平成14年1月28日
金融庁

企業会計審議会第18回固定資産部会議事録について

企業会計審議会第18回固定資産部会(平成13年12月21日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

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企業会計審議会事務局


企業会計審議会第18回固定資産部会議事録

日時:平成13年12月21日(金)午後4時00分~午後6時07分

場所:中央合同庁舎第4号館9階金融庁特別会議室

○辻山部会長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから第18回固定資産部会を開催させていただきます。

本日は、皆様方にはお忙しいところご参集いただき、ありがとうございました。

前回は、前々回の部会に引き続きまして、経過報告に対するコメントを参考にしながら、固定資産の減損会計に関する基準の設定及び投資不動産の取り扱いについて審議を進めました。また、固定資産の減損会計に関しまして、今後必要とされる事項について、起草委員の皆さんを中心に設例等を作成していただき、少し具体的な議論を行いましたが、時間の関係で途中で終わっております。

そこで、本日は前回に引き続き、設例等を使った減損会計の具体的な検討を第1の議題としたいと思います。荒木委員、川村委員に設例等を作成していただきましたので、それぞれご報告いただいた上で意見交換を行いたいと思います。

また、本日の2番目の議題といたしまして、意見書と申しますか、公開草案のイメージについて取り上げたいと思います。前回の部会でもあらあらのものを資料として配付いたしておりましたが、時間の都合で議論できませんでした。今回お配りしておりますのは、前回までの部会での議論を踏まえまして、起草委員の皆様方と共同して事務局で作成していただいたものです。前回お配りしたものよりも内容を少し書き込んでございます。

それでは、減損会計の論点に関する具体的な検討から始めてまいりたいと思います。

本日は、前回時間の関係で報告していただけなかった荒木委員の報告に加えまして、川村委員にも追加的にご報告をお願いしています。

最初に荒木委員から報告をお願いしたいと思います。荒木委員からは、お手元の資料に沿いまして、キャッシュ・フローの期待値を用いる方法並びに再評価を行った土地に減損会計を適用した場合の設例についてご報告をいただきたいと思います。

まず最初に、資料1-1のキャッシュ・フローの期待値を用いる方法についてご報告をいただきたいと思います。

それでは荒木委員、よろしくお願いいたします。

○荒木委員

それでは、期待値アプローチの設例ということで説明させていただきます。将来キャッシュ・フローを見積もる際に単一の数値で見積もる方法のほかに、確率で重みをつけたキャッシュ・フローを見積もるという方法があります。この方法については、以前川村委員の方から理論的な側面も含めてご説明をいただいておりますが、ここでは新しい米国の減損会計の基準であるFAS 144号、この中の設例からとりまして、簡単に数字で説明させていただきたいと思います。

まず、この設例はアメリカの基準からとったわけですが、このアメリカの基準でも、このようなやり方で必ずやりなさいということではなくて、例えば会社が固定資産に関して幾つかの選択肢を考えているような場合、あるいはキャッシュ・フローの見積もりにある程度の幅があるという場合に、こういう期待値アプローチが有用ではないかということが書かれております。

それでは、具体的な説明ですけれども、まず、会社の選択肢として、ある機械設備、あるいは工場ですね、こういうものを2年後に売却する選択肢、それと10年後に売却するという選択肢があるという想定をしております。2年後に売却する、つまり2年間使って、その後売却するというケースで、これに関してもそれぞれ見積もりの幅がありまして、まず設備を使用することによって8のキャッシュ・フローが得られ、それから処分によって30のキャッシュ・フローが得られる、合計で38のキャッシュ・フローが得られるという、こういうケースが20%の確率で生じる。それから、同じく41のキャッシュ・フローが得られるという確率が50%、43のキャッシュ・フローが得られる確率が30%あるということで、それぞれ重みをつけまして加重平均しますと、一番右の欄ですけれども、2年後に売却という選択肢では41の将来キャッシュ・フローが得られる。

このケースでは、最初に申し上げておくべきだったんですが、減損損失を認識するかどうかというところでキャッシュ・フローを見積もっているという想定ですので、割引前のキャッシュ・フローを考えております。

次に10年後に売却という選択肢をとった場合には、これもある程度キャッシュ・フローの見積もりに幅がありまして、一番少ないケースでは37のキャッシュ・フロー、それから49のキャッシュ・フロー、56のキャッシュ・フロー、それぞれ20%、50%、30%の確率で起こるであろうということが予想される。そうしますと、10年後に売却したケースでは、この場合は、処分によって得られるキャッシュ・フローというのは1だけですのでほとんどないんですけれども、それをトータルして確率で重みをつけますと、48.7という数字が見積もられるということになります。

会社の選択肢として、2年後に売却、それから10年後に売却という2つの選択肢があるとして、それぞれ、どういう確率で選択するのかということを、その下の表で示しています。2年後に売却する確率が60%、10年後に売却する確率が40%ということで、それぞれまた確率を掛けましてキャッシュ・フローの期待値を出すということで、これを計算しますと44.1ということになります。

これが期待値アプローチを使ったケースということで、この場合、もし最善の1つの見積もりということになりますと、2年後に売却するという選択肢を選ぶという確率の方が高いわけですから、こちらが選ばれ、その中でも一番生じる可能性が高いというのは、50%の確率で生じるケースですので、41のキャッシュ・フローが得られる。これが最善の見積もりということになるかと思われます。

こちらの説明は以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

ただいまの荒木委員のご報告に関しまして、ご意見、ご質問のある方は、どうぞご自由にお出しいただきたいと思います。

大塚委員、どうぞ。

○大塚委員

ちょっとご質問させていただきたいんですけれども、この2年後の売却の処分のところが全部30になっていますよね。これは言ってみれば、どう見ても2年後は確実に30だという仮定ですよね。本来は、これはそれぞれに応じて2年後の処分価額を変えないといけないと思うんですけれども、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。

○荒木委員

実際には、おっしゃるとおり厳密に見積もる必要があるとは思うんですが、たまたまこの例では、恐らく2年後に売却というケースと10年後に売却というケースでめりはりをつけて、こういう設例をつけたんだと思うんです。恐らく2年後に売却のときは、処分の方はそんなにぶれない、30に近い数字だろうと。10年後に売却の方は、処分の方は1だけれども、使用によって得られるキャッシュ・フローの方がかなり変わってくるだろうと、たまたまそういう設例になっているだけだと思いますが、理論的には大塚先生のおっしゃるとおりだとは思います。

○辻山部会長

大塚委員、よろしいでしょうか。

そのほか、ご質問、ございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

この資料1-1に関しましては、念のため理解を深めるということでございます。

それでは、次に、先ほど申し上げましたように、資料の1-2で再評価を行った土地に減損会計を適用した場合の設例についてご報告をいただきたいと思います。荒木委員、よろしくお願いいたします。

○荒木委員

それでは、再評価を行った土地についての設例をご説明したいと思います。

まず、再評価を行った土地について減損会計を適用した場合の会計処理の方法としては、いろいろ考えられるとは思われますが、ここではとりあえず、減損処理を行ったときに損益計算書にどういう金額の損失が出てくるのかという見方から、2つの方法が考えられるのではないかということで、A法、B法と仮に名前をつけたんですけれども、まず最初の方法は、再評価を行わない場合と同一の損失が減損処理のときに計上されるような方法です。これはその他有価証券の強制評価減のときには、時価評価する前の取得原価とその時価とを比べて、P/Lに計上される評価減が計算されるとしていますので、それと同じようなやり方があるのではないかと思われますので、それを1つ目の方法としています。それから、もう一つは、再評価後の簿価に基づいて損益計算書に計上される減損損失を算定する方法でして、この2つがあるのではないかと思われます。

それでは、設例ということでつくらせていただいたんですが、まず、その前提としまして、この会社は土地Xと土地Yを持っているということで、それらについて再評価を過去に行い、その後、継続して保有している。また、税効果の関係で、その税率を40%というふうに想定しております。それから、当期になりまして、土地X、土地Y、回収可能価額がそれぞれ120、40に下がったということがはっきりしたので、減損処理を行うということになったということを想定しております。

まず、この表の一番左の方から見ていただきたいんですが、土地の簿価というところですけれども、土地Xについては再評価前が150、これが再評価によって130だけ簿価が上がりまして、再評価後は280になった。それが減損処理によって160減少し、結果として再評価前の簿価よりもさらに下がって120になってしまった。これは非常に極端な例ですけれども、説明上そういうふうになったというふうにしております。

一方、その下の土地Yの方ですけれども、再評価前が100、再評価によって、この場合は40評価を下げて60になり、それがさらに減損処理によって20評価を下げまして、減損処理後は40になったということを想定しております。その右の欄は、それに対応する繰延税金資産、それから、一番右端の欄が再評価差額金ということで、再評価差額金の方は、最終的には再評価前の簿価よりも下がっておりますので、ここでは再評価差額金は全額取り崩されるであろうというふうに解釈しております。

それでは、次のページですけれども、こういう想定で会計処理はどうなるのかということを見ていきたいと思います。

まず、再評価の会計処理については、ここに書きましたように土地X、これは評価を上げた方ですけれども、評価が150から280に上がりましたので、借方が土地130、貸方が繰延税金資産と再評価差額金、土地Yの方については、もともと再評価前が100ですので、100から60に落ちたということで、貸方、土地40で、土地の簿価は減り、それに対応する繰延税金資産と再評価差額金が計上されたということになります。この処理は、いずれも損益計算書を通らない処理となっております。資本直入の処理ということです。

それでは、減損処理としてどういう処理が考えられるかということです。まず、A、Bとありますが、Bの方が簡単に説明できますので、下のBの方から説明させていただきます。

まず土地X、これは評価を上げた方の土地ですけれども、この土地については、まず150から280に上げて、280からさらに減損処理で、今度は逆に120に評価を落としたというケースです。したがって、ここで出てくる減損損失は、再評価後の簿価280と減損処理後の簿価120の差額160がそのままP/Lに計上される。仕訳ではP/Lに計上される減損損失が160、貸方が土地160、これに関連しまして、繰延税金資産・負債の処理、税効果の処理が行われます。

それから、一番下の再評価差額金取り崩しの処理については、再評価差額金が貸方で計上されておりましたのが、ここで取り崩すということになります。この処理では取崩額というのはP/Lには関係させずに、資本の部の中だけで再評価差額金を取り崩して利益剰余金の方に持っていくという処理になります。

それから、同じやり方で、土地Yについてはどういうふうになるかといいますと、再評価前が100、それから再評価後は60に落として、それを減損処理によってさらに20評価を下げて40にするという例です。この例では、P/Lに計上される減損損失としましては、再評価後の簿価である60と減損処理後の簿価である40の差額、20がP/Lの方に計上されるということになります。これに対応して税効果の処理が行われる。

それから、一番下の再評価差額金の取崩の方ですけれども、土地Yについては再評価で評価を下げておりますので、再評価差額金はマイナスの再評価差額金として資本の部に計上されていましたので、それを取り崩して利益剰余金を減らすという処理になります。

これが1つのやり方ですが、次に、この上のA法の方を説明させていただきます。

A法については、土地Xについては、まず再評価の会計処理を戻し入れる処理が必要ではないかということで、再評価の処理を戻し入れします。まず再評価前の簿価に戻すという処理を、損益計算書を通さずに直接再評価差額金をマイナスすることによって行う。その上で、2.の減損処理で減損損失30を計上する。この30というのは、再評価前の簿価150と減損処理後の簿価120の差額ですが、これが減損損失としてP/Lに計上されるということになります。

続きまして、同じ方法で土地Yの方についてはどうなるかということになりますと、これについても全く同じでして、まず再評価の会計処理を戻し入れて、もとの簿価に戻す必要があるんではないかということで、こちらの方は借方、土地40ということで、まず再評価前の簿価である100に戻すということになります。2番目としまして、その100を起点として減損処理を行うということになりますので、P/Lに計上される減損損失としては、再評価前の簿価である100と減損処理後の簿価である40との差額、60がP/Lの方に計上され、それに対応して税効果の処理も行われるという処理になると思われます。

以上のように、A法でいきますと、過去に再評価を行ったかどうかにかかわらず、同じ減損損失が出るということになるわけです。

理論的にはA法というやり方もあると思われますが、それでは実務上の観点、あるいはいろいろな観点から土地再評価というものを考えたときに、どういうことを考慮する必要があるのかということをちょっと考えてみました。それは3ページにまとめましたので、ご説明したいと思います。

まず、再評価した土地の売却のときの会計処理との整合性ですけれども、売却のときの処理については、会計士協会のリサーチセンターからQ&Aが出ております。読み上げさせていただきますと、「再評価の対象となった土地を売却した際に、当該土地に係る再評価差額金を取り崩すことになりますが、これは土地の簿価を再評価前の簿価に戻し、土地売却損益を修正するためのものではなく、剰余金計算を通して再評価差額金を未処分利益に繰り入れるための処理です。」ということで、これは先ほどご説明したB法と同様の処理、再評価後の簿価をもとに損益を出すという処理だと思われます。

そこで、逆にB法ではなくてA法を使ったというケースではどういうふうになるんだろうということを考えてみました。これは3月決算で再評価前、例えば100だとしまして、それを一たん200に再評価によって簿価を上げた。それを例えば、時価が150に下がった時点で150で売却するというようなケースですけれども、この土地を、例えば3月決算で3月31日に売却したというときには、損益計算書に50の売却損が計上されるということなんですが、そうではなくて4月1日、期首に売却するということになりますと、3月末では一たん売却収入相当額まで評価を下げるということになりますので、そうしますと、その処理は減損処理ということで、P/Lにはどこにも出てこないということになります。このように、売却日によってP/Lに計上される損失が全然違ってくるということになるという問題があるのではないかということです。

それから2番目ですけれども、再評価による土地簿価の増減額と再評価差額金の対応関係についてです。再評価差額金は、法律上、自己株式の消却に用いることができるとされておりますので、再評価による土地簿価の増加額と再評価差額金プラス繰延税金負債、これがイコールの関係にはならない場合があるのではないかという点です。

それから3番目ですけれども、再評価で簿価を上げた場合と下げた場合で、減損処理について、やはり整合性が必要ではないかと思われます。

それから、4番目ですけれども、国際会計基準ではどういうふうになっているかということを少し考えてみたんですが、国際会計基準では、再評価された資産の減損損失というのは、再評価による減額と区別することはできないという理由でもって、再評価剰余金に保持されている金額を超過しない範囲で、直接に同一資産の再評価剰余金に対して認識することとなっています。これは要するに資本直入するということですけれども、そういう処理になっているわけです。こういう国際会計基準で認められている再評価と我が国の再評価を比べてみますと、我が国の土地再評価というのは、1回限りの臨時的かつ例外的な会計処理であるというように実務上解釈されておりますので、継続して定期的に再評価を行わなければならない国際会計基準における再評価とは違って、特に減損損失と再評価による減額というのを区別できないのではないかという心配をする必要はないということが言えると思います。

また、国際会計基準では、再評価の際に取得原価よりも減額する場合は、資本直入ではなくて損益計算書で損失を計上しなければならないということになっております。我が国の土地再評価では、評価を下げた場合も上げた場合と同じように資本直入であるという点で、考え方が少し違うのではないかということが言えると思います。

再評価に関しては以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

ただいまのご報告に関しまして、ご意見、ご質問のある方はお出しいただきたいと思います。

どうぞ。田辺委員、お願いします。

○田辺委員

ちょっと前回も述べさせていただいたことと一部重複するようになって恐縮なんですけれども、1つは国際会計基準に関するお話なんです。確かに荒木委員がご指摘になりましたとおり、土地再評価法というのは1回限りの臨時的な会計処理であって、IASにありますような継続的な再評価とは異なるというのはそのとおりだと思うんですけれども、再評価剰余金のある土地に減損処理を行うという点に着目すれば、土地再評価法を適用した土地の減損処理というのも、一面ではIAS 36における再評価を行った資産の減損と、経済効果としては同じようなものではないかという側面もあるんではないかと思います。

また、IAS 16の再評価の規定では、再評価で取得原価より減額する場合にはP/Lで損失計上しなければならないことになっているわけですけれども、その場合でも、以前に再評価を行った資産については、再評価による減少額というのは、再評価剰余金がある範囲内では、その剰余金に対して直接認識することになっておるようでして、また、逆に再評価で簿価を上げるときには、通常はP/Lは通さないようですが、これも以前に再評価で減額をしたときに費用認識した部分がある場合には、その範囲内で収益として認識することになっているようでございます。

このように、IASでは損益はリサイクルはしないという考え方をとっているんですけれども、以前再評価を行って簿価を増減させたのと反対方向に資産の減損または再評価による簿価の変化が起こった場合には、以前にP/Lを通したかどうかということに着目して、それと整合的な扱いがなされているようです。荒木委員ご指摘のように、IAS16というのは減損の規定ではなくて再評価の規定ですし、また、我が国は継続的な再評価の規定がないという点で違いは確かにあるんですけれども、IASで以前の処理でP/Lを動かしたかどうかということと整合的な取り扱いをとっているということは、1つの考え方として参考にはできるのかなというふうに考えております。

それから、もう一つ、A法、B法ということで今回ご報告いただいたものは、前回いただいた資料では、リサイクルする方法としない方法というふうに書いてあって、それに多分対応しているんだと思うんですけれども、土地再評価差額金をリサイクルするか、あるいはしないかという整理をすれば、理論的に確かに荒木委員のご報告のとおりになるのであろうと思います。

これは、またこの前の繰り返しになって恐縮なんですけれども、私どもとして違和感があるというか、バランスを欠くというような思いがあるところというのは、再評価で簿価を上げたときにP/Lを通していないものを、減損で簿価を切り下げる際だけP/Lを通すことになるということに、ちょっと感覚的になって恐縮なんですけれども、バランスを欠くというような思いがあるという意見はございますので、この点について、引き続きご検討の対象にしていただければというふうに考えます。

以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

そのほかのご意見、ございますでしょうか。

どうぞ、伊藤委員。

○伊藤委員

この仕訳の件、ちょっとイメージがよくわからないんです。2ページの右の方の仕訳のB法の下、3つの仕訳なんですが、繰延税金資産を計上して、法人税等調整額をマイナスするといいますか、この2つの仕訳は要らないんではないかという気がするんです。イメージ的に言いますと、100のものを60に評価下げをした。さらにそれを40に評価下げをしていますから、左のケースですと150のものを280に評価上げをして、それを120まで落としていますので、その評価上げをしたという会計上のテクニックを無効化するという意味で取り崩すのが要るのかもしれないんですが、この右の方ですと、100を60に評価下げして、それはそのままとして、さらに60を40にしている。そうすると、恐らくこの仕訳、下の2つがそうだと思うんですが、60に下げたときの取り崩しは何か要らないように思うんです。いかがなんでしょうか。

○辻山部会長

荒木委員、いかがですか。

○荒木委員

B法の処理は、そうしますと、再評価差額金がずっと残ってしまうということになると思うんですが……。私もこの仕訳についてはP/Lには余り関係ないというふうに考えていまして、余り深くは考えなかったんですが、土地再評価法で減損処理を行ったときには取り崩すようにというふうに書かれていますので、それを単純に取り崩すべきではないかというふうに解釈して考えたんですけれども、もちろん、特に法律的に厳密に考えたわけではありませんので、違う考え方もあるかもしれないと思っています。

○辻山部会長

ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

それでは、次の川村委員の報告に移らせていただきたいと思います。

次に川村委員から、割引率の見積もり及びキャッシュ・フローの見積もり期間の2点についてご報告をいただきたいと思います。

まず、割引率の見積もりからお願いいたします。

川村委員、よろしくお願いいたします。

○川村委員

それでは、ご報告させていただきます。資料の2-1でございます。

割引率の見積もりの問題につきましては、リスクをキャッシュ・フローに反映させる場合と、割引率に反映させる場合の2つがあるということを、まず出発点として大別させていただきました。

(1)が、リスクをキャッシュ・フローに反映させる場合どうするかということですが、この場合にはキャッシュ・フローの方が調整されておりますので、割引率にまたリスクを反映させますとダブルカウントということになるから、割引率にはリスクを反映させない、つまり、無リスク利子率を採用するということになるという形になるかと思います。

なお、キャッシュ・フローをどうやって調整するのかという点につきましては、この部会でも何度かご発言があったかと思うんですけれども、例えば確実性等価に換算するための係数というようなものを考えてみるというのが現実的なんだと思うんですが、3ページ目なんですけれども、大ざっぱな話だけさせていただきますと、例えば割引率に乗せるリスクプレミアムというのがわかっていれば確実性等価係数もわかるという、つまり同時に決まるという関係になっているということをお話しさせていただいています。ですので、割引率にどれだけ乗せるのかというのがわかるのであれば、確実性等価係数も自動的にわかりますので、それはどっちが難しいとか、どっちが先に決まるとか、そういう話ではないという点だけ参考までにちょっと書かせていただきました。

また1ページに戻らせていただきますが、(2)は、リスクを割引率に反映させる場合ということで、代替的に考えられるものを幾つか提示しております。もちろん出発点は使用価値を計算するという目的でございますので、これに見合ったもの、例えば国際会計基準でいっているのは、当該資産に固有のリスクを反映した市場が評価する収益率、市場の平均的な収益率といったものがまず掲げられております。

これは(a)とさせていただきましたが、例えば典型的には、都市部の不動産物件で、例えば港区にある物件であれば何%といったものが大体業界の中ではわかっているというようなケースであれば、そういうものを使って割引をするというようなことが考えられるだろうと思います。資産に固有の、資産にピンポイントで合わせるような割引率を探すというような、そういったイメージであります。

(b)の方なんですが、業種が変わって、例えばメーカーなどですと、なかなかそういったレートというものを探してくるのは難しいので、現実には資本コストをベースにして計算していくということになってくるかと思います。ただ、もちろん国際会計基準では、資本コストがそのままいいとは書いていないのですが、それを調整して、先ほどの(a)のようなものに可能な限り近づけるような努力をしろというようなことが書いてあります。

その資本コストそのものでございますけれども、まずは何といいましても加重平均のものというのが基本かと思います。企業には負債と自己資本の2通りの資金の源泉というのがございますから、こちらのウエートで加重平均をした資本コストというのが一般に認められているところかなと思います。借り入れの資本コストについては、追加借入利子率を計算するとか、あるいは極端にそれが高い、低いというような場合であれば、借入資本の平均的な利子率といったものを計算するとか、そういったものが考えられます。

他方、自己資本コストに関しましては、一番基本となりますのは、いわゆるCAPM(資本資産評価モデル)などを用いたものということでありますが、こちらにつきましても参考の2として、本当に教科書的な説明で恐縮なんですけれども、3ページのところに算式のようなものを掲載させていただいております。

式があるんですが、ra というのは、例えばa証券、あるいはa企業の資本コストということで、それはリスクフリーのレートに、βに括弧の中を掛けたものを加えたものですが、括弧の中は、いわゆるリスクプレミアムと言われる部分で、そのリスクのあるポートフォリオの期待収益率からリスクフリーレートを引いた差額、これにいわゆるβという掛け目を掛けるんですが、こちらは均衡ポートフォリオに対する当該証券への収益率の増分というような形で定義されているものであります。計算例、具体的なところを若干説明させていただいております。

それで、また戻らせていただきます。2ページの方に、その他どんなものが考えられるかということなんですが、マル2としまして、借入資本コストであります。例えば追加借入利子率などが一番わかりやすいんだと思うんですが、自己資本の額が小さくて、借入金の方の比率が高いような企業でありますと、こちらでやってもそんなに大差がないということで、一々自己資本コストを計算しなくてもいいような場合も考えられるのかなと思います。

あと、マル3でございますけれども、いわゆるハードル・レートと呼ばれるもので、企業が継続的に意思決定に当たって、例えば15%を超えないと投資をしないというような資本予算制度を採用しているような企業であれば、こういったハードル・レートが最低限満たすべき資本コスト、収益率ということになりますので、これを用いて計算することもまた考えられるのではないかということであります。

以上、割引率として採用が考えられるものを幾つか列挙させていただきました。

以上でございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

ただいまの資料の2-1につきまして、川村委員のご説明で特にご質問、ご意見、ございますでしょうか。

太田委員。

○太田委員

今のご説明で、数式とかが出てきてすごく難しいなというのが正直なところなんですが、そうはいいましても、割引率にリスクを反映する場合には、例えば追加借入利率ですとかハードル・レートといった、割と実務的にすぐ使えるかなというようなものが挙げられていると思います。それに対応する形で、例えばキャッシュ・フロー側にリスクを反映する場合に、確実性等価係数は、リスクプレミアムがわかればそこから計算可能だというご説明だったかと思います。ただ、例えば実務的にいきなり確実性等価係数というものを求める方法というのは、何かあるのかどうなのか、その辺、何かご存じであれば教えていただきたいと思うんですが。

○辻山部会長

川村委員、よろしくお願いします。

○川村委員

確実性等価係数の計算は、参考1で示させていただいたような形かなと思うんですが、これを具体的に実務の中に落とすとなりますとなかなか難しいと思われますけれども、業界平均的な考え方といいますか、特定の業種についてはキャッシュ・フローに一律0.9を掛けてしまえとか、例えば電力業とかだったら、キャッシュ・フローはかなり確実なので、それほど減らさなくても済む。一方、リスクの高い業界であれば、例えば半導体とか、そういう業界であれば、キャッシュ・フローを0.7とか、そういう数字を掛けてしまえというような決め方はできると思うんです。ただ、0.9とか0.7とかと口で言うのは簡単ですけれども、実際にそういう数値をどうやって計算するのか、根拠が必要と思われますので、その1つの根拠のつけ方として、先ほど参考1のようなものを掲げさせていただいたというところです。

議論が堂々めぐりになって恐縮なんですけれども、ハードル・レートにかわるようなものということで、例えば思いつきでお話しさせていただければ、リスクフリー・レートとハードル・レートを比較して、例えば10%を足してやれば、その10%を先ほどの式のpのところに入れてあげれば、一応αが出るというようなことも考えられます。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

奥田委員、どうぞ。

○奥田委員

2ページのマル2のところに借入資本コストとありますけれども、日本で借り入れの金利というのは、どの程度リスクプレミアムが反映されているのかという問題があると思います。例えば加重平均の場合であれば、自己資本コストのところにシステマティックリスクというプレミアムを加算することができると思うんですが、借入資本コストの場合に、果たしてリスクプレミアムが確実に反映されるのか、例えば最近のように極めて低金利ですと、これによって求めると相当割引率が低くなって価格が高くなってしまうという問題があるのではないかなというふうに思うんです。その借入資本コストの有効性というのは、経済環境によっても変わってくるんではないかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○川村委員

もっともなお話でございまして、私も別に、無条件にこれが認められるというのはなかなか難しいだろうなと思っております。例えばここで1つ例を挙げさせていただいたのは、借入資本比率が非常に高いというようなケースですとか、あるいは大型なプロジェクトなんだけれども、ほとんど借金で賄っているとか、やはり条件をつけないとなかなか説明できない部分が出てくるのかなという気がいたしてはおります。無条件というわけではないと思います。

○辻山部会長

秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員

ちょっと確認が1つと、あとご質問が1つなんですけれども、まず確認としては、このご説明の場合に、リスクをキャッシュ・フローに反映させる場合と、割引率を反映させる場合と並列的に扱っておりまして、特にリスクを反映させる場合には確実性等価係数を用いれば、先ほどのご説明にあったように、用いる場合に、逆にリスクプレミアムを出せば同時決定の関係で出るということになるとすると、(2)のリスクを割引率に反映させる場合にも、今(a)、(b)とありますが、この(a)の前に、当該資産に固有のリスクを反映した市場平均の収益率じゃなくて、当該企業の収益率、これが入る。これは計算上といいますか、定義上といいますか、これを用いた結果というのは、上で出している確実性等価係数の場合と同時決定なので、多分優劣はないと思うんですけれども、一応整理の仕方としては、それがある方がわかりやすいんじゃないかなというか、そういう理解でよろしいのかなという確認がちょっと1点。

あともう一つ、(2)の方ですね。今の理解が正しいとすれば、(a)の前に、当該資産に固有のリスクを反映した当該企業の収益率というのが来て、これと市場平均の収益率、それから企業としての資本コストというふうに並ぶわけですけれども、その辺の優劣関係というか、あり得べきと考えると、今、並べた順番が望ましいということになると思うんですが、そのような形で考えるべきでよろしいのかどうか、ないしは制度として織り込む場合にもそういうふうに要求するかどうかという点を、ちょっとご質問させていただきたいと思います。

○辻山部会長

川村委員、いかがでしょうか。一応考えられるチョイスということなんですけれども、その中に、(2)(a)の前にあり得べきものがあるのではないかという、そういうご質問だと思うんですが、この点、いかがでしょう。

○川村委員

説明が込み入ってしまって恐縮なんですけれども、まず確認しておきたい点は、(a)も(b)も基本的にはマーケットの評価だという点であります。今、秋葉委員がおっしゃった当該企業の収益率というのが、典型的にはハードル・レートのように企業の内部で積み重ねた経験から得られたような数字として、もしイメージされているんだとすれば、これを最初に入れてしまうのはちょっと難しい、ちょっと慎重に考えなくちゃいけない面があるのかなという気がするんですが、誤解がもし含まれていたら指摘していただければと思います。

○辻山部会長

秋葉委員、いかがでしょうか。

○秋葉委員

ちょっと言い方がよくなかったかもしれませんが、(2)のリスクを割引率に反映する場合に、(a)から始まるわけですけれども、(a)は当該資産に固有のリスクを反映した市場平均の収益率を使いますが、上の(1)のリスクをキャッシュ・フローに反映させる場合で、これが原理的にはリスク込みの割引率が求められるのであれば決定をされる。したがって、割引率の選択とキャッシュ・フローへ反映させるのは、優劣の関係ではなくて同時決定だというご説明があったかと思うんです。その(1)の状態と同じものが(2)の(a)の前に入って、すなわちそれが多分資産に固有のリスクを反映した当該企業の収益率ということになるんじゃないのかなというふうに理解したものですから、それをちょっと確認したかったということでございます。

○辻山部会長

川村委員、いかがでしょうか。

今のご質問は、(a)の前に、当該資産に固有のリスクを反映した当該企業の収益率というのがなぜないのかという、こういうご質問だと思うんですけれども。

○川村委員

堂々めぐりになって恐縮なんですけれども、参考1の中の、要するにリスクプレミアムといいますか、無リスク利子率に上乗せする部分の評価が、まず当該資産に固有のものという前提で、それが資産に固有のマーケットの評価という前提で先ほどの(2)の(a)は説明させていただいております。それを入れればαも同じような数字がやはり出てきますので、キャッシュ・フローを調整する場合であっても話が両方パラレルに並ぶのかなと私は思っていたんですけれども。

ちょっと申しわけございません。正確にお答えできていないような気がしますが。

○辻山部会長

秋葉委員、追加的なご発言はございますか。

○秋葉委員

そうすると、確認としては、(2)の(a)の市場平均の収益率を使った場合、これをリスクプレミアムとした場合の同時決定の場合がキャッシュ・フローに折り込まれるとすれば、上の(1)になるということになるわけですかね。

○川村委員

そのどちらの場合もあり得るということだと思います。ですから、(1)についても、細かく(a)(b)と分けていけば、同じようにパラレルに議論ができるのかなというような気がしております。

○辻山部会長

先ほど川村委員のご説明の中で、(a)というのはIASで使っているということで、これが本当に理論的に整合しているのかどうかというのはちょっとわかりませんけれども、使用価値というものの考え方にもよると思うんです。考え方としては、ここに当該企業の収益率というのを用いる考え方もあるのかなという、そういうのが秋葉委員のご質問だと思います。

いずれにしましても、この問題は適用指針なり実務指針のレベルの話ですので、今後また実務指針の方で詰めていただく。ただ、この部会でも一応のイメージは形成しておくという趣旨なので、秋葉委員、そういうことでよろしいですか。

川村委員、よろしいでしょうか。

それでは、次の2-2のキャッシュ・フローの見積期間の上限設定に関するご説明について、お願いいたします。

○川村委員

では、資料2-2についてご説明させていただきます。

これは前回の部会で論点として挙げられました、余りにも長期のプロジェクトについては、どこかでキャッシュ・フローの見積もり期間を区切って計算させるような形ではどうかという話であります。

それで、誤解を解消したいといいますか、共通の理解を前提としたいというのが趣旨でありまして、設例ではt 0年度に土地1,000、建物1,000の不動産を取得して、耐用年数が20年、残存価格をゼロとする定額法で減価償却を行うという前提であります。5年度末で当該不動産に収益性の低下が確認されて、例えば資産の利用からの毎年のキャッシュ・フローが減る、土地の時価が下落した、こういったものを確認して、次のようにキャッシュ・フローを見積もったといたします。例えばt 5年度末における土地の公正価値は700として、土地については15年度も20年度も同じように700というふうに考えてみました。割引率は10%であります。

次の表が、これらの数値を並べてみたものです。5年度の末で減損前の簿価が1,750になります。市場平均のキャッシュ・フローと企業固有のキャッシュ・フローというのを比較のため並べております。そういうキャッシュ・フローを前提に公正価値を評価し、それぞれ計算するとこういうぐあいであります。

2番で、減損の認識の問題なんですが、比較のために、まず(1)で国際会計基準のように割引をするということを前提に計算したものであります。国際会計基準の方は、別に期間を長くみようが途中で切ろうが、割引しますので、その影響はないわけでして、公正価値、使用価値、それぞれ計算して、その結果、使用価値1,326の方が大きいということで、減損前の簿価1,750に比べてこちらの方が低いので、こちらが評価額になるということになるかと思います。

問題は(2)のケースでありまして、2ページ目であります。割引前キャッシュ・フローで減損の認識を行うときに、その見積もり期間をどこで区切るかが計算結果に影響を及ぼしてくるわけです。マル1の方では、キャッシュ・フロー見積もり期間を、例えばこの場合、残存耐用年数15年という数字なんですけれども、そうしたときには割引前キャッシュ・フローが2,800になりまして、簿価1,750よりも大きいので、減損を認識する必要はない。

マル2では、例えば10年で切ったときにどうかという話です。このときに、下にちょっと図をかかせていただいたんですが、左側、長丸でずっと囲った部分が10年分のキャッシュ・フローであります。ただ、年度年度に資産の使用から発生するキャッシュ・フローは、これは単純に足しますと1,600でして簿価よりも低いものですから、減損かなということになってしまうんですが、1つやはり抜けているのがありまして、ターミナル・バリューであります。10年で区切ったら10年時点でのターミナル・バリューを計算するということです。典型的には、例えば10年たったときにその不動産を売却した、それで幾らのお金が入ってくるのか、これをターミナル・バリューに入れるという話になるわけですが、これについては割引計算をするということになります。式を示させていただきましたが、15年時点での割引後の現在価値を出して、これは売却というのを典型的に仮定しましたので、市場平均のキャッシュ・フローで計算して725という数字を得ました。これを先ほどの1,600に加算しまして計算しますと2,325となりまして、マル1のケースよりは金額が小さくなるんですけれども、簿価1,750よりも依然高いので、この場合には減損を認識する必要はないという結論になります。重要な点は、このターミナル・バリューを含むという点であります。

それでマル1マル2を比較してみましたが、マル1の場合には、11年目以降のキャッシュ・フローは、当該企業のキャッシュ・フローと見るわけですが、マル2のケースでは売却を仮定させていただきましたので、市場平均のキャッシュ・フローで見る。もう一つは、割り引くか割り引かないかという問題でして、11年目以降のキャッシュ・フローは、マル1の場合は割り引かないのに対して、マル2では割り引きます。その違いが計算結果に出てきます。ただ、強調させていただいたところは下線部のところでして、11年目以降のキャッシュ・フローが全く無視されているわけではなくて、10年という期間を区切っても、その10年目のターミナル・バリューの中に、この11年目以降のキャッシュ・フローが含まれているという点、ちょっと設例で明らかにさせていただきたかった点であります。

以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

ただいまの割引前キャッシュ・フロー、減損の認識のところで、割引前キャッシュ・フローの見積期間に仮に上限期間というものを設けた場合はどうなるのかということについて、これまでの議論の中で、ターミナル・バリューも足し込むということは明確に理解されているとは思いますけれども、念のためということで設例を作成してくださったわけです。この点、何かご質問ございますでしょうか。

奥田委員。

○奥田委員

済みません。もし誤解があれば指摘していただければと思うんですが、例えば資産の耐用年数満了時の価格を出す場合に、例えば償却資産であれば、経過年数満了時はほぼゼロになって、残るのは、例えば不動産でいえば土地価格ということになるかと思うんですが、土地の場合の価格というのは、その土地が将来生み出すであろうキャッシュ・フローを現在価値に割り引くという考え方が、割引率の設定等の想定で、その土地にどういう建物を建てるかとかでなかなか難しい部分が実はあるんですね。例えば土地の将来価格であれば、例えば現時点での取引事例比較法に基づく市場価格とか、そういったものを将来に引き延ばす方が客観性は強いというふうに思っているんですが、いかがでしょうか。

○川村委員

全く異論ございませんで、私の設例の中でも、20年目のキャッシュ・フローというのは、現在の土地の時価700に、ちょっと建物が残っているので多少のキャッシュ・フローがあるかということを足し合わせた数字にさせていただいていまして、現在の時価をベースに計算しています。ただ、残り5年使えるという前提なので、土地の時価だけじゃなくて、建物から得られる、そこの部分の価値も残っているだろうということで、単純に700にするのもどうかなと思いまして725というような計算をつくっております。

○辻山部会長

奥田委員、よろしいですか。

秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員

今の点で確認とご質問で、これは川村委員と奥田委員と両方あるんですけれども、こういうふうにキャッシュ・フローが見積もられればこのような形でよろしいかと思いますし、先ほど不動産のお話があったんですけれども、不動産鑑定評価の方でも検討されているDCF法というのは、こういう形でやるということを念頭に置かれていると理解しているんですけれども、その辺、奥田委員の方でご存じであれば、逆に教えていただければと思います。

○奥田委員

不動産の鑑定評価でDCF法を使う場合には、普通土地建物一体で使います。復帰価格という最後の価格については、これはまたそこで再投資が繰り返されるというような形で永久還元して復帰価格を出すというのが普通で使われております。土地だけの価格ということであれば、これはDCF法の使い方とはまたちょっと違いますので、この形とはちょっと違うかなと思います。

○辻山部会長

逆瀬委員、よろしいでしょうか。今の川村委員の2ページ目のターミナル・バリューのところは、そこは市場の方をとっておりますが、ご意見は特にございますでしょうか。

○逆瀬委員

今のところ、大変大事な話ということで、皆様方のご意見をじっくり拝聴しておりました。期限を切りますね。アイデアとしてそれは1つの考え方で、そういう方法もあるというふうに思いますが、期限を切ったときに、実際には、そのルール上の定められた期限を超えて使用する計画があるという場面の話を今されていると理解しています。

10年で切ったときに、11年目のバリューは土地とか建物というふうに限定して議論を今されていますけれども、事業として見るだろうと思うんですね。不動産業のような場合とは別に、例えば製造業のような場合で一定の製造のラインを持っている。こういうような場合は、土地、建物の時価ですよという話をいきなり持ってこられても、これは話が違うなというふうに思って伺っておりました。したがって、10年を切ってもなお使用し続ける場合には、直ちに今処分したときの処分価値でやるんですよというような議論はちょっと違うんじゃないかなと。だから、ケースによって少し考え方を改めて、時価というのは直ちに、ターミナル・バリューで処分価値というふうにやるのか、そうではなく、やはりただいま現在使用している状況を反映したバリューでいいんだと、こういうような要件を入れないと、10年を超えたらこうなる可能性があるわけですね。マーケットが存在しないとかいうような事業の場合には特にそうだと思います。要するに、直ちに売れというような話で仮定するのは、やはり実態に合わないような気がいたします。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

その点は川村委員も先ほど、この設例で16年目以降を市場CFの方をとっているのはあくまでも参考だというご指摘がありましたので、念のためということです。

川村委員、どうぞ。

○川村委員

おっしゃるとおりでありまして、私の方でわかりやすいといいますか、売却というものを想定して公正価値の方をとるというのが、そういう理解も1つできる反面、もう一つの理解の仕方としては、使用し続けているんだ、ただ、そのときのキャッシュ・フローも、10年もたてばなかなか他の企業に対する優位性というものがなくなってきて、この私の設例では80と100というふうにキャッシュ・フローを変えてしまいましたけれども、例えばこの両方の数字がもうほとんどイコールになっているというようなことを競争均衡みたいなことで仮定して計算すると、どちらをとっても同じになるというような考え方もまたできると思います。もちろん10年たってもなおかつブランドがあるとか、超過収益力があるというような前提に立てば、それがきちんと説明できるのであれば全く問題ないと思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

品川委員、どうぞ。

○品川委員

先ほどの川村委員と奥田委員のやりとりを伺って、また全体の雰囲気からちょっと感じているんですが、ターミナル・バリュー等の計算等において、これは上限期間とは直接関係ないんですけれども、結局は物価変動については一切関知しないというか、それは対応できないということなんですね。経験則的に、今、過去10年間地価が何%ずっと下落していて、10年を限った場合に工業用地が恐らく何%下落するだろう。それがターミナル・バリューにどういうふうに反映するだろうという、そういう測定は一切考えられない。念のためですけれども。

○辻山部会長

そのところのご説明では、考えられるのは時間価値で、今後値上がりする、値下がりするということは考えないというのがただいまのご説明じゃないかと思います。

ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、理解を深めるということで、2人の委員の方にご説明いただきました。

次に、意見書(公開草案)のイメージについての審議に入りたいと思います。

その前に、11月30日に開催されました自民党の企業会計に関する小委員会の模様について、事務局から簡単に説明していただきたいと思います。

○細田参事官

私の方から、お手元に資料3がございますので、これに基づきまして説明したいと存じます。

11月30日に塩崎恭久先生を小委員長とします自民党の企業会計に関する小委員会が開催されまして、そこでこの固定資産の減損会計についてどういう工程を考えているのか、スケジュール感を示してほしいという依頼がございましたので、ご説明に参りました。金融庁のほかに、当部会からは中島部会長代理、小宮山委員、それからまた別に、財団の企業会計基準委員会の方から斎藤委員長、西川副委員長とご出席いただきました。

そこで用いました資料がこの資料3でございます。こういうご説明を申し上げました。

新会計基準の導入までの一般的な工程として、こういう作業が必要である。この表のとおり、初めに会計基準の策定をしなければならない。今これをやっております。公開草案をつくり、パブリック・コメント、公開草案修正、基準の確定という手順を経る。その後に実務指針の策定が必要である。これは今後は財団の方でされると承知しておりますが、案をつくり、論点整理、公開草案等々の手続が必要である。そして実務指針ができますと、この会計基準、あるいは実務指針の周知作業が必要である。それは1つには、これは左側の方ですが、企業における準備が必要であり、例えば経理システムを減損会計ができるように構築しなければいけませんし、あるいはこのキャッシュ・フロー等の計算等のために、あるいは公正価値も含めてですが、データ収集をしなければいけない。一方、会計監査人の方でも、準備が必要であって、この基準、実務指針の中身の周知・研修等が必要であり、さらに監査上の取り扱いも検討されることになります。

そうしますと、両方の作業をやっておりますと、一応その実務指針をつくった段階では想定されることについての答えが出ているはずですが、通常の場合には、実際に作業をすると、さらに追加的な疑問等が出てきて、細部についての照会・回答が行われ、結果としてそのQ&Aみたいなものができるということが、大きな会計基準の場合に通常そういう手順が必要になります。それを踏まえて早期適用といいますか、通常であれば任意に選択的に適用できるという期間があり、その後全面実施になる。これが200X年度に導入されるということでございます。

それから、続いて2枚目に移りまして、今のは作業手順ですが、この資料でスケジュール感をご説明いたしました。ここでは過去の大きな会計基準、連結、金融商品、退職給付に係る会計基準について説明いたしました。

それぞれ、導入年度がずれておるんですが、一番右側のボックスが全面実施、強制適用になりました年度、その1つ左隣が早期適用、任意実施がされた期間、それから、その1つ前の年にこういうことが起こり、さらにその1つ前にこういうことが起きるということを例で説明いたしました。例えば、この一番下の退職給付ですと、10/4というのは平成10年4月という意味でございますが、平成10年度に公開草案、基準確定が行われ、翌年実務指針がつくられ、Q&Aが作成され、その翌年度に早期適用が始まり、中間決算があり、13年4月、今年度でございますが、全面実施、強制適用が行われているということをご説明いたしました。

3枚目は、全く今の2枚目と同じ表でして、具体的な時点を別の形で示したものでございます。

そして、この過去の例を前提にしまして、減損会計の検討状況について、今、この企業会計審議会における検討状況から見ると、14年度といいますか、2002年度の上半期には公開草案の策定に至るんではないかという、これは今後審議会でご決定いただく事項ですが、その見込みというのか、そういうものをお示ししました。それから、その後に実務指針の策定が必要なわけでございますが、過去の例を見ても、これは1年以上かかるというのが通例であるということをご説明いたしました。そして、今回の減損会計について、かなりこれは難しい会計であるということをご説明しました。それから、実務界の方からは、特に経済界ですが、この実務指針、あるいはQ&Aが策定されてから適用初年度の間に1年間の時間が欲しいということを言われておりますということ、以上を申し上げました。

そういう説明をしましたところ、それに対しまして、この表を、特に過去の例のボックス、一番下の基準のボックスを眺めて、14年度、すなわち2002年度上半期に公開草案ということは、早期適用が2004年度であり、全面実施が2005年度であるということを意味するんではないか、そして、そうしたものではやや遅いので、2003年度4月から少なくとも早期適用してはどうかという意見が出されました。

私ども、あるいはほかの中島部会長代理等から、金融商品会計等、ほかの会計基準については、少なくとも金額自体は、一応マーケット等で出ているものをどう会計処理するかという会計基準であったのに対して、この減損会計というのは、価格自体、金額自体をキャッシュ・フロー等の見積もりをしながら出していくという意味で、今までに余り例のない非常に難しい会計であるということで、実務上一定の準備期間が必要であるという旨を繰り返し説明しました。それから、中には、少なくとも任意適用は早く認めてもいいんではないかと、こういう議論もございましたが、実際上準備が整わないうちに一部とはいえ始めていくというのは、なかなか困難ではないかという説明も申し上げました。

いずれにいたしましても、最終的に先生方の中から、2003年4月以降早期適用をできるようすべきとの強い意見があったということを、この企業会計審議会にも伝えてほしいということでございました。

私からの報告は以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、時間もございますので、公開草案のイメージについて審議に入りたいと思います。

この資料は、冒頭申し上げましたように、起草委員の方々と共同して事務局に作成していただいたものです。とりあえず意見書(公開草案)のイメージを持っていただくというために作成したものでございます。当然ですけれども、この資料には本日の意見交換の内容は反映されていないということでございます。本日いろいろご指摘をいただいて、具体的な草案の起草に入りますので、意見については十分にご発言いただきたいと思います。

それでは、事務局から資料の内容を簡単にご紹介させていただきます。よろしくお願いいたします。

○平松課長補佐

では、ご説明をさせていただきます。時間が少なくなってきましたので、足早に説明をさせていただきます。

資料は4-1と4-2でございますが、4-1の方が前文、それから4-2の方が基準・注解のイメージという構成になってございます。

前文の方がカバーする範囲が広いものですから、4-1の方でご説明させていただきたいと思います。

この構成と、それから真ん中の「内容」、それから「要検討事項等」というふうに分かれているわけでございますが、「内容」というところに書いた事項につきましては、起草委員会内部ではそれほどの異論がない部分でございます。それから、要検討事項というのは、まだ意見集約が終わっていない部分ということで記載をさせていただいております。

まず、構成でございます。経緯がございます。それから2番目として会計基準整備の必要性ということで、これは仮に論点整理の方から持ってきているわけですが、会計基準の国際的調和が喫緊の課題であること、それから、不動産を初めとして事業用資産の価格や収益性が著しく低下している昨今の状況下で、将来に損失を繰り延べているとの疑念が財務諸表への社会的信頼を損ねていること、こういったことを記載するのかなということでございます。

それから、3番目の基本的な考え方でございます。この部分につきましては、論点整理及び経過報告に記載されていたことを主に記載をしております。減損会計は事業用固定資産を対象とすること、それから、事業用固定資産については取得原価基準が適用され、減損会計は取得原価基準の枠内で行われる会計処理であること、それから、固定資産の減損処理とは、資産または資産グループの収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件のもとで回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理であること、減損処理とは、本来、投資期間全体を通じた投資額の回収可能性を評価し、投資額の回収が見込めなくなった時点で、将来に損失を繰り越さないために帳簿価額を減額する会計処理であること、それから、減価償却は取得原価の規則的配分手続、臨時償却は耐用年数や残存価額の見積もり修正に伴う減価償却の過年度に遡った修正であり、資産の回収可能性とは必ずしも対応せずに行われる手続である点で、減損処理とは異なるということ。

それから、最後の、減損損失は臨時償却を行う前に認識しなければならないことでございますけれども、これにつきましては経過報告等では記載されてございませんでした。前回、この点につきましては、秋葉委員の設例に基づきまして審議をしていただいたところでございます。この点につきましては、起草委員会内で議論をしたわけでございますが、基本的に減損損失は臨時償却を行う前に認識するという方向で集約をしておりますので、部会にお諮りしたいということでございます。米国基準においては、耐用年数の変更による臨時償却よりも減損損失を反映させることを優先するというような規定があるようでございます。

それから、逆瀬委員から前回部会でご発言があったと思うんですけれども、実務上の観点からも、減価償却を出した後に減損損失を計算するということは実務上難しいのではないかというようなご指摘もございました。

4番目に、会計基準の要点と考え方ということでございます。

まず対象資産の問題。有形固定資産、無形固定資産、それから投資その他の資産を対象とするということ、それから、他の基準に減損や評価に関する定めがある金融資産、繰延税金資産、前払年金費用は対象から除くということでございます。

2ページ目でございます。減損損失の認識及び測定の問題です。

まず減損の兆候でございます。資産に減損が生じている兆候がある場合には、その資産について減損に関する調査(割引前将来キャッシュ・フローと帳簿価額の比較)を行うこと。それから、兆候の例示でございますが、営業損益、キャッシュ・フローの実績数値や予算・予測の悪化、資産の使用価値を低下させるような使用範囲又は使用方法の著しい変化(事業の再構築や予定されていた時期よりも早く資産を処分すること等)、経営環境の著しい悪化、資産の市場価格の著しい下落と、こういったことにつきまして兆候の内容として説明をするということになるんではないかと思います。

それから、減損損失の認識でございますが、割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回っている場合には、減損損失を認識するといったことについて説明がされるということでございます。

要検討事項の方については、過去のキャッシュ・フローを考慮すれば当初投資額の回収が見込まれる場合の取り扱いをどうするかといった問題につきまして、まだ意見が集約をされていないところでございます。

それから、減損損失の測定の問題でございます。減損損失を認識する必要があると判断された資産または資産グループについては、回収可能価額まで帳簿価額を減額すること、それから、当該減少額は当期の損失として処理すること、こういったことが説明されているところでございます。

続きまして、将来キャッシュ・フローでございます。これにつきましても経過報告のベースで大体記載されております。企業に固有の事情の照らし、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積もること、最も生起する可能性の高い単一の金額、または、生起し得る金額をその確率で加重平均した期待値を用いること、それから、資産の現在の使用状況等に基づいて見積もること。その中には、将来の設備投資や事業再編をどう取り扱うかといった問題の記述が含まれるものと思われます。将来の用途が定まっていない遊休資産については、現在の状況等に基づきキャッシュ・フローを見積もることになること、それから、利息の支払及び法人税等の支払及び還付はキャッシュ・フローの計算に含めないということを記載するということでございます。それから、これは前回秋葉委員のご報告にもあったかと思うんですけれども、減損損失を認識するかどうかを判定するために見積もられる割引前キャッシュ・フローの算定においては、キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを反映させる必要はないということを記述してはどうかということでございます。

それから、右側の要検討事項の方でございますが、減損損失を認識するかどうかを判定するために見積もられる割引前将来キャッシュ・フローの見積もり期間に関する制限を設けるべきかどうかという、先ほど川村委員の方からもご説明がございました問題でございます。起草委員会の中では、そこの括弧に書いてあるような1つの考え方が有力視されております。前回、秋葉委員の方からご説明がありましたように、大きく分けて3つの考えが示されておりまして、1つのものとして、土地以外の主要な資産の残存使用期限を上限にするという案がございました。これは新しい米国基準の考え方でございます。2番目に、土地以外の主要な資産の残存使用期間と合理的な上限期間のどちらか短い方を上限とすべきであるという考え方、それから、3番目に、すべての資産、資産グループについて合理的な上限期間を設けてはどうかという3つの考えが示されたわけですけれども、ここの括弧の中に書いてあるのは、その2番目の考え方に比較的近いものではないかと思われます。すべての資産について合理的な上限期間(例えば10年)を設定する。この結果、主要な資産の残存使用期間と合理的な上限期間のいずれか短い方を用いることにしてはどうかということでございます。土地をどうするかという問題は、まだ整理をされていないところでございます。

それから、3ページ目でございます。

割引率でございます。これは経過報告と同じ考え方が示されております。貨幣の時間価値と、キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを反映した税引前利率とする方法と、キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクをキャッシュ・フローの見積もりに反映させ、利子率は無リスクの税引前利子率とする方法のいずれも認めることということでございます。

続きまして、資産のグルーピングの問題でございます。まずグルーピングの方法でございますが、このうち、最初のポツと3番目のポツは経過報告で記載されているところでございます。他の資産または資産グループが生成するキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位という問題と、それから、実務上は、企業における管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の単位等を考慮してのグルーピングが行われると考えられるということ。これは前文だけの記載になるかと思われますけれども、そういった考え方が示されている。もう一つ、それから真ん中のポツでございますが、これはIASにこういったことが基準として書かれているものですから、確認的な意味で記述してはどうかということでございます。グルーピングされた資産の割引前将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の算定方法は、当該資産グループの帳簿価額と整合していなければならないという問題でございます。

それから、右側の要検討事項の方でございますが、まず最初のポツは、1つの資産グループが連結の範囲に含まれる複数の会社にまたがる場合の取り扱い。これは逆瀬委員と産業界の方々からの要望があるところでございます。この問題についてはまだ未解決でございます。

それから、真ん中に戻りまして(2)のところですが、減損損失の配分方法の問題です。各資産の帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法によりまして、各資産グループの構成資産に配分するということでございます。この問題については、前回川村委員の方からご報告があったところでございます。

それに関連いたしまして、その配分の限度の問題でございますが、減損損失を配分することによって、個別資産または当該資産グループに含まれるより小さな資産グループについて見積もられる正味売却価額または使用価値、正味売却価額や使用価値が容易に算定できる場合に限るということなんでございますけれども、そういったものを下回る金額まで帳簿価額を減額してはならないということにつきまして規定するかどうかということの検討が必要だということでございます。

それから、共用資産の問題でございます。共用資産につきましては、経過報告に記載されたとおり、ほぼそのとおりでございます。まず原則といたしまして、共用資産については、関連する複数の資産グループに共用資産を加えたより大きなグルーピングを行うということでございます。例外的方法といたしまして、共用資産の帳簿価額を当該共用資産に関連する資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、各資産グループに配分することができるといったことでございます。それから、共用資産を含む資産グループについて減損損失を認識した場合における減損損失については、共用資産を含まない個々の資産グループについて認識された減損損失を控除し、残額を共用資産に配分するということでございます。この点につきましても、前回川村委員の方からご報告をいただいたところでございます。

それから、その際に1つ問題になりました本社費の問題でございますが、この問題につきましては、起草委員会内では、各資産グループのキャッシュ・フローを算定する際には、本社費を配賦する、キャッシュ・フローのマイナス項目として含めるということではどうかという議論が行われているところでございまして、この点につきましても本日ご意見をいただきたいところでございます。

4枚目でございます。

のれんの問題でございます。この点につきましては経過報告と変わってございません。のれんの帳簿価額について、当該のれんに関連する資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、各資産グループに配分すること、帳簿価額を配分しなかったのれんにつきましては、のれん及びのれんが関連する資産グループを含むより大きな単位でグルーピングを行うこと、それから、のれんを含む資産グループに生じた減損損失は、のれんに優先的に配分することといったことを記述してはどうかということでございます。それから、第一部会との関係ですが、これにつきましても経過報告と同じようなものでございますので、これについても言及してはどうかということでございます。

それから、右側の要検討事項でございますが、のれんの減損を認識するかどうかという問題で、認識の際の見積もり期間の問題なんですが、これについては、のれんの特殊性というのでしょうか、のれんの性格から、例えばのれんが主要資産となるのかどうかとか、それから、のれんを含まない場合とのれんも含む場合と同じ取り扱いでよいのかといったような問題がございまして、こういった点も起草委員会で現在議論しているところでございます。

減損処理後の会計処理でございますが、これについては、減損損失控除後の帳簿価額に基づいて減価償却を行うこと、それから、減損損失の戻し入れは行わないこと、こういったところを記述することになるかと思います。

それから、開示の問題でございますが、まず貸借対照表につきましては、貸借対照表価額といたしまして、取得原価から減価償却累計額、それから減損損失累計額を控除した価額をもって貸借対照表価額とするということ。それから、直接控除方式を原則とし、間接控除方式も認めるということ。それから、直接控除方式を採用した場合には、直接控除いたしまして、控除後の金額を取得原価として表示する。それから、間接控除方式を採用した場合には、累計額を控除項目として表示するということなんですが、その減損損失累計額と減価償却累計額を合算して表示することを認めてはどうかということでございます。

P/Lにつきましては特別損失として表示するということです。

それから、注記事項といたしましては、減損損失を認識した資産、それから減損損失の認識に至った経緯、それから金額、グルーピングの方法、回収可能価額の算定方法等、こういった点について注記を行うということでございます。

5ページ目でございます。

リース取引の問題でございます。当然ながら、売買処理を行っている場合には、ほかの固定資産と同じ減損の取り扱いになるのかと思いますけれども、ここに書いてございますのは賃貸借方式をとっている場合の処理でございます。経過報告では余り具体的には書かれておらなかったんですけれども、今回はかなり書き込もうかということでございます。

まず、ファイナンス・リース取引により使用している資産または当該資産を含む資産グループの減損を検討するに際しては、当該リース賃借資産の未経過リース料の現在価値を当該リース賃借資産の帳簿価額とみなして、本会計基準を適用するということ、重要性がない場合には、割引前の数値を使えること、それから、この場合においては、将来キャッシュ・フローの見積もりにリース料の支払いを含めてはならないこと、リース賃借資産に配分された減損損失は、負債として計上し、リース契約の残存期間にわたり規則的に取り崩すべきこと、取り崩された金額は支払いリース料と相殺すること、リース賃借資産の重要性が低い場合においては、この取り扱いを行わないことができること、こういったことを記載してはどうかということでございます。

それから、投資不動産でございますが、投資不動産につきましては、経過報告にもいろいろ記載しましたが、こういった理由から、投資不動産については、時価の変動をそのまま損益に算入せず、他の固定資産と同様に取得原価基準による会計処理を行い、必要があれば減損処理を行うことが妥当であること、それから、投資不動産の時価情報の注記については、部会において意見が集約されず、開示の必要性についての意見が分かれていること、したがって、この問題は今後の課題としてはどうかということを記載してはどうかということでございます。

それから、実施時期等でございますが、ここは単に書き方の問題ですけれども、これは過去の基準から見るとこんなことかなということでございます。これはお読みいただければわかると思いますので、説明は省略させていただきます。

それから、右側の方、検討事項の方でございますが、ここに実務指針、適用指針につきまして委任をする事項を例示列挙してはどうかということでございます。これは退職給付会計基準でもこのようなことが行われたんですが、その際にキャッシュ・フロー算定の方法等々、いろいろな一般的な事項に加えまして、土地の再評価の問題とか、中間会計期間における取り扱いなどにも加えてはどうかということでございます。

足早でございましたが、大体以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの資料の4-1に関しまして、4-2もそうですけれども、ご意見、ご質問、ございましたらお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。

斎藤委員、どうぞ。

○斎藤委員

このイメージの前文の方の2ページの減損損失の認識のところの右側、要検討事項ですね。ここで、過去のキャッシュ・フローを考慮すれば当初投資額の回収が見込まれる場合の取り扱いをどうするかというのが要検討事項になっているわけでありますけれども、どうするかという問いを出している一方で、後の方の意見書のイメージの基準・注解の方を見ますとこれは入っておりませんので、基本的には基準・注解の方には含めないというお考えだろうと推察いたします。

それは結論として別に構いませんけれども、少なくとも減損損失の認識のところには入っていないのですが、結論は結論で別に構わないんですけれども、少なくともこの間の論点整理や経過報告の段階では入っていた論点でありまして、しかも減損損失の認識という基準本体にかかわる部分に書き込まれていた議論であります。この議論をもちろん検討の上で削除するとか、基準本体に含めないというのは十分結構なことなんですが、たしかこの間、私も何回か欠席いたしましたから、余り大きなことは言えないんですけれども、そういう議論は余り十分にされていなくて、たしか前回秋葉委員から詳細な数値例まで出していただいて議論をした経緯がございます。それが突然審議会での議論を経ずに基準・注解のところから姿を消すということについて、多少の違和感を持ちますが、結論自体について特にこの段階でクレームをつけるつもりは全くありません。

ただ、一言、これは重大な問題ですので、説明ないし意見を申し上げておきますけれども、この簿価の切り下げという意味での減損の中には、既にさんざん議論しましたように、過去の減価償却の不足分が含まれている。ところが、過去の減価償却の不足分というのは、これは基本的には過年度の損失であります。それに対して減損というのは当期の損失なんですね。しかもそれは将来の損失の先取りというような意味での当期の損失であります。その意味で両者は非常に性質が違うわけであります。しかし、この間の経過報告等にも書いてありますように、遡及修正がない日本の制度のもとでは、どちらも当期の損益計算書で処理されるということでありますので、それは遡及修正がないという前提のもとで意味を持つ決め方であります。それは経過報告をごらんになれば十分書いてあることであります。

そういう遡及修正がないという前提は、IASの動向等を見れば明らかでありますように、ごく近い将来に検討課題に上ってくることはほとんど必至なわけですね。ですから、当然遡及修正の問題が日本の会計制度上議論の対象になってくるということは、十分予想して我々は今議論しなければいけないと思うんですね。もちろん日本で遡及修正ができるかどうか、あるいはするのかどうかということは、これは全然わかりません。日本の制度の問題でありますから全然わかりませんけれども、仮にそれが取り入れられるというときに、今つくろうとしているこの基準が制約になるとか、あるいはそれを早々に変えなければいけないというのは非常に困るんですよね。半分冗談ですけれども、私どもの基準委員会の方に負担が回ってくる可能性がありますので、なるべくそういうことは避けたいという感じがいたします。ですから、その意味で、十分予想されるような前提の変化に対しましては、その前提が変わった場合の受け皿を用意しておく必要は私はあるんだろうと思うんですね。

この今の問題を基準や注解に組み込まないというのは結構でありますけれども、もし組み込まないのであれば、恐らくその問題は減価償却の問題として別途に考えざるを得ない、ルールを検討せざるを得ないと思うんですね。つまり、収益性が低下するという状況のもとで、簿価が過大になったときの一種の臨時償却を過年度修正の問題としてルールを決めていく必要がいずれは出てくるだろうというふうに私は思います。もしそのルールができた場合には、先ほどのご説明で臨時償却に先行して減損を適用するということでありましたけれども、もしかしたらその順番は変わるかもしれない。検討せざるを得ないと思うんですね。そういう問題が生ずるということについては、何かの形で前文にきちんと明記しておいていただければと私は思います。それがちゃんと書いてあれば、後の検討は比較的やりやすいんでありますけれども、何も書いていないで、理屈がわからないまま消えてしまいますと、後で検討するときにもう一遍最初からやらなきゃいけないということになりますので、その点についてご配慮いただければ大変幸いであります。

以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

ただいまのご意見について、特にご発言、ございますでしょうか。小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員

今のケースの対応というのは、臨時償却という対応と、あとは、例えば将来に向かって耐用年数を短縮するというような対応もあるのかなというふうに思っているんですけれども、そういう点については、斎藤先生、いかがですか。

○斎藤委員

収益性が低下したときに、それがすべて耐用年数の短縮の問題として処理できれば比較的易しいんですね。ただ、それは必ずしも通念じゃないですね。ですから、小宮山先生初め実務界の方が、収益性が低下したときに、それを耐用年数の問題として扱うんだということで実務慣行を形成されれば、それはそれで対処できますけれども、現状で、例えばこの審議会とか基準委員会でそういうルールをいきなり決めるということは難しいんじゃないかという感じはいたします。

○辻山部会長

ほかにいかがでしょうか。

ただいまの問題、非常に大きな問題で、論点整理、経過報告、それから今回の公開草案になるわけですけれども、一貫して減損の概念につきましては、投資期間全体の回収可能性が下がった場合というような概念整理がなされております。したがいまして、この減損損失の測定、あるいは認識のところを簿価とそれ以降のキャッシュ・フローの比較というフレームワークをとった時点で、減価償却の修正に係る部分と減損損失の本来の狭い意味での概念に合致する部分が混在しているということでございます。それが経過報告の段階で、この減損損失の認識のところで、少なくとも投資期間全体で回収が見込まれる場合には狭い意味での減損には当たらないから、それが何らかの形で立証できれば外してもいいという考え方があるわけですけれども、現状の減価償却の日本の制度のもとでは、それに対応して適正な減価償却に直ちに修正されるという保証がない。それから、さらに、減価償却の臨時の償却についても遡及修正が行われないという、こういうことを与件にいたしますと、ここのところで今斎藤委員がご指摘のようなこと、後に減価償却の遡及修正が入り、かつ減価償却の適正化というものが図れるようなフレームワークができたときには、それに対応できるような、この基準が制限にならないような形の手当てをした上で、基準の本体、認識、測定については現在の簿価との比較というフレームワークに落ち着くということでございますが。

斎藤委員、よろしいでしょうか。

○斎藤委員

結構だと思います。

○辻山部会長

ほかにご発言、ございますか。よろしいでしょうか。

それでは、そのほかの部分につきましても、ただいま要検討事項の2ページ目、ご指摘ございましたが、特にまだ要検討として残っている部分を、この要検討のところの欄外に事務局の方で書いていただいておりますので、ここら辺を中心にご意見のある方は特にご発言いただきたいと思います。その次の見積もり期間の上限を設けるという、例えば10年となっておりますが、この辺について、お願いいたします。

都委員、どうぞ。

○都委員

この上限を設けるという点ですが、1つ、やはり業種によってその状況はいろいろ変わると思うので、この上限期間というのは、かなり短く設定する場合には相当程度難しい問題が生じるんではないかなというのが私、1つ思っている点です。

それともう一つ、これはむしろ先ほど例を出していただいた川村先生にお聞きしたいんですが、アメリカの方で、このような設例の中で何か上限を設けているかどうか、ちょっとそこのところを確認したいんですが。

○辻山部会長

川村委員、お願いします。

○川村委員

アメリカの新しい基準の方では、グループを構成する中で一番主要な資産というのを抜き出して、なおかつその条件がついていて、償却性の資産ということであります。いわば数字を出してはいないというのがお答えかと思います。あと、日本でやはり数字を設けなくちゃいけない1つの大きな理由は、土地の重要性が高いということだと思います。土地の重要性が低ければ、上物の建物が何年もつかということを条件に設定するというので十分なのかもしれませんけれども、土地の重要性が高くて、その上にたいした建物が乗っかっていないというような状況においても、なおかつそういう建物の耐用年数で全部はかっていいのかというのが1つの問題点だったように思います。

○辻山部会長

都委員。

○都委員

その点、わかりました。であれば、1つは、当然いずれにしろアメリカよりも結果的に見れば減損に関して厳しい基準を設けることになるかと思いますので、1つは土地の問題以外についてどうするかというのは、そういう意味では別に扱う必要が私はあると思います。繰り返しになりますけれども、業種によって、土地以外の資産の寿命、あるいはたとえ長期にわたってもその収益が確実だと見込まれるような業種があるかと思いますので、その辺はよく検討していかなくてはいけないと思います。

それから、土地については、一般の感覚ではおっしゃることは理解はできますけれども、当然これは結果として見れば、上限を設けるか設けないかによって特定の業種、あるいは分野に極めて大きな影響を与えるわけですから、アメリカより厳しくする理由について、日本は土地が随分値下がりしているからという、その1行じゃなくて、実際の基準に書くかどうかは別にして、そこについては十分議論をしていく必要があるかと思います。

以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

ただいまの都委員のご発言ですけれども、アメリカの場合には主要資産は償却性資産に限るということで、実質的に割引前キャッシュ・フローの算定期間に期限が設けられているということです。それについて、土地という特殊性があるので、これをどうするかということなんですけれども、都委員のご発言は、本来の主要資産があって、その耐用年数があるような場合に、それを過度に縮めないような形の措置が適当であると、こういうご発言ですか。

○都委員

そうです。おっしゃるとおり、償却資産で例えば15年もって、ある程度長期にわたって安定的に収益がある場合に、あえて一律に他の業種も含めた年数を何か設けるというのは、これは適用を行う実務サイドから見れば余り納得できないんではないかなという気がしたので申し上げた次第であります。

○辻山部会長

ありがとうございました。

太田委員、どうぞ。

○太田委員

私も今の都委員のご趣旨に基本的に賛成でございます。例えば基準上10年なり15年という上限を設ける場合であっても、原則としてそうするとか、それを超える期間のキャッシュ・フローを見積もる場合には、その合理性について慎重に検討するといったようなことを織り込んで、一律にすべての資産について一定の年限を設けてしまうのはちょっと抵抗感があるように思います。

○辻山部会長

わかりました。

そのほか、ご発言ございますでしょうか。

清水委員、どうぞ。

○清水委員

共用資産の取り扱いのところの要検討事項の欄なんですけれども、「各資産グループのキャッシュ・フローを算定する際には本社費を配賦する(キャッシュ・フローのマイナス項目として含める)」と、こう決めれば合理的だと思うんですけれども、その後の「本社費を配賦する方が、資産グループに帰属するキャッシュ・フローをより正しく把握できると考えられるため」と書いてあるんですが、これは必ずしもそうではないんじゃないかなという気がします。これは実務上は結構重要な部分になるので以前指摘させていただいたんですけれども、本社費を配賦しているのは、そのキャッシュ生成単位の損益を把握するために、何か合理的な基準をつくって配賦しているわけですけれども、キャッシュ・フローという観点で見ると、必ずしもキャッシュ生成単位から出ているとは限らないわけで、会社全体としてキャッシュ・フローが出ているようなものであれば、その本社費的なキャッシュ・フローをもうかっている部分に持たせても別段いいわけであって、必ずしも何か合理的に必ずキャッシュ・フローが発生しているというふうに考えなければならないということはないんではないのかなと、そういう気がするんですが。実務上は結構重要な部分だと私の経験からも認識しているので、一応前に指摘させてはいただいていたんですけれども。

○辻山部会長

この点、ほかの委員からご発言ございますでしょうか。

伊藤委員。

○伊藤委員

私も同意見なんですが、本社というのは見方を変えれば全社共有資産と同じことになると思うんです。共有資産の配賦の仕方を見ると、より大きなグルーピングでやるというのを原則にしている。配賦できる場合は配賦しなさいということになっていますから、本社費だけを持ってきて配賦しなさいというのは、ちょっとイメージがよくわからない。全社一本とか、あるいは赤字の会社と黒字の会社で本社費の負担というのは、減損の金額が大きく変わるという配慮かなとは思うんですが、私、共用資産と考えると論旨が一貫していないのではないかと思うんですが。

○辻山部会長

これは設例を設けて既に検討したということなんですけれども、この共用資産については、資産本体価格については全体のキャッシュ・フローを統合して、その共用資産の効用が及ぶ範囲で判定するということなんですが、一方で、本社費についても共用資産の方に集めておく、配賦しない形でそれぞれのものを判定するのが、それと必ずしも整合的だということにはならないのではないかということです。その本社費については、グルーピングされたキャッシュ・フローを判定するときに全くらち外に置いておいて、どこかで減損が発生する場合、逆に本社費も含めた共用資産の簿価を1つの固まりにして全体の判定をするということは不適当だという、設例、計算例を用いて検討した結果、本社費についてはあらかじめ配賦する、本社共用資産の帳簿価格については全体をグルーピングして判定するという方が合理的だという、こういう結論になったということなんですが。

○伊藤委員

本社費とおっしゃっていますのは、会社全体のキャッシュ・フローから個別に引いてきまして、余剰のキャッシュ・フローがあったとして、そのキャッシュ・フローと本社で持っている固定資産――本社費というのはちょっとイメージがあれなんですが、本社が所有している固定資産の簿価、それを比較して、その簿価をキャッシュ・フローが上回っていれば減損は要らないということでよろしいんですよね。

○辻山部会長

その点はそのとおりだと思います。要するに、本社費配賦前ですと、それぞれのキャッシュ生成単位の本社費を除外した、本社費についてはどこも持たない形で減損の判定が行われてしまうということです。

この点は、清水委員の先ほどのご発言ですと、括弧が2つ3ページに並んでおりますけれども、後段の方は必ずしもそうは言えないのではないかということだと思います。しかし、配賦するということについてはいかがでしょうか。先ほどのご発言ではやむなしと理解してよろしいでしょうか。

○清水委員

何がしかの配賦、要するに各キャッシュ生成単位のP/Lを見るためには配賦しなければ浮いてしまうわけで配賦するんですが、このキャッシュ・フローと考えたときに、ここは私もどちらがいいかと、非常に難しい問題だということで指摘させていただいたんです。やはり何がしかを決めないと、これは混乱すると思うので、どちらかを決めた方がいいとは思うんですが、これは両サイドの意見があるのではないかということで、十分議論した方がよいのではないか。あるいは配賦の仕方も会社によっていろいろな基準を持っていますし、それがどう合理的なのかという部分も出てくると思いますので、利益が出ているところに多く本社費を配賦するという会社もあろうかと思いますし、配賦の仕方はいろいろな考え方がありますので、そこも事例なんかでは出した方がよろしいのではないかなという気がいたします。

○辻山部会長

ありがとうございました。

基本的に本社費を全く判定に使わないというのではなくて、判定の前提に本社費配賦というのはあり得るという、こういうご発言というふうに受けとめてよろしいでしょうか。

ほかにいかがでしょうか。品川委員。

○品川委員

ちょっと蒸し返しになって恐縮なんですが、基本的な考え方のところで、減損損失は臨時償却を行う前に認識しなければならないという、この結論なんです。ここに書かれていることは理念的には理解できるんですけれども、法人税との関係を考えた場合に、減損損失で損失を計上すると損金算入の道が開けない。臨時償却で行うと、これは損金算入の道が開ける。今の法律ではそうなっているんですが、その場合に、企業の選択肢として臨時償却の方を先にやりたいと、こういうふうな選好が働いた場合に、この考え方だけで通用できるのかどうか。その辺は、もし実務家の方々からご意見をいただければと思うんですが、いかがですか。

○辻山部会長

逆瀬委員、いかがでしょうか。特に逆瀬委員に対するご質問のように承ったんですが。

○逆瀬委員

その前に、臨時償却の今の慣行ですよね。減価償却の実務自体が先ほど事務局から若干説明があったようなところがありますので、減価償却を実態の使用状況に応じて行う実務があれば、今、先生が言われたお話はよくわかるんですけれども、ご存じのとおりの状況もありますので、それを踏まえて償却を先にやるということは、減価償却の実務について基本的なルールの変更を想起させるものですから、大変な問題もあわせ持って起きるなということも考えたところ、このような方向で私はいいんじゃないかというふうに思っているところなんですけれども。

○品川委員

企業側はそれで構わないんですかね。かなり反発を食う可能性があると思うのですが……。私が日本租税研究協会で議論した状況では、企業側は、それでは納得できないのではないかというふうに伺われるんですけれども。企業としてもこれでいいんだということであれば、別にこれ以上申し上げませんが。

○辻山部会長

その点についてはいかがですか。どうぞ、逆瀬委員。

○逆瀬委員

私、全企業を代表しているわけではありませんので、他の委員の方にもよろしくお願いしたいと思います。

○辻山部会長

そのほか、産業界の委員の方、いかがでしょうか。どうぞ。

○高野委員

私は臨時償却の税務上の取り扱いはよくわかりませんけれども、ただ、減損損失と臨時償却の優先順位みたいなものですか、どちらが後、先の問題、これはある程度企業側の選択肢の中に残しておいてもいいんじゃないかと思いますけれども。

○辻山部会長

ご意見はわかりました。ほかの委員の方、いかがでしょうか。

笠間委員、いかがでしょうか。

○笠間委員

私どもは、いわゆる製造設備ではないので、余りここにはそれほどこだわりはないということでございます。

○辻山部会長

田辺委員、いかがですか。

清水委員、よろしいですか。余りこだわらないというお話が多いような感じですが。

どうぞ、小宮山委員。

○小宮山委員

私も品川委員と同じ感想を前から持っているんですけれども、減損の損失と臨時償却というのは会計上の用語で、税は関係ないと割り切りをしちゃえばまた話は別なんですけれども、減損損失なんだけれども、税務上ある要件を満たして損金算入されるような要件がある、それに当てはめられないかという話をされたときに何と答えるのかなというのは常々思っている疑問で、多分同じようなイメージで考えられているんじゃないかと思うんです。

○品川委員

よろしいですか。今のご質問なんですが、今、税法上は臨時償却制度と資産の評価損制度というのがあるわけですよね。臨時償却については国税局長の承認のもとで、ほぼ会計と同じような形で損金算入が認められる。それは損金経理が要件になっているということで、確定決算基準がけしからんといういろいろな議論もあるわけですが、現行規定はそうなっているわけで、もう一つ、資産の評価損の問題も、やはり損金経理が要件になっていますが、この減損会計のように、将来のキャッシュ・フロー、あるいは資産の回収可能性云々で評価損を計上するという建前にはなっていませんので、恐らく現在の法人税法の規定からいったら、そちらの方は否認されると思うんですね。となると、臨時償却で損金を計上しておいた方が、現行の法人税法の規定のルールに乗っかって、企業としては有利に損金算入ができる。その場合にどう選択されるのかなという、そういう疑問でちょっと申し上げたわけですので。

○辻山部会長

ありがとうございました。ご意見、わかりました。

ほかにいかがでしょうか。

○笠間委員

1つは経過措置、いわゆる激変緩和措置のことでございますけれども、これも経過報告では一応検討事項というふうになっておりまして、会計的には難しいとは思いますけれども、中小企業を含めたすべての企業がこの会計基準の対象でありますこととか、あるいは、経過措置をつくっても使うことにレピュテーション・リスクがありますよという話もあるとは思いますけれども、そのリスクがあるとすれば、それは使った企業がみずから負うものでございますので、やはり枠組みとしては一応検討する必要があるのではないか。実施時期の問題とも絡みますけれども、少なくとも現時点では一度検討事項の対象としていただけないかということでございます。

それから、税の話が出ております。一応その会計との調整を図るというような意見は、これは確かに会計基準の外枠の話でございますのでなかなか難しいと思いますけれども、そういった意見のほかに、適用時期までに税務上の取り扱いを明らかにしていただきたいとか、関係方面への働きかけをお願いしたいといった意見もあったと思います。この審議会の役割として、会計基準導入のための環境整備を図るという観点も議論されて支持されてきたところだと理解しておりますので、意見書の中にも税の話を、会計基準の周辺の環境整備といった観点から何らかの形で記載するということができないかというふうに考えております。

以上です。

○辻山部会長

これ、ご意見ということで受けとめてよろしいでしょうか。

○品川委員

今の件でよろしいですか。それは私がもうかなり前に申し上げたんですが、この審議会としては取り上げないというふうにお話があったわけですよね。

○辻山部会長

税に関することですね。

○品川委員

ええ。税の調整に関しては。

○辻山部会長

重ねてのご意見ということで承っておきます。

そのほか、ございますでしょうか。

どうぞ、太田委員。

○太田委員

済みません。ちょっと1つだけ、減損会計の適用初年度の期首に存在している減損と、それ以降存在することになる減損との損益計算書上の取り扱いについて、分けて考える必要があるかどうかというところを入れてはどうかなというふうに思っております。

○辻山部会長

これまでの議論で、そのご指摘の点については経過措置の一環として議論があったわけですけれども、現段階の起草委員会案では、経過措置については特に設けないような枠組みになっているということでございます。ただ、なお今ご発言がございましたので、ご意見として承るということでございますが。

それではそろそろ、時間が5分経過しておりますので、本日の部会は以上で終了させていただきたいと思います。

次回は、公開草案のうち、特に基準や基準・注解となる部分につきまして、たたき台のようなものを用意できればと考えております。

本日ご発言にならなかった委員の中でご意見のある方は、後日でも結構でございますので、事務局の方にご連絡ください。よろしくお願いいたします。

最後に、次回の当部会の日程でございますが、来年1月25日(金)、午後4時からを予定しております。よろしくお願いいたします。正式には、改めて事務局から皆様方にご連絡をさせていただきたいと思います。

本日は、皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

これにて散会とさせていただきます。

ありがとうございました。

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