平成13年3月22日
金融庁

企業会計審議会第5回固定資産部会議事録について

企業会計審議会第5回固定資産部会(平成13年2月23日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第5回固定資産部会議事録

日時:平成13年2月23日(金)午後3時00分~午後4時58分

場所:中央合同庁舎第4号館10階共用第一特別会議室

○辻山部会長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから第5回固定資産部会を開催させていただきます。本日は、皆様方お忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございました。

御案内のとおり、省庁再編に伴いまして、去る2月2日に開催されました当審議会の総会におきまして、固定資産部会が設置され、固定資産の会計処理について審議が続けられることになりました。

当部会のメンバーは、私を含めまして変更ございませんけれども、幹事の方々で新設された専門委員に就任された方々がおられます。詳細につきましては、お手元の固定資産部会名簿に記載されておりますので、ごらんいただきたいと思います。

さて、この部会は昨年秋以降、論点整理の項目に沿って、海外の動向等についてヒアリングを行うなど各論点の検討を進めてきたところでございますが、今後も減損会計の問題を引き続き検討してまいりたいと思います。本日は、特に減損の会計処理の問題等につきまして検討してまいりたいと思います。

皆様も新聞記事等で御案内のように、固定資産の減損会計につきましては、経済取引や企業活動に与える影響、実務的な準備体制などの観点から各方面の関心が高く、幅広いかつ十分な検討を求める意見が少なくないようでございます。今後もそのような意見を踏まえまして、実務的な面にも十分配慮しながら検討を進めてまいりたいと思っております。

なお、昨年夏に各界から論点整理に対するコメントをいただき、審議の参考としてきたところでございますが、このたび経済産業省から追加的にコメントが寄せられました。早速ですが、お手元の資料に基づきまして、事務局からこの点御紹介いただきたいと思います。

では、事務局、よろしくお願いいたします。

○平松課長補佐

それでは、御説明いたします。

資料1でございます。経済産業省から金融庁あて、審議会事務局あてで提出されたものでございます。

「経済産業省として、企業会計審議会固定資産部会において審議中の固定資産の会計処理のあり方について、別添の通り意見書を提出します。企業会計審議会におかれては、固定資産の会計処理に関する会計基準の策定に際し、ここに示した意見を十分に反映していただくようにお願いいたします」。

という前書きでございます。

1枚めくっていただきたいと思います。

「減損会計について

1.減損会計は、事業に関して、投資の対象となった固定資産(又は固定資産グループ、以下同じ。)について、当該固定資産から生じるキャッシュフローをもっても将来にわたり投資回収が見込まれなくなったような場合に一般に適用されるものである。減損会計を導入するためには、我が国企業の事業活動、経済取引の実態を踏まえ、制度の本来の目的に合致した手法を確立することが必要である。

2.この観点からは、特に以下の論点が重要であり、関係者の意見も多岐にわたっていることから、企業会計審議会におかれては、まず、これらについて十分に議論をつくし、方針を明確にすることが重要である。その上で、キャッシュフローの算定方法やこれに基づく回収可能価額の評価体制が確立され、かつ、円滑なかたちでの制度の適用が可能となるべく、十分な時間的余裕が存在するように導入時期や導入方法の決定が行われるべきであると考える。

3.具体的な会計処理は、固定資産の帳簿価額がその回収可能価額を超えている場合に減損を財務諸表に認識するものであるが、回収可能価額は固定資産からの将来予想されるキャッシュフロー等に基づき計算されるものであり、特に以下のような項目について明確にすることが必要である。

(1)減損の認識の契機(どの時点で減損を認識するか)

→減損の認識と測定を異なる基準で行い、比較的簡易な手法で減損を認識すべきか否か判定し、認識されたものについて詳細な測定を行う考えもありうる。米国では、割引前の予想されるキャッシュフローの総和と簿価とを比較することにより判定を行っている。減損が生じているか否かの評価を多くの資産について頻繁に行うことは大きな事務的コストを生じさせるものであり、制度運用の効率性の観点も含めて減損認識の契機を明確にすることが必要。」

次のページでございます。

「(2)投資の回収可能価額の評価(収益還元法をいかに確立するか)

→固定資産の回収可能価額の評価は、当該資産を使用する事業において、その固定資産の生み出す固有のキャッシュフローをもとに測定されるべきことが基本(ただし、キャッシュフローをもとに計算された金額より市場での時価の方が高い場合には、その差額を減損計算において考慮するのが適当((4)における資産グループでの評価でも同様))。一定の客観性を確保しながらも、経営者が事業に対して有する意図や見通しが明確に反映されるかたちで、将来生み出されるキャッシュフローやこれに基づく回収可能価額の算定方法を確立することが必要。

(3)用途別の区分(事業用及び投資用の会計基準を分けるべきか否か)

→米国はこれらについて会計基準を区分しておらず、国際会計基準においても、投資用不動産について事業用資産と同様に、原価基準を認めている。これら国際的動向を踏まえつつ、会社の事業形態によっては事業用と投資用の資産を明確に区分できない場合も想定できることから、異なる会計基準を適用する合理的理由や必要性について検討が必要。

(4)減損テストを行う際の資産の単位(どのような資産単位で行うか)

→固定資産は、企業の行う事業の中で、多くの場合、固定資産グループとしてキャッシュフローを生み出しており、このため、回収可能価額の評価を適切に行うためには、企業の実態に沿ったかたちで資産のグルーピングを行うための手法を確立する事が必要。この場合、資産のグループ内の個々の資産の生み出すそれぞれのキャッシュフローにより、個別に評価を行った場合に生じうる未実現損失や未実現利益は、全体として相殺されることが適切である(FASB公開草案付属書)。

特に、企業は事業の拡大に当たって、リスクウエートの異なる幅広い投資を行うことが予想され、資産のグルーピングは企業戦略そのものに関わる問題であり、基本的には企業の経営方針が反映されるべきものであることに留意すべき。」

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。ただいま御報告いただきましたコメントにつきましては、従来の各界からのコメントに加えまして、今後の審議の参考とさせていだきたいと思います。

ただいま指摘された項目等につきましては、当部会においてこれまでも主要な論点として審議を進めてきたところでございます。今後もこの点について十分に審議を尽くしていきたいと考えております。

なお、席上に昨年夏の論点整理に対するコメントを参考として改めて配付させていただいております。参考資料、別とじになっているものでございますが、こちらが昨年寄せられたものでございます。

また、先般、与党3党で取りまとめられました証券市場等活性化対策中間報告におきまして、固定資産の会計基準に言及されておりますので、それも御参考としてお手元に配付させていただいております。

それでは、本日の議事に入りたいと思います。

前回は資産のグルーピングの問題、いわゆる共用資産や全社資産の取り扱いをどうするか、のれんの減損をどう考えるかという問題についてヒアリング及び意見交換を行いました。

本日は、お手元の議事のペーパーのとおりでございますけれども、まず荒木委員から減損の兆候について御報告いただき、意見交換をしたいと思います。

次に、減損会計の対象資産、繰延資産やソフトウェアなどの取り扱いについて、荒木委員及び持永勇一参考人から御報告をいただき、意見交換をしたいと思います。持永参考人は、研究開発費部会に幹事として所属され、日本公認会計士協会における実務指針の策定にも関与されました。

さらに、減損損失の戻し入れ、減損に関する会計処理、表示・注記につきまして太田委員から最後に御報告をいただき、意見交換を行いたいと考えております。

それでは、まず荒木委員から減損の兆候につきまして御報告をいただき、その後、意見交換を行いたいと思います。荒木委員、よろしくお願いいたします。

○荒木委員

それでは、減損の兆候について御報告させていただきます。お手元の資料2に従って御報告いたします。

まず、論点整理で減損の兆候についてどのように書かれていたかということですが、減損の兆候が存在する資産に限り減損の有無を調査することが妥当かどうか、どのような兆候があるときに減損の有無を調査しなければならないのか、具体的に休止中の資産、当初計画されていたより以前に処分される予定の固定資産について、減損の兆候の例示の中に含めるかどうかということが記載されておりました。

そこで、まず減損の兆候という考え方を減損会計に取り入れている意味を考えてみますと、まず一つには、減損会計の対象資産というのは非常に幅広いものですので、そのすべてについて減損に関する調査を詳しく行うということは、実務上非常に困難である、したがって、減損の兆候がある資産に限って詳しい調査を行うという極めて実務的な要請から出てきた規定ではないかと思われます。

兆候という概念については、ほかの会計基準ではないのですけれども、実務上考えてみますと、例えば棚卸資産の評価減を詳しく検討するというときに、棚卸資産すべてを満遍なく詳しく調べるかといいますと、そうではなくて、例えば製造中止になっているであるとか、売り上げが計画に達していない、そういう簿価を回収できないというような兆候がある資産について重点的に調べるというようなことは実務ではよくあることだと思いますが、そのような実務上の工夫といいますか、知恵といいますか、そういうものを基準の中に織り込んだものではないかと思われます。

したがって、あくまで回収可能性の調査を行うかどうかという基準ですので、調査の結果、減損を認識するかどうかというのは減損の認識基準によって決まる、ということになると思います。

次に、兆候について、これは例示なのか、あるいは限定列挙したものなのかということですが、固定資産の種類、それから業種、企業の経営環境などによって減損の兆候というのがさまざまであると考えられますので、基準としては兆候をすべて網羅的に掲げるということは非常に困難ではないかと思われます。したがって、兆候を例示するにとどめるのが考えられる方法ではないかと思われます。

次に、兆候としてどのようなものが例えば海外の基準で挙げられているかということですが、まず資産価格の著しい下落というのが一つあります。これはあくまで兆候の基準ですので、例えば時価が下がったからすぐ減損を認識するということではなくて、時価が下がっているということはその資産の収益性が下がっているという兆候でもありますので、そういう兆候があった場合に減損の調査を行って、認識基準に該当するかどうかということを調べる、その認識基準に該当した場合には減損を認識するという流れになると思います。

それから、資産の物理的状態や使用範囲・方法の著しい変化、これを具体的に言いますと、事業の廃止であるとかリストラ、あるいは論点整理に出てきましたような休止中である、あるいは当初計画されていたより以前に処分されるといった資産については兆候があるということになります。

3番目としましては、経営環境の著しい悪化、それから4番目が著しく過大な取得原価、これは例えば固定資産を取得する際の予算を非常にオーバーして原価が発生してしまったというケースが考えられます。

最後に、営業損益やキャッシュ・フローの悪化ということで、具体的には、こういったものの損失が単年度だけではなくて、過年度から引き続いて継続している、あるいは今年度赤字になっていて、将来も損失が生じるというような場合、それから予算より実績が著しく悪化しているような場合、予算自体が著しく悪化しているような場合、このようなものが海外の基準では兆候の例示として挙がっているということです。

2枚目、3枚目につきましては、海外の基準で減損の兆候がどのように決められているかということをまとめたものですが、これについては、以前、第一部会の中でそれぞれの基準について御報告があったと思いますので、省略させていただきます。

兆候については以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。それでは、ただいまの荒木委員の報告につきまして意見交換をしたいと思います。減損の兆候につきまして、ただいまの報告内容、その他でも結構でございますので、御意見等ございましたらお願いしたいと思います。

それでは、この点につきまして、特に逆瀬委員の方からコメントがございましたらお願いいたします。

○逆瀬委員

今の荒木さんのお話で、兆候というのはもともと減損の会計の中でアメリカかどこか知りませんが、各国が採用している極めて異例の手続、兆候を見る、チェックするというふうなことだったんですけれども、このときに、今ナンバー3項で、兆候はさまざまである、企業の経営環境にもよる、業種、種類にもよるということでいろいろありますよということだったんですが、以前にも確か申し上げたと思うんですけれども、私どもの関心は、まず兆候を見るときに、当該会社の個別の事業として見るか、実際には事業がグループといいますか、企業集団で行われている場合に、それを連結の観点から金の回り方を見るのかどうかという議論ですね、ここのところをどういうふうに整理したらいいのか、まず第1点御確認させていただきたいと思います。

○辻山部会長

1点ずつやりますか。それとも、まとめて後で質疑した方がよろしいでしょうか。

○逆瀬委員

まず、今の話が一番基礎になりますから、よろしければそれで。

○辻山部会長

荒木委員、今のグルーピングの問題等について御質問がございましたけれども、いかがでしょうか。

○荒木委員

今の御質問については、どちらかというと、兆候というよりはグルーピングの問題かな、というふうに感じまして、ただ、兆候といっても、減損の兆候を見るために何か管理会計上の仕組みを新たに設けるというのではなくて、恐らく企業ではこういう資産の運用状況、稼働状況というものをモニタリングしているはずですので、そういった管理会計上の区分で兆候が出ているか、出ていないかということを把握するのではないかと思われます。

○逆瀬委員

ちょっと質問の仕方が悪かったと思うんですが、例えば当社の場合だったら半導体の製造業をやっております。親会社の一事業部門もその任に当たっていますけれども、その事業部の直轄の100%子会社も同じ事業をやっています。一つの製品を工程を分担してやっています。半導体でいえば、前と後と大きく分けますが、前工程が難しいから親がやります。後工程は子会社がやります。製品のグルーピングを見ると、例えば1メガのDRAMの製造をそういうふうにやっておりますというときに、1メガのDRAMというのは陳腐化が進んで、値段が急落するという事態がある、生産計画を見直す必要がある、こういうふうになると。

こういうときに、子会社、親会社、別個に見るのか、ちょっと異例の話ですけれども、グループで金が回っているんだから、その全体で見て判定してよろしいのかどうかということ、判定すべきなんだろうと思うんですけれども、そのときに個別決算はこうで、連結上はこうでと、こういう使い分けをするのかということなんです。同じ事業をやっていて、人格が違う場合に個別と連結で評価の見方を変えるのか、変えないのか。

私どもはグループで、連結ベースで事業が行われているという場合には、それを前提に兆候の話も、グルーピングの話も含めて見るべきなんだろうなと思っているわけなんですが、そうではないんだと。あくまでも個別は個別で見ると、こういう観点なのかどうかなんです。そこは議論の前提ではっきりしておいた方がわかりやすいなということなんですが。

○辻山部会長

わかりました。ただいまの件、いかがでしょうか。

○荒木委員

ただいまの逆瀬委員のお話は、結局連結決算と個別決算の関係ということだと思うんですが、そうしますと、今おっしゃられたような半導体の製造ラインがたまたま親会社と子会社で分かれているというようなケースでは、親会社の連結ベースでは一つのグルーピングと見ていいのかなという気はしますが、ただ、子会社は子会社で単独決算というのがありまして、場合によっては100%子会社でないとすると、親会社以外の株主もいる、あるいは債権者もいるということですので、そうなると、子会社自体で子会社が設備投資したものについて、やはり子会社を一つの単位として減損を見るべきではないかというふうに考えられます。

○辻山部会長

この点、逆瀬委員のただいまの御発言は御意見という形で承っておいてよろしいでしょうか。先ほどの連結、同一事業であれば、あくまでもできるだけ大きくその範囲をとらえるべきだという、そういう御意見というふうに伺ってよろしいでしょうか。

○逆瀬委員

実態に即してとらえるべきだと申し上げている。意見のつもりではありません。今の荒木さんのお話だと、子会社にたまたま外部株主がいればというお話を持ってこられましたけれども、いようがいまいが実態としてどうなんだという議論をまず減損の、特に兆候を見るときに見ないと、見誤るのではないかと。例えば先ほどの例だと、後工程をやっている個別の子会社のレベルでは、お金が回らなくなったから減損の兆候が見えたというふうになって、連結で見るとその分親会社が吸い上げているという言い方は悪いかもわかりませんけれども、全体としては回っているではないかと、こういうときに、個別で減損は認識すべきだけれども、連結になってくると、同じ1メガDRAMの製品でうまく事業が回っているから、全然何の問題もないですよと。ちょっと今の例が悪いんですけれども、1メガというのは一つの製品のサイクルですから、親も悪ければ子も悪いとなるんですけれども、グルーピングの問題と絡んで、兆候の見方もそういうふうに連結のアイデアを入れていかないことには、実態をうまく反映できないケースもあるのではないかという意味で、個別は個別というふうに割り切って、それが重なって連結だというのは、この事業を共同でやっている場合にはちょっと難しいのではないかということなんです。

○辻山部会長

今の質問ですけれども、その場合に連結ベースの減損のお話なんでしょうか。それとも個別についても、そういった場合は実態に即してという、そういう御趣旨ですか。

○逆瀬委員

個別も含めて、そういうふうな判定をする道が開けないかということなんです。

○辻山部会長

どうぞ、小宮山委員。

○小宮山委員

今の逆瀬委員の質問ですが、ちょっと意味を確認したいんですけれども、個別と連結というふうにとらえられているのか、先ほど経済産業省からの意見書にもありましたけれども、ある程度企業の経営者の判断を尊重してほしいという話があったわけですけれども、会社によっては、連結経営の時代といっても、必ずしも連結ベースでの管理がされているわけではないと思うんです。ただ、多くの企業がそういう方向に走っていることは確かだろうと思いますので、連結ベースで例えばキャッシュ・フローを管理するとか、採算を管理するとか、そういうふうにやられている会社の場合には、当然連結ベースで判断していいんですねと。単体でしかやれないような会社というのは、連結ベースで判断しろというのは無理なので、個別ベースである程度減損を見ざるを得ないと、そういうふうな考え方が認められるんですかという質問というふうに理解してよろしいんですか。

○逆瀬委員

そういうふうな考え方でやらないとだめではないかと申し上げています。

○辻山部会長

そのほか、ございますでしょうか。

太田委員、どうぞ。

○太田委員

御参考程度にということかと思うんですけれども、多分会社を分けられて資産を持たれているので、本当に原則に立ち戻ってグルーピングを考えた場合には、別と考えてもいい状況ではないのかなという気が一ついたします。

それと、たしかIASの中に内部振替価格をどう考えるかという点について何か説明があったように思いますが、IASの中では内部振替価格が一応公正だというふうに前提を置いて、それが市場価格と著しく違う場合には、そこは調整して考えるようにというような指針になっていたかと思いますので、その点を考えますと、内部価格、取引価格が公正であるという前提であれば、個別で減損を検討して認識したものがそのまま連結ベースも同じ数字という可能性があるのではないかなというふうに思います。

○辻山部会長

それでは、ただいまの点は引き続き検討することとし、次の点どうぞ、逆瀬委員よろしくお願いいたします。

○逆瀬委員

それでは先ほどの話、連結云々の話は一たん置きまして、荒木さんのお話の中に、兆候の例示として予算というのがあったんですけれども、予算といったようなものは、通常は目標値が入ったりして、企業が勝手に設定するものですから、予算に対してうまく成績が上がっていないとか、予算より上へいっているというのも、監査の過程で、あるいは会計の事務の過程で、それは重要な要素として一つの基準に取り込んでよろしいものなんでしょうか。そもそも論ですけれども。

○荒木委員

これはあくまで減損の兆候ということですので、予算から下回っているからすぐに減損を認識しなくてはいけないということではありませんので、また予算から下回っているときが兆候というのではなくて、「著しく」というのが入っています。あくまで兆候ですので、その後、減損を詳しく調査して認識するかどうかということを決めるということだと思います。

○逆瀬委員

わかりましたけれども、それだったら損失が継続しているとか、キャッシュ・フローの状態がよくないとかということでも同じことではないかと思うんですが、予算と対比することに格別に意味が見出せるというふうになるのかどうかなんですが、そこのところをもう一度お願いします。

○荒木委員

これはIASの方からとったんですけれども、例えば当然設備投資をするときにはこれだけの売り上げがあって、原価がこれだけ生じてという予算を立てた上で設備投資をされていると思うんですが、実績がそれより著しく下回っているということになりますと、設備投資の目的が果たされていないという兆候になるんではないかと、そのような意味があるのだと思われます。

○辻山部会長

逆瀬委員、ほかにございますでしょうか。

○逆瀬委員

今、荒木さんのお話だと、日本でもこういったアイテムを、予算というようなものを一つの基準にした兆候のチェックをルールに入れた方がいいのではないかと、こういうようなお話であったわけでしょうか。それとも、単なる参考でこういうふうに、IASはこうやっていますよというような話なんでしょうか。

○荒木委員

一応ここに資料として書きましたのは、海外の基準ではこういうものが共通して挙げられているということで、参考までに書いたものです。

○逆瀬委員

わかりました。以上です。

○辻山部会長

それでは、逆瀬委員のほかに、減損の兆候につきまして、荒木委員の報告について、コメントがございましたらいただきたいと思います。

都委員、どうぞ。

○都委員

やはり兆候の例示のところなんですが、これは実際に適用するとなると、余り抽象的だとかなり兆候をつかむ範囲が広くなって、例えば監査においても、監査される方も相当程度幅広く見なくてはいけないし、企業側も相当程度対応を考えなくてはいけないということで、この兆候は今から議論をしてつくっていくにしろ、本当に限定的というか、具体的な例示に止めていただきたいと思います。

例えば、この経営環境の著しい悪化というようなことでありますと、恐らく日本の今の企業の多くは極めて著しい経済環境の悪化に見舞われておりまして、それに対して企業としてどのように対応しようかというようなことでやっていって、何とかリストラをやりつつ、それなりの収益を上げていっているような状況がございますので、そういう意味では、より具体的なものを日本に導入するときは適用していただければと思います。

もう一つ疑問というんですか、著しく過大な取得原価というのは、著しい下落というならわかるんですが、著しく過大な取得原価というのは、よほど不合理な購買をしたとか、そういったこと以外考えられないような気がするんですけれども、これはもう少し具体的な事例として何かあったら教えていただきたいんですが。

○荒木委員

過大な取得原価というのは私の方のまとめの表現でして、例えば、アメリカの基準ですと、当初予想されていた金額を著しく超えて取得または建設のための原価が累積するというような表現になっています。ですから、固定資産の場合は、いわゆる市場価格というのがないケースが多いと思いますので、そうなりますと、設備投資のとき、当初の予算と比べて何らかの理由によって原価が著しく多くなってしまったというようなケースだと思います。

○辻山部会長

「資産価格の著しい下落」と「著しく過大な取得原価」というのはそういう意味で異なるものだということで、よろしいでしょうか。

そのほかございませんでしょうか。

品川委員。

○品川委員

遅れてきて申しわけなかったんですが、今の御質問のことなんですが、今の御説明の場合に、予算よりも実際の取得価格が多くなるというケースは、これはオイルショックとか、あるいは地権者に対するごね得があったとか、色々な問題があって、実際はそれこそが取得価格であって、結果的に取得価格が高くなったからといって兆候に即入れるというのはいささか解せないところがあるんですが、その辺はいかがですか。

○荒木委員

もちろん取得原価の決め方としては、そういう要因があって高くなったということであれば、それが正しい取得原価だと思われますが、ここで言っているのは減損の兆候ですので、当初設備投資の計画を組んだときの予算よりも大きな取得原価になってしまった、それはやむを得ない事情があってそうなるケースもあると思うんですが、そうなった場合には、その投資額について回収できないという可能性が高いのではないかということで兆候の例示に入っているのだと思います。

○辻山部会長

よろしいですか。そのほか、特にございますでしょうか。

ございませんようでしたら、次に、荒木委員から減損会計の対象資産について御報告をいただきたいと思います。

○荒木委員

それでは、減損会計の対象資産ということで、次の資料に従って御説明させていただきます。

まず、対象資産について、論点整理では有形固定資産、無形固定資産、それから投資その他の資産、つまり固定資産全般が対象であるということで、ただし、金融商品会計の対象になっている金融資産、税効果会計の対象になっている繰延税金資産、退職給付会計の対象になっている前払年金費用等を除くというふうになっております。

基本的には、対象資産に関してはこれでよいというふうに考えられますが、ただ、第一部会のときの議論あるいは論点整理へのコメントの中で扱いをはっきりさせた方がいいのではないかとされたもの、それからそれに追加していくつかの検討を要する資産について御報告したいと思います。

まず、第1に繰延資産ですが、これを個々に見ていきますと、まず社債発行差金については金融商品の会計基準の対象になっておりまして、これについては、減損会計にはなじまないのではないかと思います。

新株発行費、社債発行費、これも広い意味の財務費用と考えられますので、減損会計の対象としては適当ではないのではないか、また、試験研究費については、これは会計基準ができましたので、繰延資産に計上されなくなっています。

創立費、開業準備費、開発費については、実務上計上されている例が非常に少なく、したがって、対象にする必要性は薄いのではないかと思われます。これらについては、減損という局面だけではなくて、資産計上するかどうかというところも含めた体系的な検討が望ましいのではないかと思われます。

次に、建設仮勘定ですが、これも基本的には対象資産に含めるべきだと思われます。具体的にどういうふうに適用するかということですが、完成までに要する資金を将来キャッシュ・フローのマイナスというふうに考えて回収可能額を見積もるということになるのではないかと思われます。

非常にまれなケースでは、完成までに要する資金が非常に大きく、将来キャッシュ・フローがマイナスになるケースもあると思われます。例えば固定資産の購入・建設に関する契約を締結し、その契約を何らかの理由で解約できない、あるいは対外的に投資を行うことを公約していて、キャッシュ・フローがマイナスでも投資を中止できないというようなケースが考えられるわけですが、これについては、基本的には引当金の会計基準で検討すべき問題ではないかと思われます。実務上はまれなケースだと考えられますので、減損会計の基準の中では特に触れなくてもよいのではないかと思われます。

3番目のソフトウェアですが、これについては、研究開発費等に係る会計基準、それからこの基準を受けて会計士協会の方でつくられました実務指針の中で、ソフトウェアの減価償却方法について規定しております。会計基準あるいは実務指針では、このソフトウェアについて自社利用のもの、それから市場販売目的のものに分けておりまして、自社利用のソフトウェアについては、使用することによってキャッシュ・フロー獲得に貢献するという点では、特に他の無形固定資産と扱いを変える必要はないのではないかと思われます。

ただ、市場販売目的のソフトウェアについては、自社利用と異なりまして、製品の販売収益に直接的に貢献するという特徴があるのではないかと思われます。したがって、無形固定資産という扱いにはなっていますが、非常に棚卸資産に近い性格を持つのではないかと思われます。

そういうこともありまして、会計士協会の実務指針では、市場販売目的のソフトウェアについて、帳簿価額の上限として将来の販売収益を超えないというような減損会計に似たような基準もありますので、この扱いについては少し検討する必要があるのではないかと思われます。

特に、減損会計の対象ということになりますと、減損の兆候があるものだけ見る、あるいはグルーピングで非常に大きなグルーピングでやるということが考えられますので、そうなりますと、従来実務指針などで決まっている方法よりも減損の認識が甘くなる可能性が出てくるのではないかということがあります。

次に、4番目としまして子会社株式、関連会社株式であります。これについては、IASでは減損会計の対象となっておりますが、我が国では金融商品に係る会計基準で時価が著しく下落した場合の処理が定められておりますので、特に減損会計の対象とする必要はないと考えられます。

ただし、連結財務諸表原則注解17に持分法を適用する場合の投資差額について、連結調整勘定と同様に処理するということを定めておりますので、持分法の投資差額についても、のれんの減損について減損会計で決めるというこにとなりますと、同様の方向で会計処理する必要が出てくるということになります。

ただ、これは個人的な意見ですけれども、のれんの減損については、グルーピングによってのれんを分割するということがあり得るわけですが、持分法の投資差額については、どちらかというと持分法適用会社全体に対する投資評価でやってもいいのではないかというふうに考えられます。

5番目ですが、賃貸不動産の預かり保証金など。賃貸不動産の預り保証金やゴルフ場事業における預り保証金については、固定資産と密接に結びついている負債ですので、資産グループに含めて帳簿価額を減らして、そのかわり回収可能額からも将来の支出分を減らすという扱いも考えられますが、このようなやり方ですと非常に複雑になりますので、また、不動産評価の実務では保証金の運用益というのを収益に加えて評価しているようですので、そういう方法を用いれば、特に負債について対象資産に含める必要がないと思います。

前払費用ですが、長期前払費用を対象資産にするということになりますと、1年以内のものもやはり含める必要があるのではないかと考えられます。

7番目ですが、のれんについては、当然減損の基準を設ける必要があるわけですが、基準化する方法としてはIAS、米国基準、それから米国基準の新しい公開草案では扱いが違ってくるということがありますので、その辺も検討する必要があるのではないかと思われます。

次に、3ページ目ですけれども、賃貸借処理しているリース資産について、論点整理では減損会計と同様な効果を持つ会計処理を検討すべきであるというふうにされております。これについては、なぜこういう処理を検討しなければいけないかということなんですが、こういうファイナンス・リースについては売買処理が原則的な処理となっておりますので、そのような原則的処理との均衡を考える必要がある、それから、減損会計適用を回避するためにリースを利用すること、これを避ける意味からもそういう処理が必要ではないかと考えられます。

具体的な会計処理としては引当金の処理が考えられるわけですが、資料に書きましたように企業会計原則あるいは国際会計基準でもそのような処理が認められるのではないかと思われます。

4番目に、具体的な引当金の処理の手順としましては、まずリース賃借資産を含む資産グループ全体の兆候を見る。それから、資産グループに含まれるリース賃借資産について、未経過リース料の割引現在価値、これがリース資産の簿価に当たるものですが、それを算定する。3番目としまして、リース賃借資産を含む資産グループの回収可能額を見る。その際には、当然ですが支払リース料はキャッシュ・フローの支出には含めないということになります。4番目としまして、回収可能価額と帳簿価額の比較によって減損損失を算定する。5番目としまして、減損損失をオンバランスされている資産とリース賃借資産に配分する。6番目としまして、そのように計算された減損損失に基づいて引当金を計上して、7番目ですが、翌期以降にその引当金を残存リース期間で均等に取り崩していくという方法が考えられると思われます。

次に、このような引当金処理の実行可能性ということなんですが、既にリースに関しては注記がなされておりますので、重要なリース契約についてはデータがそろっているのではないかと思われます。

また、対象とするリース資産としては、余り重要性のないものまで含める必要はないのではないかと。含めなくても支払リース料が回収可能額のマイナスの要素になりますので、余り大きな影響を与えないのではないかと思われます。

このような処理とは別に、完全に遊休状態にあって、再使用する見込みのないものについては、今の企業会計原則注解の基準に基づいても引当処理をすべきではないかと思われます。

対象資産については以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。ただいまの荒木委員の対象資産に関する御報告に関連しまして、特に、ソフトウェアや無形固定資産について、持永参考人から御報告を続けていただきたいと思います。では、持永参考人、よろしくお願いいたします。

○持永参考人

皆さんこんにちは。持永でございます。座らせていただきます。

ただいまの荒木委員の御報告に関連いたしまして、補完する形で、私の方から御報告させていただきたいと思います。

平成10年に企業会計審議会におきまして、研究開発等の会計基準が設定されております。この研究開発費等の「等」というのがソフトウェアでございまして、今の荒木委員の御報告の1枚目に関するところで、私の方で補完させていただきたいと思います。

まず、このソフトウェアですけれども、実はなかなかとらえどころが難しいものでございました。当時の北村部会長、随分と御苦労なさっておられました。その一つは、例えば技術革新が非常に激しくて、皆さん常識的にお考えのように高性能・低価格、要はちょっと待っておれば性能がいい、しかも価格が下がっていく。また、最近の特徴ですと、ネットワークへの対応、一つの大型電算機にというだけではなくて、ネットワークに対応するようなソフトウェアというのも強く出ております。

それから、ソフトウェアの購入のされ方、ここにも特徴がございまして、通常の製品、例えば占有権とか所有権というのがございませんで、使用許諾という形でコンピュータソフトウェアを購入している。そしてまた、物の完成のされ方ですけれども、通常の商業製作品とは違いまして、既にソフトウェア自体は完成している。後は売るときにそれをコピーするだけであるといったものがソフトウェアの特徴でございます。

また、作られ方、売られ方、使われ方、これもさらに進化しておりまして、ソフトウェアのつくられ方、これは流れ作業的につくられていることが多かったわけですけれども、今ですとトライ・アンド・エラーで、作るところまで作ってしまえというような作られ方もしておりますし、売られ方も従来のフロッピーディスクからCD-ROM、さらには今ネットワークでダウンロードという形で売られ方も変わってきています。

さらに使われ方ですけれども、従来はコンピュータソフトウェアを購入して、そのソフトウェアに御自身のハードにデータを入力してという形が多かったわけですけれども、今はネット上で入力して、そこで結果を得られるというふうな形でさらに進化が進んでいると、そういう状況でございます。

まず、企業会計審議会で設定されました研究開発等に係る会計基準の御説明、それから実務指針の内容の御説明をいたします。

1ページにございますように、会計基準の四5で見込販売数量等に基づく償却方法その他合理的な方法により償却しなければならない。ただ、ここで実は条件がついておりまして、この償却額というのは残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならないという厳しい条件がついております。

さらに、注解注5、毎期見込販売数量等の見直しを行うことを求めております。その見直しの結果、著しい評価損等が出れば、それは費用または損失として処理しなさいということが規定されております。

実務指針は、それを受けまして、(2)マル1になりますが、まず市場販売目的のソフトウェアは、ソフトウェアの性格に応じて合理的な償却方法を採用しなさい。例示といたしまして、見込販売数量ですとか、見込販売収益というのを提示しております。

そして、償却下限、見込販売数量(又は見込販売収益)に基づく償却額と均等配分額のいずれか大きい額を計上しなさいと。ただ、実務指針に書き込みましたのは、ソフトウェア業界等のアンケートを踏まえまして、原則として3年以内という縛りを入れております。

次に、cの償却計算の修正でございます。通常の見積誤差、例えば販売件数を1万本と見積もりました。ただ、これの販売を続けるに際して毎期見直していくわけですが、若干販売数量は減るのではないかといった場合には翌期以降、そのまま見直し後の数量で補正していけばいいと。

これに対しまして、(b)の著しい見込差異があった場合、ある意味では見込販売数量がとんでもなく食い違って、とてもそんなには売れませんといったものについては、評価損を一時の費用として処理しなさいというふうに入れております。

そして、(c)が先ほど荒木委員の方から御報告があったことになるわけですけれども、未償却残高が翌期以降の見込販売収益の額を上回った場合、この超過額というのを一時の費用または損失として処理しなさいということを求めております。その意味では、非常に厳しいルールがもう既にできているということでございます。

資料4-2の方に、御参考までに図を用いて御説明しております。

まず1ページでございますが、例えば見込販売数量、全体で1万本、販売可能期間は3年と見込みました。この場合に、1年目4,000本売れましたといった場合は、先ほどの販売可能有効期間の均等償却以上の本数が売れておりますので、4,000本の原価を払い出していただければいいと。

これに対して、(2)の方になりますが、2,000本しか売れませんでしたといった場合には、均等配分本数以上ということで3,300本の償却をして下さいと、これがそもそもの考え方になります。

(ご参考)の2ページになりますが、(1)で当初の見込みが若干変動いたしました。1年度4,500本売れまして、残り5,500本あるんですが、どうも200本余りは売れそうにありませんといった場合には、この5,300本を分母にしてその後の償却をしていく、ということは、翌期以降で自動的に調整されるという考え方をとっております。

これに対して、3ページになりますが、1年目4,500本売れたのは変わりません、ただ、どうもライバルメーカーが非常にいい性能の安い製品を出してきました。ということは、5,500本はとても売れません、よくて2,500本しか売れませんといった場合には、3,000本を見積誤差であるとして、一時の費用または損失として処理しなさいということを求めております。

この場合の償却というのは、あくまでもこの2,500本を分母にして翌期以降の償却がされるということにしております。

4ページになりますが、将来の見込販売収益ということで、ソフトウェアを販売本数に基づいて払い出してまいりました。帳簿価額が300万として残っているわけですが、翌期以降の販売収益を予測してみますと240万しかございませんといった場合には、帳簿価額が将来の見込販売収益を超えるということで、この差額を一時の費用または損失として処理しなさいという非常に厳しい規定になっているということでございます。

こちらの図は、実務とは若干事例的には食い違うかもしれませんが、御説明のために簡易な表をつけておきました。

資料4-1に戻りまして、2ページ目、自社利用のソフトウェアでございます。これも審議会の基準を受けまして、自社利用のソフトウェア、合理的と考えられる償却方法を採用しなさい。一般的には、定額法が合理的ではないか。

さらに、bのところですけれども、これも実務界のアンケート等を踏まえまして、5年以内が妥当ではないかという目途を設定しております。

さらに、cになりますが、利用可能期間といたしまして、毎期見直しを行いなさい。さらに著しく価値が下落すれば、臨時償却的な処理をしなさいということまで求めております。

以上まとめますと、2にございますように、この会計基準、それから実務指針の考え方ですが、減価償却方法及び償却計算基礎データの見直しについて規定しております。ただ、市場販売目的のソフトウェアにつきましては、ソフトウェアの特質を考慮いたしまして、見込販売収益まで簿価を切り下げる処理を定めております。これは一般的な業務ソフトウェアといいますよりも、ゲームのソフトウェア等非常に値落ちが激しいものがございますので、そういったものが特に念頭に置かれておりました。

これに対しまして、海外におけるソフトウェアの会計処理と減損を御説明したいと思います。

まず、アメリカでございますが、市場販売目的のソフトウェア、FAS86、これは1985年ですから、もう15年以上前に設定されております。ただ、それとb、自社利用ソフトウェアを見比べていただきたいんですが、FASBが販売目的だけを規定しておりまして、自社利用のソフトウェアについては規定しておりません。SOP、Statement of Positionといいますのは、アメリカの公認会計士協会が作成しております。ですから、このあたりには会計基準設定主体としてのある意味では悩みも現われていると思います。

まずFAS86、市場販売目的のソフトウェアでございますが、製品ごとの償却、プロダクト・バイ・プロダクト、ですから、ある意味では、キャッシュ・フロー生成単位という話をすれば、先ほど荒木委員の御報告にありましたように非常に細かい単位で見ております。

さらに、(b)ですけれども、見込販売収益に基づく方法、もしくは見積残存経済年数による定額法による償却のうち、いずれか大きい金額でございます。

さらに、毎期末正味実現可能価額によるテストを実施しなさいということを求めております。

自社利用ソフトウェアでございますが、これについては日本の規定と変わりません。一定の条件を満たせば資産計上し、適切に償却計算しなさいということにしております。

ただ、FAS121号では、既に存在しているFAS86の規定は適用対象外としております。同様に、ソフトウェアだけではございませんで、レコードですとか映画フィルム等、既に存在しているFASの規定をFAS121で除外しております。

IASになりますが、IASはどちらかというと非常に大きいカテゴリーでざくっと切っているというのが実態でございます。まず、ソフトウェアはIAS38「無形資産」には入ります。ただ、これも非常に大きい取り上げ方をしております。さらに、減損についてはIAS36、一般論でやりなさいということになっております。

最後になりますが、のれんとソフトウェアを除く無形固定資産をご覧になっていただきたいんですが、(ご参考)の6ページでございます。私ども日本会計士協会の「決算開示トレンド」という本がございまして、上場会社500社の事例を分析した資料がございます。無形固定資産を見ていただきますと、網かけしておりますように特許権、借地権、商標権、電話加入権、施設利用権、こういったものが非常に多くの場合で計上されているということでございます。

その償却、7ページになりますが、定額法が採用されている会社が多いというような実態でございます。

7ページの第2パラグラフになりますが、この定額法による償却計算ということであれば、償却年数が計算に重要な影響を及ぼす。この償却計算等は合理的に見積もって適切に償却を行わなければならないということになります。

ただ、このときに一つだけ、皆様が今から御審議される中でお伝えしておきたいことがあるんですが、例えば特許権といいましても、特許権の金額はまず皆様が御想像される以上に少ない金額して上がっておりません。といいますのは、研究開発活動を通じまして特許を申請する場合に、実は特許権の取得価額として弁理士さん等にお支払いする費用等が実は取得原価として載るというケースが非常に多ございます。

それから、無形固定資産である権利ということに着目いたしますと、確かに権利、特許権というのは収益を生む可能性はあるわけですけれども、生かさなければ単なる権利で終わってしまいます。これは無形固定資産だけではなくて、他の資産にも同じようなものがあるかもしれませんが、もしこの無形固定資産ということに目を向ければ、このような特徴を有しているというのを御報告の最後にさせていただきたいと思います。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。ただいまの持永参考人の御報告、そして先ほどの荒木委員の御報告あわせまして御意見、御質問のある方は御自由に御発言いただきたいと思います。

どうぞ、品川委員。

○品川委員

荒木委員の御報告に関しまして、結論的には繰延資産の体系的な検討が望ましいという御指摘でありますので、そこのところをぜひ体系化する必要があると私も思っています。御報告の中で、一つは創立費、開業準備費、開発費等について必要性は薄いという御指摘なんですが、私の税務の体験から通じますと、繰越欠損金が5年間に制限されていることもあって、新設の会社がこういう繰延資産を計上するケースというのは非常に多いんですね。税務的には、それは実態がないということで否認して、欠損金の繰り越しを否定するということが多いんですけれども、こういうことは会計的にきちんとこういう場合でなければ開発費に計上できない、あるいは計上してもそれは開発費等の実態がなければおかしいということは会計的にきちんとした、これは体系的な検討というところにもつながるんですが、架空的な繰延資産を計上することに対するチェックということが減損会計に関連してくると思います。その点が一つと、もう一つ、繰延資産に関しては、税法上はいわゆる9号該当といいまして、支出の公課が1年以上及ぶと非常に広範に繰延資産としてとらえているわけでありまして、それが体系的に繰延資産として区分するのか、無形固定資産として区分するのか、あるいは税法は税法だから、会計的にはそんなものは資産性がないというふうにやるのか、例えば共同で会館を建てたとか、同業者のそういう施設をつくったとか、商店街でマーケットをつくるとか、いろいろなケースで税法上は取り上げていて、できるだけそれは課税するがための措置でもあるんですけれども、それは会計的には支出効果が及ぶ期間ということで、会計議論的には繰延資産的な、非常に資産性が強いとは思うんですけれども、そういう問題についてどういうふうに会計的に対応されていくのかということについてお伺いできればと思います。

○荒木委員

まず、新設会社等で繰延資産の開業費等を計上している例があるというようなお話ですが、確かに品川委員のおっしゃるように、そういう問題意識は私も持っておりまして、ただ、減損の対象資産として今から根本的なところまでさかのぼって検討するべきなのか、あるいは固定資産の論点整理のその他の指摘事項の中にもこういう、内部生成無形資産という扱いだったと思うんですが、そういうものの扱いを、例えば企画調整部会で今後の検討課題としてきちんと検討した方がいいのではないかと思われます。

それから、税務上の繰延資産についても同じような趣旨で、本当に会計上も計上していいのかどうかというような点については、広い意味の無形固定資産ですので、その会計の基準の中で体系的に見ていった方がいいのではないかというふうに思います。

○辻山部会長

品川委員よろしいでしょうか。この件については、ただいまの御発言のように別途の検討というのが荒木委員の御報告の趣旨だったということでよろしいでしょうか。

そのほかございますでしょうか。

どうぞ、伊藤委員。

○伊藤委員

資料3の1ページの2)の建設仮勘定の「・」の二つ目なんですが、将来キャッシュ・フローがマイナスのケースがあるんですが、確認とお願いなんですが、基本的にはゼロになるまでは減損をする、ゼロになって、超えたときに引当金を計上するというお話かと思うんですが、協会でよく実務指針をつくっていますと、そういうケースにも何か論評してくれというお話がありますので、もしできましたら、キャッシュ・フローがマイナスになったときに引き当てで対応するんだということを書いていただけるとわかりやすいかなと思います。

○辻山部会長

わかりました。それは御意見ということで、荒木委員、特に御発言ございますか。よろしいですか。

そのほか御発言ございますでしょうか。

それでは、少し先に進ませていただきまして、後ほど、もしこの対象資産のことにつきまして御発言がございましたら、またいただきたいと思いますけれども、次に減損損失の戻し入れの問題、それから会計処理、表示・注記、これらにつきまして太田委員から御報告をいただきたいと思います。太田委員、よろしくお願いいたします。

○太田委員

それでは、減損損失の戻し入れ及び会計処理、表示・注記に関して御報告させていただきます。

まず最初に、減損損失の戻し入れでございますが、こちらは論点整理のときに減損損失を一たん計上した後に固定資産の収益性が回復した場合、過年度に計上した減損損失戻し入れを行うかどうかということは当然検討されなければならないというふうになりました。そこで、またその戻し入れを行う場合に、その上限というのはどこになるのであろうかというような部分も検討の対象とすべきということです。

ここで確認といいますか、少し検討も含めましてIASと米国基準での戻し入れについては大分違いますので、まとめさせていただきたいと思います。

まず国際会計基準IAS36でございますが、こちらは「毎期、過年度中に資産について認識した減損が存在しないか、あるいは減少している可能性を示す兆候があるか否かを評価し、減損損失が、回復ないし減少している場合には、戻し入れる」ということになっております。

戻し入れる上限でございますが、過年度において、資産について認識された減損がなかったとした場合の減価償却控除後の帳簿価額が上限となるというふうになっております。

そこで、戻し入れを行う根拠でございますが、こちらはIASの後ろの方にまとめてあったものを抜いたものでございますが、まず一つ目は、「減損損失の戻し入れは、以前は資産から流入すると予測されなかった経済的便益が、流入する可能性が高いと査定されたという見方と一致している」。

後は、「減損損失が認識されなかった場合の減価償却控除後取得原価を超えない限り取得原価主義会計制度と整合している」。こちらは戻し入れを認識することが取得原価主義会計に反するのではないかということについての反論であるのではないかと思います。

また、「減損損失の測定における変更は見積の変更に類似している」ので、それは当然戻し入れるべきだということです。

「減損損失の戻し入れは、利用者に資産又は資産グループの将来の便益の可能性に関するより有用な指標を提供する」ということが理由の一つになっております。

また、「戻し入れを行えば、もはや適切でなくなった過去の減損損失を減価償却が反映しなくなり、当期及び将来の期間の経営成績がより適正に表示される」ということもございます。

もう一つは、「戻し入れの禁止は、ある年度に重要な損失を計上し、後の年度にその結果として少額の減価償却費と高い利益が計上される」というようなことが行われてしまうことを防ぐことが戻し入れをさせる根拠にあげられております。

これに対しまして、米国基準であるFAS121ないしED(エクスポジャー・ドラフト)における戻し入れの考え方はこちらと大きく違っております。米国基準では使用目的の長期性資産と処分予定の長期性資産ということで、会計基準自体が分かれて規定されているわけでございますが、まず使用目的で保有する長期性資産について、こちらは減損損失の戻し入れは行わない。これは米国基準の中では新しい原価ベースを重視するんだというようなことが書かれております。

戻し入れを行わない根拠でございますが、121号の中では減損の損失は減損した資産に新しい原価ベースをもたらす結果となる、この新しい原価ベースは減損した資産について、他の減損していない資産と同様の原価の基礎となるべきであるというようなことが書かれております。

そのほか、こらちは国際会計基準でまとめられていた戻し入れを行わないという論拠を次に少し述べさせていただきたいと思いますが、「減損損失の戻し入れは取得原価処理会計に反する。帳簿価額を減額したときには、回収可能価額は新しい原価の基礎となる。したがって、減損損失の戻し入れは資産の再評価による増額にほかならない」。

また、「減損損失の戻し入れは報告利益にボラティリティをもたらしてしまう」。

「IAS36においては、戻し入れ金額が資産の帳簿価額を減価償却後の資産の取得原価を超えないように制限されているので、減損戻し入れの結果、必ずしもそれは財務諸表の利用者にとって有益ではない」。これは、すなわち戻し入れ後の金額が資産の回収可能価額とはならない場合があるということを指摘しているわけでございます。

また、「多くの場合、減損損失の戻し入れは、事実上、内部創出のれんの認識となってしまう」。

「減損損失の戻し入れは、実務上、乱用及び利益「平準化」行動ができてしまうのではないか」。

また、減損損失の戻し入れが必要か否かを検証するためのフォローアップに非常に費用がかかるという点も挙げております。

以上が使用目的で保有する長期性資産について、減損損失の戻し入れを行わないという部分の論拠でございます。

次に、米国基準の中では処分予定の長期性資産の会計処理は別途決められておりまして、売却予定の長期性資産は、減価償却は行わず、毎期、当初簿価と公正価値マイナス売却に係る費用の低い方で評価をしていくというふうになります。

この減価償却を行わない根拠というものでございますが、処分予定の資産の簿価は事業のための使用ではなく、売却等によって回収される、ですから、簿価は原価配分ではなく、評価によって決定されるべきである。このため、減価償却は行わず、当初帳簿価額か公正価値マイナス売却に係る費用の低い方で毎期評価されるべきであるというふうなことが言われておりまして、それを受けて売却予定の長期性資産は減価償却はしない、また当初簿価か公正価値、いわゆる時価の低い方によって評価するということになります。

ここで、ちょっと二つの基準について、戻し入れの要否をまとめてみたいと思いますが、処分予定の資産については、戻し入れを検討すべき状況になったということを考えますと、IAS36でもFAS121でも事実上戻し入れを行うという結果になるかと思います。

次に、使用目的で保有する資産でございますが、IAS36のように資産の回収可能性に関する情報提供というような側面を重視するのであれば、戻し入れを行うというふうに考えるのが素直かと思います。

あとは、米国基準のように、次期以降の原価ベースを確保するんだというような面を重視していくのであれば、戻し入れを認めないというふうになるのではないかというふうに思われます。

これは私の個人的な感想でございますが、実務的な観点からは戻し入れを毎期要求、検討して、それが必要であれば戻し入れを行っていくというのは、かなり実務的な負担は重いだろうなというふうに考えております。

以上が戻し入れに関するまとめでございます。

次に、減損に関する会計処理について、幾つかの論点を簡単に触れていきたいと思います。

まずは、減損がどういう形で会計処理されるべきかということでございますが、こちらは国際会計基準においても、米国基準においても費用処理が原則になっております。IAS36においては、ほかの基準で再評価されている、計上されている場合を除いて損益計算書に計上、費用として認識されるべきであるというふうになっております。

また、米国基準におきましては、使用中ないし処分予定の減損損失、その後の戻し入れというのはOperating incomeの中に含めて報告するというふうになっておりまして、ちょっとこの辺は日本の会計の考え方と若干違う部分があるのかなというふうな気がいたします。

次に、減価償却との関係でございますが、処分予定の固定資産について減価償却を行っていくというふうに考えるのか、そもそも処分予定の固定資産を区分して会計処理を定めるのかどうなのかということを考えなければなりませんが、区分する場合に、減価償却を行うのか、あるいはどうなのかということは決めていかなければならない問題かなというふうに思っております。

特に、処分するまでの期間が1年以上の場合に、結果として差が大きくなるように思いますし、米国基準ではPL上、減価償却費ですとか、固定資産売却損益・減損損失ともにOperating incomeに含めて報告されますが、日本では減価償却費は営業損益ですし、固定資産売却損益などは原則として特別損益項目というふうに考えられていると思いますので、経常利益等に与える影響も違ってくるかなというふうに考えられます。

また、こちら、次は確認でございますが、減損を認識しない場合でございましても、減価償却の方法ですとか、耐用年数を見直す必要がある場合があるということは、国際会計基準、それから米国基準ともに触れられております。

次に、中間期で減損処理を行った場合に、通期でそれを見直すかどうかということについてでございますが、これはすなわち中間期の処理を一たん忘れてというか、洗いがえて、本決算でもう一回評価をし直すのかどうかという論点でございます。

特に、最近、中間連結等が始まりまして、中間の数字が重要性が増してきたことから考えておく必要があるのではないかなというふうに考えております。こちらは減損を検討するタイミングをどのようにとらえるのかということと関連するのではないかと思っております。兆候があればいつでもやるというふうに位置づけるのか、四半期ないしは半期、年次に1回やればいいというふうに考えておくのか、その辺で少し結論が違ってくるのかなと思います。

正式に減損を検討するのは、飽くまでも年次であるというふうに考えれば、中間期の処理は洗い替えて、本決算におけるデータに基づき再計算することになると思われますが、もう少し頻度を上げて検討すべきであるということになれば、中間の処理で確定させてしまうという結論になるような気がいたします。

減損の判定とか金額の算定に相当の事務量が必要とされるのではないかと思われますので、中間の処理で確定するというふうに考えた方が楽なのかなと考えております。

最後に、表示及び注記に関してでございます。これはどのような表示とか注記を行っていくかということを当然検討すべきということで、論点整理で触れられておりました。

まず最初に、貸借対照表上の表示でございますが、IASにおきましても米国基準におきましても、減損処理した資産については減損額を資産から差し引いて表示がされております。

IASでは、原始取得価額と減価償却及び減損累計額の増減を注記する、米国基準では公正価値を新しい原価として用いるというふうになっております。

次に、損益計算書上の区分でございますが、IASは私が見た限りでは損益計算書上の区分に関して、余り明確なことはいっていないように思いました。米国基準では、先ほどちょっと触れましたようにOperating incomeに含めるとされております。

そのほかの固定資産除売却損益も原則Operating incomeに含めるというふうになっておりますので、すべてOperating incomeの中に入ってくるという考え方でございます。

米国基準では、そのほか非継続事業について事業の廃棄活動を損益計算書末尾において独立表示するように定められています。

これを受けまして、日本でどのように考えるかということでございますが、日本では固定資産の除売却損益が原則的には特別損益項目と考えられているということからして、現在の損益計算書上の区分との整合性を考えれば、減損損失については特別損益項目にするというのが自然ではないかというふうに考えます。

次のポイントでございますが、海外の基準では事業の廃棄活動を損益計算書において別立て表示しております。これは今の固定資産の減損会計の範囲を超える問題でございますが、事業の廃止についてどのような開示を行うかというのは、別途検討する必要があるのかなというふうに考えます。

次に、開示でございますが、これはかなりIASの例ですといろいろ一般的には種類ごとに減損損失の表示している項目を出し、ないしはセグメントに対する影響を出していく。また、減損を認識もしくは戻し入れに至った事象とか状況について説明を求めるとか、かなりの項目について開示を要求しております。こちらについては、米国基準でも同様でございます。

日本におきまして、ある程度やはり注記を考えていくときの参考になるのがこの二つの基準かと思われますが、IASにおきましても米国基準でも、かなり説明的な開示を要求しております。減損の注記については、それを認識する経緯ですとか、あるいは方法があくまでも会社の経営的な判断によるというような区分、要素がどうしても残りますので、説明的な記述を加えざるを得ないのかなというふうに思っております。

これは、単に項目の例として考えられるものを列挙しておりますが、例えば減損を認識した資産、あるいは減損認識に至る事実と状況の説明ですとか、減損の金額ないしは金額の決定方法、減損がPLでもし別立て表示というふうになっていない場合には、どこの項目に含まれているかということですとか、セグメント情報に対する影響ですとか、戻し入れをもし行うというふうになった場合には、戻し入れについても同様の項目を出していくのか、処分予定の資産について、また別途会計処理を区分して考えていくことになれば、それについても開示が必要になってくるのではないかなというふうに思います。これは単なる草案で、出発点としてこんな項目が挙げられるかなという程度で見ていただければと思っております。

以上でございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。ただいまの太田委員の御報告につきまして、御意見、御質問ございましたらお願いします。

どうぞ、品川委員。

○品川委員

この戻し入れについて、ちょっと2点ほど気になることがあるんですが、アメリカ基準等のように戻し入れをしないという理屈については、減損会計それ自体がそもそも取得原価主義を否定しながら減損を入れておいて、今度は戻し入れの客観的情勢が備わってきても、減損した金額が、これが原価であるから、それは上げてはいけないというのも、何かいささかちょっと整合性がないように思いますので、それをどう考えるかということと、もう一つ、我が国の将来の会計を考えた場合に、恐らくこれから減損会計を導入すると、土地の評価減というのが非常に大きな問題になってくると思いますけれども、この10年間、地価は下落し続けておりますけれども、これがこのままずっと下落するとは肯定できないわけで、将来の地価がどう動くかというのはだれにもわからないわけで、その場合に、最大の減損会計の対象である土地が仮に上昇してきた場合にどういうふうにそれを想定して今回の戻し入れの是非を考えるのか、これは自問自答しているんですけれども、その辺、御意見を伺えればありがたいと思います。

○辻山部会長

ただ今の品川委員の戻し入れに関する御質問ですけれども、いかがでしょうか。

○太田委員

非常に難しい問題で、おっしゃるとおりの状況も将来的には想定されるのかなという気はいたしますが、やはり一たん会社が行った投資、当初の目的は、ある程度見込みがあった投資が、ある時点で回収が――その回収可能性をどこで判定するのかという議論が一つありますけれども――それが回収できなくなってしまったという状況になったときに、今まで持っていた取得原価を一つ見直して、新しい原価でスタートしようというような考え方に立った場合には、その時点で切り捨ててしまうということもあり得るのかなというふうには思っております。ただ、逆にIAS、国際会計基準によるように、それは回収可能性の問題なんだから、回収可能性が回復した場合には当然戻し入れたらいいではないかという考え方も成立するように思いますが、これは最後には選択の問題というふうになるというふうに私は考えているんですが、ここから先は全く個人的な意見ですけれども、実務上の大変さを考えると切り捨てという方がいいのではないかなと。とても当初の簿価を基準にした減価償却をずっと追いかけていくというようなことは実務的に相当の負担になるような気がいたします。その辺を考えると、切り捨ての方がいいのではないかなというふうに思っている次第でございます。

○辻山部会長

ただいまの品川委員の御質問の中で、特に償却性資産とは異なる非償却性資産、中でも土地の問題の減損の問題の扱いがかなり大きな問題として御質問の中にあったと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。御発言のある方いらっしゃいますか。

小宮山委員、何か御発言ございますか。

○小宮山委員

一つだけ確認、いいですか。今のお話とちょっと離れるんですけれども、6ページのところで廃止予定事業のことを触れられていますけれども、ちょっと細かい規定は忘れてしまったのでお尋ねしたいんですけれども、特にBSの話なんです。ここでPLの話を書かれているんだけれども、BSの方は廃止予定事業にかかわる資産というのはFAS121でいう処分予定資産には入らないという理解でよろしいんですか。入らないとすると、両者の評価基準は同じになっていましたっけ。

○太田委員

すみません、後で確認します。確答できません。申しわけございません。

○小宮山委員

今ちょっと伺ったのは、実務的にはこれが結構もめるケースが多いのかなと。例えば、事業を廃止するという意思決定をすると、処分予定資産だとすると恐らく原価と処分予定価格のいずれか低い方で押さえると。ところが、最終的に廃止が終わるまでの段階で実際には損失計上されることが恐らく日本の今の実務としては多いだろうと思うんです。同じようなことを言っていながら、何か処理が違ってこないかなという気がちょっとしたので、その点だけ確認したかったんですが。

○辻山部会長

ただいまの件については、検討事項ということで、次回以降にまた御発言いただければと思います。

先ほどの、品川委員の御質問の中で、そもそも減損会計が取得原価主義会計の枠組みから外れるものだという御発言があったと思うんですけれども、この点について品川委員の方で減損会計のそもそもの定義の問題についてはどのようにお考えなのか、ちょっと逆の質問ですけれども。

○品川委員

外れると申したつもりではないんですけれども、これはかなり枠を、従来の取得原価主義からいくと弾力的というか、かなり枠を動かすことには変わりないと思うんです。ところが、この戻し入れのときになったら、途端に今度は切り下げた価額が原価であるから、それは弄ってはいけないというのもいささか整合性がとれていないのではないかという言い方をしただけでして、減損会計自体については、枠から出ている、出ていないというのは、それは立場によっていろいろな議論があり得ると思うので、個人的には、それはちょっと踏み出していると評価しているつもりですけれども。

○辻山部会長

そうしますと、特にアメリカについて戻し入れを認めない根拠に上がっていることに関する品川委員の方から反論というふうに承って……。

○品川委員

欧米の場合と、我が国地価の動き自体が、日本の場合にはかなりドラスティックなんですね。ずっと上がったと思ったらぐっと下がったり、特に地価に関しては欧米の方はかなり安定的で推移していて、恐らく戻し入れや何かという現象も、非常に現象が小さいと思う。日本の場合は、非常に地価の変動が激しいものですから、欧米の基準がすぐ右ならえで、果たしてこれからのこういう対象資産の地価の変動に対して堪え得る会計基準ができるかどうか、そこをちょっと危惧しているものですから、そういうつもりで、したがって、このアメリカの基準で言っていることは、それはそれで理解はできるんですけれども、果たしてそれがそのまま日本の経済の動きに合うかどうかということを危惧しておりますので、さっきのような質問をさせていただいたんですが。

○辻山部会長

その点も御意見として承って、検討事項とさせていただくということにさせていただきたいと思います。

そのほか、本日全般につきまして御発言ございますでしょうか。最初の減損の兆候の問題につきまして、質疑の時間が少し短かったかと思いますけれども、その点も含めまして、先ほどの対象資産、戻し入れの問題、会計処理の問題、開示・注記の問題、この辺全般的に御意見ございましたら承っておきたいと思います。

特に、本日の問題につきまして、逆瀬委員、都委員、産業界の方のお立場から何か御発言ございませんでしょうか。

どうぞ、都委員。

○都委員

最後の戻し入れのところの議論なんですけれども、これは我々実務サイドでは、戻し入れを行わないということでやっていただければと思います。と申しますのは、一つはやはり実務的に考えまして、一度減損をしたものを、特に長期に存続する資産でありますと、それが実際どの程度キャッシュ・フローが回復しているかというのを毎期毎期追いかけるとなりますと、その資産だけは兆候ではなくて、実際にキャッシュ・フローがどの程度回復したか、毎期毎期追いかけることになり、一つは実務的に不可能であると思います。やはり経営にとってみれば、減損をやるというのはよほどのことでありまして、やはり事業が相当程度変わって、構造がもう変わったんだという認識のもとにやるわけでございますから、そこでまた将来キャッシュがふえそうだといった瞬間に、多分これは利益を上げて、それが翌期以降の償却をふやしていくというふうなことに償却資産の場合なっていくと思うんです。それは、やはり経営にとって安定を損なうというようなことになるかと思います。

○辻山部会長

ありがとうございました。太田委員、どうぞ。

○太田委員

今の戻し入れの点に関しまして、IASで言われておりますのは、減損がもはや存在しないか、減少している可能性がある、やはり戻し入れも何か兆候がある場合に検討するというふうになっておりますので、一たん減損を認識したからといって、そこの減損を認識した資産については毎期毎期必ず検討しなければいけないということにはIAS上はなっておりません。そこだけちょっと御理解いただければと思います。

○辻山部会長

伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

別件なんですが、減損する重要性というか、減損する基準、あるいは減損を戻し入れる基準のときに、重要性の判断基準があるんだろうと思うんですが、何か具体的にそういうものというのはIASの場合にありますんでしょうか。

○辻山部会長

それにつきましては、冒頭兆候の問題につきまして荒木委員から報告がありましたけれども、再度その点に触れていただけますでしょうか。

○荒木委員

重要性については、ちょっと私も詳しくないですけれどもアメリカの基準などを見ますと、必ず重要性がない事項については、こういう会計基準を適用しなくていいというような文言がどの会計基準にもついていたと思いますので、これが減損にも当てはまるのではないかというふうに思っています。

○辻山部会長

伊藤委員、よろしいですか。

それでは、本日議題に取り上げましたことについて、もう一方、逆瀬委員、実務界というか、産業界の立場から何か御発言ございますか。特に実務上の問題に絡めまして。

○逆瀬委員

実務といいますか、先ほどの戻し入れの話については、2点ばかりあります。太田さんが言われた中間期の話と年度末の処理の話があります。これは実務でも始まっています金融商品の減損の事務処理なんていうのは12年4月1日開始年度から行われているわけですけれども、この前の12年9月末で行った有価証券に関する、これは減損とは言わないんでしょうけれども、評価減ですね、これなんぞは、非公開企業のような会社に対する株式の投資については、当然のことでしょうけれども商法上では中間なんていうのはありませんから、年度でもう一度おさらいだと、こういうふうなのが商法上の解釈だと思われますけれども、それと年に2回やるというような話になるんだろうなと思っておりまして、そういう話が一つ。こういう有価証券ではなくて、有形固定資産とか無形固定資産とか、かなり複雑な計算を要するものについて半期とか年度末とか、2回やるというのが先ほどもなかなか大変なことなので、その辺どうするのかなという話が残っているなと思います。

もう一つは、戻し入れの話を年度で考えたら、正規の決算処理として考えたときに、やはり戻し入れが想定されるようなケースは減損をしない、それぐらいの慎重な判断を求められる処理だろうと元々考えておりました。ただし、土地についてはいささか別の判断が働くのかもわかりませんが、通常の一般の土地以外のものについては、もう将来戻ることが十分に考えられるような事態ではなくて、戻るかもしれない、キャッシュ・フローが改善するかもしれないというふうなときは、当然やらないわけですね。もうだめだと、その資産の利用方法と計画からいって、もうキャッシュフローは諦めた、間違いなく回収できないという時点で初めてやるんだと思います。それぐらいの処理だと考えていますけれども、以上です。

○品川委員

今の御発言にちょっと水を差す言い方で恐縮ですけれども、人間の判断ほど当てにならないものはないですね。これは何十年か、色々なパイで考えて、これは絶対そうだと思っても、それが客観情勢が変わってきたら、そのときの判断というのは全部変わってきますので、絶対ということは会計上の処理においても慎重に言わないとまずいのではないかと思いますけれども。それだけ減損はやらないんだという覚悟という御趣旨であれば、それはそれで理解できるんですけれども、将来のことはだれにも言えないですね。いろいろな情勢が変わってくれば、価値判断は変わってくるわけですから。私が土地について心配したのは、それが極めて長期にわたるわけで、あとはビルとかそういう長期に使用するものについての、通常の10年や20年で使い切るようなものであれば、おっしゃるとおりで、別にそんなことは心配ないと思いますけれども、長期の資産について、予測しがたい事態に対して会計基準が対応できるかどうかということを危惧して申し上げただけですから、以上です。

○辻山部会長

どうぞ、斎藤委員。

○斎藤委員

今、逆瀬委員が言われたように、やはり土地の減損というものをどういうルールで決めるのかということにこの問題の議論の帰趨が大きく依存すると思うんです。もし、逆瀬委員が言われるように、将来時価が例えば回復するとか、あるいはキャッシュが回復するという可能性を残しているものについては、もう減損はないんだということが本当に周知徹底できるのではあれば、それは一つの考えかと思いますけれども、特に土地の場合、たとえばアメリカの基準のように、公正価値を目安にして減損を認識するということにいたしますと、これは減損というのは、さっき逆瀬委員が言われた状況よりは頻繁に起こり得る問題だと思います。

そのときに、仮にもし再び土地の時価が上がって、かつて認識した減損の状況が消滅したというときに、なおかつ切り下げた以上はそこで固定するという議論をしたときに、理屈の上ではかつて言われてきた会計の情報の欠陥というものがまた問題になると思うんです。つまり、昔買った安い値段の土地を昔の値段のままバランスシートに繰り越しておいて、現在の含みを抱えているではないかと。そういう含みに依拠して経営を行っていくということについての同じ批判がまた出てくる可能性はあるわけだと思うんです。

ですから、理屈の議論をする場合には、やはりそこの問題は一応慎重に検討しておく必要がある、その上で、実務上の配慮ということであれば、これはなるべくならやらないにこしたことはないという感じはするんですが、議論だけは、そこは少し詰めておく必要はあるのではないかというふうに感じています。

○辻山部会長

どうぞ、平松委員。

○平松委員

同様の趣旨なんですけれども、今の戻し入れるかどうかというのは、この減損、あるいは固定資産の検討をどういうふうに持っていくかによって、国際的にも影響されますけれども、我が国の会計制度がよって立つところの理論的な問題の根幹に触れるようなことだと思います。つまり、今斎藤委員がいみじくもおっしゃった、では土地を、時価が上がってきたから再度、公正価値が上がったときに再度見直せば、これは取得原価主義と言えるかどうかという問題にもかかわるし、我々の今とろうとしている会計制度というものが一体どういう理論的な根拠によるものなのかということを問われることになるので、答えを出すことは、私能力ないんですけれども、非常に慎重な議論を要するなと思います。

もう1点は、先ほどの中間と年度決算の問題なんですが、これも同じように我が国の会計制度にとって非常に大きな課題を提示すると思います。つまり、我が国の場合、中間といえども一応監査すると。それを、一方で逆瀬委員の御指摘のように商法の規定では年度決算ということになるとするならば、一体いわゆる上場会社とそうでない小さな会社との会計制度の首尾一貫性のようなものがどういうところで担保されるのか、年に1回なのか、年に2回という意見もございましたけれども、中間も確定したものとみなすという御意見もございましたので、そのあたりの整理も、会計の制度としてはしておく必要があるなということで、理論的、制度的に非常に大きな論点が今指摘されているなという認識をしたということを意見として申し上げておきます。

○辻山部会長

ありがとうございました。本日取り上げております問題は、いずれも理論的なフレームワークなどの中で、特に実務に落とす場合にさまざまな選択肢が考えられる中で問題になっている論点がかなり取り上げられておりますので、幅広くを御意見をいただきまして、反映させたいと思いますので、そのほかございますでしょうか。

○辻前企業会計専門官

参考までに逆瀬さんの御意見をお伺いしたいんですけれども、減損の兆候を要するに連結単位で親会社の事業と、それから子会社の幾つかというふうなグループで見る場合に、親会社は減損していないという判断をしたけれども、子会社の方が減損したというふうな判断をして、それで会計処理、要するに親と子で判断が違ってしまったというような場合については、どういうふうにお考えになるのかというのをちょっと聞かせていただきたいんですけれども。

○逆瀬委員

そういう場合は、キャッシュ・フローも一体で回っていないケースなのではないでしょうか。事業は一体でやりますから、子会社は親会社の方の指揮に従って動くまでの話ですね。キャッシュ・フロー一体で運営している、事業も一体で運営していると。その中の一定の例えばメーカーであれば、製品についての事業、それと絡んだ固定資産の減損の話ですから、そういう場合は一体でないという事情なんでしょう。普通、子会社はそういうことはあり得ないですね。ちょっと答えているかどうかわかりませんが。

○辻前企業会計専門官

わかりました。

○辻山部会長

そのほか、特にございますでしょうか。特に、先ほど斎藤委員、平松委員、品川委員の御発言がありましたけれども、減損の戻し入れの問題につきましては、特に土地の扱い、償却性資産の扱いの問題と土地の問題を、基準自体がどういうふうにそもそも減損処理するのかということと戻し入れの関係というのは、かなりかかわりがある問題ですので、またその辺のかかわりが整理されましたら、この問題もおのずと定まってくるのかなというふうに考えております。

ほかにございますでしょうか。岩田委員、何かございましたら、産業界からということでお願いしたいと思います。

○岩田委員

ちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども、やはり減損の兆候の対象については、なるべく具体的な表現でわかりやすく、それとそもそも範囲もなるべく限定すべきではないかなというふうに思っております。

それから、先ほどの著しく過大な取得原価とか、資産価格の著しい下落というような表現については、いろいろ考え方その他によって出てくるのかなと。我々の方としては、実務側としては、やはり経営の判断というものをもう少し重視していかなければというふうに思っております。

例えば、著しく過大な取得原価という話でいいますと、最近ある本社ビルが売られたわけですが、それが730億ぐらいで売られたと。我々もたまたまそれにオファーをかけているんですけれども、同じものがやはり我々としては600億ぐらいだとした場合、私どもの立場から見れば著しく過大な取得原価になるのではないかなとは思うんですけれども、買った会社にとっては、別にそれでキャッシュ・フローが回る以上は問題はないというふうな議論も発生しますので、具体的にそういった現象もございますので、その辺は十分考えていただければというふうに思っております。

あと、戻し入れ等につきましても、やはり実務の一番やりやすいと言ったらおかしいですけれども、簡単なというか、なるべく複雑にならないような形でやられるべきではないかなというふうに考えております。

大体、以上でございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。そのほか、特にこの機会に御発言ございますでしょうか。

恐縮ですが、きょう御出席で御発言のない委員、もしこの機会に意見ございましたら。ということは秋葉委員ということになってしまいますが、何かありましたらお願いいたします。

○秋葉委員

戻し入れの話が幾つか出まして、結論的には戻し入れしないという御発言がすべてだったのではないかと思いますけれども、ただ、理由が全部実務上の理由だけだったということがどうなのかなと思いまして、一応論点の整理のところでも、そもそもの減損の考え方ないしは減損損失の認識というのは将来に損失を繰り越さないというような考え方をとっておったと思いますし、そういう形でやるわけですから、過去に損失であったものを戻すという理屈の部分が使用価値なり地価が上がったということがもともと減損を認識したという収益性の低下との関係でいくと、収益性が戻ったというときにはそれが上がるというふうなことにもなるんでしょうが、過去においてはその損失、これは減価償却費等でも損失というか、費用にもなるかもしれませんけれども、その一環として考える話であれば戻し入れないのかなという気もいたしますし、逆に収益性が上昇しましたということになりますと、それは実際の利益の増加ということでもあらわれるわけですから、その分がまさに実現主義の考え方だとすれば、戻し入れるということはないのではないかというふうな、一応理屈になるかどうかわかりませんけれども、そういう考え方ができるではないかというふうに戻し入れのところでは思っておりました。

あと、非常に大きな話で、先ほど斎藤先生の方から土地の話が出まして、土地の含み益のお話までお触れになったので、これはちょっと減損の範囲を超えるわけですけれども、今後の考え方としても土地の含み益を持っているものの扱い、これが多分土地の減損とは、理屈としては関係がないわけですけれども、全体のバランスというか、方向性として何らかの形で考えていかなくてはいけないような話ではないかなというふうな感想を持って聞かせていただきました。

以上です。

○辻山部会長

ちょっと今の件で、どうぞ。

○斎藤委員

念のために先ほどの話、発言の趣旨を確認いたしますけれども、私が土地について含み益が生ずる状況と申しましたのは、一般的に時価が上がって、簿価を上回っているということを言っているのではなくて、取得価額を切り下げた後に減損を戻し入れる状況というのは一定程度回復しているわけで、戻すとしても取得価額の範囲内ですね。しかし、それすらしていないということについて、その含みがオフバランスになっているという批判が生じ得るでしょうということを申し上げただけであって、土地の含み益一般を議論しようとしたのではないということを特に確認したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。

○品川委員

私が問題提起したのも斎藤先生がおっしゃたとおりです。

○辻山部会長

そのほか、御意見、逆瀬委員、何か御発言あるようですけれども、どうぞ。

○逆瀬委員

土地に絡んだ議論が一番重要なんでしょうけれども、土地をただ保有して、ただ純投資の目的で持っている場合と、一定の事業目的で、その目的に照らして使用する場合とあると思うんです。戻し入れの話については、慎重な議論が要るとはもちろん思いますけれども、含み損、含み益を抱える状況になるというようなことがまた同じような批判を生むという先生のお話についてもよく理解はできますけれども、それはただ一定の事業目的に照らしてどうかというふうな判断があるんだと思うんです。ただ持っているというのではなくて、一定の事業目的に照らして持つ場合に、なおそういう批判を甘受しなければだめなのかどうかという議論があるのではないかと。

それから、通常の場合、資産というのは簿価イコール現在の価値というわけではなくて、通常の場合は価値をもう少し高く評価すれば持ってくる。帳面の価額よりも上に実際の現在価値はあるんですよというのはあって何もおかしくないのではないか、そういう議論もまたあるのではないかと思うんです。戻し入れをしないということについて、帳面が実態の価値を、現在の価値を表わさないからということだけでは戻入すべきという理由にはならないのではないかと思うんです。

○辻山部会長

どうぞ、斎藤委員。

○斎藤委員

今の逆瀬委員が指摘されたことについては、私は全く同感でありまして、矛盾していることを申しているつもりはありません。

○辻山部会長

特に、事業用土地の減損判定上の回収可能額の問題に深く関わってくる問題だと思いますが、この点、また引き続き検討をいたすことにしたいと思います。

それでは、そろそろ予定の時刻もまいりましたので、御発言がないようでしたら本日の部会はこれで終了とさせていただきたいと思います。

本日は、持永参考人にはお忙しいところ、どうもありがとうございました。

なお、次回の当部会の日程でございますけれども、3月16日金曜日の午後4時からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。次回は、投資不動産の問題などにつきましてヒアリング及び意見交換を予定しております。正式には改めて事務局から皆様方に御連絡させていただきたいと思います。

本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

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