企業会計審議会第17回内部統制部会議事録

1.日時:平成22年5月21日(金曜日)16時00分~18時01分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○八田部会長

それでは、定刻になりましたので、これより第17回内部統制部会を開催いたします。

皆様には、お忙しいところご参集いただきましてありがとうございます。

なお、本日の部会も企業会計審議会の議事規則に則り、公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

ご了解いただきましたので、そのように取り扱わせていただきます。

それでは、議事に入ります。

内部統制部会は、前回開催が平成19年1月31日であり、部会の開催としては約3年ぶりになります。内部統制報告制度は、平成20年4月から導入され、本年4月から導入3年目に入っていますが、本制度は企業等に過度のコスト負担をかけることなく内部統制を整備することを目指しており、これまでも効率的かつ有効な制度となるよう努めてきたところです。今般、部会を開催させていただく趣旨としましては、制度導入後2年を経過し、実際に制度を実施した経験を踏まえた企業等からの要望・意見等に基づき、企業会計審議会で策定した基準・実施基準等のさらなる簡素化・明確化等の検討を行い、制度の運用の見直しを図ってはどうかということであります。

まず最初に、内部統制報告制度の導入状況等につきまして事務局から説明してください。

○三井企業開示課長

それでは、資料は複数ございますけれども、特に資料1というものを使って、あと資料2を若干、後ほど参照していただきますけれども、説明申し上げたいと思います。

資料1、最初のページは概要でございますので割愛させていただきます。

それから、1枚おめくりいただきまして2ページでございます。皆様方のインテンシブなご議論を経まして、既に施行2年目ということになってございますが、ここでのポイント、若干おさらいになって大変申し訳ございませんけれども、一言、二言申し上げさせていただきたいと思います。

ご案内のとおり、アメリカにおけるエンロン事件等を受けてできた、いわゆるSOX法、アメリカにおける内部統制、あるいはヨーロッパにおける内部統制の強化の動きの影響を受けたということは事実でございます。そして、日本では平成17年、企業会計審議会においてこの部会が設置されて議論されたわけでございます。ここに四角で囲ってございますけれども、12月8日の内部統制部会におきまして、この内部統制の評価、監査のやり方についての一種の案が出されています。この時点ではまだ金融商品取引法は国会に提出されてございません。むしろ、制度化に先立ってどういう制度にするかということが議論されたわけでございます。ここでのポイントは、アメリカとはかなり違った行き方をするということでございます。若干おさらいになりますけれども、同じ平成17年の5月、アメリカのPCAOBがレポートを出しております。SECなどにこの内部統制、SOX法に基づく内部統制の評価、監査の制度が非常にうまくいっていないという大変な批判があって、議論された。その結果出されたものでございますけれども、いくつか重要なコメントがされています。うまくいかなかったということの1つでございますけれども、財務諸表監査と内部統制監査がばらばらであったので統合すべきである、あるいは詳細な業務プロセス中心なので、トップダウンの全社レベルのリスク・アプローチをすべきである、あるいは画一的な監査手続だったので、企業ごと、あるいは個別な状況に応じて、あるいはリスクに応じて柔軟に、あるいは弾力的に行うべきである等、いくつかの重要な反省点が指摘されてございます。

こうした状況を受けまして、この四角の中でございますけれども、トップダウン型のリスク・アプローチの活用、あるいは内部統制の不備の区分について、アメリカでは区分が3つあるわけですけれども、これを2つの区分に簡素化するとか、アメリカで採用されたダイレクト・レポーティングという、監査人が一から内部統制の状況を経営者の判断を前提とせず監査するという制度の不採用等々の、アメリカとは6項目の重要な点について異なる内部統制報告制度を導入しようということがこの審議会の部会で提案されたわけでございます。このアメリカとは違う、むしろ後ほど一言、二言説明をいたしますヨーロッパのようなリスク・アプローチ、あるいはそのトップガバナンスに重点を置いた内部統制を案としまして、制度部分については、金融審議会の提言がなされ、金融商品取引法案として3月に国会に提出され、6月に成立をした。そして、それからはこの実際の施行に向けてさまざまな具体化がなされていったわけでございます。

3ページ、4ページにつきましては、そうした方策を抜粋しましたが、割愛させていただきます。

5ページをお開きいただきたいと思います。平成21年6月から平成22年3月までに提出された内部統制報告書の提出状況でございます。ご覧のとおりでございまして、提出会社、この6月から3月までの間の提出義務のある会社が3,487社で、任意提出会社を含めて内部統制報告書を提出した会社が3,500社強ございます。評価結果は、97.2%が内部統制は有効、2.5%が重要な欠陥があり有効でない、それから評価結果不表明が0.3%あったという状況でございます。

次のページをおめくりいただきまして、評価結果に重要な欠陥があり有効でないと記載されたものについて、どういうところを重要な欠陥と経営者が判断したのか、あるいは監査人から指摘されたのかということで、エッセンスだけ抜き刷りしてございます。全社的な内部統制の欠陥であるとか、それから、とりわけ目についたのが決算・財務プロセスということでございます。重要な業務プロセスにおきましても、いわゆる業務プロセス全般というよりは、ここにありますように、売上や棚卸資産といった重要な虚偽記載につながり得る高リスクな部分ということかと存じます。

次のページをご覧いただきたいと思います。アメリカでは開示初年度に16%を超える重要な欠陥、すなわち、マテリアル・ウイークネスが開示されたということでございます。その後、この2005年に先ほどの一種の反省がされて、それから大幅にいろいろな実務の変更が行われた。そして、2009年1月に、実際に中小企業に向けてのマニュアルというのでしょうか、ガイドラインというのが発出されたということで、その直前の前の時点、2007年時点で7.9%ということでございますが、昨年の1月に整備されたマニュアルに沿って行われた評価、監査というのは2009年12月を締め切りとした年度でございますので、今年に入ってから提出されるものについての実態は、まだ数字がとれてございません。

8ページ以降は、制度の円滑な施行のために、いろいろ当局ないし関係団体の方々にご努力を頂いたものについてのリストでございます。初年度ということで、9ページの一番下にありますように、指導中心の対応をするということでございますし、Q&Aを3回にわたり出したわけでございますけれども、11ページでございます、「重要な欠陥」という言葉について、マテリアル・ウイークネスに比べて、用語としていかがなものかというご指摘がありました。この点については、その会社がおかしいということではなくて、財務諸表の適切な作成に向けて、今後改善すべき重要な課題があるという趣旨であるということをQ&A等において述べさせていただいております。

それから、次のページから外国の状況でございまして、そのうちのアメリカの制度の見直しの状況でございます。

アメリカはご案内のとおりかなりホットな状況で、法律が通って、業務プロセス中心、文書化中心の非常にコストのかかる制度が導入されたということで、様々なあつれきなどがあったようでございます。大規模な会社は直ちに施行ということでしたけれども、中小企業、アメリカの場合は日本と異なりまして非上場会社も対象になってございます。順次、適用範囲が小会社にも広がりまして、13ページです、2009年1月というところをご覧いただきたいと思います。PCAOBのスタッフ見解で小規模公開企業の監査人のためのガイダンスというところで、中小企業、アメリカの場合は日本と異なりまして非上場会社を含んでいますけれども、そういったものに弾力的な監査を行う、こういうガイドラインなども発出されたということがございます。

すみません、あと数分使いまして、もう1つ「各国の内部統制報告制度について」という資料があります。この資料についての説明は今日は割愛させていただきます。何が入っているかという所在だけ説明をさせていただきます。

主に関連諸規定や実例でございまして、一番上が一種の総括表みたいなものでございまして、その次がイギリスでございます。イギリス、フランス、ドイツは、アメリカと法体系が若干違っております。アメリカは、日本の証券取引法、金融商品取引法のような証券関連諸法が会社法とは別にございまして、連邦法でございます。イギリスは、コンバインド・コードというコーポレート・ガバナンスなどで有名になりました一種の自主規範というのでしょうか、これに沿っていればいいし、沿っていなければ説明を要するということでございますけれども、基本的に機関投資家はこのコンバインド・コードに沿っていないものについては株主総会に対して否決の票を投ずるというふうな実務のようでございますが、こういったものにコーポレート・ガバナンス、役員の独立性であるとか、役員報酬であるとか、ガバナンス構造であるとか、そういったものに並んでインターナル・コントロールというものが入ってございます。バークレイズの実際の報告書を添付してございますので、お時間があるときにご覧いただければと思います。

それから、34ページからがフランスでございまして、これもイギリスと同じように大陸法でございますので、日本のような会社法の中に、この規制市場に上場している会社についてはということで、上場会社についての規定がございます。ここでは会社法、日本で俗に言われる公開会社法的なセクションがございまして、ここで内部統制ということについての義務づけ、それから監査についても、会社法、商法において一定の義務づけがされている。ただ、これについては、「レビューする」ということですので、いわゆる「監査」と比べていかなる手続なのか議論があり得るかと思われます。

ドイツについては84ページ以下でございまして、HGBと言われているドイツ商法に規定がございます。この289条の一番下の日本語仮訳でございますけれども、ドイツ商法第264条d項というのは、これは資本市場志向的株式会社という言葉で呼ばれているものでございます。キャピタル・マーケット・オリエンテッド、キャピタル・ギャデリシャフトとか言われているものでございまして、要するにドイツには証券取引所法のようなものがありまして、ここに規定する日本で言う金融商品取引法上の有価証券である株式、こういったものを発行する会社で、EU指令に言う規制市場に上場している、あるいはしようとしている会社というのがEU指令に基づいて国際会計基準への適用が強制されているわけでございますが、主にはこういうような会社のことでございます。それがドイツ商法第264条d項にいう資本会社というものでございますが、これについて内部統制システムというものの記述を求められるということでございます。

このイギリス、フランス、ドイツというのは、法律にはどういう内部統制をやるかということが詳しく書いてあるわけではございません。その基準とか、いろいろなガイドラインとか、フランスですとAMFという市場監督当局のガイドラインなどに書かれているわけでございますけれども、アメリカのSOX法施行当初のような非常に業務プロセス中心のものではなくて、どちらかというとトップガバナンスといったリスク・アプローチの方に主体があったというふうに聞いてございます。そういう意味では、欧米の動向を先取りしたような形での日本の制度導入が図られて、また実際の運用もアメリカのようなものではなくて、むしろ穏当なというか、中庸なものを目指してきたというのがこれまでの現状ではなかったかと思います。

こういったことではございますけれども、施行初年度、それからその現状、足元につきまして、日本経済団体連合会、それから日本公認会計士協会をはじめ、関係の方々、上場の中小企業の方々も含めた様々な幅広い方々にヒアリングなり、あるいはアンケートをさせていただきまして、いろいろ課題が出てまいったというところでございまして、その点について今日ご議論いただければ大変ありがたいということで、この会議の開催をお願いしている次第でございます。

私の方からは以上でございます。

○八田部会長

ありがとうございました。

只今の事務局による内部統制報告制度の導入状況等の説明につきまして、ご質問、ご意見等がございましたらお願いいたします。

久保田委員、どうぞ。

○久保田委員

今、三井課長の方からフランスはレビューというお話がありましたけれども、ドイツとかヨーロッパはどういう状況ですか。

○三井企業開示課長

細かいところを少し申し上げますと、資料2、分厚いものの表紙をめくっていただきますと、1ページ、2ページがございます。総括表の形にしてございまして、先ほど申し上げましたようなことを簡単に書いてあるものでございます。根拠法は先程申し上げたとおりでございまして、評価のフレームワークでございますけれども、基本的にはこの審議会で検討のベースになったCOSO、このフレームワークというのがベースになっているケースが多かろうと思います。

ドイツのところにバーが入っていますけれども、ドイツのところは次のページをご覧いただきたいと思いますけれども、この監査報告、監査はされるわけですけれども、財務諸表の監査の一環で、取締役の行ったリスク体制、モニタリング機能、こういったものについて検証を行うという規定になってございます。私どもの理解するところによると、いわゆる財務諸表監査と独立して内部統制自体に対して積極的にいろいろ手を突っ込んで見ていくということではなくて、財務諸表監査におけるいろいろなプロセスで、内部統制について何か問題はないか、欠陥等がないかどうか、あるいは財務諸表と齟齬はないかどうかというのが見つかれば、それを報告するというものでございまして、そういう意味では、いわゆる独立的・積極的監査というよりは、財務諸表監査と一体的な消極的な感じのものというふうに理解してございます。

○八田部会長

ありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

錢高委員、お願いします。

○錢高委員

三井課長から非常にスピードが速くご説明いただいた部分がございます。かなりキャッチアップできていない点があると思いますが、後ほどこの制度の運用の見直し等々の議論に入っていかれると思うのですが、ざっくりなところ、三井課長はじめ、いろいろと部会、そしてご当局で作られた日本の内部統制の考え方とか価値観は、欧米が進んでいるとも決して思いませんし、独自のものを作ればいいと我々は受け止めておりますが、この辺は少し日本は進んでいるとか、あるいはこの辺は他の国はまた視点が違った面だというのを、今お話を頂いたのでございますが、サマライズして、一言、二言、もう少し平易的におっしゃっていただくと、私とすれば理解がもう少し深まるかなと。そして、後ほどの運用の見直しへと、要は日本は日本、外国は外国ということでございますが、その辺の全体、最適的に非常に日本の方が良くやられているということや、この辺は日本の皆さん方と努力されたけれども、こういった面ではまた今後検討していく部分かなというものをご当局の立場で感想なり印象をお話し頂いて、そしてこれからの見直しというのは、今度は具体的にいろいろな要望とか陳情が出ていると思いますが、少し分かりやすくお話しいただければありがたいと思います。非常にレベルの低いことを質問しているのかもしれませんが。

○三井企業開示課長

すみません、説明がまずかった部分があるかと思われます。改めてもう少し丁寧に説明したいと存じます。

先ほどの資料1で飛ばしてしまった3ページをお開きいただきたいと思います。平成17年でございますので、5年ぐらい前のお話になろうかと思います。ここでは評価・監査、経営者にとっては評価、監査人にとっては監査でございますけれども、内部統制の評価や監査を行うに当たって、コストの負担が過大にならないための方策というもので6つ掲げてございます。これが、内部統制部会が平成17年12月に公表したこの内部統制の実際のやり方の案のポイント、非常にコアになる部分でありまして、一番上にありますリスク・アプローチというところをご覧いただきたいのですが、米国ではいわばプロセス全体、絨毯爆撃とかいうふうに比喩的に言われていますけれども、全体を細かく詳細に見る、こういうものであったということで、非常にコストがかかったと言われています。これを反省して、アメリカでも全社的な観点からのリスク・アプローチをしよう、こういうことが平成17年のPCAOBやSECの報告書などでは書かれています。それを受けまして、日本でも評価範囲を絞り込もうということが議論されたわけでございまして、実際に絞り込むのはケース・バイ・ケースでプリンシプルに基づいて、その会社の状況に応じて、できるだけ有効かつ効率的なもので考えていくということなんですが、初めて導入する制度ということで、何かしら例なりガイドライン的なものがあった方が、この有効性なり効率性の観点からやりやすいのではないかということから、ここでは売上などの基準で見て、上位概ね3分の2の事業拠点というのを対象にするということで大胆に絞り込もう、こんなことを提案したわけでございます。

もう1つは、このマル3のところにありますダイレクト・レポーティングということでございますけれども、内部統制、アメリカでは経営者は経営者で当然自分のことを評価するわけですが、監査人は経営者の評価から離れて独自にそれをまた評価するという、恐らく気持ちとしてはダブルチェックのようにきちんと厳格にやろうという志であったんだと思いますが、この監査人のダイレクト・レポーティングというのが経営者の評価から独立しているので、経営者が良かれと思ったことが考慮されないという意味で、非常に消耗といいますか、手間がかかるし、また内部統制というのが経営の仕方にかなり密接に関わっていることもあって、その効率性ということと有効性の兼ね合いから見てかなり疑義があるということで、日本では経営者がまずその評価をする。それを前提に、それを事後的に監査人がチェックアウトするというインダイレクト・レポーティング方式をとったということがございます。アメリカからは、これ以外にもいくつかここに出ていますように、日本独自の入り方をしたということでございますが、この入り方は必ずしもそんなにその後の他の国の状況を見ても間違っていなかったのかと思われます。特に、全社的なリスク・アプローチをする。非常にリスクのあるところにフォーカスをするという意味では、恐らくどの国でも何らかの考慮はしているということですし、比較的コーポレート・ガバナンスの1ファクターとして重要な部分があるわけですけれども、それが枝葉末節ではなくて、リスクの高いところにフォーカスするという意味では、共通性があるのかなというふうに思っております。

アメリカも先ほどの年表で、中小企業向けには簡素化についてのガイダンスが出ましたが、これも我が国の基準・実施基準の中、お手元のファイルをめくっていただくとちょっと大部なんですけれども、この中には、一応中小企業などについては実態に即した評価なり監査をしましょうとか、文書化についても、アメリカのような100%文書化をするのではなくて、既存の伝票等々の証票などを活用していこうといったことが書かれています。こういったものは、実はPCAOBが2009年1月にまとめたガイダンスにも、中小企業というのは直接、経営者が社員の仕事に目が行き届く場合があるので、必ずしもそういう文書的なコントロールとか階層的なコントロールというものが必要でない場合があるといった、この日本が2年ぐらい前に出したQ&Aと似たようなことが書かれています。その意味では、ここでご議論いただいたような具体的なやり方というのは、その後の世界の動きなりアメリカの動きを見ると、先駆的な、むしろみんなが進むべき方向を示していただいたということではないかというふうに感じております。

○八田部会長

他にいかがでしょうか。

高田委員、どうぞ。

○高田委員

内部統制に関しましては、概念に関してCOSOフレームワークというデファクトスタンダードがあるということは皆さん御承知のとおりなんですが、制度に関してかなり各国の足並みが揃わない。それで、監査基準も会計基準も国際標準がちゃんと作られているのに、内部統制に関してはない。それで、各国の状況を今ご報告がありましたけれども、このことに関して国際標準化というのは必ずしも必要ないのかもしれませんが、EUというのはどういう方針でいて、EU域内全体に対してどんな考え方で臨んでいるのかということに関して、もしご存じでしたらご紹介いただければありがたいと思います。

○三井企業開示課長

まず、国際会計基準のような意味での内部統制基準というものがEUのレギュレーションで採り入れられるということには、なっていないというふうに承知しています。その意味では、国際会計基準や国際監査基準(ISA)に相当するような内部統制基準というものが、EU域内全域で統一化されているということはないというふうに思っています。従いまして、どういうやり方でやるかというのは、その意味では各国ばらばらなんですが、法制という意味では、ヨーロッパはアメリカとは違って、一つのスタンダードになりつつあるというふうに思います。そのスタンダードというのは、基本的に証券法と会社法というふうに2つに分けて見た場合に、アメリカではガバナンスとかいうものが取引所規則を含む証券法の世界に書いてあります。ヨーロッパでは、日本の金融商品取引法の第2章ディスクロージャーとか、そういった規定はヨーロッパでは証券法と並んで会社法のところに書かれておりまして、会社法の中に例えば大会社と一般会社とか、あるいは規制市場に上場されている会社とそうでない非公開、非上場会社というふうに、会社法の中で規定が書き分けられて、ディスクロージャーの仕方とか、使う会計基準についても書き分けられています。その意味では、アメリカのいわゆるサーベンス・オックスレー法に相当する規定は、ヨーロッパでは、会社法の中には置いてあり、会社法でいう計算、いわゆる日本で言う計算規則とか事業報告に相当するようなところに、資本市場、証券取引所に上場しているとか、EUの規制市場である取引所に上場している会社については、連結財務諸表について使う会計基準は国際会計基準、単体については自国基準、開示については連・単のそれぞれについて詳細ないろいろなルールが定められていて、そういったものの中に、コーポレート・ガバナンスと並んで、またはコーポレート・ガバナンスの中に、インターナル・コントロールとかリスクの管理といった項目が出てきて、そこに位置づけられている、こういう法的な位置づけの違いはございます。

日本は、戦後、証券取引法がGHQの占領時代に入ってきたことがありまして、ディスクロージャーの規定が証券取引法に書かれているということがございまして、上場会社のディスクロージャー規定は証券取引法に、今は金融商品取引法に書かれているということで、このディスクロージャーの規定が会社法と金商法にいわば別個独立した形で各々分立して書かれているというところがヨーロッパと日本で違うかと思います。

○八田部会長

錢高委員、どうぞ。

○錢高委員

記憶を今たどっておりましたのですが、八田部会長の下に内部統制部会がスタートいたしましたときに、私も委員として発言をいたしました。そのとき安藤会長が委員でいらっしゃいまして、私自身、非常にフレッシュな思いをいたしましたのは、会計制度といいますか、そういったものが日本の場合は公認会計士や監査法人のチェックを受ける企業と、中小企業と申しますか、会計士じゃなくて税理士のチェックを受ける企業というように2つのカテゴリーに分かれている。非常に接近しつつあることは承知いたしておりますけれども、米国などは1つの会計基準といいますか、会計監査人によってどんなベンチャーのスモール企業も、1つのスタンダードの中の枠組みで社会が動いていると思いますと、もちろん会計基準そのものも、いろいろな大法人格の会計の分析の方法と、中小企業で会計監査に直接関わらない企業が、市場の中ではお互いに交流しながらビジネスをしているわけで、今、三井課長がおっしゃいましたように、証券取引法や、いろいろな絡みの中で上場企業は、厳しく監査されているのですが、それは投資家や株主の立場できちんとしようということも理解した上で申し上げるのですが、原点は、やはり市場の中で、ビジネスとしての取引をされる方々が、それぞれの企業が上場であろうが非上場であろうが、信頼が持てて取引ができる。非常に相手との取引で安心して貸し倒れにならないとか、いろいろな問題もあるということも大きく見ますと、それはやっぱり概念の中に企業会計というのが存在しているのではないかと考えます。こういった内部統制ということも、1つの企業の本質的な枠組みといいますか、性格というものはきちんと理解でき、把握できて、多少情報も開示されるということで、非上場の会社のような、公認会計士のチェックを受けない企業と取引をする場合に、安心感を持つことができます。 そういう意味で、今すぐということじゃございませんが、会計制度の問題と、それから中小零細企業とのカテゴリーとの別のこの場での議論の対象ではないかもしれませんが、こういった内部統制というのは、場合によれば、上場企業と非上場、その非上場の中における非常に小さな会社の情報がよく定かじゃない、分かりにくい企業会計をやっているかもしれない企業とのビジネスの取引の中で、大きくダメージを受けるとか、取引することによって損傷を受けるだとか、そういったことも含みながら、将来的な何か内部統制というものも、今、三千数百社対象とおっしゃいましたけれども、大企業だとか上場企業ということかもしれませんが、その次のステップをどういうふうにして、国の会計制度と内部統制というものを、これは金融庁さんの管轄外ということかもしれませんが、どういうふうにとらまえるかというふうなことで、安藤会長が内部統制の委員のときに、明確に私は渋沢栄一さんの企業会計制度をこの国に導入した明治時代のお話を申し上げましたときに、的確にそのことをご指摘いただいたことを私は非常に今思い出しながら、ここで今お話しする対象じゃないかもしれません。大きく会計制度と、それからこういった内部統制ということは、1つの企業の、日本の企業が何十万社あるか知りませんですけれども、ある部分においては非常に明確で、クリアで、安心してビジネスの取引ができる。しかし、それ以外のところも間違いなくきちんとやっていらっしゃる非上場の中小零細企業もおありかもしれませんけれども、何か他の外国とはちょっと違った部分がまだ残されている部分を一方に持ちながら、今新しい方向に走っている部分が、ちょっと違和感を感じながらというのを私は3年前に申し上げたことを思い出しながら発言だけさせていただきました。

○八田部会長

貴重なご意見として承っておきます。

他にご意見ございませんか。よろしいでしょうか。

それでは、一応ここまでの議論を踏まえまして、今度は制度導入後2年を経過し、実際に制度を実施した経験を踏まえまして、企業等から寄せられた内部統制報告制度についての要望・意見等をご紹介します。

次に、寄せられた要望・意見等を踏まえて、内部統制の基準・実施基準等のさらなる簡素化・明確化を検討する項目や対応策につきましてご説明します。

なお、検討項目や対応案につきましては、要望・意見等を踏まえまして、私と当部会に所属されておられる何人かの委員の方々、それに事務局を加えまして事前に検討を行い、皆様の円滑な審議に資するようご提示させていただいたものです。

それでは、事務局から説明してください。

○野村企業会計調整官

それでは、資料3-1、3-2、3-3に基づきまして、制度導入後に出されました、内部統制報告制度に関する要望・意見、それから要望・意見を踏まえまして、内部統制の基準・実施基準等のさらなる簡素化・明確化を検討する項目、対応案につきましてご説明をさせていただければと思います。

まず、資料3-1をお開きいただきたいと思います。

内部統制報告制度に関する要望・意見ということでございまして、1ページおめくりをいただきますと、こちらは制度導入後に寄せられた要望・意見の相手先でまとめたものでございます。要望・意見としましては、例えば1番上の経団連、2番目の銀行からは、具体的な要望もございますけれども、その下の監査役協会のアンケート、それからその下の金融庁と経済産業省とでやったアンケート、それからその2つ下の新興市場に上場している企業向けのアンケートにつきましては、アンケート自体といいますか、その中で個別の記載事項、具体的に書かれている事項等をピックアップしたものでございます。

それから、真ん中ほどの内部統制報告制度相談・照会窓口というのが、21年4月から金融庁と経団連と、公認会計士協会と共同で設置しておりまして、そちらに寄せられました質問やご相談以外の意見・要望についてピックアップをさせていただいております。それらの件数を右側に件数ということで拾わせていただいております。いろいろ数え方はあろうかと思いますが、全部で一応360件ということで整理をさせていただいております。

この要望・意見でございますけれども、全体としては、先ほどご説明をさせていただきましたとおり、制度導入に当たっていろいろ配慮をしてもらった。それから、内部統制というのは非常に必要ではあると思うけれども、やはりコストや負担が重いといったご意見が多かったというふうに感じられるところでございます。

それで、今回、整理の都合上、大きく4つに要望やご意見を分類・整理をさせていただいております。それが2ページ目以下でございますけれども、具体的な対応の方向性をその後ご説明させていただきたいと思いますので、分かりやすさという観点で、資料3-2をご覧いただければと思います。資料3-2が「見直し検討の主な内容(案)」ということでございまして、今申し上げましたとおり、要望やご意見を4つに分類させていただいて、それに対する対応案ということを考えて整理をさせていただいたものでございます。

1つ目が、中堅・中小上場企業に対する簡素化・明確化ということでございまして、ご承知のとおり、日本の内部統制報告制度は上場会社だけを対象としているわけでございますけれども、同じ上場会社であっても、非常に大規模な大企業、大規模な上場会社と新興市場に上場されておられるような、いわゆる中堅・中小の上場企業とでは、やはり例えば子会社がないとか、海外に拠点がないとか、それから取扱品目が非常に少量であるといった組織構造が簡素な上場会社もあろうかと思います。それらについて、同じ内部統制を整備するというのはどうかという話もございました。元々、基準・実施基準の中には、規模等に応じて工夫をして内部統制を整備してよいという規定があるわけでございますけれども、それをさらに簡素化・明確化してはどうかというカテゴライズが1つでございます。

後ほどご説明をさせていただきたいと思いますが、例ということで、中堅・中小上場企業の場合に、内部統制の記録として利用できる社内作成文書としては、メモや引継書等で足り、よりフォーマルな文書は不要であることを例示してはどうかということでございます。

2つ目の分類でございますが、制度導入2年目以降可能となる簡素化・明確化ということでございまして、平成20年4月以降、内部統制報告制度が導入されたわけですが、制度導入に当たって、非常にコストとか負担がかかったというお話がございました。内部統制は財務報告を適正に作成するための社内の体制でございますので、初年度目にある程度しっかりしたものが作られて、その評価が有効であった、しっかりしていたということがあり、2年目以降にその部分について大きな変更がないということであれば、そこの部分についてはある程度省略してもいいのではないかということが考えられるわけでして、そういった観点から、制度導入2年目以降、そうした部分については、より簡素な取扱いをしてはどうかということでございます。

それから、3つ目の分類としましては、その他の明確化ということでございまして、そこの例にも書いていますが、例えば「重要な欠陥」の判断基準等について、より明確化をすること、指標を新たに加えるとか、より明確化をすることによりまして、企業や監査人の作業が、より効率的にできるのではないかという観点でございます。

それから、4番目が、先ほども出てまいりましたが、「重要な欠陥」という用語の見直しを検討してはどうかということでございます。

それらを、できましたら具体的に説明をさせていただければと思いまして、資料3-3が今申し上げた4つに分類をした具体的な対応の案ということでございます。3-3をご覧いただきたいと思います。資料3-3と先ほど見ていただきました3-1の2ページ目以降の要望・意見の概要というのが基本的には対応しているものでございまして、3-1に書かれております要望・意見を踏まえまして、こういった対応が考えられるのではないかというのが3-3でございます。

具体的な基準・実施基準の改正案ということではなく、対応案ということで方向性をお示ししているものでございますので、その点をご了承いただければと思います。

3-3の1ページ目の最初の項目ですが、先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、評価手続等に係る記録及び保存の簡素化・明確化ということでございまして、内部統制でやはり一番負担が重いというふうに言われておりますのが、いわゆる文書化という、記録を作ったり残したりするということでして、元々基準・実施基準の中にも、注にございますとおり、「企業の作成・使用している記録等を適宜利用し、必要に応じて補足を行うことで足りる」ということが示されているわけでございますけれども、小規模企業等の場合には、さらに組織構造が簡素であるため、そういった点を考慮して、さらに簡素な作成書類等で評価が行えるのであれば、そういった資料を使用することが可能としてはどうかということでして、監査人の方も、そういった資料でも十分監査をしていただけるのではないかということを明確化してはどうかということでございます。

対応案の方ですけれども、ちょっと読みづらくて恐縮でございますが、「小規模企業等において利用できる社内作成資料(メモや引継書等)を例示監査」というふうにつながっておりますけれども、ここに、点を打っていただきますと幸いでございます。「例示、監査人も当該資料を利用して監査を行うことができる旨の注を追加」ということでございます。こちらについては、恐縮ですが、6ページをお開きいただきたいと思いますが、見直しのイメージというものをつけさせていただいております。こちらは、実施基準の一部を抜き出したものでございまして、円卓の皆様にはお手元に参考ということで、内部統制報告制度関連資料というファイルを置かせていただいていますが、その一番上に内部統制の基準・実施基準というのが綴じ込んでございます。その基準・実施基準の中の1ページを抜粋したものでございます。

基本的にはこの基準・実施基準の中では、企業が作成している資料等で構わないんだと、それに補足をすればいいんだということが、6ページの一番下に書いてあるわけでございますけれども、加えて7ページに注ということで「事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造を有している企業等の取扱い」ということで、先ほど申し上げました引継書ですとかメモですとか、そういったもので経営者が内部統制の評価を行えるのであれば、記録等として十分な場合があるということを明記してはどうかというものでございます。

それから、2としまして、監査人は、そういった記録であっても、内部統制の整備状況及び運用状況の確認を行うことができるということを実施基準に追加してはどうかということでございます。もちろん、先ほど申し上げましたとおり、実際の文案については改めてご提示といいましょうか、ご検討をお願いできればというふうに考えております。

それから、1ページ目に戻っていただきまして、2つ目の項目でございますけれども、会社の規模等に応じた手続の合理化、代替手続の容認ということでございまして、こちらも下の注を見ていただきますと、現在の基準・実施基準では、事業規模が小規模で比較的簡素な組織構造を有している企業等の場合には、その特性に応じた工夫を行うことができるということが、やはり基本的な考え方としては示されているところでございます。今回、対応案としまして、いろいろなレベルで内部統制を整備したり、評価していただいたりする必要があるわけですが、小規模企業等においては必ずしも通期及び全ての階層、例えば、CEOレベル、部長レベル、担当者レベルといったレベルでの評価、手続を実施する必要がないということを明確化してはどうかということでございます。

それから、2つ目のポツでございますけれども、小規模企業等の場合には、経営者、監査役等を含みますが、目が行き届くということで、モニタリングの結果を内部統制の監査において活用していただいてはどうか。すなわち、内部統制監査において、監査人がそうしたモニタリングの結果を利用していただいてはどうかということです。

それから、3つ目でございますけれども、全社的な内部統制の評価方法の簡素化ということでして、企業全体にわたる内部統制を全社的な内部統制と言っているわけですが、こちらについては、基本的には省略ができないということが言われているわけですけれども、全社的な内部統制の具体例としまして、実施基準に42項目の評価項目が例示されているところです。小規模企業等においては、必ずしもその42項目が該当しないケースもあり得るということで、また、大きな変化がないと認められるような評価項目、例えば、「ITに関する適切な戦略、計画等を定めているか」といったことがありますが、そういったものについては、評価を省略できる旨を追加してはどうかということでございます。

こちらも、具体的なイメージということですけれども、14ページに「見直しのイメージマル4」というのを付けさせていただいております。

その次の15ページに今申し上げた点を書いています。15ページの真ん中ぐらいに網かけをさせていただいておりまして、先ほども申し上げましたとおり、全社的な内部統制というのは基本的には省略できないということで、全てを見なさいということになっているわけですが、その注です。前年度の評価が有効であって、当該評価項目に係る全社的な内部統制の整備状況に大きな変化がないと認められる場合には、評価項目としないことが考えられるということで、そうした部分については省略してもいいのではないかということでございます。

それから、2ページ目に戻っていただきまして、今度は2つ目のカテゴリーでございますが、制度導入2年目以降可能となる簡素化・明確化ということでございます。

1つ目の項目でございますけれども、現在、日本の内部統制報告制度の場合には、子会社だけではなくて、持分法適用会社についても一定のものについては評価範囲になっているわけですが、注に書いてありますとおり、持分法適用会社というのは、議決権が2割以上5割未満持っている会社などをいうことになっておりますけれども、こういった会社については、子会社のように支配権が必ずしも及ばないケースがあり得る、別に親会社がいるというケースがあり得るわけでございまして、子会社と同様な評価が行えないことがあるわけでございます。そうした場合には、可能な適切な方法で評価を行ってくださいというのが今の基準・実施基準の建付けでございます。今申し上げましたとおり、必ずしも子会社のように支配権が及ばないということがございますので、対応案の方ですけれども、親会社が上場会社として別途あるという場合には、当該会社の親会社から何らかの確認書面を入手する。具体的に言いますと、親会社が上場会社であり、内部統制報告書等出しておられると思いますので、そういった内部統制報告書等の入手で足りるということを追加してはどうかということでございます。

それから、2つ目の項目でございますが、この点がやはり一番大きな点かなというふうに感じているところですけれども、評価対象範囲の絞り込みということでございます。

先ほど導入のところでご説明しましたが、現在の日本の内部統制報告制度は、既に全ての対象について内部統制を整備したり評価をするということではなくて、注のところにも書いてありますが、一定の絞り込み、すなわち、一定の指標の一定割合ということで重要な事業拠点への絞り込みを認めているところです。さらに、その上で事業の目的に大きく関わる勘定として、売上、売掛金、棚卸資産等に至るプロセスということで、さらに絞り込みをかけているということでございまして、既に業務プロセスについては、かなり評価範囲を絞り込んでいいということになっていますが、今回、一定の要件を満たす場合には、さらに絞り込みが可能となるようなことをご提案してはどうかということでございます。

対応案でございます。絞り込みの例示における一定の割合の引き下げとその要件を検討ということでございまして、ちょっと分かりづらいですので、具体例を見ていただければと思います。11ページをお開きいただきたいと思います。

業務プロセスの評価範囲の決定方法でございます。先ほど申しましたとおり、現行は売上高等の指標を使いまして、概ね3分の2程度の重要な事業拠点に絞り込みをすることができます。この例でいきますと、本社とA支社とB支社で合わせて150のうち110になりますので、ここまでにまず絞り込むことができるという形になっています。さらに、重要な事業拠点の3勘定、粉飾等が起こりやすいと言われています3勘定(売上、売掛金、棚卸資産)に至る業務プロセスに絞り込むことができることになっています。ただし、リスクが大きい取引などの重要性の大きい業務プロセスは拾い上げてくださいというのが3番目に書いてあるところでます。今回、見直し案としてご提示しておりますのは、1のところですけれども、矢印のあとですが、一定の指標として、例示として売上高以外を示してはどうかということで、例えば金融機関などですと、売上高というのは必ずしも適切でないということで、既にQ&Aでも例示をされているところですけれども、基準・実施基準に売上高以外を例示してはどうかということが1つございます。それから、1の右側の箱の下のところですが、一定の要件を満たした場合には、さらに重要な事業拠点の絞り込みを可能としてはどうかということでして、先ほど本社とA支社とB支社が評価対象ですということで申し上げましたが、当年度という括弧の中ですけれども、そのうちA支社が前年度の評価が良好であり、本年度も内部統制の状況に大きな変化がない、さらに例えば、本社などの特に重要な事業拠点ではないということでありますれば、2年目はA支社を評価対象となる重要な事業拠点から除いてはどうかということで、そうしますと、結果として本社とB支社だけになり、基準・実施基準で目安としております3分の2程度を下回る150分の80ということになりますが、そうしたことも可能としてはどうかという案でございます。

具体的な基準等の文章としましては、その2ページ前ですけれども、9ページをお開きいただきたいと思います。(注1)の網かけでございますけれども、先ほど申し上げました売上以外の例示ということで、例えば銀行等の場合には、売上高ではなく、経常収益という指標を用いることが考えられるということで、銀行の場合には売上ではなく、経常収益という指標を使うことが考えられるということをお示ししております。

それから、2つ目の(注2)の網かけですけれども、先ほど図で見ていただいたとおり、マル1として「前年度の当該拠点に係る内部統制の評価が良好」、マル2としまして「当該拠点の内部統制の状況に大きな変化がないこと」、マル3として「特に重要な事業拠点でないこと」等の場合には、効率性の観点から、評価対象としないことができると考えられる。その場合、結果として、売上高等の概ね2/3程度を下回ることがあるといったようなことを実施基準に付け加えてはどうかということでございます。

ただ、別案としまして、その下に書いていますけれども、そもそも、概ね3分の2程度という指標自体が必要なのかどうか、既に定着をしているので、3分の2という数値基準自体をなくしてはどうかということも考えられるわけでして、そうした場合には、監査人と協議の上、例えば連結ベースの売上高の一定割合とすることが考えられるという基準にした上で、基準等からは3分の2という数字を除いてはどうかということが考えられるわけでございます。この点については、やはり企業にとって何らかのメルクマールがあった方がいいのではないかというご意見もあろうかと思いますので、この点についてもできますればご意見をいただければというふうに考えております。

それから、3ページでございますけれども、サンプリング方法等の緩和ということでございまして、こちらは経済界といいましょうか、企業の方からのご要望がかなり多かったものでございます。注にも書いていますけれども、基本的には、監査人が監査をする際に、経営者が選択したサンプルをそのまま利用することがあまり行われていないということでして、せっかく経営者が評価に当たって選んでいるのだから、監査人も問題がなければそれをそのまま使っていただいてはどうかということでございます。この点が企業にとって負担となっているというご指摘があるわけでございまして、その点をどうかということです。

対応案ですけれども、3行目からですが、「一定の場合には、経営者が評価の際に選択したサンプルをそのまま利用することが可能であることを明記」してはどうかということです。

それから、2つ目はその裏返しですけれども、効率性の観点から、前年度に内部統制の評価が良好であった業務プロセスなどについては、監査人は、経営者や内部監査人等の実施した手続を積極的に利用していただいてはどうかということでございます。

先ほど、対応する要望・意見については3-1に書いてございますと申し上げまして、合わせてご紹介すればよろしかったのですが、後ほど要望・意見の方は3-1の方でご確認をいただければと思います。

それから、3つ目のカテゴリーは、その他の明確化ということで、1つ目は、「重要な欠陥」の判断基準の明確化ということでございまして、現行「重要な欠陥」がありますと、内部統制報告書に記載をして開示をしていただくことになっているわけですが、この「重要な欠陥」の判断基準というのが必ずしも明確ではないのではないかというご意見がございます。現在、基準では税引前利益の概ね5%程度といった量的な基準が示されているわけですが、これ以外にも、使用できる指標として、例えば剰余金などの事例を追加してはどうかということでございます。それから、税引前利益の5%ということでございますと、業績が大きく変動したような場合に、その「重要な欠陥」の開示が内部統制に変化がないのに、年によって変わってしまったりということがあり得ますので、過去の平均の使用ですとか、業績の変動が大きい場合の取扱いなどを明記してはどうかということでございます。こちらについては、別案としまして、5%というのが既に定着してきたということで、こうした数値基準を削除してはどうかということも考えられるということで、別案として書かせていただいております。

それから、2つ目もやや細かくなるのですが、先ほど申し上げました全社的な内部統制の評価範囲の明確化ということでして、全社的な内部統制については基本的には全て評価しなければならないということが原則ですが、実は僅少基準というのがございまして、僅少な子会社等については全社的な内部統制を評価しなくていいという規定がございます。この「僅少な」ということについてですが、現在、Q&Aで5%というのが数字として出ております。この5%という数字に縛られているのではないかというのが経済界等からのご要望として出ております。

1ページおめくりをいただきまして、注のところにそのことが書いてございまして、この点については、場合によっては5%を超えることがあり得るということを基準・実施基準に明記してはどうかということでございます。こちらについては、別案としまして、その僅少基準についても既に定着してきているということで、5%という数字を削除してはどうかということでございます。

それから、その下は、細かい点なんですが、内部統制報告書は、現在、有価証券報告書と合わせて出していただくということになっていますので、内部統制報告書の表紙等について、総会において代表取締役が交代したような場合に、誰を書くのかといった点がご質問等で多く寄せられました。この点については、内部統制府令のガイドライン等で明確化をしてはどうかということでございます。

それから、最後でございますが、現在、内部統制監査と財務諸表監査は一体として行う観点から、監査報告書も1枚で合わせて作成するということになっているところでございます。ただ、訂正報告書が出されたときの取扱いが必ずしも明確になっていないということで、訂正報告書が出されたときの監査報告書の取扱いについて明確にしてはどうかということです。

それから、その下の4つ目のカテゴリーですが、「「重要な欠陥」(materialweakness)の用語の見直し」ということでございます。こちらは、内部統制府令の定義上、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性のある内部統制上の不備を「重要な欠陥」と定義いたしまして、開示を求めているところです。この「重要な欠陥」の用語につきましては、制度上、基準上の用語として既に定着しているとのご指摘もある一方で、企業自体に「欠陥」があるのではないか、欠陥企業とか欠陥商品とか、そういうイメージがあるわけでございますけれども、企業自体に「欠陥」があるのではないかと誤解を招くおそれがあるとの指摘がありますことから、用語の見直しを検討することとしてはどうかということでございます。この点につきましては、資料1のところでもご説明申し上げておりまして、再度、資料1の7ページをお開きいただければと思いますが、(注3)と(注4)でございます。内部統制上の問題点を不備と言っておりまして、アメリカでは内部統制上の不備を3段階に分けております。軽微な不備と重大な不備と重要な欠陥という3つでございまして、日本では、それを簡素化をするという観点から、不備と重要な欠陥の2つに分けているところです。「重要な欠陥」は内部統制報告書に記載し投資家等に開示していただきますが、単なる「不備」については社内で改善に努めるということで、開示はされないということになっています。今回、「重要な欠陥」という用語を見直すとした場合に、例えばその「重要な欠陥」という用語の訳として、「materialweakness」の「weakness」を、そのまま訳すという考え方もあろうかと思いますが、現在、開示をされない不備というものの不備という言葉とのバランスといいましょうか、今、普通の問題点を不備というふうに言っておりますので、「重要な何々」という言葉が非常に弱くなってしまいますと、何か不備よりも軽くなってしまうのではないかというようなご指摘もあるところです。

また、先ほども申し上げましたとおり、「重要な欠陥」については、開示をして、投資家の方々にウオーニングを発するという意味から、ある程度インパクトがある言葉が必要なのではないかというご意見もあるところです。できますれば、本部会におきまして、見直すかどうかという点と合わせまして、適切な用語といいましょうか、もし見直すとした場合に、こういった用語がいいのではないかという点についてもご意見をいただければと思います。

それから、最後ですけれども、今回ご審議をいただきますのは、企業会計審議会で策定をいただいた内部統制の基準・実施基準でございます。資料1でもご紹介しましたが、そのほかに金融庁の方で3度にわたりましてQ&Aというのを出しております。今回、基準・実施基準を見直すとした場合には、それと合わせまして、内部統制報告制度に関するQ&Aについても見直しを行ってはどうかということを書いてございます。

とりあえず、改訂の方向性といいましょうか、対応案についてご説明をさせていただきました。基になった要望・ご意見の方は、3-1にそれぞれの項目に応じて記載させていただいておりますので、恐縮でございますが、後ほどご覧をいただければと思います。

以上でございます。

○八田部会長

ありがとうございました。

只今の事務局の説明に基づきまして、検討項目や対応案等につきまして、ご質問、ご意見等がございましたらお願いいたします。特に最後ご説明がありましたが、「重要な欠陥」の用語の見直しにつきましては、見直しの適否、見直すとした場合の見直し案につきましてご意見をいただければと存じます。どなたからでも結構です。お願いいたします。

柴田委員、お願いします。

○柴田委員

資料3-3の7ページの網かけの部分について2点問題提起をしたいと思います。第一点は「事業規模が小規模で」というくだりにおける「小規模」の定義、範囲づけをどうするかというところです。第二点は、内部統制プロセスの文書化は初年度の作業こそは大変であるけれども次年度以降の作業というのは一般的にかなり難易度が下がることを考えますと、文書化は、既に1回作業が行われている以上は、ある程度は定型化されているわけですので、2年目以降の作業に大きな負担がかかることが予測されるような事態かどうかには疑問を覚えます。そこをどう考えるかです。

また、9ページ目に「この一定割合については、当該事業拠点が前年度の評価範囲に入っており」という前書きがありますが、この前書き部分には、内部統制プロセスの評価に空白を許すのは何年までを限度とするべきかという問題提起、そしてそれを反映した考え方が反映されているかに思えます。これを、空白を置けるのは、1年置きまでであるという意思の反映であるということを期待しますが、それが正しい解釈かどうかをここで確認したいと思います。

次に、「結果として、売上高等の概ね2/3程度を下回ることがある」という記述がありますが、これは内部統制プロセスの評価対象が2/3を大幅に下回ることを容認するための記述なのか、ぎりぎりで下回ることもあるということだけを容認する記述なのか、どちらがその本来の趣旨なのかについてお尋ねしたいと思います。

以上です。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

まず、3つご質問いただきまして、最初の小規模企業の範囲ということですけれども。

○野村企業会計調整官

まず、小規模ということにつきましては、必ずしもいくら以下とか、そうした数値基準について規定することは今のところ念頭に置いていません。そこにも書いてございますが、「事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造」ということで、両方合わせてということでございまして、場合によっては、当該会社が、この要件に該当すると判断されれば、そういうことでもある程度はいいのではないかなというふうに考えているところでございます。ただし、皆様から、やはり「小規模」ということを定義すべきだというご意見が強いようでしたら、この点も検討する必要があるのではないかと思っておりますが、例えば資本金基準でいくら以下は小規模というよりは、どちらかといいますと、ここは、組織構造が比較的簡素であるということで、経営者の目が行き届き、そのプロセス等についても詳細なものをつくる必要がないと思われるところについてという趣旨でございまして、そうした観点から、数値基準について、今の段階では念頭に置いているものはございませんということです。

それから、2点目でございますが、初年度に大体文書化等の内部統制の整備が終っているので、2年目以降として、それほど簡素化する必要はないのではないかというご指摘でございますが、ある意味でそのとおりかと存じます。今回、「導入に当たっては非常に苦労したけれども、枠組みはもうできているよ。」というご回答もアンケート等でもかなりいただいているところでございます。そうした中でございますけれども、プロセスが大幅に変わったとか、組織体制がM&A等で変わったりとか、そういったようなケースもあろうかと思います。それから、新規に上場される会社等もあると思いますし、何をおきましても、今回、基準・実施基準という位置づけとして2年目以降の取扱いとして明確化してはどうかということがあろうかと思っております。

それから、9ページの、「前年度が評価範囲に入っており」ということで、いわば隔年置きの評価を認めるということなのかというご質問でございますが、これは考え方によっては、ローテーションでということと同義ではないかというご意見もあろうかと思っております。今回ご提示した考え方の趣旨としましては、前年度でしっかり見ているので、本年度においてはということでございますが、ご指摘のありましたとおり、それが例えば前年度に限らないで、2、3年前の年度でもいいのではないかというご意見といいましょうか、皆様のコンセンサスであれば、そういった評価の仕方というのもあり得るのではないかというふうには考えているところでございます。ただ、監査人の監査に耐え得るのかどうかという観点は考慮する必要性はあろうかと思っております。

○八田部会長

3つ目の質問についての補足を。

○野村企業会計調整官

失礼しました。

3分の2を大幅に下回ることを容認するのかということでございますが、これはそういったケースも場合によっては想定され得るのではないかというふうに考えておりまして、ただ、評価範囲が全体の3分の1程度になってしまうということにつきましては、評価範囲の決定していただいた後に、必要に応じて監査人と協議をしていただくことが必要になりますので、結果としてはあり得るのかとは思いますが、それでしっかりした内部統制の評価、監査ができるのかという点は考慮する必要があるのかなというふうに考えているところでございます。繰り返しになりますが、理論的には3分の2を大幅に下回るということも結果としてはあり得るのかなというふうに考えているところでございます。

○八田部会長

三井課長、お願いします。

○三井企業開示課長

補足しますと、かなり個別性があるかと思いまして、いろいろお聞きしていますと、例えば単一の種類の商品とかサービスを全国規模で、例えば100の事業所で提供しているけれども、どの事業所もほとんど規模や組織が同じですと、こういう極めて均一性の高いサービスというか、そういう事業所が現にあるようでございます。片や、ある事業所では本社に並んで6割方の商品なりサービスを提供しているけれども、小さい拠点だと極めて取扱高は少ないという大小があるケース、それから取扱商品・サービスが複数あるいはたくさんあると、こういった様々なケースがあり得まして、取扱商品の種類が多い、あるいはサービスの種類が多い場合に、例えば先ほどの例ですと、3分の2を大幅に下回るということが起きるかどうかということと、最初のような非常に均一であるようなケースで、3分の2を大幅に下回るかどうかと考えると、これは前年度のやり方にもよるかもしれませんけれども、均一なものほど大幅に下回ることができる可能性があると言えるかもしれません。全国の事業拠点における内部統制の質が非常に均一であって、実際、従業員の雇用形態とか、仕事の能力とか、サービスの内容とかが仮に均一だったとすると、一種サンプリングの考え方に近いのかもしれませんが、前年度の3分の2ぐらい事業所をピックアップした結果の内部統制が有効であった場合、極論すると、翌年、本当にやる必要があるのであろうか。本当に事業所の数が多くて、統計的に非常に優位な状況にあれば、理論的には次の年度というのは非常に小さくなり得るわけです。もちろん、そんなに均一で、非常に母集団の大きいというほど事業拠点が多いという会社が中小上場企業であるケースは少ないので、非常に限りなくゼロになるということはなかなかないと思うのですが、そういうものに近ければ、確かに次の年度、2年目の拠点数というのはかなり減らせる可能性がある。 片や、均一性が非常に小さいということで、統計的な意味合いも下がってきて、個別性が強くなると。例えば3分の2がドラスティックにその半分になるということは起きにくくて、それなりに3分の2は下回るけれども、そこそこの拠点は対象になるというふうなケースもありえて、一概には言えないんだろうと思います。ただ、逆に最初に申し上げたようなケースで、機械的に3分の2をちょっと下回るぐらいの拠点を選ぶというのも実際どうかということがありまして、そういう気持ちも込めて柔軟性を大きく持たせるということと、経営者から見ても、監査人も入るわけですけれども、有効性というものを維持するという観点で、合理的な判断をしていただく必要があるのかなと、こういうふうに思う次第でございます。

○八田部会長

柴田委員、どうぞ。

○柴田委員

一般論で申し上げますと、内部統制の重要性には、経済犯罪の防止や粉飾決算の防止という意義もあると思います。性善説で考えるときに、小さい会社ならば心配ないのではないかという考え方が一方にあるとすると、性悪説で考えるときに、その小さい会社でワンマンの社長さんに悪意があった方が危ないかもしれないという考え方も他方でありえます。とすると会社の大小を問わず監査人の方の責任は重大であり、監査人の方々が必要と判断する証拠書類についても、小さい会社だから証拠書類の質と量が低下しても構わないということにならないことを期待しますし、そうでなければそれはそれで危うい結論なのかもしれません。

また、おっしゃるとおり、同一のプロダクトラインで、同一のプロセスで、同一のITという形で、拠点が120あるケースも確かにあるかと思いますけれども、この場合プロセス全体は単一のプロセスですから、プロセスに対する監査は大本で1回行えば全部について行ったのと同じであり、そのプロセスがきちんと守られているかどうかはサンプリングによる監査をすればよいということでしょう。これは今ある基準でも充分にカバーされており、それで不十分なのかどうかというところにはちょっと疑念を覚えますが、その辺はいかがでしょうか。

○八田部会長

三井課長、お願いします。

○三井企業開示課長

ちょっと僣越かと思いまして、むしろ部会長からご指摘いただきたいところもあるのですが、今ある基準でも、先ほどの私どものスタッフの説明にありましたように、例えば資料3-3の1ページに少しは書いてあるわけです。実施基準の中に企業内で作成・使用している記録を使えるとか、2つ目で言うと、代替手続というのがありますということで、気持ちとしては今でも同じかと思います。先ほどの3-1の中にありました要望・意見、これは制度が施行前のものや施行はされているのですけれども、内部統制報告書提出前のものから提出後のものまでいろいろ含まれているわけですが、とりわけ提出直前ぐらいの状況における作成者の声などを踏まえると、考え方としては柔軟性があるというのが分かるのだけれども、企業によっては、ケースによってはいろいろだということがあって、Q&Aであるとか、あるいは基準値の書き方のところをもう少し明確化といいますか、際立たせるということによって、相場観を合わせていくというふうなこともあるのかなということがございます。従って、3年前にここでお示し頂いた方向感を180度変えるとかいうことではなくて、むしろそれを実際現場に落とし込んでいく。プロセスとして、こういうことを実際、実施基準のレベルに書き込んでいったらどうか、こんな気持ちがございます。

○八田部会長

柴田委員のお話は、今日も全体的なスタートの段階で、見直すことが最初にありきのような議論が進んでいるので、それに対する若干の警鐘ということでしょうか。

○柴田委員

元々の建付けでは、内部統制の監査について、日本では米国のような絨毯爆撃的なアプローチを取ることはせず、売上高の3分の2というところで線を引きました。売上高の3分の1の部分の中には、重要性は少ないが、その部分に内部統制の監査を行えば手間と費用は倍かかるかもしれないものがある可能性があり、そこの費用までを企業に課すところはあえて避けた。また米国での費用高騰の元凶と言われている監査人による直接意見表明も、日本では採用せずに、全体的にバランスのとれた作りになっています。

箍を外すことによって、内部統制の実がなくなってしまうという可能性があるとすると、それについては重大な危機感を覚えます。バランスを取ることを期待します。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

今日もいろいろご意見を承りながら、将来的な方向性が決められるものと思いますので、よろしくお願いします。

高田委員、お願いします。

○高田委員

2点質問をさせてください。

資料3-2(1)と(2)です。

まず、(1)の方の、お聞きしていてちょっとロジックが分からなかった。それで、何で簡素化・明確化できるのかというのは、1つの流れとして、中堅・中小上場企業の場合、コスト負担の問題もあって、大企業のような整備ができない。ですから、本質的に、こう言ってはあれですけれども、低いレベルの内部統制でいい。だから、要は委嘱でいいんだという流れは確かにあると思うんです。そういうことをおっしゃりたいのか、あるいはそうじゃなくて、組織が簡素だから、全社的統制が非常に効いている。ですから、評価とか監査で評価の対象はかなり絞られてくるし、そこの証拠の質も簡素だということで、こういう(1)のようなことを明記するというロジックがもう1つある。両方入ってもいいのですけれども、どっちを言いたいのかというのがちょっとよく分からなかったというのが1点です。

それから、(2)ですけれども、簡素化・明確化はもう当たり前の話だと思っているのですが、資料3-3の中に、3ページ目に、経営者が評価で使ったサンプルそのままでいいというふうに書いてあるわけですけれども、これはちょっと理由を私、聞き漏らしたのですが、何で同じでいいのかというのを教えてください。

その2点です。

○三井企業開示課長

それでは、まず1つ目の方は私からお答えさせていただきます。

中小企業は、財政的にお金がないからというロジックというよりは、むしろ組織規模が小さくて、経営者が会社の末端までよく見えるという方がメインではなかろうかと思います。PCAOBが出した中小のガイダンスにおいては、経営者の目が末端まで行き届くということと、逆に末端の人たちは、社員は社長の背中を見て行動する、こういった趣旨のことが書かれていまして、これは日本でも当てはまることかなというふうに考えた次第です。従って、経営者のモラルとかが非常に大事であるというふうなことが書かれていますし、またCOSOのフレームワークでもそういったことが強調されているということで、そういうことから、業務プロセスで言うと、社長と社員の間にたくさん階層があるところほど文書なり何らかの媒介物が必要になって、中小企業であれば、むしろ直接コミュニケーションというのが大事になる、こんなロジックであると思います。

○野村企業会計調整官

2つ目の点でございますが、ちょっと説明不足だったのかもしれません。この点について、見直しのイメージのマル3というのをつけてございますので、恐縮ですが、13ページをお開きいただきたいと思いますが、元々の現在の基準・実施基準の建付けは、経営者がサンプリングのサンプルを選んできたとしても、監査人としては、例えば25件なら25件持ってきたとしても、全てをそのまま使うということはできなくて、一部については監査人自ら選ぶ必要があるというのが現在の建付けでございます。ただ、寄せられました意見・要望等を拝見しておりますと、そうはいっても、会社がせっかく選んだのだから、監査人も信頼できるのであれば、それをそのまま使って効率的に監査を行ってもいいのではないかというご指摘がございました。今回のご提案の趣旨としましては、経営者のサンプルを必ず使わなければだめだということではなくて、監査人としても、経営者が選んだサンプルについて信頼ができる、そのまま利用できるということを確認できるのであれば、監査人が自らサンプルを選択する必要はないということは言えるのではないかというものでして、結果として、場合によっては経営者が選んだサンプルと同じものを選ぶということになるのであれば、監査人自らあえてサンプルとして別のものをピックアップする必要はないのではないかという考え方からでございます。ですから、必ずということではなくて、監査人として、このサンプルはちょっとどうかということであれば、やはり自ら監査証拠としてサンプルを選ぶということは必要になってくるのかと思います。

○八田部会長

高田委員、どうぞ。

○高田委員

せっかくだから、意見を。

サンプリングの基本的な考え方で、母集団があって、それを独立のサンプリングをしていく。だから、経営者は経営者なりに選んでやって、監査人は独立に選んでやる。その結果として経営者がやった評価がサポートされていくということだから、「せっかくだから」のその「せっかく」というロジックがよく分からない。理屈としてこういうことを書いちゃうと、公文書に、赤っ恥をかくというふうに思うのですけれども、それは学者の議論だと言えばそれまでですけれども、そういう意見です。

○八田部会長

ありがとうございます。

久保田委員、どうぞ。

○久保田委員

冒頭、三井課長からご説明がありましたように、これは導入当時のことを考えますと、アメリカの反省に立って、日本では大分簡素化というか、過度なコストはかからないようにということで制度設計されたわけですけれども、その後の導入のプロセス、いろいろな事情があって、そういった制度設計、趣旨が必ずしも徹底せずに、途中でいろいろ金融庁さんも修正されたり、いろいろ見解を出されたり、それから八田先生もいろいろなご活躍頂いたのですけれども、実質的にはかなり企業に過度な負担がかかってきたというのがこの間のプロセスだというふうに私ども認識しております。そういう意味で、今回こういった形で制度の実効性を担保しつつ、過度な負担をかけることがないようにということで簡素化の見直しをされるということは非常に評価しているところでございます。とりわけ、最近、日本企業の国際競争力という観点からこういった分野で過度な負担があると、非常に厳しい局面を迎えているというようなこともありますので、ぜひ大幅な簡素化、見直しをしてもらいたいと思っています。

この「見直し検討の主な内容」の資料3-2のところで、簡素化・明確化というのは(2)に書かれていますけれども、結局は監査人による監査が前提ということでありますと、なかなかそういった大幅な簡素化・効率化につながらないということで、先ほど三井課長からご説明がありましたように、ヨーロッパではレビューということになっているということでございますし、レビュー方式による監査人の内部統制報告というような、そういった形に大幅な簡素化というか、効率化をぜひ進めてもらいたいというのが1点でございます。

2点目は、ここでも指摘されています「重要な欠陥」という用語の問題でございまして、これは経団連からも、あたかも企業自体に欠陥があるやに誤解を招くということから、ぜひ見直していただきたいというふうに思っております。

それから、これはむしろ東証の開示に係ることかと思いますけれども、「重要な欠陥」の存在が先に開示されるというようなことになっているということで、これはあくまでも内部統制報告と財務報告を一体に開示というところが必要ということで、市場関係者の誤解を招くことがないように、その点についても検討していただきたいというふうに思っております。

以上でございます。

○八田部会長

ありがとうございます。

私の方から、先ほどもご説明申し上げましたが、「重要な欠陥」の用語の見直しにつきましてのご提案ですけれども、見直すとした場合の見直し案というのがもし腹案としておありならばご説明いただきたいと思いますが。

○久保田委員

経団連のあれでは、あまりいい案ではなく、「弱さ」とかなんとかという用語になっていて、これも「weakness」の部分だけ訳しているようですけれども、一案としてはそういうことかと思いますけれども。ここでご議論いただければと思います。

○八田部会長

他にいかがでしょうか。

鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員

他の方と重複するかもしれませんが、今回の件で数値基準に関するところです。3分の2だとか95%、5%といったところを今回外すということに対してはちょっと抵抗がございまして、もう既に制度導入後2年たって3年目に入っているわけで、経営者と監査人との間では、ある程度、3分の2だとか95%というのは、プラクティスの中でもう2年経過してきていますので、大体定着してきていると思うのですが、ただ、これを消すことによって、見る人によってどういう感じがあるんだろうというのをちょっと考えますと、逆に言うと数値基準がなくなることによって、もっとフレキシビリティーがあって、柔軟性が出るんだということになると、我々としても、監査する立場から言うと、非常に面倒だなという感じがしています。柔軟化して簡素化するのは構わないのですけれども、やっぱり当初、この数値基準というのは、入れるというのがかなり基準を作るときの1つのポイントだったというふうに私は理解しておりまして、それによってある程度のレベルを保とうという意図があったんだと思っていますので、その部分というのは、今なくすということに対しては反対したいなと思っております。

現在書かれているものも、概ねだとか、それから他の方法があればそれもいいというふうな代替案はいくらも書いてありますので、それ自体に何か不都合があるというのは、私としてはあまり感じないんですが。

それから、あともう1つ、非常に瑣末なことなんですけれども、資料3-3でいくつかありますけれども、小規模企業の場合に、社内作成書類の中で「メモ」というのが結構いくつか出てまいりますけれども、メモって非常に粗っぽい言い方をすれば、走り書きのようなものもメモですし、こういったものって我々の感じから言うと、社内の書類として認められるものなのかというのがありまして、ちょっと用語的には何かもう少し違ったものであってもいいのかなというふうに思うのですけれども。

それから、先ほど高田委員からお話がありましたサンプリングの件ですけれども、これは全く私もそう思いまして、我々監査人というのは、会社のサンプルを利用するというよりは、むしろ会社がやった評価結果を利用するということなんです。そこのところは、ちょっとこの文章を読んでいくと、監査人が、会社がやったサンプリングをそのまま使うというようなイメージがありますけれども、基本的には会社がやった評価結果が、あるロケーションでよければ、それはもう監査人としては会社の評価に乗るという話のほうが我々としてはしっくりくる感じがしまして、ここの書きぶりというのは我々のやっているプラクティスとちょっと違うなという感じがしました。

それだけちょっとコメントさせていただきます。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

事務局から何かありますでしょうか。いいですか。

では、ご意見として承りまして今後の検討課題にさせていただきます。

荒谷委員、お願いします。

○荒谷委員

私は会計の専門家ではありませんが、2つほど個人的な意見を言わせていただきますと、まず1点は、先ほど柴田委員がおっしゃっておりましたように、資料3-3では「事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造」という非常に抽象的な言葉を使っておりますが、そのあたりの定義をきちんとしないと、かえって無用の混乱を招くのではないかという気がいたします。特に各界からの要望・意見等を見ておりますと、新興市場、監査役協会等からそういう意見が出ておりますし、それから三井課長等のご説明を伺っておりますと、その企業規模に合った形での規制は必要だと思いますので、その点についてやはり定義づけをする必要があるのではないかという気がいたします。

それから、第2点は「重要な欠陥」という用語についてですが、先ほど一般投資家から見るとある程度インパクトのある言葉が必要なのではないかという意見もあるとのことでしたが、逆に言いますと、一般投資家はプロではありませんので、「重要な欠陥」があると、やはり経団連さんが心配されているように、企業自体に欠陥があると誤解する可能性があります。この制度は、一般投資家向けのディスクロージャーを目的としたもので、投資家の投資判断に少なからず影響を与えるということを考えますと、やはり「重要な欠陥」という用語については何か別の言葉を考えた方がよいのではないかという気がいたします。

また、内部統制システムの構築義務は、規制対象、規制目的が違うとはいえ、会社法でも同じ構築義務が課されておりまして、金商法の適用を受けますと、当該企業の役員の会社法上の責任も少なからず影響を受け、重くなるものと思われます。従いまして、アメリカでは3区分としているものを日本ではあえて2区分としたことなどを考えますと、例えばですが、「重要な欠陥」ではなくて、「重要な不備」ですとか、「重大な不備」程度に止めおく方がよいのではないかと思います。

以上です。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

事務局からよろしいでしょうか。

小規模及び簡素な組織の企業の定義ということで、この部会では2005年から議論したときもそういった話がなくはなかったのですけれども、2つの点でこれについての定義というのは多分示されなかったと私は理解しております。お手元の方の関連資料の中の前文のところにこの用語が出てくるわけですけれども、まず今日配付されております資料2という大きい大部なものの95ページに、米国における実態として、もうご案内のように、大規模早期適用の公開会社、それから中規模公開企業、そして小規模というので、これは明らかに株式の時価発行総額によってランクをつけたということです。そしてそれを踏まえて適用年度が順次ずれてきたという、こういう事実があるわけです。日本の場合もそのような見方が必要なのかと見たときに、1つは、日本ではいわゆる企業について明確なランキングをしているのは、かつての商法、現在の会社法の中のいわゆる大会社を踏まえた区分があります。あれは要するに資本金と負債総額であり、それが今回の内部統制対応に対して適用できるのかとなると、それは必ずしも上場会社には不向きであるという議論が1つあったと思います。

それから、もう1つは、一番重要なのは、内部統制はシステムとして議論しなければいけないので、簡素な組織構造の場合と、いくら小さくても非常に煩雑なもの、あるいは扱っている商品が非常に多岐にわたるものと単品で一気通貫的な業務が行われているのとは大分違うんじゃないかということがあって、小規模で、かつ簡素な組織構造という言葉で、ある程度、実務的には理解いただけるのではないかという議論があったということで、その定義はしなかったと思います。従って、多分そういったご意見がありますけれども、その場合、どういうメルクマールが考えられるのか。例えば荒谷委員の場合、どういうメルクマールがあるとお考えでしょうか。もし教えていただけるならば。

○荒谷委員

会社法上の区分とは同じではないと思います。今、ここで即答はできませんけれども、例えば新興市場、2部上場、1部上場では基準が違いますので、その辺りをある程度勘案するとかではないでしょうか。

○八田部会長

ありがとうございます。

実は、そのような考えもあったと思います。1部、2部と新興市場とは違う。したがって、新興市場の方はある程度簡素な組織の企業だという意味合いでとれるのかと思ったところ、この議論が進行している段階で出てきたいわゆる不正企業というのは、実は割合的には新興市場が多いということがあって、当時のこの議論の中では、やはり同じ扱いでよいのではないのか。新興だからそれを小規模簡素な企業と考えることは必ずしもいいとは言えないということがあったやに記憶しておりますので、なかなか難しいんじゃないかと思います。

○荒谷委員

それは分かりますが、ただ、コストの面等を考えますと、実際に会計もきちんとしていないようなところで、さらに内部統制についてまで要求をしても、結局絵に書いた餅に終わってしまうのではないかと考えた次第です。

○八田部会長

ありがとうございます。

検討させていただきます。

では、柴田委員、どうぞ。

○柴田委員

今の小規模の会社というところですけれども、我々資本市場にいる人間が一番恐れるのは、少数の内部者によって経営される会社が不特定多数から資金を調達しているケースで、何か不規則な事態が起きることです。会計監査自体はそもそもきちんと行われるべきですし、会計監査がきちんと行われるための補助的な手段として内部統制がある訳ですが、会社の表面上の規模だけを理由として内部統制プロセスに対する監査の要求水準が下がったり、小規模の会社であれば略式のメモなどの書類未満のものが証明用の証拠として十分であるという事態になっても困りますので、新しい建付には万全の注意をしていただきたいと思います。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

三井課長、お願いします。

○三井企業開示課長

ご指摘を踏まえて、また中身について精査したいと思います。

メモという言葉がいいかどうかちょっと別ですが、実際のこれまでの初年度のケースで出てきましたものの中に、例えば中小企業でもパソコンなり何らかのシステムを使っているケースがございまして、売上の仮装を用いた粉飾決算の例で考えますと、営業マンが外から注文をとってきて、売上として、どこかで入力をすることになります。伝票で書くケース、あるいは端末に入力するケースなどがあると思います。入ってきたものを製造業であれば多分製造現場に流れるということでしょうし、流通業であれば仕入部門に流れるということになります。仕入部門は仕入部門で、注文が入ってくる前に在庫を整えているケース、あるいは製造してストックしている場合もあれば、その注文状況を見ながら調達をしているというケースがありますけれども、大規模会社であれば、それを中央で制御をして、在庫なら在庫を作らせるわけですけれども、中小企業ですと、中間に入っている大きなセクションがないまま、恐らく調達がされたり、製造がされたりしているという状況があろうかと思います。

それから、売上とは非常にリンクした形で売掛金というのが立っていると思うのですが、売掛金というのを立てて、それを管理して、請求をしなければいけないプロセスがある。それから、入金をチェックしなければいけないというプロセスがあって、極論すると、個人事業者であれば、これは全て1人でやることになりますが、上場会社であれば、恐らくそれを最低何人かで分担しているのであろうと。大規模会社であれば、それについてそれぞれ内部監査なりが働くようなシステムを構築していると思いますが、従業員が例えば数十人規模の場合ですと、今のプロセスに何人かは介在するけれども、それ以上に別途の組織を作れというのは難しい、こんな議論があったと思います。従って、今の売上の入力、売掛金の管理、そして在庫の調達なり、それを整えて発送し、売掛金を取り立て、入金を確認するというプロセスに関与した人たちの流れがチェックできる、あるいはさらに言えば、根本で言うと、社長が売上になっていないものを売上と立てろという指図をしたりしていなかということがチェックされて、何らかの形で報告されるということかと思いまして、メモという言葉がフィットしているかどうかわかりませんが、そのための3点セットとしての内部統制のためだけの書類を整える必要はないけれども、当然そのためには、文書と言えるかどうか別として、帳票がある。あるいは、そうでなければ電子データがある。中小企業については、それらを使って内部統制ができるのではないかという問題意識もあって、それをQ&Aですと軟らかい言葉を書いているのですが、実施基準などで書く場合に、どのような表現方法がいいのかどうかということが1つあろうかと思います。

あと、監査人の方から、非常にシンプルで、そういった専門の内部統制組織を構築して大がかりにやるのでは機能しない、むしろ会社の内部のいろいろな帳票類を利用しつつ、そこそこ内部統制が機能しそうな会社というのは、初年度の実体験を踏まえて、例えばこんな属性があるとか、もしそういうアイデアなり識見がありましたらご教示いただければ、それを反映させれば反映したいというふうに考える次第でございます。

○八田部会長

では、柴田委員、どうぞ。

○柴田委員

この改善案は、子会社をある程度ローテーションで内部統制のプロセスの監査から外すことがあり得ると読めます。しかし私の意見は、先ほどの高田先生のお話の趣旨と同じで、監査側からの経営者に対するサプライズの可能性を確保することが重要であろうと考えます。つまり、この子会社には来年は監査人は確実に来ないということになりますと、経営者もどんな悪さをしたい誘惑に駆られるか分かりませんので、建付けとしては、サプライズの可能性をチェック・アンド・バランスの仕組みとして確保した枠組みを作ることが大切だと考えます。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員

1つ、資料3-3の2ページのところに持分法の適用会社の話が書いてあって、これは確かに持分法の適用会社に関しては支配力がないケースが多くて、実際に業務プロセスまでほとんど見られないというようなケースが多いと思うのですが、ただ、ここで言う対応策の、基本的に当該会社の親会社からの確認書面を入手するというような形で、ほとんどこういうものって、監査上の問題から言うと、持分法の損益が大きい会社が問題になってくるのですけれども、その会社がそれでいいのかというと、監査手続的に言うと、全社統制だとか統制環境だとか、それから全社的な観点で見る決算プロセスだとかは、やっぱり最低限見る必要があるんじゃないかというふうに思うんです。我々も実務で監査をやっていて、会社の方もそうなんですが、持分法の適用会社というのは非常に扱いにくい部分がありまして、最近、資源関係なんかで、合弁で持分損益が大きくなっているとかいう会社も結構多いので、件数は非常に少ないんですが、結構これが基準の中に入って、範囲に入っているということで結構悩んで苦労しているというケースも多いんじゃないかと思うんですが、この辺については少しできればご検討いただいて、何かもう少しできないかなと思うのですが。

○八田部会長

もう少しできないかなというのはどういうことでしょうか。

○鈴木委員

もう少しやり方を、例えば重要であれば、先ほど言いましたように、全社統制だとか統制環境だとか、そういったものは質問書だとか、デスクトップでもできる部分もありますので、そういったものをやると。例えば経営者の陳述書みたいな形で確認書面だけもらったのでは、多分我々の立場から言いますと、監査意見を出すときに、やはりかなり躊躇する部分があるかなと。会社としても、多分、内部統制がそれで十分見たというふうに言えない部分もあるんじゃないかと思うのですけれども。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

錢高委員、どうぞ。

○錢高委員

色々な皆さん方のお話を伺いながら、様々なお立場で様々なお考えもあるんだと承っておりました。柴田委員のように資本市場の立場から物事をお考えになる方もおられれば、私のような実業の立場で企業経営をしておりますと、毎日毎日が日々生き物でございますので、有価証券報告書をまとめて内部統制のレポートを付けるによっても、4月1日のその日から毎日が企業との、あるいは従業員との結節の中での努力と魂の日々でございます。そういった面で、先ほど八田部会長あるいは三井課長からこの小規模の会社に関して、どなたかは、小さい会社でワンマン社長であればかえって間違いを起こすのではないかというご指摘も時にはあるのかもしれませんけれども、多くの方々は一生懸命その企業並びに従業員とともに、幸せを求めながら、お客さんに喜んでいただこうと思っていらっしゃるわけで、全て物事はバランスの問題ではないかと感じております。ですから、そういうふうに小さい企業のワンマン社長はワンマンだから独裁的だというよりも、大会社の社長のほうが、社長と副社長の力の差というのは大変な差で、人事権ということを擁して大変なことでございますから、決して中小企業が非常に独裁的というよりも、場合によれば、メーカーであろうが金融機関であろうが、頭取と副頭取の力の差というのは大変なものだということは誰でも知っているわけでございます。そういうふうに考えますと、この内部統制の本質は、何かと言いますと、やはり物事が何か間違い事とか、意図的な不正となれば、これは言語道断でございますが、今起きておりますいろいろな製造業におけるリコールだとか、食品企業における間違ったような事故とか、あるいは不当表示で色々と前の公正取引委員会だとか、消費者庁だとか、いろいろな問題もございましょう。上の方はそれを知るのに大変時間が遅れるということで、下の方ではある程度気づきながらも上には伝えない。 小さく小さくして、何となく上の方が知ったときには半年から1年遅れている。そういったためにこの内部統制というのはあるわけで、基本的には、警察国家的な感じのルールではなくて、やはり日本の土壌の中における内部統制というのは、先ほどおっしゃったような性善説といいますか、小さいところは一生懸命やっているからこそ、悪いこともないように頑張るんですよというお言葉は、確か三井課長か八田部会長かおっしゃいましたけれども、性悪説に立つのと性善説に立つのと、やはり物の入り口のケースが変わってくるんじゃないかと事業経営者の立場で非常に思うわけでございます。今のこの内部統制というのは、今起きておりますいろいろなリコール、不当表示、食品事故だとか、我々も建設をやっておりますと、建設業界におけます海外で大きなプロジェクトをやったけれども、契約約款の十二分な読み込みを果たせていなかったかもしれないということにおいて、灼熱の地で努力した部下であり社員は、物はきちんと一生懸命頑張って作ったけれども、契約約款の当初の意思決定における判断の若干揺るぎであって、それはもうマネジメントミス以前の問題で、意思決定の段階、そんないろいろなことがございます。そういった意味で、内部統制というものは、そういうことの経営上の大きな性善説に立っても、なおかつ犯しがちな誤りのないように、怒られるからこれをやるんじゃなくて、自分の企業の永続性を考えるために従業員とともに頑張ろうと。時には過ちも不可抗力もあるかもしれない時代ではございますけれども、今の世の中の風潮は、予測不可能というのは一切許されない結果責任を問われるわけでございますから、予測できる立場に社長なり会長はあるわけでございます。 天変地異以外は全部予測可能だというのが、最終的に事故なり事件を起こした場合の遺族なり検察なり裁判官はそういう目で見てこられるということも、十二分に経営者はよく分かっておりますので、予測不可能は世の中にないんだと。予測可能な部分で、予測をするべき立場に立たされているその人間がよく発見して、コーチング、監督しなかったということ、それと内部統制の基本的な思想が合致しているのではないかというふうに思っております。

ですから、先ほどご説明がございました例えば中小企業等ということも、この表現は若干誤解を招きますので、特に私はイメージが沸きませんけれども、中小企業の方ですと、社長が絶えず訓示や、社内通達をしておられるとか、社内コーチをしておられる。そういうふうな部分も、いろいろなメモという解釈として恐らく野村調整官はお考えになっているんだと思いますけれども、この辺も含めて、私は基本的に今お考えの部分というのは、かなり色々なプラス・マイナスのバランスをお考えになって熟慮された、色々な新しい方向性を目指していらっしゃるというふうに受け止めさせていただいたということを発言させていただきました。

以上でございます。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

貴重なご意見、ありがとうございました。

時間が少なくなってまいりましたけれども、1点、先ほど久保田委員の方からのご発言の中で、今回の一連の制度にとって、経済界の負担が過大であったということのご指摘の1つに、いわゆる監査が1つ原因だというようなご指摘で、これをレビューにできないのかと。それで簡素化というようなご提案がありましたけれども、この点に関しまして何か委員の中からご意見いただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

時間が少ないですので、ご発言は手短にお願いしますけれども、いかがでしょうか。

持永委員、いかがですか。

○持永委員

制度の中で、アメリカ、それとは違った日本のこの監査の中で効率的にやってきているという意味で、我々はある意味では枠内でできるだけ効率的にということでしたので、この内部統制監査に基づく効果、そしてコストを考えたときに、我々の立場からすると、あえてレビューに移る必要はないのではないか。それよりも、今の制度をさらに効率化、効果的にやることによって、先ほど柴田委員からのご懸念ですとか、あと皆様のできるだけ効率化ということが両立して、投資家等からも喜ばれる結果が出せるのではないかと思います。我々はある意味では責務を負っている立場でございますので、その責務を全うしたいというところでございます。

○八田部会長

ありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

久保田委員、どうぞ。

○久保田委員

せっかく掘り下げてご議論いただけるのであれば追加的に発言させていただきます。

我々の認識は、この間、内部統制もそうですし、四半期、それから今後IFRSの導入と、これまではその都度、部分部分で議論して、それぞれ部分最適のようなそれぞれ制度を作ってきたわけですけれども、それをトータルで重ね合わせたときに、日米欧、特にヨーロッパと日本とのこういったディスクロージャー関係の負担の問題と特にコストとベネフィットの問題ということから、やや日本が過重になっているんじゃないかということで、そういう全体の中でやっぱりこの部分の制度ももう1回見直すということはあっていいんじゃないかというふうに思っております。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

三井課長、お願いします。

○三井企業開示課長

ちょっと時間もないので、改めて次回にでもまたご意見を賜れればと思うのですが、この冊子の資料の最初のピンク紙の中に意見書という審議会の報告書があります。これは基準・実施基準ですが、この通しページの5ページでございまして、「(4)公認会計士等による検証の水準とコスト負担の考慮」というところがあります。ここのところで、全体で20行ぐらいでしょうか、「マル1トップダウン型のリスク・アプローチの活用」の少し前、ただし書きのもう1つ上です。内部統制の有効性の評価についての検証は、監査の水準とすることとしたとあって、ただし書きで、負担を軽減するためにこうなっているというのが、3年前のこの部会、審議会の結論でございまして、久保田委員のご指摘はここについての見直しを提起しておられるということかと思います。要するに、法制度というよりは、ここでお決めいただく中身についてのご提案があったので、また次回にでもその続きについてのご意見を賜れればありがたいと思います。

○八田部会長

それでは、いただいております時間も近づいてまいりましたので、本日いただきましたご意見等を踏まえまして、具体的な内部統制の改訂基準及び改訂実施基準の案文を作成させていただき、次回の部会にご提出させていただきたいと考えております。

なお、本日ご発言できなかった点やお気付きの点がございましたら、事務局にご連絡いただきますようお願いいたします。

今後のスケジュール等につきまして事務局から説明してください。

○野村企業会計調整官

次回の部会でございますけれども、6月10日、木曜日の9時30分から2時間程度ということで予定をしております。改めてご案内をお送り申し上げますので、ご出席をいただきますようお願い申し上げます。

以上でございます。

○八田部会長

ありがとうございます。

それでは、時間が参りましたのでこれにて閉会いたします。

お忙しいところご参集いただきまして大変ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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