもう一枚おめくりいただきまして3枚目の8「重要な訴訟事件の発生に係るもの」。この辺になりますと、この現在のガイドラインでもゴーイング・コンサーンに関係する事項とも少しだぶってくるというところもございます。

そういう点も含めまして、この「対処すべき課題」ということの中にゴーイング・コンサーンにつながるような、この注記につながるような課題があればなるべくと言いましょうか書いていただくというような、早めに開示をしていただくというようなことで情報開示を求めてはどうかということでございます。

ちなみに、この参考資料1-4のいちばん最後には米国の Form S-1を付けております。これは日本のただいま申し上げました内閣府令の(1)のところに相当するようなものでございます。リスク要因というふうに言われておりましていくつか挙げられておりますが、若干これも網羅的になっておりますものですから、あまりにも広ろすぎるというようなご意見もございました。ですから、この辺も勘案をしながらとりあえずはゴーイング・コンサーンに関わる部分についてはもう少し記載を充実する。あるいは早期に何らかの記載をしていただけるような形を考えてはどうか。このようなことでございます。

このようなことについてご意見をうけたまわりながら、さらに検討をしていきたいというふうに考えている次第でございます。

以上でございます。

○若杉会長

どうもありがとうございました。それではただいま説明していただきました問題点につきまして、皆さま方からご意見あるいはご質問などございましたらご自由に発言していただきたいと思います。よろしくお願いします。どうぞ。

○八木委員

今、冒頭のところでございますけれども、2号限定の廃止とかそれから任意の方針変更と基準の変更に伴う方針の変更が同一に扱われ、これは非常に画期的であります。長年我々がお願いしてきたことなので今回の変更は大いに賛同しております。ありがとうございます。

ここで、資料1のいちばん下の3行目あたりに、ただ変更の正当な理由については「厳格な判断」と一言ありまして、これは発行体、当局、会計士さん、みんなそれぞれ少しずつ、いろいろこの辺判断基準も変わってくる温度差のようなものがあるのではないかと思うのですが、これについてもし何か「こう考えている」などということがありましたらちょっと教えていただきたいと思います。

○多賀谷課長補佐

我々として特に考えているということはないのですが、第二部会のご審議の中ではそういう意味でまさに除外事項となってしまうので、若干そこに対する会計士さんの取り組みにばらつきがあるのではないかというようなご指摘はございます。

いずれにしましても、今は公認会計士協会の方で出ておりますこの「正当な理由に基づく会計方針の変更」というこの監査委員会報告第65号、これ自体は中身が変わりますので、ここでは当然今度の監査基準の改訂に伴う改正をしていただく必要はある。その中で当然どういう場合が正当な理由に基づくものであるかということがここに書いてございますので、今一度ご検討いただければというような、我々としてはそういうようなことで結論はまだ特にこちらで持っているということではございません。

○若杉会長

どうぞ。

○脇田委員

ただいまご発言ございましたけれども、第二部会の議論を通じて今、多賀谷課長補佐から説明していただいたとおりでございます。それから八木委員のご指摘のように日本の公認会計監査が始まって50年ぐらいの歴史があるわけですが、その中でずっと注目されてこの正当な理由による会計方針の変更というのは除外事項としないという方向というのは常に議論されてまいりました。

かつて昭和30年代には、既に補足説明事項でもよろしいのではないかというような議論が始まっていたわけですけれども、今回、平成3年のときにはどちらかといいますと新井審議会会長の特別なご発言もありまして、会計方針の変更についての記載を強化するという方向がまとめられてまいりました。それがいろいろな監査環境の変更で今回、今、八木委員がご指摘のように「正当な理由による会計方針の変更は除外事項としない」と。これは大変そういう意味で画期的な歴史を踏まえたものだと思っております。

ただ、その場合に考えられたことは、1つはやはり重要な会計方針というものの範囲といいますか。何を意味するかというその範囲についての明確化が必要だと思いますし、それから第2点は変更とはそもそも何なんだろうかということで、若杉会長もこのような問題でずいぶん論文をお書きになってこられたと思いますけれども、変更ということについての会計的なあるいは認識というその範囲、それがやはり明確にこの際、何を変更としてとらえるかということだと思いますが。

それから第3番目としては、今、八木委員もご指摘になった「正当な理由」。この正当な理由というのはそもそも何であるか。今までは、逆に言いますと、除外事項として記載することによってどちらかというと、何と言いましょうかその辺を緩和してきたと言いますか。会計士の判断が、記載すればその点が注意喚起されるという意味で何となく、表現がきつすぎるかもしれませんが、避けてきたというところもあります。あるいは除外事項として記載することによってその判断をクリア、クリアするといいますか超えるというような、そういう妥協的なところもあったのかなというふうに思うのですが、いずれにしてもこの「正当な理由についての判断」というものについての指針と申しますか、今、多賀谷課長補佐も言われましたけれども公認会計士協会の指針もございますので、正当に基づく会計方針の変更ですか、監査委員会報告第65号がございますので、そういったものとの関わりでこの点についてはこのように長い間、実務的にも敢行を積み重ねてこられたと思いますので、この点についても十分ご検討いただきたい。そのことをお願いしたいと思います。

○若杉会長

ありがとうございました。今までずっと第二部会長として、今もそうですけれども監査基準の改訂に携わってこられました脇田委員の方からいろいろご意見をいただきましてありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。

○加藤委員

監査人という立場からちょっと意見を述べさせていただきたいのですが、今回の改正によってこの正当な理由についての厳格な判断が求められるということは私どもも非常にそれを感じておりまして、現在の会計方針の変更に対して監査人が甘いという指摘を受けるのかもしれませんが、非常にその判断がむずかしくて。その辺、実際には実務指針があるとはいえ、実務において非常に困っていた分野でもあったことはあったんですね。

特に海外の投資家等にこれを使ってもらうときによく言われましたのは、日本の会社はよく会計方針を変えると。それの理由は非常に大ざっぱなあまり明確にはっきり書いていないと。例えば「財政状態をより健全にするため」とか、あるいは「期間損益をより合理的にするため」とか、何かよくわからないというようなことをよく言われまして。そういうことは私ども実務においても非常に困っていたわけで、この際、もう少し厳格に。今までが甘かったということではないのですけれども、もっと具体的な理由がわかるような、今後追記情報を書くわけですが、そこまで書くのかどうかまだこれから検討されると思うのですが、本当の会計方針の変更というようなものに厳選していくという方向には、ぜひしていただきたいと思います。協会はこれから実務指針を見直しする場合もそういうスタンスでいきたいと思っておりますけれども。

○若杉会長

ありがとうございました。きょうのこの会は結局先ほども申しましたように、先般公表されました意見書の中で監査基準に関連して提言されております事項がありますし、それの今後の対応の仕方についてお話を聞くと。これは会計士協会の実務指針の作成などにもずっと及んできますので、ここでもって共通の理解をしておく必要があると思います。

どうぞ、時間も十分ございますので、ご意見をお願いいたします。

○八木委員

修整の方なのでございますけれども、私どもたまたまアメリカ基準でやっているものですから、ちょっと方針なり考えが変わるとすぐ遡及修整、遡及修整。この実務で悩むわけでございますが、きょうの多賀谷さんのご説明の「表示の問題として」というのは遡及修整というニュアンスではなくて、いわゆる一般の表示の問題として拝見しているわけなのですが、先ほどご説明にもいろいろありましたように、方針の変更を数字なり何なりに表すというのは本当にややこしい問題がありますので、結論からいくとこれは結構いろんな事象を具体的にとらえながら慎重に検討をする必要があるなというのが直感でございます。

この前の、この本会議のときもちょっとその修整についてよろしくということをお願い申し上げていますけれども、やはり遡及必ずしもいい方法ではないなと思うのが結構ありまして、要するに遡及できない。先ほどちょっと減価償却のお話が出ましたけれども、実質あれをどうやるといってもえらい手数ですし、それから例えば我々が保有している有価証券一つをとっても保有目的は変わることだってあり得る。そうなるともう話はややこしくなる一方でございます。

そういうことでなかなか一律にいかないので、やはり日本流のそういう修整のあり方といいますか。そこのところを追求するということであまり画一的に遡及だ何だというのをとらえないように、ぜひこれはお願いしたいなというふうに思っておりますし、現実にそれをやっていくと、例えばこの間ちょっと申し上げた配当可能利益なんかちょっとおかしくなったりきりがないことになるので、この辺ちょっとじっくり具体例をもとにいろいろご検討いただければなと。こういうふうに思いました。

それからあと、先ほどのこの変更に伴ういろいろなルールをこれからつくっていく場合のつくられる主体が、あるときは公認会計士協会であったり、あるときは内閣府令的なああいうものであったりという主体がいろいろ、どれをどれがおやりになっていくのかなというのが整理はされていると思うのでございますけれども。この辺も少しテーマによって違うのですね。そこら辺ちょっと。

○多賀谷課長補佐

テーマによって違うということと、それからまさにそれをこの審議会で、いろいろご意見をたまわって。あとは役割を分担しているところでまた審議会にご相談しながらやっていくと。もちろん、その府令レベルにすべきことは我々でやらせていただくということになろうかと思います。

○若杉会長

八木委員、よろしゅうございますか。

○八木委員

はい。また参加しながらまた発言させていただきます。

○若杉会長

ほかにいかがでございましょうか。はい、どうぞ。

○加藤委員

今のこの会計方針を変更した場合の影響額の注記の仕方なのですが、これも私ども監査に携わる者も常に感じてきたのですが、現在の会計方針の影響を、もし古いのでやったらどのぐらいになるかというようなことを書くことが非常に比較可能性、その他財務諸表、利用者の観点から見て有用性があるのかどうかということをずっと疑問に思ってきましたので、こういうふうに書いていただくのは、こういう方向で変えることを検討するということは監査人の立場からしても非常にいいことだと思うのてす。

特にセグメントなどは、今まで例えば2つのセグメントでやっていたものを今度は5つのセグメントにするというときに、ことしもし過去と同じ2つでやったらどうなるかということを開示してもまったくその意味がないわけで、そういう意味でも新しい方法でやったらどうなるかということの方が有用性があると思うのです。

ただ、そのときに実務上は確かにむずかしい点もあることはあるのです。特にセグメントなどは過年度にそういうシステム、体制でやっていないものをやるというのはなかなか大変だと思いますので。1つの提案なのですが、今後検討していただきたいものとしてプロフォーマーという考え方ですね。

日本にはプロフォーマー、いわゆる仮定情報というものがないのですが、日本にもそんなに厳密に過去にさかのぼって新しいシステムをやったらどうなるかということを計算しないまでも、ある程度の見積りでもいいからこのくらいになるのではないかということでも有用性があると思うのです。その場合ははっきりとこれは仮定の情報、仮の情報であると。しかも、もし監査がむずかしいのであればアン・オーディットというか監査されていないけれども参考に資するというような制度を導入するのもいいのかなという気がするのですけれども。

それからもう1つ、リ・ステートということなのですが、私は個人的には従来からリ・ステートすべきだと。財務諸表全部を過去にさかのぼって直すのが本来ではないかという個人的な意見は持っていたのですが、日本には日本のそれなりの法律上の制度とかありますからそれを全面的に導入するのはむずかしいと思うのですが、それを注記とかあるいはそれこそ注記情報とかいう形でも、何らかの形で開示することもご検討いただきたいと思うのですけれども。これも監査済まで求めるかどうかは別の話で、これも仮定情報としてアン・オーディットでもそれなりの有用性があるのではないかなという気がするのですけれども。

○若杉会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○安藤部会長代理

先ほどのご説明の中で今の影響額の注記の方法、3の「検討点」のいちばん最後の「注」ですね。平成7年の外貨建取引等会計処理基準の改訂の際、いずれの方法も認められたというのですけれども、これなんかデータありますか。つまり、今回提案されているような新しいやり方と従来のやり方のどちらが多かったとか。ちょっと関心があるのです。

○多賀谷課長補佐

これは参考1-3の下の段にその根拠はございまして、証券局長通達で出ておりまして、4というところに「改訂基準の採用については」、当時ですから「会計方針の変更には該当しないものとし、追加情報として注記する」と。その「当該注記における財務諸表への影響額の記載方法はイとロ」と2つあります。「イ」というのが前事業年度等と同一の基準を適用した場合。「ロ」というのは前事業年度等に係る財務諸表等について改訂基準を適用した場合において計上されるべき経常利益。つまり、前年度の利益を新しい基準でやってもその差額を書くということでいいですよというふうにしたわけです。

これ正式なデータはございません。私ども比較していないのですが、うかがった範囲では「ロ」の方が。というのは、このときとCR換算になっている分がほとんどですので、ロの方法でやられたというふうにうかがってはおります。

○安藤部会長代理

ありがとうございました。

○若杉会長

ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○加藤委員

継続企業の前提に関する情報開示のことなのですけれども、これも今度の新しい改訂基準でこういうことが導入されたわけですが、監査人の立場からしてもいわゆるゴーイング・コンサーンの懸念事項というものが突然出てくるのではなくて、その前の段階から徐々に発生している場合の方が多いと思うんですね。ただ、財務諸表監査という観点からだけではなかなか把握できないこともたくさんありまして、例えば最近よく問題になります銀行との関係とか、その辺についてはなかなか把握するのがむずかしいところもありますので、なるべくこういうところで、財務諸表外のところでも開示するような方向に持っていっていただきたいとは思うのですが。

一つお願いいしたのは、これから具体的なことは検討されるのだと思うのですが、なるべく明確にゴーイング・コンサーンなり継続企業に関連した項目というようなことがどういう名前にするかは別として、例えば一つの項目としてそういうものを設けていただいて、どういうことを書くかというようなガイドラインもある程度示していただくと。先ほどいくつかいろんな例、海外のも含めてあるいは日本で現在のリスク情報とか見ましたけれども、確かにいろいろあることはあるんですね。ただ今のところ散らばっていてよくわからないということで、なるべくそういうものは一カ所にまとめて書くような方向でご検討いただければと思うのですけれども。

○若杉会長

ありがとうございました。はい、どうぞ。八木委員お願いします。

○八木委員

今のところに絡むことなんですけれども、これはお願いなのでございますけれども。要するに財務情報として開示する部分、それから会計士さんのチェックの外みたいに、非財務情報的なものとして開示する部分と、どっちも考え方をはっきりお出しいただく必要があるなと思っておりまして、したがって非財務諸表的情報についてもこちらの財務諸表情報のルールと同じようなご検討をぜひお願いしたい。

非常にこう何と言いますか微妙な、うまく言えませんけれども問題も絡むところが出てくると思うので、これは大事だと思っているのです。特にここにおいてはですね。これはぜひ、よろしくお願いします。適用時期が15年3月ということになると、こちらの方に時間がないのでね。一つこちらは少し急いでやらなければいけないのかなと、こういうふうに感じております。よろしくお願いします。

○若杉会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

いろいろご意見をいただきましてどうもありがとうございました。本日、皆さまからいただきましたご意見を踏まえまして、事務局の方でさらに検討していただきたいと思います。よろしくお願いします。

それでは、もう1つ議題がございます。次に、米国基準による連結財務諸表を我が国で提出することにつきまして、連結財務諸表規則の改正作業が進められているとお聞きしております。そこでこの機会に、事務局からこの問題についてご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○平松課長補佐

では、簡単にご説明をさせていただきたいと思います。お手元の資料2、それから参考2というのをご覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。

ただいま会長の方からお話を頂きましたように、現在、我々の方におきまして連財務諸表規則の改正の作業をしているところでございます。資料2でございますが、「現在の特例措置」ということと「考え方」と、それから「今後の取扱いの方向」ということで資料が構成されております。

まず、「現在の特例措置」のことなのですが、若干、経緯をご説明させていただきたいと思います。ご存じの点もあろうかと思いますけれども、簡単にご説明をさせていただきたいと思います。

特例の導入の経緯でございますが、昭和52年に証券取引法上の開示書類として連結財務諸表が導入されております。このときに既に米国市場に上場しているというような理由によりまして、米国基準によって連結財務諸表を開示している会社が存在したわけでございます。

このような会社につきまして、我が国の連結財務諸表の導入の際に日本の基準による連結財務諸表を作成することが求められることになったわけなのですけれども、そのコスト負担等を考慮いたしまして、当分の間、我が国におきましても証券取引法上の書類といたしまして米国基準で作成した連結財務諸表により開示を行うことを認める、という特例が設けられたわけでございます。

それは参考の2をご覧いただきたいのですが、その上段の方ですね。「連結財務諸表の制度化に関する意見書」の抜粋でございますが、いちばん最後の「4」というところに、「ADR等の発行会社では、米国証券取引委員会等の要請により、既に連結財務諸表を作成して開示しているものもある。これらの連結財務諸表は、従来から投資情報としての有効な機能を発揮してきている経緯にかんがみ、その作成基準が連結財務諸表原則に定めるものと相違していても、証券取引法によって提出される連結財務諸表として認めても差支えないものとする」という一行が加えられたわけでございます。この意見書の一行に基づきまして、連結財務諸表の附則というものが設けられました。参考2の下段の方でございます。

この省令施行の日前から継続して、米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式及び作成方法により連結財務諸表を作成し、かつ、これを開示している連結財務諸表提出会社が、証券取引法でございますが、法の規定により提出する連結財務諸表については、当分の間、大蔵大臣が適当と認める場合に限り、当該用語、様式及び作成方法によることができる。

こういった制度が導入されたわけでございます。当初、この対象になった会社が39社あったわけでございますが、その後、米国市場からの撤退等もろもろの事情によりまして日本基準に切り換えた企業も多くありまして、現在は25社が残っていると。過去の特例を使っているという状況にあるわけでございます。

この特例につきまして、それ以後、何回か動きがあったわけでございます。まず、平成2年に連結財務諸表規則の改正が行われた際に、SEC基準特例というのは当時の状況下で、日米相互承認の問題というのがございまして、期限を切って廃止をするということが行われました。平成7年3月期を期限として廃止をするということにされたわけでございますが、その後、そういった情勢の変化もございまして、逐次、廃止期限の延長が行われたわけでございまして、現在、平成12年の省令改正におきまして、平成15年3月期までその廃止基準が延長されているという状況にあるわけでございます。

何回か延長が行われたわけなのですけれども、平成12年の省令改正の際に、少し枠組みを検討し直してはどうかという議論が部内的にもありましたし、その関係者の中でも生じてきたと申しましょうか、そういうことがございまして、基本的に今度の15年、平成15年3月までに新たな枠組みを検討するということになったわけでございます。

この枠組みの検討でございますが、部内でも検討を進めたわけでございますけれども、COFRIに研究会を設けまして、SEC基準とかそのほかの国際的な基準の問題も含めまして検討をしていただいたことがございました。そこで得られた結論などを踏まえまして、今回の改正作業が進められているわけでございます。

それから、今日お見えになっていますけれども、経団連さんの方からもSECの特例の問題、この廃止15年3月という一つの期限があるわけでございますが、これに対応できるタイミングで新たな枠組みを検討していただきたいというようなご要望もあったわけでございます。

資料2をご覧いただきたいのですけれども、そこでどのような考え方をとりまして、どのような今後の方向を取るかということでございます。真ん中の「考え方」というところでございますが、まず、米国SECは、米国基準以外で作成した連結財務諸表の提出を認めていないわけでございます。我が国の企業がSECに登録する場合には、米国基準による連結財務諸表を作成せざるを得ないというような現実がございます。

それから、米国の開示制度は、国際的に最も高い水準にあり、SECに登録している会社については、米国基準による連結財務諸表を開示しても、財務情報の比較可能性の観点から、投資者保護に欠けることはないのではないかと考えられるということ。

それから、特例対象となっていない我が国の会社では、近年、米国の証券取引所に上場する会社が増加してきていること。

これらのことを総合的に勘案しまして、「今後の取扱いの方向」というところでございますが、米国基準により作成した連結財務諸表を米国SECに提出する会社と申しましょうか、提出している会社につきましては、当該連結財務諸表を我が国において提出することを認めるということにいたしましたとしても、投資家保護上、大きな問題にならないのではないか、ということでございます。

それから「注」のところでございますが、現行の特例措置を受けている企業につきましては、経過措置を置くということでございまして、現行の25社でございますけれども、これらにつきましては30年以上にわたりましてSEC基準を使って情報を提供したということもあり、また格別の状況変化もないことなどを踏まえまして、今後も米国基準で開示することを認めても、投資家保護上問題ないと考えられますので、これらにつきましては経過措置ということで、現在考えているところでは、当分の間はこのSEC基準を使って連結財務諸表を提出できるということにしようかというふうに考えております。

以上でございます。

○若杉会長

どうもありがとうございました。ただいまの件をめぐりましていろいろご意見、ご質問等をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○八木委員

この件につきましては経団連サイドとしても一言お礼といいますか、お礼を申し上げたいと思うのでありますけれども。とにかく大分長い間になりますが、今ご説明あったような歴史があることでございまして、とにかく海外で資金調達をやってきた会社というのは、先ほど39社から25社になったとおっしゃいましたけれども、これらの会社、それから昭和52年以降にニューヨークに上場した新しい、5社位あるわけなのですが、ここはもうダブルスタンダード、二通りの決算書をつくるというような状況を余儀なくされておるわけであります。

それからフォーム12Fなどをきちっと出しているところ以外に、先ほど最後に経過措置で救われるような対象の会社、3種類ぐらい今あるわけでございますが、これらについて当面、最後にありましたきちっと認めるという今回の措置については関係者一同、本当に大歓迎でございまして、本当に御礼申し上げたいと思っております。

引き続き、これはJICPAの方でも米国会計開示制度研究会ですか、そういうものも立ち上げられるということで、そこに当然関係者として入って、今後はそういうもののスタディを通じて、よりそういう決算書の中身なり何なりをしっかりしたものにしていくという努力は、これはもうぜひ、やらせていただきたいと思いますので。そういうことを申し上げて御礼に代えたいと思っております。

いろいろ関係者とも最近も話したのでございますけれども、これについては本当に長い間のいろいろな経緯も、情勢の変化もあったわけなのでございますけれども、こういう形になってご了承いただいたということで、御礼とともに今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

以上です。

○若杉会長

ありがとうございました。どうぞ。

○中島委員

この案では一応米国基準というふうに当面考えておられる。それは今の段階ではIAS、実際に実務で使われているというのはほとんど皆無といっていいわけですから、それはそれでよろしいのだと思うのですけれども。将来的にはやはりEUの方で2005年ですか、それに踏み切るとかあるいはアメリカの市場の方でIASを受け入れるというようなことになれば、その実務の面でのIASの位置づけというのもずいぶん変わってくると思うのです。

そういうこともありますので、やっぱりそういう海外の動きは十分見ておいていただいて、必要があればこの枠組みを見直していただくということも必要になるのではないかなという気がいたします。

○若杉会長

ありがとうございました。斎藤委員どうぞ。

○斎藤委員

八木委員がご発言なられたあとで大変申し上げにくいのですが、確かにこのやり方は該当する会社の便宜というの点では非常によくわかります。余計なことはもうなるべくしないに越したことはないわけで、趣旨は非常によくわかるのですが、ただ今までは臨時措置であったものをパーマネントにするわけですね。その際に、一応建前を言えば独立国でありまして、外国の制度をパーマネントに丸々するということはあまり、ちょっとどうかなという気もするんですね。

建前を言えば、もちろん米国基準の財務諸表をそのまま出してもらっていいと思うのですが、日米で基準が非常にはっきり違うということがあれば、重要な項目については調整表でも出してもらうくらいが普通の感覚ではないかと思うんですね。このやり方を考える場合の、多分、前提はアメリカの基準の方が非常に厳しいと。日本の基準よりもずっと厳しくてきちんとしていると。だから大は小を兼ねるのだからいいではないかと。そういうことだと思うんですね。その趣旨であれば私はそれでいいと思うのです。

ただ、ご承知にのように今出てきているその問題、エンロンでも何でもそうですが、この問題の本質がどこにあるかと。私よくわかりませんが、もし仮にこれが巷で言われているようにSPCの連結問題とか、そういうことでありますと、例えば連結ルール、連結の範囲に関してはアメリカの基準に比べれば日本の基準の方がはるかに厳しいわけですね。アメリカは現時点でも支配力基準は使っておりませんし、それに対して日本の連結範囲に関する支配力基準というのはかなり厳しいものになっています。

それからSPCについては、これはご承知のように日本の基準は連結対象からSPCをはずしております。はずしておりますが、つまりそれはSPCは本来の役割、トンネルとしての役割を果たす限りにおいて連結の範囲からはずしておりますけれども、注意して見ていただければわかりますように、持分法は外しておりません。つまり、持分法が適用される場合もあるんですね。それに対してアメリカの基準は、ご承知のように、従来は3%外部があれば、もう連結からはずれちゃうと。そういう基準であります。

ですから、その意味でSPCの連結に関しては、実際デファクトでどうなっているかは別にして、規則上は日本の方がはるかに厳しいんですよね。そういう問題を考えたときに、仮にこの問題が国際的にも非常に大きなトピックスになったときに、日本がアメリカのルールをただ丸飲みしておくというのでは、もしかすると我々の責任は果たせないのかもしれないという気はするんですね。

そういう意味で、これはせっかくもう枠組みをお作りになっているわけですから、私は皆さんがそれでいいというのだったら、それに対して異を唱えるつもりはまったくありませんが、少なくとも重要な差異に関しては調整を求めることがあり得るくらいの了解をしておいた方がいいのではないかというふうに、私は思います。

○若杉会長

ありがとうございました。西川委員お願いします。

○西川委員

決まっていることだと思いますけれども、このペーパーの意味がちょっとわからないのですが。

例えば、1番目のところで「米国基準による連結財務諸表を作成せざるを得ないこと」と書いてあるのですけれども、これは実務上、日本基準でつくって調整するのが厄介だから作成せざるを得ないということと、米国基準でしか受け付けていないということとちょっと違うと思いますので。調整方式もあるわけですから、ここはちょっと書き方としてはっきり書いてないなという感じがする。

次の2番目の「投資家保護に欠けることはない」と一般的に言い切ってしまっている。今、斎藤先生がおっしゃったとおりだと思いますので、そこのところは本当にそうかどうかということはどうして言えるかということがあろうかと思うんですね。

特に今回の、この方向というのは米国SECに提出するということが一つのポイントになっていて、アメリカ基準で作成していれば何でもいいのではなくて、SECの関与があればいいということになりますと、SECの関与というのが重要だと。そうすると、これは外国企業でもあればSECの関与がいいわけですけれども、日本企業についてSECの関与が必要だということは、やはり主権の放棄ということになるというふうに言われたときに、「そうじゃない」ということを言えるだけの論理構成をつくる必要があるのではないか。そのためには少なくともアメリカ基準の解釈権というのは日本はないわけですから、何かしら日本基準で覆うようなことをしなかったら、結局、SECの関与はわかるけれども日本の関与は何かというのが明確に出ていないわけですね。ですから、やはり日本がどういう関与をするから問題ないということをきちんと明記すべきではないかというふうに思います。

○若杉会長

では、事務局お願いします。

○多賀谷課長補佐

この資料は方針を大まかに書いてあるわけで、府令では斎藤委員がご指摘になりましたように、当然、我が国の主権として適切な指示をすることもできますし、基本的にはその違いについては、重要な差異については記載をしていただくことになります。

それから数値情報がどこまで及ぶかというのは、またこれは個々の案件によると思いますが、一応、枠組はつくったうえで認めるということを考えて、そういう方向で検討をさせていただいております。これは西川委員のお話に対しても同じでございまして、それは我が国で判断を入れて認めるというような形で。内閣府令というレベルではそういう形になろうかと思います。

○西川委員

よろしいですか。

○若杉会長

はい、どうぞ。

○西川委員

これは質問ですけれども、監査報告書の意味というか、要するに英語版のコピーなのか、全然別ものということになるのかというあたりをちょっとお聞きしたいのです。

○多賀谷課長補佐

監査は日本の証券取引法に基づく監査でございますので、日本の監査人の方が日本基準に基づいて監査をしていただいて、米国基準の財務諸表を出していただく。

ただ、米国基準というのは、調整開示もありますが、一応ここではそれも含めていわゆる米国のルールで作成したという意味で、それ以上のことは厳密な意味で使っているわけではございません。監査は今までどおり、当然、日本の監査人に監査していただくということでございます。

○若杉会長

西川委員よろしゅうございますか。

○西川委員

はい。

○若杉会長

ほかに。どうぞ斎藤委員。

○斎藤委員

ここの結論として出すことを考えますと、もう一つ先ほどの西川委員のお話のように理屈を詰めておいてほしいという点が1点がございます。いちばん最後の「今後の取扱いの方向」で上に書いてあるのがSECに提出している会社、下がボランタリーにやっている会社です。この両者に違いを設ける意味が、先ほどのご説明だとあまりよくわからないですね。

つまり、しようがなくてといいますか。SECにきちんと提出しているということと、ボランタリーにSEC基準を適用している会社の財務諸表が混じってしまうと何か日本で不都合があるかというと、上の方について不都合があるのだったら下も不都合がありますし、上についてないのだったら下も多分ないのではないかという気が普通するのです。ですから、これを差別化する理由をもうちょっと普通の人がわかるように書いておいていただいた方が私としては気が楽だという気がいたします。

○多賀谷課長補佐

特に何か本部会で報告書類を出すということを考えていないのですが、ここで言っておりますのは、いわゆる米国の会計基準に沿っているかとどうかという判断自体が最終的にはSECしかできない、表面的に会計基準に沿っているかどうかという判断では、我々が調べた限りでは、SECに提出している財務諸表が細部まで米国基準に沿っているものでもないと。そこの辺は個々の企業の状況によって、あるいはSECとの交渉なり調整によって、日本なら日本の法制とかを踏まえた上で適切であるということで、一定のアメリカ基準とは違う修正をして出している。

アメリカ基準は会計基準という意味では必ずも沿っていないものもあるわけですが、それはその方が適切だということでSECがむしろ認めているものもありますので、そこら辺の判断というのは、結局SECでないとどこまでがアメリカで開示することを認める、アメリカの証券法上のルールに則ったものであるかというのは、我々は判断ができないので、そこで一応SECに提出をしていると。そしてSECの方で何らかのチェックをして、投資者に対する責任も持っているというものを考えている。それ以外のものはどこまでが米国基準なのかということが、必ずしも我が国の中で決定できるかというところが若干、これは非常にむずかしいと。

つまり、米国と見解が違った場合には、当然、米国基準の解釈はSECの解釈の方になるのだと思いますので、そこら辺の非常にむずかしい実際的な問題もありますので、そこを一件一件厳密にやろうと思えばできないことはないのでしょうけれども、法的な安定性といいましょうか、明確性からしますと、SECに登録をしていただいている会社ということであれば、それ以上我々は内容について、こちらで開示する別の内容は当然ありますけれども、個々に確認をするという必要はないのではいかと。そういう意味で任意につくっているものとの違いというものを、少し区別して考える必要があるというふうに考えております。

○斎藤委員

行政の便宜としてはよくわかりますし、多分意を尽くして説明をされれば理解はされると思うのですけれども、お話を直感的にうかがっている限りでは、SECが認めたから日本の政府としてはそれはいいことにしようというふうにも聞こえますので、そこの誤解がないようにお願いをしたいと思います。

○若杉会長

ありがとうございました。ほかに何かご意見ございますでしょうか。はい、どうぞ。

○安藤部会長代理

私、とんちんかんな質問になってしまうかもしれませんけれども。これだけ見ていると、米国基準で作成、連結財務諸表。それだけ見ていると例えば具体的にどうなのかと今頭の中で整理しているのですけれども。有価証券報告書の連結情報として例えば、これを入れたときに、これはきっとそういうことになるのでしょうね。そしてそのあと、個別情報は日本基準でつくったのを持ってくるわけですね。果たしてこれ、問題起きませんか。つまり、単体として見たときにある項目あったりなかったりするということにならないのかという、ちょっとその辺、危惧を感じるのです。

○多賀谷課長補佐

現在の特例でもそういう形になって、連結だけ米国で開示されたものになっております。そこはおそらくドイツもそういう形になってしまうのではないかと思いますけれども。ですからそこを埋める、やはり斎藤委員からもありましたように、我が国の基準では当然何か別な情報が出るとか別の枠組みがあるという、その違いについてどのように投資家に理解を求めるかというところは、やはり必要であるというふうに考えております。

また、個々の事項につきましては、先ほど八木委員からもお話がありましたが、公認会計士協会で米国基準に関する研究会もできるようですので、そちらで研究をしていただきまして、少なくとも米国基準で開示する会社の中で判断がばらばらになるとか投資家に対する情報がばらばらになるというようなことがないように、そこら辺は十分慎重にやると考えていきたいと思っております。

○安藤部会長代理

「今後の取扱いの方向」の最初のポツのところですけれども、「米国基準により作成した連結財務諸表を米国SECに提出する会社」と、従来の特例によっているのが25社と言われましたけれども、そうではなくてこれやっている会社ってどのぐらいあるのですか。結局25社なんですか?

○平松課長補佐

ですから、今の5社ぐらいは。

○安藤部会長代理

ブラス5社?

○八木委員

52年以降の、二通りやっているのがトヨタはじめオリックスとか5社。これはもう新しい方ですね。それ以外は39社あったのですが、もう登録やめるわということで撤退して、それと同時に日本基準に切り換えちゃおうというので、我々FAS研、FAS研と言っていますが、FASの研究者がやっているのがそれが今25社対象です。その中にはNYSEに上場しているのと、していないのと両方あるので、それで先ほどのこのポツの上と下に分かれていまして。そこら辺はスタートは一緒だったのですけれども、いろいろな状況で変わったということでこういう形に今落ち着いているということです。

○若杉会長

ほかに何かございますでしょうか。加藤委員どうぞ。

○加藤委員

先ほど来から会計士協会の方のこのアメリカ基準についての研究会の話が出ましたので、ご紹介を兼ねてお話をしたいのですが、従来から特例でアメリカ基準の財務諸表を提出している会社とそれを監査している監査人ですね。監査事務所との間の非常にインフォーマルな形でのコミュニケーションが過去からずっとありまして、米国基準で例えば新しい年金とか金融商品とか、あるいはセグメントレポーティングとか新しい基準ができたときに、日本企業としてそれをどのように対応していくかということについての相談はずっとしてきていたのです。

ただ、それはあくまでもインフォーマルということでやっていたのですが、もし今後こういうふうに米国基準のファイリングが正規のものになれば、もう少ししっかりした日本企業と監査人側とのコミュニケーションを図る必要があるのではないかということで、会計士協会としてそんなにフォーマルなものではないのですが、仲介役みたいなことをしたいと。私が担当しております方でもそれを今検討しております。

ただ一つ、ご認識していただきたいのは、私どもとしてはなるべく今ビックファイブと言われるアメリカでの5大会計事務所がありまして、そこが最終的に監査意見を出してそれをSECにファイリングするという過程の中で、日本独特の経済取引とか商取引とか会計敢行について必ずしもビックファイブで同じ処理をするとは限らないですね。

現実に、ついこの間も日本の代行返上の会計処理について、日本では日本の考え方が出されたわけですが、では、これをアメリカ基準に照らしたらどうなるかということを何回か話し合ったのですが、ビックファイブ必ずしも同じではないと。それはアメリカの会計基準に照らし合わせた場合の解釈が、やはりビックファイブの中によって違うんですね。これは本来おかしいような気がするんですよ。同じ経済事象に対して違う解釈が出てくるというのはちょっとおかしいような気もするのですが、その辺は最終的に日本の監査法人といえどもアメリカ基準となると、やはり本国の最終的な監査意見形成についての権限を持っているところの承認を得ないと、監査意見が出せないということになるものですから。

ただ、私ども協会としては統一した考え方に、ビックファイブを導くというほどの権限もありませんし、そういうこともありますので先ほどちらっと多賀谷さんが、同じような処理にして欲しいというようなことをちょっとおっしゃったのですが、その辺どの程度までできるかというのはむずかしい問題で。ですから、この辺はこれからいろいろ明らかになってくると思うのですが、先ほど来から話が出ておりますこのレコンスレーションのような表をつくったときに、ビックファイブによって調整のラインが違ってくるというようなこともこれから出てくると思うのです。それをどうするのか。

そうなると、投資家に対して投資家保護という面からそれがいいのかという疑問が、これから出てくるかもしれませんね。いずれにしろ、協会としては何らかの形でこういうことについてどこまでできるかわかりませんけれども、何か尽力していきたいとは思っております。

○若杉会長

ありがとうございました。まだいろいろご意見あるかもしれませんけれども、一応本日の企画調整部会は以上をもちまして終了させていただきます。

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