企業会計審議会総会議事録

1.日時:平成22年8月3日(火曜日)15時00分~16時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○安藤会長

定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会を開催いたします。

皆様には、ご多忙のところご参集いただき、誠にありがとうございます。

なお、本日の会合も、企業会計審議会の議事規則に則り公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

ご了解いただきましたので、そのように取り扱わせていただきます。

議事に入ります前に、委員等の異動がございましたのでご紹介します。

まず、委員でございますが、遠藤委員、増田委員が退任され、高橋秀夫委員、山崎彰三委員が就任されておられますので紹介します。

まず、高橋委員です。

○高橋委員

よろしくお願いします。

○安藤会長

よろしくお願いします。

次は、山崎委員です。

○山崎委員

山崎でございます。よろしくお願いします。

○安藤会長

よろしくお願いします。

なお、委員名簿をお手元に配付させていただいておりますので、ご参照ください。

また、金融庁の人事異動によりまして、事務局にも異動がございましたので紹介していただきます。

○古澤企業開示課長

このたびの人事異動で企業開示課に参りました古澤でございます。よろしくお願いいたします。

簡単に、7月30日付の事務局の異動をご紹介させていただきます。

内藤総務企画局長が退任いたしまして、後任に森本局長が就任してございます。

○森本総務企画局長

森本でございます。よろしくお願いいたします。

○古澤企業開示課長

岳野審議官が証券取引等監視委員会事務局長に異動し、後任として池田参事官が就任してございます。

○池田参事官

よろしくお願いいたします。

○古澤企業開示課長

三井企業開示課長が総務企画局の総務課長に異動し、後任に私ということでございます。

それから、土本参事官が経済産業省産業資金課長に異動し、後任として齋藤室長が着任してございます。

○齋藤開示業務室長

齋藤でございます。よろしくお願いいたします。

○安藤会長

それでは、議事に入ります。

前回、前々回に引き続き、「単体財務諸表の会計基準のあり方(コンバージェンス)について」、ご審議をいただきたいと存じます

当審議会における一連の審議は、企業会計基準委員会(ASBJ)における議論がより円滑に進むよう行ってきているものです。本日の議事の終わりに、私から、これまでありました議論について簡潔にまとめさせていただき、ASBJの基準開発に貢献させていただきたいと考えております。

本日は、まず事務局から、これまでに出された議論と関連する事項について説明がございます。

○三井総務課長

それでは、お手元にお配りしてございます資料の1から7でございますけれども、前回出されたものなどもございますので、重複、過去出された資料につきましては資料の存在、あるいはその概要のみにして、今日お配りした資料を中心にご説明申し上げます。

資料1につきましては、前回、会長から提出していただきました資料の一部でございまして、1回目、2回目の議論を全体像について、1つの考え方、試案というものの骨子を整理したものでございます。端的に申し上げますと、日本基準と、それから国際会計基準(IFRS)については、質が確保された2つの基準があると考えまして、連結については、国際的な投資情報提供機能を重視して、IFRSへのコンバージェンスないしアドプションについて推進すると、他方で単体については、既に実務的に定着している日本基準との関係(実務的に定着した会計実務、あるいは税、それから配当、それから商慣行等)について考えると、そういった関係について考えるということでございます。

そういうことを考えながら、連結と単体の会計基準について、どのように関係を考えていくかという点について、3つ目の白丸からでございますけれども、このような考え方、設定からしますと、抽象的に、連結と単体を理論的にも実務的にも一致させる、ないしは理論的あるいは会計思想としては、分離するというよりは、実務的にその会計基準の変更に伴う、要するにコンバージェンス等に伴う作成サイド、監査人も含む作成サイド、そして投資家、アナリストサイドの広い意味でのコスト・ベネフィット、実務としての会計基準、あるいは会計処理、財務報告の分析といった観点から比較衡量し、適切な解を求めていくということではどうかということでございます。

その1つの切り口としまして、1つ目、連結と単体を両方とも連・単一致した形でコンバージェンスをするという場合に起きる社会的なコストとしましては、まずはその結果、課税ベースが拡大して税負担がふえるかもしれないといったリスク、あるいは原価計算等、とりわけ製造業などでは、原価計算がこの時系列的に正しく把握しにくくなる場合があり得るのではないかというコスト。それから経営管理上、これも従来の経営管理上、使われてきた数字と違ってくるということから出てくる、そういったコスト。あるいは単体についてもコンバージェンスをすると、そのオペレーション、あるいはシステムの移行といったものに、そのトランディショナルなコスト、移行コストがかかるといった、こういうものがあり得ます。欧州などでは、そういったことを踏まえて、単体はフランスなりドイツの基準をそのまま使いつつ、連結をつくるときに、その連結修正といったもので修正仕訳などの方法により対応した事例もあるというふうなことからも聞いております。

他方、連結と単体に異なる会計基準を使うということになりますと、投資家サイドでいえば、違った会計基準で連結と単体が異なる数字で出てきますので、それをどのように整合的に理解するのかというコスト。それから、連結と単体、今申し上げましたけれども、違ったものにすることによって修正仕訳で済むのか、あるいはさらには二つの別の異なる会計システム、財務会計システムを応用するということなのか、それはまちまちだと思いますが、そういったものによって場合によっては大きく異なるわけですけれども、作成者サイド等においてそれ相応のコストが発生するということ。あるいは、経営管理についても、同様の連結と単体が異なることによりコストが発生すると、こういったことがあり得るということでございまして、繰り返しになりますけれども、こういったものがそれぞれの会計基準によって連結と単体が一緒になることによって得られるベネフィットとコスト、それから連結と単体が異なることによって得られるベネフィットや、そのデメリットなりコストというものが異なり得るということから、会計基準を個別につくっていくプロセスにおいて、そこを適切に判断、ジャッジメントをしていく必要があるのではないかと、こういうことでございます。

次のページでございますけれども、その比較衡量の結果として、これはまさにASBJが民間独立の会計基準を設定主体として検討をして結論を得ていくべきものであるという、こういう強いご議論が多数出されたということであろうかと思います。

この例でございますけれども、例えば多くの企業において、連結・単体ともに一体としてコンバージェンス(会計基準)をして新しいものに変えていくというコストが非常に高い場合には、とりわけ単体について、そういったもののコスト、一緒に動くことによるコストが大きいという場合に、連結と単体の間に大きなズレが生ずるということ、少なくとも一時的に大きなズレが生ずるということをむしろ認めていく、そういうズレをつくっていくという解決手法もあり得るということでございますし、ドイツ、フランスにおける開発費の取扱いのように、連結との関係で個別の会計、単体の会計基準について、場合によってはその選択肢を認める。そのドイツ、フランスの例ですと、開発費について資産計上と費用処理の2つの会計処理を、継続性の原則のもとに認めているという例がありますけれども、こういった取扱いについて、この是非について検討する余地があるということではなかろうかということがございます。

ということで、次のページでございますけれども、連結先行ないしは事務方からは「連結と単体のダイナミック・アプローチ」などという言葉も使ったりさせていただきましたが、これをスナップ・ショットで見た場合には、このある瞬間については、今申し上げたような個別の比較衡量なり検討を経て、ASBJにおいてこのようなズレが起きるということになろうかと思います。ズレが起きた場合であっても、作成者サイド、投資家サイドが、そのズレを何らかの形で、頭の中なのか、あるいは何らかの形でつないでいる限りは、整合的な理解が行われ、ないし整合的な財務諸表がつくり得るということになろうかと思います。

このイメージ図は、あくまでその例ということでございます。

資料2から、若干、これまでに出された議論について補足説明をさせていただきます。

資料2につきましては、今回新たに出させていただく資料でございますけれども、昨年12月に連結財務諸表規則の改正を公布させていただきました。国際会計基準を日本企業に任意適用するに当たって必要となる規則でございます。この中に、現在、まずこれから米国基準を使って日本の当局にファイリングできるかという点については、今年の3月末をもって最後となるということで、4月以降は米国基準による新たなファイリングはできなくなるということに加えまして、現在、日本企業が米国基準を使ってSECに財務諸表を提出している場合には、その連結部分でございますけれども、その米国式の財務諸表を日本の当局に提出し開示することができると、このような特例の制度がございますが、これを2016年3月期までに限定されたということでございます。

この考え方でございますけれども、これまで国際会計基準を長らく禁止してきた理由がございます。米国はとりわけ純粋に守っているわけですけれども、本来、自国企業であれば自国の会計基準ということで1つの会計基準で、その投資家のために比較可能な情報を提供すると、こういうことでございますが、米国は、それを外国企業にも適用するということを強く貫いていたために、ニューヨークで資金調達をした日本企業は、米国式の財務諸表ももう一つつくらなければいけないと、こういうことから企業の負担軽減などのために、いわば特例として時限的に、これまで米国基準で財務諸表をつくり、SECにおいて法定開示された企業については、日本の当局に、そのまま、連結のみになりますけれども、提出することができると、こういうことであったわけでございます。

そうしますと、既に2つの会計基準が並列している状況になっています。それに国際会計基準を追加するというのは、いかにも資本市場のインテグリティなり、あるいは投資家の比較可能性を損なうものとして、これまで認めてこなかったわけでございます。ただ、昨今の国際会計基準をめぐる状況を考えますと、これはそろそろ国際会計基準と日本基準と米国基準の3つのうち、少なくとも3つ並列するということは避けるということであるとして、2つ選ぶとした場合に、米国と国際会計基準を選ぶという選択肢はないとしますと、日本基準と国際会計基準という組み合わせなのか、日本基準と米国基準という組み合わせか、どちらの道を選ぶのかということを決断せざるを得ないところにあろうかと思います。米国基準を取り巻く状況、国際会計基準を取り巻く状況を見ると、この際、会計の国際戦略ないしその会計外交と言うと事は大げさでございますけれども、そういうピクチャーで見た場合には、国際会計基準と日本基準という組み合わせを選ぶほかないのではないかという議論でございます。そうしたことから、ここでは種々の状況を勘案して、米国基準ではなくて国際会計基準と日本基準の組み合わせを選ぶと、こういうふうな規則を公布させていただいたという次第でございます。

具体的な理由につきまして、少し付言させていただきますと、例えば世に言われます時価会計あるいはフェアバリュー・アカウンティングの行き過ぎといった論点でございますけれども、米国基準で言いますと、持合い株式も含めて、すべて当期純利益、当期純損益に評価損益を計上するという完全な時価会計でございます。現在、米国の基準案はそのようになってございます。

他方、国際会計基準についてはもうIFRS9号が確定しておりますけれども、それを純利益に計上するということは必ずしも貫徹しておりませんで、公開草案段階では戦略投資株式と言っていましたけれども、今ではその他OCI区分に計上する区分というものが設けられまして、IASBの考え方では、日本の持合い株式を念頭に置いてつくった区分であると、こういうことでございます。これについては純利益に計上せず、その他包括利益に入れると、こういうことでございます。

それからもう一つ、負債の自己の信用リスクの悪化に伴う評価益の計上という問題で、これについては別の資料で説明します。米国基準では、これは純利益に計上するというものでございますけれども、国際会計基準については、日本を含めた伝統的な考え方を持っている国々からのインプットによって、純利益に計上することをやめて、その他包括利益に置いておくというような会計処理に変更したというものでございます。これらの点を含めて、米国基準はかなり日本の会計の考え方なり実務から遠いところにあるということに対して、国際会計基準は、そのような米国的な考え方もありますけれども、日本的な考え方、大陸、ヨーロッパ的な考え方も含めて国際的にいろんな意見が出されてでき上がっていくというプロセスを反映して、そのような基準になっているということかと思います。

ここにもありましたけれども、米国会計基準の設定プロセスに日本人はもちろん参加してございませんし、また、日本のガバナンスも及んでいません。他方、国際会計基準につきましては、これまでこの審議会で説明申し上げているとおりでございまして、日本のボードメンバーがいたり、あるいは日本からもインプットする機会があります。また、当局としてもモニタリングボードという形で、米国、ECに並んで、日本の当局もそのガバナンス構造に参加させていただいているという状況にございます。

現に米国の規制当局であるSECは、IASBはインターナショナル・スタンダード・セッターであり、したがって、国際的な諸状況、国際的に各国で行われているさまざまな状況を考慮すべき、あるいはしている立場にある。

他方、米国のFASBは、ナショナル・スタンダード・セッターであって、米国の諸状況だけ考慮すればよい。アメリカも、アメリカの諸状況を、もちろんIASBに対して主張するということを言いつつ、他方で、FASBは、日本の諸状況を考慮する立場にはない。このようなことを明言されていると、こういう状況であるということが、このルールの理由でございます。

それから、資料3でございまして、今の点に関連しますけれども、信用リスクの悪化に伴う負債の評価益の計上ということでございます。国際会計基準は、とかく時価会計色が強くて、この点が非常に不当な部分であると、こういうご指摘があるところでございまして、実際、現行基準では、自分の信用リスクが悪化したことによって利益が出てしまうという部分がございます。公正価値オプションが使われた場合でございます。米国基準は、まさにそういう考え方で、既にそういう基準が適用されていますし、また今後ともそのようなことが続くということが予想されております。

他方、国際会計基準は、今申し上げましたように、米国だけではなくて、日本も含めたさまざまなステークホルダーが意見を申し上げると。そしてグローバルなガバナンスが行われるというプロセスが行われるということの結果、この5月に公表されました公開草案においては、まさにこの自己の信用状況が悪化することによって利益へ計上されるというものを回避するような案が出されています。

次のページでございます。理由としては、まずそのような利益に計上されることは直感に反する。それから通常これが、なぜ公正価値オプションの現行基準ないし米国基準では負債の評価益も利益に計上できたかというと、負債もトレーディングされるという発想であると思いますけれども、負債がトレーディングされるということは、まさに典型的には現金償還するということでございますが、信用力が悪化しているときに、そもそも現金償還ができると考えるほうがおかしいのではないか。これは私どもも国際会計基準審議会の方が来られたときには、ちょっとおかしいのではないかということを申し上げたのを、下の箱の中に書かせていただきましたけれども、そういったことを理由として、その他包括利益に計上するにとどめると、こういうふうなことに考え方を改めるということが公開草案では書かれてございます。

資料4の資料は、コンバージェンスについて具体的な内容と記載した資料でございます。一部に、国際会計基準は、普通の会計基準ではなく、投資家のM&Aとか、特定の局面における特定の物差しのためのものであり、極端なほうに行ってしまうというご指摘がありますけれども、現状、国際会計基準とのコンバージェンス・プロジェクトが具体的にどのように進んでいるのかと、その内容をご覧いただきまして、実際それが本当に非現実的な会計基準に行ってしまうものかどうかというのをファクトに基づいてご判断していただきたいと、こういう趣旨で提出させていただいたものでございます。

具体的な項目が、非常に小さい字で並んでございますけれども、例えば、1枚めくっていただきまして、連結の範囲でございます。

連結の範囲、これはご案内の方も多いかと思いますけれども、もともと国際会計基準は、米国やイギリスの考え方を却下して、大陸ヨーロッパや日本のような実質支配の考え方を主に取り入れたものでございます。アメリカでは50%プラス1株の議決権を持っている人が、そのコントロールというか連結の範囲に加えると、こういう数値基準をもともと持っていまして、イギリスもそのような考え方だというふうに承知しています。

また、その本体と違った種類の事業を行っている者は連結の対象にならないというのが、米国、イギリスの考え方であったと聞いてございます。

他方、フランス、ドイツをはじめとする大陸ヨーロッパ、日本もその影響下にあると考えますけれども、この考え方では支配があるという概念がコントロール概念であったというふうに聞いていまして、IAS3号という昔、国際会計基準がつくられるときには、米国とイギリスが最後まで反対したけれども、その考え方を退けて、今のような支配概念で基準ができていったというふうに聞いてございます。その旨は前回、IASBの議長が日本に来られたときにも、アメリカは違った考え方をとっているけれどもということを議長がおっしゃられたということで、ご記憶の方もあるかもしれません。

それから、次の財務諸表の表示でございます。この点について純利益を大事な指標として残す、こういうことで進んでおります。これは大陸ヨーロッパも日本と似たような考え方をとっております。したがいまして、大陸ヨーロッパと日本がこの基準づくりに積極的に参加する限りにおいては、そう簡単に純利益というものがなくなるということはないのではなかろうかと思われます。ただし、キャッシュフロー計算書については、実際、実務が追いついていくのかと、こういう問題があると思いますので、そこは十分な実務からの意見発信ないしフィードバックを求めていくということが必要になろうかと思います。

次のページの収益認識でございます。

収益認識も、もともとの提案は、いろんな業種なり商品、サービスの取引によって、さまざまな切り口で収益が認識されるというアメリカ型のものから、もっとコンシステントな包括的に一貫した収益の認識をしたいという動機で始めたというふうに、IASBは公表しています。ベースとなる考え方が資産負債アプローチの考え方から説明したので、かなり違和感を持って日本の関係者からは当初受けとめられていたと思いますが、その後、契約資産、契約負債を時価で毎期毎期再評価していくようなモデルではなくて、顧客対価アプローチという、実際にはむしろ売買なり、その取引という契約に基づいて認識をしていくという、言いようによっては、ちょっと語弊があるかもしれませんが、現行の売上の認識と変わらないような基準になりつつあると、こういう状況かと思います。

他方、負債と資本の区分については日本の会社法なども、あるいは各国の会社法、いずれもそうでございますけれども、悩ましい問題を抱えているプロジェクトでございます。実際に形式はエクイティでありながら、経済実態はデット、あるいはその逆のものが金融商品、デリバティブなどの普及によって多々出てきたということから、経済実態に応じて、こういった負債や資本を考えていく必要があるという必要性は、多くの方々から賛同が得られると思いますが、実際には、各国とも会社法というものがありまして、またその法形式というものも一概に無視し切れないところがあって、非常に悩ましい問題であります。

先日のIASBの議長が来られたときには、このプロジェクトは、当面すぐに答えは出そうにないという悲観的な見方をされていたということでございまして、これが直ちに極めて日本人から見て違和感のある形で決着するという見込みは低いものというふうに理解してございます。

次の4ページでございますが、金融商品会計でございます。

これは過去の審議会でも概要を説明させていただきました、いわゆる持合い株式に対応する区分があるという点、それから満期保有という区分がなくなりまして、かつテインティングルールというものも廃止されました。他方、償却原価という区分ができて、非常にアバウトに言いますと、満期保有区分よりは少し広がっているという格好になっているかと思います。銀行などが長期的に保有する、しかし満期の前にかなりの頻度で売却するようなものでも、償却原価、ビジネスモデルとしてそのように区分されていれば償却原価区分に入り得ると、こういったことが特色かと思います。

その他、負債、それから次のページにもありますけれども、金融資産の減損、それからヘッジ会計、こういったところが今、議論が行われているところであります。例えば、金融資産の減損については、考え方として理論的におかしいと言われているわけでありませんが、あまりにも理論的に過ぎて、金融実務から対応できない、実務的にややアンリアリスティックではないかといった、こういう懸念などがあるという点はございます。したがって、これが実務的にきちんと落とし込めるように十分な議論をしていくということが必要でございます。

6ページでございますけれども、退職給付、これも現在、議論が進んでいるところでありますけれども、もともと給付建て債務、あるいは拠出建て債務といった、大きなフレームワークの議論をしていたわけですが、現状2011年まででは、むしろこの遅延認識をやめるということに主眼が置かれた、やや焦点を絞った形、狭い範囲で決着させようというプロジェクトに変わりつつあるように見受けられます。また、かつて毎期毎期の数理計算上の差異を純利益、純損失に計上するという、そういう一時期暫定合意があったりしたわけですが、日本では従業員は長く勤めるという会社が、もちろん現時点でもまだまだたくさんあるわけでございますが、そういう長い間働く従業員について、長い期間に対応した退職給付というものを行っていくということに対応して、日本からは、数理計算上の差異を純利益に計上するのは日本の雇用慣行から見て極めて違和感のあるものであると、こういうことを強く申し上げてきたわけでございます。最終的に公開草案で出されたものについては、OCI、その他包括利益に、数理計算上の差異は計上する。その他、非常に細かいところで、その予定利回り等と、それから現実の利回りの差異の処理とか、そういったことも含めて現状の日本の考え方から見て、リーズナブルなものが純利益に計上されると、こういうことであります。

他方、その退職給付に関する差異というのはバランスシートには認識されるということで、現状は注記だけされていますので、バランスシート上は、やや隠れ債務のような形になっているわけですけれども、そういったものは見える形に変わっていくと、こういう案になってございます。

リース、これは実務的に悩ましい問題があります。ただ、リースを、リース・アセットあるいはリース・ライアビリティーとして認識していくという大きな方向性については、必ずしも合理的でないとも言えないところがあります。そういったことから、実務面でいかにきちんとワークするようにしていくかと、こういった議論は大変重要かと思います。

以上、駆け足でございますけれども、現状、今、実際に国際会計基準が変わることが議論されている項目は以上のとおりでありまして、また、どのように変わるということが、現状議論されているかというのも、申し上げたとおりでございます。

それから、資料の5のほうに行かせていただきます。

昨年12月に公表された連結財務諸表規則におきまして、若干整合性をとるために、実質的にというよりは、やや細かいところの改正をさせていただきたいということでございます。いずれも連結財務諸表に限っての話でございまして、単体の財務諸表の話ではございません。

左側でございますけれども、連結の親会社が上場しているという場合の、子会社が上場している場合には当然のことながら上場子会社ということで一定の場合、IFRSが選択可能になります。

それから右側でございますけれども、従来、例えば子銀行が上場会社で国際的な事業を行っていましたということでIFRSを任意適用したいということであったところ、その持株会社を上につくって、持株会社が上場会社になって、その子銀行や大きな子会社が、その下にぶら下がる形になった場合、実態的にはその子会社が連単倍率1.1とか1.2でほとんどの事業を占めている場合、形式的には親会社のほうがIFRSによるファイリングができることになりますけれども、実際、子会社はそれまでの経緯、あるいは過去のいきさつから、例えば、デットの公募をしていたために有価証券報告書を出し続けるといったことがあります。そういった場合、連結財務諸表を出すことになるわけですが、この場合、事実上、主な事業体であり、かつ公募による資金調達をした、経済的には主たる主体でありながら、形式的に子会社になったということでIFRSの使用を禁じるというのは、やや平仄といいますか整合性を欠くことになりますので、この点については、認めるというふうに、ちょっと細かい話ですけれども手直しをさせていただきたいと考える次第でございます。

それから次の資料6でございます。

この資料は前回お出しした資料でございますので、詳細は省かせていただきますけれども、今回この連結と単体の議論をしていただきました関係で、個々の会計基準を、ASBJにおいて議論していただくわけでございますが、その際、1つ残った宿題がありまして、EUの同等性評価、同等であるという決定を得ているわけですけれども、前回、ご説明申し上げましたとおり、アメリカでは多くの差異は解消したという過去形で書かれていますけれども、日本は2011年末までに既存の差異をなくすということを、東京合意でIASBとASBJが合意していると、それが順調に進捗しているということから同等性の評価が得られています。

ほとんどのコンバージェンス・プロジェクトは終息してきているわけでございますけれども、2ページにある11番、開発費用の資産計上というのが、EUから日本に対して大きな重要な差異であるというふうに列挙されたこの項目は、まだ終わってございません。

したがいまして、言葉は悪いですけれども、EC、EUからしてみると、この開発費だけは証文として、彼らは残って持っているという状況でございます。普通に考えますと、この点についてはコンバージェンスを要する項目であろうかと思いまして、そうすると次の4ページでございますが、無形資産(開発費を含む)については、現在、ASBJで基準改定の努力をされているところでございますけれども、同等性の評価ないしEUの26項目の重要な差異という観点からすると、この資産計上化というものが望まれる項目であるということを1つつけ加えたいと思います。

なお、この点については、税制などが絡むところでございまして、当然、連結と単体の会計基準が異なる取り扱いにすることについて、今回のこの議論、資料1の観点から見ても、その候補としては十分にあり得る部分ではないかというふうに考える次第でございます。

ちょっと長くなって大変恐縮でございますけれども、説明は以上でございます。ありがとうございました。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、自由討議に入らせていただきたいと存じます。

ご意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。

久保田委員、どうぞ。

○久保田委員

ありがとうございます。

3回にわたりまして連結と単体の関係について、この企業会計審議総会で取り上げていただきましてありがとうございました。大分いろいろな論点も整理されたかと思います。

そういう中で、最終的には今後、先ほどご説明のありましたダイナミック・アプローチに沿ってコンバージェンス作業を進めていくということについては賛成でございます。その前提のもとで、今後、税法あるいは会社法のみならず、年金あるいは個別業法など、我が国独自の制度と密接に関連する単体の基準がどのように設定されるのかについて、私どもとしては非常に関心があるということでございます。

法人税との関係では、IFRSの動向が課税ベースの拡大等、我が国法人税における課税所得計算に大きな影響を及ぼさないよう、実務への影響も配慮して企業の国際競争力強化の観点から税制上の対応を図っていただきたいと考えております。

それから、単体の基準のあり方につきましては、審議会でもいろいろな産業界の方を呼んでお話を伺いましたけれども、企業の業態あるいは経営形態によってさまざまな意見があったと認識しておりまして、単体の基準設定につきましては、ぜひとも産業界の声が幅広く反映されるようなプロセスのもとで、さまざまな業種や業態の企業が実務的に対応可能な柔軟な選択肢を設けていただきたいと思っております。

これはコンバージェンス期間中についてのみではなくて、2012年を目途に決定することでございますけれども、IFRSが強制適用になった場合の単体に適用される基準についても同様でありまして、いわゆるアドプション後の連結財務諸表と個別財務諸表との総合的な姿についても、審議会でなるべく早く示していただきたいと思っております。特に海外子会社を多く有する企業グループ等を中心に、単体へのIFRSの任意適用を要望する声もありますので、単体へのIFRSの任意適用についても、ぜひとも検討していただきたいというふうに思っております。

それから最後でございますけれども、かねてから申し上げておりますように、個別財務諸表の開示について、その位置づけの見直しも含めて大幅な簡素化をお願いしたいと思っております。

それから1点、今日の資料で、先ほど資料2のところで米国基準の使用の終了についてということのご説明がありまして、ご説明の趣旨はよくわかりましたけれども、他方、米国基準を使っている日本企業は、この問題について非常に心配というか懸念も持っております。アメリカの動向等も、当初予想したとおりではなくて、いろいろな動きもあるようでございますので、この辺については、よく実務で対応できるのかどうかも含めて、米国基準を採用している企業の声をよく聞いていただきたいと思っております。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、西川委員、お願いします。

○西川委員

大体ここでの議論が終息しつつあるのかなというふうに思っておりますけれども、そうなりますと、またASBJのほうで連結先行についての議論を進めていくことになると思います。もちろん、個々の会計基準はそれなりに進めているわけですけれども、最終的な結論を得るところでは連結先行をどうするかということがあるのですけれども、今の久保田さんのご発言にあったような、経済界のご意見を聞くということがあるわけですけれども、ASBJは基準開発を行っていく上で、作成者、利用者、監査人等の関係者の意見を幅広くお聞きするということが基準開発上非常に重要なことであるというふうに認識しておりまして、参考となるご意見というのは積極的に伺っていきたいと考えております。

それとともに、最終的な判断というのは、ASBJは基準設定主体として厳格な独立性が求められているということもございますので、最終的判断は委員会で的確に行っていきたいということを申し上げておきたいと思います。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかに。

萩原委員、どうぞ。

○萩原委員

発言の機会を頂きましてありがとうございます。

最近のこの3回の審議会の中で、既に誤解なくこの結論が出ていると思いますけれども、ASBJが引き続き連・単双方の日本の会計基準(J-GAAP)の設定主体であるべきだと考えておりまして、そのことを明確に確認しておきたい。

その上で、私ども財務会計基準機構としては、ASBJの会計基準設定主体としての独立性を確保しつつ、基準設定機能の強化及びそのための産業界を含むステークホルダーによるバックアップ強化のための方策を、ぜひ検討し、今後本審議会に検討の結果を報告させていただきたいというふうに考えております。

以上です。

○安藤会長

私からちょっと1点申し上げたいと思います。

国際会計基準の金商法の単体への任意適用については、中間報告におきまして2012年を目途として行われる連結への強制適用の是非の判断の際に検討することとされておりますところですが、今回の審議においても、連結への強制適用を判断する際には、金商法の単体への任意適用を認めてほしいとの実務からの要請があり、これを認めることに反対はなかったものと考えております。

他方、会社法上の単体の計算書類において、国際会計基準の任意適用が認められない限り、金商法の単体の財務諸表において、国際会計基準の任意適用を認める意義は小さいとの指摘もあると認識しております。

私としましては、金商法の単体への任意適用、または連結への強制適用の是非の判断に当たっても、特に会社法における制度整備等の検討が必要であると思われます。

法務省より河合参事官がいらっしゃっていますが、いかがでしょうか、ご発言いただけますか。

○河合幹事

会長の問題意識は十分理解しているところではございます。もっとも、計算書類と財務諸表を併せて財務書類といわせていただきますが、単体の財務書類について、諸外国の例を見ましても、資料がございましたように、英国ではIFRSの任意適用を認めているようですが、ドイツ、フランスでは、国内基準による作成を義務付けているという状況でございますので、単体の財務書類についてのIFRSの任意適用が世界的に一般的かどうかということについては、まだ議論があるようにも思います。

また、会社法上の単体の計算書類にIFRSの任意適用を認めるかどうかという点については、金商法上の単体又は連結の財務諸表をIFRSに従って作成しようとする上場会社の負担に関連する問題でございまして、会社法独自の観点から、単体の計算書類にIFRSの任意適用を認めてほしいという要望ないし議論ではないと理解しております。

会社法の立場から申しますと、単体の計算書類にIFRSの任意適用を認めるかどうかということについては、本日の事務局の説明にも触れられましたような資本金の概念整理に係る問題があるのみならず、分配規制についても、任意適用を認めれば2つの会計基準が存在するということとなりますので、会計基準の選択により分配可能額に違いが生ずることがないということを前提として、分配可能額が基本的に異ならないようにする方策を見いだせるか、それともこのような前提を根本から改め、株主と債権者との調整のあり方として、選択された会計基準ごとに分配可能額が異なることを許容する余地があるかどうかなどといった、会社法上極めて大きな問題が含まれていると思っております。

そこで、これらの点について、法務省として正式な検討をしていくためには、まずは単体の財務諸表について、IFRSの任意適用を許容するという、こういう方向性が明確な形で示されることが先決となるのではないかと思っているところでございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

本審議会といたしましても、特段のご反対がない限り、実務における国際会計基準の連結への任意適用の状況を勘案しつつ、金商法単体への任意適用の持つ意義や単体への任意適用の結果、単体について国際会計基準と日本の会計基準が並存することが、投資家に対する情報開示の観点から問題ないかどうか等について検討し、国際会計基準の連結への強制適用の是非を判断する際に、次のステップの選択肢として、単体への任意適用を認めるという方向性を示すことができればと考えています。

ほかに、ご意見。

武井委員、お願いします。

○武井委員

ありがとうございます。

久保田委員と多分重複いたしますけれども、ご発言、お許しいただきたいと思います。

連結の取り扱いは、この審議会でしっかりと定まっておりますので、私も全く依存はございません。単体の取り扱いでございますけれども、前々回にも申し上げましたとおり、私ども発行体サイドといたしましては、やはり税制や会社法との親和性がしっかりと担保されるという意味で、また、時と場合によっては相当の期間、連結と単独との間に差異が残り得るという意味で、ダイナミック・アプローチという考え方の下で今後問題を詰めていくということであれば、ぜひそうしていただきたい。また、それが唯一現実的な解決の方策であろうと考えております。

前回あるいはまた本日ご説明をいただきましたイメージ図、スナップ・ショットでございますが、恐らくそのような意味を含意しているんだろうと理解いたしております。そういう意味では、本日ご説明いただきました今後の方向性というのは、前々回あるいは前回お招きしてご意見をちょうだいいたしましたお三方の参考人のご意見、この趣旨とも通ずるものであろうと考えております。釈迦に説法でございますが、金融商品取引法を含めまして会社法や税法、あるいはまた業法との親和性に関しましては、これまで関係者が長い時間をかけて真摯に議論を行い、その末に実務の中で定着するといいますか、生きるという形になっております。せっかくそこまで来たことということであれば、今回、連結財務諸表にIFRSを適用することによって、また突き放してしまうといいますか、切り離してしまうということは非常に問題が大きいのかなという意味で、私は現行の日本基準、これを放棄すべきではないと現時点では考えているわけでございます。

それからまた、私どもの立場というのは、今申し上げたようなことに加えまして、別記事業ということでもございます。現在の単独の作成基準というのが電気料金の原価を把握するための出発点になっているということにおいても、現在の基準を大事にしたいというふうに考えているわけでございます。

申し上げましたとおり、IFRSを個別にこのまま適用することによりまして、課税所得のぶれの問題ですとか、あるいは今、参事官からお話がございましたとおり、配当可能利益の問題あるいは電気料金の原価というものを揺るがすようなことがあってはいけないと考えております。これはゆゆしく制度をゆがめることのみならず、経営の根幹を揺るがしかねない問題にもつながり得るため、ぜひ単独の財務諸表の基準というものを当面は大事にしていきたいと考えているわけでございます。

それからまた、個々の会計基準を今後、ダイナミック・アプローチの原則のもとで、ご審議していただくわけでございますが、再三お話が出ておりますとおり、唯一の独立また専門機関でございますASBJでお取り上げいただき、ここを議論の場とするのが最もふさわしいのではないのかなと思っております。

ただ、単体の問題は、今まであまり前例はございませんが、今回お取りまとめいただくダイナミック・アプローチの原則のもとで、個々のアイテムをこれからASBJでご検討いただくということでございますので、各種法制度と密接に関連する問題を有するがゆえに、それらとの親和性というものがきちんと担保されるようなご審議をぜひなさっていただきたい。そのためにはダイナミック・アプローチの実効性がASBJの場できちんと確保されるような新たな試みも、場合によっては必要なんだろうなと思っております。さもありませんと、これはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、個々の会計基準を、今後、ASBJの場で議論していった結果として、なし崩し的に連・単が一致したものになってしまったということになってしまっては、今回のこの審議会の3回の検討はどういうことだったのかということにもなりかねません。ぜひ新たな仕組みというものを構築した上でご審議をしていっていただきたいなと、こういうふうに思っているわけでございます。

それから2つ目も、これは前から久保田委員ともども申し上げていることでございますが、国際会計基準の実務への落とし込みをご議論するに当たっては、会社法あるいは証券取引所さんの規則等々と、開示のいわゆる作業量の問題がございます。さきにも第1四半期決算を終えましたけれども、連・単を問わず、繁忙感、疲労感がピークに達しております。昔はいわゆる決算の谷間というのがあったんですが、今は相次ぐ開示資料の作成で、谷間というものはございません。ぜひ新たな問題を検討するに当たりましては、再三申し上げておりますとおり、既存の制度を簡素化の方向で、ぜひ抜本的棚卸しをしていただきたい。もう大体新成長戦略で掲げていただいておりますけれども、内部統制あるいは四半期開示等々を中心に、また取引所さんの規則も含めて、簡素化に向けての見直しをお願いしたい。

私からは、以上2点でございます。よろしくお願いいたします。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

斎藤静樹委員、どうぞ。

○斎藤委員

基本的にあまり申し上げることはなく、今のご発言についても、おおむねよく理解できるわけですが、ただ、ここでの議論の内容がなし崩しに変わるということは避けたいので、一言申し上げたいと思います。

私どもは連結先行という概念について、おおむね了解していると思いますけれども、それは特定の差異が、いずれは解消される、つまり連結が先行しても、いずれは単体がついていくという前提で考えていたと思うのですね。ある特定の差異が永久に、あるいは相当長期にわたって残るという意味ではなかったと私は思います。

もちろん事務局から出されたダイナミック・アプローチというのも、一つの差異が解消しても別の差異が出てきて、瞬間のスナップ・ショットで見れば連・単は違っているのを許容するという意味であれば、それは連結先行と全く矛盾しない概念ですので、それについては私どもも了解していると思います。

しかし、繰り返しますけれども、特定の差異がほぼ永久に残るという、そういう連結先行というより連・単分離に近い概念については、必ずしもここでの了解としては成立していないと私は理解しております。それが一点です。

それからもう一点ですけれども、先ほどの産業界等のご意見をよく聞く機会を考えるということについては、その趣旨に私は賛成でございます。ASBJというのは、関係者のご意見をよく聞いて、その上で基準を設定する機関でございますので、さまざまな形で意見を聴取する機会はあるのが当然であり、それは望ましいことと私は思っております。ただ、その場合でも、ASBJの構成母体が事実上、事前に集まって一定の結論を得て、その受入れを求めてくるというような形になりますと、これは場合によってはASBJの独立性に強い懸念が生ずるおそれがございますので、その点については、よくご注意をいただきたいと思っております。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

引頭委員、どうぞ。

○引頭委員

利用者側から一言申し上げさせていただきます。

今回のご提示いただいた落としどころに関しましては、非常にリーズナブルだと思います。現実的な解としてはこれで良いのではと考えております。

ただし、今後個別財務諸表と、連結財務諸表の会計基準が一部異なっている時期が、どれぐらいの期間かは別として、しばらく続くことになり、その基準設定については、ASBJに委ねられたと理解しております。

利用者側といたしましては、ASBJさんにお願いがございます。ある基準について、単体と連結が一緒にならなかった場合、その何か理由といいますか、なぜ一緒になっていないのかについての説明責任を是非果たしていただきたいと思っています。それほど細かく詳しくなくて結構ですが、利用者として、予見可能性ということがありますし、なぜそこが違っているのかについて理解は深まると思われます。特に大きな差があった場合においては、そうしたご説明をしていただけますと、非常に使う側としてはありがたいなというふうに思います。

以上です。

○安藤会長

それでは、西川委員、どうぞ。

○西川委員

ただいまのお話、大変ありがとうございます。

私どものほうは、基準の場合も適用指針の場合も、基準本文の後ろに結論の背景というのがついてございますので、その部分で連・単の差異についての説明というものについて、十分行っていこうというふうに考えております。

○安藤会長

ほかにいかがですか。

八木委員、どうぞ。

○八木委員

今日のご報告で、過去二回の議論論点が整理されたとおもいます。

先ほど三井さんからご報告がありましたように、同等性の評価の課題として、開発費の資産計上という問題が直近で出てきます。

今まで実施されてきたコンバージェンスにつきましては、実務的にあまり大きな問題はありませんでした。

次に検討される開発費の資産計上については、これを連結先行か、連単同時かですが、単独に適用すると税務に影響する部分が出てきます。本日の会議終了後、最初に一番大きなテーマがすぐ出てくるというふうに認識しております。ここでどのような結論が出るかわかりませんけれども、仮にこの問題で連結先行ということになったような場合に、先ほど西川委員からもありましたけれども、結論の背景というものを明確にしていただきたいとおもいます。

仮に連単分離となった場合、その背景が、税務上の問題であったとすると、税務が変わらなければ、永遠に連単分離のままなのか、どのような時期に単独にも適用されるようになるのかが議論になると思います。(以上はあくまで仮説ですが)仮に連・単分離となると、実務的にも相当準備をしなければいけないということになってきますので、実務にどう落とすかというところのプロセスまで配慮した(準備が間に合うような)タイミングで、結論を出していただきたいというふうに思っております。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、これまでご活発な議論をいただきましてありがとうございました。

私として、単体財務諸表の会計基準のあり方に関して、これまでのご議論をまとめさせていただきましたので申し述べさせていただきます。

第1点、連結の会計基準については、EUの同等性評価を踏まえ、東京合意に沿い、コンバージェンスを着実に実施するということだと考えております。

第2点、連結と単体の関係については、当審議会の昨年6月の意見書のとおり、連結先行のアプローチ、ダイナミック・アプローチをとるということだと思います。具体的には単体の会計基準は、個々の基準ごとに連と単を一致することに伴う諸々のコスト・ベネフィット、連と単を分離することに伴う諸々のコスト・ベネフィットを考慮した上で、最終的にASBJが判断するということです。その中で、個々の基準で会計処理の選択適用を許容することもあり得ると考えます。連結と単体のズレの期間、幅は、経営や内外の会計を巡る、税・会社法を含む諸状況により大きく異なると考えます。この連と単の関係についてのアプローチは、今後その是非を判断する予定であるIFRSの強制適用が仮に行われた場合についても、基本的に当てはまるものであると考えます。

今後も引き続き、IASBの国際会計基準の設定に対し、我が国としての経営実務や慣行、それを踏まえた会計の考え方等の意見発信が重要であると考えます。

第3点、ASBJの基準設定プロセスについては、単体のコンバージェンスの程度をより広い見地から判断するため、より幅広く産業界等のステークホルダーの声を反映すべきとの意見が聞かれました。これに対し、ASBJからは、基準開発を行う上で、作成者、利用者、監査人等の関係者の意見を十分お聞きすることが最も重要であり、参考となる意見を積極的に伺っていきたい。同時に、ASBJは基準設定主体として厳格な独立性が求められており、最終的な判断は委員会で的確に行っていきたいとのご発言がありましたし、またご意見がございました。

また、公益財団法人財務会計基準機構理事長より、ASBJが引き続き連と単、双方の日本の会計基準いわゆるJ-GAAPの策定主体であるべきであり、今後、会計基準設定主体の独立性を確保しつつ、基準策定機能の強化及びそのための産業界を含む各ステークホルダーによるバックアップ強化のための方策を検討し、今後、審議会にご報告したい旨の申し出がございました。

第4点、金融商品取引法及び会社法上、単体へのIFRS適用については経済界からの要望があり、今後、特に会社法における制度整備等の検討が必要であると考えます。

企業会計審議会としても今後、IFRSの連結への強制適用の是非を判断する際に、次のステップの選択肢として単体への任意適用を認めるという方向性を示すことができればと、考えております。

第5点、金商法における単体情報については、その投資情報としての有用性の観点に加え、会社法で単体の計算書類が作成され、株主に届けられ、その情報は投資家にも開示すべきとの観点から、引き続き開示するべきであると考えております。ただし、簡素化等、見直しは行うべきであると考えます。

第6点、最後ですが、連と単の関係は非常に難しい問題であり、関係者一丸となった対応が必要であると考えます。

以上でございます。

単体財務諸表の会計基準のあり方に関する議論につきましては、本日のご審議をもちまして一旦終了させていただき、ASBJにおいて、個々の基準の精力的な検討をお願いしたいと考えております。

なお、今後につきましては、先ほども申し上げましたとおり財務会計基準機構のほうから基準策定機能の強化及びそのためのバックアップ強化のための方策を検討し、今後、当審議会にご報告をいただけるとのことです。また、恐らくIFRSの基準開発状況やガバナンス改革状況、これについては金融庁、河野総括審議官がヘッドとなられておられますが、これらについてご報告などがあるものと考えられます。したがって、この秋以降、適宜のタイミングで当審議会を開催することになると考えております。

今後の審議会の予定について、事務局からお願いいたします。

○古澤企業開示課長

次回以降の日程につきましては、また会長からの最後のご発言などを踏まえまして、また改めて調整してご連絡させていただければと思っています。

○安藤会長

それでは、これで本日の総会を終了いたしたいと思います。

なお、先ほど申し述べました単体財務諸表の会計基準のあり方に関するこれまでの議論のまとめにつきましては、本日この後、記者会見で話すことになります。その際には、今後、議事録の精査により修正があり得ることを前提に、私のメモを配付させていただきたいと考えております。

ご審議にご協力いただきありがとうございました。これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課
(内線3672、3656)

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