平成12年10月18日
金融庁

企業会計審議会第1回固定資産部会議事録について

企業会計審議会第1回固定資産部会(平成12年9月29日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画部企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第1回固定資産部会議事録

日時:平成12年9月29日(金)午後3時30分~午後5時23分

場所:中央合同庁舎第4号館4階共用第一特別会議室

○辻山部会長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから第1回固定資産部会を開催させていただきます。

本日は、皆様方お忙しいところを御参集いただき、ありがとうございます。

皆様御案内のとおり、去る5月12日及び7月28日に開催されました当審議会の総会におきまして、第一部会で審議されてきた固定資産の会計処理の問題については、固定資産部会を設置し、引き続き審議することが決定されております。

これから、固定資産の会計処理について審議を進めてまいりますが、本日は、議事に入ります前に、当部会の委員の構成等につきまして、簡単に御紹介させていただきます。

御挨拶がおくれましたが、当部会の部会長を拝命しました辻山でございます。委員の皆様方、また事務局の方々の御協力を賜りまして、この大役を無事果たしたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

また、当部会の部会長代理は、第一部会時代に引き続いて中島委員にお願いしております。中島委員にはよろしくお願いいたします。

第一部会における企業結合会計の審議開始に伴いまして、去る8月28日付で臨時委員、幹事の任命が行われましたが、当部会に関係するものといたしましては、伊藤大義氏が臨時委員に任命され、当部会に所属されることになりました。

○伊藤委員

伊藤でございます。よろしくお願いいたします。

○辻山部会長

それ以外にも第一部会に残られるなど、当部会から離れられた方もおります。その詳細は、お手元の当部会の名簿を御覧いただきたいと思います。

また、当審議会全体の名簿も改めてお配りしてあります。改めて御覧ください。

本日は、乾総務企画部長、三國谷東京証券取引所監理官に御出席いただいておりますので、ここで御紹介いたします。

○乾総務企画部長

総務企画部長の乾でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○三國谷取引所監理官

三國谷でございます。よろしくお願いいたします。

○辻山部会長

ありがとうございました。

また、事務局は総務企画部大藤企業開示参事官が引き続き担当されるとのことでございます。

○大藤参事官

大藤でございます。よろしくお願いいたします。

○辻山部会長

ありがとうございました。

次に、若杉会長から御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○若杉会長

本日は、御多用のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

これまで第一部会で審議されてまいりました固定資産の会計処理につきましては、御案内のように、7月に固定資産部会を設置し、引き続きこの問題を審議することになったわけです。本日は、その第1回目の会合ということになります。

第一部会における審議の結果は、論点整理として取りまとめられておりまして、御案内のとおりです。これに対する各界からの御意見も寄せられております。当部会は、これらの成果を引き継ぎまして審議に入ることになります。

論点整理では、最優先の課題とされておりました固定資産の減損会計に関する基準の設定、それから投資不動産の問題、こういったことが当部会の主な審議の対象になるかと思います。

審議に当たりましての基本的な姿勢としましては、IASやFASなど国際基準との調和を図りながら、我が国独自の問題があれば、これをどのように調整していくべきか、そういうような基本的な姿勢でもって今後の作業を進めていくことになると思います。

皆様の御協力をお願いいたしまして、簡単ながら私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、議事に入りたいと思いますが、議事の再開に当たり、まず今後の当部会の運営についてお話したいと思います。

当部会は、今後、論点整理に対して寄せられました意見も参考にしつつ、固定資産の会計処理に関する基準のうち、論点整理において最優先の課題とされた固定資産の減損会計に関する基準の設定及び投資不動産の問題について審議を進めていくことになります。

そこで、まず本日は、論点整理に対しまして寄せられた意見を事務局から紹介していただくとともに、意見交換をしていただきたいと思います。

次に、6月に公表されました長期資産の減損会計に関する米国基準の公開草案につきまして川村委員から御報告をいただきたいと思います。

また、最後に伊藤委員から、日本公認会計士協会から7月に公表された「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」について御報告をいただき、意見交換を行いたいと思います。

次回以降でございますが、固定資産の減損の会計処理について、次回は減損の認識と減損損失の測定の問題を中心に、基準の設定に向けて議論を深めていきたいと思います。

なお、論点整理に挙げられていましたその他の指摘事項でございますが、項目が多岐にわたり、固定資産部会で減損会計などとともに議論いたしますと、効率的な審議を行うことが困難であると思われますので、企画調整部会で会計基準の設定・修正を要する事項か、あるいは実務指針等の他のルールで対応すべきものか、あるいは早急に対応を要するのか、中長期的な課題とするのかといった緊急性の度合い等につきましても議論をしていただきまして、今後の取扱いを決定してはどうかと考えております。

この点に関しては、論点整理に対する各界からの意見においても、その取扱いに言及する意見が出ておりますので、後ほど各界意見に係る意見交換の際に御意見があれば御発言いただきたいと思います。

それでは、論点整理に対して寄せられた意見につきまして、まず事務局から概要について説明をお願いしたいと思います。

では、事務局から、よろしくお願いいたします。

○平松課長補佐

では、御説明させていただきたいと思います。

お手元にございます「『固定資産の会計処理に関する論点の整理』に対する意見の紹介」という赤い判子が押してある資料があると思いますけれども、これに沿いまして御説明させていただきたいと思います。

この資料は、事務局の方で、寄せられた意見をもとに適宜まとめさせていただいたものでして、内容等はオリジナルの意見の方で正確性は確認していただきたいんですけれども、この「委員限」の資料につきましては、私どもの方の責任で取りまとめたものだということで御了解いただきたいと思います。

オリジナルの方の資料は、資料番号の1ですべて入っておりますので、御覧いただきたいと思います。

それでは、簡単に説明させていただきたいと思います。

この意見の紹介というのは、論点整理の項目の順番に従って各界からの意見を整理させていただいたというものでございます。

まず、第1といたしまして、経緯及び基本的な考え方の関係ということでございます。四角の中でございますが「固定資産の減損の処理と投資不動産について検討する必要がある。その他の指摘事項については、内容を示すに止める。」と、こういった論点整理の内容に対する意見でございます。

減損会計と投資不動産を検討課題として取り上げることについて反対する意見はなかったが、減損会計だけでなく固定資産会計全体の再構築、体系的な基準化が必要であるとする意見がありました。日建連さん、JICPA、それから日本租税研究協会。特に、所有権移転外ファイナンスリースの会計処理については直ちに対応すべきであるという意見がJICPAよりございました。

また、固定資産会計を検討するに当たっての要望事項としては以下のものがあった。

  • 会計基準の国際的動向をふまえるだけでなく、わが国における固定資産に関連する経営慣行や市場の実態、現在の経済状況などにも配慮すべきである。

  • 基準適用に係るコストや事務負担などへの配慮が必要である。

  • 税法、商法、他の会計基準との調整が必要である。

  • 親会社と子会社の国籍が異なる場合の会計処理基準の統一などの観点から、国際会計基準または米国基準に準拠した改正を要望する。

という意見がございました。

このほか、含み損を処理する減損会計のみを取り上げるのではなく、土地の再評価も検討すべきだという意見がございました。

続きまして、 II の具体的論点でございます。

1といたしまして、固定資産の減損会計、「減損会計の目的、海外基準の検討、臨時償却など従来の会計慣行との関係を整理することの必要性」、こういった論点についてでございます。

重複する内容があると思われますが、固定資産の保有の多様性、各種制度との整合性、企業経営に与える影響等我が国の経済実態を踏まえた上で慎重にすべきであるという意見がございました。また、収益性を基礎として資産の評価を行う手法は欧米では一般化しているが、我が国では十分成熟していないという意見、我が国の不動産市場の特殊性に配慮すべきであるという意見、固定資産にはさまざまな用途、所有目的、企業経営における位置づけがあるため、減損処理の対象に含めることの要否、減損の認識・評価手法について一定の基準を安易に適用すべきでないという意見がございました。

さらに、実際の基準を決める際の要望事項として、以下のような意見がございました。

  • 参考となる米国基準と国際会計基準のメリット、デメリットを比較検討する必要がある。

  • コストや実務上の負担に十分配慮したうえで企業にとって採用可能な簡素・明確な手法を採用すべきである。

  • 客観的かつ統一的な基準・手法となるよう十分かつ慎重に検討していただきたい。

このような意見がございました。

続きまして、基本的な論点でございます。

まず、この部分は「マル1固定資産の評価と利益計算、マル2減損会計と類似の会計基準との関係、マル3減損の認識、マル4減損損失の測定」と、こういった問題でございますが、まず認識の問題につきましては、次のような意見がございました。

まとめて言いますと、減損の存在がある程度確実な場合に、減損を認識すべきであるという意見が多かったわけでございます。

  • 市場価値の著しい低下や相当な環境変化などに限定すべきである。この観点から、米国基準をベースとして検討を進めることが現実的である。

  • 市場価値の著しい低下や相当の環境変化が生じており、かつ将来の回復を見込むことのできない資産に限定すべきである。

  • たな卸資産に係る強制評価減とのバランスに配慮し、著しい時価の下落等明らかに帳簿価額を切り下げる必要があると認められる場合に限定すべきである。

  • 減損の認識段階では、キャッシュ・フローの見積もりは、米国基準と同様、支払利息控除前かつ割引前とすべきである。

  • 企業に固有の将来キュッシュ・フローの総額(割引前)が帳簿価額を下回る場合に減損を認識すべきと考える。

  • 見積将来キャッシュ・フローの総額(割引前)と土地建物評価額のいずれか高い金額を減損認識の基準とするのが妥当である。

このような意見が認識についてございました。

次に、減損損失の測定基準の問題でございます。

大きく分けまして四つぐらいパターンがあるんですが、まず公正価値を主張する意見でございます。

  • 減損損失額の評価方法は公正価値(時価)のような客観性を重視した基準を採るべきであると考えるが、実務面での時間やコスト負担が極力軽微となるような評価方法を策定することが必要である。

  • 将来キャッシュ・フローによる評価は見積計算であるため、理論的であっても現実的でないと思われるので、極力客観的な公正価値(時価)を優先的に重視した評価方法を採用すべきである。

  • 一般的には、市場での価格が回収可能額を反映しており、その透明性から基本的には公正価値(時価)を採用すべきと考える。但し、明らかに企業に固有の見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値が上回る場合には、それを採用すべきである。

2番目に、国際会計基準の考え方をとるべきである意見についてでございます。

  • 減損の認識基準は、国際会計基準の考え方に準じるべきである。即ち、資産の正味売却価格と使用価値(見積キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い金額をもって現在価値とすべきである。

  • 固定資産の減損を、耐用年数や残存価額の見積もり訂正による帳簿価額の修正でなく、商法の「予定すること能わざる減損」と理解する場合には、IAS36号の基準による方が、減損の認識、減損の測定、回収可能価額が一貫していると思われる。

という意見でございます。

三つ目に、幾つかの測定基準から選択できることにすべきであるという意見がございます。

  • わが国の不動産市場の現状に鑑み、実務上測定が可能である公示価格、基準地価、路線価、固定資産評価額、鑑定評価額または企業に固有の見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値のいずれかから選択できることにすべきである。

  • 減損の測定基準としては、見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値、または公正価値(時価)=土地については「公示地価、基準地価格、路線価、固定資産評価額」、建物については「固定資産評価額、再調達価格」の中から選択適用するのが妥当と考える。

  • 公正価値(時価)のような客観性を重視した基準を採るべきか、企業の合理的な見積もりを反映した基準を採るべきかという論点に関しては、固定資産の種類による選択適用を可能とすべきではないか。製造業の機械装置等に公正価値(時価)を求めることは実務上困難と考えられる。

とする意見でございます。

それ以外の意見としまして、このほか、不動産については公表される公示価格、路線価などを基準にして算出する等の簡便な方法を認める必要があるという意見、再調達原価を評価の上限とすべきであるという意見、見積割引価値といった考え方が我が国においてなじむものか十分に検討してほしいという意見、減損規定における回収可能額に自己創設のれんを含むことの可否を明確にする必要があるという意見がございました。

さらに、測定に関しまして、以下のような一般的要望事項がございました。

  • 評価に恣意性を持ち込むことのないよう簡便かつ客観的な評価額が立証可能な評価方法を設定することが必要である。

  • 最終的に会計基準を設定するに当たっては、それぞれの測定基準について具体的な算出方法を示していただきたい。

  • 恣意性を排除しつつ、明確かつ簡素な手法で算出できる基準を検討していただきたい。

といったような要望でございます。

次に、他の損失計上方法との関係についてでございます。

まず、第1点目は棚卸資産の評価方法との関係でございます。棚卸資産の評価方法との関係については、減損の認識について棚卸資産に係る強制評価減とのバランスに配慮すべきであるという意見のほか、以下のような意見がございました。

  • 我が国においても国際的な基準に合わせ、棚卸資産に低価基準を採用すべきと考えるが、その検討を含め、棚卸資産の評価に関する基準を貴審議会において取り上げていただきたい。

  • 固定資産の減損会計と棚卸資産の強制評価減との間で、評価減の認識基準や測定基準が相違するため、両者間の振替えは、合理的な理由がない限り禁止すべきであると考える。なお、減損会計の適用対象は継続保有を前提とした長期性資産であり、売却目的・短期所有目的の流動資産である棚卸資産とは、一線を画するものと考える。

というような考え方でございます。

それから、2番目に、減価償却との関係については、以下のような意見がございました。

  • 減損会計の導入検討に当たっては、まずもって減損と臨時償却等の既存制度との考え方の違いを十分整理した上で、減損会計の導入の目的を明確化する必要がある。

  • 償却性資産は、「減価償却」を通じて実質的に「減損」を行っていると見るべきであるから、減損会計も、減価償却上の臨時償却等と整合性のある制度とする必要がある。

  • 固定資産の減損処理は、それまで行ってきた減価償却と密接な関係があり、実態に即した耐用年数や残存価額による減価償却の実施が前提となるので、減損会計の適用に当たっては、減価償却計算における耐用年数の短縮や、残存価額の引き下げなどについて税法との調整を考慮すべきである。

  • 減価償却の不足による損失は減損会計の問題ではなく、単に適正な減価償却基準(耐用年数等)の問題であり、これらを混同したまま減損会計の基準を設けると区分できなくなる虞があるので、既存の制度との整合性について明確にする必要がある。

という意見がございました。

続きまして、減損会計の対象資産の問題でございます。

この問題につきましては、論点整理が他の会計基準に定めがある資産(金融資産、繰延税金資産、前払年金費用)は対象資産から除くとしている点については、特に反対意見はなかったが、「ソフトウェア・研究開発費」については会計基準があることから、対象資産に含めるのか確認したいという意見がございました。

繰延資産のうち「開発費」「開業費」「創立費」は対象となるのか。建設仮勘定について未計上段階での減損をどう認識するのか等の問題提起がございました。

リース資産につきましては、賃借人がリース料を支払う義務があり、一般的にはリース契約継続中のリース資産は減損しないという意見、減損額の算出が困難でかつ現実に事業が通常の状況で使用している固定資産については、対象とすべきではないという意見がございました。

このほか、評価方法が確立されるまでの間、減損会計の対象資産を時価算定の容易なものに限定する措置が必要であるという意見がございました。

それから、リース資産の借り手側における減損処理についてでございますが、

  • 「リース会計基準」に従って賃借処理(オフ・バランス処理)をしているリース資産について、減損の会計処理を導入することは適切でない。引当金を計上することが考えられるが、翌期以降の解約が確実であり、その金額を合理的に見積もることができる場合を除き、適切な処理とは言い難い。

という意見が出されております。

次に、減損の兆候の問題でございます。

減損の兆候が存在する資産に限り減損の有無を調査することに関しては、反対意見はなかった。どのような事象を減損の兆候とするかについては、以下のような意見がございました。

  • 減損の有無を調査する場合は、実務上の負担に考慮し減損の兆候が存在する資産に限るべきである。貸しビル事業における減損の兆候を具体的に例示すると、賃貸料や稼働率の著しい低下、著しい法的・物的変化、公示価格等の下落などがこれに該当すると考える。

  • 減損の兆候、認識の適用範囲については、ある程度確実、かつ重要性のあるものに限定することを検討していただきたい。

  • 減損の兆候の判断に際しては、稼働休止や売却の計画が立てられるといった経営方針に重大な変更が生じた場合を対象とすべきである。

  • 判断基準の一つとして、「資産の時価の著しい下落」が採用される場合には、販売用不動産の評価減に準じ、時価が帳簿価額を50%以上下回った場合に限定されるべきである。

  • 調査対象を限定するなんらかの仕組み(例えば公表地価データを使い地域的・用途別の地価下落率から減損兆候を類推するなど)を採用してはどうか。

  • 製造用固定資産については稼働休止や売却の計画等を有しているといったように具体的に減損が生じている場合に適用すべきと考える。

7ページでございます。

  • 不動産のようにある程度市場がある、あるいは公正価額が算定できるものについては、当該価額をもって、減損の兆候を考えれば良いとする意見がございました。

それから、減損の兆候の例示の定め方でございますが、

  • 客観的かつ限定的な基準を明示すべきであり、各企業の判断を尊重し委ねるならばその旨を明示するべきである。基準上ということだと思います。

  • 数値基準を兆候の判断基準とすべきではないと考える。

  • 減損の兆候の判断基準については、客観性を担保するためにも実務指針等により可能な限り具体例を列挙する形で基準を設定する必要がある。

という意見がございました。

さらに、4番目といたしまして、将来キャッシュ・フローの見積もり及び割引率の問題でございます。

まず、将来キャッシュ・フローの見積もりに関しましては、企業の判断が考慮されるようにすべきであるという意見、現在価値計算の目的は企業に固有の価値の把握にあるという意見がございました。

  • 将来のキャッシュ・フローの見積もりに当たっては、経営者の改善努力等の判断が考慮されるよう柔軟性を確保すべきである。また、見積もり期間については、一律の基準は設けるべきではない。また、稼働予定期間が特定されない場合には、最低でも法定耐用年数の稼働は前提とされるべきである。

  • 現在価値計算の目的は、公正価値(時価)の把握というよりはむしろ、企業に固有の価値の把握にあると考える。

という意見がございました。

次に、将来キャッシュ・フローの見積値として期待値を採るのか最も生起する確率の高い金額を採るのかという点に関しては、期待値を算定することまで要求すべきではないという意見がございました。

いずれも期待値を計算するのは負担が大きいということで、最も生起する確率の高い金額を採ることでいいのではないかとする意見でございます。

8ページ目でございます。

現在価値にリスクをどのように反映させるべきかという点については以下のような意見がございました。

  • キャッシュ・フロー見積もり段階で当該資産固有のリスクを反映させる場合、過去の実績や将来の予測、予算計画等に基づいて当該資産固有のリスクを見積もる、というのが実務に即していると考える。

  • 将来キャッシュ・フローが過去の実績等に基づいて実質的に当該資産のリスクを考慮して設定される可能性が高いこと、また、割引率及び資産固有のリスクプレミアムデータが未整備であることを考慮すると、当該資産固有のリスクをキャッシュ・フローに反映させることを前提に無リスク利子率の適用を考慮すべきである。

  • 国際的調和を考えて資産固有のリスクに見合った割引率を適用すべきであるが、合理的で妥当な割引率を入手することができない場合は、当該企業の資本コストを適用することも考慮すべきであると考える。

  • 割引率に関しては、基本的には、当該資産に固有のリスクに見合った市場の収益率によって割り引くべきと考える。

とする意見がございました。

さらに、一般的な要望事項といたしまして、

  • 将来キャッシュ・フローの見積もりや割引率の算定には主観が介入しやすくなるため、ある程度の選択の幅を考慮した上での、基準となるガイドライン等の設定が必要であると考える。

という意見がございました。

次に、資産のグルーピング、全社資産の減損及び減損損失の配分の問題でございます。

まず、グルーピングの問題でございます。

グルーピングにつきましては、企業の判断にゆだねるべきであるという意見が比較的多くございました。

  • 賃貸事業に供している資産は、地域などのセグメント別にポートフォリオを組んで配置された、賃貸事業収益を生み出すための一体化した資産と考えられる場合が多い。従って、これら賃貸事業資産の減損を認識・測定する場合には、一体化した資産のグループとして、例えばビル毎に含み損益を通算することができる方式をとるなどの扱いをすべきである。特に、減損会計導入初年度の激変緩和措置として、この点を考慮すべきである。

  • 個々の資産の事業全体の中での重要性や資産相互の関連性は業種や企業毎の状況によって様々であるため、その実態が適正に反映される必要があり、グルーピングについては、一律の形式的な基準を設けるべきではない。また、特定の固定資産の事業採算性が劣る場合でも、当該資産を継続稼働させている背景には、より大きな事業範囲でとらえた場合には、経営上の判断として当該資産の存在意義が十分に認識される場合があることから、グルーピングについては継続性の原則の下でセグメント等の大きな単位を認めるべきである。

  • 銀行の店舗戦略を考える上で、店舗ネットワークを通じた顧客サービスの維持・向上、銀行業としての公共的使命といった側面も、重要な判断要素である。こうした実態が、資産をグルーピングする上で、適正に反映させられる基準にして頂きたい。

  • グルーピングは限定的なものではなく、他の資産グループから独立していると認識できる単位として、企業の合理的な判断に委ねるのが妥当であると考える。

  • 資産のグルーピングは、継続性の原則を条件に、企業の実態に合わせた選択・適用を弾力的に認める必要がある。

それから、これと対立するものではありませんが、グルーピングの基準を明確にすべきという意見がございました。

  • 固定資産は個別の資産が独立している場合もあれば、複数の資産、更には工場単位等によって構成される場合もある点を十分に斟酌し、減損の兆候や減損損失の測定をどの資産単位でどのように行うか、また、減損損失の配分をどのように行うのかを明確にすべきである。

という意見がありました。

続きまして、共用資産、全社資産の問題でございます。

  • 固定資産のうち本社社屋・事務所等の直接収益と結びつかない資産については減損の対象とすることが適当であるのか、十分検討していただきたい。

  • 本社機構のオフィスビルや厚生施設、社宅、社内事務用コンピュータなど、もともと将来キャッシュ・フロー(収入)を計算するのになじまない資産については減損処理の対象外とすべきである。

10ページでございます。

  • 全社資産についての減損については、その手法を十分検討していただきたい。

  • 共用資産又は全社資産についても減損は認識すべきであると考える。当該資産については、その単位では、キャッシュ・フローを生み出さないので、将来キャッシュ・フローを見積もる場合には、グルーピングする必要があるが、例示されたいずれの方法も認めても良いと考える。

という意見がございました。

それから、個別財務諸表と連結財務諸表の関係ということで、以下のような意見がございました。

  • 少なくとも親子間での賃貸借に係る固定資産については、減損会計の適用を連結財務諸表に限定する等の措置が必要と思われる。

また、減損損失の配分につきましては、

  • グルーピングを認めた場合の減損損失の配分は、減損率で、一律に各構成資産の帳簿価額に配分するしかないと考える。

という意見がございました。

6番目にのれんの減損の問題でございます。

のれんの減損につきましては、

  • のれんは(連結調整勘定)は、企業結合以後の資産又は資産グループの減損と切り離して良いと考える。

という意見がございました。

7番目に減損損失の戻し入れの問題でございます。

減損損失の戻し入れにつきまして、まず否定的な意見としては次のようなものがございました。

  • 減損を認識するのはリストラ関連のケースが多く、一旦認識した減損額がその後、減少することは稀である。また、IASの場合は、減損処理と戻し入れ処理が恣意的になり利益操作の危険性がある。従って、米国基準の考え方を採用すべきである。

  • 減損損失を計上した原因自体が消滅した場合等の明らかな場合を除き、前提条件の変動等に伴う小規模な戻し入れについて実務面に配慮して行わなくても良いとすべきである。

  • 戻し入れは認めないのが適当であると考える。戻し入れを認めれば、回収可能性の見積もり方法にアローワンスを付与することに繋がる懸念があり、恣意性を排除する観点からは望ましくないと考える。仮に認める場合でも、固定資産の収益性が回復したと判断する基準を明確化するとともに、戻し入れ後の減価償却の取扱いについても検討して戴きたい。

次に、両論を併記した意見、また戻し入れを容認する意見でございます。

  • 投資額の回収可能性を反映させるのが、減損会計の目的であるとすれば、回収可能価額が増加した場合には、評価損は戻し入れるべきと考える。戻し入れの限度額は、減損損失を計上しなかったならば計算されるであろう帳簿額とするのが、現実的に妥当性がある。

しかし、他方で、時価会計を前提としない減損会計というのであれば、戻し入れはありえないと考えられるし、戻し入れを行うのであれば、一般的な時価会計を検討すべきではないか、という意見もあった。

  • 減損の認識については、見積もりの要素が大きいことを考慮して、固定資産の収益性の回復が明らかな場合には、戻し入れを認めても良いと考える。その上限は、原始取得価額ということになると考える。

という意見がございました。

次に、減損の会計処理及び表示でございます。

まず、会計処理でございます。論点整理では、減損損失は損益計算書において費用計上するものと考えられるとしておりましたが、必ずしもそうではなくて、損益計算書に反映することについて慎重であるべきだという意見がございました。

  • 不動産の減損による損失が損益計算書に反映されるとすると、事業の成果以外である保有不動産の評価損で損益が変動することとなり、本業での経営努力が報われない状況を招きかねない。また、国際会計基準における売買を目的としない金融資産の扱いとも矛盾が生ずると思われるため、減損会計による損失を損益計算書へ反映させることについては慎重であるべきと考える。

  • 非償却資産たる土地の時価は、取引内容や当事者の状況等の個別要因に左右され幅があること、土地に関する複数の公的評価が存在すること等のわが国に固有の複雑性を考慮すべきこと、さらに、事業用資産の価値は、それを最も合理的に使用する企業が生み出す価値によって決まるべきことを勘案すると、真摯な経営努力の成果が、公示地価の下落等の偶然の要素に左右され、損益計算書が変動することは妥当でない。

という意見がございました。

さらに、土地について特別の会計処理を検討すべきであるという意見がございました。

  • 土地については、原価配分による回収が予定されていない資産であるため、保有企業の存続可能性に問題が無い限り、会計上含み損を顕在化させる必要はないという考え方もある。含み益がある一方で、含み損のみを処理する必要があるのか、といった意見もある。また、欧米に比し地価が相対的に高いこと、企業における土地保有に対する意識の違いなど、土地に関するわが国固有の事情や、地価に与える影響等にも十分配慮する必要がある。例えば、土地の含み損益を注記する方法や、土地再評価法による評価替えといった選択肢も考えられる。

さらに、減損損失計上後の減価償却の要否について検討が必要であるという意見がございました。

次に、BS上の表示の問題でございます。

  • 減損が生じた固定資産については、戻し入れを認める場合には、貸借対照表上は、減損額を減価償却累計額に含めて表示することで良いのではないか。認めない場合には、取得価額から控除することになると考える。

という意見がございました。

次に、PL上の表示の問題でございます。PL上の表示につきましては、特別損失への計上を認めるべきであるという意見が多かったということてでございます。

さらに、注記につきましては、注記は不要であるという意見がございました。

13ページでございます。

さらに、論点整理では触れられていない事項についてでございます。

減損会計の、まず適用時期の問題でございます。

  • 我が国の現在の経済状況、退職給付会計等の新会計基準導入による企業経営への影響度を踏まえ、導入時期については慎重に検討すべきである。

  • 実務の対応上、新基準ならびに実務指針の確定後、適用開始までに十分な準備期間が必要である。

という意見がございました。

続きまして、経過措置の問題でございます。

減損会計の導入に際し、何らかの経過措置が必要であるという意見もあった。経過措置の内容としては、減損損失の分割計上、土地再評価法と類似の方法などが提案されております。

  • 減損会計の導入により一時的に巨額の損失計上がなされると企業の期間損益が不当に歪められる結果となりかねないことから、経過措置の検討が必要と考える。

  • 導入に際しては、同時に土地再評価制度の様な含み益を認識できる仕組みや、減損損失の複数年での分割計上等の激変緩和のための措置も検討されるべきである。

  • 不動産の収益性とその価格とが収益還元法という形で直結しない等のわが国の事情を踏まえると、減損会計の検討に当たっては、当面の措置として、土地再評価法と類似の方法を会計処理として採用することも検討されるべきである。例えば、事業用の土地資産については、その公示価格や企業の将来見積もりキャッシュ・フローに基づく現在価値等、選択された測定方法によって評価損益を認識し、取得原価との差額を貸借対照表に反映させるという方法なども検討されるべきである。

それから、企業の資金調達の実態に応じて、緩和措置を講じるべきという意見もあった。

  • 海外における資金調達などとは関連の薄い企業については、会計基準は同一としても、必要な緩和措置を講じるなど、その適用について各企業の実態に即した配慮がなされるべきである。

次に、土地再評価法との関係でございます。土地再評価法を適用して評価替えを行った場合の取扱いを検討する必要があるという意見が比較的多く寄せられました。

14ページでございます。

この中には、減損損失と再評価差額取崩益との相殺表示を求める意見もありました。

  • 減損処理にあたり再評価差額金等を取崩す場合に、現行の表示ルールに従えば、減損処理損と「再評価に係る繰延税金負債」の取崩益は当期利益に計上される一方、再評価差額金の取崩益は当期利益より下の未処分損益計算書に計上され、損と益が分かれて表示されることになるため、適正な損益計算の表示ができないという問題が生じる。相対関係にある減損処理損と再評価差額金等の取崩益は、相殺表示する必要がある。

という指摘でございます。

さらに、税務との整合性等につきましてでございます。

  • 税法上の扱いに関して整合性を保つべきである。

  • 減損会計を導入する場合には、減価償却、臨時償却等の既存の仕組みと融和しながら固定資産会計として体系立った制度とすべきであるが、その際には税制上も減損損失を損金として認めるべきである。

  • 償却資産については、現行の税法が定める「法定耐用年数」に比して、「経済耐用年数」が短くなっている固定資産については必ず減損処理が必要となり、税務計算と財務会計の資産評価額が乖離することとなるため、まずは「法定耐用年数」を実質的な「経済耐用年数」との同期化を図るべきである。

  • 事業撤退等リストラ関連設備を減損会計にて除却処理した場合、有姿除却との関連で、その範囲・適用要件をどのように決めるのか整理する必要がある。

  • 償却資産税の課税標準額と減損会計適用後の簿価との関連を明確にしてほしい。

という意見がございました。

さらに、論点整理で触れられていない事項につきまして以下のものがあるので、今後の検討の中で言及していただきたいという、これは公認会計士協会からの意見がございました。

項目といたしまして、廃止事業の認識及び廃止セグメントとの関係、対外的に公表したリストラクチュアリングを対象とした引当金との関係、売却予定の固定資産の会計処理、事業開始間もない固定資産の会計処理でございます。

15ページでございます。

  • 国際会計基準を採用する場合には、同基準にいう回収可能価額がマイナス(除却費等)となった時の処理を明確に規定する必要がある。

  • 会計基準における減損処理が金融検査マニュアルと整合性のある基準としていただきたい。

  • 「減損損失」という語が相当数使われているが、これは、「減損額」、「減価損失」、「低落損失」、「評価損」又は「固定資産評価損」とかの語に変えるべきである。

という意見がございました。

さらに、大きな II 番目といたしまして、投資不動産の問題でございます。

投資不動産の会計処理につきましては、投資不動産に公正価値による評価を導入するのは時期尚早であるなど、否定的な意見が多かったということでございます。

  • 投資不動産に対し公正価値による測定、いわゆる時価会計を国内基準として規定することは、各国の動向やわが国の不動産市場が未整備なことから時期尚早である。

  • 賃貸事業に供している不動産を原則として投資不動産と分類することは妥当でなく、他の有形固定資産と同様に扱うべきである。

また、一方、投資不動産の公正価値評価についても減損と並行して検討することを希望する意見がございました。

  • 減損の処理が最優先の課題とされているが、国際会計基準では減損会計と時価会計の選択も認められている。減損会計と時価会計の選択適用についても減損の処理と同様のスケジュールで、十分な検討を進めていただきたい。

  • 時価評価を導入する場合には、取得原価主義による評価と、公正価値による評価との、選択適用を容認する取扱いとしていただきたい。

また、公正価値の算定につきましては、以下のような意見がございました。

  • 不動産の評価額算定法については、不動産の公正価値の評価方法は柔軟性を持たせるとともに、税務や他の基準と整合的となるようにする必要がある。

また、投資不動産の範囲を明確にする必要があるという意見がございました。これと関連いたしまして、複数用途にまたがる不動産の扱いについて以下のような意見がございました。

  • 事業用と投資用の複数用途に跨る不動産の取扱いについて検討していただきたい。この場合、実務を勘案して下記の両方式の企業による選択適用を容認いただきたい。
    マル1過半を占める用途にて判定する。
    マル2入居率等の合理的な比率で、用途別に按分する。

こういった方法の提示がございました。

さらに、投資不動産の審議の進め方につきまして要望がございました。

  • 英国等においては公正価値による投資不動産の評価が既に導入されており、米国においても不動産投資専門会社の業種別基準で投資不動産の公正価値評価が導入されているとのことである。投資不動産の今後の検討に当たっては、まず、これら導入済みの国又は業種における導入の背景及び適用状況を検討していただきたい。

ということでございます。

次に、公正価値情報の開示の問題でございます。

  • 詳細な開示内容が、投資者への情報提供目的として、必要か。詳細に開示してもかえって利用者の混乱を招く場合もあり、開示内容についても十分に検討願いたい。また、あまりに詳細な開示内容が要求されれば、実務上の負担が大きいため、必要最小限のものに絞っていただきたい。

  • 投資不動産の時価に対する関心が高まっていることから、何らかの開示を行うことは、投資家にとっても有用な情報と言える。ただ、減損会計は導入されていることに鑑み、土地についての開示のみで良いと考える。

17ページでございます。

その他の指摘事項関係でございます。

  • 「その他の指摘事項」についても、審議会での検討対象とすべきである。

  • 実務上看過できない点が多いため、論点の指摘にとどまることなく、今後の審議の状況を開示の上、適宜各界から意見聴取の機会を設けられることを強く希望する。

それから、リース取引に関する会計処理についてでございます。

  • わが国リース取引の会計処理は、「リース会計基準」(平成5年6月)において認められた「賃貸借処理」が定着しており、また、税制上の扱いにおいてもファイナンス・リース取引は「賃貸借」として取扱われている現状から、所有権移転外ファイナンス・リース取引に関する賃貸借処理(オフ・バランス処理)を見直す必要はないと考える。

  • 減損会計の適用のタイミングに合わせて、リース会計基準を改訂し、所有権移転外ファイナンス・リースの賃貸借処理の適用を見直すべきと考える。

それから、減価償却に関する指摘事項に関しまして意見が寄せられております。

  • 固定資産の残存価額及び耐用年数は、実務的に法人税法の規定によっていれば、適正とされているが、基本的には経営者による会計上の見積もりに属すべきものであることを明らかにする。

  • 定率法の償却率は、定額法による償却率の2倍を限度とすること等を考慮すべきである。

  • 有形固定資産の除却時の廃材等の見積もり売却価額から見積もり除却費用又は後処理費用を控除した残存価額がマイナスになる場合は、当該残存価額の絶対値を取得原価に加えて減価償却し、減価償却額のうち残存価額に見合う金額は「設備後処理等引当金」として、引当計上する。

といった意見でございます。

18ページ目でございますが、その他の指摘事項に関し、追加して検討すべき事項を提案する意見がございました。

  • 以下の事項については、その他の指摘事項に関連するものと考えられるので、今後検討する際に取り上げていただきたい。
    (1) 固定資産の付随費用の範囲の明確化
    (2) 抵当権付貸出金の代物弁済により受け入れた固定資産の受入価額
    (3) フリーレントの賃貸人及び賃借人の会計処理
    (4) 事業廃止に伴う損益認識時点の明確化
    (5) 固定資産売却契約成立時に確定する損益の認識時点の明確化
    (6) ゴーイング・コンサーンによらない場合の資産の評価基準

でございます。

さらに、

  • 買い入れのれんについては企業結合の会計基準で規定するにしても、固定資産の会計基準では、以下の論点を明確にする必要がある。
    マル1無形固定資産会計全般の包括規定
    マル2のれんと識別可能無形資産の区別
    マル3自己創設のれんの資産計上の可否
    マル4減損規定における回収可能額に自己創設のれん部分を含むことの可否

こういった指摘がございました。

  • 販売用不動産の評価については、投資不動産に準じて処理することとすべきである。
    <理由>販売用不動産の形成プロセスは、投資不動産の形成プロセスに類似する点が多いばかりか、用途の変更によって、両者間で振替が行われることもある。

こういった意見がございました。

最後に「注」として書いてございます。冒頭に申しましたように、寄せられた意見からの引用については、論旨を損なわないと考えられる範囲で一部表現を変えているということでございます。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

ただいまの事務局の報告に続きまして、当部会のメンバーとなっている方で、今回意見を出された団体に関係の深い方、経済団体連合会、日本鉄鋼連盟、不動産協会、それから日本公認会計士協会から補足的な説明をお願いしたいと思います。

では、経済団体連合会から順次補足説明をお願いいたします。経済団体連合会からの意見に関しまして、中村委員から御説明お願いいたします。

○中村委員

どうも御紹介ありがとうございました。経団連では、本日御欠席の八木委員が部会長を務めておられます経団連の企業会計部会でコメントを取りまとめました。固定資産の会計処理は非常に企業経営に大きな影響がありますので、きょうかなり具体的な御意見も出ておりますけれども、今後議論が進展するに伴いましても、さらに具体的な意見を述べさせていただきたいと思います。

また、コメントの補足につきましては、実際に経団連の検討に参加していただきました逆瀬委員からお願いしたいと思います。

○辻山部会長

それでは、逆瀬委員、お願いいたします。

○逆瀬委員

経団連からの意見については、それに添付されたとおりということなんですけれども、一、二補足的な意味合いでの要望を申し上げたいと思います。

経団連の意見書の1項に、基本認識として掲げてあります税法・商法との調整ということなんですけれども、今、平松さんの方から御説明あった各界からのコメントの中にもございましたけれども、基本的に固定資産会計といいますか、特に有形固定資産の会計については、一貫して税務が先行して、実務をリードしてきたという実態がございますし、それが事実として長年あるわけでありまして、個別の議論、細かい議論も含めて、この辺の調整、兼ね合いというものをどのようにつけていくかということについては、十分慎重な配慮をお願いしたいということでございます。

それから、先ほどもちょっと御説明ありましたけれども、認識測定の場面で、グルーピングと言ったらいいんでしょうか、どういうキャッシュ・フローの単位で、例えば減損を取り上げるかということについてなんですけれども、今は中間は実績主義に変わり、それが証取法の財務諸表ではひとつ個別と連結というところで切り口があるということなんですけれども、商法の方は個別オンリーだということでありまして、そういたしますと、今は企業の運営自体が、少なくとも公開企業のような場合には、報告企業1社で事業を行うというのはまれなわけでありまして、何らかの形で関係会社同士がつながっているという中での評価の作業になる。仮にこう考えたときに、個別の認識測定、連結の認識測定がずれてくる、変わってくるということが当然起きてくるわけでありまして、この辺の議論はぜひ慎重な形で検討していただきたいと思います。

それから、ただいまのいろいろなコメントの紹介の中にはなかったかと思うんですけれども、中間の実績主義との兼ね合いの問題なんですけれども、これも経団連のコメントの中にはあえて入れていなかったんですけれども、年度決算しか行われない商法の計算処理と証取法の財務諸表との兼ね合いの問題であります。

仮に実績主義を前提に考えたときに、中間で減損処理が想定されたときに、改めて年度末でもう一度ということになるのかどうか――商法では年に一度しかありませんから――という制度上の問題が絡んでくるなというのが一つあるわけであります。

実際、金融商品会計が今この年度から適用になっているわけですけれども、JICPAの方からも実務指針が春に出て、Q&Aもついこの前出していただきましたけれども、この中でも、特にQ&Aの中では、中間期末に行った評価減の処理について、これを年度末において見直さない場合も合理的なケースとしてあるし、場合によっては、年度末においてももう一度というふうな、ちょっと実務のQ&Aですから大変、ルールに明示されないものですから難しいところの中でのQ&Aでのあれなんですけれども、そういう問題は、実務的には大変インパクトのある話なんですね。

例えば、中間で一旦やるけれども、年度末では見直さなくてもよいと、こうなったときに行う、例えば下期の売却実現額の計算というのと、そうでない場合とでは、当然実現損益が変わってきますということになると思うんですね。上期で、中間期で評価減をするんだけれども、年度末で見直すということであれば、これは洗い替えになりますから、要するに売却損益を計算するときの原価が変わってくるといったような、実務に直結して意外に大きな問題になるというふうなこともございまして、先ほど申し上げたグルーピングに絡んだ連結ベースなのか、個別ベースなのかという話とともに、きちっとした議論が審議会の意見書の中で明示される必要があるだろうというふうに思います。

金融商品会計の例ではそこまで踏み込んだ議論ではなかったので、実施時期の当期の上期末ぎりぎりのところでそういう実務上の扱いを示されたQ&Aが出たということで、私どもとしてはぎりぎり間に合ったという感じなんですけれども、そういうふうなことは、特に有価証券の関係では何とかしのげたかも分かりませんが、固定資産では、そういうことはとても実務的にできない話なので、そういうものを含めて、これは経団連の意見書にもお願いしていますけれども、実践のための準備期間とか、あるいは細目の実務指針であるとか、Q&Aについても当該期が始まる前、かなり余裕を持った時間を与えていただきたい。これは今回の金融商品の経験から切なるお願いでございまして、これを重ねて要望しておきたいと思います。

第1回の固定資産部会でなくて、第一部会時代にたまたま当社が行った連結ベースでの減損の事務処理についての御紹介をさせていただきましたけれども、米国基準の場合は、実現損益として認識いたしますので、大変実務もそうですけれども、経営的にもインパクトが出てくる。連結だけじゃなくて、当社の場合は個別でも臨時償却という形で実務を行ったという紹介を申し上げましたけれども、大変、一般メーカーの場合であっても影響は大きいということです。

特に、業種・業界によってはそのインパクトが相当強烈な場合があるというふうなことで、しかも経済状況がこの時期にこういうものをあえてやろうという中でありますので、その辺の経過的な措置も含めて、重ねて慎重な御検討をお願いします。

なお、経団連の意見書自体は、まだ個々の事項について、細目に踏み込んだ形での意見は提出していないんですけれども、検討の進展に合わせまして、個別事項についてもさらに議論を深めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

次に、日本鉄鋼連盟からの意見に関して、都委員から補足説明をお願いします。

○都委員

では申し上げます。

1点目は、今逆瀬委員の方からもありましたとおり、これは金融商品以上に実際実務に適用するとなると、幾つかの実務的に問題が多く出てくるかと思いますので、この辺はぜひ時間をかけて準備期間を設けていただきたい。これが1点でございます。

2点目は、これは鉄鋼連盟の実務部隊でも議論したときのものです。なぜ今の固定資産会計ではいけないのか。土地の問題は認識しておりますけれども、それ以外、また償却資産等々がなぜ今のやり方ではいけないのか、どういう問題があるのかと、ここをぜひはっきりさせていただいた上で、今度はこの減損会計に入っていただきたい。これが1点でございます。

あと2点ほどございますが、これはともにこの中に織り込んでいることでございます。一つは減損の兆候、当然ここで減損会計を適用するに当たりましては、幅広く網をかけてやっていきますと、ここでは非常に実務ですね、そういったところで毎期毎期対応するわけにいきませんので、あくまで減損の兆候ということについては、例えばここに書いてある稼働休止や売却の計画が立てられるといったような、経営方針に重大な変更が生じた場合を対象とするといったようなことで、この減損の兆候についてよく議論させていただきたいと、こういうことでございます。

あと1点は、これは先ほどと重なりますが、激変緩和措置、これは影響が大きゅうございますので、そこのところはぜひ議論の中で話をさせていただきたい、こういうことでございます。

以上でございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

次に、不動産協会からの意見に関しまして、岩田委員から補足説明をお願いいたします。

○岩田委員

逆瀬委員、都委員とも意見が重なりますので、ちょっと重複するところは避けますが、特に不動産そのものが非常に深くかかわってまいりますので、非常に業界としても慎重に審議をお願いしたいといったことが全体的な流れでございます。

特に、土地の問題につきましては、非常に歴史的な経緯もございますので、そういったものも含めて、国際的調和という問題もありますけれども、その辺を十分考えていただきたいということと、あと賃貸業とかそういったものにつきましては、やはり事業としてずっと継続してやっていくということが前提になっておりますので、その辺がどういうふうにお考えいただけるかというところが一つ問題かなと。

やはり全体的な流れとしては、非常に大きな流れとしてはなかなか難しいところがあると思いますので、実施の際には何らかのそういった急激な改革ではなく、こういった経済状況でございますので、なだらかなといいますか、ゆっくりした改革をお願いできればというところをつけ加えさせていただきます。

以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、最後でございますが、日本公認会計士協会からの意見に関しまして、伊藤委員から補足説明をお願いいたします。

○伊藤委員

それでは、概略御説明させていただきます。

私どもの報告書は資料1の35ページから3ページにわたっておりますが、基本的に意見書の作り方がよその協会と違いますのは、今後審議会で御審議いただくテーマについては、当協会の意見を述べておりません。従いまして、私どもが意見を申し述べておりますのは、主に今後審議会において追加して御検討いただきたいということについて列挙してございます。それが一つでございます。

初めの方に全般的事項というのがありますんですが、今回論点整理として取り上げていただいたテーマにつきましては、協会としても全面に賛同し、その作業に敬意を表しますということであります。

もう一つ、昨今、当審議会も非常に精力的に御活動いただきまして、これまでの会計実務では対応できなかった困難な問題も解決しておるということで、それは非常に喜ばしいことだと思うんですが、ただ、我が国においては、主として伝統的と言える領域について明文化された基準がないというのもまた事実かなと思います。それも、やはりできるだけ早く整備することが諸外国に対しても必要なのではないか。具体的には、例えば固定資産会計に関する一般的な基準なり、あるいは棚卸資産の会計に関する一般的な基準、そういうものも必要なのかなと思います。

そういうことで、その他の指摘事項という論点整理をされておりますが、この中で早急に対応すべき事項、我々としては所有権移転外ファイナンス・リースがそれに該当すると思うんですが、これについては早急に対応していただき、それ以外の事項につきましては、減損会計が終了次第、基準化に向けて引き続き御検討いただきたいと、そのような意見を持っております。

個別で二、三御説明させていただきますと、1番目に所有権移転外ファイナンス・リースの会計処理というのがありますが、例えばオフ・バランスでも引当金をすることによって減損処理は確かにできるんであろうとは思いますが、諸外国におけるファイナンス・リースの会計処理と、それから減損会計を周知徹底するという意味では、やはりオン・バランスにする必要があるんではないかという意見を持っております。

そういうことで、次のページになりますが、減損会計の適用のタイミングに合わせてリース会計基準を改訂し、所有権移転外ファイナンス・リースの賃貸借処理の適用を見直すべきと考えますということになっております。

3番目に、棚卸資産の評価基準につきまして、論点整理について、評価損について言及されておりますので、私どもとしても、やはり国際的な基準に合わせるために棚卸資産に低価基準を採用すると考えておりますが、これらの検討も含めまして、棚卸資産の評価に関する基準を審議会においておとり上げいただければありがたいと思っております。

それ以外のもの、4番は触れられていないものということで、今後の審議の中で、考え方なり方向性について言及していただきたいものを記載しております。

5番目は投資不動産の検討ですが、これは若干協会の審議でちょっと認識が違っておりますが、論点整理によって米国を初め、多くの国でも投資不動産と有形固定資産の会計処理は取得原価基準で統一されているという現状認識が示されておりますが、我々の内部の話ですと、英国においては公正価値による投資不動産の評価が既に導入されており、米国においても不動産投資専門会社の業種別基準で投資不動産の公正価値評価が導入されているということでございますので、あわせてそういう背景なり、その運用状況を御検討いただければと思います。

最後の6番目は、あわせて御検討いただきたい項目であります。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの論点整理に対する意見、コメントでございますけれども、これに関しまして、御意見、御質問のある方は御自由に御発言ください。お願いいたします。

品川委員。

○品川委員

ただいまの各団体から補足説明があったわけですが、実は私、個人的に日本租税研究協会の税務会計委員会の取りまとめをさせていただきまして、ここの団体では約30社ほどの団体、会社が集まって、今までの各団体と同じような議論がされたわけでありますが、この団体の性格上、より税務面から実務をどうしていただけるのかという、特に固定資産会計等については、耐用年数とか減価償却とか臨時償却がすべて税法に依存した処理が行われているわけでありますので、そういう点についての配慮をぜひ、その配慮がないと実務が非常に混乱するということが強く指摘されたことを補足させていただきたいと思います。

以上です。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。そのほか御意見、御質問ございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

それでは、論点の整理に対する意見につきましては、後ほどまた質疑のときに追加して御意見、御質問いただきたいと思いますけれども、ひとまず冒頭に申し上げましたように、川村委員から長期資産の減損会計に関する米国基準の公開草案について御報告いただきたいと思います。

では、川村委員、よろしくお願いいたします。

○川村委員

それでは、御報告申し上げます。資料2を御覧ください。

ことしの6月30日にアメリカの財務会計基準審議会(FASB)が減損会計基準の改訂案を公開草案として公表しております。これは、1月に第一部会の中で私の方から御報告申し上げました121号プラスその当時での審議の過程をまとめた資料を御紹介いたしましたけれども、それが成案といいますか、改訂案として公表されたものでございます。これは基準書121号をまるっきり差しかえる予定であります。

適用予定は2001年12月15日より後に始まる事業年度ということになっています。

では、骨子を追って説明申し上げます。

まず、1として減損の定義を示しております。減損は保有・利用目的の資産、あるいは資産グループの帳簿価額が公正価値を上回る状態としております。ただ、当たり前のことでして、2に示しておりますように、基本的な減損の認識と測定の方法には変更ございません。

回収不能の判断は、現実的な理由から従前どおり帳簿価額と割引前の将来キャッシュフロー総額を比較して行う。帳簿価額が割引前の将来キャッシュフロー総額――これは利用によって生ずるものと最終処分によって生ずるものを含めます――これを上回ったときに回収不能と判断する。

測定の方も、従来どおり公正価値をベースにいたしまして、その公正価値を帳簿価額が超過する金額を損失として認識することになります。切り下げ後の帳簿価額は新規の取得原価とされまして、過年度の減損損失の戻し入れは禁じられております。

3点目が概念書第7号の「期待キャッシュフロー・アプローチ」というのを具体化したという点であります。概念書第7号は、これも最近公表されたものでございますけれども、将来のキャッシュフローに関する情報を用いて現在価値を計算する場合に、どういうふうに、あるいはどういう目的をもって行うのかという点について明らかにした文献であります。その概念書第7号で明確に述べておりますのは、公正価値を推定する手段として現在価値、この計算手段を利用しているんだという点であります。この期待キャッシュフロー・アプローチでは、マル1期待キャッシュフローを見積もり、マル2リスク込みキャッシュフローを確実性等価額へリスク調整し、さらにマル3無リスク利子率によって割り引くという、この3段構えで計算をするということになっております。

まず、期待キャッシュフローという言葉の意味ですが、これは期待値でありまして、この審議会での論点整理の中でも取り上げております論点ですが、従来の最善の見積もり値、最頻値というものをとるのではなくて、期待値でやるという点であります。

(2) としておりますのが、キャッシュフローの見積もりを企業の固有の事情を反映した数字ではなくて、市場参加者の平均的な見積もりでなければならないという点であります。

2ページにまいりますと、その調整を要するような具体例がa、b、cと並べております。例えば、資産を最も効率的かつ最善の方法で利用していない場合、あるいは従業員との関係が市場平均よりも違っているようなケース、仕入価格も市場平均と異なっているというケース、こういうときには、自分のところのデータを使うんじゃなくて、市場平均をベースにしてキャッシュフローを見積もるということになります。

(3) がキャッシュフローをリスク調整して、確実性等価に変換するという手続であります。

論点整理の中でも指摘しておる点ですけれども、リスク調整の方法としては、分子のキャッシュフローを調整する方法と分母の利子率を調整する方法の二通りがあるわけですが、FASBの期待キャッシュフロー・アプローチでは、分子のキャッシュフローを調整するという方法をとるということであります。

ただし、ここはなかなかリスク調整の方法がまだ理論的にも実務的にも詰め切れていない面がありますので、恣意的になるコストを払うくらいだったら、無理に行わなくてもよいということが注記されております。

その結果、計算されたリスク調整後のキャッシュフローを無リスク利子率によって割引計算するという手はずになります。この利子率はこれ以外ありません。

4点目といたしまして、その他の具体的に適用指針として幾つか述べられているものがございますので、順次御説明いたします。

まず、全社資産の減損については、やはり全社レベルで回収可能性を判断するということになります。ただ、他の、全社資産以外の資産についてまず回収可能性を判断して、それでなおかつキャッシュフローが余っているという場合には、その残余をもって全社資産の減損の有無を判定するということになります。

(2) は減損の兆候として、当初の見積もり耐用年数の経過時点より著しく前に売却その他の方法で処分される可能性が処分されない可能性よりも高いという場合、こういうのを追加しております。

(3) が償却計算に係る見積もりの変更との関係、これを明確にしています。当審議会でも問題になっている点でありますけれども、減損、いわゆる臨時償却との関係ですが、減損の規定が引っかかるという場合であれば、まず減損をやりなさい、その後、臨時償却というふうに順序を明確にしております。これは一般の固定資産、あと、のれんも同様であります。

(4) 、将来キャッシュフローの見積もりでありますが、まずグループ化した場合、キャッシュフローの見積もり対象期間となる耐用年数というのは、グループ化していますから、いろいろな資産の耐用年数があるわけですけれども、その中でもグループの主要構成資産、これは有形のものに限られますが、この耐用年数とするということになります。例えば、土地つき建物などのケースであれば、建物の耐用年数をとるということであります。

(b)、キャッシュフローの見積もりに際し、将来の資本的支出は考慮しない。当たり前のことでありますが、あと棚卸資産や受取債権などから生ずるキャッシュフローも除くことになります。

建設中の資産については、キャッシュフローの見積もりに際し、将来の建設完了に要する支出を考慮する。これも当たり前のことであったかと思いますけれども、明確にしております。

(5) 、減損損失のグループ構成資産への配分は、これは従来も規定がありましたが、のれんに対して優先的に行う。その後、追加があって、配分後の資産の帳簿価額というのは、公正価値以下まで切り下げてはならないということを新たに規定しております。

5点目ですが、従来の処分予定資産という区分を、売却以外の手段による処分予定資産と売却による処分予定資産というふうに再分類しております。

まず、売却以外の手段による処分予定資産については、実際に処分されるまで保有・利用目的資産に分類するということであります。勝手に処分予定資産というふうに振りかえてしまって損失を早目に計上するというような会計処理を認めないという意味であります。

(2) 売却による処分予定資産について、3ページの方にまとめてございますが、まず分類についてはかなり詳細な要件を課しております。売却が本当に容易に実行できるとか、1年以内に引き渡しが完了することなどの要件を課しております。

その測定の方法は、従来どおりでありまして、帳簿価額と売却費用控除後の公正価値とのいずれか低い方で測定するということになります。

負債の承継が売却に付随して合理的に期待される場合ですが、このような負債については資産グループに含めるという形で処理するということになります。

戻し入れにつきましては、従来どおり認めることになります。従来どおり戻し入れをしなければならないということになっています。

のれんですが、買収法により会計処理される企業結合により取得した資産グループを売却する場合、のれんもこの資産グループに含めるということになります。部分的に取得した資産の一部を売却するという場合には、公正価値の比によってのれんを配分するという形で、従来の規定を明確にしております。

6点目でございますが、事業セグメントの廃棄、これについてはAPBの30号という規定がありますが、それで取り上げているもののみならず、セグメントの定義を満たさない重要な公正部分についても、この規定に準ずる適用をするということであります。つまり、セグメントでなくても廃棄活動に該当すれば、それに関する損失というものは損益計算書の末尾で独立表示するということになります。

7点目、処分活動に関連する特定の債務を負債として認識するという問題です。これは、具体例をa、b、cというふうに掲げておりますが、処分活動、これは必ずしも資産の売却とリンクしていない場合も含まれるようでありますけれども、従業員の解雇に伴う給付金とかオペレーティングリースの契約解除費用、こういったものにつきまして、基本的には負債の定義を満たした場合に負債として認識するということになります。

これについても、アメリカでは、どちらかというと早目に損失を計上してしまおうというような実務があるようでして、処分計画を立てた段階でこういう負債を認識する実務は認めないということになりました。負債の定義を満たしたときに初めて負債を計上できるということになります。

また、その測定は処分完了日における公正価値となっております。

以上が減損の公開草案でございますが、これとは別に、企業結合の公開草案においても、のれんの会計処理を定めておりますので、ちょっと関連する箇所だけ抜き出しております。

この企業結合の公開草案は昨年9月に公表されております。のれんの計上につきましては、要するに承継した資産負債の公正価値の合計を買収の対価が超える場合に、のれんを計上することになります。こののれんには信頼性を持って測定できない識別可能無形資産が含まれる。あと、のれんについては、回収可能性テストに備え、121号に従い、各資産グループに公正価値の比によって配分するということになっています。

のれん特有の回収可能性テストの配慮がその3点目に掲げておりまして、企業結合取引時において買収交渉前の時価総額に比べて著しく大きいプレミアムを支払っている場合など、こういうときには、のれんについて取得日後2年以内に回収可能性テストを行うということを強制しています。ですから、減損の兆候を新たに追加したと考えてもいいのかもしれませんけれども、こういう怪しいものと言っては語弊があるかもしれませんが、そういうのれんについて、早い段階でチェックをかけるということになっています。

のれんの償却は、原則その経済的耐用年数であります。ただし、20年を超えてはならないということになっています。その経済的耐用年数につきましては、買収によって取得した資産の耐用年数を考慮したり、のれんの維持のために必要な追加支出、この状況などを考慮して決定するということになっています。

償却方法は、原則として定額法であります。

あと、減損の問題が5点目であります。これは基本的には121号に従って行うということであります。ただし、兆候の問題につきましては、121号に定める以外にその次の例を追加するという形でa、b、c、dと4点掲げております。

(3) では、のれんの回収可能性テストは、のれん配分後の資産グループごとに、のれんの全額がテストされるまで行うということで、のれんについては、ちょっと一つ踏み込んだ厳しい規定をおいております。とはいっても、特定の資産グループについてのみ減損の有無を調査すれば足りるという場合には、それだけでもよいということもまた書いてあります。

あと、のれんの分離処理といいますか、基本的には買収した企業全体を売却するときに、のれんも当然売却処理されるということになるわけですけれども、そうでないようなケースについては、そののれんの一部又は全部を売却原価に含めるような例外をおいているということであります。

いずれにしましても、この企業結合の公開草案に関するのれんの会計処理の方が減損の公開草案の前に公表されておりますので、まだちょっと流動的な面も多々あるかと思いますが、以上、現状を報告させていただきました。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

ただいまの川村委員の御報告につきまして、御意見、御質問はございますでしょうか。

よろしいですか。

斎藤委員、お願いします。

○斎藤委員

簡単なことをちょっとお教えいただきたい、確認をさせていただきたいんですが、従来、長期性資産の減損といいますのは、収益性が低下するということに伴って回収の見込みが立たなくなった簿価の切り下げといいますか、そういう問題と理解してきたわけで、恐らくIASの基準もそういう観点に立っているのではないかと思うんですね。それに対して……、失礼、そういう観点を持っているから、従来は減損を評価する場合も、将来のキャッシュ・フローというものを見積もって簿価と比較をするということをしてきたように思うんです。それに対して、今回のこの米国のFASBの基準の改訂案で言っている減損の定義ですか、そこでは要するに資産の簿価が公正価値を上回る状態だというふうに定義しているわけですね。それは、基本的にはそういう収益性の低下に伴って簿価の回収の見込みが立つかどうかという観点をいわば放棄しているというふうに考えていいのでしょうか。それとも、そうではなくて、やはり何か収益性の低下の問題といいますか、そういう観点を持っていると理解していいのでしょうかということをちょっと確認させていただきたいんですけれども。

○川村委員

収益性の低下に起因した公正価値の下落という形で、原因を示すような形での定義ではないという点、ここに書いてあるとおりであります。原因は問わない形になっていると思われます。従いまして、償却不足が事前にあるのか、ないのかという問題もあるかと思うんですけれども、臨時償却と減損の規定の前後関係というものを規定していまして、減損の方を先にやるということですので、償却不足で簿価が過大になっていたようなケースを考えますと、そういうケースでも一旦簿価を修正してから、臨時償却で修正してから減損をやると、そういう話ではないということですので、どちらかと言えば、収益性の低下という原因にこだわっているような感じはちょっと受けないと思います。

○斎藤委員

恐らくそうではないかと思いますね。そういう収益性の低下に伴う減損認識という観点を持たないからこそ、現在価値を評価するときに、それを公正価値の代理だというふうに考えて評価しているのではないかという感じもいたします。

今、せっかくおっしゃられたので、ついでにこれも確認いたしますが、償却計算において、減損とその償却の変更がバッティングしたときに、減損の方を優先させるというルールをとっているわけですが、その理由の説明はあるのでしょうか。

○川村委員

原文を見ればある程度書いているかと思いますが、ちょっと時間がかかるかもしれませんので、また何かの折におこたえします。

○斎藤委員

ありがとうございました。

○辻山部会長

ありがとうございました。ただいまの論点は、先ほど鉄鋼連盟の都委員の方から御指摘ございました、今回なぜ現在の固定資産会計ではいけないのか、新たに減損を取り入れるのか、その辺のロジックを審議会としても、今回基準を策定する際に明確にしてほしいという御要望がございましたけれども、その点にも関係してくるかと思いますので、引き続き今後検討してまいりたいと思います。

そのほか、川村委員の御報告につきまして御質問、小宮山委員、お願いします。

○小宮山委員

後の議論に関係してくるかもしれません、ちょっと2点教えていただきたいんですけれども、2ページ目のところで、見積もりの変更との関係というのが2ページ目の4の(3)にございますね。今の説明を伺っていると、要するにアメリカの企業というのはどんとたくさん落として、後で水面の上に飛び上がるみたいな決算をする、そのために、減損をし過ぎないようにという配慮が働いているというところが随所に伺えるんですけれども、ここの部分は、減損の会計処理が優先するということですね。見積もりの変更の場合には、将来の期間にわたって均等に変わっていきますね。減損の場合は一遍にその期に落ちますね。何か歯どめというのが、規定があるのかどうかというのをちょっと確認したいというのが1点。

もう一つは、将来キャッシュフローの見積もりというところで、耐用年数で先ほど土地と建物が合わさっているケースで、特にこれは日本の場合重要だろうと思うんですけれども、建物の一応耐用年数を使うということを言われたと思うんですが、リースの会計のところなんかで、ファイナンス・リースかどうか区別するところで、土地が25とか75とか、何か基準がありますよね。そういうふうな考え方というのは、改訂案というのは出ているんでしょうか。

ちょっと、その2点だけ確認したかったものですから。

○川村委員

まず、第1点目の見積もり変更と減損の両者が適用可能な状況で、減損の計上し過ぎに対して歯どめがかかるのかという問題ですが、それに該当するような規定は、今のところスタンダード・セクションを見る限りではございません。

2点目の土地と建物、土地つき建物のようなケースについて、リースの会計基準におけるような細かなケース分けしたような規定があるのかという点でありますけれども、それも今のところございません。

○辻山部会長

ありがとうございました。小宮山委員、よろしいでしょうか。

それでは、少し議事を進めてまいりたいと思います。

最後に伊藤委員から、去る7月に日本公認会計士協会から公表されました「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」について、御報告をお願いします。

この実務指針につきましては、公開草案の段階で西川委員から簡単に御紹介をいただいておりますけれども、不動産の評価という点で、減損損失の測定を考える上で参考になる点も多いかと思いますので、今回は少し詳しく御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○伊藤委員

それでは、御説明させていただきます。

印刷物を配付させていただいておりますが、これは私どもの機関紙からの掲載文から原文をおとりいたしましたので御容赦いただきたいと思います。

資料3でございますが、監査委員会報告第69号ということになっていまして、監査上の取扱いでございます。

「はじめに」のところに経緯を若干書いておりますが、基本的にはバブル崩壊で売れない、長期滞留している販売用不動産、あるいは含み損の大きくなった販売用不動産があるという認識であります。

具体的な内容としましては、1ページ目の右下の方にありますが、販売用不動産及び開発事業等支出金(未成工事支出金等で処理されているものを含む。)というものを今回私ども販売用不動産等という定義をしております。その当時の話ですと、資産の時価の算定が一般に困難であるという理由から、強制評価減が適時に実施されていなかったというケースがありましたので、会員の強制評価減を実施する際の監査上の判断基準としてガイドラインを取りまとめました。

従いまして、結果的に販売用不動産の時価という言葉は出てきてはおりますんですが、本来は減損会計に適用する時価とは相当幅が違っておりまして、私どもとしては強制評価減を適用する場合の広い意味のゾーンを提示したいと、そういう感じでおります。概略御説明させていただきますが、趣旨がちょっと違うんだろうと思います。

強制評価減に関する法令等の規定は省略させていただきます。

3番目にあります販売用不動産等の時価に関する基本的な考え方ですが、まず時価の一般的な概念としましては、中ほどにございます正味実現可能価額と再調達原価の二つがあるだろうということで理解しております。今回、我々が使用しておりますのは、(2)にあります販売用不動産等に適用する時価としましては、中ほどに「販売用不動産等は通常の営業循環過程において販売することを目的としている資産であるため、売却時価を資産の評価額の基礎とする正味実現可能価額の方が妥当と考えられる」ということで、それを採用しております。

具体的な算式としてはその下にございますが、一つ目の販売用不動産の時価というのを「販売見込額-販売経費等見込額」にしております。それから、開発中のものにつきましては、開発事業等支出金の時価は「完成後販売見込額-(造成・建築工事原価今後発生見込額──追加コスト──+販売経費等見込額)」、そういう算式で計上しようと思っています。

3番目にあります販売見込額の客観性というのは、これは一般的な注意ですので省略させていただきますが、右の欄の二つ目のパラグラフにありますものを提示しておりますが、販売見込額の基礎となる土地の時価としては、不動産鑑定士による鑑定評価額が適切と考えられるが、公示価格、都道府県基準値価格、路線価による相続税評価額、固定資産税評価額をもとにした倍率方式による相続税評価額等も妥当と考えられる。また、近隣の取引事例から比準した価格も、ある程度客観性を備えた価格と考えられるということで、相当広い時価の概念を使っております。

専門家の業務の利用は省略させていただきます。

4番目に時価の著しい下落の判断ということをやっておりまして、これも中ほどに必ずしも数値化できないとは言いつつ、個々の販売用不動産等の時価が取得価額に比べておおむね50%以上下落している場合には、販売用不動産の時価が著しく下落しているものとして取り扱うこととするということになっておりまして、回復可能性がなければ評価減をするということになります。

なお書きの方にありますのが、個々には50%を下落していない場合でありましても、全体の含み損の金額に重要性があって、会社の財政状態及び経営成績についての判断を誤らせるような自体を招くと認められる場合には、前述の50%基準以外の他の適切な基準を検討する必要があるというなお書きを入れております。

5番目に時価の回復可能性に関する判断指針というのがありますが、これはマクロ的な要因、地価の動向、日本経済、地域経済の状況ですとか、マクロ的な要因だけではなく、販売用不動産の具体的、個別的な回復可能性の検討が必要であると。具体的には、土地利用規制が解除されますとか、あるいは開発計画が具体的に認可される、あるいは計画道路ができる、そういう個別の理由、二つの理由が回復可能性を判断する場合に必要であるとしております。

6番目にありますのが、販売用不動産等の評価の妥当性に関する判断指針という監査上の取扱いでありますが、4行目ぐらいから、会社が次に示した方法によって時価を算定しており、監査人がその算定方法の合理性を認めた場合には、その評価額は監査上妥当なものとして取り扱うものとするということで、会社が合理的に選択したものについて、会計士としての合理性の判断をするということであります。

不動産鑑定士につきましては、一番下のなお書きがございますが、なお書きから次の行で、なお、重要な販売用不動産等の評価については、その監査に当たり、不動産鑑定士等の専門家の意見を求めることが適切と考えられるということで、金額の大きなもの、あるいは50%すれすれのもの、そういうものについては不動産鑑定士の評価というものを求めております。適当と認めておりますが、それ以外は特段不動産鑑定価額による必要がないと言っています。

次に、具体的な評価でございますが、(1)に開発を行わない不動産又は開発が完了した不動産の評価と、次の欄に、(2)に開発後販売する不動産の評価というのがありまして、対象となる不動産、それから時価の算定方法、これは前に御説明したものですが、販売見込額の例示としてア、イを入れております。具体的に御説明させていただきますと、販売見込額としては販売公表価格又は販売予定価格がある場合には、その価格による。具体的には、例えば販売予定のチラシでも結構ですし、そういうものでも構わないというふうになっております。

イとしまして、販売公表価格及び販売予定価格がない場合、あるいは実際に売れないために適切でない場合には、次の評価額を基準として販売可能価格を見積もるということで、一番客観性が高いと思われますaとして鑑定評価額、それからbとしまして一般に公表されている地価又は取引事例価格を挙げています。公表されている地価としましては、公示価格以下ずっとございまして、一番最後に、取引事例としましては、近隣の取引事例から比準した価格というのがあります。

cとしまして、販売用不動産ですので、余り収益還元価額というのはないんだろうと思いますが、当初より販売を目的として取得した販売用不動産ではあるが、現在賃貸中のもの、又は一時的に賃貸したものについては、収益還元価額によることもできるというふうになっております。

4番目としまして、販売経費等見込額として、販売手数料及び広告宣伝費、あと測量費とかそういうのがあるかもしれませんが、そのようなことを挙げております。

次に、開発後販売する不動産の評価としましては、対象資産はここに記載しておりますが、時価の算定方法も前に御説明したものであります。

完成後販売見込額というのは、(1)に述べました見積もり方法に準ずるということになっています。

マル4で造成・建築工事原価今後発行見込額というのがありますが、具体的には書いておりませんが、過去の実績なり工事の難易度なり、そういうことを斟酌して工事金額を見積もるよう検討するようにということを言っております。

6番目にあります開発計画の実現可能性というのが工事中の場合は関係がありますんですが、開発計画の実現可能性が認められない販売用不動産等については、開発利益を見込めないため、原則として(1)の開発を行わない不動産として評価する。例えば土地ですと、更地として評価するということで、販売後予想される利益は含めないということになっております。

なお書きのところに、今述べましたことを一覧表にしました付録1と2をつけております。後で御説明させていただきます。

7番目としまして、不動産開発計画の実現可能性に関する判断指針ということで、最初に開発計画の合理性の検討をする必要があるということであります。

次のページの(2)に、開発計画の実現可能性の検討をする必要がある。

3番目に、開発計画の実現可能性についての具体的な指針を作っております。

我々としては、形式基準を一応設けまして、この中のマル1マル2マル3に、例えば開発用の土地等の買収が完了しないため、開発工事の着工予定日からおおむね5年を経過している開発計画という、5年なり2年なりという年数を入れておりまして、この年数に達した場合には、開発計画の実現可能性があるかどうかを注意して検討する必要があるというふうに考えております。

もう一つは、4番目に開発事業の規模への配慮という、どうしても大規模な開発計画というのは、完了までに相当の期間を要するということですので、5年なり2年では実際に実務上回らないケースもあり得るということで、大規模の場合は別段の配慮をする必要があると、このように言っております。

8番目にありますのが、販売用不動産等の強制評価減に適用する時価評価の方法の選択と継続性ということになっておりまして、(1)が時価評価の方法の選択、一番下の行から販売用不動産の時価評価は個別物件ごとに実施することとし、適用する時価は評価時点における販売用不動産等を取り巻く諸条件のもとで、販売公表価格、鑑定評価額、公示価格等の時価の中から会社が最も適切と判断する時価を選択できるものとすると、そういうふうになっています。

時価評価の方法の継続ということに関しましては、幅がありますけれども、一応毎期継続して適用し、評価のための前提条件に変更がない限り、前年度と同一の方法により評価を行う。その評価額について検討する必要があるということになっていまして、状況の変化がない場合に変更することに関しては、例えば正確な時価の算定を意図して不動産鑑定評価を実施するなどの場合は、合理的な理由があると認めますが、それ以外の場合には、合理的とは認められないという例示を出しております。

3番目に時価評価の実施の頻度でありますが、原則として一事業年度に最低1回は実施する必要がある。中間会計期間においては、地価の変動率等を考慮した簡便的な方法によって再評価を実施する必要があるということになっています。ただし、中間期において販売用不動産等の評価額に著しい影響を与える要因が発生した場合には、簡便な方法ではなくて、適切な方法によって適時に再評価を実施する必要があるとしております。

9番目に、評価減を実施しなかった販売用不動産等の開示ということで、これは商法計算書類規則第14条の第1項に記載しておりますが、私どもとして、それに若干追加をさせていただきまして、次のページの真ん中の上のパラグラフですが、評価減を実施せず取得価額を付したときは、その旨を注記する必要がある。これは計算書類どおりですが、この注記に当たっては、強制評価減を実施せず取得価額で評価している販売用不動産等の金額も記載することが望ましいというのが一つ。それから、証券取引法に基づく財務諸表(中間及び連結を含む。)においても、同様の注記を行うことが望ましいという、望ましい規定ではありますが、進めております。

10番目にあります販売用不動産等の保有目的変更への対応ということで、これは今回関係がないと思いますので、省略させていただきます。

11番目の経営者への確認も省略させていただきます。

適用につきましては、平成12年4月1日以後開始する事業年度に係る監査から適用するということになっております。

付録は、まず1が販売用不動産等の評価額の例示でありまして、今述べましたことを一覧表形式にし、備考欄に補足説明をしております。

次のページも対象資産別に評価額を示しております。次のページの(6)に中古ビルディングというのがありまして、a、b、cという建物の評価の算式がございますんですが、これは実は会員の不動産鑑定士あるいは不動産鑑定協会の方から知恵を授けていただきまして、それの考え方をここに記載しております。

2番目に、開発後販売する不動産について、ずっと一覧表形式でやっておりまして、最後のページの付録2が一般に公表されている地価の概要ということで、四つの種類のものにつきまして、その概要を記載しております。

以上でございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

冒頭でも伊藤委員から御指摘ありましたように、この監査上の取扱いは、販売用不動産の強制評価減の要否の判断に関するものでして、これから検討してまいります減損会計における不動産評価とは若干異なっておりますけれども、不動産の評価という面で共通性を持っておりますので御紹介いただきました。

それでは、ただいまの伊藤委員の御報告に関しまして、御意見、御質問ございましたら、御自由に出してください。

品川委員。

○品川委員

資料113ページになるんですか、販売見込額の算定についてですが、販売可能見込額を販売価格がない場合の見積もりの価格として、鑑定評価額と、一般に公表されている地価又は取引事例価格として、公示価格、基準価格、それと相続税評価額を一応入れているわけですが、ここに固定資産税評価額が入っていないわけですけれども、入っていない理由と、相続税評価額については通常公示価格の2割減ということが公にされているわけでありますが、その調整はするのかしないのか、その2点についてお伺いしたいと思います。

○辻山部会長

伊藤委員、お願いいたします。113ページ。

○伊藤委員

大変申し訳ありません。今ちょっと別件を見ておりまして、固定資産税評価額が、申し訳ありません、何に載っていないというお話ですか。

○品川委員

ここの例示の中に載っていないですね。

○伊藤委員

どちらの……。

○品川委員

113ページの……。

○伊藤委員

(1)の(イ)でしょうか。

○品川委員

マル3の(イ)のbの一般に公表されている地価又は取引事例価格として、ここに四つ例が入っていますね。この中に、固定資産税評価額をもとにした相続税評価額は入っていますけれども、固定資産税評価額それ自体はここに載っていないんですけれども、その載っていない理由と、相続税評価額については、これは公に公示価格の8割評価ということが言われているわけでありますが、その8割評価について斟酌するのかしないのか。

○伊藤委員

分かりました。私どもの評価としましては、固定資産税評価額そのものを土地の時価とするのは相当ではないと。固定資産税評価額をもとに倍率、税法上倍率がありますので、その倍率をかけて、時価相当額というか、相続税の評価額を出すということで、基本的には、固定資産税評価額を利用した評価ということで、特にそのものは利用しておりませんが、固定資産税評価額を利用していないというわけではありません。

それから、確かに一番最後のページにございますように、固定資産税評価額は、備考欄に書いております公示価格の70%程度、それから路線価の場合は公示価格の80%程度、前の二つがおおむね時価だと想定されておりますが、我々としては、基本的に時価と言う場合には70%ですから、30%戻すというのが時価だろうとは思いますんですが、ただ、販売用不動産という、土地という性質からしますと、会社が保守的に70%で評価しても、それはまたそれで合理性があるのかなということで、特段どちらでなければいけないという考えは持っておりません。

○辻山部会長

よろしいでしょうか。

そのほか、御意見、御質問ございますでしょうか。

太田委員、お願いします。

○太田委員

販売用不動産の強制評価減の要否の判断ということですので、棚卸資産である販売用不動産に原価法を選択している場合の強制評価減をこのようにやっていきましょうという指針であるかと思われますが、参考までに、販売用不動産について、棚卸資産ですので、低価法も採用することが可能というふうになっているかというふうに思いますが、そういうような例は少ないのかどうなのか、そういうことが分かりましたら教えていただきたいということが1点と、もう一つ、もし低価法を採用というようなことがあった場合には、時価等についてどのようなものを採用しているのが一般的なのか、もし何かアイデアがあればお教え願えないでしょうか。

○辻山部会長

伊藤委員、よろしいでしょうか。

○伊藤委員

審議の過程で、諸外国の場合は低価法を使っているということなんですが、日本では、議論した中では1社しかないんではないかという、そういうことになっていまして、残念ながら1社がどの基準を使っているかというのは、私ども承知しておりません。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。

そのほかございますでしょうか。

本日は、固定資産部会になりましてから第1回目の会合ということで、これからの議論に先立ちまして、何か御発言ございましたら、この段階で御自由に御発言いただきたいと思います。

特にございませんでしょうか。

太田委員。

○太田委員

ただいまの棚卸資産の会計基準との関係なんですけれども、検討の順番はいろいろこちらが、固定資産についての検討が先行する、その他いろいろあるかとは思いますが、やはり適用の順番としては、どうしても棚卸資産についての低価法の適用を強制するかどうかという議論というか、そちらの方が先行すべきなのではないかなというふうに個人的には考えております。

○辻山部会長

ありがとうございました。

冒頭申し上げましたように、論点整理におきましても、その他の事項というものが幾つか上がっておりまして、その中にもその点がございます。それから、先ほどJICPAの方から御指摘ありましたファイナンス・リースの問題等につきましても、一応その検討の今後の仕方につきまして、冒頭御説明しましたように、基本的には企画調整部会の方で基準化、もしくは実務指針にゆだねる、あるいは緊急に対応すべきものか、中長期的に検討すべきものかということを検討していただくということを現在考えておりますけれども、ということでよろしいでしょうか。

そのほかございませんでしょうか、御発言。よろしいでしょうか。

それでは、そろそろ予定の5分前でございますけれども、ぴったりというわけにはまいりませんけれども、本日の部会はこれで終了させていただきたいと思います。

なお、次回の当部会の日程でございますけれども、10月27日金曜日の午後3時半からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

次回は、先ほどもお話しましたように、固定資産の減損会計のうち、認識及び測定の問題につきまして、ヒアリング及び意見交換を予定しております。正式には改めて事務局より皆様に御案内をさせていただきたいと思います。

本日は、皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

これにて散会いたします。どうもありがとうございました。

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